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明細書 :環状DNAの増幅方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年3月22日(2019.3.22)
発明の名称または考案の名称 環状DNAの増幅方法
国際特許分類 C12N  15/00        (2006.01)
C12P  19/34        (2006.01)
FI C12N 15/00
C12P 19/34 A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 54
出願番号 特願2018-518326 (P2018-518326)
国際出願番号 PCT/JP2017/018472
国際公開番号 WO2017/199991
国際出願日 平成29年5月17日(2017.5.17)
国際公開日 平成29年11月23日(2017.11.23)
優先権出願番号 2016099157
優先日 平成28年5月17日(2016.5.17)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】末次 正幸
【氏名】辻本 寛子
【氏名】篠原 赳
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100118902、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 修
【識別番号】100106208、【弁理士】、【氏名又は名称】宮前 徹
【識別番号】100120112、【弁理士】、【氏名又は名称】中西 基晴
【識別番号】100107386、【弁理士】、【氏名又は名称】泉谷 玲子
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
Fターム 4B064AF27
4B064CA21
4B064CC24
4B064CD02
4B064CD20
4B064DA20
要約 無細胞系において、環状DNA、特に長鎖環状DNAを簡便かつ指数的に増幅することのできる方法を提供する。
具体的には、複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を有する環状DNAを、以下の酵素群:
(1)環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
(2)岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;および
(3)2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群
ならびに、緩衝液、NTP、dNTP、マグネシウムイオン源、およびアルカリ金属イオン源を含む反応液と混合して生成した反応混合物を反応させることを含む、環状DNAの増幅方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
環状DNAの増幅方法であって、以下の工程:
(1)鋳型となる環状DNAと、以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液との反応混合物を形成する工程、
ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む;および
(2)工程(1)において形成した反応混合物を等温条件下で保温する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
環状DNAの増幅方法であって、以下の工程:
(1)鋳型となる環状DNAと、以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液との反応混合物を形成する工程、
ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む;および
(2)工程(1)において形成した反応混合物を、30℃以上でのインキュベーションおよび27℃以下でのインキュベーションを繰り返す温度サイクル下で、インキュベートする工程;
を含む、前記方法。
【請求項3】
反応液が、さらにタンパク質の非特異吸着抑制剤、および/または核酸の非特異吸着抑制剤を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応液が、さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/またはRecG型ヘリカーゼを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
反応液が、さらにアンモニウム塩を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
第一の酵素群が、DnaA活性を有する酵素、1種以上の核様体タンパク質、DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群、一本鎖DNA結合タンパク質(single-strand binding protein(SSB))、DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素、DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素、DNAプライマーゼ活性を有する酵素、DNAクランプ活性を有する酵素、およびDNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群、の組み合わせを含み、
第二の酵素群が、DNAポリメラーゼI活性を有する酵素およびDNAリガーゼ活性を有する酵素の組み合わせを含み、
第三の酵素群が、トポイソメラーゼIII活性を有する酵素および/またはトポイソメラーゼIV活性を有する酵素を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
第二の酵素群がさらに、RNaseH活性を有する酵素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第三の酵素群がさらに、RecQ型ヘリカーゼ活性を有する酵素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
第一の酵素群において、
1種以上の核様体タンパク質がIHFまたはHUであり、
DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群が、GyrAおよびGyrBからなる複合体であり、
DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素がDnaBヘリカーゼであり、
DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素がDnaCヘリカーゼローダーであり、
DNAプライマーゼ活性を有する酵素がDnaGプライマーゼであり、
DNAクランプ活性を有する酵素がDnaNクランプであり、
DNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群が、DnaX、HolA、HolB、HolC、HolD、DnaE、DnaQ、およびHolEのいずれかを含む酵素または酵素群である、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
工程(2)における等温条件が、25℃~50℃の範囲に含まれる一定の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
反応液が、さらにRecG型ヘリカーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
反応液が、さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
反応液が、さらにDNAの安定化因子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
工程(1)が
(1-1)以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液をプレインキュベーションする工程;
(1-2)当該反応液と鋳型となる環状DNAとの反応混合物を形成する工程;および
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
工程(2)を、油中水滴型エマルジョン内で行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
工程(2)に続いてさらに、
(3)反応後処理を行う工程;を含み、ここで、当該反応後処理は、
(i)第一から第三の酵素群を含まない反応液で五倍以上に希釈した後、再保温する処理;
(ii)直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼによる処理;および/または
(iii)ギャップリペア酵素による処理;である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
環状DNAの増幅用組成物であって、
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む、前記組成物。
【請求項18】
さらにタンパク質の非特異吸着抑制剤、および/または核酸の非特異吸着抑制剤を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/またはRecG型ヘリカーゼを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
さらにRecG型ヘリカーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
さらにDNAの安定化因子を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
環状DNAの増幅用キットであって、
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
の組み合わせを含む、前記キット。
【請求項24】
さらにタンパク質の非特異吸着抑制剤、および/または核酸の非特異吸着抑制剤との組み合わせを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/またはRecG型ヘリカーゼとの組み合わせを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
さらにRecG型ヘリカーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項27】
さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
さらにDNAの安定化因子を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項29】
さらにギャップリペア酵素を含む、請求項23に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状DNAの増幅方法に関する。より詳細には、無細胞系において環状DNAを指数的に増幅することのできる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー発展の基盤となったDNAクローニング技術は、DNA断片の切り貼りにより調製した環状DNAを大腸菌等の細胞内でプラスミドとして増幅させる手法である。細胞を用いたDNAクローニング技術を用いて環状DNAを増幅する場合、細胞培養および増幅産物の抽出・精製等の煩雑な手順が必要となる。また、細胞を用いたDNAクローニングを行うためには遺伝子組換え生物を作出する必要があるため、実験できる環境に制限がある。
【0003】
試験管内でDNAを増幅する方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が一般的に用いられている。しかし、PCRによる試験管内DNA増幅法では、環状DNAをそのまま増幅することはできない。環状DNAの試験管内増幅法としては、ローリングサークル増幅法(RCA)などがある(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、ローリングサークル増幅法で環状DNAを増幅するためには、標的DNAに特異的なプライマーを都度設計する必要がある。また、ローリングサークル増幅法による直接的な増幅産物は直鎖型DNAであり、得られた増幅産物を環状化するためには、組換え酵素とインキュベーションする等のさらなる環状化工程が必要となる。大腸菌のミニ染色体(oriC環状DNA)を複製したのち、これを分離し、単量体の環状複製産物を得る方法も報告されている(非特許文献2~5)。しかしながら、これらの文献で用いられている反応条件においては、環状DNA分子としての複製効率は、加えた鋳型DNAの15-40%程度にとどまるものであり、増幅量としては倍にも達しないことが実験的に示されている(非特許文献3~6)。さらに、これらの文献において鋳型として使用されている環状DNAのサイズは10 kbp未満にとどまる。
【0004】
このように、従来の試験管内DNA増幅法で環状DNAを増幅するためには、プライマーの鋳型DNAへの結合が必要であり、増幅産物は直鎖型DNAであり、また、増幅可能なDNAサイズは数kbpにとどまるものであった。さらに、大腸菌ミニ染色体複製系をもちいて環状の増幅産物を産生しようとした場合には、鋳型環状DNAは倍にすら増幅されないという問題があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-229950
【特許文献2】特開2008-161182
【特許文献3】特表2012-501173
【0006】

