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明細書 :美白化粧料、及びそれに含まれるアルブミン系化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年4月11日(2019.4.11)
発明の名称または考案の名称 美白化粧料、及びそれに含まれるアルブミン系化合物の製造方法
国際特許分類 A61K   8/64        (2006.01)
A61Q  19/02        (2006.01)
A61K   8/23        (2006.01)
FI A61K 8/64
A61Q 19/02
A61K 8/23
国際予備審査の請求
全頁数 27
出願番号 特願2018-520885 (P2018-520885)
国際出願番号 PCT/JP2017/019852
国際公開番号 WO2017/209028
国際出願日 平成29年5月29日(2017.5.29)
国際公開日 平成29年12月7日(2017.12.7)
優先権出願番号 2016108824
優先日 平成28年5月31日(2016.5.31)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】丸山 徹
【氏名】池田 真由美
【氏名】異島 優
【氏名】水田 夕稀
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100168583、【弁理士】、【氏名又は名称】前井 宏之
審査請求 未請求
テーマコード 4C083
Fターム 4C083AA122
4C083AB111
4C083AB112
4C083AD022
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC03
4C083CC19
4C083DD23
4C083EE07
4C083EE16
4C083FF04
要約 美白化粧料は、アルブミン系化合物を含む。アルブミン系化合物は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫黄原子が付加したものである。アルブミン系化合物は、1部位につき複数個の硫黄原子を有する。アルブミン系化合物の製造方法は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させる工程を含む。アルブミン系化合物は、美白化粧料に含まれる。
特許請求の範囲 【請求項1】
アルブミン系化合物を含み、
前記アルブミン系化合物は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫黄原子が付加したものであり、
前記アルブミン系化合物は、1部位につき複数個の硫黄原子を有する、美白化粧料。
【請求項2】
前記アルブミン系化合物は、1部位につき2個以上6個以下の硫黄原子を有する、請求項1に記載の美白化粧料。
【請求項3】
前記アルブミンは、血清アルブミンである、請求項1又は2に記載の美白化粧料。
【請求項4】
アルブミン系化合物の製造方法であって、
前記アルブミン系化合物は、請求項1に記載の美白化粧料に含まれるものであり、
アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させる工程を含む、アルブミン系化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アルブミンは、血清アルブミンである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記硫化物は、多硫化ナトリウムである、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記多硫化ナトリウムは、Na22、Na23、又はNa24である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
加温して、前記アルブミンまたは前記アルブミン誘導体に前記硫化物を付加反応させる、請求項4~7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
金属イオンの存在下において、前記アルブミンまたは前記アルブミン誘導体に前記硫化物を付加反応させる、請求項4~8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記金属イオンは、二価の金属イオンである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記金属イオンは、温泉成分由来である、請求項9または10に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、美白化粧料、及びそれに含まれるアルブミン系化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美白化粧品として、例えば、美白用皮膚外用剤が知られている(特許文献1)。この美白用皮膚外用剤は、必要に応じて酵素架橋処理を施したタンパク質ナノ粒子に、グルタチオン等のメラニン生成抑制剤を内包させたものを、有効成分として含む。
【0003】
また、硫化ナトリウムは、メラニンの産生を抑制して美白効果を奏することが知られており、硫化ナトリウムの化粧品への応用が検討されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-247814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の美白用皮膚外用剤に含まれる有効成分の調製には、上述のとおり、タンパク質ナノ粒子が用いられる。このタンパク質ナノ粒子は、複数の工程にて調製される。有効成分を得るには、さらに、タンパク質ナノ粒子にメラニン生成抑制剤を内包させる必要がある。よって、美白用皮膚外用剤に含まれる有効成分の調製は煩雑である。
【0006】
一方、硫化ナトリウム(Na2S)は、溶剤に溶解させて溶液の状態にすると、硫化水素(H2S)となり、生理的pHでは、その約半数が速やかに気体となって消失してしまう。したがって、硫黄原子の担体として有用な物質を見出し、安定した状態でメラニン産生抑制成分(有効成分)が含まれた化粧品を開発することが待ち望まれている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、有効成分の安定性に優れた美白化粧料を提供することである。また、その目的は、美白化粧料に含まれる有効成分を簡易な工程で製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の美白化粧料は、アルブミン系化合物を含む。前記アルブミン系化合物は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫黄原子が付加したものである。前記アルブミン系化合物は、1部位につき複数個の硫黄原子を有する。
【0009】
本発明の製造方法は、アルブミン系化合物の製造方法である。前記アルブミン系化合物は、前記美白化粧料に含まれる。本発明の製造方法は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させる工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の美白化粧料は、美白効果に優れるのは勿論のこと、有効成分の安定性及び安全性に優れ、化粧料として適した匂いを有する。また、本発明の製造方法により、美白化粧料に含まれる有効成分を簡易な工程で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験例2において、細胞溶解液の波長405nmにおける吸光度を示す棒グラフである。
【図2】(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、試験例2において、培養後のB16マウスメラノーマ細胞の光学顕微鏡写真である。
【図3】試験例2において、細胞溶解液における培養後のB16マウスメラノーマ細胞内のメラニン産生量を示す棒グラフである。
【図4】試験例4において、測定試料の蛍光強度を示す棒グラフである。
【図5】試験例4において、細胞溶解液における培養後のB16マウスメラノーマ細胞内のメラニン産生量を示す棒グラフである。
【図6】試験例5において、クリームにおける細胞生存率を示す棒グラフである。
【図7】(a)及び(b)は、それぞれ、試験例6における平均蛍光強度を示す棒グラフである。
【図8】アルブミン系化合物によるメラミン抑制を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。なお、有機化合物名の後に「系」を付けて、有機化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。

【0013】
<第一実施形態:アルブミン系化合物及びその製造方法>
第一実施形態は、アルブミン系化合物及びその製造方法に関する。アルブミン系化合物は、メラニン産生抑制効果を付与する有効成分として、美白化粧料に含まれる。

