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Specification :(In Japanese)粘弾性計測方法および装置

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)再公表特許(A1)
Date of issue May 9, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)粘弾性計測方法および装置
IPC (International Patent Classification) G01N  11/00        (2006.01)
FI (File Index) G01N 11/00 A
Demand for international preliminary examination (In Japanese)
Total pages 31
Application Number P2018-528915
International application number PCT/JP2017/026585
International publication number WO2018/016652
Date of international filing Jul 21, 2017
Date of international publication Jan 25, 2018
Application number of the priority 2016143260
Priority date Jul 21, 2016
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Designated state AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】青砥 隆仁
【氏名】向川 康博
Applicant (In Japanese)【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
Representative (In Japanese)【識別番号】110000822、【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
Request for examination (In Japanese)未請求
Abstract (In Japanese)【課題】物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で短時間に計測できる方法および装置を提供する。本方法は、被検体に弾性波と光を照射し、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を用いて、物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で計測する。具体的には、物体を弾性波で加圧あるいは加振し、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信ステップと、微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射ステップと、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を取得する画像取得ステップと、取得した陰影変化の画像を処理して粘弾性を算出する粘弾性推定ステップを有する。また、本装置は、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信部と、物体表面に対して光を照射する光照射部と、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を取得するカメラ部と、取得した陰影変化の画像を処理して粘弾性を算出する推定部から構成される。
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で計測する方法であって、
被検体に弾性波と光を照射し、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を用いて粘弾性を推測する粘弾性計測方法。
【請求項2】
物体を弾性波で加圧あるいは加振し、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信ステップと、
微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射ステップと、
物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を取得する画像取得ステップと、
取得した陰影変化の画像からピクセル強度の変位量を取得して粘弾性を算出する粘弾性推定ステップと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の粘弾性計測方法。
【請求項3】
前記弾性波は、計測対象の物体の共振周波数を含む特定の周波数には限定されない音波または超音波であることを特徴とする請求項2に記載の粘弾性計測方法。
【請求項4】
前記粘弾性推定ステップは、非振動の物体表面の陰影画像を用いて、取得した陰影変化の画像のピクセル強度から散乱光成分を除き、散乱光成分を除いた光成分強度の変位量の変位波形の単一振動周期に対して、物体表面とカメラ部の位置関係から定まる観測領域における観測時間に基づく陰影変化から粘弾性を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の粘弾性計測方法。