【非特許文献1】Fakruddin M et al., J Pharm Bioallied Sci. 2013, 5: 245-252
【非特許文献2】Peng H & Marians KJ. PNAS. 1993, 90: 8571-8575
【非特許文献3】Hiasa H & Marians KJ. J Biol Chem. 1994, 269: 32655-32659
【非特許文献4】Funnell B et al., J Biol Chem. 1986, 261: 5616-5624
【非特許文献5】Hiasa H et al., J Biol Chem. 1994, 269: 2093-2099
【非特許文献6】Hiasa H & Marians KJ. J Biol Chem. 1994, 269: 26959-26968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、無細胞系において、環状DNA、特に長鎖環状DNAを簡便かつ指数的に増幅することのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を有する環状DNAを、以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液と混合して生成した反応混合物を反応させることにより、「複製の開始(DNA2重鎖開裂)・伸長(複製フォーク進行)・複製された姉妹DNAの分離(Decatenation)」のサイクルが繰り返し、指数的に環状DNAを増幅することができることを見出した。
【0009】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下の態様の発明を包含する。
【0010】
[1] 環状DNAの増幅方法であって、以下の工程:
(1)鋳型となる環状DNAと、以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液との反応混合物を形成する工程、
ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む;および
(2)工程(1)において形成した反応混合物を等温条件下で保温する工程;
を含む、前記方法。
【0011】
[2] 環状DNAの増幅方法であって、以下の工程:
(1)鋳型となる環状DNAと、以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液との反応混合物を形成する工程、
ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む;および
(2)工程(1)において形成した反応混合物を、30℃以上でのインキュベーションおよび27℃以下でのインキュベーションを繰り返す温度サイクル下で、インキュベートする工程;
を含む、前記方法。
【0012】
[3] 反応液が、さらにタンパク質の非特異吸着抑制剤、および/または核酸の非特異吸着抑制剤を含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0013】
[4] 反応液が、さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/またはRecG型ヘリカーゼを含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0014】
[5] 反応液が、さらにアンモニウム塩を含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0015】
[6] 第一の酵素群が、DnaA活性を有する酵素、1種以上の核様体タンパク質、DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群、一本鎖DNA結合タンパク質(single-strand binding protein(SSB))、DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素、DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素、DNAプライマーゼ活性を有する酵素、DNAクランプ活性を有する酵素、およびDNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群、の組み合わせを含み、
第二の酵素群が、DNAポリメラーゼI活性を有する酵素およびDNAリガーゼ活性を有する酵素の組み合わせを含み、
第三の酵素群が、トポイソメラーゼIII活性を有する酵素および/またはトポイソメラーゼIV活性を有する酵素を含む、
上記[1]または[2]に記載の方法。
【0016】
[7] 第二の酵素群がさらに、RNaseH活性を有する酵素を含む、上記[6]に記載の方法。
【0017】
[8] 第三の酵素群がさらに、RecQ型ヘリカーゼ活性を有する酵素を含む、上記[6]に記載の方法。
【0018】
[9] 第一の酵素群において、
1種以上の核様体タンパク質がIHFまたはHUであり、
DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群が、GyrAおよびGyrBからなる複合体であり、
DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素がDnaBヘリカーゼであり、
DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素がDnaCヘリカーゼローダーであり、
DNAプライマーゼ活性を有する酵素がDnaGプライマーゼであり、
DNAクランプ活性を有する酵素がDnaNクランプであり、
DNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群が、DnaX、HolA、HolB、HolC、HolD、DnaE、DnaQ、およびHolEのいずれかを含む酵素または酵素群である、
上記[6]に記載の方法。
【0019】
[10] 工程(2)における等温条件が、25℃~50℃の範囲に含まれる一定の温度である、上記[1]に記載の方法。
【0020】
[11] 反応液が、さらにRecG型ヘリカーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0021】
[12] 反応液が、さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0022】
[13] 反応液が、さらにDNAの安定化因子を含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0023】
[14] 工程(1)が
(1-1)以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液をプレインキュベーションする工程;
(1-2)当該反応液と鋳型となる環状DNAとの反応混合物を形成する工程;および
を含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0024】
[15] 工程(2)を、油中水滴型エマルジョン内で行う、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0025】
[16] 工程(2)に続いてさらに、
(3)反応後処理を行う工程;を含み、ここで、当該反応後処理は、
(i)第一から第三の酵素群を含まない反応液で五倍以上に希釈した後、再保温する処理;
(ii)直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼによる処理;および/または
(iii)ギャップリペア酵素による処理;である、
上記[1]または[2]に記載の方法。
【0026】
[17] 環状DNAの増幅用組成物であって、
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む、前記組成物。
【0027】
[18] さらにタンパク質の非特異吸着抑制剤、および/または核酸の非特異吸着抑制剤を含む、上記[17]に記載の組成物。
【0028】
[19] さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/またはRecG型ヘリカーゼを含む、上記[17]に記載の組成物。
【0029】
[20] さらにRecG型ヘリカーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、上記[17]に記載の組成物。
【0030】
[21] さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、上記[17]に記載の組成物。
【0031】
[22] さらにDNAの安定化因子を含む、上記[17]に記載の組成物。
【0032】
[23] 環状DNAの増幅用キットであって、
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
の組み合わせを含む、前記キット。
【0033】
[24] さらにタンパク質の非特異吸着抑制剤、および/または核酸の非特異吸着抑制剤との組み合わせを含む、上記[23]に記載のキット。
【0034】
[25] さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/またはRecG型ヘリカーゼとの組み合わせを含む、上記[23]に記載のキット。
【0035】
[26] さらにRecG型ヘリカーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、上記[23]に記載のキット。
【0036】
[27] さらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含む、上記[23]に記載のキット。
【0037】
[28] さらにDNAの安定化因子を含む、上記[23]に記載のキット。
【0038】
[29] さらにギャップリペア酵素を含む、上記[23]に記載のキット。
【0039】
[30] 以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液と、鋳型となる環状DNAとの反応混合物を形成する工程を含み、
ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む、複製サイクルを繰り返し、指数的に環状DNAを増幅する方法。
【0040】
[31] 環状DNAの増幅方法であって、以下の工程:
(1)鋳型となる環状DNAと、以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液との反応混合物を形成する工程、
ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む;および
(2)工程(1)において形成した反応混合物を所定の温度範囲で保温する工程;
を含む、前記方法。
【0041】
[32] 環状DNAの増幅用キットであって、
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
の組み合わせ、
ならびに、上記の組み合わせを含む反応液と鋳型となる環状DNAとの反応混合物において複製サイクルを繰り返すことで環状DNAを指数的に増幅する方法を実施するための指示が記載された説明書を含む、
前記キット。
【0042】
[33] 反応液にtRNAをさらに含む、上記[1]、[2]、[30]および[31]のいずれか1項に記載の方法。
【0043】
[34] 反応液にtRNAをさらに含む、上記[17]に記載の組成物。
【0044】
[35] 反応液にtRNAをさらに含む、上記[23]または[32]に記載のキット。
【0045】
[36] 反応液に、100mM以上のアルカリ金属イオン源をさらに含む、上記[1]、[2]、[30]および[31]のいずれか1項に記載の方法。
【0046】
[37] 反応液に、100mM以上のアルカリ金属イオン源をさらに含む、上記[17]に記載の組成物。
【0047】
[38] 反応液に、100mM以上のアルカリ金属イオン源をさらに含む、上記[23]または[32]に記載のキット。
【0048】
[39] 環状DNAが、少なくとも10倍に増幅する、上記[1]、[2]、[30]および[31]のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0049】
本発明により、大腸菌細胞やプラスミドベクターを用いることなく、環状DNA、特に長鎖環状DNAを簡便かつ指数的に増幅することのできる方法が提供される。本発明によれば、環状DNAを増幅するのにプライマーは不要であり、200 kbを超える長鎖環状DNAの増幅も可能である。そして、本発明の方法によれば、鋳型環状DNAはわずか1分子からでも環状DNAの増幅が可能である。また、本発明によって得られる増幅産物は、もとの鋳型と同じ環状構造のままのコピーである。さらに、複数のDNA断片を連結したのち、そのまま当該反応系に加えると、連結により環状化したDNAのみを特異的に増幅して調製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明による複製サイクルのモデルを示す。
【図2】図2は、Gibson Assembly法を用いた試験管内連結により環状化したDNAの構造を示す。
【図3】図3は、9.6 kbの環状DNAを鋳型として用いた場合の反応時間ごとの増幅産物をアガロース電気泳動し、SYBR Greenによって検出した結果を示す。
【図4】図4は、200 kb及び80 kbの長鎖環状DNAを鋳型として用いた場合の増幅産物をアガロース電気泳動し、SYBR Greenによって検出した結果を示す。図4aは、200 kbの長鎖環状DNA(15 pM, 20 ng)を鋳型として用いた場合の、反応時間ごとの増幅産物の結果を示す。図4bは80 kb(15 pM, 8 ng)及び200 kb(5 pM, 6.7 ng)の長鎖環状DNAを鋳型として用いた場合の反応3時間後の増幅産物の結果を示す。
【図5】図5は、Gibson Assembly法を用いた試験管内連結により環状化したDNAを鋳型として用いた場合の増幅産物をアガロース電気泳動し、SYBR Greenによって検出した結果を示す。
【図6】図6は、微量(1分子レベル)の9.6 kbの環状DNAを鋳型として用いた増幅実験の結果を示す。図6aは、9.6 kbの環状DNAを鋳型として用いた場合の増幅産物をアガロース電気泳動し、SYBR Greenによって検出した結果を示す。図6bは、増幅産物のDNA量をPicoGreen法あるいは大腸菌形質転換法により定量し、その増幅度合いを示した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、9.6 kbの環状DNAを鋳型として用いた場合の増幅時間に対する増幅した環状DNA分子数を示すグラフである。
【図8】図8は、混合物からの単一な環状DNAクローンの増幅試験結果を示す図である。図8aは、環状DNAの混合物の希釈についての模式図である。図8bは、環状DNAの混合物を希釈して増幅した場合の増幅産物をアガロース電気泳動し、SYBR Greenによって検出した結果を示す。
【図9】図9は、環状DNAの継代増幅試験結果を示す図である。図9aは、実験手順についての模式図である。図9bは、増幅反応後のDNA産物を希新たな反応液に希釈して、再度増幅を導くという継代増幅を10回くりかえした場合の結果を示す。増幅産物はアガロース電気泳動およびSYBR Greenによって検出した。
【図10】図10は、80 kbの環状DNAを鋳型として用い、RecGおよび直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼを添加した場合の、増幅産物をアガロース電気泳動し、SYBR Greenによって検出した結果を示す。
【図11】図11は、実施例7の条件Aの結果を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例7の条件Bの結果を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例7の条件C(GTP、CTPおよびUTP量の検討)の結果を示すグラフ、及びゲル電気泳動の写真である。
【図14】図14は、実施例7の条件D(IHF量の検討)の結果を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例7の条件E(Topo IV量の検討)の結果を示すグラフである。
【図16】図16は、実施例7の条件F(DNAジャイレース量の検討)の結果を示すグラフである。
【図17】図17は、実施例7の条件G(DNAポリメラーゼIII*量の検討)の結果を示すグラフである。
【図18】図18は、実施例7の条件H(アルカリ金属イオン源量の検討)の結果を示すグラフである。
【図19】図19は、実施例7の条件I(タンパク質の非特異吸着抑制剤および/または核酸の非特異吸着抑制剤の量の検討)の結果を示すグラフである。
【図20】図20は、実施例7の条件J(DnaA活性を有する酵素の量の検討)の結果を示すグラフである。
【図21】図21は、実施例7の条件K(DNAリガーゼ活性を有する酵素の量の検討)の結果を示すグラフである。
【図22】図22は、実施例7の条件L(SSB量の検討)の結果を示すグラフ、及びゲル電気泳動の写真である。
【図23】図23は、実施例7の条件M(DNAポリメラーゼI活性を有する酵素の量の検討)の結果を示すグラフである。
【図24】図24は、実施例7の条件N(DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素およびDNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素の量の検討)の結果を示すグラフである。
【図25】図25は、実施例7の条件O(RNaseH活性を有する酵素の量の検討)の結果を示すグラフである。
【図26】図26は、実施例7の条件Pの結果を示すグラフである。
【図27】図27は、実施例7の条件Q(第三の酵素群の酵素の組成および量の検討)の結果を示す、ゲル電気泳動の写真およびグラフである。
【図28】図28は、実施例7の条件Rの結果を示すグラフである。
【図29】図29は、実施例7の条件Sの結果を示すグラフである。
【図30】図30は、アルカリ金属イオン源の添加の効果を検討した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【図31】図31は、プレインキュベーションによる増幅反応の効率化を検討した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【図32】図32は、RecGおよびRecJを添加した場合の増幅産物を検出した結果を示す、ゲル電気泳動の写真である。
【図33】図33は、RecBCDおよびexo Iを添加した場合の増幅産物を検出した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【図34】図34は、増幅反応後に、RecBCDおよびexo Iで処理した場合の増幅産物を検出した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【図35】図35は、増幅反応後に、ギャップリペア酵素で処理した場合の増幅産物を検出した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【図36】図36は、長鎖環状DNAの安定化因子を用いた場合の増幅反応の効率を検討した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【図37】図37は、油中水滴型エマルジョン内での環状DNAの増幅反応を検討した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【図38】図38は、温度サイクルを伴う環状DNAの増幅反応における増幅産物を検出した結果を示すゲル電気泳動の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。

【0052】
<環状DNA>
鋳型として用いる環状DNAは、2重鎖であることが好ましい。鋳型として用いる環状DNAは、DnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含むものであれば、特に制限はされず、微生物の環状染色体等の天然の環状DNA、天然の環状DNAを酵素処理等によって切断したもの等に別のDNA断片を連結し、それを環状化した環状DNA、すべて人工的に合成した環状DNA等を例示することができる。DnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))(以下、単に「複製開始配列」ということがある)としては、たとえば大腸菌、枯草菌等の細菌に存在する公知の複製開始配列を、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等の公的なデータベースから入手することができる。また、DnaA活性を有する酵素と結合可能なDNA断片をクローニングし、その塩基配列を解析することによって、複製開始配列を得ることもできる。

【0053】
本発明において鋳型として用いる環状DNAは、もともと複製開始配列を含む環状DNAであってもよいし、もともとは複製開始配列を含まない環状DNAに複製開始配列を導入したものであってもよい。

【0054】
本発明において鋳型として用いる環状DNAは、目的に応じて、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン等の薬剤耐性マーカー遺伝子配列を含むものであってよい。

【0055】
本発明において鋳型として用いる環状DNAは、精製されたものであってもよいが、環状DNAを含む菌体抽出物等の懸濁液の形態であってもよい。また、1種類の環状DNAを鋳型として用いてもよいが、たとえばDNAライブラリーのような複数種類の環状DNAの混合物を1つの試験管内で鋳型として用いてもよい。

【0056】
本発明において鋳型として用いる環状DNAの長さに制限はないが、たとえば1 kb(1000塩基長)以上、5 kb(5000塩基長)以上、8 kb(8,000塩基長)以上、10 kb(10,000塩基長)以上、50 kb(50,000塩基長)以上、100 kb(100,000塩基長)以上、200 kb(200,000塩基長)以上、500 kb(500,000塩基長)以上、1000 kb(1,000,000塩基長)以上、または2000 kb(2,000,000塩基長)以上の長さとすることができる。

【0057】
<第一、第二および第三の酵素群>
1.第一の酵素群
本明細書において第一の酵素群とは、環状DNAの複製を触媒する酵素群を意味する。

【0058】
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群としては、たとえばKaguni JM & Kornberg A. Cell. 1984, 38:183-90に記載された酵素群を用いることができる。具体的には、第一の酵素群として、以下:DnaA活性を有する酵素、1種以上の核様体タンパク質、DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群、一本鎖DNA結合タンパク質(single-strand binding protein(SSB))、DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素、DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素、DNAプライマーゼ活性を有する酵素、DNAクランプ活性を有する酵素、およびDNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群、からなる群より選択される酵素または酵素群の1つ以上、または当該酵素または酵素群のすべての組み合わせ、を例示することができる。

