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明細書 :振動発電装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年5月9日(2019.5.9)
発明の名称または考案の名称 振動発電装置
国際特許分類 H02P   9/00        (2006.01)
H02K  35/02        (2006.01)
FI H02P 9/00 Z
H02K 35/02
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2018-528891 (P2018-528891)
国際出願番号 PCT/JP2017/026446
国際公開番号 WO2018/016620
国際出願日 平成29年7月21日(2017.7.21)
国際公開日 平成30年1月25日(2018.1.25)
優先権出願番号 2016143534
優先日 平成28年7月21日(2016.7.21)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】増田 新
出願人 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100132883、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 泰司
【識別番号】100174388、【弁理士】、【氏名又は名称】龍竹 史朗
審査請求 未請求
テーマコード 5H590
Fターム 5H590AA02
5H590CA30
5H590CD01
5H590CE05
5H590HA02
5H590HA09
5H590HA19
5H590JA02
5H590JB02
要約 負性インピーダンス変換回路(26)は、非線形振動子(50)に振動を与える。スイッチ切替部(24)は、非線形振動子(50)の振動の振幅が予め設定された閾値以上の場合、負性インピーダンス変換回路(26)が非線形振動子(50)に非接続である第1状態にし、非線形振動子(50)の振動の振幅が閾値未満の場合、負性インピーダンス変換回路(26)が非線形振動子(50)に接続され、非線形振動子(50)を励振する第2状態にする。振幅・周波数検出部(41)は、非線形振動子(50)の振動周波数を検出する。閾値設定部(4212)は、非線形振動子(50)の複数動作点共存帯域を含む励振部が励振する周波数帯域に振動周波数が含まれるか否かに応じて、閾値を設定する。
特許請求の範囲 【請求項1】
質量要素と非線形ばね要素とを有する非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、
前記非線形振動子に振動を与える励振部と、
前記非線形振動子の振動の振幅が予め設定された閾値以上の場合、前記励振部が前記非線形振動子に非接続である第1状態にし、前記非線形振動子の振動の振幅が前記閾値未満の場合、前記励振部が前記非線形振動子に接続され、前記非線形振動子を励振する第2状態にする状態切替部と、
前記振動源の振動周波数を検出する周波数検出部と、
前記非線形振動子が複数の動作点をとりうる複数動作点共存帯域を含む励振部が励振する周波数帯域に、前記振動周波数が含まれるか否かに応じて、前記閾値を設定する閾値設定部と、を備える、
振動発電装置。
【請求項2】
前記非線形振動子の振動周波数と前記振動周波数に対応する閾値との相関関係を示す相関情報を記憶する相関情報記憶部を更に備え、
前記閾値設定部は、前記相関情報を参照して、前記閾値を、前記振動周波数に応じた値に設定する、
請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記複数動作点共存帯域の小振幅安定点よりも高く、大振幅安定点よりも低く設定されている、
請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項4】
前記閾値設定部は、前記複数動作点共存帯域を含む励振部が励振する周波数帯域以外の周波数帯域に前記振動周波数が含まれる場合、前記閾値を第1閾値に設定し、前記励振部が励振する周波数帯域に前記振動周波数が含まれる場合、前記閾値を第1閾値よりも大きい第2閾値に設定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の振動発電装置。
【請求項5】
前記複数の動作点は、安定な小振幅振動動作点および大振幅振動動作点を含み、
前記第1閾値は、0であり、
前記第2閾値は、前記非線形振動子が前記小振幅振動動作点で振動するときの振動振幅よりも大きい、
請求項4に記載の振動発電装置。
【請求項6】
前記閾値設定部は、前記複数動作点共存帯域を含む励振部が励振する周波数帯域および前記閾値の大きさを適応的に変化させる、
請求項1に記載の振動発電装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギハーベスティング(環境発電)の注目度が増している。環境発電に用いるエネルギは、太陽光や照明光等の光、機械や構造物の発する振動、熱等の身の回りにある密度の小さいエネルギであり、この通常捨てられるエネルギを効率よく電力に変換し活用するものである。
【0003】
振動エネルギを電力に変換する共振型の振動発電装置は、質量要素とばね要素から成る振動子と電気機械変換器を組み込んで構成される。振動する機械などの振動源に振動発電装置を機械的に結合し、振動源の振動により振動子を機械的に共振させて電気機械変換器で振動源の振動エネルギの一部を電気エネルギに変換する。
【0004】
このような振動発電装置としては、電気機械変換器として、電磁型変換器を用いたもの、圧電素子を用いたもの、磁歪素子を用いたものなどが考案され、また、振動子は、板バネ、コイルばね、振り子などをばね要素として用いた線形振動子を有するものが提案されている(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)。或いは、永久磁石による吸引力や斥力を復元力として用いる磁気ばねを用いた振動発電装置も提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
これらの振動発電装置は、振動子の力学的エネルギを電気エネルギに変換するいわゆる電気機械変換器を備え、振動源の振動周波数と振動子の固有振動周波数とを一致させて共振させることで振動子の振動振幅を大きくしている。電気機械変換器は、振動子の振動振幅が大きいほど大きな発電電力を生じる。振動子の共振周波数での振動振幅を大きくするには、振動子の機械損失を低くする、即ち、振動子の機械的Q値が大きくなるように振動子を設計することが好ましい。但し、振動子の機械的Q値が大きくなると、その分、有効動作帯域が縮小し,振動源の振動周波数と振動子の固有振動周波数がずれたときの発電性能の低下が顕著になってしまう。特に、現実に存在する振動源の多くは、振動周波数が経時的に変動する。従って、振動発電装置において、振動子の機械的Q値を大きく設計することには限度がある。
【0006】
また、振動源の振幅変動に応じて振動子の動作を変化させる制御回路を備えた振動発電装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。この振動発電装置は、電磁型の電気機械変換器を備えており、振動源の振幅変動に応じて電気機械変換器の特性を調節する。但し、この振動発電装置は、振動源の振動周波数が変動した場合は発電電力が低下してしまう。
【0007】
更に、複数の振動子を備え、振動源の振動周波数の変動に対して、最適な振動子に切り替える可変容量型の振動発電装置が提案されている(特許文献4参照)。ところが、特許文献4に記載された振動発電装置は、振動源の振動周波数が連続的に変動する場合に十分に最適化されない虞がある。また、振動子の動作を能動的に制御することにより、任意の振動源に対応して振動子が共振した状態を実現する手法が提案されている(特許文献5参照)。ところが、特許文献5に記載された技術では、振動源の速度を計測するセンサが必要となり、構成が複雑になる虞がある。
【0008】
これに対して、質量要素と非線形ばね要素とを有する非線形振動子と、非線形振動子で生じる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、を備える共振型の振動発電装置が提案されている(例えば特許文献6参照)。この振動発電装置は、非線形ばね要素を使用することにより,機械的Q値を大きくしつつ有効動作帯域を広くとることを可能にする。しかし、非線形振動子は、共振周波数帯域において、大振幅振動動作点と小振幅振動動作点とを共存的にとりうる。そこで、この振動発電装置は、予め非線形振動子の振幅閾値を設定し、非線形振動子の振動振幅が振幅閾値未満の場合、電気機械変換器から見た出力側のインピーダンスを負にすることにより電気機械変換器を介して非線形振動子側へエネルギを環流させる。これにより、非線形振動子を励振して動作点を大振幅振動動作点に強制的に変化させることにより、発電効率を高めている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2002-281727号公報
【特許文献2】特開2005-33917号公報
【特許文献3】特開2003-199313号公報
【特許文献4】特開2005-137071号公報
【特許文献5】特開2009-17769号公報
【特許文献6】特開2012-60864号公報
【0010】