【請求項5】
前記弾性波発信ステップにおいて弾性波の強度を微小変化させて、少なくとも2種類の微振動の物体表面の陰影画像を取得し、
前記粘弾性推定ステップは、2種類の微振動の物体表面の陰影画像で、上記の陰影変化の観測時間が変化することによる観測時間の差に基づいて粘弾性を算出することを特徴とする請求項4に記載の粘弾性計測方法。
【請求項6】
前記弾性波発信ステップは、複数の音波発信モジュールからそれぞれ発信された音波が同位相で集束するようにして、計測対象の物体表面を集束点で振動させる、もしくは、複数の音波発信モジュールからそれぞれ発信された音波が同位相で並行に発信するようにして、計測対象の物体表面を面で振動させることを特徴とする請求項2~5の何れかに記載の粘弾性計測方法。
【請求項7】
照射した光が計測対象の物体表面で反射した反射光、或は、計測対象の物体を透過し屈折した透過光によって、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化が生じることを特徴とする請求項2~6の何れかに記載の粘弾性計測方法。
【請求項8】
物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で計測する装置であって、
物体を弾性波で加圧あるいは加振することにより物体表面形状を微小変位させる弾性波発信部と、
微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射部と、
物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を取得するカメラ部と、
取得した陰影変化の画像からピクセル強度の変位量を取得して粘弾性を算出する推定部と、
を備えたことを特徴とする粘弾性計測装置。
【請求項9】
前記弾性波発信部から発信される弾性波は、計測対象の物体の共振周波数を含む特定の周波数には限定されない音波または超音波であることを特徴とする請求項8に記載の粘弾性計測装置。
【請求項10】
前記推定部は、非振動の物体表面の陰影画像を用いて、陰影変化の画像のピクセル強度から散乱光成分を除き、散乱光成分を除いた光成分強度の変位量の変位波形の単一振動周期に対して、物体表面とカメラ部の位置関係から定まる観測領域における観測時間に基づく陰影変化から粘弾性を算出することを特徴とする請求項8又は9に記載の粘弾性計測装置。
【請求項11】
前記光照射部は、照射された光が計測対象の物体表面で反射した反射光、或は、計測対象の物体を透過し屈折した透過光によって、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化が生じるように配置されることを特徴とする請求項8~10の何れかに記載の粘弾性計測装置。
【請求項12】
前記弾性波発信部は、複数の音波発信モジュールから成り、
各音波発信モジュールは、それぞれから発信された音波が同位相で集束するように配置され、計測対象の物体表面に、収束点が位置するように、前記弾性波発信部が配設される、
もしくは、
各音波発信モジュールは、それぞれから発信された音波が同位相で並行に発信するように配置され、計測対象の物体表面を面で振動させることを特徴とする請求項8~11の何れかに記載の粘弾性計測装置。
【請求項13】
弾性波を付加しない静的状態の物体表面に対して光を照射して静的陰影分布情報を取得する静的陰影分布情報取得ステップと、
物体を弾性波で加圧あるいは加振し、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信ステップと、
微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射ステップと、
物体表面の法線の振動に基づく動的陰影分布情報を取得する動的陰影分布情報取得ステップと、
前記静的陰影分布情報と前記動的陰影分布情報の比から、前記振動の1周期の時間を算出し、法線の振動の角速度を算出して、物体の弾性波による最大変位を推定する最大変位推定ステップと、
推定した最大変位と弾性波による最大応力とから粘弾性を算出する粘弾性推定ステップと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の粘弾性計測方法。
【請求項14】
被検体に弾性波と光を照射し、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を用いて、物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で計測する装置であって、
弾性波を付加しない静的状態の物体表面に対して光を照射して静的陰影分布情報を取得する静的陰影分布情報取得部と、
物体を弾性波で加圧あるいは加振し、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信部と、
微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射部と、
物体表面の法線の振動に基づく動的陰影分布情報を取得する動的陰影分布情報取得部と、
前記静的陰影分布情報と前記動的陰影分布情報の比から、前記振動の1周期の時間を算出し、法線の振動の角速度を算出して、物体の弾性波による最大変位を推定する最大変位推定部と、
