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明細書 :遊星歯車装置及び遊星歯車装置の設計プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6782494号 (P6782494)
登録日 令和2年10月22日(2020.10.22)
発行日 令和2年11月11日(2020.11.11)
発明の名称または考案の名称 遊星歯車装置及び遊星歯車装置の設計プログラム
国際特許分類 F16H   1/46        (2006.01)
F16H  55/08        (2006.01)
FI F16H 1/46
F16H 55/08 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 35
出願番号 特願2018-521741 (P2018-521741)
出願日 平成29年6月6日(2017.6.6)
国際出願番号 PCT/JP2017/021022
国際公開番号 WO2017/213151
国際公開日 平成29年12月14日(2017.12.14)
優先権出願番号 2016112434
優先日 平成28年6月6日(2016.6.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和2年3月6日(2020.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】藤本 康孝
【氏名】小布施 大志
個別代理人の代理人 【識別番号】110001634、【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
審査官 【審査官】岡本 健太郎
参考文献・文献 特開昭60-023654(JP,A)
特開昭63-145841(JP,A)
両角宗晴,遊星歯車と差動歯車の理論と設計計算法,日本,藤吉敏生,1989年 4月27日,初版,第2-4頁
調査した分野 F16H 1/46
F16H 55/08
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の遊星歯車機構を組み合せてなる遊星歯車装置において、
キャリアを共有する第1及び第2の遊星歯車機構を有し、
各遊星歯車機構は、内歯車I(kは2以上の整数)と、前記内歯車Iに噛合し且つ前記内歯車の周方向に公転運動する遊星歯車Pとから構成され、
前記遊星歯車機構それぞれの遊星歯車Pは、外歯車形態の平歯車からなり、
前記遊星歯車機構それぞれの遊星歯車Pは、遊星歯車装置全体を2段歯車機構に構成すべく、共通の回転中心軸線を中心に一体的に回転するように中心軸を共有し又は中心軸同士を一体的に連結され、或いは、共通の回転中心軸線を中心に一体的に回転するように互いに一体化しており、
前記第1の遊星歯車機構を構成する第1遊星歯車の歯数(zp1)、前記第2の遊星歯車機構を構成する第2遊星歯車の歯数(zp2)が異なるようにした遊星歯車装置であり、前記内歯車Iの歯数がzi1であり、前記内歯車I2の歯数がzi2であり、
前記第1遊星歯車の転位係数がxp1、それに係合し前記第1の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi1、前記第2遊星歯車の転位係数がxp2、それに係合し前記第2の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi2、前記転位係数xp1、xi1、xp2、xi2を含む該遊星歯車装置の動力伝達効率がηであり、前記内歯車Iの転位係数がxi1であり、前記内歯車Iの転位係数がxi2であり、
前記転位係数が、予め与えられた設計諸元の許容範囲で、前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大、すなわち、前記動力伝達効率ηに対する前記転位係数xの勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂i2)に基づきv・q>0を満足する前記転位係数xの更新量(γq)が十分に小さく前記動力伝達効率ηが極大値となる前記転位係数の組み合せの中から選び出した値の組み合わせの関係である遊星歯車装置。
【請求項2】
歯数(zs1)の太陽歯車S1を有し、
前記遊星歯車Pそれぞれは、該太陽歯車S1に噛合し、
前記太陽歯車S1の転位係数がxs1であり、
前記動力伝達効率ηは、
歯車の歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせで表される場合、前記歯車の歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合せの中から選び出した前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大、すなわち、前記動力伝達効率ηに対する前記転位係数xの勾配ベクトルv=(∂η/∂xs1、∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂i2)に基づきv・q>0を満足する前記転位係数xの更新量(γq)が十分に小さく前記動力伝達効率ηが極大値となる値の組み合わせである、請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記動力伝達効率ηは、
歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせで表される場合、前記歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)および前記中心軸間距離係数(X)の組み合せの中から選び出した前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大となる値の組み合わせであり、
または、歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)、前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)、および前記第1の遊星歯車機構と前記第2の遊星歯車機構の軸間距離を転位する量である中心軸間距離係数(X)の組み合わせで表される場合、前記歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xp1、xp2、X)の組み合せの中から選び出した前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大となる値の組み合わせである、請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
前記動力伝達効率η(xp1,xi1,xp2,xi2,X)が、η=η・ηであり、歯数zikの内歯車からなる内歯車Iの前記動力伝達効率ηは、次式(数1)で表され、
【数1】
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前記式(数1)において、添え字kは夫々の遊星歯車機構の歯車対を示し、前記μは前記内歯車Iと前記遊星歯車Pの間の摩擦係数であり、前記ε0kは2つの前記内歯車Iと前記遊星歯車Pのかみ合い率を示し、
前記式(数1)において、ε0kは次式(数2)で表され、
【数2】
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前記式(数1)において、前記ε1kは近寄りかみ合い率であり、前記ε2kは遠のきかみ合い率であり、
前記式(数2)において、ε1k、ε2kは次式(数3)で表され、
【数3】
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前記式(数1)において、前記aWkはかみ合い圧力角、前記azpk、前記azikは夫々歯先圧力角であり、次式(数4)で表され、
【数4】
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前記式(数4)において、前記rは前記内歯車I及び前記遊星歯車Pの中心軸間の距離であり、前記mはモジュールであり、前記aは転位する前の基準圧力角であり、前記daik、前記dapkは夫々、前記内歯車I及び前記遊星歯車Pの歯先円直径であり、前記dbik、前記dbpkは夫々、前記内歯車I及び遊星歯車Pの基準円直径であり、次式(数5)で表され、
【数5】
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前記式(数5)において、前記係数xinは前記歯車対P、Iと前記歯車対P、Iとの軸間距離を合わせるための転位係数であり、前記係数xc1、xc2は夫々、前記歯車対P、I及び前記歯車対P、Iの軸間距離を転位量Xだけ変化させることにより生じる各歯車対の影響を表す転位係数であり、前記転位係数xp1、xp2、xi1、xi2との間に、次式(数6)の関係があり、
【数6】
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前記式(数)において、前記inv(a)は、インボリュート関数である、請求項3に記載の遊星歯車装置。
【請求項5】
前記遊星歯車機構は、太陽歯車を有しない構成である、請求項1、3、4のいずれか1項に記載の遊星歯車装置。
【請求項6】
前記遊星歯車機構は、太陽歯車を含む構成である、請求項1または請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項7】
内歯車Iと、前記内歯車Iに噛合し且つ前記内歯車の周方向に公転運動する遊星歯車Pと、歯数zs1の太陽歯車S1と、から構成され、キャリアを共有する第1の遊星歯車機構及び第2の遊星歯車機構であって、前記第1の遊星歯車機構を構成する第1遊星歯車の歯数がzp1、前記第2の遊星歯車機構を構成する第2遊星歯車の歯数がzp2、前記第1遊星歯車の転位係数がxp1、それに係合し前記第1の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi1、前記第2遊星歯車の転位係数がxp2、それに係合し前記第2の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi2、前記転位係数xp1、xi1、xp2、xi2を含む遊星歯車装置の動力伝達効率がηであり、前記太陽歯車S1の転位係数がxs1である前記遊星歯車装置を設計するコンピュータに、
生成可能な歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組を生成するステップと、
生成した前記歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組から最初の組を設定するステップと、
ベクトルx=(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)について初期値を与えるステップと、
勾配ベクトルv=(∂η/∂xs1、∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2)を求めるステップと、
v・q>0を満たすベクトルqを選ぶステップと、
前記ベクトルxの更新量γqが十分小さくなったか否かを判別するステップと、
前記更新量γqが十分小さくなっていないと判別した場合、前記ベクトルxにγqを加算して更新するステップと、
更新量γqが十分小さくなったと判別した場合、前記歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせのうち、前記動力伝達効率ηが最大又は準最大となる転位係数の組み合わせを選択するステップと、
前記動力伝達効率ηが最大となる選択した前記歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせを出力するステップと、
