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明細書 :光学情報検知装置及び顕微鏡システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6537153号 (P6537153)
登録日 令和元年6月14日(2019.6.14)
発行日 令和元年7月3日(2019.7.3)
発明の名称または考案の名称 光学情報検知装置及び顕微鏡システム
国際特許分類 G02B  21/06        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
FI G02B 21/06
G01N 21/64 E
G01N 21/27 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 27
出願番号 特願2018-521751 (P2018-521751)
出願日 平成29年6月7日(2017.6.7)
国際出願番号 PCT/JP2017/021138
国際公開番号 WO2017/213171
国際公開日 平成29年12月14日(2017.12.14)
優先権出願番号 2016113770
優先日 平成28年6月7日(2016.6.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年12月7日(2018.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】小澤 祐市
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
審査官 【審査官】金高 敏康
参考文献・文献 特表2001-511902(JP,A)
特開平04-171415(JP,A)
特開2015-001708(JP,A)
特開2013-167654(JP,A)
特表2015-504177(JP,A)
調査した分野 G02B 21/06
G01N 21/64
G01N 21/27
特許請求の範囲 【請求項1】
第一の光軸に沿って該第一の光軸に直交する方向に集光されている幅寸法よりも大きい長さ寸法に亘り集光されているニードル状スポット光を生成し、該ニードル状スポット光を検知対象物に照射するニードル状スポット光照射部と、
前記検知対象物における前記ニードル状スポット光の照射領域内の前記第一の光軸上の互いに異なる複数の位置から発せられた出射光を、該出射光の第二の光軸に沿って移動するに従って該第二の光軸に交差する受光面における集光位置が前記検知対象物における前記第一の光軸上の前記出射光が出射された前記複数の位置に応じてそれぞれ変化するようにシフトするシフトスポット光に一括で変換するシフトスポット光変換部と、
前記受光面に沿って前記シフトスポット光を受光するシフトスポット光受光部と、
前記シフトスポット光受光部によって受光された前記シフトスポット光から前記出射光の出射位置の光学情報を取得する光学情報取得部と、
を備え
前記シフトスポット光変換部は、互いに異なる前記複数の位置から発せられた前記出射光を、共通の前記第二の光軸に沿って変調することにより前記シフトスポット光に変換する出射光変調部を備えていることを特徴とする光学情報検知装置。
【請求項2】
第一の光軸に沿って該第一の光軸に直交する方向に集光されている幅寸法よりも大きい長さ寸法に亘り集光されているニードル状スポット光を生成し、該ニードル状スポット光を検知対象物に照射するニードル状スポット光照射部と、
前記検知対象物における前記ニードル状スポット光の照射領域内の前記第一の光軸上の互いに異なる複数の位置から発せられた出射光を、該出射光の第二の光軸に沿って移動するに従って該第二の光軸に交差する受光面における集光位置が前記検知対象物における前記第一の光軸上の前記出射光が出射された前記複数の位置に応じてそれぞれ変化するようにシフトするシフトスポット光に一括で変換するシフトスポット光変換部と、
前記受光面に沿って前記シフトスポット光を受光するシフトスポット光受光部と、
前記シフトスポット光受光部によって受光された前記シフトスポット光から前記出射光の出射位置の光学情報を取得する光学情報取得部と、
を備え
前記シフトスポット光は、前記第二の光軸に対して放物線状に湾曲するエアリービームであることを特徴とする光学情報検知装置。