【0059】
DnaA活性を有する酵素としては、大腸菌のイニシエータータンパク質であるDnaAと同様のイニシエーター活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDnaAを好適に用いることができる。大腸菌由来のDnaAは単量体として、反応液中、1nM~10μMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは1nM~~5μM、1nM~3μM、1nM~1.5μM、1nM~1.0μM、1nM~500nM、50nM~200nM、50nM~150nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0060】
核様体タンパク質は、核様体に含まれるタンパク質をいう。本発明に用いる1種以上の核様体タンパク質は、大腸菌の核様体タンパク質と同様の活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のIHF、すなわちIhfAおよび/またはIhfBの複合体(ヘテロ二量体またはホモ二量体)や、大腸菌由来のHU、すなわちhupAおよびhupBの複合体を好適に用いることができる。大腸菌由来のIHFはヘテロ/ホモ2量体として反応液中、5nM~400nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは5nM~200nM、5nM~100nM、5nM~50nM、10nM~50nM、10nM~40nM、10nM~30nM、の範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。大腸菌由来のHUは反応液中、1nM~50nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは5nM~50nM、5nM~25nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0061】
DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群としては、大腸菌のDNAジャイレースと同様の活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のGyrAおよびGyrBからなる複合体を好適に用いることができる。大腸菌由来のGyrAおよびGyrBからなる複合体はヘテロ4量体として反応液中、20nM~500nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは20nM~400nM、20nM~300nM、20nM~200nM、50nM~200nM、100nM~200nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0062】
一本鎖DNA結合タンパク質(single-strand binding protein(SSB))としては、大腸菌の一本鎖DNA結合タンパク質と同様の活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のSSBを好適に用いることができる。大腸菌由来のSSBはホモ4量体として、反応液中、20nM~1000nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは20nM~500nM、20nM~300nM、20nM~200nM、50nM~500nM、50nM~400nM、50nM~300nM、50nM~200nM、50nM~150nM、100nM~500nM、100nM~400nM、の範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0063】
DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素としては、大腸菌のDnaBと同様の活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDnaBを好適に用いることができる。大腸菌由来のDnaBはホモ6量体として反応液中、5nM~200nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは5nM~100nM、5nM~50nM、5nM~30nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0064】
DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素としては、大腸菌のDnaCと同様の活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDnaCを好適に用いることができる。大腸菌由来のDnaCはホモ6量体として反応液中、5nM~200nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは5nM~100nM、5nM~50nM、5nM~30nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0065】
DNAプライマーゼ活性を有する酵素としては、大腸菌のDnaGと同様の活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDnaGを好適に用いることができる。大腸菌由来のDnaGは単量体として、反応液中、20nM~1000nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは20nM~800nM、50nM~800nM、100nM~800nM、200nM~800nM、250nM~800nM、250nM~500nM、300nM~500nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0066】
DNAクランプ活性を有する酵素としては、大腸菌のDnaNと同様の活性を有する酵素であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDnaNを好適に用いることができる。大腸菌由来のDnaNはホモ2量体として反応液中、10nM~1000nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは10nM~800nM、10nM~500nM、20nM~500nM、20nM~200nM、30nM~200nM、30nM~100nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0067】
DNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群としては、大腸菌のDNAポリメラーゼIII*複合体と同様の活性を有する酵素または酵素群であれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDnaX、HolA、HolB、HolC、HolD、DnaE、DnaQ、およびHolEのいずれかを含む酵素群、好ましくは大腸菌由来のDnaX、HolA、HolB、およびDnaEの複合体を含む酵素群、さらに好ましくは大腸菌由来のDnaX、HolA、HolB、HolC、HolD、DnaE、DnaQ、およびHolEの複合体を含む酵素群を好適に用いることができる。大腸菌由来のDNAポリメラーゼIII*複合体はヘテロ多量体として反応液中、2nM~50nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは2nM~40nM、2nM~30nM、2nM~20nM、5nM~40nM、5nM~30nM、5nM~20nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0068】
2.第二の酵素群
本明細書において第二の酵素群とは、岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する酵素群を意味する。

【0069】
本発明において、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAとは、DNA複製反応によって合成された2つの環状DNAがつながった状態にあるものをいう。

【0070】
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群としては、たとえばDNAポリメラーゼI活性を有する酵素、DNAリガーゼ活性を有する酵素、およびRNaseH活性を有する酵素、からなる群より選択される1つ以上の酵素または当該酵素の組み合わせを例示することができる。

【0071】
DNAポリメラーゼI活性を有する酵素としては、大腸菌のDNAポリメラーゼIと同様の活性を有するものであれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDNAポリメラーゼIを好適に用いることができる。大腸菌由来のDNAポリメラーゼIは単量体として反応液中、10nM~200nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは20nM~200nM、20nM~150nM、20nM~100nM、40nM~150nM、40nM~100nM、40nM~80nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0072】
DNAリガーゼ活性を有する酵素としては、大腸菌のDNAリガーゼと同様の活性を有するものであれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のDNAリガーゼまたはT4ファージのDNAリガーゼを好適に用いることができる。大腸菌由来のDNAリガーゼは単量体として反応液中、10nM~200nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは15nM~200nM、20nM~200nM、20nM~150nM、20nM~100nM、20nM~80nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0073】
RNaseH活性を有する酵素としては、RNA:DNAハイブリッドのRNA鎖を分解する活性を有するものであれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のRNaseHを好適に用いることができる。大腸菌由来のRNaseHは単量体として反応液中、0.2nM~200nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは0.2nM~200nM、0.2nM~100nM、0.2nM~50nM、1nM~200nM、1nM~100nM、1nM~50nM、10nM~50nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0074】
3.第三の酵素群
本明細書において第三の酵素群とは、2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する酵素群を意味する。

【0075】
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群としては、たとえばPeng H & Marians KJ. PNAS. 1993, 90: 8571-8575に記載された酵素群を用いることができる。具体的には、第三の酵素群として、以下:トポイソメラーゼIV活性を有する酵素、トポイソメラーゼIII活性を有する酵素、およびRecQ型ヘリカーゼ活性を有する酵素、から成る群より選択される1つ以上の酵素または当該酵素の組み合わせを例示することができる。

【0076】
トポイソメラーゼIII活性を有する酵素としては、大腸菌のトポイソメラーゼIIIと同様の活性を有するものであれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のトポイソメラーゼIIIを好適に用いることができる。大腸菌由来のトポイソメラーゼIIIは単量体として反応液中、20nM~500nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは20nM~400nM、20nM~300nM、20nM~200nM、20nM~100nM、30~80nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0077】
RecQ型ヘリカーゼ活性を有する酵素としては、大腸菌のRecQと同様の活性を有するものであれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえば大腸菌由来のRecQを好適に用いることができる。大腸菌由来のRecQは単量体として反応液中、20nM~500nMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは20nM~400nM、20nM~300nM、20nM~200nM、20nM~100nM、30~80nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0078】
トポイソメラーゼIV活性を有する酵素としては、大腸菌のトポイソメラーゼIVと同様の活性を有するものであれば、その生物学的由来に特に制限はないが、たとえばParCとParEの複合体である大腸菌由来のトポイソメラーゼIVを好適に用いることができる。大腸菌由来のトポイソメラーゼIVはヘテロ4量体として反応液中、0.1nM~50nMMの範囲で含まれていてもよく、好ましくは0.1nM~40nM、0.1nM~30nM、0.1nM~20nM、1nM~40nM、1nM~30nM、1nM~20nM、1nM~10nM、1nM~5nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0079】
上記の第一、第二および第三の酵素群は、市販されているものを用いてもよいし、微生物等から抽出し、必要に応じて精製したものを用いてもよい。微生物からの酵素の抽出および精製は、当業者に利用可能な手法を用いて適宜実施することができる。

【0080】
上記第一、第二および第三の酵素群として、上記に示す大腸菌由来の酵素以外を用いる場合は、上記大腸菌由来の酵素について特定された濃度範囲に対して、酵素活性単位として相当する濃度範囲で用いることができる。

【0081】
上記酵素の無細胞タンパク質発現系を含む反応液を、そのまま鋳型となる環状DNAと混合して、環状DNAの増幅のための反応混合液を形成してもよい。無細胞タンパク質発現系は、上記酵素をコードする遺伝子の塩基配列に相補的な配列からなるRNAを含む総RNA(total RNA)、mRNA、またはin vitro転写産物などを鋳型RNAとする無細胞翻訳系であってもよいし、各酵素をコードする遺伝子または各酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクターなどを鋳型DNAとする無細胞転写翻訳系であってもよい。

【0082】
<環状DNAの増幅方法>
本発明は、環状DNAの増幅方法であって、以下の工程:
(1)鋳型となる環状DNAと、以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液との反応混合物を形成する工程、を含み、
ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む、前記方法に関する。

【0083】
別の態様において、本発明の方法は、上記工程(1)の前に、反応液をプレインキュベーションする工程をさらに含んでいてもよい。すなわち、本発明の方法は、環状DNAの増幅方法であって、以下の工程:
(1-1)以下:
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む反応液をプレインキュベーションする工程;および
(1-2)当該反応液と鋳型となる環状DNAとの反応混合物を形成する工程、ここで当該環状DNAはDnaA活性を有する酵素と結合可能な複製開始配列(origin of chromosome(oriC))を含む;
を含む、前記方法であってよい。プレインキュベーションは、例えば、0~40℃、10~40℃、15~37℃、または16~30℃の範囲で、5~60分間、5~45分間、5~30分間、15~60分間、15~45分間、15~30分間の間、保温することにより行ってもよい。プレインキュベーションは、反応液の温度が上記の温度範囲内に保たれればプレインキュベーション中に若干変動してもよい。

【0084】
理論により制限されるものではないが、本発明は図1に示すように複製サイクルを繰り返し、環状DNAを指数的に増幅する。本発明では、上述した環状DNAを鋳型として用いて、それを少なくとも10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、または10000倍に増幅することができる。

【0085】
反応液と混合する環状DNAについては、上記<環状DNA>の項目に記載した通りである。1反応あたりに用いる鋳型DNAの量に特に制限はなく、例えば、反応開始時に10ng/μl以下、5ng/μl以下、1ng/μl以下、0.8ng/μl以下、0.5ng/μl以下、0.3ng/μl以下の濃度で反応液中に存在させてもよい。さらには、反応開始時に、1反応あたり1分子の環状DNAを鋳型として存在させて増幅に用いることもできる。

【0086】
反応液に含まれる緩衝液は、pH7~9、好ましくはpH8、において用いるのに適した緩衝液であれば特に制限はない。例えば、Tris-HCl、Tris-OAc、Hepes-KOH、リン酸緩衝液、MOPS-NaOH、Tricine-HClなどが挙げられる。好ましい緩衝液はTris-HClまたはTris-OAcである。緩衝液の濃度は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されないが、Tris-HClまたはTris-OAcの場合、例えば10mM~100mM、10mM~50mM、20mMの濃度を選択できる。

【0087】
ATPは、アデノシン三リン酸を意味する。反応開始時に反応液中に含まれるATPの濃度は、例えば0.1mM~3mMの範囲であってよく、好ましくは0.1mM~2mM、0.1mM~1.5mM、0.5mM~1.5mMの範囲であってよい。

【0088】
GTP、CTPおよびUTPは、それぞれグアノシン三リン酸、シチジン三リン酸、およびウリジン三リン酸を意味する。反応開始時に反応液中に含まれるGTP、CTPおよびUTPの濃度は、それぞれ独立して、例えば0.1mM~3.0mMの範囲であってよく、好ましくは0.5mM~3.0mM、0.5mM~2.0mMの範囲であってよい。