を実行させる遊星歯車装置の設計プログラム。
【請求項8】
内歯車Iと、前記内歯車Iに噛合し且つ前記内歯車の周方向に公転運動する遊星歯車Pと、から構成され、キャリアを共有する第1の遊星歯車機構及び第2の遊星歯車機構であって、前記第1の遊星歯車機構を構成する第1遊星歯車の歯数がzp1、前記第2の遊星歯車機構を構成する第2遊星歯車の歯数がzp2、前記第1遊星歯車の転位係数がxp1、それに係合し前記第1の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi1、前記第2遊星歯車の転位係数がxp2、それに係合し前記第2の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi2、前記転位係数xp1、xi1、xp2、xi2を含む遊星歯車装置の動力伝達効率がηであり、前記第1の遊星歯車機構と前記第2の遊星歯車機構の軸間距離を転位する量である中心軸間距離係数がXcである前記遊星歯車装置を設計するコンピュータに、
生成可能な歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組を生成するステップと、
生成した前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組から最初の組を設定するステップと、
ベクトルx=(xp1、xp2、xi1、xi2)またはベクトルx=(xp1、xp2、X)について適当な初期値を与えるステップと、
勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2)または勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂X)を求めるステップと、
v・q>0を満たすベクトルqを選ぶステップと、
前記ベクトルxの更新量γqが十分小さくなったか否かを判別するステップと、
前記更新量γqが十分小さくなっていないと判別した場合、前記ベクトルxに前記更新量γqを加算して更新するステップと、
前記更新量γqが十分小さくなったと判別した場合、前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせ、または前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、X)の組み合わせのうち、前記動力伝達効率ηが最大又は準最大となる転位係数の組み合わせを選択するステップと、
前記動力伝達効率ηが最大となる、選択した前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせ、または選択した前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、X)の組み合わせを出力するステップと、
を実行させる遊星歯車装置の設計プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車装置及び遊星歯車装置の設計プログラムに関する。
本願は、2016年6月6日に、日本に出願された特願2016-112434号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
産業機械、車両、ロボット、OA機器等の各種の駆動系又は動力等伝達系を構成する減速(増速)装置として、太陽歯車、遊星歯車、内歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構が知られている(例えば、非特許文献1参照)。遊星歯車機構は、比較的高い減速比を実現可能にするとともに、減速比及び伝達トルクに比して機構又は構造が比較的コンパクトであり、しかも、入力軸及び出力軸を同軸配置し得ることから、多種多様な駆動装置又は動力伝達装置等の駆動系又は動力伝達系において広く実用に供されている。
【0003】
遊星歯車機構として、例えば、単純遊星歯車機構、ラビニヨ遊星歯車機構、複合遊星歯車機構及び不思議遊星歯車機構等が知られている。一般には、高効率、高トルク及び高減速比の歯車機構は、各種産業機器や民生機器などに多くの需要があるので、遊星歯車機構の他、波動歯車機構(ハーモニックギヤ)や、サイクロイド歯車機構などの歯車機構も開発され、実用化されている。
【0004】
このような各種歯車機構によって得られる減速比は、概ね以下のとおりであると考えられている。
(1)単純遊星歯車機構(1段):減速比1/4~1/10程度
(2)ラビニヨ遊星歯車機構(1段):減速比1/10程度
(3)複合遊星歯車機構:減速比1/100程度
(4)不思議遊星歯車機構:減速比1/100程度
(5)波動歯車機構:減速比1/30~1/200
(6)サイクロイド歯車機構:減速比1/60~1/200
【0005】
このような多種の歯車機構の中で、不思議遊星歯車機構、波動歯車機構及びサイクロイド歯車機構は、比較的特殊な構造の歯車を使用した構成を有するので、生産性の低下や、設計自由度向上の困難性、構造強度向上の困難性、或いは、製造コストの高額化等の課題が生じ易く、このため、汎用的な平歯車を用いた単純遊星歯車機構等の遊星歯車機構が、生産性、製造コスト、設計自由度、構造強度等の観点より望ましいと考えられる。殊に、複数の遊星歯車機構を組み合せてなる複合遊星歯車機構は、上記のとおり、1/100程度の減速比を実現し得るので、高い減速比を要する遊星歯車装置の歯車機構として好ましく採用し得ると考えられる。
【0006】
他方、遊星歯車機構においては、内歯車及び太陽歯車と噛合う複数個の遊星歯車が周方向に配列されるので、遊星歯車機構が機構的に成立するための制約又は設計条件として、同軸条件、組立条件及び隣接条件の3条件が一般に考慮される。同軸条件は、太陽歯車、内歯車及びキャリアの軸心が同軸上に位置するための条件であり、組立条件は、等間隔に配置された複数の遊星歯車が太陽歯車及び内歯車と噛合うための条件であり、隣接条件は、隣り合う遊星歯車が互いに干渉しないための条件である。
【0007】
図17は、太陽歯車、遊星歯車、内歯車及びキャリアから構成される従来の遊星歯車機構の構成を示す概念図である。図18は、太陽歯車、遊星歯車、内歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構に関し、他の従来構成を示す概念図である。図19は、太陽歯車、遊星歯車、内歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構を複数組合わせてなる複合遊星歯車機構に関し、従来の構成を示す概念図である。図20は、内歯車を備えず、太陽歯車、遊星歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構を複数組合わせてなる複合遊星歯車機構に関し、従来の構成を示す概念図である。
【0008】
図17には、単純遊星歯車機構の構成が示されている。太陽歯車Sの歯数をz、遊星歯車Pの歯数をz、内歯車Iの歯数をz、遊星歯車Pの個数をN(自然数)に夫々設定するとともに、内歯車Iを固定し、太陽歯車Sを入力軸、キャリアHを出力軸に夫々設定した場合、遊星歯車機構の減速比、同軸条件、組立条件及び隣接条件は、次式(1)で表される。なお、図17において、符号Kは、太陽歯車S及び内歯車Iを包含する広義の太陽歯車を意味しており、図17に示す遊星歯車機構は、最も一般的な2K-H型に属する。
【0009】
【数1】
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【0010】
図18には、ラビニヨ式遊星歯車機構の構成が示されている。太陽歯車Sの歯数をz、径方向外方の遊星歯車P1の歯数をzp1、径方向内方の遊星歯車P2の歯数をzp2、内歯車Iの歯数z、遊星歯車P1、P2の個数を2Nに夫々設定するとともに、内歯車Iを固定し、太陽歯車Sを入力軸、キャリアHを出力軸に夫々設定した場合、遊星歯車機構の減速比、同軸条件、組立条件及び隣接条件は、次式(2)で表される。なお、ラビニヨ式遊星歯車機構では、第1段の遊星歯車P2が回転方向を反転させることから、キャリアHを基準とすると、太陽歯車Sと内歯車Iとが同一方向に回転するので、減速比を示す式(2)の分母において、太陽歯車Sの歯数zに掛かる符号が反転する。また、隣接条件は、複数の式によって定義されるが、これは、各式のいずれにも適合することによって隣接条件が満たされることを意味する。
【0011】
【数2】
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【0012】
(2)式において、φは、太陽歯車Sの中心軸線と遊星歯車P1の中心軸線とを結ぶ直線と、太陽歯車Sの中心軸線と遊星歯車P2の中心軸線とを結ぶ直線とが交差する角度である。
【0013】
図17及び図18に示す遊星歯車装置は、同一構面内のギア列(ギアトレーン)によって構成されているが、前述のとおり、回転軸線方向に間隔を隔てた構面内に遊星歯車機構を夫々配置してなる複合遊星歯車機構は、単純遊星歯車機構や、ラビニヨ遊星歯車機構に比べ、高減速比を実現する上で好ましく採用し得る歯車機構であると考えられる。しかし、複合遊星歯車機構においては、並置された遊星歯車機構が前述の3条件を夫々充足する必要が生じるので、上記設計条件を充足した上で高減速比を実現することは、実際には、極めて困難である。このため、遊星歯車機構の設計条件を緩和することを意図した複合遊星歯車機構の構成が、例えば、特許文献1~3において提案されている。
【0014】
特許文献1に記載された複合遊星歯車機構は、太陽歯車、遊星歯車及び内歯車を有する2組の遊星歯車機構を備え、各遊星歯車機構の遊星歯車同士を同軸且つ一体的に連結するとともに、転位歯車の使用によって設計条件を緩和した構成を有する。また、特許文献2に記載された複合遊星歯車機構は、太陽歯車、遊星歯車及び内歯車を有する2組の遊星歯車機構を連結するとともに、遊星歯車を非軸対称に配置することによって設計条件を緩和した構成を有する。
【0015】
図19は、特許文献3に記載された複合遊星歯車機構の構成を示す概念図である。特許文献3の複合遊星歯車機構は、図19に示す如く、2組の遊星歯車機構の太陽歯車S1、S2を相互連結するとともに、共用のキャリアHによって各遊星歯車P1、P2の支軸及び軸受を独立に支持又は支承することにより、設計自由度を向上した構成を有する。
【0016】
以上説明した各種形式の遊星歯車機構は、いずれも、内歯車を備えた代表的な遊星歯車機構の構成を有するが、他の構成の遊星歯車機構として、図20に示す如く、内歯車を備えない形式の複合遊星歯車機構が知られている。
【0017】
図20に示す複合遊星歯車機構は、図18に示すラビニヨ式遊星歯車機構において内歯車I(図18)を太陽歯車S2(図20)に置換した構成の遊星歯車機構として把握し得る。図20に示す遊星歯車機構においては、太陽歯車S1、S2は、キャリアHを基準として逆方向に回転する。
【0018】
太陽歯車S1の歯数をzs1、太陽歯車S2の歯数をzs2、遊星歯車P1の歯数をzp1、遊星歯車P2の歯数をzp2、遊星歯車P1、P2の個数を2Nに設定するとともに、太陽歯車S2を固定し、太陽歯車S1を入力軸、キャリアHを出力軸に設定した場合、遊星歯車機構の減速比、同軸条件、組立条件及び隣接条件は、次式(3)で表される。なお、隣接条件は、式(3)のとおり複数の式によって定義されるが、これは、各式のいずれにも適合すべきことを意味する。また、下式において、φは、太陽歯車S1、S2の中心軸線と遊星歯車P1の中心軸線とを結ぶ直線と、太陽歯車S1、S2の中心軸線と遊星歯車P2の中心軸線とを結ぶ直線とが交差する角度である。
【0019】
【数3】
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【0020】
また、図20に示す遊星歯車機構の変形として、中心軸を共有し且つ異なる歯数を有する2つの遊星歯車を備えた複合遊星歯車機構が、特許文献4等に記載されている。
【先行技術文献】
【0021】