【請求項3】
前記ニードル状スポット光照射部は、
光源と、
前記光源から発せられた光を前記ニードル状スポット光に変換するために前記光源から発せられた光を変調する光変調部と、
前記光変調部によって変調された前記光を前記検知対象物に集光させ、前記ニードル状スポット光を生成するニードル状スポット光生成部と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学情報検知装置。
【請求項4】
前記ニードル状スポット光は、前記第一の光軸上に高光強度部を有するベッセルビームであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光学情報検知装置。
【請求項5】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の光学情報検知装置と、
前記光学情報取得部によって前記シフトスポット光から取得された光学情報に基づいて前記検知対象物に関するイメージ情報を作成するイメージ情報作成部と、
を備えていることを特徴とする顕微鏡システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光学情報検知装置及び顕微鏡システムに関する。本願は、2016年6月7日に、日本に出願された特願2016-113770号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光は、位相がそろったコヒーレント光であり、指向性・単色性に優れ、高輝度であるという特徴を有することから、画像処理・通信・計測・医療をはじめとする様々な分野で応用されている。このようなレーザー光を発するレーザー光源を顕微鏡用の光源として用いたレーザー顕微鏡の一つに、走査型レーザー顕微鏡がある。走査型レーザー顕微鏡は、レーザー光をビームとして走査させて試料(検知対象物)を観察する装置であり、高い光強度を有する光を照射された試料からの蛍光や燐光現象を観察することによって試料を観察する蛍光顕微鏡として利用されることが多い。近年では、走査型レーザー顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡が生体物質の刺激に対する時間応答の解析等に用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、レーザービームを試料に照射するための照射手段がレーザービームを適宜遮断するシャッターとシャッターの開閉を制御する手段とを有する走査型レーザー顕微鏡が開示されている。この走査型レーザー顕微鏡では、シャッターが開く前にレーザービームを走査するための走査手段によってビームの走査が開始され、シャッターが閉じた後も走査が続けられる。
特許文献1に記載の走査型レーザー顕微鏡では、シャッターが開かれてレーザービームが試料に照射される以前にレーザービームの走査が開始される。レーザービームの走査速度はシャッターが開かれるまでの間に所定の速度に達するので、機械的な機構に起因する走査開始時の応答遅れがなくなる。走査手段によってシャッターが閉じられた後もレーザービームの走査が続けられるので、シャッターが開いている間、実質的に画像形成に必要な情報、すなわち光検出器の出力が画像形成手段に取り込まれ、前記情報に基づいて画像が形成される。その結果、レーザービームの走査に要する時間、すなわち試料の観察に要する時間の短縮が図られる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平5-173077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した様々な応用分野では、試料のリアルタイムでの三次元画像化が求められている。従来の走査型レーザー顕微鏡では、照射光の光軸に直交する面方向の二次元画像を取得し、照射光の光軸に沿って、すなわち試料の厚み方向に走査型レーザー顕微鏡又は試料を相対的に移動させて再び二次元画像を取得し、このような動作を繰り返して得られた複数の二次元画像を画像処理等によって重ねることにより、三次元画像が構築されている。
【0006】
特許文献1に記載の走査型レーザー顕微鏡をはじめとする従来の走査型レーザー顕微鏡では、照射光の光軸に直交する面方向の照射光の高速走査及び二次元画像の高速取得が可能であっても、照射光の光軸に沿って走査型レーザー顕微鏡又は試料を移動させるのに時間がかかるという問題があった。その結果、重ね合わせる複数の二次元画像の取得時間に差が生じ、様々な応用分野で求められるレベルのリアルタイムでの三次元画像の取得が困難であった。特に、生命機能解析等のバイオ分野や医療分野では生きた状態での細胞を観察することも多く、より高速且つ鮮明な三次元画像の取得実現が強く望まれている。高速且つ鮮明な三次元画像を取得するためには、機械的な走査等を必要とせず、試料において照射光の光軸上の異なる位置の光学情報を瞬時に取得可能な光学情報検知装置が求められる。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、検知対象物の照射領域における照射光の光軸に沿った方向において異なる位置からの光学情報をより高速に取得可能な光学情報検知装置及び顕微鏡システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光軸に沿って、該光軸に直交する方向に集光されている幅寸法よりも大きい長さ寸法に亘り集光されているニードル状スポット光を、光軸が厚み方向に略平行するように検知対象物に照射することで、検知対象物における厚み方向の照射領域内を一斉に励起できることに着目した。また、励起された照射領域内の光軸上の互いに異なる位置から出射された出射光を、出射光の光軸に沿って移動するに従って出射光の光軸に交差する受光面における集光位置が検知対象物において励起された照射領域内の出射位置に応じて変化するようにシフトするシフトスポット光に変換することで、座標変換がなされる。前記座標変換により、光軸に沿う方向の互いに異なる位置の光学情報を受光面上の互いに異なる位置に集光させ、光学系や検知対象物を相対的に移動させなくても受光面上の光学情報を一括して取得することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上述の課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)本発明の一態様にかかる光学情報検知装置は、第一の光軸に沿って該第一の光軸に直交する方向に集光されている幅寸法よりも大きい長さ寸法に亘り集光されているニードル状スポット光を生成し、該ニードル状スポット光を検知対象物に照射するニードル状スポット光照射部と、前記検知対象物における前記ニードル状スポット光の照射領域内の前記第一の光軸上の位置から発せられた出射光を、該出射光の第二の光軸に沿って移動するに従って該第二の光軸に交差する受光面における集光位置が前記検知対象物における前記第一の光軸上の前記出射光が出射された前記位置に応じて変化するようにシフトするシフトスポット光に変換するシフトスポット光変換部と、前記受光面に沿って前記シフトスポット光を受光するシフトスポット光受光部と、前記シフトスポット光受光部によって受光された前記シフトスポット光から前記出射光の出射位置の光学情報を取得する光学情報取得部と、を備え、前記シフトスポット光変換部は、互いに異なる前記複数の位置から発せられた前記出射光を、共通の前記第二の光軸に沿って変調することにより前記シフトスポット光に変換する出射光変調部を備えている。
(2)本発明の一態様にかかる光学情報検知装置は、第一の光軸に沿って該第一の光軸に直交する方向に集光されている幅寸法よりも大きい長さ寸法に亘り集光されているニードル状スポット光を生成し、該ニードル状スポット光を検知対象物に照射するニードル状スポット光照射部と、前記検知対象物における前記ニードル状スポット光の照射領域内の前記第一の光軸上の互いに異なる複数の位置から発せられた出射光を、該出射光の第二の光軸に沿って移動するに従って該第二の光軸に交差する受光面における集光位置が前記検知対象物における前記第一の光軸上の前記出射光が出射された前記複数の位置に応じてそれぞれ変化するようにシフトするシフトスポット光に一括で変換するシフトスポット光変換部と、前記受光面に沿って前記シフトスポット光を受光するシフトスポット光受光部と、前記シフトスポット光受光部によって受光された前記シフトスポット光から前記出射光の出射位置の光学情報を取得する光学情報取得部と、を備え、前記シフトスポット光は、前記第二の光軸に対して放物線状に湾曲するエアリービームである。
【0010】
)上記(1)又は(2)に記載の光学情報検知装置において、前記ニードル状スポット光照射部は、光源と、前記光源から発せられた光を前記ニードル状スポット光に変換するために前記光源から発せられた光を変調する光変調部と、前記光変調部によって変調された前記光を前記検知対象物に集光させ、前記ニードル状スポット光を生成するニードル状スポット光生成部と、を備えていてもよい。
【0011】
)上記(1)から)の何れかに記載の光学情報検知装置において、前記ニードル状スポット光は、前記第一の光軸上に高光強度部を有するベッセルビームであってもよい。
【0014】
(5)本発明の一態様にかかる顕微鏡システムは、上記(1)から()の何れか一項に記載の光学情報検知装置と、前記光学情報取得部によって前記シフトスポット光から取得された光学情報に基づいて前記検知対象物に関するイメージ情報を作成するイメージ情報作成部と、を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る光学情報検知装置及び顕微鏡システムによれば、第一の光軸に沿って幅寸法よりも大きい長さ寸法に亘り検知対象物に対してニードル状スポット光が照射され、照射領域内の第一の光軸上の互いに異なる位置から一斉に出射された出射光がシフトスポット光に変換されるので、検知対象物におけるニードル状スポット光の照射領域内の光軸上の互いに異なる位置の光学情報を受光面上の互いに異なる位置に集光させ、光学情報検知装置の光学系や検知対象物を相対的に移動させなくても受光面上の光学情報を一括して同時に取得することができる。従って、検知対象物の照射領域内の第一の光軸上で異なる位置からの光学情報をより高速に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様にかかる光学情報検知装置の模式図である。
【図2】本発明の一態様にかかる光学情報検知装置の光変調部における位相変調パターンの一例を示す模式図である。
【図3】本発明の一態様にかかる光学情報検知装置の出射光変調部における位相変調パターンの一例を示す模式図である。
【図4】本発明の一態様にかかる光学情報検知装置に適用可能なニードル状スポット光の形成方法を説明するための模式図である。
【図5】本発明の一態様にかかる光学情報検知装置に適用可能なニードル状スポット光の別の形成方法を説明するための模式図である。
【図6】実施例1において、光学情報検知装置のニードル状スポット光照射部で形成された光(環状光)の強度分布を対物レンズの瞳位置で測定した結果を示す画像である。
【図7】実施例1において、光学情報検知装置のニードル状スポット光照射部で形成されたニードル状スポット光の強度分布を測定した結果を示す画像である。
【図8】実施例1において、個々の微小金属粒子からの散乱光の二次元強度分布を、位置zを変化させつつ測定した結果を示す画像である。
【図9】図8に示す散乱光の二次元強度分布の各々について、最も高い光強度の位置を通るx方向に対して、該位置でx方向に直交するy方向にCCDの10画素分で積算した強度プロファイルを示すグラフである。
【図10】実施例2における蛍光イメージングのための光学情報検知装置の模式図である。
【図11】実施例2において、平面波状の光ビームを集光することで形成される通常のスポット光の場合(1倍)、及び図10に示す光変調部14で環状の位相変調パターンを設定することでニードルスポット状スポットを形成し、焦点深度(depth of focus: DOF)を通常の集光スポットに対して2倍、5倍、10倍、15倍にそれぞれ変化させた場合の強度分布の測定結果を示す図である。
【図12A】図11に示す通常のスポット光の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図12B】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を2倍に変化させた場合の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図12C】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を5倍に変化させた場合の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図12D】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を10倍に変化させた場合の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図12E】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を15倍に変化させた場合の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図13A】図11に示す通常のスポット光の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図13B】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を2倍に変化させた場合の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図13C】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を5倍に変化させた場合の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図13D】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を10倍に変化させた場合の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図13E】図11に示すニードル状スポット光の焦点深度を15倍に変化させた場合の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図14】実施例2において、1光子励起時のニードル状スポット光の強度分布(焦点深度;15倍)と2光子励起時における通常の集光スポット(焦点深度1倍)及び焦点深度を15倍としたニードル状スポット光の強度分布の測定結果を示す図である。
【図15A】図14に示す2光子励起時の通常の集光スポット光(焦点深度;1倍)の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図15B】図14に示す2光子励起時のニードル状スポット光(焦点深度;15倍)の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図16A】図14に示す2光子励起時の通常の集光スポット光(焦点深度;1倍)の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図16B】図14に示す2光子励起時のニードル状スポット光(焦点深度;15倍)の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを示すグラフである。
【図17】実施例2において、EMCCD上での蛍光ビーズの蛍光像(エアリービームパターン)を示す図である。
【図18】実施例2において、蛍光ビーズをニードル状スポット光に沿って走査させた場合の蛍光像を示す図である。
【図19】実施例2において、EMCCD上でのエアリービームパターンのx方向における強度分布を示す図であり、蛍光ビーズを焦点位置(Δz=0)からΔz=7μmへと変化させたときの蛍光像の強度分布を示す図である。
【図20】実施例2において、エアリービームのスポットのxy面(x方向及びy方向に拡がる面)内におけるシフト量とスポットサイズとの関係を示す図である。
【図21】実施例2において、パラメータpがp=3及びp=5の場合のエアリービームのスポットのxy面内におけるシフト量とスポットサイズとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。

【0018】
図1は、本発明の一態様にかかる顕微鏡システム100の模式図である。
図1に示すように、顕微鏡システム100は、少なくとも光学情報検知装置50を備え、その他にイメージ情報作成部60を備えている。

