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明細書 :希土類錯体ポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年3月14日(2019.3.14)
発明の名称または考案の名称 希土類錯体ポリマー
国際特許分類 C08G  79/04        (2006.01)
FI C08G 79/04
国際予備審査の請求
全頁数 17
出願番号 特願2018-515708 (P2018-515708)
国際出願番号 PCT/JP2017/016574
国際公開番号 WO2017/191795
国際出願日 平成29年4月26日(2017.4.26)
国際公開日 平成29年11月9日(2017.11.9)
優先権出願番号 2016092667
優先日 平成28年5月2日(2016.5.2)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】中西 貴之
【氏名】平井 悠一
【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】北川 裕一
【氏名】伏見 公志
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100140578、【弁理士】、【氏名又は名称】沖田 英樹
審査請求 未請求
テーマコード 4J030
Fターム 4J030CA01
4J030CB32
4J030CC05
4J030CC12
4J030CC13
4J030CD11
4J030CE02
4J030CG06
4J030CG21
要約 三価の希土類イオンと、式(1)で表されるホスフィンオキシド二座配位子と、を含む希土類錯体ポリマーが開示される。1つのホスフィンオキシド二座配位子が、2つの希土類イオンに配位してそれらを橋かけしている。
【化1】
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特許請求の範囲 【請求項1】
三価の希土類イオンと、式(1)で表されるホスフィンオキシド二座配位子と、を含み、
1つの前記ホスフィンオキシド二座配位子が、2つの前記希土類イオンに配位して2つの前記希土類イオン同士を橋かけしている、希土類錯体ポリマー。
【化1】
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[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を示し、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基を示し、R及びRが互いに結合していてもよく、Ar、Ar、Ar及びArから選ばれる2つの基が互いに結合していてもよい。]
【請求項2】
2種以上の前記希土類イオンを含む、請求項1に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項3】
前記希土類イオンが、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン、Gd(III)イオン、Sm(III)イオン、Yb(III)イオン、Nd(III)イオン、Er(III)イオン、Y(III)イオン、Dy(III)イオン、Ce(III)イオン、及びPr(III)イオンからなる群から選択される少なくとも一種の希土類イオンである、請求項1又は2に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項4】
前記希土類イオンに配位している、式(2)で表されるジケトン配位子を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類錯体ポリマー。
【化2】
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[式(2)中、Aは水素原子又はハロゲン原子を示し、Zは水素原子又は重水素原子を示し、同一分子中の複数のAは同一であっても異なっていてもよい。]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類錯体ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光材料として機能する希土類錯体ポリマーが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2012/150712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、励起光による発光性及び応力刺激による発光性を併せ持ち、更に溶媒に対する溶解性に優れる希土類錯体ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、フラン環を有する特定のホスフィンオキシド二座配位子を用いることで、励起光及び応力刺激に対する発光性と、良好な溶解性とを有する希土類錯体ポリマーが得られることを見出した。本発明の一側面は、これらの知見に基づくものである。
【0006】
すなわち、本発明の一側面は、三価の希土類イオンと、式(1)で表されるホスフィンオキシド二座配位子と、を含み、1つのホスフィンオキシド二座配位子が、2つの希土類イオンに配位して2つの希土類イオン同士を橋かけしている、希土類錯体ポリマーに関する。
【0007】
【化1】
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【0008】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を示し、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基を示す。R及びRが互いに結合していてもよく、Ar、Ar、Ar及びArから選ばれる2つの基が互いに結合していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、励起光による発光性及び応力刺激による発光性を併せ持ち、更に溶媒に対する溶解性に優れる希土類錯体ポリマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】希土類イオンの異なる希土類錯体ポリマーの発光スペクトルである。
【図2】希土類イオンの比率が異なる希土類錯体ポリマーの発光スペクトルである。
【図3】励起光の照射により得られた発光スペクトル(a)及び応力刺激により得られた発光スペクトル(b)である。
【図4】各種温度条件における希土類錯体ポリマー([Tb,Eu(hfa)(dpf)]nポリマー(Tb/Eu=10))の発光スペクトルである。
【図5】異なる波長の励起光を照射した際のEu(hfa)(dpbp)]ポリマー(Tb/Eu=150)の発光スペクトル(a)及び[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb/Eu=10)の発光スペクトル(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。

【0012】
<希土類錯体ポリマー>
本実施形態の希土類錯体ポリマーは、三価の希土類イオンと、式(1)で表されるホスフィンオキシド二座配位子と、を含む。

【0013】
【化2】
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【0014】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を示し、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基を示す。R及びRが互いに結合していてもよく、Ar、Ar、Ar及びArが互いに結合していてもよい。

