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明細書 :ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法及びナノ構造を持つ吸着剤の造粒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-116504 (P2020-116504A)
公開日 令和2年8月6日(2020.8.6)
発明の名称または考案の名称 ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法及びナノ構造を持つ吸着剤の造粒体
国際特許分類 B01J  20/30        (2006.01)
G21F   9/12        (2006.01)
B01J  20/06        (2006.01)
B01J  20/08        (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
FI B01J 20/30
G21F 9/12 501B
B01J 20/06 B
B01J 20/06 C
B01J 20/08 C
C01G 23/00 B
C01G 23/00 C
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2019-008465 (P2019-008465)
出願日 平成31年1月22日(2019.1.22)
発明者または考案者 【氏名】浅尾 直樹
【氏名】齋藤 哲平
【氏名】白岩 礼士
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100192773、【弁理士】、【氏名又は名称】土屋 亮
審査請求 未請求
テーマコード 4G047
4G066
Fターム 4G047CA06
4G047CA07
4G047CB05
4G047CB09
4G047CC03
4G047CD05
4G066AA02A
4G066AA12B
4G066AA13D
4G066AA15B
4G066AA16D
4G066AA18D
4G066AA19B
4G066AA20B
4G066AA21B
4G066AA23B
4G066AA24B
4G066AA25B
4G066AA26B
4G066AA27B
4G066AA28B
4G066AA31D
4G066AA35D
4G066AA43D
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA26
4G066CA12
4G066CA45
4G066DA07
4G066FA11
4G066FA22
4G066FA26
4G066FA28
要約 【課題】ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法及びナノ構造を持つ吸着剤の造粒体の提供。
【解決手段】ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法であって、少なくとも1種の金属元素(M)と、少なくとも1種の両性金属(A)と、を含む合金原料をアルカリ処理し、アルカリ金属イオンを含有する金属酸化物の粉体を製造する工程と、得られた粉体を、金属塩(S)の水溶液中で攪拌し、前記アルカリ金属イオンを前記金属塩(S)の金属イオンとイオン交換を行う工程と、を備えるナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法であって、
少なくとも1種の金属元素(M)と、少なくとも1種の両性金属(A)と、を含む合金原料をアルカリ処理し、アルカリ金属イオンを含有する金属酸化物の粉体を製造する工程と、
得られた粉体を、金属塩(S)の水溶液中で攪拌し、前記アルカリ金属イオンを前記金属塩(S)の金属イオンとイオン交換を行う工程と、を備えるナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
【請求項2】
さらに、得られた金属酸化物の粉体を造粒化し、造粒体を製造する工程を備え、
前記造粒体を製造する工程において炭酸供給源を添加する、請求項1に記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
【請求項3】
前記金属元素(M)は、Ti、Ce、Zr、Pd、La、Fe、Co、V、Mn、Ag、Pt、Y、Mo、Cr、Cu、Ni、Nb、Ru、Rh、Ta、In、Au、Hf、Ir、Ge、Bi、及びWからなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
【請求項4】
前記両性金属元素(A)は、Al、Zn、Sn、Pb、Ga、及びHgからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ処理は、NaOH、KOH、LiOH、NaCO、NaOCl、RbOH、CsOH、Sr(OH)、NaHCO、KCO、及びKHCOからなる群から選択される1種以上のアルカリ溶液を用いて行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
【請求項6】
前記金属塩(S)は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Si、Y、La、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、及びBiからなる群より選択される1種以上の金属の塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
【請求項7】
層状に積層した結晶構造を持つ金属酸化物の層間に金属イオン(S1)が含まれているナノ構造を持つ吸着剤の造粒体であって、BET比表面積が85m/g以上である、ナノ構造を持つ吸着剤の造粒体(金属イオン(S1)は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Si、Y、La、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、及びBiからなる群より選択される1種以上の金属のイオンである。)。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はナノ構造を持つ吸着剤の製造方法及びナノ構造を持つ吸着剤の造粒体に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、福島第一原子力発電所で発生した事故により、放射性物質を含む汚染水が大量に発生している。放射性汚染水に含まれるストロンチウム等の放射性物質を除去する吸着剤について、種々の試みがされている。
【0003】
特許文献1には、ストロンチウムの吸着除去を目的とし、金属酸化物ナノワイヤー状の吸着剤に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2016-6003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の金属酸化物ナノワイヤーを用いた吸着剤は、ストロンチウム等の放射性物質を吸着除去できるものの、実用化の観点から改良の余地があった。
吸着剤は直径約1mm程度の粒状の造粒体として使用することが好ましい。このため、ナノ形状を有する金属酸化物吸着剤には、焼成工程を経てもナノ構造を維持できる耐熱性が求められる。
さらに、放射性汚染水には海水や地下水が多く含まれるため、多種類の非放射性イオンが混在する条件下であっても、ストロンチウムを選択的に吸着できるイオン選択性が求められる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、造粒化のための焼成工程においても構造変化が生じにくい耐熱性と、高いイオン選択性を発揮できるナノ構造を持つ吸着剤の製造方法及びナノ構造を持つ吸着剤の造粒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の[1]~[7]を含む。
[1]ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法であって、少なくとも1種の金属元素(M)と、少なくとも1種の両性金属(A)と、を含む合金原料をアルカリ処理し、アルカリ金属イオンを含有する金属酸化物の粉体を製造する工程と、得られた粉体を、金属塩(S)の水溶液中で攪拌し、前記アルカリ金属イオンを前記金属塩(S)に含まれる金属イオンとイオン交換を行う工程と、を備えるナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
[2]さらに、得られた金属酸化物の粉体を造粒化し、造粒体を製造する工程を備え、前記造粒体を製造する工程において炭酸供給源を添加する、[1]に記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
[3]前記金属元素(M)は、Ti、Ce、Zr、Pd、La、Fe、Co、V、Mn、Ag、Pt、Y、Mo、Cr、Cu、Ni、Nb、Ru、Rh、Ta、In、Au、Hf、Ir、Ge、Bi、及びWからなる群から選択される少なくとも1種以上である、[1]又は[2]に記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
[4]前記両性金属元素(A)は、Al、Zn、Sn、Pb、Ga、及びHgからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
[5]前記アルカリ処理は、NaOH、KOH、LiOH、NaCO、NaOCl、RbOH、CsOH、Sr(OH)、NaHCO、KCO、及びKHCOからなる群から選択される1種以上のアルカリ溶液を用いて行われる、[1]~[4]のいずれか1つに記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
[6]前記金属塩(S)は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Si、Y、La、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、及びBiからなる群より選択される1種以上の金属の塩である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法。
[7]層状に積層した結晶構造を持つ金属酸化物の層間に金属イオン(S1)が含まれているナノ構造を持つ吸着剤の造粒体であって、BET比表面積が85m/g以上である、ナノ構造を持つ吸着剤の造粒体(金属イオン(S1)は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Si、Y、La、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、及びBiからなる群より選択される1種以上の金属のイオンである。)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、造粒化のための焼成工程においても構造変化が生じにくい耐熱性と、高いイオン選択性を発揮できるナノ構造を持つ吸着剤の製造方法、ナノ構造を持つ吸着剤の造粒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「ナノ構造」とは、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノファイバー、ナノチューブ等にあてはまる構造を意味する。これらは3つの次元のうち、2つの次元のサイズの差が小さく、かつナノスケールであり、残る1つの次元のサイズがそれらより大きい構造を意味する。ナノスケールは、およそ1nmから100nmまでの大きさの範囲とする。