【0019】
[光学情報検知装置]
光学情報検知装置50は、ニードル状スポット光照射部10と、シフトスポット光変換部30と、シフトスポット光受光部40と、光学情報取得部48と、を備えている。光学情報検知装置50では、後述するニードル状スポット光L1を生成し、ニードル状スポット光L1の光軸(第一の光軸)A1が検知対象物Sの方向D3(すなわち、検知対象物Sの厚み方向)に略平行するようにニードル状スポット光L1を検知対象物Sに照射する。また、光学情報検知装置50では、検知対象物Sにおけるニードル状スポット光L1の照射領域R内の光軸A1上の互いに異なる位置P1,P2,P3から出射された出射光をシフトスポット光L2に変換するので、受光面Pで受光したシフトスポット光L2から出射光が発せられた位置P1,P2,P3の光学情報が検知される。
なお、図1には、検知対象物Sにおける照射領域R内の光軸A1上の互いに異なる位置として位置P1,P2,P3の三点を例示しているが、光学情報検知装置50の検知位置には照射領域R内の全位置が該当し、その数は限定されない。

【0020】
(ニードル状スポット光照射部)
ニードル状スポット光照射部10は、光軸A1に沿って光軸A1に直交する方向D1,D2の面内に集光されている幅寸法wよりも大きい長さ寸法gに亘り集光されているニードル状スポット光L1を生成し、ニードル状スポット光L1を検知対象物Sに照射する構成を備えている。

【0021】
ニードル状スポット光L1は、上述のように幅寸法wよりも長さ寸法gが大きく集光され、非回折なスポット光であれば特に限定されない。このように非回折なスポット光であることで、照射領域Rに向けて強い光が確実に照射され、照射領域R内の検知対象物Sが一斉に励起される。ニードル状スポット光L1の長さ寸法gが幅寸法wに対して大きくなると、検知対象物Sの厚み方向の光学情報を一括して取得することができるという効果が高まる。

【0022】
なお、後述する光変調部14を備えていない従来の走査型レーザー顕微鏡では、検知対象物Sに対して、光変調を受けずに集光されたスポット光(以下、通常のスポット光とする)が照射される。通常のスポット光における方向D3の長さ寸法は、従来の走査型レーザー顕微鏡における方向D3の空間分解能に相当し、光源から発せられる光の波長と集光レンズの開口数に依存する。例えば、ニードル状スポット光L1の長さ寸法gが通常のスポット光の方向D3の長さ寸法よりも10倍大きい場合は、本態様の顕微鏡システム100を用いると、検知対象物Sの三次元情報を従来の走査型レーザー顕微鏡に比べて約1/10の時間で測定することができる。すなわち、従来の走査型レーザー顕微鏡を用いて、ニードル状スポット光L1を用いる本態様の顕微鏡システム100と同じ厚み寸法の三次元情報を得るためには、方向D3に沿って10点分の二次元走査が必要であるから、測定時間が約10倍かかることになる。

【0023】
ニードル状スポット光L1の一例としては、ベッセルビームが挙げられる。ベッセルビームは、その波面が伝搬軸(すなわち、光軸A1)の回転対称軸とした円錐面で与えられ、干渉によって伝搬軸に沿って軸状に高光強度部が生成されるビームであり、ビームの径方向(すなわち、方向D1,D2)の光強度分布が名前の通りベッセル関数の二乗で表される。本態様では、ニードル状スポット光L1がベッセルビームであると想定して説明する。

【0024】
ニードル状スポット光照射部10は、光源12と、光源12から発せられた光(図示略)をニードル状スポット光L1に変換するために光源から発せられた光を変調する光変調部14と、光変調部14によって変調された光を検知対象物Sに集光させ、ニードル状スポット光L1を生成するニードル状スポット光生成部16と、を備えている。

【0025】
光源12は特に限定されないが、光源12から発せられた光をニードル状スポット光L1として検知対象物Sに照射した際に、照射領域R内から光軸A2に沿ってニードル状スポット光L1とは反対方向に出射する光が得られるように、適当な波長及び光強度、パワー等の特性、仕様を備えたものが好ましい。

【0026】
光変調部14は、光源12から発せられ、全反射ミラー13によって反射された光の振幅、位相等の任意の物理量を変調し、少なくとも検知対象物Sの内部に、検知対象物Sの厚み方向に平行して光軸A1に長く延びるニードル状スポット光L1を生成するように構成されている。ここで、「少なくとも検知対象物Sの内部に」とは、ニードル状スポット光L1を検知対象物Sの内部に直接形成する場合と、光軸A1に沿う方向において検知対象物Sよりも光源12に近い位置でニードル状スポット光L1が形成され、そのニードル状スポット光L1が非回折で検知対象物Sの内部に照射される場合の両方を含んでいる。

【0027】
光変調部14の一例としては、空間的な光の振幅や位相の分布を変調可能な空間光変調器(Spatial Light Modulator:SLM)が挙げられる。SLMとしては、例えば液晶を用いて上述の変調を行う空間光位相変調器(Liquid Crystal on Silicon:LCOS-SLM)や、マイクロミラーを用いて上述の変調を行う微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)によるデジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device:DMD)等がある。本態様では、光変調部14として、反射型のLCOS-SLMが用いられている。

【0028】
ニードル状スポット光生成部16は、光変調部14によって変調された光を検知対象物Sの所定の領域にニードル状スポット光L1として集光する構成を備えている。本態様では、ニードル状スポット光生成部16として、対物レンズが用いられている。

【0029】
光変調部14とニードル状スポット光生成部16との間には、光変調部14によって変調された光を伝搬させて検知対象物Sに照射する照射側光学系として、光変調部14に近い方から光軸A1に沿って集光レンズ15,18,20,22が順次配置されている。なお、集光レンズ22は、複レンズである。集光レンズ15,18,20,22の各レンズは、光軸A1上において、光変調部14がニードル状スポット光生成部16をなす対物レンズの瞳面をリレーした位置に配されるように、適宜配置されている。集光レンズ15,18の間、集光レンズ18,20の間及び集光レンズ20,22の間には、それぞれ光路折返し用の全反射ミラー17,19,21が配置されている。
光変調部14は、検知対象物Sの内部に集光するニードル状スポット光L1の長さ寸法gや幅寸法wをそれぞれ、後述するように検知対象物Sの光学情報の検知に適した所望の寸法にするためのニードル状スポット光設定部120を備えている。例えば、ニードル状スポット光設定部120は、光軸A1に沿って光源12から発せられた光の情報及び所望のニードル状スポット光L1の情報から光変調部14の変調パターンを算出するものであれば特に限定されない。ニードル状スポット光設定部120の一例としては、前記変調パターンを算出するプログラム等が内蔵されたコンピュータが挙げられる。ニードル状スポット光設定部120によれば、測定環境や検知対象物Sに応じて、所望の幅寸法w及び長さ寸法gを有するニードル状スポット光L1が設定される。通常の集光スポットにおける幅寸法と同程度の幅寸法wを有するニードル状スポットにおいて、通常の集光スポットの長さ寸法に比べて10倍以上の長さ寸法gが得られると、従来のレーザー顕微鏡を用いた3次元での画像化における面方向(即ち、方向D3に直交する方向)の空間分解能が維持されつつ、最大で10倍の高速化が期待される。また、ニードル状スポット光設定部120では、前述のように方向D3において図る高速化の度合い(例えば、10倍)に合わせ、光変調部14の変調パターンが算出される。また、ニードル状スポット光設定部120では、光変調部14とニードル状スポット光生成部16との間の光学素子(例えば、集光レンズ15,18,20,22等)の有無や各光学素子の情報が考慮される。光変調部14としてSLM等の能動型光学素子が用いられる場合、ニードル状スポット光設定部120から光変調部14への情報や信号によってリアルタイムに光変調部14における変調パターンが書き換え可能になり、ニードル状スポット光L1が高精度且つリアルタイムに設定される。

【0030】
また、集光レンズ15,18の間の光軸A1上には、ビームスプリッタ23が配置されている。光変調部14から出射された光は、ビームスプリッタ23を透過し、ニードル状スポット光生成部16に向けて光軸A1上に出射される。