【特許文献1】再公表WO2007-017935号公報
【特許文献2】特開2008-275112号公報
【特許文献3】再公表WO2012-060137号公報
【特許文献4】特開平7-301288号公報
【0022】

【非特許文献1】矢田恒二著、「歯車応用機構の設計」、社団法人機械技術協会、2012年2月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
一般に、減速機構を要する産業用機械や車両、或いは、減速機構を有するロボットの関節部品等の技術分野においては、主として、遊星歯車機構を利用した減速装置が用いられてきたが、近年の産業技術の高度化に伴い、従来の遊星歯車機構の設計限界以上の高減速比を備えた小型・軽量の減速装置の開発が望まれている。例えば、ロボットの動力伝達系を構成する減速機においては、小型且つ軽量であって、高い減速比(1/100~1/200)を実現することができ、しかも、比較的低コストで製造し得る構造又は機構の開発が、近年殊に望まれている。
【0024】
しかしながら、遊星歯車機構においては、前述した設計条件の制約のために、高減速比且つ小型・軽量の遊星歯車機構を設計し難い事情がある。また、複合遊星歯車機構(図19及び図20)によれば、或る程度までは、減速比を増大し得るかもしれないが、100:1を超える高い減速比を有する小型且つ軽量の遊星歯車機構の設計は、極めて困難である。加えて、複合遊星歯車機構では、通常は、歯車の段数が3段以上に設定される結果、動力伝達効率が低下する傾向がある。
【0025】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的低コストで製造し得る簡易な構造を有し、100:1を超える高い減速比を比較的容易に実現するとともに、歯車の全段数を2段に設定し且つ動力伝達効率を向上することができる小型且つ軽量な遊星歯車装置及び遊星歯車装置の設計プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る遊星歯車装置は、複数の遊星歯車機構を組み合せてなる遊星歯車装置において、キャリアを共有する第1及び第2の遊星歯車機構を有し、各遊星歯車機構は、内歯車I(kは2以上の整数)と、前記内歯車Iに噛合し且つ前記内歯車の周方向に公転運動する遊星歯車Pとから構成され、前記遊星歯車機構それぞれの遊星歯車Pは、外歯車形態の平歯車からなり、前記遊星歯車機構それぞれの遊星歯車Pは、遊星歯車装置全体を2段歯車機構に構成すべく、共通の回転中心軸線を中心に一体的に回転するように中心軸を共有し又は中心軸同士を一体的に連結され、或いは、共通の回転中心軸線を中心に一体的に回転するように互いに一体化しており、前記第1の遊星歯車機構を構成する第1遊星歯車の歯数(zp1)、前記第2の遊星歯車機構を構成する第2遊星歯車の歯数(zp2)が異なるようにした遊星歯車装置であり、前記内歯車Iの歯数がzi1であり、前記内歯車I2の歯数がzi2であり、前記第1遊星歯車の転位係数がxp1、それに係合し前記第1の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi1、前記第2遊星歯車の転位係数がxp2、それに係合し前記第2の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi2、前記転位係数xp1、xi1、xp2、xi2を含む該遊星歯車装置の動力伝達効率がηであり、前記内歯車Iの転位係数がxi1であり、前記内歯車Iの転位係数がxi2であり、前記転位係数が、予め与えられた設計諸元の許容範囲で、前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大、すなわち、前記動力伝達効率ηに対する前記転位係数xの勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂i2)に基づきv・q>0を満足する前記転位係数xの更新量(γq)が十分に小さく前記動力伝達効率ηが極大値となる前記転位係数の組み合せの中から選び出した値の組み合わせの関係である。
【0027】
また、本発明の一態様に係る遊星歯車装置において、歯数(zs1)の太陽歯車S1を有し、前記遊星歯車Pそれぞれは、該太陽歯車S1に噛合し、前記太陽歯車S1の転位係数がxs1であり、前記動力伝達効率ηは、歯車の歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせで表される場合、前記歯車の歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合せの中から選び出した前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大、すなわち、前記動力伝達効率ηに対する前記転位係数xの勾配ベクトルv=(∂η/∂xs1、∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂i2)に基づきv・q>0を満足する前記転位係数xの更新量(γq)が十分に小さく前記動力伝達効率ηが極大値となる値の組み合わせであるようにしてもよい。
【0028】
また、本発明の一態様に係る遊星歯車装置において、前記動力伝達効率ηは、歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)および前記第1の遊星歯車機構と前記第2前記動力伝達効率ηは、歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせで表される場合、前記歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)および前記中心軸間距離係数(X)の組み合せの中から選び出した前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大となる値の組み合わせであり、または、歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)、前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)、および前記第1の遊星歯車機構と前記第2の遊星歯車機構の軸間距離を転位する量である中心軸間距離係数(X)の組み合わせで表される場合、前記歯車の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)および前記転位係数(xp1、xp2、X)の組み合せの中から選び出した前記動力伝達効率ηが最大化又は準最大となる値の組み合わせであるようにしてもよい。
【0029】
また、本発明の一態様に係る遊星歯車装置において、前記動力伝達効率η(xp1,xi1,xp2,xi2,X)が、η=η・ηであり、歯数zikの内歯車からなる内歯車Iの前記動力伝達効率ηは、次式(数1)で表され、
【数4】
JP0006782494B2_000005t.gif
前記式(数1)において、添え字kは夫々の遊星歯車機構の歯車対を示し、前記μは前記内歯車Iと前記遊星歯車Pの間の摩擦係数であり、前記ε0kは2つの前記内歯車Iと前記遊星歯車Pのかみ合い率を示し、
前記式(数1)において、ε0kは次式(数2)で表され、
【数5】
JP0006782494B2_000006t.gif
前記式(数1)において、前記ε1kは近寄りかみ合い率であり、前記ε2kは遠のきかみ合い率であり、
前記式(数2)において、ε1k、ε2kは次式(数3)で表され、
【数6】
JP0006782494B2_000007t.gif
前記式(数1)において、前記aWkはかみ合い圧力角、前記azpk、前記azikは夫々歯先圧力角であり、次式(数4)で表され、
【数7】
JP0006782494B2_000008t.gif
前記式(数4)において、前記rは前記内歯車I及び前記遊星歯車Pの中心軸間の距離であり、前記mはモジュールであり、前記aは転位する前の基準圧力角であり、前記daik、前記dapkは夫々、前記内歯車I及び前記遊星歯車Pの歯先円直径であり、前記dbik、前記dbpkは夫々、前記内歯車I及び遊星歯車Pの基準円直径であり、次式(数5)で表され、
【数8】
JP0006782494B2_000009t.gif
前記式(数5)において、前記係数xinは前記歯車対P、Iと前記歯車対P、Iとの軸間距離を合わせるための転位係数であり、前記係数xc1、xc2は夫々、前記歯車対P1、I及び前記歯車対P、Iの軸間距離を転位量Xだけ変化させることにより生じる各歯車対の影響を表す転位係数であり、前記転位係数xp1、xp2、xi1、xi2との間に、次式(数6)の関係があり、
【数9】
JP0006782494B2_000010t.gif
前記式(数)において、前記inv(a)は、インボリュート関数であるようにしてもよい。
【0030】
また、本発明の一態様に係る遊星歯車装置において、前記遊星歯車機構は、太陽歯車を有しない構成であるようにしてもよい。
【0031】
また、本発明の一態様に係る遊星歯車装置において、前記遊星歯車機構は、太陽歯車を含む構成であることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置。
【0032】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る遊星歯車装置の設計プログラムは、内歯車Iと、前記内歯車Iに噛合し且つ前記内歯車の周方向に公転運動する遊星歯車Pと、歯数zs1の太陽歯車S1と、から構成され、キャリアを共有する第1の遊星歯車機構及び第2の遊星歯車機構であって、前記第1の遊星歯車機構を構成する第1遊星歯車の歯数がzp1、前記第2の遊星歯車機構を構成する第2遊星歯車の歯数がzp2、前記第1遊星歯車の転位係数がxp1、それに係合し前記第1の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi1、前記第2遊星歯車の転位係数がxp2、それに係合し前記第2の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi2、前記転位係数xp1、xi1、xp2、xi2を含む遊星歯車装置の動力伝達効率がηであり、前記太陽歯車S1の転位係数がxs1である前記遊星歯車装置を設計するコンピュータに、生成可能な歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組を生成するステップと、生成した前記歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組から最初の組を設定するステップと、ベクトルx=(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)について初期値を与えるステップと、勾配ベクトルv=(∂η/∂xs1、∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2)を求めるステップと、v・q>0を満たすベクトルqを選ぶステップと、前記ベクトルxの更新量γqが十分小さくなったか否かを判別するステップと、前記更新量γqが十分小さくなっていないと判別した場合、前記ベクトルxにγqを加算して更新するステップと、更新量γqが十分小さくなったと判別した場合、前記歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせのうち、前記動力伝達効率ηが最大又は準最大となる転位係数の組み合わせを選択するステップと、前記動力伝達効率ηが最大となる選択した前記歯車数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせを出力するステップと、を実行させる。
【0033】
上記目的を達成するため、遊星歯車装置を設計するコンピュータに、内歯車Iと、前記内歯車Iに噛合し且つ前記内歯車の周方向に公転運動する遊星歯車Pと、から構成され、キャリアを共有する第1の遊星歯車機構及び第2の遊星歯車機構であって、前記第1の遊星歯車機構を構成する第1遊星歯車の歯数がzp1、前記第2の遊星歯車機構を構成する第2遊星歯車の歯数がzp2、前記第1遊星歯車の転位係数がxp1、それに係合し前記第1の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi1、前記第2遊星歯車の転位係数がxp2、それに係合し前記第2の遊星歯車機構を構成する内歯車の転位係数がxi2、前記転位係数xp1、xi1、xp2、xi2を含む遊星歯車装置の動力伝達効率がηであり、前記第1の遊星歯車機構と前記第2の遊星歯車機構の軸間距離を転位する量である中心軸間距離係数がXcである前記遊星歯車装置を設計するコンピュータに、生成可能な歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組を生成するステップと、生成した前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組から最初の組を設定するステップと、ベクトルx=(xp1、xp2、xi1、xi2)またはベクトルx=(xp1、xp2、X)について適当な初期値を与えるステップと、勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2)または勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂X)を求めるステップと、v・q>0を満たすベクトルqを選ぶステップと、前記ベクトルxの更新量γqが十分小さくなったか否かを判別するステップと、前記更新量γqが十分小さくなっていないと判別した場合、前記ベクトルxに前記更新量γqを加算して更新するステップと、前記更新量γqが十分小さくなったと判別した場合、前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせ、または前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、X)の組み合わせのうち、前記動力伝達効率ηが最大又は準最大となる転位係数の組み合わせを選択するステップと、前記動力伝達効率ηが最大となる、選択した前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせ、または選択した前記歯車数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と前記転位係数(xp1、xp2、X)の組み合わせを出力するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、比較的低コストで製造し得る簡易な構造を有し、100:1を超える高い減速比を比較的容易に実現するとともに、歯車の全段数を2段に設定し且つ伝達効率を向上することができる小型且つ軽量な遊星歯車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る複合遊星歯車機構の構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す複合遊星歯車機構の変形例を示す概念図である。
【図3】図1に示す複合遊星歯車機構の構造を概略的に示す正面図及び斜視図である。
【図4】内歯車及び遊星歯車のかみ合い関係を示す概念図である。
【図5】速比を求めるための重ね合わせ法の計算結果を示す図表である。
【図6】(A)は、転位係数と動力伝達効率との関係を示す線図であり、(B)は、歯車対の軸間距離の転位量と動力伝達効率との関係を示す線図である。
【図7】転位係数を最適化して伝達効率を最大化した結果を示す図表である。
【図8】減速比約50の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。
【図9】減速比約100の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。
【図10】減速比約150の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。
【図11】減速比約200の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。
【図12】本実施形態に係る複合遊星歯車機構の他の構成を示す概念図である。
【図13】図12に示す複合遊星歯車機構の他の構造を概略的に示す正面図及び斜視図である。
【図14】複合遊星歯車機構Gの設計装置の構成例である。
【図15】太陽歯車を有する構成の複合遊星歯車機構Gの設計手順例を示すフローチャートである。
【図16】太陽歯車を有していない構成の複合遊星歯車機構Gの設計手順例を示すフローチャートである。
【図17】太陽歯車、遊星歯車、内歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構に関し、従来の構成を示す概念図である。
【図18】太陽歯車、遊星歯車、内歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構に関し、他の従来構成を示す概念図である。
【図19】太陽歯車、遊星歯車、内歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構を複数組合わせてなる複合遊星歯車機構に関し、従来の構成を示す概念図である。
【図20】内歯車を備えず、太陽歯車、遊星歯車及びキャリアから構成される遊星歯車機構を複数組合わせてなる複合遊星歯車機構に関し、従来の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。