【非特許文献1】S. P. Beeby, M. J. Tudor, N. M. White, Energy Harvesting Vibration Sources for Microsystems Applications, Meas. Sci. Technol., Vol. 17 (2006) pp. R175-R195.
【非特許文献2】P. D. Mitcheson, E. M. Yeatman, G. K. Rao, A. S. Holmes, T. C. Green, Energy Harvesting from Human and Machine Motion for Wireless Electronic Devices, Proc. of the IEEE, Vol. 96, No. 9 (2008) pp. 1457-1486.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献6に記載された振動発電装置では、振動振幅閾値が振動源の振幅や周波数の大きさに関わらず一定である。従って、振動源の振動周波数が非線形振動子の複数動作点共存帯域に含まれない場合にも、非線形振動子の振動振幅が振幅閾値以下であるため、非線形振動子が励振されてしまう。この場合、振動発電装置は、非線形振動子側へエネルギを環流させ続けることになり、エネルギが無駄に消費されてしまうという問題がある。さらに、振動源の振動周波数が非線形振動子の複数動作点共存帯域に含まれる場合においても、しきい値の設定が不適切である場合、振動源に同期しない概周期解が生起される場合があり、この場合においても、振動発電装置は、非線形振動子側へエネルギを環流させ続けることになり、エネルギが無駄に消費されてしまうという問題がある。
【0012】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、無駄なエネルギ消費が抑制された振動発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る振動発電装置は、
質量要素と非線形ばね要素とを有する非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、
前記非線形素子に振動を与える励振部と、
前記非線形振動子の振動の振幅が予め設定された閾値以上の場合、前記励振部が前記非線形振動子に非接続である第1状態にし、前記非線形振動子の振動の振幅が前記閾値未満の場合、前記励振部が前記非線形振動子に接続され、前記非線形振動子を励振する第2状態にする状態切替部と、
前記振動源の振動周波数を検出する周波数検出部と、
前記非線形振動子が複数の動作点をとりうる複数動作点共存帯域を含む励振部が励振する周波数帯域に、前記振動周波数が含まれるか否かに応じて、前記閾値を設定する閾値設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、状態切替部が、非線形振動子の振幅が予め設定された閾値以上の場合、励振部が非線形振動子に非接続である第1状態にし、非線形振動子の振動の振幅が閾値未満の場合、励振部が非線形振動子に接続され、非線形振動子を励振する第2状態にする。そして、閾値設定部が、非線形振動子が複数の動作点をとりうる複数動作点共存帯域を含む励振部が励振する周波数帯域に、振動周波数が含まれるか否かに応じて、閾値を設定する。これにより、例えば非線形振動子の振動周波数が複数動作点共存帯域に含まれない場合に、閾値設定部が閾値レベルをゼロに設定するようにすれば、非線形振動子の振動周波数が複数動作点共存帯域に対応して設置された周波数帯域とに含まれない場合、励振部が非線形振動子に接続されない(つまり、非線形振動子は発電状態になり、励振されない)。従って、非線形振動子の振動周波数が複数動作点共存帯域を含む励振部が励振する周波数帯域に含まれない場合に、出力回路から非線形振動子へ無駄にエネルギが還流することを防止でき、無駄なエネルギ消費が抑制される。また、例えば非線形振動子の振動周波数が励振部が励振する周波数帯域に含まれる場合、閾値設定部が閾値を、振動源の振幅と周波数とに応じてあらかじめ定めておいた適切な値に設定することにより、概周期解の生起を抑制し、出力回路から非線形振動子へ無駄にエネルギが還流することを防止でき、無駄なエネルギ消費が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る振動発電装置の構成図である。
【図2A】実施の形態に係る非線形振動子の非線形ばね特性を示す図である。
【図2B】実施の形態に係る非線形振動子と線形振動子の周波数特性を示す図である。
【図3】実施の形態に係る制御部を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る非線形振動子の振動振幅と、振幅閾値と、の振動周波数依存性を示す図である。
【図5】実施の形態に係る振動発電装置の模式図である。
【図6】実施の形態に係る制御部が実行する電圧閾値制御処理を示すフローチャートである。
【図7A】比較例に係る振動発電装置の振動周波数依存性を示す図である。
【図7B】実施の形態に係る振動発電装置の振動周波数依存性を示す図である。
【図8A】励振部を備えない振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図8B】比較例に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図8C】実施の形態に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図9】振動発電装置の発電機における累積発電量を示す図である。
【図10A】励振部を備えない振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図10B】比較例に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図10C】実施の形態に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図11】振動発電装置の発電機における累積発電量を示す図である。
【図12A】励振部を備えない振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図12B】比較例に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図12C】実施の形態に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図13】振動発電装置の発電機における累積発電量を示す図である。
【図14A】励振部を備えない振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図14B】比較例に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図14C】実施の形態に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図15】振動発電装置の発電機における累積発電量を示す図である。
【図16A】励振部を備えない振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図16B】比較例に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図16C】実施の形態に係る振動発電装置の場合の非線形振動子の変位と発電機の負荷抵抗の履歴を示す図である。
【図17】振動発電装置の発電機における累積発電量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る振動発電装置について図面を参照しながら説明する。