【0031】
図1に示すように検知対象物Sの所定の領域にニードル状スポット光L1としてベッセルビームを集光させるために、光変調部14としてのLCOS-SLMでは、光軸A1に直交する面内に配列されている複数の液晶分子のうち、図2に示すように、環状部Cに相当する部分の液晶分子についてのみ、入射波面を所定の角度に傾ける(所謂、チルトをつける)ための位相変調量(すなわち、配向方向):exp[ikxsin(θ)]に設定する。前述の位相変調量:exp[ikxsin(θ)]において、kは波数(=2π/波長)である。図2に示す各寸法は、波長を488nmとし、角度θが0.2°である場合のものである。

【0032】
上述のように光変調部14としてのLCOS-SLMの液晶分子が設定されることで、全反射ミラー13によって反射された光の波面(すなわち、位相の空間分布)が変調される。全反射ミラー13によって反射された光の波面が上述のように変調されることで、LCOS-SLMで反射された光はニードル状スポット光生成部16としての対物レンズの瞳面(図示略)において環状の光強度分布を有する。すなわち、対物レンズの瞳面には、環状の高光強度分布を有する光が形成される。なお、図2に示す破線Qは、同図における対物レンズの瞳面の相対的な大きさを示している。
ニードル状スポット光設定部120によって図2に示す環状部Cの内径と外径との差を縮小することで、幅寸法wに対する長さ寸法gの比率を高め、ニードル状スポット光L1としてのベッセルビームの焦点深度を増大させることができる。

【0033】
光変調部14としてのLCOS-SLMでは、ニードル状スポット光設定部120からの信号により、光軸A1に直交する面内に配列されている複数の液晶分子のうち、環状部Cに相当する部分以外の液晶分子は変調されていない。
従って、環状部Cに相当する部分以外の液晶分子に照射された光の0次光は光変調部14で反射される。本態様では、集光レンズ15の光変調部14とは反対側の焦点位置(所謂、前側焦点距離)にアパーチャー31が設けられている。そのため、光変調部14の環状部C以外の部分から反射された無変調成分である0次光は、検知対象物Sの光学情報の取得には寄与せず、図1の二点破線で示すように集光レンズ15及び全反射ミラー17を通過して進むものの、アパーチャー31によって遮断され、検知対象物Sには照射されない。

【0034】
(検知対象物)
検知対象物Sは、上述説明したニードル状スポット光照射部10から出射されたニードル状スポット光L1の光軸A1上に配置されている。検知対象物Sは、ニードル状スポット光L1を照射可能であって、照射されたニードル状スポット光L1によって刺激される物質や要素を含み、例えば生体であってもよく、非生体であってもよく、特に制限されない。

【0035】
検知対象物Sにおいて、ニードル状スポット光L1が照射された物質や要素からは、光の吸収、反射や蛍光、燐光、散乱光等の何らかの光学応答がなされる。本態様では、ニードル状スポット光L1が照射された検知対象物Sの照射領域R内の光軸A1上の位置P1,P2,P3から光軸A2に沿って発せられる散乱光を受光対象とする。

【0036】
顕微鏡システム100は、検知対象物Sを載置するためのステージTを備えている。ステージTは、少なくともニードル状スポット光L1の光軸A1に直交する面内(すなわち、方向D1,D2)において移動可能とされている。

【0037】
(シフトスポット光変換部)
シフトスポット光変換部30は、検知対象物Sにおけるニードル状スポット光L1の照射領域R内の光軸A1上の位置P1,P2,P3から発せられた出射光(図示略)を、シフトスポット光L2に変換する構成を備えている。シフトスポット光L2は、出射光の光軸(第二の光軸)A2に沿って移動するに従って、光軸A2に交差する受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3が検知対象物Sにおける位置P1,P2,P3に応じて変化するようにシフトする光である。

【0038】
シフトスポット光L2は、上述のように出射光の光軸A2に沿って移動するに従い、受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3が、出射光が出射された位置P1,P2,P3に応じて変化するようにシフトする非回折なスポット光であれば特に限定されない。シフトスポット光L2が非回折なスポット光であることによって、光軸A2上の任意の位置で受光面Mを設定可能になり、且つ設定した受光面M上でシフトスポット光L2の集光位置Q1,Q2,Q3をより確実に異ならせ、シフトスポット光を高分解能で受光可能になる。複数のシフトスポット光L2の個々に含まれる情報を分解するという観点から、受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3の間隔は、受光面M上におけるシフトスポット光L2のスポット径以上となるように設定されている。言い換えれば、検知対象物Sの厚み方向において、従来のレーザー走査顕微鏡の方向D3の空間分解能のズレに対して、集光位置Q1,Q2,Q3の間隔がシフトスポット光L2のスポット径以上となるように設定されている。さらに、受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3の間隔は、後述するシフトスポット光受光部40で集光位置Q1,Q2,Q3に集光したシフトスポット光L2を個別に検出可能な最小寸法以上であることが好ましく、シフトスポット光受光部40の二次元ディテクターの一つの画素サイズの整数倍であることがより好ましい。受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3の間隔が上述の範囲内であれば、集光位置Q1,Q2,Q3に集光するシフトスポット光L2の個々に含まれる情報が分解され、検知対象物Sの厚み方向の光学情報を一括して高精度に取得することができるという効果がさらに高まる。

【0039】
シフトスポット光L2の一例としては、エアリービームが挙げられる。エアリービームは、自由空間内で光軸A2に対して放物線を描くように湾曲する放物線状のビームである。本態様では、シフトスポット光L2がエアリービームであると想定して説明する。

【0040】
シフトスポット光変換部30は、ニードル状スポット光L1の照射領域R内の光軸A1上の位置P1,P2,P3から発せられた出射光を変調することにより出射光をシフトスポット光に変換する出射光変調部32を備えている。

【0041】
出射光変調部32の一例としては、光変調部14と同様に、SLM等が挙げられる。出射光変調部32への適用に好適なSLMとしては、例えばLCOS-SLMやMEMSによるDMDがあり、これらに加えてメンブレン型のデフォーマブルミラー等がある。本態様では、出射光変調部32として、反射型のLCOS-SLMが用いられている。
出射光変調部32は、前述のシフトスポット光L2の方向D1,D3方向におけるシフト量や強度分布、集光位置Q1,Q2,Q3をそれぞれ、シフトスポット光受光部40での受光に適した所望の量や分布、位置にするためのシフトスポット光設定部130を備えている。例えば、シフトスポット光設定部130は、光軸A2に沿って検知対象物Sから発せられた厚み方向の情報及び所望のシフトスポット光L2の情報から出射光変調部32の変調パターンを算出するものであれば特に限定されない。シフトスポット光設定部130の一例としては、前記変調パターンを算出するプログラム等が内蔵されたコンピュータが挙げられる。シフトスポット光設定部130によれば、測定環境や検知対象物Sの光学特性、シフトスポット光受光部40の二次元ディテクターの仕様・性能に応じて、所望のシフトスポット光L2が設定される。例えば、受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3の間隔は、受光面M上におけるシフトスポット光L2のスポットの直径以上であって、シフトスポット光受光部40の二次元ディテクターで検出することができる最小寸法の2倍よりも大きくなるように設定されることが好ましい。シフトスポット光設定部130では、ニードル状スポット光生成部16とシフトスポット光受光部40との間の光学素子(例えば、集光レンズ18,20,22,24,25等)の有無や各光学素子の情報が考慮される。出射光変調部32として前述のようにSLM等の能動型光学素子が用いられる場合、シフトスポット光設定部130から出射光変調部32への情報や信号によってリアルタイムに出射光変調部32における変調パターンが書き換え可能になり、シフトスポット光L2が高精度且つリアルタイムに設定される。