【0037】
図1は、本実施形態に係る複合遊星歯車機構の構成を示す概念図であり、図2は、図1に示す複合遊星歯車機構の変形例を示す概念図である。また、図3は、図1に示す複合遊星歯車機構の構造を概略的に示す正面図及び斜視図である。また、図3(A)は、図1に示す複合遊星歯車機構の構造を概略的に示す正面図であり、図3(B)は、図1に示す複合遊星歯車機構の構造を概略的に示す斜視図である。

【0038】
図1及び図2には、内歯車I1、I2を用いた構成の複合遊星歯車機構G(2K-H型)が示されている。複合遊星歯車機構Gは、内歯車I1、I2と、共用のキャリアHと、キャリアHによって回転可能に支承された遊星歯車P1、P2とから構成されている。遊星歯車P1、P2は、中心軸を共有し且つ異なる歯数を有する。遊星歯車P1、P2は、一体的に回転する。このような2K-H型複合遊星歯車機構を例にとり、本実施形態による動力伝達効率ηの最適化の方法を説明する。

【0039】
図1に示す複合遊星歯車機構Gの構造が、図3に概略的に示されている。図3に示すように、内歯歯車Aは、内歯車I1、I2を備えている。第1の遊星歯車機構Bは、遊星歯車P1(第1遊星歯車)と遊星歯車P2(第1遊星歯車)を備えている。第2の遊星歯車機構Cは、遊星歯車P1(第1遊星歯車)と遊星歯車P2(第1遊星歯車)を備えている。キャリアHは、周方向に間隔を隔てて配置された複数の支軸Jを支持する。各支軸Jは、軸受(図示せず)によって第1の遊星歯車機構Bと第2の遊星歯車機構Bそれぞれの遊星歯車P1、P2を同心状且つ回転可能に支承する。第1の遊星歯車機構Bと第2の遊星歯車機構Cそれぞれの遊星歯車P1、P2は夫々、平歯車からなる内歯車I1、I2に噛合する。即ち、第1の遊星歯車機構Bと第2の遊星歯車機構Cそれぞれの遊星歯車P1、P2は共用のキャリアHによって回転可能に支承され、内歯車I1、I2に噛合して公転運動する。例えば、回転駆動源の出力軸(図示せず)がキャリアHに一体的に連結され、被駆動系機器の動力伝達軸(図示せず)が内歯車I1に一体的に連結される。キャリアH、出力軸及び動力伝達軸は、回転中心軸線X-Xを中心に回転する。また、遊星歯車P1、P2は、遊星歯車装置全体を2段歯車機構に構成すべく、共通の回転中心軸線Lを中心に一体的に回転するように中心軸を共有し又は中心軸同士を一体的に連結され、或いは、共通の回転中心軸線Lを中心に一体的に回転するように互いに一体化している。