【0014】
上述のとおり、硫化ナトリウム等の硫化物は、メラニンの産生を抑制して美白効果を奏することが知られており、美白化粧料の有効成分として注目されている。化粧料の調製には、通常、溶剤が使用されるが、硫化物を溶剤に溶解させた溶液中で、硫化物は硫化水素となる。溶液中の硫化水素は、メラニンの産生を抑制する能力を維持しているものの、それ自身が消失し易い。硫化水素は、生理的pH(化粧料の好適なpH)の溶液中では、その約半数が速やかに気体となって消失してしまう。

【0015】
そこで、このように消失し易い硫化水素ではなく、安定した状態のアルブミン系化合物を調製し、有効成分として美白化粧料に配合することを検討した。

【0016】
アルブミン系化合物は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫黄原子が付加したものであり、1部位につき複数個の硫黄原子を有する。アルブミン系化合物の製造方法は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させる工程を含む。

【0017】
1.アルブミンまたはアルブミン誘導体
アルブミンまたはアルブミン誘導体は、いわゆる、硫黄原子の担体として作用する成分である。

【0018】
アルブミンまたはアルブミン誘導体の種類は、特に制限されない。アルブミンは、血清アルブミン及び遺伝子組換えアルブミンの何れであってもよい。入手が容易である点から、アルブミンとして、血清アルブミンが好適に用いられる。血清アルブミンとしては、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、又はニワトリ血清アルブミンが挙げられる。特にヒト血清アルブミンは、より高い安全性を有する点から好適である。また、遺伝子組換えの場合、二量体や多量体化したアルブミンも含まれる。また、アルブミンそのものだけでなく、アルブミンを化学的に修飾したアルブミン誘導体を用いてもよい。アルブミンまたはアルブミン誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。

【0019】
アルブミンまたはアルブミン誘導体の分子量は、特に制限されない。例えば血清アルブミンの場合、66000以上66500以下のものを用いることが好ましい。多量体化の場合は、100nm程度の粒子サイズであることが好ましい。

【0020】
2.硫化物
硫化物の種類は、特に制限されない。硫化物としては、例えば、一般式:Na2n(一般式中、nは1以上6以下の整数を表す)で表される硫化ナトリウム、硫化アリル(具体的には、ジアリルスルフィド又はジアリルジスルフィド)、若しくは硫黄(例えば、S8で表される硫黄)が挙げられる。入手が容易である点から、硫化物の中でも硫化ナトリウムが好適に用いられる。硫化ナトリウムの中でも、多硫化ナトリウム(上述の一般式中、nが2以上6以下の整数を表す化合物)は、アルブミンまたはアルブミン誘導体への付加反応が良好で、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫黄原子が安定して付加し易い点で好適である。より高い安定性及びより優れたメラニン産生抑制能力を示すアルブミン系化合物が得られる点から、多硫化ナトリウムの中でも、特にNa22、Na23、又はNa24が好適である。硫化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。

【0021】
3.付加反応工程
アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応は、付加反応である。アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応比(アルブミンまたはアルブミン誘導体:硫化物)は、特に制限されないが、モル濃度比で、0.1:1~0.6:1であることが好ましく、0.2:1~0.5:1であることがさらに好ましい。硫化物1モル濃度に対して、アルブミンまたはアルブミン誘導体の物質量が0.1モル濃度以上であると、未反応の硫化物の除去を容易に行うことができる。硫化物1モル濃度に対して、アルブミンまたはアルブミン誘導体の物質量が0.6モル濃度以下であると、より高い安定性及びより優れたメラニン産生抑制能力を示すアルブミン系化合物が得られる。

【0022】
アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させるには、例えば、アルブミンもしくはアルブミン誘導体及び硫化物を加温する方法、または、アルブミンもしくはアルブミン誘導体及び硫化物を振盪する方法を採用することができる。特にアルブミンまたはアルブミン誘導体及び硫化物を加温する方法は、特別な装置を必要とせず、より簡易に反応を進行させることができる点で好適である。

【0023】
アルブミンまたはアルブミン誘導体及び硫化物を加温する方法では、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を加え、pHを調整した緩衝液中で、反応温度及び反応時間を調整して、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物とを反応させる。

【0024】
加温する方法で、緩衝液の種類には特に制限がなく、例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、フタル酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、又は酢酸緩衝液が挙げられる。アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応が促進され易い点から、緩衝液のpHは、7.0以上7.8以下であることが好ましく、7.2以上7.6以下であることがさらに好ましい。

【0025】
加温する方法で、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応温度は、30℃以上50℃以下であることが好ましく、32℃以上45℃以下であることがさらに好ましい。反応温度が30℃以上であると、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応が促進され易い。反応温度が50℃以下であると、アルブミンまたはアルブミン誘導体が、劣化や凝集等の変性を起こす恐れがない。

【0026】
加温する方法で、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応時間は、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応が促進され易い点から、4時間以上10時間以下であることが好ましく、5時間以上8時間以下であることがさらに好ましい。

【0027】
アルブミンまたはアルブミン誘導体及び硫化物を振盪する方法では、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を加え、pHを調整した緩衝液中で、振盪速度及び反応時間を調整して、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物とを反応させる。

【0028】
振盪する方法で、緩衝液の種類には特に制限がなく、上述の加温する方法で例示された緩衝液を用いることができる。緩衝液のpHも、上述の加温する方法と同様に、7.0以上7.8以下であることが好ましく、7.2以上7.6以下であることがさらに好ましい。

【0029】
振盪する方法で、アルブミンまたはアルブミン誘導体及び硫化物の振盪速度は、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応が促進される限り特に制限はなく、30回/分程度以上180回/分程度以下に調整することが好ましい。

【0030】
振盪する方法で、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応時間は、アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応が促進され易い点から、4時間以上10時間以下であることが好ましく、5時間以上8時間以下であることがさらに好ましい。

【0031】
なお、アルブミンまたはアルブミン誘導体及び硫化物の振盪には、例えば、一般的な振盪機を用いることができ、これにより、例えば上述の振盪速度となるように、適宜調整すればよい。