【0010】
<ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法>
本実施形態は、ナノ構造を持つ吸着剤の製造方法に関する。
本実施形態のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法は、少なくとも1種の金属元素(M)と、少なくとも1種の両性金属(A)と、を含む合金原料をアルカリ処理し、アルカリ金属イオンを含有する金属酸化物の粉体を製造する工程と、得られた粉体を、金属塩(S)の水溶液中で攪拌し、前記アルカリ金属イオンを前記金属塩(S)に含まれる金属イオンとイオン交換を行う工程と、を備える。

【0011】
本実施形態によれば、非常に穏和な条件でナノ構造を持つ吸着剤を製造することができる。穏和な条件とは、室温、常温から100℃程度までの条件を意味する。得られる金属酸化物は、ナノ構造を持つにもかかわらず、耐久性、機械的強度、及び耐熱性に優れる。例えば500℃を超える高温条件においた場合にも、ナノ構造を維持できる。
以下、本実施形態の製造方法の各工程について説明する。

【0012】
[アルカリ金属イオンを含有する金属酸化物の粉体を製造する工程]
本工程は、金属酸化物の結晶骨格の内部にアルカリ金属イオンが取り込まれた金属酸化物の粉体を製造する工程である。一例を挙げると、層状構造を有する金属酸化物を用いる場合には、層間にアルカリ金属イオンが含まれた粉体を製造する。

