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明細書 :平角導線

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-136365 (P2020-136365A)
公開日 令和2年8月31日(2020.8.31)
発明の名称または考案の名称 平角導線
国際特許分類 H01F  27/28        (2006.01)
H01F  17/06        (2006.01)
H01F  41/08        (2006.01)
H01F   5/00        (2006.01)
H02K   3/04        (2006.01)
H02K   3/30        (2006.01)
H02K   3/32        (2006.01)
H02K   3/02        (2006.01)
FI H01F 27/28 147
H01F 17/06 D
H01F 41/08 Z
H01F 5/00 R
H02K 3/04 Z
H02K 3/30
H02K 3/32
H02K 3/02
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2019-025008 (P2019-025008)
出願日 平成31年2月15日(2019.2.15)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】水野 勉
【氏名】卜 穎剛
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5E043
5E070
5H603
5H604
Fターム 5E043AA06
5E043AB02
5E070AA01
5E070AB01
5E070CA01
5E070CA07
5E070DA13
5H603CB01
5H603CE05
5H603CE13
5H603CE14
5H603CE15
5H603CE19
5H603FA24
5H604DA02
5H604DA15
5H604DB01
5H604PB01
要約 【課題】表皮効果と近接効果の両方の影響を受ける環境下で使用されても損失が少ない平角導線を提供する。
【解決手段】平角導線1は、長方形状の断面を有する帯状導体21と、帯状導体21の一方の面の面内に第1の非磁性絶縁体31と、帯状導体21の他方の面の面内に第2の非磁性絶縁体32と、帯状導体21、第1の非磁性絶縁体31および第2の非磁性絶縁体32を覆う磁性体4を設けた。また、第1の非磁性絶縁体31および第2の非磁性絶縁体32は幅が帯状導体2の幅よりも狭い帯状である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
長方形状の断面を有する帯状導体と、
前記帯状導体の一方の面の面内に第1の非磁性絶縁体と、
前記帯状導体の他方の面の面内に第2の非磁性絶縁体と、を設け、
前記帯状導体、前記第1の非磁性絶縁体、および前記第2の非磁性絶縁体を覆う磁性体を設けた平角導線。
【請求項2】
前記第1の非磁性絶縁体の厚みは、前記第1の非磁性絶縁体と前記第1の非磁性絶縁体を覆う磁性体の厚みの和の0.1倍以上0.9倍以下であり、前記第2の非磁性絶縁体の厚みは、前記第2の非磁性絶縁体と前記第2の非磁性絶縁体を覆う磁性体の厚みの和の0.1倍以上0.9倍以下であることを特徴とする、請求項1に記載の平角導線。
【請求項3】
前記磁性体はコンポジット磁性体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の平角導線。
【請求項4】
前記磁性体は軟磁性材料を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の平角導線。
【請求項5】
前記第1の非磁性絶縁体および前記第2の非磁性絶縁体は幅が前記帯状導体の幅よりも狭い帯状であることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の平角導線。
【請求項6】
前記第1の非磁性絶縁体および前記第2の非磁性絶縁体の幅は前記帯状導体の幅の0.50倍以上0.95倍以下であることを特徴とする請求項5に記載の平角導線。
【請求項7】
前記磁性体の外周断面形状は長方形状であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の平角導線。
【請求項8】
前記磁性体の前記帯状導体の側面を覆う部分の厚さは、前記磁性体の前記帯状導体の一方の面または他方の面における前記非磁性絶縁体が設けられている部分を覆う厚さ以上で、前記磁性体の前記帯状導体の一方の面または他方の面における前記非磁性絶縁体が設けられていない部分を覆う厚さ以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の平角導線。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスやインダクタ、モータの巻線、基板配線やバスバー等、電気電子機器や送配電に用いられる、低損失でしかも軽量な平角導線に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器や基板配線に使用される導線の多くは電力供給や信号伝達に伴う交流電流の通路として使用される。また、前記導線は外部で生じる交流磁束が鎖交する環境でも使用される。この外部磁界による影響は電気機器の集積化が進むほど顕著に現れる。