【0032】
例えば上述の加温する方法又は振盪する方法により、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させることができるが、例えば、酸化物質(具体的には、一酸化窒素又は過酸化水素)、若しくは金属イオンの存在下において、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させると、付加反応が促進され、反応効率が向上する。

【0033】
特に金属イオンの存在下において付加反応を行うことが、付加反応がより促進され、反応効率がさらに向上し、充分に硫黄原子が付加したアルブミン系化合物が得られ易い点から好適である。金属イオンの存在による反応効率の向上について、詳細は明らかではないが、おそらく、金属イオンが硫化物中の硫黄原子を引き付けることにより、アルブミンまたはアルブミン誘導体への硫黄原子の付加が促進されると考えられる。金属イオンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。金属イオンの中でも、効果の発現がさらによく、取扱い易い点から、二価の金属イオンが好ましい。二価の金属イオンとしては、例えば、Fe2+、Mg2+、Ca2+、又はCu2+が挙げられる。

【0034】
金属イオンの存在下において付加反応を行う場合、金属イオンと硫化物との割合(金属イオン:硫化物)が、モル濃度比で、0.2:1~2:1であることが好ましく、0.5:1~1.5:1であることがさらに好ましい。硫化物1モル濃度に対して、金属イオンの物質量が0.2モル濃度以上であると、反応効率の向上効果が充分に発現される。硫化物1モル濃度に対して、金属イオンの物質量が2モル濃度以下であると、過剰の金属イオンによる代表的なフェントン反応などによる酸化反応による付加反応阻害の恐れがない。

【0035】
なお、金属イオンの存在下において付加反応を行う際には、例えば、温泉水を使用することができる。温泉水は、一般に、上述のごとき二価の金属イオンを複数種含むものである。よって、含まれる金属イオン種に応じて温泉水を適宜選択し、例えば金属イオンと硫化物との割合が上述のモル濃度比範囲となるように、硫化物に対する温泉水の使用割合を調整することが好ましい。すなわち、含まれる金属イオン種に応じて温泉水を適宜選択し、硫化物と金属イオンとの割合を考慮して硫化物に対する温泉水の使用割合を決定した後、pHを調整した緩衝液と温泉水とを混合する。この混合液中で、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を加えることにより、金属イオンの存在下において、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫化物を付加反応させることができる。

【0036】
4.その他の工程
アルブミンまたはアルブミン誘導体と硫化物との反応の終了を確認した後に、ゲルを濾過することにより(例えばゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いることにより)、未反応の硫化物を除去して、目的とするアルブミン系化合物を精製して得ることができる。

【0037】
5.アルブミン系化合物
アルブミン系化合物は、アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫黄原子が付加したものであり、1部位につき複数個の硫黄原子を有する。

【0038】
元来アルブミンまたはアルブミン誘導体は、それ自身がシステイン由来のSH基を有し、システインのSH基が酸化された場合は、S-S結合で共有結合されたシステイン付加体となっている。しかし、SH基を有するだけのアルブミンやシステイン付加アルブミンおよびその誘導体のみでは、メラニン産生抑制作用を呈さない。よって、このようなアルブミンまたはアルブミン誘導体を配合しても、優れた美白効果を奏する美白化粧料を得ることはできない。

【0039】
アルブミン系化合物は、アルブミンまたはアルブミン誘導体中のSH基及びS-S結合において、硫黄原子にさらに硫黄原子が付加して、例えば、SSH基、SSSH基、S-S-S結合等が形成されたものである。詳細は明らかではないが、アルブミンまたはアルブミン誘導体において、このように硫黄原子にさらに硫黄原子が付加されると、複数の硫黄原子が担体により担持され、アルブミンまたはアルブミン誘導体では認められなかったメラニン産生抑制作用が認められる。そして、硫黄原子にさらに硫黄原子が付加している(以下、多硫黄付加ともいう)アルブミン系化合物は、硫化物とは異なり、生理的pHでも安定した状態が維持される。

【0040】
アルブミン系化合物は、1部位につき2個以上6個以下の硫黄原子を有することが好ましく、1部位につき2個以上4個以下の硫黄原子を有することがさらに好ましい。アルブミンまたはアルブミン誘導体に硫黄原子が付加せず、アルブミン系化合物において、1部位につき1個の硫黄原子しか存在しないと、上述のとおり、メラニン産生抑制作用が認められない。アルブミン系化合物が、1部位につき6個以下の硫黄原子を有する場合には、硫黄原子の転移反応が起こることがほとんどなく、充分なメラニン産生抑制作用が付与され、アルブミン系化合物の美白化粧料への適用が容易である。なお、アルブミン系化合物における硫黄原子の転移反応の有無は、詳細は明らかでないが、アルブミン系化合物が存在する環境(温度、湿度等)に起因する場合もあると考えられる。よって、アルブミン系化合物の1部位における硫黄原子の数は、上述のごとく6個以下が好ましいが、これに限定されるものではない。

【0041】
アルブミンまたはアルブミン誘導体において、SH基やS-S結合の存在位置及び存在数は、特定されている。しかしながら、アルブミン系化合物において、多硫黄付加部位の存在位置及び存在数は、特定されるものではない。詳細は明らかでないが、多硫黄付加部位の存在位置及び存在数は、付加反応の反応条件に応じて適宜変化すると考えられる。また、アルブミン系化合物における多硫黄付加部位の存在位置が、アルブミンまたはアルブミン誘導体におけるSH基やS-S結合の存在位置に対して変化を起こしている場合も考えられる。

【0042】
アルブミン系化合物において、各多硫黄付加部位に存在する硫黄原子の数は、各部位で同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、例えばアルブミンまたはアルブミン誘導体中のSH基各々に、同じ数の硫黄原子が付加していてもよく、SH基各々に応じて、異なる数の硫黄原子が付加していてもよい。

