TOP > 国内特許検索 > 形質転換植物及びその作出方法 > 明細書

明細書 :形質転換植物及びその作出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-048428 (P2020-048428A)
公開日 令和2年4月2日(2020.4.2)
発明の名称または考案の名称 形質転換植物及びその作出方法
国際特許分類 A01H   1/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/29        (2006.01)
C12N  15/82        (2006.01)
FI A01H 1/00 ZNAA
C12N 15/09
C12N 15/29
C12N 15/82 100
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2018-178097 (P2018-178097)
出願日 平成30年9月21日(2018.9.21)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 栄
【氏名】室井 達哉
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2B030
Fターム 2B030AA02
2B030AD15
2B030AD20
2B030CB02
要約 【課題】遺伝子組み換え(GM)作物、またはGM作物の花粉や種子の拡散を確実に防止する、新規な技術の提供が必要とされている。
【解決手段】第1のポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドの発現のための植物由来プロモーターを含む第1のベクターと、該プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを植物に導入することを特徴とする、植物の形質転換方法を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
第1のポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドの発現のための植物由来プロモーターを含む第1のベクターと、該プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを植物に導入することを特徴とする、植物の形質転換方法。
【請求項2】
第1のベクター及び第2のベクターを同時に、又は別個に導入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1のポリヌクレオチドがカロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
第2のポリヌクレオチドが上記プロモーターの塩基配列と相補的な配列を含み、該プロモーターのメチル化を誘導するものである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを発現する第1のベクターと、該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターのメチル化を誘導する第2のベクターとを植物に導入することを含む、白色化が制御された形質転換植物の作出方法。
【請求項6】
カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制することにより植物の白色化を誘導することを含む、形質転換植物における白色化の制御方法であって、
カロテノイド生合成遺伝子の発現の抑制が、植物由来プロモーターの制御下で発現し、該カロテノイド生合成遺伝子の塩基配列の一部に相補的な配列を有する第1のsiRNAによる抑制であり、
該プロモーターが、該プロモーターの塩基配列の一部に相補的な配列を有する第2のsiRNAの存在下でメチル化され、該第2のsiRNAの不存在下で脱メチル化される、
上記方法。
【請求項7】
カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制する第1のポリヌクレオチドと、該第1のポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターとを含む第1のベクターと、該プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを植物に導入して白色化が制御された形質転換植物を作出し、
該形質転換植物を栽培して、該第1のポリヌクレオチドの発現が制御され、かつ該第2のポリヌクレオチドを含まない後代植物を選択する
ことを含み、該後代植物が、自殖若しくは交配後に、又は栄養繁殖による栽培により、該プロモーターの脱メチル化により白色化することを特徴とする、形質転換植物の拡散を防止する方法。
【請求項8】
緑色組織の白色化が制御された形質転換植物であって、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドが、該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターと共に導入された、上記植物。
【請求項9】
上記植物由来プロモーターが緑色組織特異的に発現を誘導するプロモーターである、請求項8記載の植物。
【請求項10】
上記植物由来プロモーターがメチル化されている、請求項8又は9記載の植物。
【請求項11】
更に上記植物由来プロモーターの配列に相補的な配列を有するRNAをコードするポリヌクレオチドが導入された、請求項8~10のいずれか1項記載の植物。
【請求項12】
更に目的のタンパク質をコードする遺伝子が導入された、請求項8~11のいずれか1項記載の植物。
【請求項13】
種子繁殖性又は栄養繁殖性である、請求項8~12のいずれか1項記載の植物。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法に使用するための、又は請求項8~13のいずれか1項に記載の植物を作出するための、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターとを含むベクター。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法に使用するための、又は請求項11~13のいずれか1項に記載の植物を作出するための、上記プロモーターのメチル化を誘導するポリヌクレオチドを含むベクター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色植物の白色化が制御された形質転換植物、及びその作出方法に関する。より具体的には、本発明は、DNAメチル化制御機構を用いた自発的な枯死の誘導による形質転換植物の拡散防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子組み換え(GM; Genetically Modified)により新たな形質を作物に導入する技術は、従来の交配育種では利用できなかった、異なる生物種の遺伝子を利用することができる。現在、この手法を用いて作出された複数のGM作物が商業的に栽培され、その面積を拡大させている。GM作物は、例えば自然界にはない特質を有する植物として、あるいは抗体等の医薬品の合成のための植物として利用されている。
【0003】
一方、GM作物栽培の問題点として、「GM作物の意図しない拡散と生態系への影響」が以前より指摘されている。
【0004】
GM作物自体の野生化や、GM作物に導入された外来遺伝子の自然界への拡散等を防ぐ方法としては、GM作物の花粉・種子形成の抑制や、非形質転換体(既存の栽培品種)および近縁の野生植物との交雑防止が知られている。具体的には、不稔種子形質、雄性・雌性稔性抑制形質、葉緑体形質転換、周縁キメラ形質などを利用し、植物体や遺伝子の流出等を防ぐ方法である。
【0005】
不稔種子形質は、GM作物の種子形成を直接阻害することにより、種子の拡散を防止する技術であり、ターミネーター技術とも呼ばれる。雄性・雌性稔性抑制形質は、花粉形成の阻害、花粉や雌ずいの生殖機能の抑制等により、遺伝子の拡散を防止する技術である。例えば、雄性生殖器官特異的に発現するプロモーターを用い、有害なタンパク質を組織特異的に作らせ、花粉形成を阻害する方法が報告されている(特許文献1及び2)。また、RNA干渉(RNAi)やゲノム編集技術を用い、減数分裂期や花粉形成期に機能する重要な遺伝子の発現を抑制させる等の方法も報告されている(特許文献3)。
【0006】
葉緑体形質転換は、葉緑体が母性遺伝する性質を利用し、花粉細胞に含まれない葉緑体ゲノムに外来遺伝子を導入することにより、花粉による遺伝子拡散を防ぐ方法である(特許文献4及び5)。周縁キメラ形質は、花粉細胞や胚珠細胞層がL2細胞層に由来することを利用し、外来遺伝子が表層のL1細胞層にのみ含まれるGM作物を作出する技術である(特許文献6)。これらの方法では、GM作物の外来遺伝子は花粉や種子には含まれないことになる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-109766
【特許文献2】特開2007-289042
【特許文献3】特開2010-187597
【特許文献4】特開2006-075078
【特許文献5】特開2009-225721
【特許文献6】特開2010-200754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来知られている上記の拡散防止技術には問題点や課題も含まれている。