【0003】
前記導体内に交流電流が供給されるとこの交流電流に起因して導体内部で磁束が発生して、いわゆる表皮効果が現れる。この表皮効果により導体内部の交流抵抗が増え、その結果交流損失が増える。さらに、外部磁界により交流磁束が鎖交すると、導体内部の電流分布がさらに偏り、局所的に高抵抗が発生し、交流損失をさらに増大させる。
【0004】
そこで、従来、導体の表面に磁性体を設けることで、表皮効果や近接効果を抑制する技術が検討されてきた。例えば、平面コイルの片側表面を非磁性絶縁層で被覆し、さらにコイル全体を磁性体で覆うことにより、インダクタンスやQ値の減少を招くことなしに、コイルの許容電流を向上させることができる(特許文献1)。また、平板状の導体(バスバー)の両側に磁性体のキャップを設けることにより、導体内部の電流分布の均一化を図り、これにより表皮効果を低減することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2002-299121号公報
【特許文献2】特開2014-163828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術はすべての導体をフェライト等の磁性層で覆うものであり、インダクタのように導体が局所的に集中して設けられたデバイスに向いてはいるものの、配線用導体としては汎用性に欠けるという課題があった。また、特許文献2の技術は磁性層が局部的に設けられ、バスバーに適してはいるものの、外部磁界等の影響を受けやすい、といった課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る平角導線は、長方形状の断面を有する帯状導体と、前記帯状導体の一方の面の面内に第1の非磁性絶縁体と、前記帯状導体の他方の面の面内に第2の非磁性絶縁体と、を設け、前記帯状導体、前記第1の非磁性絶縁体、および前記第2の非磁性絶縁体を覆う磁性体を設けた。
【0008】
前記第1の非磁性絶縁体の厚みは、前記第1の非磁性絶縁体と前記第1の非磁性絶縁体を覆う磁性体の厚みの和の0.1倍以上0.9倍以下であり、前記第2の非磁性絶縁体の厚みは、前記第2の非磁性絶縁体と前記第2の非磁性絶縁体を覆う磁性体の厚みの和の0.1倍以上0.9倍以下であってもよい。
【0009】
前記磁性体はコンポジット磁性体であってもよい。
【0010】
前記磁性体は軟磁性材料を含んでもよい。
【0011】
前記第1の非磁性絶縁体および前記第2の非磁性絶縁体は幅が前記帯状導体の幅よりも狭い帯状であってもよい。
【0012】
前記第1の非磁性絶縁体および前記第2の非磁性絶縁体の幅は前記帯状導体の幅の0.50倍以上0.95倍以下であってもよい。
【0013】
前記磁性体の外周断面形状は長方形状であってもよい。
【0014】
前記磁性体の前記帯状導体の側面を覆う部分の厚さは、前記磁性体の前記帯状導体の一方の面または他方の面における前記非磁性絶縁体が設けられている部分を覆う厚さ以上で、前記磁性体の前記帯状導体の一方の面または他方の面における前記非磁性絶縁体が設けられていない部分を覆う厚さ以下であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、帯状導体に第1の非磁性絶縁体と第2の非磁性絶縁体を設け、これらを非磁性絶縁体で覆ったことにより、単線で使用しても、表皮効果と外部磁界による近接効果の両方を低減することができる。さらに非磁性絶縁体の厚みを磁性体の厚みと合わせた厚みの0.1~0.9倍にコントールすることで、または非磁性絶縁体の幅の0.50~0.95倍にコントロールすることにより、外部磁界存在下における損失の低減を最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示の実施の形態の構成図と部分拡大図
【図2】比較例における表皮効果と近接効果の説明図
【図3】本開示の実施の形態の作用を示す説明図
【図4】本開示の実施の形態と比較例の寸法図
【図5】本開示の実施例の表皮効果による抵抗の低減効果を示すグラフ
【図6】本開示の実施例の近接効果による損失の低減効果を示すグラフ
【図7】本開示の実施例の強磁場下における損失低減効果を示すグラフ
【図8】本開示の実施例の弱磁場下における損失低減効果を示すグラフ
【図9】本開示の実施例の磁界強度を変えたときの損失低減効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に本実施の形態における平角導線1の構成図および部分拡大図を示す。図1において、2は帯状導体であり、長方形状の断面を有した線状の導体より成る。素材は、導体であれば、銅、アルミニウムなどの金属であってもよく、合金やメッキ線であってもよい。また、断面形状は厳密に長方形でなくてもよい。例えば角を丸めた長円形に近い形であってもよい。また、断面形状において、短辺の長辺に対する比率は、0.01から0.5の範囲にあればよい。なお、帯状導体2は、その表面にエナメル等を薄く均一に塗布して予め絶縁処理を施したものであってもよい。