【0043】
アルブミン系化合物中の硫黄原子(サルフェン硫黄)の検出は、例えば、蛍光プローブ法にて行うことができる。

【0044】
サルフェン硫黄(Sulfane sulfur)化合物とは、一般に、S-S*-S、S-S*-S*-S等の硫黄原子に挟まれた硫黄を含む分子の総称であり、サルフェン硫黄の検出には、サルフェン硫黄検出用蛍光プローブが用いられる。サルフェン硫黄検出用蛍光プローブとしては、細胞や組織を破壊せずにサルフェン硫黄を検出することが可能な、非破壊的な蛍光プローブが好ましい。このような非破壊的なサルフェン硫黄検出用蛍光プローブとしては、例えば、SSP2又はSSP4が挙げられる。SSP2及びSSP4は、求核性官能基を有するチオサリチル酸を1分子(SSP2)または2分子(SSP4)有し、蛍光色素であるフルオレセインから構成されている。蛍光色素のフェノール性水酸基がチオサリチル酸で保護された状態では、SSP2及びSSP4は、ほとんど蛍光を発しないが、チオサリチル酸がサルフェン硫黄と反応すると、反応物は、速やかな分子内環化反応によって、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オンを脱離し、蛍光体を生成する。よって、この蛍光体に基づく蛍光強度を測定し、SSP2又はSSP4の蛍光強度と比較することにより、サルフェン硫黄を検出することができる。

【0045】
以上、第一実施形態に係るアルブミン系化合物及びその製造方法を説明した。第一実施形態に係る製造方法によって得られるアルブミン系化合物は、メラニン産生抑制効果、安定性及び安全性に優れ、化粧料の成分として適した匂いを有する。第一実施形態に係る製造方法は、このようなアルブミン系化合物を、簡易な工程で製造することができる。

【0046】
<第二実施形態:美白化粧料>
第二実施形態は、美白化粧料に関する。美白化粧料は、アルブミン系化合物を含む。アルブミン系化合物は、第一実施形態に係るアルブミン系化合物であり、メラニン産生抑制効果、安定性及び安全性に優れ、化粧料の成分として適した匂いを有する。

【0047】
美白化粧料に含まれるアルブミン系化合物は、1種であってもよく、異なる2種以上が適宜併用されていてもよい。

【0048】
美白化粧料におけるアルブミン系化合物の配合量は、目的とする美白化粧料の種類(形態)等に応じて適宜調整することができ、特に制限はない。アルブミン系化合物の配合量は、例えば、美白化粧料100質量部に対して、固形分換算で、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.12質量部以上0.3質量部以下であることがさらに好ましい。アルブミン系化合物の配合量が0.133質量部以上の場合は、アルブミン系化合物による美白効果がより充分に発現される。

【0049】
美白化粧料には、アルブミン系化合物の他に、例えば一般に化粧料に用いられる添加剤を適宜配合することができる。添加剤としては、例えば、油脂、界面活性剤、保湿剤、美白剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、洗浄剤、乳化剤、賦形剤、又は香料が挙げられる。

【0050】
油脂としては、例えば、植物性油脂(具体的には、流動パラフィン、パラフィン、セタノール、アボカド油、オリーブ油、ホホバ油、又はヤシ油)、動物性油脂(具体的には、牛脂、豚脂、馬脂、タートル油、ミンク油、パーセリン油、又はスクワラン)、若しくは合成油脂(具体的には、メチルポリシロキサン、ベヘニルアルコール、トリカプリルカプリン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリン、又はシリコーンオイル)が挙げられる。

【0051】
界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤(具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、又はラウリン酸ジエタノールアミド)、陽イオン性界面活性剤(具体的には、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、又は塩化ベンザルコニウム)、若しくは非イオン性界面活性剤(具体的には、グリセリルモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖エステル、又は脂肪酸アミド)が挙げられる。

【0052】
保湿剤としては、例えば、合成保湿剤(具体的には、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ソーダ、又はパントテテイン-S-スルホン酸塩)、若しくは天然保湿剤(具体的には、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、胎盤抽出液、ローヤルゼリー、微生物発酵液、キチン、キトサン、又はペクチン)が挙げられる。

【0053】
美白剤としては、アルブミン系化合物以外の化合物が例示され、例えば、コウジ酸、アスコルビン酸、又は胎盤抽出液が挙げられる。

【0054】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、又はクエン酸ナトリウムが挙げられる。

【0055】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、又はカラギーナンが挙げられる。

【0056】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(具体的には、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、又はブチルパラベン)、フェノキシエタノール、エタノール、若しくはデヒドロ酢酸が挙げられる。

【0057】
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンE、ブチルオキシトルエン(BHT)、又はブチルオキシアニゾール(BHA)が挙げられる。

【0058】
紫外線吸収剤としては、例えば、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、オキシベンゾン、サリチル酸オクチル、ジヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、又はメトキシケイ皮酸オクチルが挙げられる。

【0059】
顔料としては、例えば、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、ナイロンパウダー、セリサイト、マイカ、又はタルクが挙げられる。

【0060】
洗浄剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。

【0061】
乳化剤としては、例えば、大豆レシチン油が挙げられる。

【0062】
賦形剤としては、例えば、硫酸ナトリウムが挙げられる。

【0063】
添加剤の配合量は、目的とする美白化粧料の種類(形態)等に応じて適宜調整することができ、アルブミン系化合物による効果を阻害しない限り、特に制限されるものではない。

【0064】
美白化粧料の調製方法には特に制限がなく、一般的な化粧料の調製方法を採用することができ、例えば、後述する形態に応じて適宜決定すればよい。

【0065】
美白化粧料の形態には特に制限がない。美白化粧料の優れた美白効果を考慮すると、美白化粧料の形態としては、例えば、基礎化粧品(具体的には、クリーム、乳液、ローション、洗顔料、又はパック)、若しくはメイクアップ化粧品(具体的には、口紅、パウダーファンデーション、又はリキッドファンデーション)が挙げられる。