【0040】
このように内歯車I1、I2を用いることにより、第1の遊星歯車機構Bと第2の遊星歯車機構Bそれぞれの遊星歯車P1、P2の公転半径を縮小し得ることから、キャリアHが高速回転する際に遊星歯車P1、P2に作用する遠心力を低減することができるので、遊星歯車P1、P2を支承する軸受(図示せず)のラジアル負荷を低減することが可能となる。また、内歯車I1、I2を用いた複合遊星歯車機構Gによれば、相対的に直径が大きい回転要素、即ち、内歯車I1、I2によって回転駆動源のトルクを被駆動系機器に出力することができる。従って、このような構成の複合遊星歯車機構Gは、大トルクを伝達する動力伝達系に好適に使用し得る。

【0041】
上記構成の遊星歯車機構Gにおいて、内歯車I1の歯数をzi1、内歯車I2の歯数をzi2、遊星歯車P1の歯数をzp1、遊星歯車P2の歯数をzp2、内歯車I1及び遊星歯車P1のモジュールをm、内歯車I2及び遊星歯車P2のモジュールをm、遊星歯車P1、P2の個数を2N(Nは自然数。以下、同じ。)に設定し、内歯車I2を固定し、キャリアHを入力手段、内歯車I1を出力手段として使用すると、遊星歯車機構Gの減速比は、次式(4)で表される。

【0042】
【数10】
JP0006782494B2_000011t.gif

【0043】
即ち、内歯車I1と内歯車I2のピッチ円半径の差を非常に小さい値に設定することができれば、極めて大きな減速比が得られる。ここで、第2の遊星歯車機構(遊星歯車P2、内歯車I2)を転位させる場合の同軸条件は、次式(5)で表される。

【0044】
【数11】
JP0006782494B2_000012t.gif

【0045】
式(5)におけるyは歯車の転位による中心距離増加係数であり、これは次式(6)で与えられる数値である。

【0046】
【数12】
JP0006782494B2_000013t.gif

【0047】
式(6)において、αは標準歯車の圧力角であり、αは転位歯車の圧力角であり、これらの圧力角は次式(7)を満たす値ある。

【0048】
【数13】
JP0006782494B2_000014t.gif

【0049】
また、式(7)において、xi2、xp2は夫々、第2の遊星歯車機構を構成する内歯車I2及び遊星歯車P2の転位係数である。また、inv(α)は、インボリュート関数である。

【0050】
組立条件に関しては、遊星歯車P1及び遊星歯車P2の歯の位相差を以下のように設定することで成立する。即ち、N個の遊星歯車P1を内歯車I1の内側において周方向に等間隔に配置した場合、内歯車I1と、n番目の遊星歯車P1との噛合い位相(ピッチ)は、内歯車I1と、0番目の遊星歯車1との噛合い位相を基準として、次式(8)で表される。

【0051】
【数14】
JP0006782494B2_000015t.gif

【0052】
同様に、内歯車I2とn番目の遊星歯車P2との噛合い位相は、内歯車I2と0番目の遊星歯車P2との噛合い位相を基準として、次式(9)で表される。

【0053】
【数15】
JP0006782494B2_000016t.gif

【0054】
従って、n番目の遊星歯車P1の位相と遊星歯車P2の位相とが夫々、次式(10)に適合するように遊星歯車P1、P2を組み立てれば良い。

【0055】
【数16】
JP0006782494B2_000017t.gif

【0056】
また、隣接条件は次式(11)によって表される。

【0057】
【数17】
JP0006782494B2_000018t.gif

【0058】
本実施形態において、例えばモジュールm=1、モジュールmにダイアメトラルピッチ(DP)を用いて、m=1.154545(DP22)に設定し、第2の遊星歯車機構(遊星歯車P2、太陽歯車S2)をダイヤメトラルピッチ歯車によって構成するとともに、同軸条件を充足すべく、第2の遊星歯車機構を転位させることにより、zi1=90、zi2=80、zP1=28、zP2=25、N=5、α=20deg、x-x=-0.586035の組み合せを採用することが可能となり、この結果、減速比=1/225が得られる。このような減速比は、従来の遊星歯車機構では、到底得られなかった極めて高い減速比である。なお、xは-0.2930175であり、xは、0.2930175である。

【0059】
以上説明したように、上記構成の複合遊星歯車機構Gによれば、1/200を超えるような極めて高い減速比を2段歯車機構で達成し得る。しかしながら、このように極端に高い減速比を確保する場合、2段の歯車機構で構成したので動力損失が比較的少ないとはいっても、やはり、動力伝達効率ηが比較的大きく低下するという問題が生じる。このため、本発明に係る複合遊星歯車機構Gにおいては、動力伝達効率ηを向上すべく、転位係数の最適化による動力伝達効率ηの最大化が図られる。以下、転位係数の最適化と、動力伝達効率η(以下、「伝達効率η」という。)の最大化について説明する。

【0060】
(1)遊星歯車機構の伝達効率の導出について
(1-1) 内歯車対の伝達効率
複合遊星歯車機構Gの全体的な伝達効率ηを計算する前に、平歯車及び内歯車の伝達効率計算法について説明する。一般に、歯数zpkの平歯車からなる遊星歯車Pと、歯数zikの内歯車からなる内歯車Iの伝達効率ηは、次式(12)で表される。

【0061】
【数18】
JP0006782494B2_000019t.gif

【0062】
複合遊星歯車機構Gは2組の遊星歯車機構より構成されるので、式(12)における歯数zpk、zik等の添字kはそれぞれの遊星歯車機構の歯車対を示し、k=1又は2である。

【0063】
式(12)において、μは内歯車Iと遊星歯車Pの間の摩擦係数であり、ε0kは内歯車Iと遊星歯車Pのかみ合い率を示す。かみ合い率ε0kは、近寄りかみ合い率ε1k及び遠のきかみ合い率ε2kにより、次式(13)に従って計算することができる。

【0064】
【数19】
JP0006782494B2_000020t.gif

【0065】
また、近寄りかみ合い率ε1k及び遠のきかみ合い率ε2kは次式(14)により表される。式(14)において、awkは内歯車Iと遊星歯車Pのかみ合い圧力角であり、azpk及びazikは夫々、遊星歯車P及び内歯車Iの歯先圧力角を示す。

【0066】
【数20】
JP0006782494B2_000021t.gif

【0067】
式(14)におけるかみ合い圧力角awk及び歯先圧力角azpk、azikは夫々、次式(15)により表される。

【0068】
【数21】
JP0006782494B2_000022t.gif

【0069】
式(15)において、rは内歯車I及び遊星歯車Pの中心軸間の距離(内歯車I1及び遊星歯車P1と内歯車I2及び遊星歯車P2で共通)であり、mはモジュールであり、aは(転位する前の)基準圧力角である。また、上式において、daik、dapkは夫々、内歯車I及び遊星歯車Pの歯先円直径であり、dbik、dbpkは夫々、内歯車I及び遊星歯車Pの基準円直径である。図4は、内歯車I及び遊星歯車Pのかみ合い関係を示す概念図である。図4には、上記パラメータrck、awk、daik、dapk、dbik、dbpkの関係が具体的に示されている。(ただし、添え字kは省略されている。)

【0070】
(1-2)遊星歯車機構の伝達効率
一般に、遊星歯車機構の伝達効率ηは、次式(16)により表される。式(16)において、Mout、Minは夫々、出力トルク及び入力トルクであり、ωout、ωinは夫々、出力角速度及び入力角速度である。式(16)のとおり、伝達効率ηは、トルク比及び速比の掛け算によって求められる。従って、速比及びトルク比を夫々演算することにより、伝達効率ηを求めることができる。

【0071】
【数22】
JP0006782494B2_000023t.gif

【0072】
(i)速比の計算
図5は、速比を求めるための重ね合わせ法の計算結果を示す図表である。図5には、図1に示す複合遊星歯車機構Gにおいて、キャリアHを入力要素、内歯車I2を固定要素、内歯車I1を出力要素に夫々設定して重ね合わせ法を適用した計算結果が示されている。速比は、図5に示す計算結果より、次式(17)で表すことができる。