【0015】
【化3】
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【0016】
式(I)は、三価の希土類イオンM(III)及び式(1)で表されるホスフィンオキシド配位子を含む、希土類錯体ポリマーの繰り返し単位の例を示す。式中のnは繰り返し単位の繰返し数を表す整数である。式(1)の1つのホスフィンオキシド二座配位子が有する2つの配位可能な部位が、それぞれ異なる2つの三価の希土類イオン(式(I)ではM(III))に配位することにより、それらの2つの希土類イオン同士を橋かけしている。ホスフィンオキシド二座配位子が配位した希土類イオンに、更に別のホスフィンオキシド二座配位子が配位することによって、次々と希土類イオン同士が橋かけされ、それにより希土類錯体ポリマーが形成されている。式(I)中の希土類イオンには、後述のジケトン配位子が更に配位している。このように、本明細書における希土類錯体ポリマーとは、複数の金属イオンが配位子による配位結合を介して連結された構造を有する配位高分子をいう。

【0017】
三価の希土類イオンは特に限定されず、所望する希土類錯体ポリマーの発光色に応じて、適宜選択することができる。希土類イオンは、例えば、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン、Gd(III)イオン、Sm(III)イオン、Yb(III)イオン、Nd(III)イオン、Er(III)イオン、Y(III)イオン、Dy(III)イオン、Ce(III)イオン、及びPr(III)イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることができる。なかでも、高い発光強度を得る観点から、希土類イオンは、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン及びGd(III)イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。希土類錯体ポリマーに含まれる三価の希土類イオンの量は、希土類錯体ポリマーの質量を基準として、0.1~20質量%であってもよい。

【0018】
希土類錯体ポリマーに含まれる三価の希土類イオンは、1種であってもよいし、任意の2種以上の組み合わせであってもよい。本実施形態の希土類錯体ポリマーが2種以上の希土類イオンを含む場合、希土類錯体ポリマーに含まれる希土類イオンの割合(モル比)を調整することで、単一の希土類イオンを含むポリマーでは得られ難い中間色の発光を得ることができる。これにより、発光色をより細かく調整することができる。2種以上の希土類イオンを含む希土類錯体ポリマーは、励起光の照射又は応力刺激の違い、励起波長の違い、温度の違い等によって、異なる色の発光を示す。そのため、2種以上の希土類イオンを用いることで、希土類錯体ポリマーに更に様々な性質を付与することができる。その結果、例えばセキュリティ材料としての特性を一層向上させることができる。

【0019】
2種以上の希土類イオンの組み合わせとしては、例えば、Eu(III)とTb(III)、Eu(III)とGd(III)、Tb(III)とGd(III)が挙げられる。2種類の希土類イオン(第一の希土類イオン及び第二の希土類イオン)を組み合わせる場合、第一の希土類イオンに対する第二の希土類イオンの割合([第二の希土類イオンのモル数]/[第一の希土類イオンのモル数])は、例えば0~1000であってもよい。

【0020】
式(1)中のR又はRとしての一価の有機基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~20の炭化水素基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基、アルコキシ基、又はビニル基であってもよい。RとRは互いに結合して二価の有機基を形成していてもよい。R及びRが結合して形成される二価の有機基は、例えば、アルキレン基、又はアリーレン基等の炭化水素基であってもよい。炭化水素基中の炭素原子がカルボニル基、オキシ基等の二価の官能基に置換されていてもよい。

【0021】
式(1)中のAr、Ar、Ar又はArとしての一価の芳香族基は、リン原子と結合する結合手を1つ有する芳香環からなる基であり、この芳香環は、リン原子との結合部位以外において更に置換基を有していてもよい。芳香環としては、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環等が挙げられる。芳香環が有する置換基としては、R又はRとしての一価の有機基と同様の基、及び、ホスフィンオキシド基等が例示される。Ar、Ar、Ar及びArを構成する芳香環が、置換基としてホスフィンオキシド基を有する場合は、それが希土類イオンに配位してもよい。更に、Ar、Ar、Ar及びArから選ばれる2つの基(例えばArとAr、ArとAr)は、互いに直接、又は二価の連結基を介して結合して二価の基を形成していてもよい。連結基としては、例えばアルキレン基、アリーレン基、及びカルボニル基が挙げられる。

【0022】
Ar、Ar、Ar及びArは、下記式(3)で表される基であってもよい。

【0023】
【化4】
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【0024】
式(3)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基、アルコキシ基、又はビニル基を示す。