【0066】
以上、第二実施形態に係る美白化粧料を説明した。第二実施形態に係る美白化粧料は、メラニン産生抑制効果、安定性及び安全性に優れ、化粧料に適した匂いを有するアルブミン系化合物を有効成分として含んでいる。第二実施形態に係る美白化粧料により、メラニンの蓄積によるシミ、ソバカス等の発現が抑制され、くすみが改善されて白く美しい肌が維持される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
製造例1(アルブミン系化合物の製造)
リン酸緩衝液(pH7.4)中、脱脂ヒト血清アルブミン(分子量:66,500、20mg、300μM)にNa2S(78μg、1mM)を加え、37℃に加温して7時間反応させて、ヒト血清アルブミンに硫黄原子を付加させた。付加反応後の生成物について、以下の条件にてゲルを濾過して未反応の硫化物を除去し、目的とするアルブミン系化合物-1(9.5mg)を得た。
[ゲル濾過の条件]
移動相: リン酸緩衝液
流速 : 10mL/分
温度 : 25℃
【実施例】
【0069】
製造例2~4(アルブミン系化合物の製造)
Na2S(78μg、1mM)に代えて、Na22(110μg、1mM、製造例2)、Na23(142μg、1mM、製造例3)、又はNa24(174μg、1mM、製造例4)を用いた以外は、アルブミン系化合物-1の製造と同様にして、アルブミン系化合物-2(9.4mg、製造例2)、アルブミン系化合物-3(9.5mg、製造例3)、又はアルブミン系化合物-4(10.5mg、製造例4)を得た。
【実施例】
【0070】
試験例1(サルフェン硫黄の検出)
蛍光プローブ法によりサルフェン硫黄(Sulfane sulfur)の検出を行った。サルフェン硫黄検出用蛍光プローブとしてSSP2(蛍光色素:フルオレセイン)を用いた。
【実施例】
【0071】
リン酸緩衝液(pH7.4)にヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(1mM)を溶解させた溶液に、モル濃度が20μMとなるように、アルブミン系化合物-1~4の何れかを加えて、試料を調製した。この試料と、ジメチルスルホキシドにSSP2(5μM)を溶解させた蛍光指示薬とを、室温(25℃)で10分間反応させた後、分光蛍光光度計(日本分光株式会社製、FP-8200)を用いて反応物の蛍光強度(励起波長:457nm、蛍光波長:490~580nm)を測定した。SSP2の蛍光強度と併せて、各反応物の蛍光強度を以下に示す。
【実施例】
【0072】
蛍光強度(単位なし)
SSP2 512
反応物1(アルブミン系化合物-1) 1135
反応物2(アルブミン系化合物-2) 1219
反応物3(アルブミン系化合物-3) 1534
反応物4(アルブミン系化合物-4) 3380
【実施例】
【0073】
上述のとおり、アルブミン系化合物-1~4の試料は何れも、SSP2との反応により、SSP2の蛍光強度の約2~7倍の蛍光強度を示している。このように、アルブミン系化合物-1~4は何れも、分子内にサルフェン硫黄を有していることが確認された。よって、アルブミン系化合物-1~4は何れも、ヒト血清アルブミンに硫黄原子が付加したものであり、1部位につき複数個の硫黄原子を有するものであることが分かる。また、アルブミン系化合物-1~4は何れも、生理的pHで安定した状態であることが分かる。
【実施例】
【0074】
試験例2(メラニン産生抑制効果の確認)
2-1.吸光度の測定及び光学顕微鏡写真の撮影
B16マウスメラノーマ細胞を、2.5×104セル/ウェルとなるように、24ウェルプレートに播種し、ダルベッコ改変イーグル培地(以下、DMEM(+)という)で37℃、5%CO2の条件下において24時間プレ培養した。次いで、プレ培養した培地を、アルブミン系化合物-2を添加したDMEM(+)(アルブミン系化合物:20μM、チロシン:0.4mM、NH4Cl:10mM)と交換し、さらに37℃、5%CO2の条件下において72時間培養した。
【実施例】
【0075】
なお、アルブミン系化合物-2を添加したDMEM(+)に代えて、リン酸緩衝液(pH7.4)を添加したDMEM(+)にて培養したもの、及び市販の美白化粧水(アルブチン:終濃度1.10mM、アスコルビン酸:591μM)を添加したDMEM(+)にて培養したものを、コントロールとして用意した。
【実施例】
【0076】
次いで、ウェルに接着している培養後のB16マウスメラノーマ細胞を、リン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液(1N)を200μLずつ加えた。これを60℃で1時間インキュベートして、培養後のB16マウスメラノーマ細胞を溶解させ、細胞溶解液を回収した。分光光度計(バイオラッド株式会社製、モデル680μプレートリーダー)を用いて、細胞溶解液の波長405nmにおける吸光度を測定した。その結果を図1に示す。なお、405nmはメラニンの吸収波長である。また、オールインワン蛍光顕微鏡(株式会社キーエンス製、BZ-X700、以下、蛍光顕微鏡という)を用いて培養後のB16マウスメラノーマ細胞(400倍)を撮影した。その結果を図2に示す。
【実施例】
【0077】
図1は、リン酸緩衝液を添加したDMEM(+)にて培養した細胞溶解液及びアルブミン系化合物-2を添加したDMEM(+)にて培養した細胞溶解液の波長405nmにおける吸光度を示す棒グラフである。図1において、縦軸は吸光度(単位なし)を表し、吸光度が小さいほど、メラニンの産生が少ない。
【実施例】
【0078】
図1のとおり、アルブミン系化合物-2の波長405nmにおける吸光度は、コントロールであるリン酸緩衝液の波長405nmにおける吸光度の約1/2である。
【実施例】
【0079】