【0042】
本態様では、図1に示すように、ニードル状スポット光L1の照射領域R内の光軸A1上の位置P1,P2,P3から光軸A2に沿って、ニードル状スポット光L1の進行方向とは反対向き(すなわち、方向D3とは反対向き)に発せられる散乱光が出射光として受光される。前述の散乱光から、照射領域R内の検知対象物Sに関する光学情報が検知される。シフトスポット光変換部30は、検知対象物Sにおける照射領域Rの光軸A1上の位置P1,P2,P3から発せられた光を出射光変調部32に向けて伝搬するための検知側光学系として、ニードル状スポット光L1の照射領域Rからビームスプリッタ23までの間は、光軸A2に沿って、ニードル状スポット光生成部16に用いられている対物レンズと、集光レンズ18,20,22と、光路折返し用の全反射ミラー19,21と、をニードル状スポット光照射部10と共有している。

【0043】
光軸A2に沿って集光レンズ18から出射された出射光は、ビームスプリッタ23に対して光源12から発せられた光の入射面とは反対側から入射するので、出射光の一部がビームスプリッタ23で反射される。
光軸A2に沿って、ビームスプリッタ23と出射光変調部32との間には、上述の検知側光学系の続きとして、集光レンズ24が配置されている。ビームスプリッタ23と集光レンズ24との間、集光レンズ24と出射光変調部32との間には、それぞれ光路折返し用の全反射ミラー26,27が配置されている。

【0044】
図1に示すように受光面Mにシフトスポット光L2としてエアリービームを集光させるために、出射光変調部32としてのLCOS-SLMでは、光軸A2に対して所定の角度をなして配列されている複数の液晶分子の位相変調量を公知の原理(例えば、S. Jia et.al., Nature Photon. 8, 302-306 (2014)等を参照)に基づいてシフトスポット光設定部130によって設定すると、光軸A1上の位置P1,P2,P3から発せられた出射光の波面が変調される。公知の方法では、図3に示すように、複数の液晶分子の全体としての波面が次に示す(1)式で表される波面W(s,t)となるように、個々の液晶分子の位相変調量を制御する。

【0045】
【数1】
JP0006537153B2_000002t.gif

【0046】
なお、上述の(1)式において、ReffはLCOS-SLMの位相変調領域の有効径であり、hはLCOS-SLMの位相変調領域の有効高さであり、pはLCOS-SLMの位相変調領域の中心に対してReffの位置での相対的な位相シフト量であり、kは波数(=2π/波長)である。例えば、p=3であれば、LCOS-SLMの位相変調領域の中心に対してReffでの位相変調量は6π=3λである。

【0047】
例えば、図3は(1)式においてp=3としたときの場合のLCOS-SLMの液晶分子の位相変調量を模式的に示しており、頂部(すなわち、図3に示す位相変調領域Uの中心部)が平面で切断された三次関数的な位相分布が形成されていることを示す。

【0048】
LCOS-SLMによって位相変調された出射光が受光面Mでシフトスポット光L2として形成されるように、光軸A2に沿って出射光変調部32と受光面Mとの間には、光路折り返し用の全反射ミラー28、集光レンズ25が順次配置されている。検知側光学系において、光軸A2上における集光レンズ24,25の各レンズ間の距離は、各レンズの焦点距離の和とされている。
従って、LCOS-SLMで反射された光は、全反射ミラー28で反射され、集光レンズ25に入射し、集光レンズ25によって、光軸A2に対して放物線を描くように湾曲する放物線状のエアリービームとして集光され、非回折で伝搬する。光軸A1上の互いに異なる位置P1,P2,P3から発せられた出射光に基づくエアリービームは、互いに略同様の湾曲形状を有し、光軸A2に平行して互いにずれて分布する。

【0049】
(シフトスポット光受光部)
シフトスポット光受光部40は、受光面Mに沿ってシフトスポット光L2を受光する構成を備えている。シフトスポット光受光部40としては、例えばCCDやイメージセンサ等のアレイ受光素子が挙げられる。

【0050】
(光学情報取得部)
光学情報取得部48は、シフトスポット光受光部40によって受光されたシフトスポット光L2の情報から検知対象物Sの三次元画像化等に必要な情報を取得するために設けられている。光学情報取得部48は、例えばコンピュータである。

【0051】
光学情報取得部48には、シフトスポット光受光部40の受光面の受光素子の配列情報(ピクセル番号等)と検知対象物Sの照射領域R内の光軸A1上の位置P1,P2,P3との対応関係や、シフトスポット光受光部40からの情報に関する具体的な処理内容(例えば、色情報とするのか、特定物質を強調するように表示するのか)等の詳細について予め記憶されている。また、光学情報取得部48には、シフトスポット光受光部40のからの情報に対するノイズ除去処理や、所望の情報を効果的に可視化するためのフィルタリング処理の機能等が備わっている。

【0052】
(イメージ情報作成部)
イメージ情報作成部60は、光学情報取得部48によって取得された検知対象物Sに関する情報から三次元画像をはじめとするイメージ情報を作成し、モニタ62に映し出す構成を備えている。なお、イメージ情報作成部60は、光学情報取得部48を構成するコンピュータに組み込まれていてもよい。これにより、シフトスポット光受光部40によって受光されたシフトスポット光L2の情報を即時にモニタ等に映し出し、可視化することができる。

【0053】
以上説明した光学情報検知装置50によれば、光軸A1における幅寸法wよりも長さ寸法gに延びるように集光された非回折なニードル状スポット光L1を検知対象物Sに照射することにより、検知対象物Sの光軸A1に沿った奥行き方向(すなわち、検知対象物Sの厚み方向)に対してニードル状スポット光L1の長さ寸法gに亘って一斉に刺激が与えられる。そして、検知対象物Sにおけるニードル状スポット光L1の照射領域R内の異なる位置P1,P2,P3から発せられた出射光を、非回折なシフトスポット光L2に変換する。シフトスポット光L2は、光軸A2に沿って移動するに従って、受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3が、出射光が出射された検知対象物Sの位置P1,P2,P3に応じて変化するようにシフトする光である。出射光をシフトスポット光L2に変換することで、検知対象物Sの厚み方向における情報を受光面Mの面内の情報へと変換することができる。これにより、ニードル状スポット光L1を一回照射すれば、機械的な走査や装置の移動・制御を必要とせずに、検知対象物Sの厚み方向の異なる位置の情報を光の速度で瞬時に取得し、検知することができる。さらに、光軸A1に直交する面内で検知対象物Sへの照射光を高速に走査する公知の技術と組み合わせれば、一回の二次元走査で検知対象物Sの三次元情報をより高速に取得することができる。

【0054】
また、光学情報検知装置50によれば、ニードル状スポット光照射部10は、光変調部14と、ニードル状スポット光生成部16と、を備えているので、光源12から発せられた光を予め変調パターン等が設計・計算された光変調部14によって自在に且つ円滑に変調し、変調された光をニードル状スポット光生成部16によって検知対象物Sに集光し、ニードル状スポット光L1を生成することができる。
本態様では、光変調部14としてアクティブ素子であるLCOS-SLMを用いているため、光源12から発せられた光の波面や特性、ニードル状スポット光L1の長さ寸法gに応じて液晶分子の位相変調量を自在に設定・変更し易く、光学情報検知装置50全体の設計自由度がより高まると共に、光源12から発せられた光に対する変調パターンが異なる毎に光変調部14を取り換えずに済む。

【0055】
また、光学情報検知装置50によれば、ニードル状スポット光L1としてベッセルビームを用いることで、光軸A1に直交する方向D1,D2の光強度分布がベッセル関数の二乗で表され、幅寸法w内に高光強度部が形成された照射光を非回折で検知対象物Sに照射し、検知対象物Sの所定の領域に対してより確実に刺激を与えることができる。

【0056】
また、光学情報検知装置50によれば、シフトスポット光変換部30は、出射光変調部32を備えているので、検知対象物Sにおける照射領域R内の異なる位置P1,P2,P3から発せられた出射光を予め変調パターン等が設計・計算された出射光変調部32によって自在に且つ円滑に変調し、シフトスポット光L2を生成することができる。
本態様では、光変調部14と同様に、出射光変調部32としてアクティブ素子であるLCOS-SLMを用いているため、検知対象物Sにおける照射領域R内の異なる位置P1,P2,P3から発せられた出射光の波面や特性、シフトスポット光受光部40で検出可能な最小寸法等に応じて液晶分子の位相変調量を自在に設定・変更し易く、光学情報検知装置50全体の設計自由度がより高まると共に、検知対象物Sから発せられる出射光やシフトスポット光受光部40の仕様に応じて変調パターンが異なる毎に出射光変調部32を取り換えずに済む。