【0013】
本工程によれば、例えば、Ti、Ce、Zr、Pd、La、Fe、Co、V、Mn、Ag、Pt、Y、Mo、Cr、Cu、Ni、Nb、Ru、Rh、Ta、In、Au、Hf、Ir、Ge、Bi、及びWからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物に、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、ストロンチウムイオン等が取り込まれた金属酸化物粉体を得ることができる。

【0014】
・合金原料
本工程において使用する合金原料は、少なくとも1種の金属元素(M)と、少なくとも1種の両性金属(A)と、を含む。
金属元素(M)は、Ti、Ce、Zr、Pd、La、Fe、Co、V、Mn、Ag、Pt、Y、Mo、Cr、Cu、Ni、Nb、Ru、Rh、Ta、In、Au、Hf、Ir、Ge、Bi、及びWからなる群から選択される少なくとも1種以上が好ましく、Ti、Zr、Mn、Cr、Cu、Niからなる群より選択される1種以上がより好ましく、Ti、Zr、Mnからなる群より選択される1種以上が特に好ましい。

【0015】
両性金属元素(A)は、Al、Zn、Sn、Pb、Ga、及びHgからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、Zn、Sn、Gaからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、Znが特に好ましい。

【0016】
上記の金属元素(M)と両性金属元素(A)は、形成するナノ材料に応じて適宜選択すればよい。

【0017】
金属元素(M)と両性金属元素(A)とを含む合金原料としては、チタン-亜鉛合金、チタン-アルミニウム合金等が挙げられる。

【0018】
本実施形態において、金属元素(M)と両性金属元素(A)との原子数比(M:A)は、所望の直径及び比表面積を有するナノ構造とするために目的とするナノ構造に応じて調整すればよい。

【0019】
細く比表面積の大きなナノワイヤーを形成する点からは、これらの原子数比(M:A)を50:50~2:98とすることが好ましい。

【0020】
また、複数の金属元素を組合せる場合には、目的とする特性が得られるように適宜組合せる金属元素の原子数比を調整することが好ましい。

【0021】
本実施形態において合金原料としては、チタン-亜鉛合金粉末が好ましい。合金原料は、市販の合金を購入し、既知の方法により粉末状にしてもよく、粉末状の合金を購入してもよい。

【0022】
粉末状の合金原料は、粒子の直径が約0.01~100μmであることが好ましく、約1~50μmであることがより好ましい。粒子の直径がこのような範囲であることにより、アルカリ処理においてアルカリとの接触面積を大きくでき、アルカリ処理による両性金属元素(A)の溶出を短時間で進行させることができる。

【0023】
・アルカリ処理
本実施形態においては、上述した合金原料を、アルカリ処理して、アルカリ金属イオンを含有する金属酸化物の粉体を形成する。
アルカリ処理により両性金属元素(A)が溶出し、両性金属元素(A)の溶出と同時に合金原料中の残りの金属原子が、酸素原子と結合して酸化物を形成する。これらの反応の際にナノ構造の形態に至る。
本実施形態において、両性金属元素(A)として亜鉛を用いると、アルカリ処理をした際に亜鉛は溶出しやすく、ナノ構造を形成しやすくなる。

【0024】
アルカリ処理は、アルカリ金属イオンを含むアルカリ溶液を用いて実施すればよく、種々の様式で行うことができる。例えば、アルカリをイオン交換水、蒸留水、メタノール、エタノール、又はこれらの2種以上の混合物等の溶媒に溶解したアルカリ溶液に合金を浸漬する方法が挙げられる。また、合金原料を水に分散した分散液をアルカリ溶液に添加混合する方法であってもよい。

【0025】
溶媒としては、イオン交換水又は蒸留水が好ましい。
アルカリ金属イオンを含む溶液は、NaOH、KOH、LiOH、NaCO、NaOCl、RbOH、CsOH、Sr(OH)、NaHCO、KCO、及びKHCOからなる群から選択される1種以上を含むアルカリ溶液が好ましい。
このようなアルカリ金属イオンを含む溶液は、両性金属元素(A)の溶解性に優れるため、比表面積の大きなナノワイヤーが得られやすい。