【0089】
dNTPは、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)の総称である。反応開始時に反応液中に含まれるdNTPの濃度は、例えば0.01~1mMの範囲であってよく、好ましくは0.05mM~1mM、0.1mM~1mMの範囲であってよい。

【0090】
マグネシウムイオン源は、反応液中にマグネシウムイオン(Mg2+)を与える物質である。例えば、Mg(OAc)、MgCl、およびMgSO、などが挙げられる。好ましいマグネシウムイオン源はMg(OAc)である。反応開始時に反応液中に含まれるマグネシウムイオン源の濃度は、例えば、反応液中にマグネシウムイオンを5~50mMの範囲で与える濃度であってよい。

【0091】
アルカリ金属イオン源は、反応液中にアルカリ金属イオンを与える物質である。アルカリ金属イオンとしては、例えばナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)が挙げられる。アルカリ金属イオン源の例として、グルタミン酸カリウム、アスパラギン酸カリウム、塩化カリウム、酢酸カリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および酢酸ナトリウム、が挙げられる。好ましいアルカリ金属イオン源はグルタミン酸カリウムまたは酢酸カリウムである。反応開始時に反応液中に含まれるアルカリ金属イオン源の濃度は、反応液中にアルカリ金属イオンを100mM以上、好ましくは100mM~300mMの範囲で与える濃度であってよいが、これに限定されない。先行する出願との兼ね合いにおいては、上記のアルカリ金属イオン源の濃度から150mMが除かれてもよい。

【0092】
本発明の方法に用いる反応液はさらに、タンパク質の非特異吸着抑制剤または核酸の非特異吸着抑制剤を含んでいてもよい。好ましくは、反応液はさらに、タンパク質の非特異吸着抑制剤および核酸の非特異吸着抑制剤を含んでいてもよい。タンパク質の非特異吸着抑制剤及び/または核酸の非特異吸着抑制剤が反応液中に存在することで、反応効率が向上する。タンパク質の非特異吸着抑制剤及び/または核酸の非特異吸着抑制剤が、タンパク質同士および/またはタンパク質と環状DNAの非特異吸着や、タンパク質および環状DNAの容器表面への付着を抑制することで反応効率が向上すると考えられる。

【0093】
タンパク質の非特異吸着抑制剤とは、本発明の方法における増幅反応とは無関係なタンパク質である。そのようなタンパク質としては、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、リゾチーム、ゼラチン、ヘパリン、およびカゼインなどが挙げられる。タンパク質の非特異吸着抑制剤は反応液中、0.02~2.0mg/mlの範囲、好ましくは0.1~2.0mg/ml、0.2~2.0mg/ml、0.5~2.0mg/mlの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0094】
核酸の非特異吸着抑制剤とは、本発明の方法における増幅反応とは無関係な核酸分子または核酸類似因子である。そのような核酸分子または核酸類似因子としては、例えば、tRNA(トランスファーRNA)、rRNA(リボソーマルRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、グリコーゲン、ヘパリン、オリゴDNA、poly(I-C)(ポリイノシン-ポリシチジン)、poly(dI-dC)(ポリデオキシイノシン-ポリデオキシシチジン)、poly(A)(ポリアデニン)、およびpoly(dA)(ポリデオキシアデニン)などが挙げられる。核酸の非特異吸着抑制剤は反応液中、1~500ng/μlの範囲、好ましくは10~500ng/μl、10~200ng/μl、10~100ng/μlの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。先行する出願との兼ね合いにおいては、核酸の非特異吸着抑制剤としてtRNAを選択する場合、tRNAの濃度から50ng/μlが除かれてもよい。

【0095】
本発明の方法に用いる反応液はさらに、DNAの安定化因子を含んでいてもよい。DNAの安定化因子が反応液中に存在することで、DNAの切断が抑制され、鋳型DNAおよび増幅産物を保護することができると考えられる。DNAの安定化因子の添加により、目的産物の収率向上につながる。特に、鋳型DNAが長鎖環状DNAである場合は、鋳型DNAおよび増幅産物が分解されやすいため、DNAの安定化因子の添加は有益である。DNAの安定化因子は、特に限定されないが、例えば、グルコース、スクロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ウシ血清アルブミン(BSA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、バソクプロインジスルホン酸二ナトリウム(BDA)、ペニシラミン、タイロン(Tiron, 1,2-ジヒドロキシベンゼン-3,5-スルホネート)、ジエチレレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびDpsタンパク質(大腸菌由来)、メタロチオネインタンパク質(ヒト由来)からなる群より選択されるものであってもよい。この中で、DTPA、Tiron、BDA、Dpsタンパク質およびBSAは、環状DNA増幅反応を効率化作用をも有するので、特に好ましい。DTPAまたはTironは反応液中、0.01mM~0.3mM、好ましくは0.05~0.15mMの範囲で含まれていてもよいがこれに限定されない。BDAは、反応液中、0.01~0.5mM、好ましくは0.05~0.3mMの範囲で含まれていてもよいがこれに限定されない。Dpsタンパク質は反応液中、0.3~3.0μM、好ましくは0.3~1.5μMの範囲で含まれていてもよいがこれに限定されない。BSAは反応液中、0.02~2.0mg/mlの範囲、好ましくは0.1~2.0mg/ml、0.2~2.0mg/ml、0.5~2.0mg/mlの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0096】
本発明の方法に用いる反応液はさらに、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼまたはRecG型ヘリカーゼを含んでいてもよい。好ましくは、反応液はさらに、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよびRecG型ヘリカーゼを含んでいてもよい。直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/またはRecG型ヘリカーゼが反応液中に存在することで、増幅反応中に二重鎖切断などによって生じる直鎖状DNAの量を低減し、目的のスーパーコイル産物の収率を向上させる効果がある。

【0097】
本発明の方法に用いる反応液はさらに、RecG型ヘリカーゼまたは一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含んでいてもよい。好ましくは、反応液はさらに、RecG型ヘリカーゼおよび一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含んでいてもよい。RecG型ヘリカーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼが反応液中に存在することで、増幅反応中に生じる低分子の副次的な増幅産物の量を低減し、目的のスーパーコイル産物の収率を向上させる効果がある。

【0098】
本発明の方法に用いる反応液はさらに、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼまたは一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含んでいてもよい。好ましくは、反応液はさらに直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼを含んでいてもよい。直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼが反応液中に存在することで、増幅反応中に二重鎖切断などによって生じる直鎖状DNAの量を低減し、目的のスーパーコイル産物の収率を向上させる効果がある。

【0099】
直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼは、直鎖状DNAの5’末端もしくは3’末端から逐次的に加水分解する酵素である。直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼは、直鎖状DNAの5’末端もしくは3’末端から逐次的に加水分解する活性を有するものであれば、その種類や生物学的由来に特に制限はない。例えば、RecBCD、λエキソヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼIII、エキソヌクレアーゼVIII、T5エキソヌクレアーゼ、T7エキソヌクレアーゼ、およびPlasmid-SafeTMATP-Dependent DNase (epicentre)などを用いることができる。好ましい直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼはRecBCDである。直鎖状DNAエキソヌクレアーゼは反応液中、0.001~1.0U/μL、好ましくは0.005U~1.0U/μL、0.01~1.0U/μl、0.05~1.0U/μL、または0.1~1.0U/μlの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。直鎖状DNAエキソヌクレアーゼについての酵素活性単位(U)は、37℃、30分の反応において、直鎖状DNAの1nmolのデオキシリボヌクレオチドを酸可溶性とするのに必要な酵素量を1Uとした単位である。

【0100】
RecG型ヘリカーゼは、伸張反応の終結時に複製フォーク同士が衝突してできる副次的なDNA構造を解消するヘリケースと考えられている酵素である。RecG型ヘリカーゼは、大腸菌由来のRecGと同様の活性を有するものであれば、その生物学的由来に特に制限はないが、例えば大腸菌由来のRecGを好適に用いることができる。大腸菌由来のRecGは単量体として反応液中、100nM~800nMの範囲、好ましくは100nM~500nM、100nM~400nM、100nM~300nMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。RecG型ヘリカーゼは、上記大腸菌由来のRecGについて特定された濃度範囲に酵素活性単位として相当する濃度範囲で用いることができる。

【0101】
一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼは、一本鎖DNAの5’末端もしくは3’末端のヌクレオチドを逐次的に加水分解する酵素である。一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼは、一本鎖DNAの5’末端または3’末端のヌクレオチドを逐次的に加水分解する活性を有するものであれば、その種類や生物学的由来に特に制限はない。例えばエキソヌクレアーゼI(exo I)、RecJ、エキソヌクレアーゼT、などを用いることができる。好ましい一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼはexo Iである。一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼは反応液中、0.1~1.0U/μlの範囲、好ましくは0.15~1.0U/μl、0.2~1.0U/μL、または0.2~0.5U/μLの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。exo Iについての酵素活性単位(U)は、37℃、30分の反応において、一本鎖DNAの10nmolのデオキシリボヌクレオチドを酸可溶性とするのに必要な酵素量を1Uとした単位である。RecJについての酵素活性単位(U)は、37℃、30分の反応において、一本鎖DNAの0.05nmolのデオキシリボヌクレオチドを酸可溶性とするのに必要な酵素量を1Uとした単位である。

【0102】
本発明の方法に用いる反応液はさらに、アンモニウム塩を含んでいてもよい。アンモニウム塩の例としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および酢酸アンモニウムが挙げられる。特に好ましいアンモニウム塩は硫酸アンモニウムまたは酢酸アンモニウムである。アンモニウム塩は反応液中、0.1mM~100mMの範囲、好ましくは0.1mM~50mM、1mM~50mM、1mM~20mMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0103】
第二の酵素群の一つとして、DNAリガーゼ活性を有する酵素として大腸菌由来のDNAリガーゼを用いる場合、その補因子であるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が反応液中に含まれる。NADは反応液中、0.01mM~1.0mMの範囲、好ましくは0.1mM~1.0mM、0.1mM~0.5mMの範囲で含まれていてもよいが、これに限定されない。

【0104】
本発明の方法に用いる反応液はさらに、還元剤を含んでいてもよい。好ましい還元剤の例としては、DTT、β-メルカプトエタノール(2-メルカプトエタノール)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびグルタチオンが挙げられる。好ましい還元剤はDTTである。還元剤は、反応液中に1.0mM~15.0mMの濃度で、好ましくは2.0mM~10.0mM、4.0mM~8.0mMの濃度で含まれていてもよい。

【0105】
本発明の方法に用いる反応液はまた、ATPを再生するための酵素および基質を含んでいてもよい。ATP再生系の酵素と基質の組み合わせとしては、クレアチンキナーゼとクレアチンホスフェート、およびピルビン酸キナーゼとホスホエノールピルビン酸が挙げられる。ATP再生系の酵素としてはミオキナーゼが挙げられる。好ましいATP再生系の酵素と基質の組み合わせはクレアチンキナーゼおよびクレアチンホスフェート、である。

【0106】
反応液中に含まれる第一、第二、及び第三の酵素群については、上記<第一、第二および第三の酵素群>の項目に記載した通りである。

【0107】
ある態様において、本発明の方法に用いる第一の酵素群は、DnaA活性を有する酵素、1種以上の核様体タンパク質、DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群、一本鎖DNA結合タンパク質(single-strand binding protein(SSB))、DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素、DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素、DNAプライマーゼ活性を有する酵素、DNAクランプ活性を有する酵素、およびDNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群、の組み合わせ含んでいてよい。ここにおいて、1種以上の核様体タンパク質はIHFまたはHUであってよく、DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群は、GyrAおよびGyrBからなる複合体であってよく、DnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素はDnaBヘリカーゼであってよく、DNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素はDnaCヘリカーゼローダーであってよく、DNAプライマーゼ活性を有する酵素はDnaGプライマーゼであってよく、DNAクランプ活性を有する酵素はDnaNクランプであってよく、そして、DNAポリメラーゼIII*活性を有する酵素または酵素群は、DnaX、HolA、HolB、HolC、HolD、DnaE、DnaQ、およびHolEのいずれかを含む酵素または酵素群であってよい。