【0057】
また、光学情報検知装置50によれば、シフトスポット光L2としてエアリービームを用いることで、検知対象物Sにおける照射領域R内の異なる位置P1,P2,P3からの出射光を光軸A2に対して放物線を描くように湾曲する放物線状のビームとし、且つ異なる位置P1,P2,P3毎に光軸A2に沿って互いにずれるように分布させることができる。これにより、光軸A2に交差する受光面Mで複数のシフトスポット光を切り出して個々のシフトスポット光をより確実に受光し、検知対象物Sにおける照射領域R内の異なる位置P1,P2,P3の光学情報を精度良く検知することができる。

【0058】
また、顕微鏡システム100によれば、上述の光学情報検知装置50と、イメージ情報作成部60と、を備えているので、ニードル状スポット光L1を一回照射すれば、機械的な走査や装置の移動・制御を必要とせずに、光学情報検知装置50によって検知した検知対象物Sにおける照射領域R内の異なる位置P1,P2,P3の光学情報に基づいて検知対象物Sの三次元情報をより高速に取得し、三次元光イメージングを行うことができる。

【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。

【0060】
また、上述の態様では、LCOS-SLMを用いてニードル状スポット光L1としてのベッセルビームを生成する構成を例示したが、ベッセルビームを生成する方法は他にもいくつか知られている。例えば、図4に示すように、光源等からの平行光を環状の開口部72が形成された振幅マスク71に通し、透過した光をレンズ73で集光させることにより、光軸Axに沿って光軸Axに直交する方向で集光されている幅寸法よりも大きい長さ寸法に亘り集光するベッセルビームBが生成される。この方法では、開口部72の直径d72や幅p72を変化させることで、ニードル状スポット光L1の幅寸法に対する長さ寸法を制御することができる。
ベッセルビームを生成する別の方法としては、例えば、図5に示すように、光源等からの平行光を出射側が円錐形状に形成されているアキシコンレンズ74を用いて集光させることによっても、ベッセルビームBが生成される。このように生成されたベッセルビームBをニードル状スポット光L1として用いても構わない。

【0061】
また、ニードル状スポット光L1としてベッセルビームを用いると、上述したように光軸A1に直交する方向D1,D2の幅寸法w内には高光強度部が形成されるが、同方向において高光強度部の外側にサイドローブとして微弱光が発生する。この微弱光が受光面Mにおいて本来検知するべき検知対象物Sの位置P1,P2,P3からの出射光に重なって受光されると、信号対雑音比(SN比)が低下し、位置P1,P2,P3の光学情報と微弱光の情報とが合わさった情報を検知してしまう。このようなSN比の低下を抑える観点から、光学情報検知装置50及び顕微鏡システム100には、公知の多光子励起顕微鏡の構成を導入することが好適である。多光子励起顕微鏡の構成を導入することで、n光子励起(nは正の整数である)の場合には励起光強度分布のn乗に比例して出射光の光強度が変わるため、微弱光の影響がより弱くなる。これにより、受光面Mにおいて微弱光は略検出されない程度に弱くなり、本来検知するべき検知対象物Sの位置P1,P2,P3の光学情報をより高精度に検知することができる。

【0062】
また、上述の態様では、検知対象物Sを載置するためのステージTがニードル状スポット光L1の光軸A1に直交する面内で移動可能とされている構成を例示して説明したが、検知対象物Sに対してニードル状スポット光L1を光軸Axに直交する面内で移動させる際には、検知対象物Sに対してニードル状スポット光L1が相対的に移動すればよい。従って、検知対象物S及びステージTの位置は固定し、ガルバノミラー等を用いてニードル状スポット光L1を検知対象物Sに対して光軸A1に直交する面内で走査させてもよい。
すなわち、顕微鏡システム100は、ニードル状スポット光L1を光軸A1に直交する面内で走査させることが可能なビーム走査型のレーザー顕微鏡であってもよい。

【0063】
また、上述の態様では、シフトスポット光としてエアリービームを採用して説明したが、光軸A2に沿って移動するに従い、受光面Mにおける集光位置Q1,Q2,Q3が、出射光が発せられた位置P1,P2,P3に応じて変化するようにシフトする非回折なスポット光であればよく、例えば光軸A2に対して湾曲はせず、光軸A2に沿って移動するに従い、光軸A2との距離が線形的に変化し、且つ出射光が発せられた位置P1,P2,P3毎にシフトスポット光が集光される位置Q1,Q2,Q3が異なってもよい。すなわち、シフトスポット光は光軸A2に対して傾斜し、出射光が発せられた位置P1,P2,P3毎に互いに平行に延びるスポット光であってもよい。

【0064】
また、上述の態様では、光変調部14及び出射光変調部32としてLCOS-SLMを用いているが、各変調部に入射する光波を入力側の光波とし、且つ各変調部から出力される光波を出力光として、入力波と出力波との関係から、各変調部における変調量を適宜算出し、予め設定しておいてもよく、適宜補正してもよい。また、各変調部に入射する光波を物体光とすると共に、適当な参照光を設定し、各変調部から出力される光波を出射させるような干渉縞を計算し、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram:CGH)を光変調部14や出射光変調部32に適用してもよい。

【0065】
また、上述の顕微鏡システム100は検知対象物Sにおいて光軸A1に沿った方向の互いに異なる位置P1,P2,P3の光学情報を略同時取得することができるので、公知の多点走査型レーザー顕微鏡に導入してもよい。公知の多点走査型レーザー顕微鏡の導入により、光軸A1に直交する面内で互いに異なる位置の光学情報も略同時取得することができるので、検知対象物Sの三次元情報の取得及び三次元画像化が略瞬時に可能となる。

【0066】
また、上述の顕微鏡システム100では、検知側光学系に分散素子、或いは波長毎の出射光を、光軸A2に交差する方向であり、且つ光軸A1上の位置によって集光位置がずれる方向とは異なる方向に分離可能な構成を導入することで、出射光のスペクトル毎の光学情報の検出やスペクトルイメージングや多色イメージングが可能になる。従って、細胞等の生体試料を検知対象物Sとした際に、複数の検知用色素を検知対象物Sに付し、ニードル状スポット光L1によって照射領域R内を一斉に励起し、上述のようにスペクトルイメージングを行うと、細胞内の器官・機能・特定部位の局在の様子を観察することができる。

【0067】
また、上述の光学情報検知装置50や顕微鏡システム100では、検知対象物Sにおいて、ニードル状スポット光L1が照射された物質や要素から散乱光が発せられるものとして説明したが、既述のように検知対象物Sからの光学応答は一光子励起や多光子励起を含む蛍光や、検知可能であれば、蛍光以外に、ラマン散乱光、第二高調波等の非線形発光、さらには光の吸収、反射や燐光等であってよい。これらの光学応答に合わせて、照射側光学系及び検知側光学系に使用する集光レンズや光路折り返し用の全反射ミラー、ビームスプリッタの配置や数を適宜変更することができる。