【0009】
例えば、不稔種子形質および雄性・雌性稔性抑制は、花器官のみを必要とする観賞用作物等では適用できるが、受粉後の果実や種子を商業生産する作物(トウモロコシ、ナタネ、ワタなど)には適用が難しい。受粉を必要としない単為結果品種の利用も考えられるが、適用可能な作物種や品種はごく一部に限定される。
【0010】
葉緑体形質転換は、主にパーティクルガン法により葉緑体ゲノムに外来遺伝子を導入するが、再現性や作出効率に問題があり、安定した形質転換方法が確立されているのはタバコのみである。また周縁キメラ形質は、L1細胞層にのみ外来遺伝子を導入する方法が確立されておらず、作出効率が非常に低い。また、キメラ個体を選抜・作出するためには、外来遺伝子を導入した細胞から植物体へ再分化させる過程で、自然に誘導される変異等に頼るしかなく、積極的な作出は困難である。
【0011】
さらに、対象のGM作物が栄養繁殖性作物の場合や、故意または偶然に栄養繁殖(挿し木等によるクローン増殖)した場合、これらの従来技術だけでは自然界への拡散を防止するのは困難である。
【0012】
したがって現状では、花粉、果実、種子形成等を阻害せず、目的とする植物体の作出効率が高く、種子繁殖性と栄養繁殖性の作物種に適用可能なGM作物拡散防止技術は、ほぼ存在しないと言える。
【0013】
今後、これまでGM作物として栽培されていない植物種が商業栽培された場合、想定外の新たなリスクが生じる可能性もある。それらのリスクを最小限にするためには、GM作物自体またはGM作物の花粉や種子の拡散を確実に防止する、これまでにない技術が必要であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者等は、一定の商業栽培期間を経過した後に、自発的に枯死するシステムをGM作物に導入して拡散を防止する、新たな技術の開発を試みた。本システムは、新品種を作出する際にあらかじめ枯死するプログラムを同時に導入する前例のない技術である。本発明は、特定の遺伝子の発現を抑制して自発的な枯死を誘導する機構と、DNAメチル化/脱メチル化によって枯死誘導を制御する機構とを組み合わせて植物体に導入することを特徴とする。
【0015】
より具体的には、本発明は以下を提供するものである。
1. 第1のポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドの発現のための植物由来プロモーターを含む第1のベクターと、該プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを植物に導入することを特徴とする、植物の形質転換方法。
2. 第1のベクター及び第2のベクターを同時に、又は別個に導入する、上記1記載の方法。
3. 第1のポリヌクレオチドがカロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドである、上記1又は2記載の方法。
4. 第2のポリヌクレオチドが上記プロモーターの塩基配列と相補的な配列を含み、該プロモーターのメチル化を誘導するものである、上記1~3のいずれか記載の方法。
5. カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを発現する第1のベクターと、該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターのメチル化を誘導する第2のベクターとを植物に導入することを含む、白色化が制御された形質転換植物の作出方法。
6. カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制することにより植物の白色化を誘導することを含む、形質転換植物における白色化の制御方法であって、
カロテノイド生合成遺伝子の発現の抑制が、植物由来プロモーターの制御下で発現し、該カロテノイド生合成遺伝子の塩基配列の一部に相補的な配列を有する第1のsiRNAによる抑制であり、
該プロモーターが、該プロモーターの塩基配列の一部に相補的な配列を有する第2のsiRNAの存在下でメチル化され、該第2のsiRNAの不存在下で脱メチル化される、
上記方法。
7. カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制する第1のポリヌクレオチドと、該第1のポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターとを含む第1のベクターと、該プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを植物に導入して白色化が制御された形質転換植物を作出し、
該形質転換植物を栽培して、該第1のポリヌクレオチドの発現が制御され、かつ該第2のポリヌクレオチドを含まない後代植物を選択する
ことを含み、該後代植物が、自殖若しくは交配後に、又は栄養繁殖による栽培により、該プロモーターの脱メチル化により白色化することを特徴とする、形質転換植物の拡散を防止する方法。
8. 緑色組織の白色化が制御された形質転換植物であって、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドが、該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターと共に導入された、上記植物。
9. 上記植物由来プロモーターが緑色組織特異的に発現を誘導するプロモーターである、上記8記載の植物。
10. 上記植物由来プロモーターがメチル化されている、上記8又は9記載の植物。
11. 更に上記植物由来プロモーターの配列に相補的な配列を有するRNAをコードするポリヌクレオチドが導入された、上記8~10のいずれか記載の植物。
12. 更に目的のタンパク質をコードする遺伝子が導入された、上記8~11のいずれか記載の植物。
13. 種子繁殖性又は栄養繁殖性である、上記8~12のいずれか記載の植物。
14. 上記1~7のいずれかに記載の方法に使用するための、又は上記8~13のいずれかに記載の植物を作出するための、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターとを含むベクター。
15. 上記1~7のいずれかに記載の方法に使用するための、又は上記11~13のいずれかに記載の植物を作出するための、上記プロモーターのメチル化を誘導するポリヌクレオチドを含むベクター。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法により、形質転換植物の望ましくない形質の拡散防止を図ることができ、従来提案された方法と比較して、以下のような有利な特徴を有する。
【0017】
1)花粉、果実、種子形成等を阻害しない。
2)特別な遺伝子導入技術を必要とせず、アグロバクテリウム法などの従来の遺伝子組換え技術が使用できる。
3)種子繁殖性と栄養繁殖性のいずれの作物種にも適用可能である。
【0018】
さらに、本発明の技術は、自動的な特定遺伝子の発現制御を用いるため、薬剤誘導性プロモーターとは異なり、植物体への薬剤処理による誘起は不要である。白色化し枯死するシステムは、全ての光合成植物が持っているカロテノイド生合成経路を阻害するものであるため、有用作物を含めたほとんどの植物に適用できる。また、内生のカロテノイド生合成の阻害なので、他の生物に対して毒性のある物質の使用や、植物体内部での有害物質の生成は生じない。なお、脱メチル化が葉全体で誘導されずに枯死しなかった場合でも、葉の一部が白色化し目立つため、拡散したGM個体や雑種を見つけることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】DNAメチル化制御機構を用いたGM作物の拡散防止技術の概略を示す。
【図2A】内生PDS遺伝子の発現をRNAiによって抑制することによって、植物の白色化による枯死が誘導される機構を模式的に示す。
【図2B】内生PDS遺伝子の発現を抑制するRNAiの発現のためのプロモーターにメチル化を誘導する機構を模式的に示す。RNAiの抑制により、植物は正常に生育する。
【図2C】メチル化誘導機構が遺伝子分離によって除去された後にプロモーターのメチル化が継続することを模式的に示す。RNAiの抑制が持続して植物は正常に生育する。
【図2D】プロモーターの脱メチル化によってRNAiによる内生PDS遺伝子の発現抑制が生じ、植物の自発的な枯死が誘導されることを模式的に示す。
【図3】白色化が制御された植物体の写真を示す。A:致死性形質を導入した白色個体;B:2段階導入により白色個体の葉片から形成された緑色の不定芽及びその拡大図;C:メチル化が維持されたまま生育した緑色の葉を持つ個体(致死性形質の発現抑制の継続);D:後代における脱メチル化により白色化した個体(致死性形質の発現);E:部分的な脱メチル化により白色組織が混在している個体。
【図4】ターゲット配列のメチル化の有無をメチル化感受性制限酵素MaeII処理によって確認した結果を示す。第1及び第2のベクターが導入された個体(TS-1及びTS-2系統)ではメチル化感受性制限酵素MaeIIによる処理の有無にかかわらずターゲット配列が切断されず、ターゲット配列がメチル化されていることが示されたのに対し、第1ベクターのみを導入した個体(T-1系統)ではMaeII酵素処理によりターゲット配列が切断され、メチル化されていないことが示された。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、植物における枯死の誘導と、枯死誘導の制御とを組み合わせることを特徴とする。以下、本発明の概略を、図1を参照しながら説明する。