図2(a)は、リン酸緩衝液を添加したDMEM(+)にて培養したB16マウスメラノーマ細胞のSEM写真、図2(b)は、市販の美白化粧水を添加したDMEM(+)にて培養したB16マウスメラノーマ細胞のSEM写真、及び図2(c)は、アルブミン系化合物-2を添加したDMEM(+)にて培養したB16マウスメラノーマ細胞のSEM写真である。図2のSEM写真において、黒色の斑点様の箇所が、メラニンの産生部位である。
【実施例】
【0080】
図2のとおり、市販の美白化粧水を用いた場合、リン酸緩衝液を用いた場合よりは、メラニンの産生が少ない。しかし、アルブミン系化合物-2を用いると、メラニンの産生は殆ど認められず、リン酸緩衝液と比較してメラニンの産生が著しく抑制されているのは勿論のこと、市販の美白化粧水と比較しても、メラニンの産生が著しく抑制されている。
【実施例】
【0081】
よって、図1及び図2より、アルブミンに硫黄原子が付加したものであり、1部位につき複数個の硫黄原子を有するアルブミン系化合物は、メラニン産生抑制効果に極めて優れることが分かる。
【実施例】
【0082】
2-2.メラニン産生量の測定
B16マウスメラノーマ細胞を、2.5×104セル/ウェルとなるように、24ウェルプレートに播種し、DMEM(+)で37℃、5%CO2の条件下において24時間プレ培養した。次いで、プレ培養した培地を、アルブミン系化合物-1~4の何れかを添加したDMEM(+)(アルブミン系化合物:20μM、チロシン:0.4mM、NH4Cl:10mM)と交換し、さらに37℃、5%CO2の条件下において72時間培養した。
【実施例】
【0083】
なお、アルブミン系化合物を添加したDMEM(+)に代えて、製造例1~4で用いた脱脂ヒト血清アルブミンを添加したDMEM(+)にて培養したものを、コントロールとして用意した。
【実施例】
【0084】
次いで、ウェルに接着している培養後のB16マウスメラノーマ細胞を、リン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液(1N)を200μLずつ加えた。これを60℃で1時間インキュベートして、培養後のB16マウスメラノーマ細胞を溶解させ、細胞溶解液を回収した。上述の「2-1.吸光度の測定及び光学顕微鏡写真の撮影」で用いたものと同じ分光光度計を用いて、細胞溶解液の波長405nmにおける吸光度を測定して、培養後のB16マウスメラノーマ細胞内のメラニン産生量を算出した。その結果を図3に示す。
【実施例】
【0085】
図3は、各細胞溶解液における培養後のB16マウスメラノーマ細胞内のメラニン産生量を示す棒グラフである。図3において、縦軸は、細胞溶解液(1mL)中のメラニン産生量(mg)を表す。
【実施例】
【0086】
図3のとおり、アルブミン系化合物-1~4は何れも、コントロールの脱脂ヒト血清アルブミンと比較して、メラニン産生量が少ない。これにより、アルブミンに硫黄原子が付加したものであり、1部位につき複数個の硫黄原子を有するアルブミン系化合物は、アルブミンと比較して、メラニン産生抑制効果に優れることが分かる。
【実施例】
【0087】
特に、脱脂ヒト血清アルブミンにNa22、Na23、及びNa24をそれぞれ付加反応させたアルブミン系化合物-2、アルブミン系化合物-3、及びアルブミン系化合物-4は、メラニン産生量が非常に少ない。これにより、硫化物の中でも、特にNa22、Na23、又はNa24といった多硫化ナトリウムを、アルブミンに付加反応させて得られるアルブミン系化合物は、メラニン産生抑制効果にさらに優れることが分かる。
【実施例】
【0088】
試験例3(タンパク質濃度の測定)
上述の試験例2の「2-2.メラニン産生量の測定」と同様の方法にて培養したB16マウスメラノーマ細胞を、生理食塩水で2回以上洗浄し、ウェルからできる限り水分を吸い取った。これに水酸化ナトリウム200μLを加えた後、細胞抽出液をマイクロチューブに移して、60℃で2時間インキュベートした。インキュベート後の上清のタンパク質溶液を新しいマイクロチューブに回収し、これを試料とした。
【実施例】
【0089】
また、スタンダードとしてBSA(ウシ血清アルブミン)標準タンパク質溶液(タンパク質濃度:1mg/mL、0.5mg/mL、0.25mg/mL、又は0.125mg/mL)を準備した。
【実施例】
【0090】
試験管に、各試料10μL、各スタンダード10μL、又はバックグラウンド10μLを取り、各々タンパク質定量試薬(ビシンコニン酸試薬)100μLを加えてよく撹拌し、37℃で30分間加温した。試験管内の溶液の温度が室温(25℃)まで下がったことを確認した後、上述の試験例2の「2-1.吸光度の測定及び光学顕微鏡写真の撮影」で用いたものと同じ分光光度計を用いて吸光度を測定した。
【実施例】
【0091】
波長540nmにおけるバックグラウンドの吸光度を0.00に設定した。次いで、波長540nmにおける各スタンダードの吸光度を測定して、標準直線を作成した。波長540nmにおける各試料の吸光度を測定した後、スタンダードの標準直線を用いて、各試料のタンパク質濃度を求めた。各試料のタンパク質濃度を以下に示す。
【実施例】
【0092】
タンパク質濃度(mg/mL)
コントロール(ヒト血清アルブミン) 0.81
試料1(アルブミン系化合物-1) 0.84
試料2(アルブミン系化合物-2) 0.88
試料3(アルブミン系化合物-3) 0.97
試料4(アルブミン系化合物-4) 0.95
【実施例】
【0093】
試験例4(金属イオンによる効果の確認)
4-1.サルフェン硫黄の検出
まず、測定試料1a及び2aを調製した。リン酸緩衝液(pH7.4)と塩化第二鉄(Fe3+濃度:1mM)との混合液に、脱脂ヒト血清アルブミン(20mg、300μM)を溶解させて測定試料1aを調製した。リン酸緩衝液と塩化銅(Cu2+濃度:1mM)との混合液に、脱脂ヒト血清アルブミン(20mg、300μM)を溶解させて測定試料2aを調製した。