【0108】
別の態様において、本発明の方法に用いる第二の酵素群は、DNAポリメラーゼI活性を有する酵素およびDNAリガーゼ活性を有する酵素の組み合わせを含んでいてよい。あるいは、第二の酵素群は、DNAポリメラーゼI活性を有する酵素、DNAリガーゼ活性を有する酵素、およびRNaseH活性を有する酵素の組み合わせを含んでいてよい。

【0109】
また別の態様において、本発明の方法に用いる第三の酵素群は、トポイソメラーゼIII活性を有する酵素および/またはトポイソメラーゼIV活性を有する酵素を含んでいてよい。あるいは、第三の酵素群は、トポイソメラーゼIII活性を有する酵素およびRecQ型ヘリカーゼ活性を有する酵素の組み合わせを含んでいてよい。あるいはまた、第三の酵素群は、トポイソメラーゼIII活性を有する酵素、RecQ型ヘリカーゼ活性を有する酵素、およびトポイソメラーゼIV活性を有する酵素の組み合わせであってもよい。

【0110】
本発明の方法は、工程(2)として、上記反応混合物を所定の温度範囲で保温する工程をさらに含んでもよい。所定の温度範囲は、DNA複製反応が進行することのできるものであれば特に制限はないが、たとえばDNAポリメラーゼの至適温度である20℃~80℃、25℃~50℃、または25℃~40℃の範囲であることができる。所定の温度範囲内での保温は、反応中にその所定の温度範囲内の温度変化または温度変動を許容する。好ましい態様において、上記工程(2)は、上記反応混合物を等温条件下で保温する工程であってもよい。等温条件としては、DNA複製反応が進行することのできるものであれば特に制限はないが、たとえばDNAポリメラーゼの至適温度である20℃~80℃の範囲に含まれる一定の温度とすることができ、25℃~50℃の範囲に含まれる一定の温度とすることができ、25℃~40℃の範囲に含まれる一定の温度とすることができ、30℃程度とすることができる。本明細書において「等温条件下で保温する」、「等温で反応させる」の用語は、反応中に設定した温度に対して±7℃、±5℃、±3℃、または±1℃の温度範囲内に保つことを意味する。保温時間は、目的とする環状DNAの増幅産物の量に応じて適宜設定することができるが、たとえば1~24時間とすることができる。

【0111】
あるいは、本発明の方法は、工程(2)として、上記反応混合物を、30℃以上でのインキュベーションおよび27℃以下でのインキュベーションを繰り返す温度サイクル下で、インキュベートする工程をさらに含んでいてもよい。30℃以上でのインキュベーションは、oriCを含む環状DNAの複製開始が可能な温度範囲であれば特に限定はなく、例えば、30~80℃、30~50℃、30~40℃、37℃であってよい。30℃以上でのインキュベーションは、特に限定されないが、1サイクルあたり10秒~10分間であってもよい。27℃以下でのインキュベーションは、複製開始が抑制され、DNAの伸張反応が進行する温度であれば特に限定はなく、例えば、10~27℃、16~25℃、24℃、であってよい。27℃以下でのインキュベーションは、特に限定されないが、増幅する環状DNAの長さに合わせて設定することが好ましく、例えば1サイクルにつき、1000塩基あたり1~10秒間であってもよい。温度サイクルのサイクル数は特に限定されないが、10~50サイクル、20~40サイクル、25~35サイクル、30サイクルであってもよい。

【0112】
ある態様において、工程(2)は、油中水滴型エマルジョン内で行ってもよい。油中水滴型エマルジョンは、工程(1)で形成した反応混合物にミネラルオイルおよび界面活性剤を添加して混合することにより調製することができる。ミネラルオイルおよび界面活性剤の種類および量は、当業者が適宜選択することができる。

【0113】
本発明の方法は、工程(2)の後に、第一から第三の酵素群を含まない反応液で五倍以上に希釈した後、再保温する工程をさらに含んでいてもよい。酵素群の希釈により新たな複製開始が抑えられる一方で、進行途中の複製伸長、カテナン形成、分離反応は残留酵素の効果で継続して進行する。また、反応中にニックなどが入って生じた副生成物も、この過程で残留ライゲースなどの効果によって修復可能である。よって、増幅中間体や副生成物からの最終産物への移行が特異的に導かれ、目的のスーパーコイル構造の環状DNAの収率向上が期待できる。

【0114】
本発明の方法は、工程(2)の後に、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼで処理する工程をさらに含んでいてもよい。直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼで処理することで、増幅反応中に生じた副産物である直鎖状DNAを分解して除去することができる。直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼの種類および用いる量は、上述のとおりであってもよい。直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼによる処理は、例えば、25℃~40℃で、30分間~3時間行ってもよい。

【0115】
本発明の方法は、工程(2)の後に、ギャップリペア酵素で処理する工程をさらに含んでいてもよい。ギャップリペア酵素は、二本鎖DNAにおいて1個または複数の連続したヌクレオチドが欠けた状態であるギャップ、または二本鎖DNAにおいて隣り合ったヌクレオチド間のリン酸ジエステル結合が切断された状態のニックを修復し、完全な二本鎖スーパーコイルDNAとする酵素群である。ギャップリペア酵素で処理することで、増幅反応中に副産物として生じていたギャップまたはニックの入ったDNAを修復し、目的のスーパーコイル産物の収率を向上させる効果がある。

【0116】
ギャップリペア酵素は、二本鎖DNAのギャップまたはニックを修復できる酵素群であれば、その種類や生物学的由来に特に制限はない。例えば、エキソヌクレアーゼIII、DNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群、の組合せを使用できる。エキソヌクレアーゼIII活性を有する酵素は5~100mU/μLの濃度で用いてもよいが、これに限定されない。エキソヌクレアーゼIIIについての酵素活性単位(U)は、37℃、30分の反応において、二本鎖DNAの1nmolのデオキシリボヌクレオチドを酸可溶性とするのに必要な酵素量を1Uとした単位である。DNAポリメラーゼI、DNAリガーゼ、DNAジャイレース活性を有する酵素または酵素群は、それぞれ前述の第一または第二の酵素群において定めた濃度で用いて良いが、これに限定されない。ギャップリペア酵素による処理は、例えば、25~40℃で、5~120分間、好ましくは10~60分間、行ってもよい。

【0117】
本発明の方法は、工程(2)の後に、目的に応じて、環状DNAの増幅産物を精製する工程を含んでもよい。環状DNAの精製は、当業者に利用可能な手法を用いて適宜実施することができる。

【0118】
本発明の方法を用いて増幅した環状DNAは、反応後の反応混合物をそのまま、あるいは適宜精製したものを、形質転換等のその後の目的に用いることができる。

【0119】
<環状DNAの増幅用組成物およびキット>
本発明は、環状DNAの増幅用組成物であって、
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
を含む、前記組成物にも関する。

【0120】
本発明の組成物は、さらに、タンパク質の非特異吸着抑制剤、核酸の非特異吸着抑制剤、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼ、RecG型ヘリカーゼ、一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼ、アンモニウム塩、NAD、還元剤、DNAの安定化因子、ならびに、ATP再生系の酵素および基質の組み合わせ、から選択される1以上の成分を含んでいてもよい。

【0121】
本発明の組成物に含まれる成分についての具体的な成分および濃度については、上記<環状DNA>、<第一、第二、第三の酵素群>、<環状DNAの増幅方法>の項目において記載した通りである。

【0122】
また、本発明は、環状DNAの増幅用キットであって、
環状DNAの複製を触媒する第一の酵素群;
岡崎フラグメント連結反応を触媒して、カテナンを形成する2つの姉妹環状DNAを合成する第二の酵素群;
2つの姉妹環状DNAの分離反応を触媒する第三の酵素群;
緩衝液;
ATP;
GTP、CTPおよびUTP;
dNTP;
マグネシウムイオン源;および
アルカリ金属イオン源;
の組み合わせを含む、前記キットにも関する。

【0123】
本発明のキットは、上記の構成品を1つのキットにすべて含むものであってもよく、また、本発明の方法に利用する目的のためのキットであれば、上記の構成品の一部を含まないものであってもよい。上記の構成品の一部を含まないキットである場合、実施者が、増幅時に必要な成分を、当該キットに追加して、本願発明の増幅方法を実施することができる。

【0124】
本発明のキットは、さらに、タンパク質の非特異吸着抑制剤、核酸の非特異吸着抑制剤、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼ、RecG型ヘリカーゼ、一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼ、アンモニウム塩、NAD、還元剤、DNAの安定化因子、ならびに、ATP再生系の酵素および基質の組み合わせ、から選択される1以上の成分を含む追加の構成品を含んでいてもよい。本発明のキットはさらにまた、増幅反応後の処理のために、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼ、一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼ、およびギャップリペア酵素、から選択される1以上の成分を含む追加の構成品を含んでいてもよい。追加の構成品は、1つのキットとして本発明のキットに含まれていてもよく、または本発明のキットとともに使用することを前提とした別のキットとして提供されてもよい。

【0125】
本発明のキットに含まれる各構成品についての具体的な成分および濃度については、上記<環状DNA>、<第一、第二、第三の酵素群>、<環状DNAの増幅方法>の項目において記載した通りである。

【0126】
本発明のキットは、上記構成品の混合物を1つに包装したものを含むものであってもよいが、上記構成品を個別に、あるいは数種類ずつまとめて混合したものを別個に包装したものを含むものであってよい。