【0018】
31は(第1の)非磁性絶縁体、32は(第2の)非磁性絶縁体である。それぞれ帯状導体2の面21(一方の面)と面22(他方の面)の面内に設けられている。ここで、面21、22は帯状導体2の表面のうち長方形状断面の長辺を含む面である。さらに「面内」とは、非磁性絶縁体31、32がそれぞれ帯状導体2の面21と面22の内側に設けられ、これよりはみ出さないことを意味する。

【0019】
4は磁性体であり、帯状導体2、非磁性絶縁体31、32、の全体を覆うものである。なお、特性に影響を与えない範囲において、本実施の形態における平角導線は磁性体4に覆われない部分があってもよい。例えば帯状導体2と外部に設けられた回路を導通するためのビア等が設けてあってもよい。また、磁性体4の表面にエナメル等を塗布して絶縁処理を施してもよい。

【0020】
非磁性絶縁体31、32のそれぞれの厚みであるが、後述の実施例でも示されるように、磁性体4に対して、薄すぎると表皮効果による損失の低減効果が小さく、厚すぎると外部磁界すなわち近接効果に対して弱くなる。非磁性絶縁体31、32、いずれの厚みも好ましくは非磁性絶縁体を覆う磁性体の厚みを加えた厚さの0.1倍以上0.9倍以下であるほうがよい。

【0021】
非磁性絶縁体31、32は、先述のように、帯状導体2の面21と面22のそれぞれの面内に設けられたものであるので、それぞれの幅は帯状導体2の幅よりも狭い帯状でなければならない。また、幅についても厚みと同様、表皮効果低減効果と外部磁界等による損失の低減効果のトレードオフとなるため、好ましくは帯状導体2の幅の0.50倍以上0.95倍以下である方がよい。また材質については、電圧や周波数等の平角導線1の使用環境下において、十分な絶縁性と非磁性があればよく、エポキシ等の樹脂やセラミックなどの有体物で形成されたものであってもよく、アルゴンや窒素等の気体を封入したものや、単に空隙であってもよい。

【0022】
磁性体4は磁性コンポジット材料を塗布して形成したものであってもよい。例えばアモルファス球粉とシリコーン樹脂を混合したものであってもよい。また、片面に接着材を塗付した磁性コンポジット材テープを帯状導体に巻き付けるか、または貼り付けてもよい。磁性コンポジット材テープと磁性コンポジット塗布材とを併用してもよい。また、磁性材料として軟磁性体を用いてもよい。例えば、鉄、ニッケル、コバルト、パーマロイ、鉄コバルト合金などをスパッタなどの手法を用いて形成したものであってもよい。

【0023】
磁性体4は少なくとも帯状導体2と非磁性絶縁体31、32全体を覆えばよいが、平角導線1がモータの巻線としても利用されることを考慮すると、隙間なく巻くために全体として長方形の断面形状を有していることが好ましい。言い換えれば、磁性体4は、局部的な厚さは異なっていても、その外側の断面は同一寸法の長方形であることが好ましい。

【0024】
帯状導体2の側面(短辺側)を覆う磁性体4の厚みについては、薄すぎると磁力線のバイパス能力が低くなり、厚すぎると巻線や配線としたときの容積率が悪くなる。よって、下限を帯状導体2の面21または面22で非磁性絶縁体31、32が設けられている部分の厚さ(非磁性絶縁体31、32と合わせた厚さの0.1~0.8倍)とし、上限を磁性絶縁体31、32が無い部分の磁性体4の厚さとし、この範囲で設定するのが好ましい。

【0025】
以上のように構成された平角導線について、以下、その作用(動作)を説明する。まず図2を用いながら表皮効果と近接効果が生じた際の損失の発生について説明する。図 (a)は周波数f=5MHzの交流電流I=5Aが流れる裸の平角導線(比較例)のフラックスラインと電流密度分布を示したものである。このとき、アンペールの法則により電流によって発生した磁束が平角導線の端部に鎖交するために、平角導線の幅方向および厚さ方向に電流密度の偏りが発生する。この現象がすなわち表皮効果である。