【0017】
本実施の形態に係る振動発電装置は、図1に示すように、電磁振動エネルギ変換器10と、充電回路(出力回路)18と、蓄電部22と、負性インピーダンス変換回路26と、スイッチ38と、スイッチ切替部(状態切替部)24と、振幅・周波数検出部(周波数検出部)41と、振幅検出部25と、制御部42と、を備える。なお、図1においてuは振動源100の変位の方向を表し、xは可動磁石14の振動源100に対する相対的な変位の方向を表す。電磁振動エネルギ変換器10は、筒体56と、筒体56の筒軸方向の両端部に配置された一対の固定磁石51、52と、固定磁石51、52の間に同極が対向するように筒体56内に配置された可動磁石14と、コイル16と、検出コイル161と、を有する。電磁振動エネルギ変換器10は、振動源100に固定されている。振動源100は、例えば機械や動く構造体、人体が挙げられる。可動磁石14は、図1の矢印AR1方向に変位する質量要素に相当する。固定磁石51、52と可動磁石14との間には、磁気ばね(非線形ばね要素)が形成されている。このように、可動磁石14と固定磁石51、52とは、質量要素と磁気ばね要素とを有する非線形振動子50を構成する。また、可動磁石14とコイル16とは、振動源100から非線形振動子50に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電磁誘導型の発電機(電気機械変換器)Gを構成する。負性インピーダンス変換回路26と電気機械変換器Gは非線形振動子50を励振する励振部を構成する。

【0018】
非線形振動子50は、図2Aに示すように、変位xの絶対値が大きくなるに従って次第に復元力F(x)の傾きが大きくなるいわゆるハードニング特性を有する磁気ばねにより質量要素である可動磁石14が支持された構成を有する。非線形振動子50の振動振幅aの振動周波数依存性は、図2Bの曲線S2に示すようになる。なお、図2Bは、正弦波加振に対する振動振幅aを示している。線形振動子の振動振幅aの振動周波数依存性は、図2Bの曲線S1に示すように、共振周波数(ω)で最大となり共振周波数の両側で急に低下している。これに対して、非線形振動子50の振動振幅aの振動周波数依存性は、共振峰が高周波側に折れ曲がったような曲線S2で示される。この共振峰の折れ曲がりにより、振動振幅aが規定の振幅(最大振幅の1/√2に相当する振幅)以上になる振動周波数の帯域(以下、「共振周波数帯域」と称する。)BW2は、線形振動子の共振周波数帯域BW1よりも広くなる。

【0019】
また、図2Bに示すように、非線形振動子50の振動周波数が周波数帯域BW3(以下、「複数動作点共存帯域」と称する。)に含まれる場合、非線形振動子50は、比較的安定な大振幅振動動作点(図2B中のM1参照)および小振幅振動動作点(図2B中のM2参照)を含む複数の動作点をとりうる。非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3に含まれる場合、非線形振動子50は、振動源100の振動の初期条件に応じて大振幅振動動作点と小振幅振動動作点とのいずれかに収束する。また、振動源100の振動状態により、非線形振動子50のとりうる動作点が大振幅振動動作点と小振幅振動動作点との間で移り変わるいわゆるジャンプ現象が発生することが知られている。非線形振動子50の動作点が小振幅振動動作点で安定した場合、振動発電装置の発電能力が著しく低下してしまう。そこで、本実施の形態に係る振動発電装置では、負性インピーダンス変換回路26(励振部)を用いて、非線形振動子50の動作点を、大振幅振動動作点で安定させる。詳細は後述する。

【0020】
図1に戻って、充電回路18は、発電機Gから入力される電気エネルギを蓄電部22へ出力する。充電回路18は、整流回路BR18と、平滑用のコンデンサC18と、電圧変換回路181と、を有する。整流回路BR18は、ダイオードブリッジから構成され、その入力端がコイル16の2つの出力端間に接続されている。コンデンサC18は、整流回路BR18の出力端間に接続されている。電圧変換回路181は、DCDCコンバータや力率改善回路を含み、コンデンサC18の両端間に生じる直流電圧を昇圧または降圧して蓄電部22へ出力する。この充電回路18と蓄電部22とは、発電機Gに接続される負荷R18と看做すことができる。

【0021】
蓄電部22は、二次電池から構成され、充電回路18により充電される。また、蓄電部22は、負性インピーダンス変換回路26に接続され、負性インピーダンス回路26が発電機Gに接続された状態において負性インピーダンス変換回路26へ電力を供給する。

【0022】
負性インピーダンス変換回路26は、オペアンプOP26と、抵抗R261、R262、R263と、から構成されている。オペアンプOP26のプラス側の入力端は、スイッチ38を介してコイル16の一端側に接続され、マイナス側の入力端は、抵抗R263を介してコイル16の他端側に接続されている。また、オペアンプOP26の出力端は、抵抗R261を介してプラス側の入力端に接続され、抵抗R262を介してマイナス側の入力端に接続されている。更に、オペアンプOP26は、蓄電部22に接続され、蓄電部22から駆動電力の供給を受ける。負性インピーダンス変換回路26の負性抵抗値は、スイッチ38が閉状態のときに発電機Gから見た出力側のインピーダンスが負の値となるように設定されている。即ち、負性インピーダンス変換回路26は、発電機Gに接続された状態において、発電機Gから見た出力側のインピーダンスを負にする。

【0023】
スイッチ38は、n型トランジスタ、FET等の半導体素子、またはリードリレーのようなスイッチング素子から構成され、スイッチ切替部24により開閉される。