【0127】
本発明のキットはまた、本発明の環状DNAの増幅方法を実施するための指示が記載された説明書を含むものであってもよい。当該説明書には、上記<環状DNA>、<第一、第二、第三の酵素群>、<環状DNAの増幅方法>の項目において記載した事項が説明として記載されていてもよい。
【実施例】
【0128】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に記載の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0129】
実施例1:環状DNAの増幅
<材料と方法>
表1に示す組成の反応液に鋳型DNAを添加して氷上で混合した後、30℃のインキュベータで1時間、2時間、または3時間保温した。1反応あたりの総容量は10マイクロリットルとなるようにした。30℃における反応後、反応産物をアガロースゲル電気泳動(0.5% 1×TAE、150 V、100分間、14℃)したのち、SYBR Green(タカラバイオ株式会社)を用いてDNAを検出した。
【実施例】
【0130】
【表1】
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【実施例】
【0131】
表中、SSBは大腸菌由来SSB、IHFは大腸菌由来IhfAおよびIhfBの複合体、DnaGは大腸菌由来DnaG、DnaNは大腸菌由来DnaN、PolIII*は大腸菌由来DnaX、HolA、HolB、HolC、HolD、DnaE、DnaQ、およびHolEのからなる複合体であるDNAポリメラーゼIII*複合体、DnaBは大腸菌由来DnaB、DnaCは大腸菌由来DnaC、DnaAは大腸菌由来RNaseH、Ligaseは大腸菌由来DNAリガーゼ、PolIは大腸菌由来DNAポリメラーゼI、GyrAは大腸菌由来GyrA、GyrBは大腸菌由来GyrB、Topo IVは大腸菌由来ParCおよびParEの複合体、Topo IIIは大腸菌由来トポイソメラーゼIII、RecQは大腸菌由来RecQを表す。
【実施例】
【0132】
SSBは、SSBの大腸菌発現株から、硫安沈殿及びイオン交換カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0133】
IHFは、IhfA及びIhfBの大腸菌共発現株から、硫安沈殿及びアフィニティーカラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0134】
DnaGは、DnaGの大腸菌発現株から、硫安沈殿、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0135】
DnaNは、DnaNの大腸菌発現株から、硫安沈殿及び陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0136】
PolIII*は、DnaX、HolA、HolB、HolC、HolD、DnaE、DnaQ及びHolEの大腸菌共発現株から、硫安沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0137】
DnaB, DnaCは、DnaB及びDnaCの大腸菌共発現株から、硫安沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0138】
DnaAは、DnaAの大腸菌発現株から、硫安沈殿、透析沈殿、及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0139】
GyrA, GyrBは、GyrAの大腸菌発現株とGyrBの大腸菌発現株の混合物から、硫安沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0140】
Topo IVは、ParCの大腸菌発現株とParEの大腸菌発現株の混合物から、硫安沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0141】
Topo IIIは、Topo IIIの大腸菌発現株から、硫安沈殿及びアフィニティーカラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0142】
RecQは、RecQの大腸菌発現株から、硫安沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0143】
RNaseH、Ligase、PolIは市販の大腸菌由来の酵素を用いた(タカラバイオ株式会社)。
【実施例】
【0144】
鋳型DNAとしては、9.6 kbの環状DNA(複製開始配列oriCを持つ環状DNA、カナマイシン耐性(Km))、80 kbの長鎖環状DNA(複製開始配列oriCを持つ環状DNA、カナマイシン耐性(Km))、200 kbの長鎖環状DNA(複製開始配列oriCを持つ環状DNA、カナマイシン耐性(Km))、または試験管内連結により環状化したDNAを用いた。
【実施例】
【0145】
9.6 kbの環状DNAおよび80 kb 、200 kbの長鎖環状DNAは、大腸菌細胞内組換え反応によって調製した。具体的には、λファージの組換えタンパク質群を発現している大腸菌を用い、細胞内組換え反応によって、カナマイシン耐性カセットと大腸菌染色体のうちoriCを含む領域とを含む、所望の長さの環状DNAを調製した。
【実施例】
【0146】
試験管内連結による環状化DNAの調製方法を、図2に示す。具体的には、複製開始配列oriCとカナマイシン耐性(Km)を持つもののPCR断片(2.3kb)に、dnaA遺伝子およびdnaN遺伝子配列を有するPCR断片(以下、dnaA-dnaN断片と記載する)(2.6 kb)を、Gibson assembly法により反応させることにより連結した。2つのPCR断片は両端に付加した20塩基の相同配列(H1, H2と記載する)を介して連結し、環状構造となる。反応は、Gibson Assembly Master Mix(NEB社)に上記2種類のPCR断片を混合し、50℃で15分間反応させることによって行った。反応後、反応溶液0.1マイクロリットル分(反応溶液の10倍希釈溶液1マイクロリットル分)を鋳型DNAとして、10マイクロリットルの増幅反応系(表1の組成)に直接添加し、30℃で1時間反応させた。
【実施例】
【0147】
<結果1> 9.6 kbの環状DNA(0.08 ng、環状分子数にして約107個)を鋳型として用いた場合
SYBR Greenによる増幅産物の検出結果を図3に示す。
【実施例】
【0148】
副次的産物(反応中間産物)もみられるものの、スーパーコイル構造の環状DNA増幅産物(黒枠で示す)を確認することができた。
【実施例】
【0149】
反応後の溶液をそのまま用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、カナマイシン含有寒天培地で培養し、コロニー数を計測することによって、環状DNAの増幅量を求めた結果を表2に示す。対照としては、保温時間0時間の反応溶液を用いた。
【実施例】
【0150】
【表2】
JP2017199991A1_000004t.gif
【実施例】
【0151】
本発明の方法により、9.6 kbの環状DNAを環状DNAとしておよそ6,000倍に増幅することができた。
【実施例】
【0152】
<結果2> 80 kbおよび200 kbの長鎖環状DNAを鋳型として用いた場合
SYBR Greenによる増幅産物の検出結果を図4に示す。
【実施例】
【0153】
スーパーコイル構造の環状DNA増幅産物(黒枠または矢印で示す)を確認することができた。
【実施例】
【0154】
本発明の方法により、80 kb又は200 kbという長大な環状DNAを鋳型として用いた場合でも、良好に増幅産物が得られることがわかった。
【実施例】
【0155】
<結果3> 試験管内連結により環状化したDNAを鋳型として用いた場合
SYBR Greenによる増幅産物の検出結果を図5に示す。
【実施例】
【0156】
本発明の方法により、試験管内連結により環状化したDNAを鋳型として用いた場合でも、良好に増幅産物が得られることがわかった。
【実施例】
【0157】
反応後の溶液をそのまま用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、カナマイシン含有寒天培地で培養し、コロニー数を計測することによって、環状DNAの増幅量を求めた結果を表3に示す。対照として、増幅反応を行わなかったサンプルを用いた。
【実施例】
【0158】
【表3】
JP2017199991A1_000005t.gif
【実施例】
【0159】
Gibson Assembly法を用いて環状化したDNAが、本発明の方法により、環状分子としておよそ2,000倍に増幅されたことがわかった。
【実施例】
【0160】
実施例2:少数の鋳型分子からの環状DNAの増幅
実施例1に記載の9.6 kbの環状DNAを用い、実施例1と同様に増幅反応を行った。
【実施例】
【0161】
(2-1)増幅効率の検討
増幅反応液(実施例1、表1)10μlに、9.6 kbの環状DNAを環状分子として1~1000分子含まれるように加え、30℃で3時間保温することにより増幅反応を行った。反応物について、0.5%アガロースゲル電気泳動を行い、SybrGreen(タカラバイオ株式会社)で染色し、増幅DNAを検出した(図6a)。また、増幅産物の総DNA量を、PicoGreen検出キット(ThermoFisher社)により定量した(図6b:PicoGreen法)。環状DNA分子としての増幅量を、増幅産物を直接、大腸菌に形質転換し、カナマイシン耐性コロニー数を求めることにより定量した(図6b:形質転換法)。定量結果から、初期DNA量に対する増幅度合いを求め(増幅)、グラフに示した。
【実施例】
【0162】
上記の結果より、鋳型DNAとして1分子の環状DNAを、わずか3時間の等温反応で約1011分子にまで、増幅可能であることが明らかとなった(約1,000億倍の増幅)。
【実施例】
【0163】
(2-2)倍加時間の検討
増幅反応液(実施例1、表1)80μlに、上記の環状DNAを加え、30℃で保温することにより増幅反応を行った。環状DNAは反応液1μlあたり105分子となるよう加えた。経時的にサンプリングし、サンプルを直接、大腸菌に形質転換し、カナマイシン耐性コロニー数を求めることにより増幅された環状DNA分子数を定量した(図7)。
【実施例】
【0164】
上記の結果より、9.6 kbの環状DNA分子の倍加時間は約5分であることが確認された。
【実施例】
【0165】
実施例3:混合物から単一な環状DNAクローンの増幅
実施例1に記載の9.6 kbの環状DNA及び12.0 kbの環状DNA(複製開始配列oriCを持つ環状DNA、カナマイシン耐性(Km))の混合物から単一な環状DNAクローンの増幅を行った。
【実施例】
【0166】
12.0 kbの環状DNAは、大腸菌細胞内組換え反応によって調製した。具体的には、λファージの組換えタンパク質群を発現している大腸菌を用い、細胞内組換え反応によって、oriCとカナマイシン耐性遺伝子からなるカセットと大腸菌染色体の一部の領域とを含む、所望の長さの環状DNAを調製した。
【実施例】
【0167】
増幅反応液(実施例1、表1)10μlに、上記2種の環状DNAの混合物を反応液中に各15分子あるいは各1.5分子となるように希釈して加え、30℃で6時間保温することにより増幅反応を行った。反応物について、0.5%アガロースゲル電気泳動を行い、SybrGreen(タカラバイオ株式会社)で染色し、増幅DNAを検出した(図8)。
【実施例】
【0168】
その結果、環状DNAが1.5分子にまで希釈された反応液では、各反応サンプルすべてに、どちらか一方のクローンのみが増幅された。このことは、鋳型DNAが混合物であっても、それを反応液中に1分子レベルにまで希釈することで、単一な環状DNAクローンの増幅が可能であることを示す。
【実施例】
【0169】
実施例4:継代増幅
lacZ環状DNAを用いて、環状DNAの継代増幅について試験した。
【実施例】
【0170】
lacZ環状DNA(9.0 kb)は、oriCを含む二本鎖DNA断片(1.0 kb)、カナマイシン耐性遺伝子(Km)を含む二本鎖DNA断片(4.6 kb)及びlacZ(β-ガラクトシダーゼ)遺伝子を含む二本鎖DNA断片(3.4 kb)を連結させることにより調製した。増幅反応液(実施例1、表1)10μlに、lacZ環状DNAを1,000分子含まれるように加え、30℃で3時間保温することにより増幅反応を行い、これを1継代とした。前の継代数での増幅反応物を10倍希釈し、これを1μl、新たな増幅反応液に添加して同様に反応させることで次の継代増幅とした。この継代増幅を10回まで繰り返した。継代ごとの増幅産物について、0.5%アガロースゲル電気泳動を行い、SybrGreen(タカラバイオ株式会社)で染色し、検出した(図9)。また、その増幅産物の一部を大腸菌形質転換し、カナマイシン耐性コロニー数よりDNA増幅度合を定量、この値より、何世代指数増幅を繰り返したかを算出し総世代数として示した。
【実施例】
【0171】
その結果、10回の継代後も環状DNAの増幅が効率よく進行している事が分かった。実施例2(図7)の結果が示すように、環状DNAがある程度増幅すると、基質や酵素の枯渇により、増幅速度は頭打ちになる。一方で、本実施例の結果は、増幅反応物の一部を新たな反応液にて継代することで、環状DNAの指数増幅を半永久的に繰り返すことが可能であることを示している。すなわち、本発明の方法は、環状DNAの増幅を、細胞の継代増殖のように行うことが可能な方法である。
【実施例】
【0172】
実施例5:増幅反応における複製エラー発生率
実施例4における鋳型の環状DNAにはlacZ遺伝子が含まれているため、この環状遺伝子で形質転換した大腸菌をX-galプレート上で培養すると、lacZ遺伝子が正常に発現したコロニー(lacZ+)はX-galを分解できるため青色を呈し、複製エラーによる変異導入でlacZ遺伝子が正常に機能しなくなったコロニー(lacZ)はX-galを分解できないため白色を呈する。すなわち、この環状遺伝子で形質転換した大腸菌がX-galプレート上で呈する色によって、増幅した環状DNAにおける複製エラーを判定できる。
【実施例】
【0173】
各継代サンプルの増幅反応物を直接大腸菌に形質転換し、X-galプレート上で培養して、lacZ-出現率を求めた。このlacZ-出現率と実施例4で求めた総世代数とから、Barnes の手法 (Barnes WM Gene. 1992, 112, 29-35) に従い、複製サイクル1世代あたりのエラー発生率を算出した。結果を以下の表4に示す。