【0021】
植物における枯死を誘導する手法として、本発明では、外来性RNAi(PTGS;転写後抑制型ジーンサイレンシング)を用いた内生遺伝子の発現抑制を利用する。植物におけるRNAiによる内生遺伝子の発現抑制は当分野において知られており、当業者であれば本明細書の記載に基づいて実施することができる。

【0022】
本発明において選択される内生遺伝子は、カロテノイド生合成遺伝子に属する遺伝子である。カロテノイドは、光合成時に発生する活性酸素種や熱を除去する役割があり、カロテノイドを生合成できない場合、活性酸素によるストレスでクロロフィル生合成が阻害されて植物が白色化することが知られている。従って、植物の緑色組織においてカロテノイド生合成遺伝子の発現が抑制されることで、葉等の緑色組織が白色化し、やがて枯死することとなる。

【0023】
光合成器官である緑色組織のみでこれらの発現制御を行うことにより、収穫される果実や種子への影響を最小限に抑えることができる。

【0024】
植物の枯死誘導を制御する手法として、本発明では、DNAのメチル化・脱メチル化による制御機構を利用する。具体的には、上記の白色化(致死性形質)を誘導するプロモーター領域をメチル化のターゲット(外来性RNAi構造を用いたTGS;転写抑制型ジーンサイレンシング)とすることで、致死性形質の発現を抑制することができる(図1中央)。この発現抑制は一時的なものとすることができ、その後、メチル化された領域の脱メチル化現象を利用して、「致死性形質の発現抑制」を「解除」させ自発的な枯死を誘導することができる(図1右左)。

【0025】
本発明の方法により、致死性形質の発現時期を制御することで、GM作物の拡散を防除することができる。致死性形質の誘導時期は、果実や種子の収穫直後(栽培期間の終了後)、種子繁殖の次世代から数世代後、栄養繁殖の1年から数年後とすることができる(図1右)。また、この致死性形質を導入したGM作物の花粉は、優性形質として通常の遺伝法則に従うため、花粉の飛散によって周辺の非GM作物との雑種種子が形成された場合でも、その種子は発芽後に白色化し、自発的に枯死する(図1左)。従って、GM作物のDNA分子は長くても数世代先までしか遺伝せず、GM作物当代だけでなく雑種後代への拡散も、確実に防止することができる。

【0026】
本発明は、以下により詳細に記載する方法及び植物を提供するものである。

【0027】
植物の形質転換方法/形質転換植物の作出方法
第1の態様として、本発明は、第1のポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターを含む第1のベクターと、該プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを植物に導入することを特徴とする、植物の形質転換方法を提供する。

【0028】
本発明の方法の対象となる植物は、緑色組織を有する植物、言い換えればクロロフィルを有する植物であればいずれでも良いが、本発明の目的を考慮すれば、草本類である。植物は、一年草及び多年草のいずれであっても良く、また、単子葉植物、双子葉植物のいずれであっても良い。植物は、観賞用の花卉植物、食用の野菜・果物等の農作物等の植物であっても良く、あるいは遺伝子組み換えによる物質生産に利用されるタバコ、ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、トマト等の植物であっても良い。

【0029】
例えば、本発明の対象となる植物は、アサガオ、ヒマワリ、コスモス、スイートピー、マリーゴールド、パンジー、ビオラ、デイジー、キンギョソウ、ガーベラ、キキョウ、ミント、ローズマリー、ラベンダー、クレマチス、カンナ、シクラメン、キク、バラ、カーネーション、ペチュニア、カスミソウ等であり得る。また、本発明の対象となる植物は、例えばイネ、ムギ、トウモロコシ、ネギ、ユリ、ラン、ダイズ、ナタネ、キャベツ、レタス、タバコ、トマト、イチゴ、ナス、ニンジン、バレイショ、ワタ等であり得る。

【0030】
本発明の対象となる植物にはまた、特に限定するものではないが、種子繁殖性植物及び栄養繁殖性植物が含まれる。種子繁殖性植物とは、種子によって繁殖し得る植物をいい、栄養繁殖性植物とは、種子による繁殖が可能であるか否かによらず、地下茎、塊茎、塊根、鱗茎、むかご等の親植物の栄養体の一部が次世代の植物となり得るものをいう。植物は、種子繁殖性植物であっても栄養繁殖を行うことがあることが知られている。栄養繁殖性植物としては、限定するものではないが、例えばタマネギ、ニンニク、ユリ、ジャガイモ、サトイモ、ヤマイモ、サツマイモ、イチゴ、ハス、バラ、カーネーション、キク、チューリップ、シクラメン等が挙げられる。

【0031】
第1のベクター
本発明の方法のために植物に導入される第1のベクターは、第1のポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターを含む。第1のポリヌクレオチドとしては、特に限定するものではないが、例えば植物の緑色組織の白色化の制御のために使用し得るポリヌクレオチドであり得る。そのようなポリヌクレオチドとして、植物に内在するカロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドが挙げられる。

【0032】
植物の緑色組織は、植物において光合成が行われている組織であり、主に葉及び茎が該当する。緑色組織にはクロロフィルが存在しており、クロロフィルの生合成が阻害された場合、植物の緑色組織が作られず(白色化)、光合成ができないために枯死することになる。

【0033】
クロロフィルは、L-グルタミン酸から出発する多段階の生合成経路によって生合成されることが知られている(例えば蛋白質 核酸 酵素 Vol.41、No.2、1996年、pp.136-145)。従って、この経路に関与するクロロフィル生合成遺伝子の阻害によって植物の白色化及び枯死をもたらすためには、複数の遺伝子を標的とする必要があると想定される。