【0024】
上記の説明より、検出コイル161の出力電圧は可動磁石14の振動振幅に比例する。スイッチ切替部24は、検出コイル161の出力電圧の振幅値が予め設定された電圧閾値(直流であり、振動閾値に相当する)以上の場合、スイッチ38を開状態にして、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに非接続である状態(第1状態、発電状態のみで励振状態がない状態)にする。一方、スイッチ切替部24は、検出コイル161の出力電圧の振幅値が電圧閾値未満の場合、スイッチ38を閉状態にして、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに接続された状態(第2状態、少なくとも励振状態が存在)にする。スイッチ切替部24は、比較器241と、駆動回路242と、を有する。比較器241のプラス側の入力端は、制御部42に接続され、比較器241のマイナス側の入力端は、整流回路BR18の高電位側の出力端に接続されている。比較器241のプラス側の入力端には、制御部42から電圧閾値に相当する大きさの電圧が入力される。比較器241のマイナス側の入力端には、検出コイル161の出力電圧の振幅値に相当する大きさの電圧が入力される。比較器241は、マイナス側の入力端の電圧値がプラス側の入力端の電圧閾値未満の場合、イネーブル信号を駆動回路242へ出力する。一方、比較器241は、マイナス側の入力端の電圧値がプラス側の入力端の電圧閾値以上の場合、ディセーブル信号を駆動回路242へ出力する。駆動回路242は、比較器241からイネーブル信号が入力されると、スイッチ38のターンオン電圧よりも高い電圧をスイッチ38へ出力し、比較器241からディセーブル信号が入力されると、スイッチ38のターンオン電圧よりも低い電圧をスイッチ38へ出力する。

【0025】
振幅・周波数検出部41は、振動源100に取り付けられた加速度センサ41aにより取得される加速度波形から、振動源100の振動振幅および周波数を検出する。振幅・周波数検出部41は、振動源100の振動周波数を示す周波数信号を制御部42へ出力する。

【0026】
振幅検出部25は、検出コイル161の出力電圧の振幅値を検出する。

【0027】
制御部42は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)421と、主記憶部422と、補助記憶部423と、第1インタフェース424と、第2インタフェース425と、DAコンバータ(以下、「DAC」と称する。)426と、各部を接続するバス427と、を有する。主記憶部422は、揮発性メモリから構成され、CPU421の作業領域として使用される。補助記憶部423は、不揮発性メモリから構成され、CPU421が実行する後述の電圧閾値制御処理のプログラムを記憶する。第1インタフェース424は、振幅・周波数検出部41に接続され、振幅・周波数検出部41から入力される周波数信号を周波数の値を示す周波数情報に変換する。第2インタフェース425は、CPU421かバス427を介して入力される電圧値を示す電圧値情報をDAC426へ出力する。DAC426は、第2インタフェース425から入力される電圧値情報を、当該電圧値情報が示す電圧値を有する電圧信号に変換してスイッチ切替部24へ出力する。

【0028】
また、CPU421が、補助記憶部423が記憶する電圧閾値制御処理のプログラムを主記憶部422に読み出して実行することにより、周波数取得部4211、閾値設定部4212として機能する。また、補助記憶部423は、非線形振動子50の振動振幅および周波数と当該振動振幅および周波数に対応する電圧閾値との相関関係を示す相関情報を記憶する相関テーブル(相関情報記憶部)4231を有する。

【0029】
相関情報が示す電圧閾値は、非線形振動子50の複数動作点共存帯域に対応して設置された周波数帯域以外の周波数帯域において0V(第1電圧値)であり、複数動作点共存帯域に対応して設置された周波数帯域において0Vよりも大きい電圧値(第2電圧値)である。また、複数動作点共存帯域BW3における電圧閾値は、非線形振動子50が複数動作点共存帯域において小振幅振動動作点で振動するときの検出コイル161の出力電圧の振幅値よりも大きく、大振幅振動動作点の振動振幅よりも小さい振幅で振動する場合の検出コイル161の出力電圧の振幅値に相当する電圧値に設定されている。例えば、大振幅振動動作点で振動する場合の検出コイル161の出力電圧振幅の90~95%程度に設定すれば効果的である。

【0030】
また、相関情報は、非線形振動子50の振動振幅の振動周波数依存性および振動源の振幅に応じて適宜設定される。振動源の振幅に依存して、非線形振動子50の振動振幅の振動周波数依存性が、図4の曲線S21、S22、S23に示すように異なると、それに応じて複数動作点共存帯域BW31、BW32、BW33も異なる。この場合、相関情報は、図4の曲線ath21(ω)、ath22(ω)、ath23(ω)に示すような振幅閾値の振動周波数依存性を反映した電圧閾値の周波数依存性を表すように設定される。即ち、電圧閾値は、複数動作点共存帯域BW31、BW32、BW33以外の周波数帯域において0Vである。また、電圧閾値は、複数動作点共存帯域BW31、BW32、BW33において、小振幅振動動作点で振動するときの検出コイル161の出力電圧の振幅値よりも大きく、大振幅振動動作点の振動振幅よりも小さい振幅で振動する場合の検出コイル161の出力電圧の振幅値に相当する電圧値に設定されている。例えば、大振幅振動動作点で振動する場合の検出コイル161の出力電圧振幅の90~95%程度に設定すれば効果的である。相関情報は、振動源100の振動状態を計測し、計測した振動源100の振動状態から予測される非線形振動子50の振動周波数特性から決定される。

【0031】
周波数取得部4211は、第1インタフェース424から、振幅・周波数検出部41により検出される非線形振動子50の振動周波数を示す周波数情報を取得する。

【0032】
閾値設定部4212は、複数動作点共存帯域に対応して設置された周波数帯域に非線形振動子50の振動周波数が含まれるか否かに応じて、電圧閾値を設定する。また、閾値設定部4212は、相関テーブル4231の相関情報を参照して、電圧閾値を、非線形振動子50の振動周波数に応じた電圧値に設定する。こうして、閾値設定部4212は、複数動作点共存帯域BW3以外の周波数帯域に非線形振動子50の振動周波数が含まれる場合、電圧閾値を0V(第1電圧値)に設定する。そして、閾値設定部4212は、複数動作点共存帯域BW3に振動周波数が含まれる場合、電圧閾値を0Vよりも大きい電圧値(第2電圧値)に設定する。この電圧値は、前述のように、非線形振動子50が複数動作点共存帯域BW3において小振幅振動動作点で振動するときの振幅よりも大きい振幅で振動する場合の検出コイル161の出力電圧の振幅値に相当する電圧値である。