【0026】
図2(b)は周波数f=5MHzでy方向に発生している一様交流磁界Hy=20kA/mの中に置かれた裸の平角導線(比較例)のフラックスラインと電流密度分布を示すものである。この外部磁界強度は平角導線がコイルとして数十回巻かれた際に平角導線近傍に発生する磁界強度を想定したものである。このとき、一様交流磁界が平角導線に鎖交するために、平角導線の幅方向および厚さ方向に電流密度の偏りが発生する。この現象がすなわち近接効果である。

【0027】
このように、磁気部品の巻線や送配電線に使用される平角導線には、導体内部の電流や外部からの磁界の影響で表皮効果と近接効果が同時に発生し、その結果損失が増加する。こういった表皮効果と近接効果を同時に抑制するためには、平角導線に鎖交する磁束を効果的に低減する技術が必要とされる。本実施の形態においては、帯状導体2の面21、面22のそれぞれの面内に非磁性絶縁体31、32を設け、さらに磁性体4で覆うことにより、この課題を解決している。

【0028】
図3は本実施の形態における作用を模式的に説明したものである。同図(a)は表皮効果に対する、同図(b)は近接効果に対する、それぞれ低減効果を示している。同図(a)において、裸導線の場合、一部の磁力線(X)は帯状導体2の内部の角へ入り込み、これが表皮効果の発生原因となる。ここで本実施の形態のように非磁性絶縁体31、32とその外側に磁性体4を設けると、磁力線は非磁性絶縁体31、32を避け、しかもその外側の磁性体の中を通ろうと経路を変えるため(X’)、帯状導体2の内部には入り込まない。

【0029】
また、図3(b)において、帯状導体2の面21から面22に垂直に突き抜ける方向に磁界が作用した場合、一部の磁力線(Y)は帯状導体2を迂回しきれずに帯状導体2に入り込む。一方、本実施の形態の平角導線では、磁力線(Y’)は非磁性絶縁体を避けつつ磁性体4に沿って回り込むため、帯状導体2には入り込まない。

【0030】
このように、表皮効果の低減には帯状導体2の側部の磁性体と非磁性絶縁体31、32が大きく関わっており、近接効果の低減には、帯状導体2の面21と面22および両側面付近の磁性体が大きく関わっていると考えられる。特に非磁性絶縁体31、32とその外側に設けられた磁性体の厚みの比率は、表皮効果低減と近接効果低減とでトレードオフの関係にあることが予測される。そこで、以下の実施例では、実際にシミュレーションを行い、表皮効果と近接効果のいずれをも低減できる形状の最適値を求める。
【実施例】
【0031】
以下、本開示の実施例について説明する。まず、以下の実施例における平角導線1(以下、解析モデルと称することもある)の形状および寸法を図4に示す。図4において(a)は帯状導体のみによって構成される裸導線(比較例)を、(c)は本実施の形態における平角導線を示す。(b)は,帯状導体に磁性体のみを設けた別の比較例であるが、(c)で示された平角導線の非磁性絶縁体の厚さ、または幅を0(ゼロ)としたものと原理的に等価である。
【実施例】
【0032】
さらに、同図(c)の解析モデルでは平角導線の上下の磁性体4の材質は磁性コンポジット材料(Magnetic Composite Material)とし、非磁性絶縁体31、32は空隙(Vacant space)であるとした。また帯状導体2の材質は銅(Copper)であるとした。以下の実施例では、それぞれの形状および寸法を変化させたときの損失の変化を求めた。このとき、空隙の幅をw、厚さをtとした。
【実施例】
【0033】
本実施例では、非磁性絶縁体(Vacant space)の幅と厚みを変えたときの交流抵抗(Resistance R)を、FEM解析を用いて計算した。そのときの解析条件を表1に示した。