【0073】
【数23】
JP0006782494B2_000024t.gif

【0074】
なお、式(17)において、ωzi1は内歯車I1の角速度、ωcarrierはキャリアHの回転角速度、nは、回す回数である。

【0075】
(ii)トルク比
式(17)より明らかなとおり、求めるトルク比Mout/Minは、ωzi1/ωcarrierに等しいが、ωzi1/ωcarrierを直接求めることは困難である。しかし、図5の3行目に注目し、キャリアHを固定要素、内歯車I2を入力要素、内歯車I1を出力要素に夫々設定すると、伝達効率ηは、次式(18)で表される。なお、Moutは出力トルクであり、Minは入力トルクであり、McarrierはキャリアHのトルクであり、Mi1は内歯車I1のトルクであり、Mi2は内歯車I2のトルクである。

【0076】
【数24】
JP0006782494B2_000025t.gif

【0077】
このとき、内歯車I1、内歯車I2、キャリアHの各トルクは、i>1の場合、次式(19)の関係を有する。ここで、iは、

【0078】
【数25】
JP0006782494B2_000026t.gif

【0079】
=ωi1/ωi2となるので、トルク比Mout/Min=Mi1/Mcarrierは、次式(20)により計算することができる。

【0080】
【数26】
JP0006782494B2_000027t.gif

【0081】
(iii)全体効率

【0082】
上記式(16)、式(17)、式(20)に基づき、複合遊星歯車機構Gの伝達効率ηは、次式(21)で求めることができる。また、η、ηは、上記式(12)より求めることができる。

【0083】
【数27】
JP0006782494B2_000028t.gif

【0084】
(2)伝達効率改善方法

【0085】
本発明者らは、上述した図1又は図2における複合遊星歯車機構Gの伝達効率ηを改善するためには、複合遊星歯車機構Gを構成する4種の歯車(遊星歯車P1,P2及び内歯車I1,I2)の夫々の転位係数xp1、xp2、xi1、xi2に関し下記のように最適化すればよいことを見出した。以下、それを説明する。

【0086】
(2-1)転位係数の影響

【0087】
まず、伝達効率ηに対する転位係数xp1、xp2、xi1、xi2の影響を考察する。各転位係数xp1、xp2、xi1、xi2の間には、次式(22)のような関係が常に成り立つ。

【0088】
【数28】
JP0006782494B2_000029t.gif

【0089】
式(22)において、係数xinは、歯車対P1、I1と歯車対P2、I2との軸間距離を合わせるための転位係数であり、係数xc1、xc2は夫々、歯車対P1、I1及び歯車対P2、I2の軸間距離を転位量X(中心軸間距離係数)だけ変化させることにより生じる各歯車対の影響を表す転位係数である。これら転位係数の変化に相応して、図4に示す内歯車I及び遊星歯車Pの歯先円直径daik、dapkや、基準円直径dbik、dbpkが変化する。これは、次式(23)により表すことができる。なお、下式において、inv(a)は、インボリュート関数である。

【0090】
【数29】
JP0006782494B2_000030t.gif

【0091】
(2-2)転位係数の最適化

【0092】
上記の解析により、式(23)、式(22)からdaik、dapk、dbik、dbpkを求め、それを用いて式(15)からawk、azpk、azikを求め、それを用いて式(14)からε1k、ε2kを求め、それを用いて式(13)からε0kを求め、それを用いて式(12)からηを求め、それを用いて伝達効率ηを式(21)から計算することができる。このように、複合遊星歯車機構Gが3K型の場合、複合遊星歯車機構Gの伝達効率ηは、歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせを用いた変数関数(少なくとも汎関数)であることがわかる。または、複合遊星歯車機構Gが2K-H型の場合、複合遊星歯車機構Gの伝達効率ηは、歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組と中心軸間距離係数Xの組み合わせを用いた変数関数(少なくとも汎関数)であることがわかる。従って、次式(24)の関数により、伝達効率ηが最大となるような最適化問題を解くことによって、複合遊星歯車機構Gの最大効率を求めることができることを見出した。なお、zs1は太陽歯車S1の歯数であり、xs1は太陽歯車S1の転位係数である。

【0093】
【数30】
JP0006782494B2_000031t.gif

【0094】
式(24)において、Xは、歯車対P1、I1及び歯車対P2、I2の軸間距離の転位量である。
また、X、軸間距離に関する係数xc1、xc2には、次式(25)の関係がある。

【0095】
【数31】
JP0006782494B2_000032t.gif

【0096】
例えば、まずベクトルx=(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)、またはベクトルx=(xp1、xp2、xi1、xi2)について適当な初期値を与える。次に、勾配ベクトルv=(∂η/∂xs1、∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2)、または、勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2、∂η/∂X)を計算し、v・q>0を満たすベクトルqを選び、x:=x+γqと更新する。ただし、γは正の実数であり、上記不等式を満足するように調整する。更新されたzの値の点における勾配ベクトルvを再計算し、それに合わせてqを選び、xを更新する、というステップを、xの更新量(γq)が十分小さくなるまで繰り返す。以上により、伝達効率ηを最大にする歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせ、または歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組と転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)の組と中心軸間距離係数Xの組み合わせを求めることができ、これを複合遊星歯車機構Gの構成(設計値)にするとよい。なお、設計手順については、後述する。

【0097】
図6(A)は、転位係数xp1、xp2の変化と関連した伝達効率ηの変化を示す線図である。図6(B)は、歯車対P1、I1及び歯車対P2、I2の軸間距離の転位量Xの変化(調整)と関連した伝達効率ηの変化を示す線図である。図6(A)には、転位係数xp1の変化に関連した伝達効率ηの変化と、転位係数xp2の変化に関連した伝達効率ηの変化とが示されている。前者の条件(転位係数xp1可変)では、転位係数xp2の値は0に固定され、後者の条件(転位係数xp2可変)では、転位係数xp1の値は0に固定されており、従って、転位係数xp1、xp2は夫々、単独で伝達効率ηの改善に寄与する因子であり、各転位係数xp1、xp2には、伝達効率ηを最大化する各々の最適値が存在する。また、図6(B)には、転位量Xの変化に関連した伝達効率ηの変化が示されている。転位量Xにも又、伝達効率ηを最大化する最適値が存在する。なお、前述の式(22)、式(23)から明らかなとおり、転位量Xは、内歯車I1、I2の転位係数xi1、xi2と相関関係を有するので、転位係数xi1、xi2にも又、伝達効率ηを最大化する各々の最適値が存在する。