【0033】
次に、本実施の形態に係る振動発電装置の基本的な動作について説明する。振動発電装置は、図5に示すように、質量要素である可動磁石14と振動源100との間に、非線形ばね要素SPと機械減衰要素Cと発電機Gとが並列に接続されたものとして表すことができる。なお、図5において、uは振動源100の変位の方向を表し、xは質量要素である可動磁石14の振動源100に対する相対的な変位の方向を表す。非線形ばね要素SPは、固定磁石51、52と可動磁石14との間に形成される磁気ばねに相当する。非線形ばね要素SPと機械減衰要素Cとから非線形振動子50が構成される。また、スイッチ38は、発電機Gを、充電回路18と蓄電部22とから構成される負荷R18に接続された状態と、負荷インピーダンス変換回路26に接続された状態と、のいずれかに切り替えるスイッチとして表すことができる。

【0034】
そして、振動源100がu方向に振動すると、非線形振動子50に振動が伝達し、質量要素である可動磁石14が振動源100に対してx方向に相対的に変位する形で振動する。このとき、可動磁石14の振動により生じる力学的エネルギの一部が、発電機Gにより電気エネルギに変換される。発電機Gの発電電力の値は、可動磁石14の振動振幅の2乗に比例し、可動磁石14の振動振幅が大きくなると、それに伴い、発電機Gの出力電圧の振幅値が増加する。

【0035】
スイッチ切替部24は、検出コイル161の出力電圧の振幅値と、制御部42から入力される電圧閾値と、の大小関係に応じて、スイッチ38を切り替える。スイッチ切替部24は、検出コイル161の出力電圧の振幅値が電圧閾値以上の場合、スイッチ38を負荷R18側に接続する。即ち、スイッチ切替部24は、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに非接続である状態(第1状態、発電状態のみ)にする。これにより、負荷R18を構成する充電回路18は、発電機Gからの電力供給を受けて蓄電部22を充電する。

【0036】
一方、スイッチ切替部24は、検出コイル161の出力電圧の振幅平均値が電圧閾値未満の場合、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに接続された状態(第2状態、少なくても励振状態が存在)にする。これにより、蓄電部22から発電機Gを介して非線形振動子50にエネルギが環流され、非線形振動子50が励振される。この非線形振動子50の励振のためのエネルギは、蓄電部22に貯えられたエネルギの一部を利用することになり、発電機Gでの発電により生み出されたエネルギの一部が消費されてしまうことになる。但し、励振により非線形振動子50が大振幅振動動作点に移行した後は、発電機Gの発電電力が格段に増大する。また、後述するように、電圧閾値は、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3以外の周波数帯域に含まれる場合、0Vに設定される。従って、励振による蓄電部22に蓄えられたエネルギの消費はごく僅かである。

【0037】
このように、振動発電装置は、検出コイル161の出力電圧の振幅値が電圧閾値以上の場合、蓄電部22を充電し、検出コイル161の出力電圧の振幅値が電圧閾値未満になった場合、非線形振動子50を励振する動作をする。そして、振動発電装置は、電圧閾値を非線形振動子50の振動周波数に応じて変化させる。なお、非線形振動子50の振動振幅を検出する手段としては、前述のように、検出コイル161によるものに限定されるものではなく、他の如何なる手段を用いてもよい。

【0038】
次に、電圧閾値を非線形振動子50の振動周波数に応じて変化させるために閾値設定部4212が実行する電圧閾値制御処理について、図5および図6を参照しながら説明する。この電圧閾値制御処理は、電圧閾値制御処理のプログラムが起動したことを契機として開始される。

【0039】
まず、周波数取得部4211が、振幅・周波数検出部41により検出された振動源100の振動周波数を取得する(ステップS101)。

【0040】
次に、閾値設定部4212は、相関テーブル4231に基づいて、振動源の振動振幅および周波数に対応する電圧閾値を設定する(ステップS102)。閾値設定部4212は、取得した振動周波数が複数動作点共存帯域に含まれない場合、相関テーブル4231に基づいて、電圧閾値を0Vに設定する。これにより、検出コイル161の出力電圧の振幅値の大きさに関わらず、図5に示す負性インピーダンス変換回路26が、発電機Gに接続されない状態となる。即ち、検出コイル161の出力電圧の振幅値の大きさに関わらず、発電機Gから充電回路18へ電力供給され、充電回路18が蓄電部22を充電する。一方、閾値設定部4212は、取得した振動周波数が複数動作点共存帯域に含まれる場合、相関テーブル4231に基づいて、電圧閾値を、適切な電圧値に設定する。

【0041】
続いて、閾値設定部4212は、設定した電圧閾値を示す電圧閾値情報を、第2インタフェース425へ出力する(ステップS103)。第2インタフェース425は、電圧閾値情報をプロトコル変換してDAC426へ出力する。DAC426は、第2インタフェース425から入力される電圧閾値情報をディジタルアナログ変換してスイッチ切替部24へ出力する。

【0042】
その後、周波数取得部4211は、電圧閾値制御処理を終了するよう指令する終了指令が入力されたか否かを判定する(ステップS104)。終了指令は、ユーザが制御部42に接続された入力装置(図示せず)に対して電圧閾値制御処理を終了させるための操作を実行することにより主記憶部422に記憶される。そして、周波数取得部4211は、主記憶部422が終了指令を記憶している場合、終了指令が入力されたと判定する。周波数取得部4211により終了指令が入力されていないと判定されると(ステップS104:No)、再びステップS101の処理が実行される。一方、周波数取得部4211により終了指令が入力されたと判定されると(ステップS104:Yes)、電圧閾値制御処理が終了する。