【0026】
アルカリの、アルカリ金属イオンの濃度は、低濃度でもよく、例えば0.01M以上の濃度でも可能である。本実施形態においては、0.1M以上にすることが好ましく、1.0M以上がより好ましい。

【0027】
また、アルカリ金属イオンの合金に対する量は、モル比(アルカリ:合金)で3:1以上が好ましく、5:1~20:1がより好ましく、8:1~15:1がさらに好ましい。

【0028】
本実施形態においては、アルカリ処理の温度について特に制限はなく、種々の温度を選択することができる。
本実施形態によれば、穏和な条件でアルカリ処理を実施し、比表面積の大きな金属酸化物の粉体を製造できる。アルカリ処理の温度は、0度以上100度未満が好ましく、5~80℃がより好ましく、室温が特に好ましい。

【0029】
アルカリ処理は、加圧下で行ってもよく、常圧で行ってもよい。
また、アルカリ金属と両性金属元素(A)との反応で水素ガスが発生する場合がある。この場合には、発生した水素を反応系から分離して回収することが好ましい。

【0030】
アルカリ処理の時間についても特に制限はなく、例えば、1時間~3日程度アルカリ処理を行えばよい。アルカリ処理の時間は、合金材料のサイズ等に応じて変えることが好ましく、例えば、大きめの粒子(200μm~400μm程度)では24時間以上のアルカリ処理を行うことが好ましい。

【0031】
[イオン交換を行う工程]
本工程において、前記工程において得られた粉体を金属塩(S)の水溶液中で攪拌し、金属酸化物の粉体中のアルカリ金属イオンを、金属塩(S)に含まれる金属イオンとイオン交換する。
金属塩(S)に含まれる金属イオンと金属酸化物中のアルカリ金属イオンとがイオン交換し、ナノ構造を持つ金属酸化物に、金属塩(S)由来の金属イオンが含まれる。

【0032】
本実施形態においては、まずアルカリ金属イオンを含有する金属酸化物の粉体を製造し、次にアルカリ金属イオンと金属塩(S)に含まれる金属イオンとをイオン交換することにより、金属塩(S)に含まれる金属イオンを金属酸化物中に効率的に含ませることができる。

【0033】
金属塩(S)の金属イオンは、前記アルカリ金属イオンとは異なる金属元素であればよく、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Si、Y,La、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、及びBiからなる群より選択される1種以上の金属の塩であることが好ましい。これらのなかでもストロンチウムイオンを選択的に吸着する観点から、Ba、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上が好ましく、Baが特に好ましい。バリウムイオンはストロンチウムイオンと積極的にイオン交換できる。このため、本実施形態によれば、ストロンチウムイオンを選択的に吸着することができる吸着剤を製造することができる。

【0034】
金属塩(S)の水溶液の濃度は、モル濃度が1.0×10-3~5.0×10-3の、範囲で適宜調整できる。

【0035】
金属塩(S)の水溶液の水溶液中での攪拌時間は、5時間から24時間が挙げられ、10時間から20時間であってもよい。

【0036】
[造粒化工程]
本実施形態のナノ構造体を持つ吸着剤の製造方法は、造粒化工程を備えることが好ましい。造粒化工程は、前記イオン交換を行う工程の前に実施してもよく、イオン交換を行う工程の後に実施してもよい。
即ち本実施形態の製造方法は、粉体を製造する工程、造粒化工程、イオン交換を行う工程をこの順で備えていてもよく、粉体を製造する工程、イオン交換を行う工程、造粒化工程をこの順で備えていてもよい。

【0037】
造粒化工程は、得られた金属酸化物の粉体にバインダー成分と添加剤を加えて回転造粒することが好ましい。この方法により、直径0.5mm~1.0mm程度の大きさの粒状物を製造する。

【0038】
バインダー成分は、アミン系ポリマーが好ましい。特にポリエチレンイミンが好ましい。

【0039】
添加剤としては、炭酸供給源が好ましい。炭酸供給源としては、NaHCO、NaCO、KCO、CaCO、MgCO等を用いることが好ましい。炭酸供給源を加えることにより、粒状物の比表面積を向上させることができ、ストロンチウムイオンの吸着速度を速めることができる。

【0040】
添加剤としての炭酸供給源は、前記炭酸供給源を含む水溶液を添加することが好ましい。この時の水溶液中の炭酸供給源の濃度は、0.1モル濃度以上1.0モル濃度以下が好ましく、0.2モル濃度から0.8モル濃度がより好ましく、0.3モル濃度から0.7モル濃度が特に好ましい。