【0068】
さらに、上述の光学情報検知装置50や顕微鏡システム100では、ニードル状スポット光L1を検知対象物Sに照射した際に、照射領域R内から光軸A2に沿ってニードル状スポット光L1とは反対方向に出射する光を検出対象としたが、照射領域R内から光軸A2に沿ってニードル状スポット光L1と同じ方向に出射する光を検出対象としても構わない。すなわち、本発明に係る光学情報検知装置及び顕微鏡システムは、図1に例示した反射型の構成を備えたものに限定されず、検知側光学系が検知対象物Sを基準として照射側光学系の反対側に配置されているような透過型の構成を備えてもよい。
【実施例】
【0069】
次いで、本態様の光学情報検知装置50及び顕微鏡システム100の効果を裏付けるために行った実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
図1に示す光学情報検知装置50を構築し、ニードル状スポット光L1の照射領域R内の検知対象物Sの厚み方向における光学情報の検知について検証した。但し、光学情報取得部48は省略し、シフトスポット光受光部40として用いたCCDの出力を確認し、光学情報の検証を行った。
また、ステージTには、ピエゾ駆動型の三次元精密稼働ステージを使用した。
顕微鏡システム100に用いた光学部品の概要を表1に示す。
【実施例】
【0071】
【表1】
JP0006537153B2_000003t.gif
【実施例】
【0072】
上述のように構築した光学情報検知装置50において、光源12から直線偏光ガウスビームのレーザー光を出射させ、そのレーザー光を光変調部14のLCOS-SLMで変調した。変調時には、図2に示す環状部Cに相当する部分の液晶分子の入射波面を0.2°で傾けるような位相変調量(すなわち、配向方向)に設定することで、ニードル状スポット光生成部16の対物レンズの瞳面(図示略)において図6に示すように環状の高光強度分布を有する光(環状光)を形成した。図6の破線は、参考として、ニードル状スポット光生成部16の対物レンズの瞳のサイズを相対的に示したものである。具体的には、瞳の直径5.04mmの対物レンズに対して内径が0.66倍、外径が0.77倍の環状の高光強度分布を有する光を形成した。
図6に示す環状光を対物レンズで集光させ、図7に示すように幅寸法wが0.18μm、長さ寸法gが1.9μmのニードル状スポット光L1を生成した。
【実施例】
【0073】
検知対象物Sは、平均粒径100nmの金ナノ粒子とした。この金ナノ粒子をカバーガラス上に散布し、イマージョンオイルで包理することにより、プレパラートを作製し、ステージT上に設置した。この際、カバーガラス上で孤立した金ナノ粒子が対物レンズ焦点に形成したニードル状スポット光L1の照射範囲R内に位置するように、ステージTを三次元的に精密に移動させた。
【実施例】
【0074】
図7に示すニードル状スポット光L1を金ナノ粒子に照射すると、金ナノ粒子からは散乱光が発せられ、この散乱光(すなわち、出射光)はニードル状スポット光生成部16の対物レンズから光軸A2に沿って伝搬する。約半分のパワーの散乱光がビームスプリッタ23で反射され、さらに検出側光学系へと伝搬する。
【実施例】
【0075】
そこで、ビームスプリッタ23で反射された散乱光を出射光変調部32のLCOS-SLMで変調した。変調時には、LCOS-SLMにおける複数の液晶分子の全体としての波面が前述の(1)式で表される波面W(s,t)となるように、個々の液晶分子の位相変調量を制御し、(1)式において、p=3、Reff=1.89mm、h=1.89mm、k=(2π/λ)=(2π/488nm)とした。
【実施例】
【0076】
以上説明した配置及び設定の光学情報検知装置50において、金ナノ粒子をニードル状スポット光L1の照射領域R内の光軸A1上において0.5μm間隔で精密に移動させ、その都度、シフトスポット光受光部40としてのCCD上での散乱光の二次元強度分布を記録した。散乱光の二次元強度分布の測定結果を図8に示す。図8における位置zは、ニードル状スポット光L1の長さ寸法1.9μmの中心を基準とした光軸A1上での距離を示す。すなわち、図8におけるz=0は、ニードル状スポット光L1の長さ寸法1.9μmの中心を示す。また、図8に示す散乱光の二次元強度分布の各々について、最も高い光強度の位置を通るx方向に対して、前記位置でx方向に直交するy方向にCCDの10画素分で積算した強度プロファイルを図9に示す。
【実施例】
【0077】
図8及び図9に示す実験結果から、対物レンズの焦点位置(すなわち、ニードル状スポット光L1の照射領域R)での異なる位置zからの散乱光シグナルがCCDの受光面において異なる面内位置に結像していることを確認した。すなわち、ニードル状スポット光L1の照射による検知対象物Sの発光に対し、エアリービームの自己湾曲特性によって、光軸A1,A2に沿った方向の情報が光軸A2に直交する面内方向への情報に変換可能であることがわかる。
【実施例】
【0078】
以上説明した実施例の結果から、光学情報検知装置50によれば、ニードル状スポット光L1による照射領域R内の光軸A1に沿った方向の一斉励起と、励起された照射領域Rから発せられた光学応答による光シグナルをシフトスポット光に変換することによる光軸A1に沿った方向からこの方向に交差する受光面M上への変換と、を駆使した新しい光学情報検知装置の実現が可能であることを実証した。従って、光学情報検知装置50にイメージ情報作成部60等を組み合わせ、三次元高速光イメージングも実現可能といえる。
【実施例】
【0079】
(実施例2)
次いで、図10に示す顕微鏡システム110を構築し、本発明に係る光学情報検知装置及び顕微鏡システムによる蛍光イメージングへの適用について検証した。図10に示す顕微鏡システム110の構成要素において、図1に示す顕微鏡システム100の構成要素と共通する構成要素については、共通の符号を付し、その説明を省略する。
【実施例】
【0080】
顕微鏡システム110において、蛍光を発生させるための励起光はニードル状スポット光とした。1光子励起用に波長532nmのレーザー光と、2光子励起用に波長1040nmのレーザー光を使用した。2光子励起用の波長1040nmのレーザー光は、ニードル状スポット光が形成されていることを確認するために用いられている。ステージTは、ピエゾ駆動ステージであり、三次元的に精密に移動可能となるように構成した。複数のレンズ15,18A,18B,18C,20,22,24A,24B,25は、各々のレンズが配置されている光軸A1/A2/A3上で各々のレンズを挟んで両側で各々のレンズの焦点距離等に合った位置Pを物体面の位置及び像面の位置として4f光学系(4fフーリエ変換光学系)を構成するように設置されている。複数の位置Pには、必要に応じて、空気中のごみやレンズ表面の汚れ・傷等による干渉縞を除去するためのピンホールを配置した。複数のレンズ15,18A,18B,18C,20,22,24A,24B,25は、それぞれ組み合わせレンズである。図10に示すように出射光から変換されたエアリービームは、シフトスポット光受光部40を用いて検出した。シフトスポット光受光部40には、超微弱光でも高速に撮影可能なEMCCD(Electron-Multiplying Charge Coupled Device)を用いた。また、分岐用ミラー102は、ダイクロイックミラー23Bと出射光変調部32との間の光軸A2に対して挿抜自在となるように配置されている。分岐用ミラー102が光軸A2に挿入された場合は、分岐用ミラー102よりも光の出射方向の前方の光軸は、破線で示す光軸A3に切り替わる。また、分岐用ミラー102が光軸A2に挿入された場合は、蛍光ビーズからの蛍光がエアリービームに変換される前に光軸A3に取り出されるので、共焦点ディテクター108では蛍光ビーズから発せられる蛍光の光強度(z方向の情報によらない光強度)が測定される。共焦点ディテクター108はファイバー型受光端子107を備え、ファイバー型受光端子107の受光側端面は集光レンズ24Aの光軸A3上の像面の位置Pに配置されている。なお、分岐用ミラー102とファイバー型受光端子107との間にはレンズペアが配置されているが、レンズペアの図示は省略されている。集光レンズ24Aの後の位置P(即ち、分岐用ミラー102の挿入位置と同じ位置P)の光は前記レンズペアによってファイバー型受光端子107の受光側端面に結像される。ファイバー型受光端子107の受光側端面のコアの直径は、1mmとした。
【実施例】
【0081】
顕微鏡システム110に用いた光学部品の概要を表に示す。
【実施例】
【0082】