【0025】
希土類錯体ポリマーの安定性の観点から、希土類錯体ポリマーを構成している希土類イオンに、上記ホスフィンオキシド二座配位子に加えて、その他の配位子が複数配位していてもよい。その他の配位子は、希土類錯体ポリマーの発光強度を高めるために、多座配位子であってもよい。多座配位子は、例えば、下記式(2)で表されるジケトン配位子であってもよい。ジケトン配位子は、光増感作用を有することができる。

【0026】
【化5】
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【0027】
式(2)中、Aは水素原子又はハロゲン原子を示し、Zは水素原子又は重水素原子を示す。同一分子中の複数のAは同一であっても異なっていてもよい。

【0028】
式(1)で表されるホスフィンオキシド二座配位子及び多座配位子を含む希土類錯体ポリマーの結晶中では、複数のポリマー鎖が、多座配位子同士が近接して向かい合うように配列し易い。光増感作用を有する多座配位子同士が向かい合っている部位が多数存在することで、応力刺激による発光(トリボルミネッセンス)の発光強度が更に大きくなる傾向がある。

【0029】
発光強度及び光耐久性をより一層高めるために、希土類錯体ポリマーは、2つ以上のホスフィンオキシド二座配位子と2つ以上のジケトン配位子とを含む8配位以上の配位構造を形成している希土類イオンを含んでいてもよい。

【0030】
本実施形態の希土類錯体ポリマーは、例えば、希土類イオンの原料である希土類金属化合物と、式(1)で表される構造を有するホスフィンオキシド二座配位子とを、必要に応じて触媒の存在下で、これらを溶解又は分散できる溶媒中にて攪拌する方法によって合成することができる。溶媒としては、希土類金属化合物及び配位子となるべき化合物に対してそれぞれ好適なものを混合して用いてもよい。例えば、メタノール、ジクロロメタン/メタノールの混合溶媒等を適用することができる。触媒としては、例えば、必要に応じてトリメチルアミン、水酸化リチウム等を添加することができる。合成時の温度は、-80~70℃とすることができる。

【0031】
希土類錯体ポリマーの合成において、希土類イオンの原料である希土類金属化合物とホスフィンオキシド二座配位子との配合比([希土類金属化合物のモル数]:[ホスフィンオキシド二座配位子のモル数])は、1:0.5~1:5、又は1:0.77~1:1であってもよい。2種以上の希土類イオンを含む希土類錯体ポリマーを合成する場合、それらを含む2種以上の希土類金属化合物を任意の比率で組み合わせることができる。

【0032】
本実施形態の希土類錯体ポリマーは、励起光に対する発光性に加え、応力刺激に対する発光性を有しており、更に溶媒に対する溶解性にも優れている。本実施形態の希土類錯体ポリマーの分光スペクトルにおいて観測されるピークの半値幅が狭く、希土類錯体ポリマーが希土類イオンに応じた美しい発光色を呈することができる。そして、希土類イオンを2種以上組み合わせることで、発光色の調整が容易であり、また、励起方法に依存した発光色を得ることができる。このような特性を有する希土類錯体ポリマーは、例えば、プラスチック材料等の各種の材料に暗号情報を付与するセキュリティ材料として有用である。

【0033】
本実施形態の希土類錯体ポリマーは優れた溶解性と、蛍光体としての特性を有している。そのため、この希土類錯体ポリマーは、各種のプラスチック材料に配合される蛍光体としても容易に用いることができる。

【0034】
プラスチック材料に希土類錯体ポリマーを含有させる際には、例えば、希土類錯体ポリマーを予め溶媒に溶解させてポリマー溶液を調製し、この溶液をプラスチック材料等と混合する。本実施形態に係る希土類錯体ポリマーを含有する溶液をプラスチック材料等に適用することによって、希土類錯体ポリマーが均一に分布するプラスチック材料及びプラスチック成形体を容易に得ることができる。得られるプラスチック成形体は、高い透明性を有することができる。

【0035】
希土類錯体ポリマーが良好に溶解し得る溶媒としては、例えば、メタノール、及びアセトンが挙げられる。

【0036】
希土類錯体ポリマーが配合されるプラスチック材料は、特に制限されない。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂が挙げられる。