【0043】
次に、本実施の形態に係る振動発電装置の非線形振動子50の振動周波数特性について、比較例に係る振動発電装置の非線形振動子の振動周波数特性と比較しながら説明する。比較例に係る振動発電装置の構成は、図1に示す構成と同様である。但し、電圧閾値が、非線形振動子50の振動周波数に依らず一定である。即ち、図7Aに示すように、非線形振動子50の振動振幅aに対する振幅閾値ath(ω)が、非線形振動子50の振動周波数に依らずに一定となる。なお、図7Aにおいて、丸印は非線形振動子50の振動振幅aを示し、実線は電圧閾値に対応する振幅閾値を示す。これにより、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3よりも高い周波数帯域BW4にある場合でも非線形振動子50が励振される。このため、非線形振動子50の振幅は、図7Aに示すように、周波数帯域BW4において、曲線S2で表される本来の非線形振動子50の振幅よりも大きくなる。この場合、励振による非線形振動子50の振幅増加分PL(図7A中のクロスハッチングで示した部分)に相当するエネルギが、無駄に消費されることになる。

【0044】
これに対して、本実施の形態に係る振動発電装置では、電圧閾値が、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3以外の場合、0Vである。即ち、図7Bに示すように、非線形振動子の振幅閾値ath(ω)は、非線形振動子50の振動周波数ωが複数動作点共存帯域BW3に含まれる場合のみ0Vよりも大きい電圧に設定されている。なお、図7Bにおいて、丸印は非線形振動子50の振動振幅aを示し、実線は電圧閾値に対応する振幅閾値を示す。これにより、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3に含まれる場合のみ非線形振動子50が励振される。このため、複数動作点共存帯域BW3以外の周波数帯域において、非線形振動子50を励振することによりエネルギが消費されることがない。

【0045】
次に、図7Aおよび図7Bに示す振動周波数ω、ω、ω、ω、ω近傍における非線形振動子50の変位と発電機Gの負荷抵抗との関係について説明する。ここでは、励振部を備えない振動発電装置、前述の比較例に係る振動発電装置および本実施の形態に係る振動発電装置それぞれの場合を比較しながら説明する。また、初期条件は共通であるとして、ωt/(2π)が20に到達した時点で非線形振動子50に外乱が入力される場合の振る舞いについて説明する。発電機Gの負荷抵抗は、発電機Gから蓄電部22へ電力が供給される場合、正となり、蓄電部22から非線形振動子50へエネルギが環流する場合、負となる。

【0046】
複数動作点共存帯域BW3より低い振動周波数ω近傍における非線形振動子50の変位と発電機Gの負荷抵抗とは、図8A乃至図8Cに示すような履歴を示す。ここで、図8Aは、励振部を備えない振動発電装置の場合、図8Bは前述の比較例に係る振動発電装置の場合、図8Cは本実施の形態に係る振動発電装置の場合の結果である。図8Aおよび図8Cに示すように、励振部を備えない振動発電装置および本実施の形態に係る振動発電装置における負荷抵抗ρ(t)は正の値で推移し、蓄電部22に貯えられたエネルギの損失が生じていない。一方、図8Bに示すように、比較例に係る振動発電装置の場合、非線形振動子50の変位振幅が閾値を下回ったときに、非線形振動子50を励振するために蓄電部22から非線形振動子50へエネルギが環流されることにより、負荷抵抗ρ(t)が負となっている。そして、図9に示すように、比較例に係る振動発電装置の場合、発電機Gでの累積発電量は時間の経過とともに減少していく。一方、本実施の形態に係る振動発電装置の場合、発電機Gでの累積発電量は励振部を備えない振動発電装置の場合と同様に時間の経過とともに増加していく。比較例に係る振動発電装置の場合、非線形振動子50が無駄に励振されることにより、大きなエネルギ損失が発生し累積発電量の減少が生じてしまう。

【0047】
複数動作点共存帯域BW3の低い振動周波数ω近傍における非線形振動子50の変位と発電機Gの負荷抵抗とは、図10A乃至図10Cに示すような履歴を示す。ここで、図10Aは、励振部を備えない振動発電装置の場合、図10Bは前述の比較例に係る振動発電装置の場合、図10Cは本実施の形態に係る振動発電装置の場合の結果である。図10Aに示すように、励振部を備えない振動発電装置の場合、大振幅振動動作中に外乱が加わると小振幅振動動作に遷移する。一方、図10Bおよび図10Cに示すように、比較例に係る振動発電装置および本実施の形態に係る振動発電装置の場合、外乱が加わって小振幅振動動作に遷移しようとしたときに非線形振動子50が励振される。このとき、発電機Gの負荷抵抗ρ(t)が一時的に負になる。その後、非線形振動子50は、外乱が加わる前の振幅を維持する。そして、図11に示すように、励振部を備えない振動発電装置の場合、外乱が加わった後、振幅の縮小に伴い、発電機Gにおける累積発電量の増加率が低下する。一方、比較例に係る振動発電装置および実施の形態に係る振動発電装置の場合、外乱が加わった後の累積発電量は、外乱が加わる前の累積発電量の増加率と同じ増加率で時間の経過とともに増加していく。但し、比較例に係る振動発電装置の場合、本実施の形態に係る振動発電装置に比べて、振動周波数ω近傍における閾値が高く、その分、小振幅振動動作から大振幅振動動作への遷移に時間がかかる。そして、発電機Gの負荷抵抗ρ(t)が負で推移する時間が長くなる分だけ、エネルギ損失が大きくなっている。

【0048】
複数動作点共存帯域BW3の中の振動周波数ω近傍における非線形振動子50の変位と発電機Gの負荷抵抗とは、図12A乃至図12Cに示すような履歴を示す。ここで、図12Aは、励振部を備えない振動発電装置の場合、図12Bは前述の比較例に係る振動発電装置の場合、図12Cは本実施の形態に係る振動発電装置の場合の結果である。図12Aに示すように、励振部を備えない振動発電装置の場合、大振幅振動動作中に外乱が加わると小振幅振動動作に遷移する。一方、図12Bおよび図12Cに示すように、比較例に係る振動発電装置および本実施の形態に係る振動発電装置の場合、外乱が加わって小振幅振動動作に遷移しようとしたときに非線形振動子50が励振される。このとき、発電機Gの負荷抵抗ρ(t)が一時的に負になる。その後、非線形振動子50は、外乱が加わる前の振幅を維持する。そして、図13に示すように、励振部を備えない振動発電装置の場合、外乱が加わった後、振幅の縮小に伴い、発電機Gにおける累積発電量の増加率が低下する。一方、比較例に係る振動発電装置および実施の形態に係る振動発電装置の場合、外乱が加わった後の累積発電量は、外乱が加わる前の累積発電量の増加率と同じ増加率で時間の経過とともに増加していく。但し、比較例に係る振動発電装置の場合、本実施の形態に係る振動発電装置に比べて、振動周波数ω近傍における閾値が低く、その分、小振幅振動動作から大振幅振動動作への遷移に時間がかかる。そして、発電機Gの負荷抵抗ρ(t)が負で推移する時間が長くなる分だけ、エネルギ損失が大きくなっている。