先ず、波長532nmのレーザー光による1光子励起でのニードル状スポット光形成の検証を行うために、市販の蛍光ビーズ(平均直径:170nm)を三次元的に走査させ、各点での蛍光シグナルを従来の共焦点レーザー顕微鏡検出器(製造販売元:浜松ホトニクス株式会社)で検出して、焦点での強度分布を計測した。図11に、平面波状のレーザー光を集光した通常の集光スポットの場合(以下、この場合の焦点深度を1倍とし、「基本の焦点深度」という場合がある)及びニードル状スポット光の焦点深度を2倍、5倍、10倍、15倍にそれぞれ変化させた場合の強度分布の測定結果を示す。ニードル状スポット光の焦点深度は、光変調部14であるLCOS-SLMにおいて円環状マスクの形状を変化させることによって調整した。測定の結果、顕微鏡システム110では、ニードル状スポット光の焦点深度を約15倍まで伸張し、ニードル状スポット光の長さを11μm程度まで拡大することが可能であると推測される。すなわち、従来の共焦点レーザー顕微鏡検出器等に比べて15倍の焦点深度の奥行き情報を取得できる見込みが得られた。また、ニードル状スポット光の焦点深度を変化させない場合、及びニードル状スポット光の焦点深度を2倍、5倍、10倍、15倍にそれぞれ変化させた場合の各強度分布におけるx方向のビームプロファイルを図12A~12Eに示し、z方向のビームプロファイルを図13A~13Eに示す。図12A~12E及び図13A~13Eの実線は理論値を表し、ドット状の複数の点は測定値を表している。顕微鏡システム110における条件及びパラメータを考慮すると、理論値と測定値の傾向が合っていることがわかる。
【実施例】
【0083】
次に、波長1040nmのパルスレーザー光による2光子励起でのニードル状スポット光形成の検証を行った。蛍光ビーズは、1光子励起の検証時の蛍光ビーズと同じものを使用した。図14に、1光子励起時の蛍光像(エアリービームパターンをシフトスポット光受光部40で受光した際の像)の強度分布と2光子励起時の蛍光像の強度分布の測定結果を並べて示す。2光子励起時には、x方向におけるサイドローブが低く抑えられていることがわかる。このようにサイドローブが低く抑えられることで、ノイズの低い高精度な三次元高速光イメージングが可能になる。ニードル状スポット光の焦点深度が基本の焦点深度(1x)である場合とニードル状スポット光の焦点深度が15倍の焦点深度(15x)である場合の蛍光像の強度分布におけるx方向のビームプロファイルを図1515Bに示す。図1515Bの各々に示されているビームプロファイルを比較すると、ニードル状スポット光の焦点深度を15倍まで大きくした場合でも矢印の部分のようにサイドローブが大幅に低く抑えられていることがわかる。ニードル状スポット光の焦点深度が基本の焦点深度(1x)である場合とニードル状スポット光の焦点深度が15倍の焦点深度(15x)である場合の蛍光像の強度分布におけるz方向のビームプロファイルを図1616Bに示す。近赤外の波長域でもある1040nmの波長のレーザー光による2光子励起の条件下で、約10μmの焦点深度を確保することができた。
【実施例】
【0084】
上述のようにニードル状スポット光が良好に形成されることを確認した光学系110において、1光子のニードル状スポット光による励起下での蛍光シグナルに対するエアリービームパターンの形成の検証を行った。1光子励起での(1)式におけるpの値とxyzの各平面における寸法と、EMCCD上での孤立蛍光ビーズの蛍光像を図17に示す。但し、本検証時において、前述の(1)式におけるhはh=2Reffとした。図17に示すように、ニードル状スポット光上の蛍光ビーズからの発光に対してエアリーパターンが形成されていることがわかる。
【実施例】
【0085】
また、蛍光ビーズをニードル状スポット光に沿って(すなわち、z方向に沿って)走査した場合の蛍光像の変化を図18に示す。蛍光ビーズは、500nmの間隔で移動させた。図18に示す測定結果から、パラメータpの値が大きくなる程、エアリービームパターンのz方向に対する非回折性を伴う伝搬距離が増大し、蛍光ビーズの焦点のz方向の位置に応じてxy面内方向にエアリービームパターンがシフトすることがわかる。
さらに、パラメータpについてp=3とし、蛍光ビーズをニードル状スポット光の焦点からz方向に1μm間隔で0μmから7μmまで移動させた。各位置におけるEMCCD上での蛍光像の中心を通るx方向に沿った強度分布を図19に示す。図19に示す測定結果から、EMCCD上でのエアリービームパターンのピーク位置は、ニードル状スポット光上における蛍光ビーズのz方向の位置に応じてxy面内方向にシフトすることがわかる。
【実施例】
【0086】
図20は、ニードル状スポット光上でのz方向の蛍光ビーズの位置と受光部におけるエアリービームのスポットのxy面内シフト量の関係を示している。図20の網掛けは、エアリービームの中心スポットの面内方向に対する半値全幅(FWHM)に対応する。スポット位置は放物線の軌跡を描くのに対し、スポットサイズは伝搬距離に対して略一定である。従って、エアリービームの非回折と自己湾曲性を用いることでz方向の空間分解能が得られる一方で、z方向(奥行き方向)の空間分解能は蛍光を発するz位置に依存することが推測される。また、イメージングでz方向の空間分解能を確保する観点から、xy面内のエアリービームのシフト量は、エアリービームの面内スポットサイズ以上が必要となることがわかる。
【実施例】
【0087】
図21は、パラメータpについて、p=3及びp=5の場合のニードル状スポット光上でのz位置に対する受光部でのエアリービームスポットのxy面内シフト量との関係を示している。図21に示すように、パラメータpの値が大きい程、ニードル状スポット光上でのz方向の位置の変化に対するシフトスポット光受光部40でのエアリービームスポットの面内シフト量は小さくなる。一方で、パラメータpの値が大きい程、エアリービームの非回折伝搬距離が大きくなる。従って、z方向(奥行方向)に対する空間分解能と検知可能なz方向の範囲にはトレードオフの関係がある。このトレードオフの関係に基づいて、パラメータpや光学系の結像倍率及び出射光の波長等の各種パラメータを適宜調整することによって、三次元高速イメージング時の条件が決まることが推測される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る光学情報検知装置及び顕微鏡システムは、検知対象物の光軸上の長さ寸法gに亘る照射領域にニードル状スポット光L1を照射し、検知対象物Sの照射領域内の第一の光軸上で異なる位置からの光学情報を瞬時に取得し、3次元イメージングすることができるので、より高速且つ鮮明な三次元画像の取得実現が求められる分野で広く利用可能である。このような分野には、生きた状態での細胞を観察することが多い生命機能解析等の生物分野・生体分野や医療分野をはじめ、微細な機能性素材の開発が進められている金属、化学等の産業分野等も含まれる。
【0089】
また、本発明に係る光学情報検知装置は、検知対象物Sの照射領域R内の光軸A1上で異なる位置からの光学情報を瞬時に取得することができる観点から、照射領域R内にニードル状スポット光L1に反応する物質や要因が存在するか否かを検知する分野で利用可能である。例えば、地面や生体を検知対象物Sとして、これらを破断・切断することなくニードル状スポット光L1を直接照射し、検知対象物Sからのシフトスポット光L2を取得し、検知対象物Sの深さ方向に対する特定物質の有無や分布を高速に検知することができる。従って、光学情報検知装置はあらゆる計測に対して利用可能であり、精密計測分野、環境分野や天体観測分野での活用も期待される。
【符号の説明】
【0090】
10…ニードル状スポット光照射部
12…光源
14…光変調部
16…ニードル状スポット光生成部
30…シフトスポット光変換部
32…出射光変調部
40…シフトスポット光受光部
48…光学情報取得部
50…光学情報検知装置
60…イメージ情報作成部
100…顕微鏡システム
A1…光軸(第一の光軸)
A2…光軸(第二の光軸)
L1…ニードル状スポット光
L2…シフトスポット光
S…検知対象物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12A】
11
【図12B】
12
【図12C】
13
【図12D】
14
【図12E】
15
【図13A】
16
【図13B】
17
【図13C】
18
【図13D】
19
【図13E】
20
【図14】
21
【図15A】
22
【図15B】
23
【図16A】
24
【図16B】
25
【図17】
26
【図18】
27
【図19】
28
【図20】
29
【図21】
30