【表1】
JP2020136365A_000003t.gif

【実施例】
【0034】
表皮効果による損失の低減と近接効果による損失の低減とを個別に検討するために、電流と印加一様交流磁界の条件とをそれぞれ2通りに設定した。このとき、外部一様交流磁界の方向はy方向(紙面上下方向)であるとする。また、磁性体4(磁性コンポジット材料)として、特に低損失な材料として、アモルファス球粉(エプソンアトミックス株式会社、AW2-08,D50=2.6μm)とシリコーン樹脂(信越化学工業株式会社,KE-1031-A/B)を、磁性粉の体積充填率57vol.%で混合したものを使用した。複素比透磁率はインピーダンスアナライザ(Agilent(登録商標)4294A)を用いた実測値に基づく。
【実施例】
【0035】
(表皮効果の解析結果)
図5に交流電流を流した平角導線の空隙寸法をパラメータとする周波数ごとの抵抗特性を示した。20kHz~5MHzの広い周波数帯において、裸銅線に磁性コンポジット材料を塗布することで表皮効果に起因する平角導線の抵抗は低減する。さらに、上記周波数帯において、空隙(非磁性絶縁体)を設けた方が設けなかった場合(Without vacant space)と比較して抵抗低減効果が大きい。例えば、図5(c)(f=1MHz)において、w=2.2mm、t=0.08mmのときに抵抗の低減率は最大となり、裸線を用いた場合(比較例)と比べて29.8%も低減したことが示される。
【実施例】
【0036】
図5において、(a)はf=20kHz、すなわち外部磁界の周波数が20kHzのときの、(b)はf=300kHzのときの、(d)はf=5MHzのときの、それぞれにおける、抵抗の低減率を計算した結果を示したものである。いずれの場合においても、抵抗の低減率が最大となる非磁性絶縁体幅(w)は、帯状導体2の幅の0.50倍以上0.95倍以下の範囲にある。
【実施例】
【0037】
(近接効果の解析結果)
図6は一様交流磁界中に置かれた平角導線1の空隙寸法をパラメータとする、周波数f(=20kHz、300kHz、1MHz、5MHz)ごとの損失特性の計算結果を示したグラフである。f=20kHz~5MHzの広い周波数帯において、帯状導体2に磁性コンポジット材料(磁性体4)を塗布することにより、近接効果に起因する平角導線の損失が低減したことが認められる。また、上記周波数帯において、空隙(非磁性絶縁体)を設けない方があるいは非磁性絶縁体が薄い方が、損失低減効果がより大きくなる。例えば、図(c)(f=1MHz)においては、w=1.4mm、t=0.02mmのときに損失の低減率は最大80.6%となっている。
【実施例】
【0038】
ここで、非磁性絶縁体の厚み(t)と損失低減効果の関係において、図5の結果と図6の結果は互いに相反する関係にある。つまり、表皮効果に着目するとtが厚い(極端には非磁性絶縁体の上に磁性体が設けられていない)方が抵抗は小さくなる。一方で近接効果に着目すれば、tが薄い(極端には非磁性絶縁体が設けられていない)方が、損失がより低減する。しかし、実際に巻線部品や基板配線に使用される平角導線は、交流電流が流れている状態でかつ外部からの交流磁界に晒される。そのため表皮効果と近接効果のトレードオフの条件を求めておく必要がある。
【実施例】
【0039】
以下、表皮効果と近接効果の両方が存在する場合の解析結果について説明する。
〈解析条件〉
解析モデルは図4と同様のものを使用した。詳細な解析条件を表2に示す。表皮効果および近接効果が同時に発生している際の損失低減を検討するために、電流と一様交流磁界を両方設定した。また、損失低減効果の磁界強度に対する依存性を確認するために、一様交流磁界の強度を変化させた。