【0034】
一方、光合成を行う植物では、ルテイン及びβ-カロテン等の種々のカロテノイドが存在するが、その全てが非メバロン酸経路で生じたイソペンテニル二リン酸とジメチルアリル二リン酸等の縮合により合成されるフィトエンから、様々な酵素が関与する同じ生合成経路を介して葉緑体内で生合成されることが知られている。

【0035】
上記の通り、カロテノイドを生合成できない場合、活性酸素によるストレスでクロロフィル生合成が阻害されるため、本発明において、カロテノイドの生合成を抑制することによって植物の白色化及び枯死を誘導することが好ましい。

【0036】
カロテノイドの生合成経路に関与する遺伝子群の遺伝子を本明細書において「カロテノイド生合成遺伝子」という。カロテノイド生合成遺伝子としては、例えばリコペン合成までの段階で作用するフィトエン合成酵素(PSY)、フィトエン不飽和化酵素(PDS)、ζ-カロテン異性化酵素(Z-ISO)、ζ-カロテン不飽和化酵素(ZDS)、及びカロテン異性化酵素(CRTISO)、リコペンから各種カロテノイドが合成される段階で作用するリコペンβ-シクラーゼ(LCYb)等の酵素をコードする遺伝子が挙げられる。

【0037】
カロテノイド生合成経路はリコペン以降は2つの経路となっており、また、フィトエンを基質としてフィトエン不飽和化酵素の作用により生成する9,15,9'-トリ-シス-ζ-カロテン以降は吸収スペクトルが可視光の波長域にあるため、その存在によって植物体に着色が見られる。カロテノイド生合成を効果的に阻害するためには、リコペン合成よりも上流のステップを阻害することが好ましい。そのようなカロテノイド生合成遺伝子の中で、フィトエン不飽和化酵素等を好適に使用することができる。フィトエン不飽和化酵素遺伝子の配列は、例えばNCBIからGene ID: 107761716(phytoene synthase 2)として入手することができる。

【0038】
カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドとしては、これらの遺伝子の転写を抑制するもの、転写後の翻訳を抑制するものが好適に使用可能であり、特に限定するものではない。例えば、ターゲットとする遺伝子から転写されたmRNAの塩基配列と相補的な配列を含み、mRNAの分解を誘導するsiRNA(small interfering RNA)を挙げることができる。尚、第1のポリヌクレオチドから発現するsiRNAを、下記で説明する第2のsiRNAとの混同を避けるために、本明細書において第1のsiRNAと記載する場合がある。

【0039】
siRNAは、21~23塩基対からなる低分子二本鎖RNAであるが、細胞へのsiRNAの導入は、合成したsiRNAの導入の他に、siRNAを発現するベクターを利用する方法が知られている。この場合、ターゲットとする塩基配列と相補的な配列と、この配列に対して相補的な逆向きの配列とを含み、発現後にヘアピンを形成するようなRNAi構造をコードするDNA配列をベクターに組み込むことができる。細胞中に導入されたベクターはゲノム中に組み込まれるため、長期にわたるsiRNAの発現を実現することができる。第1のベクターに組み込むべきRNAi構造は、ターゲットとなる塩基配列情報に基づいて、その発現を抑制し得るものを適宜設計し、構築することができる。

【0040】
上記プロモーターによる発現誘導によって上記第1のポリヌクレオチドが発現することで、カロテノイド生合成遺伝子の転写によって生じるmRNAが分解され、結果としてカロテノイド生合成遺伝子の発現が抑制される。カロテノイド生合成遺伝子の発現が抑制された結果、植物は白色化を生じ、光合成ができなくなるために枯死する(図2A)。

【0041】
上記第1のポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターとしては、特に限定するものではないが、植物由来プロモーターが好ましく、例えば緑色組織特異的に発現を誘導し得るプロモーターを使用することができる。そのようなプロモーターは当分野において知られており、例えばアサガオ由来クロロフィル生合成関連遺伝子プロモーター(PnZIPp)、シロイヌナズナ由来クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーター(AtCAB3p)、シロイヌナズナ由来クロロフィル分解酵素遺伝子プロモーター(AtCLH1p)、シロイヌナズナ由来光化学系II酸素発生複合体タンパク質遺伝子プロモーター(AtOEC33p)、シロイヌナズナ由来プラストシアニン遺伝子プロモーター(AtPC2p)等を好適に使用することができる。

【0042】
タバコにおいて、フィトエン不飽和化酵素の発現を抑制するRNAi構造をカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター等の誘導によって全身的に過剰発現させて白色化させ得ることは、すでに広く知られている(例えばTao Wang et al., New Phytologist (2005) 167: 751-760)。しかしながら、緑色組織特異的プロモーター等を用いて植物を白色化して枯死を誘導した例は知られていない。

【0043】
第2のベクター
本発明の方法は、上記の第1のベクターと共に、緑色組織特異的に発現を誘導し得る上記プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターを植物に導入することを特徴とする。第1のベクターと第2のベクターとは、それぞれ異なるゲノム領域に組み込まれると想定される(図2B)。

【0044】
第2のポリヌクレオチドとしては、限定するものではないが、例えば上記プロモーターの塩基配列と相補的な配列を含み、それによってプロモーターのメチル化を誘導し得るものが挙げられる。塩基のメチル化による遺伝子発現の制御はエピゲノム編集とも呼ばれており、植物において、外来又は内在遺伝子のプロモーター領域の塩基をメチル化することによって遺伝子発現を制御できることが報告されている(D. Miki et al., Plant and Cell Physiology, Vol. 45, Issue 4, 15 April 2004, 490-495; 及びS. Bai et al., Journal of Experimental Botany, 1-10, 2011)。

【0045】
本発明の方法において、例えば上記第1のポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターがアサガオ由来クロロフィル生合成関連遺伝子プロモーター(PnZIPp)である場合、第2のポリヌクレオチドはPnZIPpの部分配列に相補的な配列を含むsiRNAを発現するポリヌクレオチドであり得る。従って、第2のポリヌクレオチドは、限定するものではないが、PnZIPpの塩基配列の一部と相補的な配列と、この配列に対して相補的な逆向きの配列とを含み、発現後にヘアピンを形成するようなRNAi構造をコードするDNA配列であり得る。

【0046】
第2のポリヌクレオチドから発現するsiRNA(本明細書において第2のsiRNAと記載する場合がある)は、上記第1のポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターの塩基配列の一部に相補的な配列を有し、プロモーターのメチル化を誘導し得る。本発明者等は、第1のベクターにおいて第1のポリヌクレオチドの発現を誘導し得るプロモーターが、該プロモーターに対するRNAiによりメチル化され、結果として、第1及び第2のベクターが導入された植物では、第1のポリヌクレオチドの転写が抑制されることを確認した。このような植物では、致死性形質である白色化が抑制され、正常に生育することができる。