推定した最大変位と弾性波による最大応力とから粘弾性を算出する粘弾性推定部と、
を備えたことを特徴とする粘弾性計測装置。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触、非破壊および非侵襲で、物体の粘弾性を測定する方法ならびに装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体に外力を与えると変形や流動が生じる。この時、物体の変形のしやすさと物体の流れやすさを併せ持つ性質を粘弾性と呼び、この粘弾性を調べることにより構造、物性の評価、材料設計の効率化、触感の客観的評価による官能評価の補完が可能となることが知られている。
従来から、物体の粘弾性を計測する手法として、接触式のプローブによって加圧または加振し、物体表面の変位を直接計測する方法が一般的に用いられている。例えば、プローブを物体表面に手で押し付け又はハウジングの重量によって押し付けて、プローブが材料の表面に接触するようにして、材料の圧痕に関する材料特性を評価するデバイスが知られている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
このように、物体に接触して対象物体に応力を加え、物体表面の変位を計測する方法では、貴重な試料や繊細な試料を繰り返し使用することは難しい。そのため、非接触・非破壊で対象物体の粘弾性を推定する方法が要求されている。非接触・非破壊で対象物体の粘弾性を推定するためには、非接触で対象物体に力学的な応力を与える必要がある。
【0003】
物体の粘弾性を非接触で計測する手法として、音波や空気の衝撃によって物体表面を加圧または加振した際の変位を、レーザ変位計などを用いて計測する手法が知られている。例えば、超音波ビームの走査によって生成された複数のフレームに基づいて、物体の変位量の時間変化が演算され、変位量の変位波形が生成され、変位量に応じて物体の粘弾性を推定する超音波診断装置が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
また、物体表面のテクスチャの周期運動を画像処理によって取得し粘弾性を推定する手法が知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2010-523974号公報
【特許文献2】特開平6-313752号公報
【特許文献3】特開2016-42960号公報
【0005】

【非特許文献1】Davis, A., Bouman, K. L., Chen, J. G., Rubinstein, M., Durand, F., Freeman, W. T.," Visual vibrometry: Estimating material properties from small motions in video", Proc. IEEE Conf. CVPR2015 (pp. 5335-5343).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、接触して粘弾性を直接計測する手法では、プローブを対象物体に接触させて直接的に粘弾性を計測するため、接触部分を破壊、侵襲もしくは塑性変形させる可能性が高く、貴重な試料や繊細な試料を計測することは難しいという問題がある。また、非接触で粘弾性を計測する手法では、物体表面を加振し加圧することによって生じた変位をレーザ変位計などの光学的手法を用いて計測するため、散乱、鏡面反射、透過、屈折など光学的に変位を計測することが難しい物体の粘弾性を計測することは原理上困難である。また、非接触で粘弾性を計測する手法では、変位を正確に測定するために、物体固有の固有振動数を用いて物体を共振させる必要があり、そのために固有振動数を探索することから計測時間が長くなるという問題がある。
【0007】
上記状況に鑑みて、本発明は、物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で短時間に計測できる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の粘弾性計測方法は、物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で計測する方法であって、被検体に弾性波と光を照射し、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を用いて粘弾性を推測する。
本発明の粘弾性計測方法では、弾性波を照射し、計測対象物体を加圧または加振することにより、物体表面形状を微小変位させると共に、物体表面に光を照射し、物体表面の法線方向の変化により生じた陰影変化から物体の粘弾性を推定する。
【0009】
本発明の粘弾性計測方法では、物体表面で生じた変位を直接計測するのではなく、微小変位によって生じた法線方向の変化に基づく陰影変化から物体の粘弾性を間接的に推定するため、下記1)~3)の利点を有する。
1)光学的に変位を直接計測することが困難な光現象、すなわち、散乱、鏡面反射、屈折の光現象を持つ物体であっても、物体の粘弾性を、非接触で計測可能である。
2)被検体の物体を共振させる必要がないため、固有振動数の探索が不要であり、短時間で計測可能である。また、被検体の物体を加振させる周波数を選ばない。
3)法線方向の変化が推定可能な程度の変位が起きるよう加圧すれば良いため、従来手法よりも少ない変位で物体の粘弾性を推定可能であり、加圧や加振に伴う被検体の塑性変形のリスクが少なく、物体の粘弾性を、非破壊で計測可能である。