【0098】
(2-3)最適化による伝達効率改善結果

【0099】
次に、転位係数xp1、xp2、xi1、xi2を可変因子として変化させ、伝達効率ηを最大化する転位係数xp1、xp2、xi1、xi2の各数値を求め、これにより、転位係数xp1、xp2、xi1、xi2及び伝達効率ηを最適化又は最大化する例を説明する。
【実施例1】
【0100】
図7は、複合遊星歯車機構Gに関し、転位係数xp1、xp2、xi1、xi2を最適化して伝達効率ηを最大化した結果を示す図表である。伝達効率ηの計算では、モジュールm=m=1の設定において、第2の遊星歯車機構(遊星歯車P1、内歯車I2)のモジュールmがダイアメトラルピッチ(DP)に設定変更され、m=1、m=25.4/24=1.0583(DP24)に設定された。また、摩擦係数μは、μ=0.02に設定された。
【実施例1】
【0101】
図7に示す「最適化前」は、軸間距離を一致させる最低限の転位を内歯車I2のみに適用したにすぎず(xi2=xin)、伝達効率ηの向上を意図した転位は、全く行っていないことを意味する(従って、xp1=xp2=xi1=0)。他方、図7に示す「最適化後」は、伝達効率ηを最大化するように転位係数xp1、xp2、xi1、xi2の値を最適化したことを意味する。最適化した転位係数xp1、xp2、xi1、xi2の値は、図7の「転位係数」の欄に示されている。また、「最適化前」及び「最適化後」の伝達効率ηの値が、図7の「動力伝達効率」の欄に記載されている。図7に示すように、動力伝達効率は、例えば、目標減速比が50の場合に最適化前の92.0583から最適化後の95.91156に最適化され、目標減速比が200の場合に最適化前の70.7996から最適化後の85.09962に最適化された。
【実施例2】
【0102】
図8~図11には、目標とする減速比を50、100、150、200に設定し、これら4種の目標減速比近傍の各帯域において、伝達効率ηに影響する因子の組み合せを相違せしめた多数の設計例が示されている。図8は、減速比約50の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。図9は、減速比約100の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。図10は、減速比約150の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。図11は、減速比約200の複合遊星歯車機構に関し、最適化前及び最適化後の動力伝達効率の相違を示す線図である。なお、図7の図表に示された設計例は、図8~図11に示す多数の設計例より、比較的高い伝達効率ηが得られる2例を帯域毎に選択したものである。
【実施例2】
【0103】
図8~図11に示す如く、本発明に従って最適化を図ることにより、伝達効率ηが概ね確実に改善しており、概ね5~20%程度の効率改善効果が得られた。具体的には、目標減速比50近傍の帯域では、図8に示す如く、伝達効率ηが概ね90%を超えており、一部の設計例では、95%を超えており、目標減速比100近傍の帯域では、図9に示す如く、伝達効率ηが概ね85%を超えており、一部の設計例では、90%を超えている。また、目標減速比150近傍の帯域では、図10に示す如く、伝達効率ηが概ね75%を超えており、一部の設計例では、85%を超えており、目標減速比200近傍の帯域では、図11に示す如く、伝達効率ηが概ね70%を超えており、一部の設計例では、80%を超えている。
【実施例2】
【0104】
上記においては、内歯車I2を固定し、キャリアHを入力手段、内歯車I1を出力手段とし、i=(zi2/zp2)・(zp1/zi1)>1とした場合を例にとって本発明に係る最適化方法を説明したが、i<1の場合には、式(21)を、次式(26)
【実施例2】
【0105】
【数32】
JP0006782494B2_000033t.gif
【実施例2】
【0106】
に置き換え、上述した式(24)の関数により、伝達効率ηが最大となるような最適化問題を解くことによって、複合遊星歯車機構Gの最大効率を求める処理を行えばよい。
【実施例2】
【0107】
また、内歯車I1を固定し、キャリアHを入力手段、内歯車I2を出力手段とし、i>1とした場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(27)
【実施例2】
【0108】
【数33】
JP0006782494B2_000034t.gif
【実施例2】
【0109】
に置き換えて行えばよい。
【実施例2】
【0110】
また、内歯車I1を固定し、キャリアHを出力手段、内歯車I2を入力手段とし、i>1とした場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(28)
【実施例2】
【0111】
【数34】
JP0006782494B2_000035t.gif
【実施例2】
【0112】
に置き換えて行えばよい。
【実施例2】
【0113】
また、内歯車I1を固定し、キャリアHを入力手段、内歯車I2を出力手段とし、i<1とした場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(29)
【実施例2】
【0114】
【数35】
JP0006782494B2_000036t.gif
【実施例2】
【0115】
に置き換えて行えばよい。
【実施例2】
【0116】
また、内歯車I1を固定し、キャリアHを出力手段、内歯車I2を入力手段とし、i<1とした場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(30)
【実施例2】
【0117】
【数36】
JP0006782494B2_000037t.gif
【実施例2】
【0118】
に置き換えて行えばよい。
【実施例2】
【0119】
上記では、図1、図2のような2K-H型の複合遊星歯車機構を例にとり、本願発明の最適化方法を説明したが、図12に示したような通常3K型と呼ばれる複合遊星歯車機構についても適用可能である。図12は、本実施形態に係る複合遊星歯車機構の他の構成を示す概念図である。図13は、図12に示す複合遊星歯車機構の他の構造を概略的に示す正面図及び斜視図である。また、図13(A)は、図12に示す複合遊星歯車機構の他の構造を概略的に示す正面図であり、図13(B)は、図12に示す複合遊星歯車機構の他の構造を概略的に示す斜視図である。
【実施例2】
【0120】
なお、図12、図13において、符号I1とI2は内歯車を示し、符号S1は太陽歯車を示し、符号P1とP2は遊星歯車を示し、符号Jは支軸を示し、符号Hはキャリアを示している。
図13に示すように、内歯歯車Aは、内歯車I1、I2を備えている。第1の遊星歯車機構Bは、遊星歯車P1(第1遊星歯車)と遊星歯車P2(第1遊星歯車)を備えている。第2の遊星歯車機構Cは、遊星歯車P1(第1遊星歯車)と遊星歯車P2(第1遊星歯車)を備えている。第3の遊星歯車機構Dは、遊星歯車P1(第1遊星歯車)と遊星歯車P2(第1遊星歯車)を備えている。キャリアHは、周方向に間隔を隔てて配置された複数の支軸Jを支持する。各支軸Jは、軸受(図示せず)によって第1の遊星歯車機構Bと第2の遊星歯車機構Cと第3の遊星歯車機構Dそれぞれの遊星歯車P1、P2を同心状且つ回転可能に支承する。第1の遊星歯車機構Bと第2の遊星歯車機構Cと第3の遊星歯車機構Dそれぞれの遊星歯車P1、P2は夫々、平歯車からなる内歯車I1、I2に噛合する。また、遊星歯車P1、P2は、遊星歯車装置全体を2段歯車機構に構成すべく、共通の回転中心軸線Lを中心に一体的に回転するように中心軸を共有し又は中心軸同士を一体的に連結され、或いは、共通の回転中心軸線Lを中心に一体的に回転するように互いに一体化している。
【実施例2】
【0121】
通常3K型と呼ばれる複合遊星歯車機構において、内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を入力手段、内歯車I2を出力手段とし、i=zi1/zs1>1かつi=(zi2/zp2)・(zp1/zi1)>1の場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(31)
【実施例2】
【0122】
【数37】
JP0006782494B2_000038t.gif
【実施例2】
【0123】
に置き換えれば同様に最適化できる。
【実施例2】
【0124】
通常3K型と呼ばれる複合遊星歯車機構において、内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を出力手段、内歯車I2を入力手段とし、i=zi1/zs1>1かつi=(zi2/zp2)・(zp1/zi1)>1の場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(32)
【実施例2】
【0125】
【数38】
JP0006782494B2_000039t.gif
【実施例2】
【0126】
に置き換えれば同様に最適化できる。
【実施例2】
【0127】
通常3K型と呼ばれる複合遊星歯車機構において、内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を入力手段、内歯車I2を出力手段とし、i=zi1/zs1<1かつi=(zi2/zp2)・(zp1/zi1)<1の場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(33)
【実施例2】
【0128】
【数39】
JP0006782494B2_000040t.gif
【実施例2】
【0129】
に置き換えれば同様に最適化できる。
【実施例2】
【0130】
通常3K型と呼ばれる複合遊星歯車機構において、内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を出力手段、内歯車I2を入力手段とし、i=zi1/zs1<1かつi=(zi2/zp2)・(zp1/zi1)<1の場合、gを減速比、ηを伝達効率として、式(21)を、次式(34)
【実施例2】
【0131】
【数40】
JP0006782494B2_000041t.gif
【実施例2】
【0132】
に置き換えれば同様に最適化できる。
【実施例2】
【0133】
次に、動力伝達効率が最大となるように複合遊星歯車機構Gを設計する方法例を説明する。
図14は、複合遊星歯車機構Gの設計装置100の構成例である。図14に示すように、設計装置100は、取得部101、演算部102、記憶部103、及び出力部104を含んで構成される。設計装置100は、例えば、パーソナルコンピュータである。
【実施例2】
【0134】
取得部101は、複合遊星歯車機構Gの設定値を取得し、取得した設定値を演算部102に出力する。取得部101には、キーボード、マウス、タッチパネルセンサー等が接続されていてもよく、USB(Universal Serial Bus)端子、通信部等であってもよい。
【実施例2】
【0135】
演算部102は、取得部101が出力する設定値を、記憶部103が記憶する式に代入して、動力伝達効率が最大となる転位計数等を算出する。演算部102は、算出した転位計数等を出力部104に出力する。演算部102は、例えばCPU(中央演算装置)である。
【実施例2】
【0136】
記憶部103は、前述した各式、初期値、複合遊星歯車機構Gの設計プログラム等を記憶する。記憶部103は、RAM(Random access memory)、ROM(Read Only Member)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)である。
【実施例2】
【0137】
出力部104は、演算部102が出力する転位計数等を出力する。出力部104は、例えば、表示装置、印刷装置、通信装置等である。
【実施例2】
【0138】
ここで、設定値について説明する。
設定値とは、例えば以下である。