【0037】
希土類錯体ポリマーを配合して成形加工する方法としては、特に限定されず、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、押出成形、反応成形、中空成形、熱成形、及びFRP成形等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
1.2,5-ビス(ジフェニルホスホリル)フラン(dpf)の合成
【化6】
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【実施例】
【0040】
フラスコに2mL(18.7mol)の2,5-ジブロモフラン及び60mLのジエチルエーテルを加え、攪拌した。この反応液に、29mL(46mol)のn-ブチルリチウムを-78℃で加え、3時間攪拌しながら-20℃まで昇温した。その後、反応液を再度-78℃に冷却し、8.5mL(46mol)のクロロジフェニルホスフィンを加え、8時間攪拌した。この反応液から、ジクロロメタンを用いて生成物を抽出し、その後脱水した。脱水した溶液から溶媒を除去した。溶媒を除去して得られた生成物を30mLのジクロロメタンで溶解し、0℃に冷却した。冷却した反応液に25mLの過酸化水素を加え、2時間攪拌した。この反応液から、ジクロロメタンを用いて生成物を抽出し、その後脱水した。脱水した溶液から溶媒を除去し、再結晶化を行うことで、2,5-ビス(ジフェニルホスホリル)フラン(dpf)の結晶を3.8g得た。
【実施例】
【0041】
2.希土類錯体ポリマーの作製<作製例1:[Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Eu100%)>
フラスコに0.65gのEu(hfa)(HO)、0.37gのdpf及び80mLのメタノールを加えた。この溶液を60℃で攪拌しながら、3時間加熱還流した。その後、反応液中の沈殿物を分離し、これを洗浄することで目的とする希土類錯体ポリマーの粉末を得た。
【実施例】
【0042】
<作製例2:[Gd(hfa)(dpf)]ポリマー(Gd100%)>
Eu(hfa)(HO)の代わりにGd(hfa)(HO)を用いたこと以外は、作製例1と同様の方法により希土類錯体ポリマーの粉末を得た。
【実施例】
【0043】
<作製例3:[Tb(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb100%)>
Eu(hfa)(HO)の代わりにTb(hfa)(HO)を用いたこと以外は、作製例1と同様の方法により希土類錯体ポリマーの粉末を得た。
【実施例】
【0044】
<作製例4~6:[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb/Eu=1、10、99)>
Eu(hfa)(HO)の代わりにTb(hfa)(HO)及びEu(hfa)(HO)を1:1、10:1又は99:1のモル比で用いたこと以外は、作製例1と同様の方法により希土類錯体ポリマーの粉末を得た。
【実施例】
【0045】
3.応力発光強度、熱耐久性及び発光効率の測定
[Eu(hfa)(dpf)]ポリマー、下記式で表されるチオフェン配位子(dpt)を有する[Eu(hfa)(dpt)]ポリマー、下記式で表されるEDOT配位子(dpedot)を有する[Eu(hfa)(dpedot)]ポリマーについて、応力刺激による発光(応力発光)の強度を測定した。
【実施例】
【0046】
【化7】
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【実施例】
【0047】
フラスコに希土類錯体ポリマーと攪拌子を入れ、攪拌子を一定の回転数で回転した際の希土類錯体ポリマーの発光をCCDカメラで取り込み、発光を積算することで粉砕による応力発光スペクトルを得た。これは他の応力発光の評価例でも同様である。
【実施例】
【0048】
フラン基を含む配位子を含む[Eu(hfa)(dpf)]ポリマーは、その他の骨格を持つ配位子を含む[Eu(hfa)(dpt)]ポリマー及び[Eu(hfa)(dpedot)]ポリマーと比較して、大きな応力発光強度を示した。
【実施例】
【0049】
各ポリマーの熱耐久性及び380nmの波長の励起光を照射した際の発光の発光効率を測定した。熱耐久性を、熱重量測定装置(TGA)を用いた熱重量測定により測定した熱分解温度(℃)によって評価した。評価結果を表1に示す。
【実施例】
【0050】
【表1】
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【実施例】
【0051】
発光効率ΦLnは、ポリマーの希土類イオン自体を直接励起した際の発光効率を示す。発光効率Φtotは、ポリマーの有機配位子を励起した際の発光効率を示す。[Eu(hfa)(dpf)]は、熱分解温度、発光効率ΦLn、及び発光効率Φtotのいずれについても、他のポリマーと同等の特性を示した。
【実施例】
【0052】
4.溶解性
[Eu(hfa)(dpf)]ポリマー、及び[Eu(hfa)(dpedot)]ポリマーについて有機溶媒に対する溶解性を評価した。溶解性は、希土類錯体ポリマー30mg及びメタノール2mLをガラス容器中で攪拌し、混合液の状態を観察する試験によって評価した。
【実施例】
【0053】
その結果、[Eu(hfa)(dpf)]ポリマーはメタノールに対し完全に溶解し、透明な液体になった。一方、[Eu(hfa)(dpedot)]ポリマーはメタノールに分散するのみであり、白色の沈殿が見られた。[Eu(hfa)(dpf)]ポリマーはメタノールに溶解した状態でも、紫外線照射により発光した。