【0047】
本発明者等は更に、第1及び第2のベクターが導入された植物の後代で、交配による遺伝的な分離によって第1のベクターのみを含む植物では、第1のポリヌクレオチドが転写されることで、致死性形質(白色化)が生じて枯死することも確認した。そのような植物では、第1のポリヌクレオチドの発現を誘導するプロモーターの脱メチル化が生じていた。

【0048】
すなわち、上記第1のポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターは、第2のsiRNAの存在下でメチル化され、該第2のsiRNAの不存在下で脱メチル化され得る。

【0049】
メチル化は、ゲノム塩基配列にCGやCNG(Nはすべての塩基)がある場合に、C(シトシン)がメチル化される現象である。上記のプロモーターのメチル化は、例えばメチル化感受性制限酵素解析又はバイサルファイトシークエンス解析によって確認することができる。

【0050】
メチル化感受性制限酵素は、その切断のための認識部位がメチル化されていると切断しないため、切断の有無でメチル化の有無を容易に知ることができる。そのようなメチル化感受性制限酵素としては、当分野で使用されているものを適宜使用することができ、特に限定するものではないが、例えばMaeIIを好適に使用することができる。

【0051】
また、ゲノムDNAのバイサルファイト処理を行うことで、メチル化されていないシトシン(非メチル化シトシン)はU(ウラシル)へ変換され、メチル化されたシトシン(メチル化シトシン)は変換されない。したがって、バイサルファイト処理後の非メチル化DNAとメチル化DNAは異なる塩基配列を持つため、それぞれのサンプルから取得された塩基配列についてPCR増幅及びシーケンス解析を行うことで、メチル化シトシンの存在及び位置の情報を得ることができる。

【0052】
上記第2のポリヌクレオチドは、その発現を誘導し得るプロモーターと共に第2のベクターに含むことができる。第2のポリヌクレオチドの発現を誘導するために用いられるプロモーターとしては、特に限定するものではないが、好ましくは全身発現性のプロモーター、例えばポリユビキチン遺伝子プロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、シロイヌナズナ由来AtU6-26プロモーター、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)T-DNA由来ノパリン合成酵素遺伝子(NOS)プロモーター等を挙げることができる。例えば、ミヤコグサ由来ポリユビキチン遺伝子プロモーター(LjUbip)等を好適に使用することができる。第2のポリヌクレオチドの発現によって、第1のポリヌクレオチドの発現を誘導するプロモーターに対するRNAiが誘導される。

【0053】
ベクターの植物への導入
第1のベクター及び第2のベクターは同時に、又は別個に植物に導入することができる。

【0054】
植物へのベクターの導入は、当分野において通常行われている技術のいずれを用いても良く、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法等を好適に使用することができる。ベクターの導入のために用いる植物は、植物体、植物器官、植物組織片を使用しても良く、またカルスやプロトプラストを調製して使用しても良い。

【0055】
ベクターが導入された植物は、例えばベクター中に組み込まれた選択マーカー遺伝子の発現の有無を利用して選択することができる。選択マーカー遺伝子としては、特に限定するものではないが、例えば当分野において通常使用される抗生物質耐性遺伝子を好適に使用することができる。この場合、第1のベクターと第2のベクターとに異なる抗生物質耐性遺伝子を組み込み、それぞれのベクターの導入を識別できるようにすることが好ましい。好適に使用され得る抗生物質耐性遺伝子としては、限定するものではないが、例えばカナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。

【0056】
植物へのベクターの導入はまた、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等によって確認することができる。

【0057】
第1及び第2のベクターには、上記のポリヌクレオチド、プロモーター、選択マーカー遺伝子に加えて、エンハンサー、インシュレーター、ターミネーター、ポリA配列等を適宜組み込むことができる。

【0058】
上記した本発明の構成及び特徴は、以下に記載する本発明の更なる態様においても同様に関連するものであり、従って、更なる態様において異なる記載がない限り、第1の態様で記載した構成及び特徴を有するものと理解されたい。

【0059】
白色化が制御された形質転換植物の作出方法
第2の態様として、本発明は、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを発現する第1のベクターと、該ポリヌクレオチドの発現を制御するプロモーターのメチル化を誘導する第2のベクターとを植物に導入することを含む、白色化が制御された形質転換植物の作出方法に関する。

【0060】
上記の通り、本発明は、形質転換植物において組み込まれた形質の意図しない拡散を防止することを目的とするものであり、第1のベクターの導入によって、植物の白色化による枯死を誘導することができると共に、第2のベクターの導入によって、枯死誘導の制御を図ることができる。

【0061】
形質転換植物には、第1のベクター及び第2のベクターに加えて、目的のタンパク質をコードする遺伝子を導入することができる。目的のタンパク質をコードする遺伝子は、特に限定するものではないが、例えば植物が本来有さない形質、例えば花や葉等の植物部分の特定の色や形、高温や湿度・乾燥等の環境変化に対する耐性等をその植物に付与するための遺伝子であっても良く、あるいは抗体医薬等の医薬品の合成のための遺伝子であっても良い。目的のタンパク質をコードする遺伝子の導入方法は、当分野で通常行われている技術のいずれを用いても良く、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法等を好適に使用することができる。

【0062】
第1のベクター及び第2のベクターは同時に、又は別個に植物に導入することができる。また、目的のタンパク質をコードする遺伝子は、第1のベクター及び第2のベクターより先に導入されていても良く、また第1のベクター及び第2のベクターよりも後で導入されても良い。

【0063】
形質転換植物における白色化の制御方法
第3の態様として、本発明は、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制することにより植物の白色化を誘導することを含む、形質転換植物における白色化の制御方法であって、
カロテノイド生合成遺伝子の発現の抑制が、プロモーターの制御下で発現し、該カロテノイド生合成遺伝子の塩基配列の一部に相補的な配列を有する第1のsiRNAによる抑制であり、
該プロモーターが、該プロモーターの塩基配列の一部に相補的な配列を有する第2のsiRNAの存在下でメチル化され、該第2のsiRNAの不存在下で脱メチル化される、
上記方法を提供する。

【0064】
形質転換植物の拡散防止方法
第4の態様として、本発明は、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制する第1のポリヌクレオチドと、該第1のポリヌクレオチドの発現を制御するプロモーターとを含む第1のベクターと、該プロモーターのメチル化を誘導する第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを植物に導入して白色化が制御された形質転換植物を作出し、
該形質転換植物を栽培して、該第1のポリヌクレオチドの発現が制御され、かつ該第2のポリヌクレオチドを含まない後代植物を選択する
ことを含み、該後代植物が、自殖若しくは交配後に、又は栄養繁殖による栽培により、該プロモーターの脱メチル化により白色化することを特徴とする、形質転換植物の拡散を防止する方法を提供する。