【実施例】
【0094】
次いで、測定試料1b及び2bを調製した。リン酸緩衝液(pH7.4)と塩化第二鉄(Fe3+濃度:1mM)との混合液中、脱脂ヒト血清アルブミン(20mg、300μM)にNa2S(78μg、1mM)を加え、37℃に加温して7時間反応させて、ヒト血清アルブミンに硫黄原子を付加させた。付加反応後の生成物について、製造例1と同じ条件にてゲルを濾過して未反応の硫化物を除去し、測定試料1bを調製した。リン酸緩衝液(pH7.4)と塩化第二鉄(Fe3+濃度:1mM)との混合液に代えて、リン酸緩衝液と塩化銅(Cu2+濃度:1mM)との混合液を用いたほかは、測定試料1bと同様にして、測定試料2bを調製した。
【実施例】
【0095】
測定試料1a及び2a、並びに測定試料1b及び2bについて、上述の試験例1と同様の蛍光プローブ法によりサルフェン硫黄の検出を行った。
【実施例】
【0096】
すなわち、測定試料と、ジメチルスルホキシドにSSP2(5μM)を溶解させた蛍光指示薬とを、室温(25℃)で10分間反応させた後、分光蛍光光度計を用いて反応物の蛍光強度を測定した。その結果を図4に示す。
【実施例】
【0097】
図4は、測定試料1a及び2a、並びに測定試料1b及び2bの蛍光強度を示す棒グラフである。図4において、縦軸は蛍光強度(単位なし)を表す。
【実施例】
【0098】
図4のとおり、測定試料1aの蛍光強度よりも測定試料1bの蛍光強度の方が高く、測定試料2aの蛍光強度よりも測定試料2bの蛍光強度の方が高い。これにより、金属イオンの存在下においてヒト血清アルブミンに硫化ナトリウムを反応させると、ヒト血清アルブミンへの硫黄原子の付加反応が促進されることが分かる。
【実施例】
【0099】
また、測定試料1bの蛍光強度と測定試料1aの蛍光強度との差よりも、測定試料2bの蛍光強度と測定試料2aの蛍光強度との差の方がはるかに大きい。これにより、特に、三価のFe3+を存在させるよりも、二価のCu2+を存在させた方が、ヒト血清アルブミンへの硫黄原子の付加反応が促進され易いことが分かる。
【実施例】
【0100】
4-2.メラニン産生量の測定
リン酸緩衝液(pH7.4)に、後述の表1及び表2に示すpH及び成分の温泉水-1~10を66.7質量%の割合で混合させた混合溶液中、脱脂ヒト血清アルブミン(20mg、300μM)にNa22(110μg、1mM)を加え、37℃に加温して7時間反応させて、ヒト血清アルブミンに硫黄原子を付加させた。付加反応後の生成物について、製造例1と同じ条件にてゲルを濾過して未反応の硫化物を除去し、アルブミン系化合物-2A~2J(10~18mg)を得た。なお、表1及び表2中、ラドン以外の各成分の量は、温泉水1kgあたりの含有量(mg)であり、ラドンの量は、温泉水1kgあたりの含有量(×10-10Ci)である。
【実施例】
【0101】
【表1】
JP2017209028A1_000002t.gif
【実施例】
【0102】
【表2】
JP2017209028A1_000003t.gif
【実施例】
【0103】
B16マウスメラノーマ細胞を、2.5×104セル/ウェルとなるように、24ウェルプレートに播種し、DMEM(+)で37℃、5%CO2の条件下において24時間プレ培養した。次いで、プレ培養した培地を、アルブミン系化合物-2A~2Jの何れかを添加したDMEM(+)(アルブミン系化合物:20μM、チロシン:0.4mM、NH4Cl:10mM)と交換し、さらに37℃、5%CO2の条件下において72時間培養した。
【実施例】
【0104】
なお、アルブミン系化合物-2A~2Jの何れかを添加したDMEM(+)に代えて、製造例1で用いた脱脂ヒト血清アルブミンを添加したDMEM(+)にて培養したものを、コントロールとして用意した。また、アルブミン系化合物-2A~2Jの何れかを添加したDMEM(+)に代えて、アルブミン系化合物-2(温泉水なしで製造)を添加したDMEM(+)にて培養したものも併せて用意した。
【実施例】
【0105】
次いで、上述の試験例2の「2-2.メラニン産生量の測定」と同様にして細胞溶解液を回収し、上述の試験例2の「2-1.吸光度の測定及び光学顕微鏡写真の撮影」で用いたものと同じ分光光度計を用いて、細胞溶解液の波長405nmにおける吸光度を測定して、培養後のB16マウスメラノーマ細胞内のメラニン産生量を算出した。その結果を図5に示す。
【実施例】
【0106】
図5は、各細胞溶解液における培養後のB16マウスメラノーマ細胞内のメラニン産生量を示す棒グラフである。図5において、縦軸は、細胞溶解液(1mg/mL)中の吸光度(450nm)を表す。
【実施例】
【0107】
図5のとおり、アルブミン系化合物-2A~2Jの中でも、アルブミン系化合物-2C~2E及び2F~2Jは、コントロールの脱脂ヒト血清アルブミンと比較して、メラニン産生量が非常に少ないのは勿論のこと、温泉水なしで製造したアルブミン系化合物-2と比較しても、メラニン産生量が非常に少ない。これにより、各種金属イオンを含む温泉水の存在下においてヒト血清アルブミンに硫化ナトリウムを反応させると、より充分に硫黄原子が付加しており、メラニン産生抑制効果にさらに優れたアルブミン系化合物が得られることが分かる。
【実施例】
【0108】
試験例5(安全性の確認)
まず、アルブミン系化合物を配合した美白化粧料を処方した。以下のアルブミン系化合物以外の各成分を以下の配合量(固形分換算)となるように調製した後、50℃に加温し、均一な状態となるまで撹拌混合した。混合物を室温(25℃)まで冷却し更にアルブミン系化合物を混合したのち、クリームAを得た。
【実施例】
【0109】
成分 配合量(質量部)