【0041】
得られた粒状物を焼成し、造粒体を製造する。
焼成処理は、例えば、空気雰囲気中で行い、3℃/分程度(例えば1~5℃/分)の速度で50℃以上、典型的には150℃以上の所定の温度まで上昇させ、2時間程度(約1~3時間)所望の温度とした後に自然冷却して行うことができる。

【0042】
焼成処理はナノ構造を構成する材料によって異なるが、例えば50℃~2000℃の範囲から任意の1又は複数の温度まで昇温して処理を行うことができる。また、ナノ構造を構成する材料の結晶構造を考慮して温度を選択してもよい。例えば、酸化チタンでは、400℃~600℃でほぼ均一のアナターゼ型の結晶構造となり、800℃以上でほぼ均一のルチル型の結晶構造となるため、所望の結晶構造に変換される温度を選択することができる。

【0043】
<ナノ構造を持つ吸着剤の造粒体>
本実施形態は、層状に積層した結晶構造を持つ金属酸化物の層間に金属イオン(S1)が含まれている、ナノ構造を持つ吸着剤の造粒体である。本実施形態の造粒体は、BET比表面積が85m/g以上である。金属イオン(S1)は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Si、Y、La、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、及びBiからなる群より選択される1種以上の金属のイオンである。

【0044】
本実施形態の造粒体は、BET比表面積が86m/g以上が好ましく、87m/g以上がより好ましい。

【0045】
本実施形態において、層状に積層した結晶構造を持つ金属酸化物としては、例えばレピドクロサイト型酸化チタンが挙げられる。

【0046】
本実施形態の吸着剤の造粒体において、ナノ構造の中でナノワイヤー構造を持つ場合は、用いる合金原料によって直径が異なり、2nm~100nm程度の範囲である。非常に細いワイヤー形状を持つ場合は、ナノワイヤーは複数のくびれを有していてもよい。くびれを有する場合には、くびれ部分の直径は約2nm~4nmである。

【0047】
金属イオン(S1)としては、バリウムイオンが好ましい。
本実施形態においては、層状構造チタン酸金属化合物が層状に積層し、層間にバリウムイオンが含まれる造粒体が好ましい。このような造粒体を用いてストロンチウムを吸着する場合を例に挙げる。バリウムイオンはストロンチウムイオンとイオン交換されやすいイオンである。このため、層間に含まれたバリウムイオンは、ストロンチウムイオンとイオン交換により入れ替わり、ストロンチウムイオンが層間に取り込まれ、ストロンチウムイオンが金属酸化物の層間に取り込まれ、吸着される。

【0048】
本実施形態の吸着剤の造粒体は、海水や地下水を含む汚染水に含まれるストロンチウムイオンを好適に除去できる。海水や地下水には、ストロンチウム以外の種々のイオンが存在する。海水中に含まれる硫酸イオンは、バリウムイオンと水に不溶な硫酸バリウムを形成する。このため、イオン交換により入れ替わっても、バリウムイオンは溶出することなく吸着材に付着した状態となる。

【0049】
本実施形態のナノ構造を持つ吸着剤の造粒体は、ストロンチウムイオンを選択的に吸着することができる。海水に塩化ストロンチウムを溶かした水溶液を模擬汚染水として吸着を行った場合でも、選択的にストロンチウムイオンを吸着することができる。