【0065】
本態様において、形質転換植物の作出ステップについては、上記した通りである。

【0066】
白色化が制御された形質転換植物は、緑色組織を有しており、正常に生育するため、その栽培は、通常の植物の栽培方法を使用すれば良い。形質転換植物は、第1のベクター及び第2のベクターに加えて、目的のタンパク質をコードする遺伝子が導入されたものであり得るため、その栽培によって、目的のタンパク質が産生される。例えば、形質転換植物は、その植物が本来有さない形質を有し得る。あるいは、形質転換植物の栽培によって、抗体医薬等の医薬品の合成が可能となり得る。

【0067】
形質転換植物の目的の栽培が完了した後は、その形質の拡散を防止することが必要となる。従って、本態様においては、形質転換植物が必要以上に繁殖できないようにするために、第1のポリヌクレオチドの発現が制御され、かつ該第2のポリヌクレオチドを含まない後代植物を選択して栽培に使用することができる。上記の通り、第1のポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、第2のポリヌクレオチドを含む第2のベクターとは別個のベクターとして植物に導入するものであり、それぞれ異なるゲノム領域に組み込まれると想定される。従って、後代植物では、双方のベクターが組み込まれた植物、いずれか一方のベクターのみが組み込まれた植物、いずれのベクターも含まない植物が混在し得る。

【0068】
そのような後代植物の集団から、第1のポリヌクレオチドの発現が制御され、かつ該第2のポリヌクレオチドを含まない後代植物を選択するためには、植物が白色化していないこと、第1のポリヌクレオチドの発現を誘導するプロモーターがメチル化されていること、及び/又は第2のポリヌクレオチドが植物に含まれないことを指標とすることができる。

【0069】
植物の白色化の有無は、植物体の目視によって容易に判定することができ、プロモーターのメチル化は、上記のようにメチル化感受性制限酵素解析又はバイサルファイトシークエンス解析によって確認することができる。第2のポリヌクレオチドの有無は、例えばPCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等によって確認することができる。

【0070】
プロモーターのメチル化は、その後、脱メチル化が生じ、第1のポリヌクレオチドの発現抑制が解除される。その結果、植物に内在するカロテノイド生合成遺伝子の転写後の発現が抑制され、植物は白色化して枯死に到ることになる。

【0071】
植物
本発明はまた、緑色組織の白色化が制御された形質転換植物であって、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドが、該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターと共に導入された、上記植物を提供する。

【0072】
本発明の植物は、上記の本発明の方法によって作出することができる。すなわち、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチド、及び該ポリヌクレオチドの発現を制御する植物由来プロモーターは、上記の第1のベクターを使用して植物に導入することができる。

【0073】
上記植物由来プロモーターは、好ましくは緑色組織特異的に発現を誘導するプロモーターであり、より好ましくは、PnZIPプロモーターを使用することができる。

【0074】
第1のベクターが導入された植物は、内生のカロテノイド生合成遺伝子の遺伝子発現が、第1のポリヌクレオチドによるmRNA分解を介して抑制されている。従って、第1のベクターのみが導入された植物では、クロロフィルの生合成ができないため、白色化し、結果として枯死することになる(図2A)。

【0075】
一方、上記の第1のベクターにおけるプロモーターがメチル化されている場合、そのプロモーターによって発現を誘導されるポリヌクレオチドが発現せず、植物の内生カロテノイド生合成遺伝子は正常に発現するため、クロロフィルが生合成されて植物は正常な生育が可能な状態である。このプロモーターのメチル化は、上記のように、上記プロモーターの配列に相補的な配列を有するRNAをコードするポリヌクレオチド(サイレンサー)を第2のベクターとして植物に導入することで、達成することができる(図2B)。

【0076】
第1及び第2のベクターの双方が導入されても、ターゲットのメチル化による致死性形質の抑制が誘導されない場合、再分化途中の不定芽は白色化し得る。一方、両ベクターが導入された緑色の再分化個体は、ターゲットのメチル化により致死性形質が抑制されている可能性が高い(図3B)。それらの系統について、自殖または非形質転換体との交配を行い、遺伝的な分離を利用しサイレンサーを除去しターゲットのみ導入された、緑色で正常に生育する後代(T1世代:PnZIPpのメチル化は継続)を選抜することができる(図2C及び3C)。

【0077】
メチル化されたターゲットのみ保有し、緑色の葉を持つ個体は、確実に内生カロテノイド生合成(実施例におけるNtPDS遺伝子)が正常に機能している(致死性形質の発現抑制)と予想されるため、そのような個体を選抜する。必要に応じ、内生カロテノイド生合成遺伝子の発現を、例えばPCR、ウェスタンブロッティング法等の通常用いられる手法によって確認することができる。

【0078】
GM作物としての栽培期間中は、正常な生育を可能とするために、第1のポリヌクレオチドの発現を、プロモーターのメチル化により抑制し、作物の正常な生育・開花・結実を実現することができる(図1中央)。実際に栽培するGM作物は、メチル化されたターゲット遺伝子(致死性形質の発現抑制)のみをホモ状態で保有する図2Cの個体を利用する。遺伝的にホモ状態の個体を栽培することで、GM作物の自殖後代、および非GM品種や近縁野生種との雑種種子が形成された場合でも、致死性形質が後代に遺伝することとなり(図1)、その結果、全ての後代において致死性形質(白色化)が発動できる状態となる。

【0079】
GM作物の自殖後代や拡散した花粉・種子においては、メチル化領域の脱メチル化現象により、「致死性形質の発現抑制」の「解除」が起こり、自発的な枯死(白色化)が誘導されるようにすることができる(図1右左、2D及び3D)。

【0080】
植物が本来保持しないウイルス由来の全身高発現性CaMV35Sプロモーター等を外来遺伝子として導入し、そのプロモーター領域をDNAメチル化のターゲットとした場合、メチル化状態からの脱メチル化現象は、数世代後でも維持されることがシロイヌナズナやイネなどで報告されている(D. Miki et al., Plant and Cell Physiology, Vol. 45, Issue 4, 15 April 2004, 490-495; 及びS. Bai et al., Journal of Experimental Botany, 1-10, 2011)。したがって、CaMV35Sプロモーター等により致死性形質を制御し、メチル化による「致死性形質の発現抑制」を行った場合、その後の脱メチル化による「致死性形質の発現抑制」の「解除」が誘導されにくい。結果として、数世代の間、GM作物が枯死せずに拡散することになる。

【0081】
一方、本発明で使用している植物由来プロモーターは、自殖や交配後の次世代の植物体において、脱メチル化が誘導されやすい特徴を有する。また、世代を進めない栄養繁殖(クローン増殖)においても、徐々に脱メチル化が進行し葉の白色化が誘導される(図3E)。