【実施例】
【0054】
5.金属元素の種類が異なるポリマーの発光色の測定
[Eu(hfa)(dpf)]ポリマー、[Gd(hfa)(dpf)]ポリマー及び[Tb(hfa)(dpf)]ポリマーの粉末に対し、380nmの波長の励起光を照射し、希土類錯体ポリマーからの発光を測定した。UV励起による発光特性の測定装置として、HORIBA Fluorolog-3 spectrofluorometerを用いた。図1は、各希土類錯体ポリマーの発光スペクトルである。
【実施例】
【0055】
図1に示すとおり、ポリマーに含まれる希土類元素の種類によって、蛍光スペクトルのパターンが異なった。発光色はそれぞれ、[Eu(hfa)(dpf)]ポリマーでは赤色であり、[Gd(hfa)(dpf)]ポリマーでは青色であり、[Tb(hfa)(dpf)]ポリマーでは緑色であった。この結果から、希土類元素の種類を変えることで、ポリマーの発光色を調整できることが示された。
【実施例】
【0056】
6.希土類元素の比率が異なるポリマーの発光色の測定
EuとTbの比率(モル比、Eu:Tb)が100:0、1:1、1:99、又は0:100の希土類錯体ポリマーの粉末を用いて応力発光を測定した。図2は、各希土類錯体ポリマーの発光スペクトルを示す。
【実施例】
【0057】
[Eu(hfa)(dpf)]ポリマーでは赤色(612nm)の蛍光が得られ、[Tb(hfa)(dpf)]ポリマーでは緑色(545nm)の蛍光が得られた。また、ポリマー中の希土類元素の割合を変えることで、ポリマーが発する612nm及び545nmの蛍光の強度の比率が変化し、赤色と緑色の中間色を示した。この結果から、ポリマー中の希土類元素の割合を変えることで、発光色を調整できることが示された。
【実施例】
【0058】
7.励起方法の発光色への影響
[Eu(hfa)(dpf)]ポリマー、及び[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb/Eu=1又は10)の粉末に対し、380nmの波長の励起光の照射又は応力刺激を与え、ポリマーからの発光を測定した。図3の(a)は励起光の照射により得られた発光スペクトルを示し、図3の(b)は応力刺激により得られた発光スペクトルを示す。
【実施例】
【0059】
測定に用いた全てのポリマーが、励起光及び応力刺激の励起方法によって発光した。特に2種類の希土類元素を含むポリマーの発光スペクトルは、励起方法によって異なった。Euのみを含むポリマーは、励起光及び応力刺激の励起方法により赤色の光を発した。Tb/Eu=10のポリマーは、励起光では黄色の光を発し、応力刺激では黄緑色の光を発した。Tb/Eu=1のポリマーは応力刺激により橙色の光を発した。この結果から、希土類元素の割合を変えることで、ポリマーは励起方法に依存した発光を得られることが示された。
【実施例】
【0060】
8.温度条件の発光色への影響
[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb/Eu=10)の粉末に対し、380nmの波長の励起光を照射して、温度条件の違いによる発光色を測定した。温度条件は、100K、200K、300K、又は400Kとした。図4は、各温度条件におけるポリマーの発光スペクトルを示す。
【実施例】
【0061】
[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb/Eu=10)は、低温であるほど545nmの波長で強い発光強度を示し、高温になるほど613nmの波長で強い発光強度を示した。この結果から、[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマーは、温度に応じて発光波長が変化することが示された。
【実施例】
【0062】
9.励起波長の発光色への影響
1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)により架橋された[Tb,Eu(hfa)(dpbp)]ポリマー(Tb/Eu=150)、及び[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb/Eu=10)の粉末に対し、350nm、375nm、400nm、又は425nmの波長の励起光を照射し、ポリマーからの発光を測定した。図5の(a)はEu(hfa)(dpbp)]ポリマー(Tb/Eu=150)の発光スペクトルを示し、図5の(b)は[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマー(Tb/Eu=10)の発光スペクトルを示す。
【実施例】
【0063】
[Tb,Eu(hfa)(dpbp)]ポリマーは、いずれの波長の励起光によっても同じ発光スペクトルを示した。一方、[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマーは、励起光の波長によって異なる発光スペクトルを示し、特に610nm~630nm付近の発光スペクトルに変化が見られた。この結果から、[Tb,Eu(hfa)(dpf)]ポリマーは、励起光の波長に応じて発光波長が変化することが示された。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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