【0049】
複数動作点共存帯域BW3の中の高い振動周波数ω近傍における非線形振動子50の変位と発電機Gの負荷抵抗とは、図14A乃至図14Cに示すような履歴を示す。ここで、図14Aは、励振部を備えない振動発電装置の場合、図14Bは前述の比較例に係る振動発電装置の場合、図14Cは本実施の形態に係る振動発電装置の場合の結果である。図14Aに示すように、励振部を備えない振動発電装置の場合、与えた初期条件では大振幅動作に収束できず小振幅動作に収束するため、非線形振動子50の振幅が漸減していく。一方、図14Bに示すように、比較例に係る振動発電装置の場合、非線形振動子50の変位振幅が閾値を下回ったときに、その都度、非線形振動子50が励振される。このとき、発電機Gの負荷抵抗ρ(t)が一時的に負になる。また、図14Cに示すように、本実施の形態に係る振動発電装置の場合、外乱が加わったときに一時的に非線形振動子50が励振され、その後大振幅振動動作を継続する。そして、図15に示すように、励振部を備えない振動発電装置の場合、発電機Gの累積発電量が0.4程度まで上昇した後、略一定となる。但し、比較例に係る振動発電装置の場合、本実施の形態に係る振動発電装置に比べて、振動周波数ω近傍における閾値が低く、その分、小振幅振動動作から大振幅振動動作への遷移に十分な駆動が行われないため、発電機Gの累積発電量が0.4程度まで上昇した後、非線形振動子50が繰り返し励振されることに伴い、累積発電量が漸減していく。一方、本実施の形態に係る振動発電装置の場合、大振幅振動動作で安定した後、発電機Gにおける累積発電量が時間とともに増加していく。

【0050】
複数動作点共存帯域BW3の外の高い振動周波数ω近傍における非線形振動子50の変位と発電機Gの負荷抵抗とは、図16A乃至図16Cに示すような履歴を示す。ここで、図16Aは、励振部を備えない振動発電装置の場合、図16Bは前述の比較例に係る振動発電装置の場合、図16Cは本実施の形態に係る振動発電装置の場合の結果である。この振動周波数では小振幅動作しか存在しないため、図16Aに示すように、励振部を備えない振動発電装置の場合、非線形振動子50の応答は過渡状態を経て小振幅動作に収束する。一方、図16Bに示すように、比較例に係る振動発電装置の場合、非線形振動子50の変位振幅が閾値を下回ったときに、その都度、繰り返し非線形振動子50が励振される。このとき、発電機Gの負荷抵抗ρ(t)が一時的に負になる。また、図16Cに示すように、本実施の形態に係る振動発電装置の場合、励振部を備えない振動発電装置の場合と同様に非線形振動子50は励振されず、小振幅動作に収束する。そして、図17に示すように、比較例に係る振動発電装置の場合、発電機Gの累積発電量が0.15程度まで上昇した後、非線形振動子50が繰り返し励振されることに伴い、累積発電量が漸減していく。一方、励振部を備えない振動発電装置および本実施の形態に係る振動発電装置の場合、発電機Gにおける累積発電量の増加率が時間とともに減少しつつも時間とともに増加していく。比較例に係る振動発電装置の場合、非線形振動子50が無駄に励振されることにより、大きなエネルギ損失が発生し累積発電量の減少が生じてしまう。

【0051】
このように、比較例に係る振動発電装置の場合、振動周波数ω近傍、ω近傍、ω近傍で動作する場合、図9、図15および図17に示すように、蓄電部22から非線形振動子50へのエネルギの環流が繰り返し生じ、発電機Gにおける累積発電量が時間とともに減少してしまう。また、励振部を備えない振動発電装置の場合、振動周波数ω近傍、ω近傍、ω近傍で動作する場合、図11、図13および図15に示すように、非線形振動子50の振動振幅が減少してしまい、発電機Gにおける累積発電量の増加率が大幅に低下してしまう。これに対して、本実施の形態に係る振動発電装置の場合、振動周波数ω近傍、ω近傍、ω近傍、ω近傍、ω近傍の全てにおいて、発電機Gにおける累積発電量が時間とともに増加する。つまり、本実施の形態に係る振動発電装置は、励振部を備えない振動発電装置および比較例に係る振動発電装置に比べて、広い振動周波数の帯域において、発電機Gにおける無駄なエネルギ消費が抑制され、累積発電量が大きいという利点がある。

【0052】
以上説明したように、本実施の形態に係る振動発電装置によれば、スイッチ切替部24が、検出コイル161の出力電圧が予め設定された閾値以上の場合、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに非接続である第1状態にする。一方、スイッチ切替部24は、検出コイル161の出力電圧が閾値よりも小さい場合、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに接続された第2状態にする。そして、閾値設定部4212が、振幅・周波数検出部41により検出される振動周波数が、非線形振動子50が複数の動作点をとりうる複数動作点共存帯域BW3に含まれるか否かに応じて、閾値を制御する。これにより、例えば閾値設定部4212が、非線形振動子50の振動周波数が、複数動作点共存帯域BW3に含まれない場合に、閾値が0となるように、閾値を制御すれば、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3に含まれない場合、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに接続されない。従って、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3に含まれない場合に、充電回路18から発電機Gを介して非線形振動子50へ無駄にエネルギが還流することを防止でき、無駄なエネルギ消費が抑制される。