I.複合遊星歯車機構Gが、2K-H型である/3K型である。
II.内歯車I2を固定し、キャリアHを入力手段、内歯車I1を出力手段
III.内歯車I1を固定し、キャリアHを入力手段、内歯車I2を出力手段
IV.内歯車I1を固定し、キャリアHを出力手段、内歯車I2を入力手段
V.内歯車I1を固定し、キャリアHを入力手段、内歯車I2を出力手段
VI.内歯車I1を固定し、キャリアHを出力手段、内歯車I2を入力手段
なお、II~VIの設定値は、2K-H型の場合であり、かつ5つのうちのいずれか1つである。
VII.内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を入力手段、内歯車I2を出力手段
VIII.内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を出力手段、内歯車I2を入力手段
IX.内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を入力手段、内歯車I2を出力手段
X.内歯車I1を固定し、太陽歯車S1を出力手段、内歯車I2を入力手段
なお、VII~Xの設定値は、3K型の場合であり、かつ5つのうちのいずれか1つである。
XI.内歯車I1の歯数zi1、内歯車I2の歯数zi2、遊星歯車P1の歯数zp1、遊星歯車P2の歯数zp2、内歯車I1及び遊星歯車P1のモジュールm、内歯車I2及び遊星歯車P2のモジュールm、遊星歯車P1、P2の個数
【実施例2】
【0139】
次に、設計方法例を説明する。まず、太陽歯車S1を有する構成の複合遊星歯車機構Gの設計方法を説明する。
図15は、太陽歯車S1を有する構成の複合遊星歯車機構Gの設計手順例を示すフローチャートである。
【実施例2】
【0140】
(ステップS1)利用者は、複合遊星歯車機構Gの設定値を入力又は選択する。取得部101は、設定値を取得し、取得した設定値を演算部102に出力する。
【実施例2】
【0141】
(ステップS2)演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組を生成する。
(ステップS3)演算部102は、組み合わせ可能な最初の歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組を設定する。
【実施例2】
【0142】
(ステップS4)演算部102は、ベクトルx=(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)(転位係数)に適当な初期値を与える。なお、適当な初期値は、記憶部103が記憶している。
【実施例2】
【0143】
(ステップS5)演算部102は、勾配ベクトルv=(∂η/∂xs1、∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2)を求める。
【実施例2】
【0144】
(ステップS6)演算部102は、v・q>0を満たすベクトルqを選ぶ。
(ステップS7)演算部102は、xの更新量γqが十分小さくなったか否かを判別する。演算部102は、更新量γqが十分小さくなっていないと判別した場合(ステップS7;NO)、ステップS8に処理を進め、更新量γqが十分小さくなったと判別した場合(ステップ7;YES)、ステップS9に処理を進める。なお、十分小さい場合は、例えば、歯車の加工精度から決まる量に対して十分小さければよい。
【実施例2】
【0145】
(ステップS8)演算部102は、ベクトルxにγqを加算して更新する。更新後、演算部102は、ステップS5の処理に戻す。
【実施例2】
【0146】
(ステップS9)演算部102は、歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の組と対応したベクトルxを記憶部103に記憶させる。処理後、演算部102は、ステップS10に処理を進める。
【実施例2】
【0147】
(ステップS10)演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の次の組み合わせがあるか否かを判別する。演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の次の組み合わせがあると判別した場合(ステップS10;YES)、ステップS11の処理に進める。演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)の次の組み合わせがないと判別した場合(ステップS10;NO)、ステップS12の処理に進める。
【実施例2】
【0148】
(ステップS11)演算部102は、組み合わせ可能な次の組の(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)を設定する。処理後、演算部102は、ステップS4に処理を戻す。
【実施例2】
【0149】
(ステップS12)演算部102は、歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2、)と転位係数の組み合わせであるベクトルx=(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)の組み合わせのうち、動力伝達効率ηが最大又は準最大となる歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)と転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)との組み合わせを選択する。なお、準最大とは、極大値、最大値や極大値を含む許容範囲(例えば90%以上)である。
【実施例2】
【0150】
(ステップS13)演算部102は、動力伝達効率ηを最大にする歯数(zs1、zp1、zp2、zi1、zi2)と転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)との組み合わせを、最適な設計値として出力する。
【実施例2】
【0151】
なお、演算部102は、算出した転位係数を用いて、さらにトルク等を算出するようにしてもよい。
【実施例2】
【0152】
次に、太陽歯車S1を有していない構成の複合遊星歯車機構Gの設計方法を説明する。
図16は、太陽歯車S1を有していない構成の複合遊星歯車機構Gの設計手順例を示すフローチャートである。なお、図15と同じ処理については同じ符号を用いて、説明を省略する。
【実施例2】
【0153】
(ステップS1)利用者は、複合遊星歯車機構Gの設定値を入力又は選択する。取得部101は、設定値を取得し、取得した設定値を演算部102に出力する。
【実施例2】
【0154】
(ステップS102)演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組を生成する。
(ステップS103)演算部102は、組み合わせ可能な最初の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)の組を設定する。
【実施例2】
【0155】
(ステップS104)演算部102は、ベクトルx=(xp1、xp2、xi1、xi2)に適当な初期値を与える。なお、適当な初期値は、記憶部103が記憶している。なお、ベクトルxは、中心軸間距離係数(Xc)に表される(xp1、xp2、X)を用いてもよい。
【実施例2】
【0156】
(ステップS105)演算部102は、勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂xi1、∂η/∂xi2)を求める。または、演算部102は、勾配ベクトルv=(∂η/∂xp1、∂η/∂xp2、∂η/∂X)を求める。演算部102は、ステップS6に処理を進める。
【実施例2】
【0157】
(ステップS6~ステップS9)演算部102は、ステップS6~ステップS9の処理を行う。演算部102は、ステップS10に処理を進める。
【実施例2】
【0158】
(ステップS10)演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)の次の組み合わせがあるか否かを判別する。演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)の次の組み合わせがあると判別した場合(ステップS10;YES)、ステップS111の処理に進める。演算部102は、組み合わせ可能な歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)の次の組み合わせがないと判別した場合(ステップS10;NO)、ステップS112の処理に進める。
【実施例2】
【0159】
(ステップS111)演算部102は、組み合わせ可能な次の組の歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)を設定する。処理後、演算部102は、ステップS104に処理を戻す。
【実施例2】
【0160】
(ステップS112)演算部102は、歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)とベクトルx=(xp1、xp2、xi1、xi2)の組合せのうち、動力伝達効率が最大又は準最大となる歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)と転位係数(xp1、xp2、xi1、xi2)との組み合わせを選択する。なお、準最大とは、極大値、最大値や極大値を含む許容範囲(例えば90%以上)である。
【実施例2】
【0161】
(ステップS113)演算部102は、動力伝達効率ηを最大にする歯数(zp1、zp2、zi1、zi2)と転位係数(xs1、xp1、xp2、xi1、xi2)との組み合わせを、最適な設計値として出力する。
【実施例2】
【0162】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能であり、該変形例又は変更例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【実施例2】
【0163】
例えば、上述した複合遊星歯車機構においては、遊星歯車P1、P2は、遊星歯車機構毎に2又は3個の遊星歯車を周方向に配列した構成のものであるが、単一の遊星歯車により各遊星歯車機構を構成し、或いは、周方向に配列した4個以上の遊星歯車によって各遊星歯車機構を構成することも可能である。
【実施例2】
【0164】
また、遊星歯車の位相差の調整手段として、テーパー嵌合構造等の任意の機構又は構造を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、産業機械、車両、ロボット、OA機器等のような各種機械・機器の駆動系又は動力等伝達系を構成する遊星歯車装置に適用される。本発明の遊星歯車装置は、例えば、多関節構造のロボットに用いられる小型且つ軽量な減速機として、好ましく使用することができる。
【0166】
本発明の遊星歯車装置は、太陽歯車を備えず、遊星歯車に働く遠心力を軽減することができ、しかも、ギア列の段数が最小限のものであるので、比較的低コストで製造することができる。従って、本発明の構成は、実用的な意味において極めて有益である。
【符号の説明】
【0167】
P1,P2…遊星歯車、I1,I2…内歯車、H…キャリア、J…支軸、L…回転中心軸線、G…複合遊星歯車機構、S1…太陽歯車、zs1,zp1,zp2,zi1,zi2…歯数、xs1,xp1,xp2,xi1,xi2…転位係数、X…中心軸間距離係数、η…動力伝達効率、100…設計装置、101…取得部、102…演算部、103…記憶部、104…出力部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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