【表2】
JP2020136365A_000004t.gif

【実施例】
【0040】
〈解析結果〉
図7に解析結果を示す。平角導線の空隙寸法(w、t)をパラメータとする周波数ごとの損失特性を示した。図5と比較すると、すべての周波数で傾向はおおむね一致している。これは、平角導線に流れている電流に対して、印加している一様交流磁界の値(Hy=20kA/m)が非常に大きい、すなわち表皮効果に起因する損失よりも近接効果に起因する損失の方が大きい場合を想定しており、図6の条件により近いためである。
【実施例】
【0041】
よって図6と同様、20kHz~5MHzの広い周波数帯において、裸銅線に磁性コンポジット材料を塗布することで表皮効果に起因する平角導線の損失が低減する。このとき、f=1MHz、w=1.4mm、t=0.02mmにおいて損失の低減率は80.6%となる(図7(c))。
【実施例】
【0042】
一様交流磁界が弱い場合(Hy=1kA/m)の損失を計算した結果を図8に示す。図7と異なり、空隙寸法特に厚みtが大きい方が損失の低減率が大きくなる。損失の原因のうち表皮効果に起因する部分が相対的に大きくなるからである。ちなみに、20kHz~5MHzの周波数において、w=1.4mm、t=0.08mmのとき、損失の低減率が最大となった。
【実施例】
【0043】
図9に裸銅線(比較例)と磁性コンポジット材料を塗布した平角導線(本実施の形態)との損失対印加一様交流磁界強度特性を示した。図9において、平角導線に印加される周波数1MHzの外部一様交流磁界(Hy)の強度に依存して近接効果に起因する損失の割合が大きくなり、磁性コンポジット材料(磁性体4)の塗布による損失低減効果の割合が大きくなる。
【実施例】
【0044】
例えば、印加一様交流磁界Hy=0A/mのとき(近接効果が無いとき)、空隙の寸法が、w=2.2mmおよびt=0.08mmにおける損失の低減率は高々31.6%であった。しかし、Hy=2kA/mのとき、w=2.2mm、t=0.02mmにおける低減率は68.4%まで向上する。さらに、Hy=10kA/mのとき、w=1.4mm、t=0.02mmにおける損失の低減率は79.9%であり、Hy=20kA/mのとき、w=1.4mm、t=0.02mmにおける損失の低減率は80.6%に達した。
【実施例】
【0045】
以上の結果から、非磁性絶縁体の幅wについては、帯状導体2の幅の0.50倍以上0.95倍以下、厚みtについてはこれを覆う磁性体の厚みとの和の0.1倍以上0.9倍以下であれば、1kA/m~20kA/mの外部磁界Hyが存在する場合であっても、表皮効果と近接効果による損失を低減することができる、と言える。
【実施例】
【0046】
すなわち、本実施例において非磁性絶縁体(空隙)31、32の存在は表皮効果と近接効果の両方の抑制に有効であり、外部磁界の強度に応じて最適な空隙寸法が違ってくる。なお、図5(c)(表皮効果のみ)の損失低減率と図8のHy=0A/mにおける損失低減率の間に1.8%の差が認められる。これは、通常の交流電流通電時の解析と外部磁界印加時の解析とで解析領域の境界条件の設定に若干の差異があることに起因する。
【実施例】
【0047】
以上、本実施例によれば、表皮効果と近接効果に起因する平角導線の損失を同時に低減することができる。例えば、一様交流磁界中に置かれ、かつI=5Aとして、周波数f=1MHzのとき、空隙(非磁性絶縁体)の寸法をw=1.4mm、t=0.02mmとしたとき、80.6%の損失低減効果が得られる。なおHyを変化させたとき、損失低減率が最大となる空隙寸法が変化する。すなわち、本実施の形態の構造は、表皮効果と近接効果の両者の抑制に有効であり、平角導線のアプリケーションに応じて最適な空隙寸法を検討する余地がある。
【実施例】
【0048】
なお,磁性コンポジット材料の透磁率が損失特性に与える影響は記載していないが,透磁率が大きいほど磁性コンポジット材料の塗布は薄くてよいと推測される。
【実施例】
【0049】
以上の実施例では、電気的な特性についてのみ触れたが、本実施の形態の平角導線は、帯状導体に非磁性絶縁体のシート、またはテープを貼り付けてから磁性塗布を行うことで、工業的に容易に空隙を有した磁性体の塗布を行うことができるのも特徴のひとつである。また、非磁性絶縁体(空隙)は比重が大きい鉄系金属を含まないため、より軽量である。さらには、非磁性絶縁体に放熱性が良い樹脂を使用することで、放熱面で有利である、といった構造上の利点も有している。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、トランスやインダクタ、モータの巻線、基板配線やバスバー等、電気電子機器や送配電に用いる、汎用的な線材として利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 平角導線
2 帯状導体
21 (帯状導体2の一方の)面
22 (帯状導体2の他方の)面
31、32 非磁性絶縁体
4 磁性体
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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