【実施例】
【0174】
【表4】
JP2017199991A1_000006t.gif
【実施例】
【0175】
上記の結果は、複製エラーは1億塩基につき1箇所程度(塩基当たり平均1.4 x 10-8エラー)であることを示す。これは、細胞内(ミスマッチ修復系をもたない株)の変異率と同程度であり、Taqポリメラーゼの約1万倍の正確性である。
【実施例】
【0176】
実施例6:エキソヌクレアーゼおよびRecGの追加
実施例1に記載の80 kbの環状DNAを用い、増幅反応液にRecG型ヘリカーゼおよび直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼをさらに添加して増幅反応を行う場合の効果を検討した。
80 kbの環状DNAは、実施例1に示したとおりに調製した。
RecG型ヘリカーゼとして、RecGを用いた。RecGは、RecGの大腸菌発発現株から、硫安沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィーを含む工程で精製し、調製した。
【実施例】
【0177】
直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼとして、市販のエキソヌクレアーゼであるPlasmid-SafeTMATP-Dependent DNase (epicentre)を用いた。ユニット数は、製造元の記載に従った。
【実施例】
【0178】
実施例1の表1に示す反応組成に、80 kbの環状DNAを0.8pg/μlまたは8pg/μl、RecGを0nM、100nM、300nM、または1000nM、および直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼを0U/μlまたは0.2U/μl、となるように加えた増幅反応液(10μl)を、30℃で24時間保温することにより増幅反応を行った。反応物について、0.5%アガロースゲル電気泳動(1×TAEバッファー、150 V、100分)を行い、SybrGreen(タカラバイオ株式会社)で染色し、増幅DNAを検出した。
【実施例】
【0179】
その結果、RecGおよび直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼの添加により、DNAの切断等による副産物である直鎖状DNAの生成が低減され、目的のスーパーコイル構造の環状DNA増幅産物の生成量の向上が観察された(図10)。
【実施例】
【0180】
実施例7:各種条件検討
反応液の各成分について条件検討を行った結果を示す。
【実施例】
【0181】
1.方法
鋳型となる環状DNAとして、8.0 kbの環状DNAを用いた。8.0 kbの環状DNAは、M13mp18プラスミドベクターにoriC断片を挿入して作成した。
【実施例】
【0182】
条件A~Rについては、表5に示す増幅反応液に8.0 kbの環状DNAを終濃度8.0ng/μlまたは0.8ng/μlになるように加え、30℃で1時間反応させた。反応液に[α-32P]dATPを添加しておき、DNA複製反応後、鋳型DNAに取り込まれたdNTP量を液体シンチレーションカウンターにて計測した。dNTP取り込み量は25μl反応液あたりの値を算出した。終濃度8.0ng/μlの環状DNAを鋳型として、100%複製反応が進行した場合(1ラウンドの複製)、600pmolのdNTPが取り込まれる。反応液の一部はアガロースゲル電気泳動後、BASイメージングプレートにて32P取り込み産物を検出し、目的のスーパーコイル構造産生を確認した。
【実施例】
【0183】
条件Sについては、表5に示す増幅反応液に8.0 kbの環状DNAを終濃度8.0ng/μlまたは0.8ng/μlになるように加え、30℃で2時間反応させた。反応物について、0.5%アガロースゲル電気泳動(1×TAEバッファー、150 V、100分)を行い、SybrGreen(タカラバイオ株式会社)で染色し、増幅DNAを検出した。
【実施例】
【0184】
【表5-1】
JP2017199991A1_000007t.gif
【実施例】
【0185】
【表5-2】
JP2017199991A1_000008t.gif
【実施例】
【0186】
【表5-3】
JP2017199991A1_000009t.gif
【実施例】
【0187】
2.結果
(1)条件A
第一、第二及び第三の酵素群を加えて反応させることで、数ラウンドの複製サイクルの繰り返しが導かれることを見出した。しかしながら、複製サイクルを経るごとに反応の基質タンパク質が不足してくるため、複製サイクルは4ラウンドまでで停滞することが判明した(図11)。
【実施例】
【0188】
(2)条件B
反応開始の鋳型DNA量を減らすことで複製サイクル数を向上させることができるかどうかについて検討した。反応開始時の鋳型DNA量について、8ng/μlおよび0.8ng/μlで検討した。
【実施例】
【0189】
その結果、反応開始時の鋳型DNA量が8ng/μlの場合は複製反応が見られたものの、鋳型DNA量を0.8ng/μlに減少させると、複製効率が著しく阻害され、DNAの増幅が観察されなかった(図12)。このことは、複製サイクル数を向上させるためには、単に鋳型DNA量を減少させればよいのではなく、反応組成の各種成分の量を含めた条件検討が必要であることを示している。
【実施例】
【0190】
(3)条件C
反応組成におけるGTP、CTPおよびUTPの量を検討した。反応開始時のGTP、CTPおよびUTPの濃度について、0.2mM、0.5mM、1.0mMおよび2.0mMを検討した。
結果を図13に示す。
【実施例】
【0191】
(4)条件D
反応組成におけるIHFの量を検討した。反応開始時のIHFの濃度について、0nM、10nM、20nM、40nM、100nM、および200nMを検討した。
結果を図14に示す。
【実施例】
【0192】
(5)条件E
反応組成におけるTopo IVの量を検討した。反応開始時のTopo IVの濃度について、0nM、1nM、2nM、5nM、10nM、および20nMを検討した。
結果を図15に示す。
【実施例】
【0193】
(6)条件F
反応組成におけるDNAジャイレースの量を検討した。反応開始時のGyrA-GyrB複合体の濃度について、0nM、10nM、25nM、50nM、100nM、および200nMを検討した。
結果を図16に示す。
【実施例】
【0194】
(7)条件G
反応組成におけるDNAポリメラーゼIII*の量を検討した。反応開始時のPol III*の濃度について、0nM、1nM、2nM、5nM、および10nMを検討した。
結果を図17に示す。
【実施例】
【0195】
(8)条件H
反応組成におけるアルカリ金属イオン源の量を検討した。反応開始時のグルタミン酸カリウムの濃度について、50mMおよび150mMを検討した。
結果を図18に示す。
【実施例】
【0196】
(9)条件I
反応組成におけるタンパク質の非特異吸着抑制剤および/または核酸の非特異吸着抑制剤の量を検討した。反応組成にtRNAを含まず0.1mg/ml BSAを含む条件、20ng/μl tRNAおよび0.1mg/ml BSAを含む条件、tRNAを含まずBSAを0.5mg/ml含む条件、を検討した。
結果を図19に示す。
【実施例】
【0197】
(10)条件J
反応組成におけるDnaA活性を有する酵素の量を検討した。反応開始時のDnaAの濃度について、0nM、5nM、10nM、20nM、40nM、100nM、および200nMを検討した。
結果を図20に示す。
【実施例】
【0198】
(11)条件K
反応組成におけるDNAリガーゼ活性を有する酵素の量を検討した。反応開始時のリガーゼの濃度について、0nM、2nM、5nM、10nM、20nM、および50nMを検討した。
結果を図21に示す。
【実施例】
【0199】
(12)条件L
反応組成における一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)の量を検討した。反応開始時のSSBの濃度について、0nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、および500nMを検討した。
結果を図22に示す。
【実施例】
【0200】
(13)条件M
反応組成におけるDNAポリメラーゼI活性を有する酵素の量を検討した。反応開始時のPol Iの濃度について、0nM、2nM、5nM、10nM、20nM、および50nMを検討した。
結果を図23に示す。
【実施例】
【0201】
(14)条件N
反応組成におけるDnaB型ヘリカーゼ活性を有する酵素およびDNAヘリカーゼローダー活性を有する酵素の量を検討した。反応開始時のDnaB-DnaC複合体の濃度について、0nM、5nM、10nM、20nM、および40nMを検討した。
結果を図24に示す。
【実施例】
【0202】
(15)条件O
反応組成におけるRNaseH活性を有する酵素の量を検討した。反応開始時のRNaseHの濃度について、1nM、3nM、および10nMを検討した。
結果を図25に示す。
【実施例】
【0203】
(16)条件P
条件Pについて、反応開始時の鋳型DNA量を、8ng/μl、0.8ng/μl、および0.27ng/μlとして増幅反応を検討した。
結果を図26に示す。条件Pでは、鋳型DNAの量が0.8ng/μlの場合も効率よく増幅できた。さらに、鋳型DNAの量を0.27ng/μlに減らした場合も効率よく増幅できた。DNA合成量としては、100倍を超えて増幅していることが確認できた。
【実施例】
【0204】
(17)条件Q
反応組成における、第三の酵素群の酵素の組成および量について検討した。第三の酵素群としてTopo IV、Topo III、およびRecQを用いた。各酵素について検討した濃度は図27に示すとおりである。
結果を図27に示す。
【実施例】
【0205】
(18)条件R
条件Rについて、DNAジャイレースの量を検討した。反応開始時のGyrA-GyrB複合体の濃度について、0nM、10nM、25nM、50nM、および150nMを検討した。
結果を図28に示す。
【実施例】
【0206】
(19)条件S
条件Sとして、tRNA、NAD、硫酸アンモニウム(AS)、IHF、SSB、TopoIVの濃度を変更して環状DNAの増幅を検討した。各成分について検討した濃度は図29に示すとおりである。
結果を図29に示す。
【実施例】
【0207】
実施例8:バッファー組成の改良
表1に示す反応バッファーの組成について、さらに条件検討を行った。
具体的には、実施例1に記載の200kb環状DNAを0.5 pM用い、反応バッファーの組成に変更を加えた他は、実施例1と同様に増幅反応を行った。
【実施例】
【0208】
(1)ジチオスレイトール(DTT)の量の改良
DTTについて、実施例1では8 mMの濃度としていたところ、4 mMに変更して増幅反応を行った。その結果、DTTの量を半減させても環状DNAの増幅反応が進行したことを確認した。
【実施例】
【0209】
(2)アルカリ金属イオン源の検討
表1の反応バッファーの組成について、DTTを4 mMに変更するとともに、アルカリ金属イオン源を含まない反応バッファー、および、アルカリ金属イオン源としてグルタミン酸カリウムの代わりに150 mM 酢酸カリウムを含む反応バッファーを用いて、環状DNAの増幅反応を行った。
【実施例】
【0210】
結果を図30に示す。長鎖環状DNAを0.5 pM以下の低濃度から増幅する場合には、低分子の副生成物が増幅され、目的の増幅産物であるスーパーコイルの産生が確認できなくなるという問題が生じる。しかし、グルタミン酸カリウムや酢酸カリウムといったアルカリ金属イオン源を反応バッファーに含めることで、長鎖環状DNAを0.5 pMの低濃度から増幅する場合でも良好に目的産物であるスーパーコイルの増幅を確認することができた。
【実施例】
【0211】
以降の実験には、以下に示す組成の反応バッファーを用いた。
【実施例】
【0212】
【表6】
JP2017199991A1_000010t.gif
【実施例】
【0213】
(3)緩衝剤の検討
表6のバッファーの組成について、20 mM Tris-HCL (pH 8.0)を20 mM Tris-OAc (pH 8.0)に変更して環状DNAの増幅反応を行った。その結果、20 mM Tris-OAc (pH 8.0)を用いた場合も、20 mM Tris-HCL (pH 8.0)を用いた場合と同様の増幅産物が観察された。
【実施例】
【0214】
(4)ジチオスレイトール(DTT)の代替物の検討
表6のバッファー組成について、4 mM DTTを、4 mM 2-メルカプトエタノール(2-Me)または4 mM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)に変更して環状DNAの増幅反応を行った。その結果、2-MeおよびTCEPのいずれを用いた場合も、DTTを用いた場合と同様の増幅産物が観察された。
【実施例】
【0215】
(5)硫酸アンモニウムの代替物の検討
表6のバッファー組成について、10 mM 硫酸アンモニウムを、10 mM 酢酸アンモニウムに変更して環状DNAの増幅反応を行った。その結果、酢酸アンモニウムを用いた場合も、硫酸アンモニウムを用いた場合と同様の増幅産物が観察された。
【実施例】
【0216】
実施例9:反応液のプレインキュベーションによる増幅効率化
増幅反応前にプレインキュベーションを行う場合の効果を検討した。
【実施例】
【0217】
鋳型DNAとして実施例1に記載の200 kb環状DNAを用いた。表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液を氷上で調製した。0℃、16℃、または30℃で、それぞれ0、5、15または30分間プレインキュベーションを行った。その後、反応液に鋳型DNAを終濃度が0.05 pMとなるよう添加して、30℃のインキュベータで3時間保温した。反応後、反応産物を実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0218】
結果を図31に示す。16℃または30℃でプレインキュベーションを行った場合、目的産物であるスーパーコイルの産生が増加したことが確認された。増幅反応前のプレインキュベーションは、長鎖環状DNAの低濃度からの増幅の場合でも、目的の増幅産物であるスーパーコイルの産生が多くなるという点で有効である。
【実施例】
【0219】