【0082】
本発明の植物には更に、目的のタンパク質をコードする遺伝子を導入することができる。目的のタンパク質をコードする遺伝子は、特に限定するものではないが、例えば植物が本来有さない形質、例えば花や葉等の植物部分の特定の色や形、高温や湿度・乾燥等の環境変化に対する耐性等をその植物に付与するための遺伝子であっても良く、あるいは抗体医薬等の医薬品の合成のための遺伝子であっても良い。目的のタンパク質をコードする遺伝子は、現在使用され、又は将来的に使用され得る遺伝子のいずれであっても良く、上記の本発明の特徴を損ねない限り、適宜選択することができる。

【0083】
本発明のベクター
本発明は更に、上記の本発明の植物を作出するための、又は上記の本発明の方法に使用するための、カロテノイド生合成遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの発現を制御するプロモーターとを含むベクターを提供する。このベクターは、本明細書において記載する「第1のベクター」に相当する。

【0084】
本発明は更に、上記の本発明の植物を作出するための、又は上記の本発明の方法に使用するための、上記プロモーターのメチル化を誘導するポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。このベクターは、本明細書において記載する「第2のベクター」に相当する。
【実施例】
【0085】
[実施例1:第1のベクターによるタバコの白色化及び枯死の誘導]
タバコ(Nicotiana tabacum, cv. SR-1)のカロテノイド生合成遺伝子(フィトエン不飽和化酵素;NtPDS、XM_016642616 (配列番号1))をターゲットとして、その部分配列の逆向き繰り返し配列(RNAi構造(配列番号2))を、緑色組織特異的に発現を誘導するアサガオ由来クロロフィル生合成関連遺伝子プロモーター(PnZIPp、配列番号3)、及び選択マーカー遺伝子としてのカナマイシン耐性遺伝子と共にベクターpRI910(TaKaRa)に組込み、PnZIPpの制御下でRNAiを発現する第1のベクターを作製した。
【実施例】
【0086】
ここで、配列番号2の1~217番目及び874~1090番目の塩基配列が、配列番号1の925~1141番目の217塩基の塩基配列に対応する配列であり、配列番号2の218~873番目の塩基配列はβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子由来のリンカー配列である。
【実施例】
【0087】
タバコの無菌播種後に得られた小植物体から約5mm四方の葉片を調整し、上記で作製したベクターを、常法に従ってアグロバクテリウム法により接種し、不定芽の誘導を行った。
【実施例】
【0088】
RNAiベクターが導入されたタバコを、カナマイシンに対する耐性を指標として選択した。ベクターの導入が確認されたタバコを培養した結果、内生カロテノイド生合成遺伝子の1種であるフィトエン不飽和化酵素の転写後の発現抑制(Post Transcriptional Gene Silencing、PTGS)が生じ、白色になった不定芽が得られた。これらの不定芽は発根培地への移植により発根し、培地を含む無菌状態ではある程度まで成長した(図3A)。しかしながら、このような白色個体は、土壌を含むポットに移植すると1~2週間で枯死した(図2A及び図3A)。
【実施例】
【0089】
[実施例2:白色化及び枯死の抑制1]
実施例1において葉の白色化(致死性形質)を制御することが実証されたPnZIPp領域(配列番号3)を標的(ターゲット)として、その部分配列のRNAi構造(配列番号4)を作製した(サイレンサー)。
【実施例】
【0090】
ここで、配列番号3の800~803番目、1236~1239番目、1310~1313番目の塩基配列(ACGT)が、下記で説明するメチル化感受性制限酵素MaeIIの認識配列である。また、配列番号4の1~350番目及び1005~1354番目の塩基配列が、配列番号3の1209~1558番目の350塩基の塩基配列に対応する配列であり、配列番号4の351~1004番目の塩基配列はGUS遺伝子由来のリンカー配列である。
【実施例】
【0091】
取得したRNAi構造の配列を、ミヤコグサ由来ポリユビキチン遺伝子プロモーター(LjUbip、AP009383、配列番号5)の下流に組み込み、選択マーカー遺伝子としてハイグロマイシン耐性遺伝子を組み込んだ第2のベクターを作製した。
【実施例】
【0092】
実施例1で作製した第1のベクターと、上記の第2のベクターとを、アグロバクテリウム法により同時にタバコに接種した。カナマイシン及びハイグロマイシンの双方に対して耐性を示す個体を双方のベクターが導入された形質転換体として選択し、培養した。その結果、双方のベクターが導入されたタバコでは、白色化が生じず、正常に生育した。
【実施例】
【0093】
[実施例3:白色化及び枯死の抑制2]
実施例1及び2で作製した第1及び第2のベクターを、アグロバクテリウム法により2段階でタバコに接種した。
【実施例】
【0094】
まず、無菌播種後に得られた小植物体から、約5mm四方の葉片を調整した。この葉片を用い常法に従いアグロバクテリウム法により第1のベクターの接種、不定芽の誘導・選抜を行い、致死性形質(ターゲットを含む)を有する白色化個体を作出した。この個体は、培地上であれば無菌個体として維持することができる。次いで、この白色化個体に更に第2のベクターを導入した。
【実施例】
【0095】
図3Bは、第1及び第2のベクターを2段階で導入した後、白色化個体の葉片から形成された不定芽を示す。双方のベクターが導入されても、再分化途中の不定芽は白色化したものと、緑色のものとが混在していた。緑色の再分化個体では、第1のベクターによって発現される致死性形質が抑制されていることが示された。
【実施例】
【0096】
[実施例4:PnZIPプロモーター領域のDNAメチル化の確認1]
第1及び第2のベクターが導入された個体では、第2のベクターによってPnZIPpのターゲット配列のメチル化が誘導され、致死性形質の発現抑制が生じていると考えられる。
【実施例】
【0097】
そこで、実施例1~3で得られた個体におけるターゲット領域(配列番号3の1209~1558番目の350塩基の塩基配列)のメチル化状態を、メチル化感受性制限酵素とPCR法による解析で確認した。
【実施例】
【0098】
メチル化感受性制限酵素のMaeIIは認識配列がメチル化されると切断されない。第1及び第2のベクターが導入され、白色化が生じていない個体(TS-1及びTS-2系統)では、MaeII認識配列ACGT(配列番号3の800~803番目、1236~1239番目、1310~1313番目)におけるシトシンがメチル化されているため、MaeII酵素処理の有無にかかわらずゲノムDNAが切断されない。一方、第1のベクターのみを導入し、白色化が誘導された個体(T-1系統)では認識配列がメチル化されていないため、MaeII酵素処理によりゲノムDNAが切断される。