アルブミン系化合物-2 0.133
乳化ワックス 5
オホバ油 15
精製水 残量
(合計) 100
【実施例】
【0110】
また、上述のアルブミン系化合物-2に代えて、アルブミン系化合物-2Dを配合したほかは、クリームAと同様にして、クリームBを得た。さらに、上述のアルブミン系化合物-2を配合しなかったほかは、クリームAと同様にして、コントロールクリームを得た。
【実施例】
【0111】
経済協力開発機構が示すガイドライン(化学物質の試験に関するOECDガイドライン)TG439「in vitro皮膚刺激性:再構築ヒト表皮試験法」に記載の方法に準拠して、クリームA、クリームB及びコントロールクリームの安全性を、3次元培養皮膚細胞の生存率にて評価した。その結果を図6に示す。
【実施例】
【0112】
図6は、各クリームにおける細胞生存率を示す棒グラフである。図6において、縦軸は細胞生存率(%)を表す。なお、細胞生存率が50%を超える場合、皮膚刺激性がないと判断される。
【実施例】
【0113】
図6のとおり、クリームA及びクリームBは何れも、コントロールクリームと同様に、細胞生存率が50%を超えている。これにより、温泉水なしで製造したアルブミン系化合物-2及び温泉水の存在下において製造したアルブミン系化合物-2Dは何れも、皮膚刺激性がなく、安全性に優れたものであることが分かる。
【実施例】
【0114】
なお、アルブミン系化合物-2及びアルブミン系化合物-2Dは何れも、硫化水素臭を有さず不適切な匂いを持たない。よって、アルブミン系化合物-2を配合したクリームA及びアルブミン系化合物-2Dを配合したクリームBは何れも、不適切な匂いを持たない。
【実施例】
【0115】
試験例6(細胞内ROS及びNOの測定)
蛍光試薬CM-H2DCF-DA、CM-H2DCF-DAを用いて細胞内活性酸素(ROS)及び一酸化窒素(NO)に基づく蛍光強度を測定した。
【実施例】
【0116】
B16マウスメラノーマ細胞を、1×104セル/ウェルとなるように、96ウェルプレートに播種し、DMEM(+)で37℃、5%CO2の条件下において24時間プレ培養した。
【実施例】
【0117】
培地に蛍光試薬CM-H2DCF-DAを濃度5μMまで添加し、37℃で30分反応させて細胞内に取り込ませた。反応後、上清を除去したのち、アルブミン系化合物-4を添加した。同様の作業を行った培地をリン酸緩衝液(pH7.4)及び脱脂ヒト血清アルブミンを添加したサンプルとして用意し、コントロールとした。それぞれのサンプルに波長254nmの紫外線を10分間照射した。その後、波長485nmの励起光を照射し、波長535nmの蛍光強度を測定した。
【実施例】
【0118】
また、培地に蛍光試薬DAF-FM-DAを濃度10μMまで添加し、37℃で30分反応させて細胞内に取り込ませ、一酸化窒素(NO)測定用の懸濁液サンプルとした。反応後、培地をアルブミン系化合物-4溶液に置換した。同様の培地においてリン酸緩衝液(pH7.4)及び脱脂ヒト血清アルブミン溶液で置換したサンプルを用意し、コントロールとした。これらのサンプルに波長254nmの紫外線を10分照射した。得られたサンプルについて、波長485nmの励起光を照射し、波長535nmの蛍光強度を測定した。
【実施例】
【0119】
図7(a)および図7(b)は、それぞれ、細胞内活性酸素および一酸化窒素に起因する平均蛍光強度を示す棒グラフである。蛍光強度が少ないほど、細胞内に含まれる活性酸素(ROS)及び一酸化窒素(NO)が少ないことを示す。
【実施例】
【0120】
図7(a)に示すように、脱脂ヒト血清アルブミンを用いた場合でもリン酸緩衝液を用いた場合よりは、活性酸素に基づく蛍光強度が減少した。しかし、アルブミン系化合物-4を用いると活性酸素に基づく蛍光強度が大きく減少しており、リン酸緩衝液を添加した場合と比較して活性酸素が著しく減少されているのは勿論のこと、脱脂ヒト血清アルブミンを添加した場合と比較しても、活性酸素が減少していることが分かる。
【実施例】
【0121】
また、図7(b)に示すように、脱脂ヒト血清アルブミンを用いた場合は、リン酸緩衝液を用いた場合よりも、一酸化窒素に基づく蛍光強度は増大した。しかし、アルブミン系化合物-4を用いると、一酸化窒素に基づく蛍光強度は大きく減少しており、リン酸緩衝液及び脱脂ヒト血清アルブミンを添加した場合と比較して一酸化窒素が大きく減少していることが分かる。
【実施例】
【0122】
図8は、メラニン発生の発生メカニズムを説明するためのメカニズムを示す模式図である。皮膚のメラニンは以下のように発生すると考えられている。
【実施例】
【0123】
まず、皮膚内のチロシンは、酸化酵素チロシナーゼを介して、ドーパに変換される。ドーパはさらにチロシナーゼの働きにより、ドーパキノンに変化する。ドーパキノンは反応性が高く、体内の諸反応を経て、最終的には安定構造メラニンを生成し、メラニンが皮膚の褐色化の原因となる。
【実施例】
【0124】
チロシナーゼは細胞内の活性酸素(ROS)及び一酸化窒素(NO)により活性化されることが知られている。活性酸素及び一酸化窒素は紫外線によって増大するが、活性酸素及び一酸化窒素を低減できれば、チロシナーゼの活性化を抑制でき、メラニンの発生を抑制できると考えられる。
【実施例】
【0125】
図7(a)及び図7(b)に示したように、硫黄原子の付加されたアルブミン系化合物は活性酸素及び一酸化窒素の発生を抑制し、その結果、メラニンの発生を低減させて美白効果を奏するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に係る美白化粧料は、基礎化粧品又はメイクアップ化粧品として好適に使用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7