【0053】
また、本実施の形態に係る振動発電装置は、非線形振動子50の振動周波数と当該振動周波数に対応する電圧閾値との相関関係を示す相関情報を記憶する相関テーブル4231を備える。これにより、ユーザは、相関テーブル4231が記憶する相関情報を書き換えるだけで、電圧閾値の振動周波数依存性を変更することができる。従って、例えば振動発電装置に組み込む電磁振動エネルギ変換器10の変更に伴い非線形振動子50の振動振幅aの振動周波数依存性が変化した場合において、電圧閾値の振動周波数依存性を変更後の非線形振動子50に適合したものに比較的容易に変更することができる。

【0054】
(変形例)
以上、本発明の実施の形態では、振動発電装置1は、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3に入っているかどうかを判定して、発電動作と励振動作を決定している。但し、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、非線形振動子50および振動源100の特性変化に応じて、複数動作点共存帯域に対応して設置された周波数帯域および振動振幅の閾値の大きさを適応的に変化させる構成であってもよい。

【0055】
具体的には、振動発電装置が、非線形振動子の動作状態を検知するために、振動源100の振動波形を計測する振動波形計測部と、非線形振動子50の応答波形を計測する振動子応答波形計測部と、振動源100の振動波形と非線形振動子50の応答波形との位相差を検出する位相差検出部と、を備える。そして、閾値設定部が、位相差検出部により検出される位相差が一定値になるように、つまり、非線形振動子50の応答波形が振動源100の振動波形と同一周波数になる(同期する)ように、しきい値を適応的に制御する。この場合、振動源100の周波数が複数動作点共存帯域BW3に入っているかどうかの判定は不要となる。複数動作点共存帯域BW3外では振動源100の振動波形と非線形振動子50の応答波形との位相差は、±90°程度ずれ、複数動作点共存帯域BW3内では位相差が、±90°よりも小さい値になる。そして、閾値設定部は、位相差検出部により検出される位相差が±90°よりも小さい一定値になるような領域で、しきい値を適応的に制御する。これにより、振動源100の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3に入っているかどうかの判定が不要となる。

【0056】
実施の形態では、発電機Gが、可動磁石14とコイル16とから構成されるいわゆる電磁式の発電機である例について説明したが、振動エネルギを電気エネルギに変換するものであれば発電機Gの構成はこれに限定されるものではない。例えば発電機が、圧電素子を用いた発電機から構成されるものであってもよい。

【0057】
実施の形態では、発電機Gに負性インピーダンス変換回路26が接続された状態と接続されていない状態とを切り替えることにより、発電機Gから充電回路18へ電力供給されるモードと非線形振動子50が励振されるモードとに切り替える例について説明した。これに限らず、例えば、発電機と非線形振動子50を励振する励振回路とを別個に設けた構成で、励振モードの時に励振回路および励振部を動作させるものあってもよい。

【0058】
実施の形態では、閾値設定部4212が、相関テーブル4231を用いる例について説明したが、閾値設定部4212は、相関テーブル4231を用いる構成に限定されない。例えば閾値設定部4212が、相関テーブル4231に代えて、電圧閾値と振動周波数との関係式を示す関係式情報を用いる構成であってもよい。

【0059】
実施の形態では、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3以外の周波数帯域に含まれる場合、閾値設定部4212が、電圧閾値を0Vに設定する例について説明した。但し、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3以外の周波数帯域に含まれる場合の電圧閾値の大きさは、0Vに限定されない。非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3以外の周波数帯域に含まれる場合の電圧閾値の大きさは、非線形振動子50が小振幅振動動作点で振動するときの振動振幅よりも小さい振動振幅で振動する場合の発電機Gの出力電圧に相当する電圧値であれば0Vよりも大きい電圧値であってもよい。

【0060】
実施の形態では、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域に含まれる場合、電圧閾値が0Vよりも大きい電圧値である例について説明した。但し、電圧閾値の振動周波数依存性は、これに限定されるものではなく、例えば、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域を含み複数動作点共存帯域よりも広い周波数帯域に含まれる場合、電圧閾値が0Vよりも大きい電圧値であってもよい。また、上記の説明では0Vよりも大きい電圧閾値を設定した周波数帯域を非線形振動子50の複数動作点共存帯域と一致させているが、効率が若干低下することを認めれば、0Vよりも大きい電圧値を閾値を設定した周波数帯域を非線形振動子50の複数動作点共存帯域よりも広くしても、狭くしても、ずらせても良い。実験条件、環境によっても異なるが、非線形振動子50の複数動作点共存帯域と0Vよりも大きい電圧値を閾値を設定した周波数帯域とが帯域の10%程度ずれても発電効率は5%程度以内の低下に収まっている。つまり、従来の閾値の設定に比べ、複数動作点共存帯域を考慮した閾値を設定する本発明は発電効率向上という大きな効果が得られる。

【0061】
以上、本発明の各実施の形態および変形例(なお書きに記載したものを含む。以下、同様。)について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。

【0062】
本出願は、2016年7月21日に出願された、日本国特許出願特願2016-143534号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2016-143534号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、機械や動く構造体、人体等の振動源に取り付けられる振動発電装置として好適である。
【符号の説明】
【0064】
10:電磁振動エネルギ変換器、14:可動磁石、16:コイル、18:充電回路、22:蓄電部、24:スイッチ切替部、25:振幅検出部、26:負性インピーダンス変換回路、38:スイッチ、41:振幅・周波数検出部、41a:加速度センサ、42:制御部、50:非線形振動子、51,52:固定磁石、56:筒体、100:振動源、161:検出コイル、181:電圧変換回路、241:比較器、242:駆動回路、421:CPU、422:主記憶部、423:補助記憶部、424:第1インタフェース、425:第2インタフェース、426:DAC、427:バス、4211:周波数取得部、4212:閾値設定部、4231:相関テーブル、BR18:整流回路、C18:コンデンサ、G:発電機、OP26:オペアンプ、R18:負荷、R261,R262,R263:抵抗
図面
【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
13
【図10B】
14
【図10C】
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【図11】
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【図12A】
17
【図12B】
18
【図12C】
19
【図13】
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【図14A】
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【図14B】
22
【図14C】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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