【実施例】
【0099】
したがって、配列番号3におけるMaeII認識配列を含むメチル化標的配列(700bp)を、PnZIPプロモーターのターゲット領域の上流と、GUS遺伝子由来のリンカー配列の先頭に設計したプライマー(プライマーU:TCCAGATTCTACCCAAGTTAAAGA(配列番号6)及びプライマーL:ACGCAAGTCCGCATCTTCATG(配列番号7))を使用してPCRにより増幅すると、TS-1及びTS-2系統ではMaeII酵素処理の有無にかかわらず700bpの位置にバンドが検出された(PnZIPプロモーターの450bp+NtPDSの逆向き配列250bp)。一方、T-1系統ではMaeII酵素処理を行うとバンドが検出されなかった(図4)。この結果より、葉の色が変化(白色化)しているすべての系統で、ターゲット配列がメチル化されていることが確認できた。
【実施例】
【0100】
[実施例5:PnZIPプロモーター領域のDNAメチル化の確認2]
実施例3で得られた個体におけるターゲット領域(配列番号3の1209~1558番目の350塩基の塩基配列)のメチル化状態を、バイサルファイトシークエンス解析により確認した。
【実施例】
【0101】
下記に、PnZIPプロモーター領域中でメチル化のターゲットとした350塩基を含む配列(配列番号8)を示す。□で囲んだACGTは、実施例4で使用したMaeIIの認識配列を示し、下線部はメチル化される可能性の高いシトシンを含む塩基配列を示す。
【実施例】
【0102】
JP2020048428A_000002t.gif
【実施例】
【0103】
上記の配列中の3'末端の35塩基(GCGGCAGGCGGAAACTGGCACCCTTAAGCGTGAGA、配列番号9)を本方法で解析して得られる結果を以下に説明する。尚、下記の説明中、「mC」はメチル化シトシンを、「C」は非メチル化シトシンを意味する。
【実施例】
【0104】
解析対象の配列中の下線部のシトシンがメチル化された場合、バイサルファイト処理によって、メチル化されたシトシンは変化せず、メチル化されていないシトシンはウラシルに変換される(配列番号10)。従って、バイサルファイト処理後の配列をPCR増幅した場合には、増幅産物中ではウラシルに対応する位置の塩基がチミンとなる(配列場合11)。
【実施例】
【0105】
一方、解析対象の配列中のシトシンがメチル化されていない場合、バイサルファイト処理を行うとシトシンが全てウラシルに変換され(配列番号12)、この配列をPCR増幅した場合、増幅産物中でウラシルに対応する位置の塩基がチミンとなる(配列場合13)。
【実施例】
【0106】
JP2020048428A_000003t.gif
【実施例】
【0107】
上記の手順により、第1及び第2のベクターが導入された個体(TS-1及びTS-2系統)及び第1のベクターのみを導入した個体(T-1系統)について、PnZIPpのターゲット配列(配列番号3の1209~1558番目の350塩基の塩基配列)をバイサルファイトシークエンス解析した。
【実施例】
【0108】
各系統についてそれぞれ25クローンのPCR産物をシーケンス解析した結果、上記のメチル化される可能性の高いシトシン26か所のうち、TS-1系統で93.3%、TS-2系統で95.2%がメチル化されていたのに対して、T-1系統では2.4%がメチル化されているのみであった(各25クローンの平均値)。また、PnZIPpのターゲット配列以外の領域はほとんどメチル化されていなかった。
【実施例】
【0109】
これらの結果より、葉の色が変化(白色化)したすべての系統で、ターゲット配列がメチル化されていることが確認できた。
【実施例】
【0110】
[実施例6:致死性形質の発現が抑制された個体の栽培]
実施例3で得られた、白色化の誘導が抑制され、緑色の葉を持つ個体は、内生NtPDS遺伝子が正常に機能している(致死性形質の発現抑制)と予想されるため、そのような個体(T0世代)を選抜した。
【実施例】
【0111】
次いで、自殖または非形質転換体との交配を行い、遺伝的な分離を利用して、サイレンサーを除去し、ターゲットのみ導入された、緑色で正常に生育する後代(T1世代:PnZIPpのメチル化は継続)を選抜した(図2C、3C)。
【実施例】
【0112】
具体的には、交配後に得られた種子を無菌播種して発芽させた後、ターゲットのメチル化が維持されていると予想される緑色個体からDNAを抽出した。それらのDNAについて、サイレンサーまたはターゲット特異的な配列に対するPCR解析を行った。ターゲット特異的バンドのみ検出された個体を、サイレンサーが除去され且つPnZIPpのメチル化が維持された個体として選抜した。
【実施例】
【0113】
メチル化されたターゲット遺伝子(致死性形質の発現抑制)のみをホモ状態で保有する図2Cの個体を利用することで、栽培期間中は、メチル化により「致死性形質の発現抑制」が継続し、作物は正常に生育・開花・結実することができた(図1中央)。遺伝的にホモ状態の個体を栽培することで、GM作物の自殖後代、および非GM品種や近縁野生種との雑種種子が形成された場合でも、致死性形質が後代に遺伝する(図1)。
【実施例】
【0114】
[実施例7:PnZIPプロモーター領域の脱メチル化]
GM作物の自殖後代や拡散した花粉・種子において、メチル化領域の脱メチル化現象により、「致死性形質の発現抑制」の「解除」が起こり、自発的な枯死(葉の白色化)が誘導された(図1右左、図2D、3D)。また、世代を進めない栄養繁殖(クローン増殖)においても、徐々に脱メチル化が進行し葉の白色化が誘導された(図3E)。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、形質転換植物のみでなく、品種の無断増殖の防止にも応用でき、作物の品種保護へ発展させることが可能である。また、駆除したい外来植物や雑草に本技術を利用して遺伝子導入し、それらのGM植物を対象地域で栽培するか、花粉のみを散布することにより、労力をかけずに徐々に致死性形質を拡散させることができ、結果的に、対象植物のみを効率的かつ確実に駆除することができると考えられる。さらに、外来種と固有種との雑種が形成される場合も、外来種と雑種のみを駆除することができる(外来遺伝子は優性遺伝する)。
【0116】
近年、ゲノム編集技術の開発が盛んに進められており、植物の内生カロテノイド生合成遺伝子も標的遺伝子として破壊可能である。しかし、ゲノム編集では、一旦破壊された標的遺伝子は修復されることがないため、致死性形質の導入、致死性形質の発現抑制、致死性形質の再発現のような一連のシステムは、ゲノム編集技術のみでは、構築が困難である。
【0117】
本発明は、RNAi構造を用いたPTGS(転写後抑制型ジーンサイレンシング)とTGS(転写抑制型ジーンサイレンシング)、およびメチル化と脱メチル化を組み合わせた一連のシステムを提供し得る。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図2D】
4
【図3】
5
【図4】
6