実施例10:RecGおよびRecJの追加
増幅反応液にRecG型ヘリカーゼおよび一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼをさらに添加して増幅反応を行う場合の効果を検討した。
鋳型DNAとして実施例1に記載の200 kb環状DNAを用いた。
RecG型ヘリカーゼとして、RecGを用いた。RecGは実施例6と同様に調整したものを用いた。
一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼとしてRecJを用いた。RecJはNEB社より入手した。
【実施例】
【0220】
表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液に、200 kb環状DNAを0.5 pM(67pg/μl)、RecGを0nMまたは100nM、RecJを0U/μlまたは0.5U/μlとなるように加えた増幅反応液(10μl)を30℃で3時間または25時間保温することにより増幅反応を行った。反応後、反応産物を実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0221】
結果を図32に示す。RecGおよびRecJの添加により、低分子の副次的な増幅産物の精製が低減され、目的のスーパーコイル構造の環状DNA増幅産物の生成量の向上が観察された。増幅反応におけるRecG型ヘリカーゼおよび一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼの添加は、特に、長鎖環状DNAを低濃度から増幅する場合に低分子の副生成物が増幅されるという問題を解消する手段として有効である。
【実施例】
【0222】
実施例11:RecBCDおよびexo Iの追加
増幅反応液に直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼをさらに添加して増幅反応を行う場合の効果を検討した。
鋳型DNAとして実施例1に記載の200 kb環状DNAを用いた。
直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼとしてRecBCDを用いた。RecBCDはNEB社より入手した。
一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼとしてexo Iを用いた。exo Iは、NEB社より入手した。
【実施例】
【0223】
表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液に、200 kb環状DNAを0.5 pM(67pg/μl)、RecBCDを0、1.5、5.0、15.0、または50.0mU/μl、exo Iを200mU/μlとなるように加えた増幅反応液(10μl)を30℃で20時間保温することにより増幅反応を行った。反応後、反応産物を実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0224】
結果を図33に示す。RecBCDおよびexo Iの添加により、DNAの切断等による副産物である直鎖状DNAの生成が低減され、目的のスーパーコイル構造の環状DNA増幅産物の生成量の向上が観察された。増幅反応における直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび一本鎖特異的エキソヌクレアーゼの添加は、特に、長鎖環状DNAを低濃度から増幅する場合に直鎖状DNAの副生成物が増幅されるという問題を解消する手段として有効である。
【実施例】
【0225】
実施例12:反応後処理-希釈再保温による最終産物増加と再保温時のRecBCDおよびexoIによる直鎖状DNAの除去
増幅反応後に希釈再保温処理を行うことにより、副生成物の除去が可能か否かを検討した。さらに、増幅反応後に直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖特異的エキソヌクレアーゼで処理することにより、副生成物の除去が可能か否かを検討した。
鋳型DNAとして実施例1に記載の200 kb環状DNAを用いた。
直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼとしてRecBCD、一本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼとしてexo Iを用いた。RecBCDおよびexo Iは実施例10と同様に入手した。
【実施例】
【0226】
表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液に、200 kb環状DNAを0.5 pM(67pg/μl)となるように加えた増幅反応液(10μl)を30℃で23時間保温することにより増幅反応を行った。
【実施例】
【0227】
増幅反応後の反応液を、表6からクレアチンキナーゼとウシ血清アルブミンを除いた組成の反応バッファーで1/5に希釈し、(i)そのまま30℃で1時間再保温、(ii)RecBCDを200mU/μl添加して30℃で1時間再保温、または(iii)RecBCDを200mU/μlおよびexo Iを200mU/μl添加して30℃で1時間再保温した。反応産物を、希釈再保温前の産物とともに、実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0228】
結果を図34に示す。増幅反応後の反応液を希釈再保温することのみによっても目的のスーパーコイル構造の環状DNAが検出できた。さらに、直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび/または一本鎖特異的エキソヌクレアーゼ存在下において、副産物である直鎖状DNAを除去することができた。
【実施例】
【0229】
希釈再保温処理は、産物中の増幅中間体の複製伸長や分離反応を促し、最終産物であるスーパーコイルDNAの産生量を高める手段として有効である。さらに、再保温の際に直鎖状DNA特異的エキソヌクレアーゼおよび一本鎖特異的エキソヌクレアーゼにより処理を付することは、特に、長鎖環状DNAを低濃度から増幅する場合に副生成物として生じる直鎖状DNAを除去できる手段として有効である。
【実施例】
【0230】
実施例13:反応後処理-ギャップリペア(GR)酵素による一本鎖ギャップの修復
増幅反応後に、ギャップリペア(GR)酵素で処理することにより、目的のスーパーコイル構造の環状DNAの検出が可能か否かを検討した。
【実施例】
【0231】
表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液に、15 kb環状DNAを0.5 pM(5pg/μl)となるように加えた増幅反応液(10μl)を30℃で20時間保温することにより増幅反応を行った。鋳型DNAとして用いた15 kbの環状DNAは、大腸菌ゲノム上の15 kb 領域とoriC断片(0.4 kb)とを連結環状化し、大腸菌を用いてクローン化後、精製したものを用いた。
【実施例】
【0232】
増幅反応後産物について、20 mlの10 mM Tris-HCl (pH 8.0)で2時間透析を行い、そのうち0.5μlを、GR酵素を含む反応バッファー5μlに添加し、30℃で20分間または60分間インキュベートした。GR酵素としては、Exo III、DNAポリメラーゼI、リガーゼ及びジャイレースの組合せを用い、それぞれ20mU/μl、50nM、50nM、50nMの濃度で添加した。反応バッファーは表6に示す組成のものを用いた。
【実施例】
【0233】
GR酵素による処理のポジティブコントロールとして、ニックが入っているDNAであるPhiX174 RFII(NEB社)を用いてギャップリペア反応を行った。ギャップリペアが適切になされると、ニックが修復され、スーパーコイル構造の環状DNAが検出できる。
反応産物を実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0234】
結果を図35に示す。本実験では、15 kbの環状DNAに至適な増幅時間(3時間程度)を上回る長時間反応のため、スーパーコイル産物はほとんど観察できなくなっている。この産物をGR酵素で処理することにより、スーパーコイル構造の環状DNAが検出できた。このことは、増幅反応後の副産物から、ギャップリペアにより目的のスーパーコイル構造の環状DNAを得ることができることを示している。
【実施例】
【0235】
実施例14:長鎖環状DNAの安定化因子およびそれを用いた増幅反応効率化
(1)長鎖DNAの安定化因子の検討
長鎖環状DNAを表6からクレアチンキナーゼとウシ血清アルブミンを除いた組成の反応バッファーにて、37℃でインキュベートすると、DNA損傷が誘導され、スーパーコイル構造の環状DNAが減少する様子が観察された。長鎖環状DNAの安定化に寄与する試薬について検討した。
【実施例】
【0236】
検討の結果、グルコース、スクロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ウシ血清アルブミン(BSA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、バソクプロインジスルホン酸二ナトリウム(BDA)、ペニシラミン、タイロン(Tiron, 1,2-ジヒドロキシベンゼン-3,5-スルホネート)、ジエチレレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、Dpsタンパク質、(大腸菌由来)、メタロチオネインタンパク質(ヒト由来)が反応バッファーでの保温時におけるDNAの安定化に効果を示すことが明らかとなった。
【実施例】
【0237】
(2)DNA安定化因子による環状DNA増幅反応効率化
表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液に、200 kb環状DNAを0.5 pM(67pg/μl)、DTPAもしくはTironを0.05、0.1または0.3mM、BDAを0.1、0.3または1mM、Dpsを0.3、1または3μMとなるように加えた増幅反応液(10μl)を30℃で20時間保温することにより増幅反応を行った。増幅後の反応液を、実施例11と同様に、30℃で1時間、希釈再保温した後、反応産物を実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0238】
結果を図36に示す。(1)で見出したDNA安定化因子のうち、DTPA、Tiron、BDA、Dpsタンパク質およびBSAを添加した増幅反応物においては、スーパーコイル構造の環状DNAの産生量が向上しており、環状DNA増幅反応を効率化する作用を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0239】
実施例15:エマルジョンを用いた長鎖環状DNAの増幅反応
油中水滴型エマルジョン内での環状DNAの増幅反応を検討した。
鋳型DNAとして実施例1に記載の200 kb環状DNAを用いた。
【実施例】
【0240】
表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液に、200 kb環状DNAを0.5 pM(67pg/μl)となるように加えた増幅反応液(5μl)を調製した。この増幅反応液に、界面活性剤(2% ABIL EM90および0.05% Triton-X100)を含むミネラルオイル100μlを添加し、ボルテックスに60秒かけることにより混合した。この混合物を30℃で3時間または18時間時間保温することにより増幅反応を行った(エマルジョン)。また、比較のために、上記の増幅反応液をそのまま30℃で3時間または18時間保温することにより増幅反応を行った(バルク)。反応産物を実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0241】
結果を図37に示す。バルクの系では、低分子の副産物の生成が見られるとともに、反応時間が長くなると目的のスーパーコイル構造のDNAが観察されなくなった。エマルジョンの系では、低分子の副産物の生成が抑制されるとともに、反応時間に応じて目的のスーパーコイル構造のDNAの産生が向上した。
【実施例】
【0242】
実施例16:温度サイクルによる増幅効率化
環状DNAの増幅反応においては、低分子であるほど複製が早く完了するので、副生成物として低分子の環状DNAが生じてしまうと、副生成物の方が早く増幅してしまう。長鎖DNAの増幅にあたっては、この現象により副生成物の増幅が優位になり、目的産物である長鎖DNAの増幅が見られなくなることが問題であった。長鎖DNAを効率よく増幅するためには、低分子DNAの過剰増幅を抑制する必要がある。
【実施例】
【0243】
ここで、発明者らはoriCを含む環状DNAの複製開始には30℃以上の温度が至適である一方、伸張・分離反応についてはより低温でも進行する点に着目した。環状DNAの増幅反応において温度サイクルをつけることで、複製開始のサイクルを揃え、低分子DNAの過剰増幅を抑制することを試みた。
【実施例】
【0244】
表6に示す組成の反応バッファーおよび表1に示す組成の酵素群を含む反応液を実施例8に従い30℃、30分間プレインキューベートした後、200 kb環状DNA(実施例1)を0.5 pM(67pg/μl)となるように加えた増幅反応液(10μl)を調製した。この増幅反応液について、37℃、5分間→16℃または24℃、30分間の温度サイクルを30サイクル実施した(2-Stepサイクル)。また、比較のための試料として、上記の増幅反応液を30℃、21時間保温した。反応産物を実施例1と同様にアガロースゲル電気泳動に供してDNAを検出した。
【実施例】
【0245】
結果を図38に示す。2-Stepサイクルで反応させた場合、低分子の副生成物の産生が抑制されるとともに、目的のスーパーコイル構造のDNAの産生量が増大した。
【産業上の利用可能性】
【0246】
本発明により、大腸菌細胞やプラスミドベクターを用いることなく、環状DNA、特に長鎖環状DNAを簡便かつ指数的に増幅することのできる方法を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
18
【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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