【0050】
本実施形態の吸着剤の造粒体は、ナノ構造を持つ吸着剤に、バインダーと添加剤とを添加して造粒し、焼成することにより製造できる。

【0051】
造粒化した粒状の本発明のナノ構造を持つ吸着剤をカラムに充填し、処理対象の模擬汚染水をカラムに通水することにより、ストロンチウム等の吸着対象物質を除去できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
≪アルカリ金属イオンを含有する金属酸化物粉体の製造工程≫
・脱合金酸化によるチタン酸ナトリウムナノワイヤー粉体の作製
市販のバルク状チタン-亜鉛合金(原子数比1:16)をシリンダー型粉砕機で砕き、得られた破砕体をふるいに掛け、直径が25-45μmで揃えた粒体とした。
これを5モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、発泡が終わるまで、4日間室温にて放置した。沈殿した白色粉末をろ過または遠心分離機にて分離し、0.05モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、その後アセトンで2回洗浄した。その後、減圧下にて乾燥し、チタン酸ナトリウムナノワイヤーの粉体を得た。この粉体について、比表面積をQuantachrome社製「Quadrasorb」を用い、BET法により測定した。その結果、比表面積は97.8m/gであった。
【実施例】
【0054】
≪金属酸化物の粉体を造粒する工程≫
・チタン酸ナトリウムナノワイヤー粉体の造粒化によるチタン酸ナトリウムナノワイヤー造粒体の作製
上記で得られたチタン酸ナトリウムナノワイヤーの粉体をパン型造粒機に入れ回転させ、ここにバインダーとしてポリエチレンイミンの約30%水溶液と、添加剤として0.5モル濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下して造粒化を行った。
回転を続けると粉体は徐々に球体となり、すべての粉体が球体になった段階で回転を止めた。その後にふるいに掛け、直径が0.5-1.0mmの大きさの造粒体を得た。これを400℃で焼成(2時間)して、チタン酸ナトリウムナノワイヤーの造粒体を得た。
【実施例】
【0055】
≪イオン交換を行う工程≫
・イオン交換によるチタン酸バリウムナノワイヤー造粒体の作製
上記で作製したチタン酸ナトリウムナノワイヤー造粒体を、5×10-2モル濃度の塩化バリウム水溶液で、12時間撹拌してイオン交換を行った。その後ろ過した後にアセトンで洗浄し、減圧下にて乾燥し、実施例1のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体を得た。
【実施例】
【0056】
実施例1のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体について、比表面積をQuantachrome社製「Quadrasorb」を用い、BET法により測定した。その結果、実施例1のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体の比表面積は、比表面積は88.4m/gであった。
【実施例】
【0057】
≪吸着実験1≫
・チタン酸ナトリウムナノワイヤー造粒体を用いたストロンチウムイオンの吸着実験
1×10-3モル濃度の塩化ストロンチウム水溶液に、チタン酸ナトリウムナノワイヤー造粒体を加え、1時間撹拌した。上澄みを誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いてストロンチウム濃度を測定したところ、高い分配係数(1.83×10mL/g)が得られた。
【実施例】
【0058】
≪吸着実験2≫
・チタン酸バリウムナノワイヤー造粒体を用いたストロンチウムイオンの吸着実験
5×10-4モル濃度の塩化ストロンチウムを含む人工海水に、チタン酸バリウムナノワイヤー造粒体を加え、2日間撹拌した。上澄みを誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いてストロンチウム濃度を測定したところ、高い分配係数(8.64×10mL/g)が得られた。
【実施例】
【0059】
≪溶出工程≫
・ストロンチウムイオンを吸着したチタン酸ナトリウムナノワイヤー造粒体からのストロンチウムイオンの溶出
ストロンチウムイオンを吸着したチタン酸ナトリウムナノワイヤー造粒体を室温条件で希塩酸に浸漬し、1時間撹拌した。造粒体を分離してアセトンで洗浄し減圧化にて乾燥した後、EDSで測定したところ、造粒体からストロンチウムが完全に溶出していることが分かった。また、造粒体のXRD測定から、ストロンチウムイオンを溶出した後も層状構造を維持していることが分かった。
【実施例】
【0060】
[実施例2]
金属酸化物の造粒化工程において、炭酸水素ナトリウムの代わりに炭酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様の方法により実施例2のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体を得た。
【実施例】
【0061】
実施例2のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体について、比表面積をQuantachrome社製「Quadrasorb」を用い、BET法により測定した。その結果、実施例2のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体の比表面積は、比表面積は55.83m/gであった。
【実施例】
【0062】
[実施例3]
金属酸化物の造粒化工程において、炭酸水素ナトリウムを添加しない以外は、実施例1と同様の方法により実施例3のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体を得た。
【実施例】
【0063】
実施例3のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体について、比表面積をQuantachrome社製「Quadrasorb」を用い、BET法により測定した。その結果、実施例3のチタン酸バリウムナノワイヤーの造粒体の比表面積は、比表面積は48.48m/gであった。
【実施例】
【0064】
上記結果に示したとおり、本発明のナノ構造を持つ吸着剤の製造方法によれば、高いイオン選択性を発揮できるナノ構造を持つ吸着剤を製造することができた。さらに、造粒化工程において、炭酸供給源を添加した実施例1及び2は、比表面積を大きく向上させることができた。