【0010】
ここで、弾性波として、音波、特に超音波が好適に用いることができる。空気の衝撃によって加振または加圧するものも弾性波に含まれるものとする。弾性波は、空気中の弾性波だけでなく、気体、液体および半固体中の弾性波でも構わない。
また、被検体の物質は、液状又は半固体状の物質が計測対象として用いられるが、柔軟性あるプラスチックやゴムなどの高分子物質のような固体であっても構わない。
【0011】
また、弾性波を照射することにより生じる微小変位は、物体表面形状が変化していないという仮定をおいても問題のない程度の変位である必要がある。つまり、物体表面形状において、弾性波の照射前後の変位の変化量が所定の小さな範囲内に収まる必要がある。そのため、物体表面が共振しない非共振周波数の音波や空気の衝撃によって加振、加圧し、物体表面を微小変化させる。物体表面形状が微小変位であったとしても物体の法線方向は大きく変化する。そのため、上記の仮定が成り立つことによって、物体の形状は変化せず法線方向のみが変化していると見做すことができる。
そして、物体表面形状を微小変位させると共に、物体表面に光を照射すると、物体表面の法線方向の変化に基づき、物体表面上の陰影が変化するため、観測される陰影情報から粘弾性を推定するのである。これにより物体表面の変位が微小で計測困難な状況においても、法線方向の変化によって物体表面で生じる陰影情報の変化から物体の粘弾性が計測可能となる。
【0012】
上記の本発明の粘弾性計測方法は、具体的に、下記a)~d)を備える。
a)物体を弾性波で加圧あるいは加振し、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信ステップ、
b)微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射ステップ、
c)物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を取得する画像取得ステップ、
d)取得した陰影変化の画像からピクセル強度の変位量を取得して粘弾性を算出する粘弾性推定ステップ。
ここで、画像取得ステップでは、カメラを用いて物体表面の陰影変化を画像として取得する。そして、取得した陰影変化の画像からピクセル強度の変位量の変位波形を取得して粘弾性を算出する。
【0013】
本発明の粘弾性計測方法で用いる弾性波は、計測対象の物体の共振周波数を含む特定の周波数には限定されない音波または超音波であることが好ましい。物体の固有振動数やその他の特定の振動数の探索が不要であり、短時間で計測可能である。また、被検体の物体を加振させる周波数を選ばないため、音波や超音波の周波数チューニングが不要である。特に、超音波は、空気の疎密波であるため十分にその力が強い場合には、物体に対し非接触で力学的な働きをすることが可能である。
【0014】
本発明の粘弾性計測方法における粘弾性推定ステップでは、非振動の物体表面の陰影画像を用いて、取得した陰影変化の画像のピクセル強度から散乱光成分を除き、散乱光成分を除いた光成分強度の変位量の変位波形の単一振動周期に対して、物体表面とカメラ部の位置関係から定まる観測領域における観測時間に基づく陰影変化から粘弾性を算出する。
【0015】
本発明の粘弾性計測方法において、弾性波発信ステップで、弾性波の強度を微小変化させて、少なくとも2種類の微振動の物体表面の陰影画像を取得し、そして、粘弾性推定ステップでは、2種類の微振動の物体表面の陰影画像で、上記の陰影変化の観測時間が変化することによる観測時間の差に基づいて粘弾性を算出する。
本発明の粘弾性計測方法では、少なくとも2種類の強度の異なる弾性波を、物体表面に当てた際の少なくとも2種類の陰影画像における陰影変化から計算によって、物体表面の粘弾性を算出する。実際の陰影変化の観測では、弾性波の周期による陰影変化ではなく、弾性波の周期に比べ長時間露光して得られた陰影画像を用いて、粘弾性を算出している。
【0016】
本発明の粘弾性計測方法において、弾性波発信ステップでは、複数の音波発信モジュールからそれぞれ発信された音波が同位相で集束するようにして、計測対象の物体表面を集束点で振動させることが好ましい。複数の音波発信モジュールからそれぞれ発信された音波を同位相で集束させ、物体表面を集束点で振動させることで、物体表面の変位を容易に与えることができる。また、弾性波発信ステップでは、複数の音波発信モジュールからそれぞれ発信された音波が同位相で並行に発信するようにし、計測対象の物体表面を面で振動させることでもよい。
【0017】
また、本発明の粘弾性計測方法は、下記A)~F)を備える。
A)弾性波を付加しない静的状態の物体表面に対して光を照射して静的陰影分布情報を取得する静的陰影分布情報取得ステップ、
B)物体を弾性波で加圧あるいは加振し、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信ステップ、
C)微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射ステップ、
D)物体表面の法線の振動に基づく動的陰影分布情報を取得する動的陰影分布情報取得ステップ、
E)静的陰影分布情報と動的陰影分布情報の比から、法線の振動の1周期の時間を算出し、法線の振動の角速度を算出して、物体の弾性波による最大変位を推定する最大変位推定ステップ、
F)推定した最大変位と弾性波による最大応力とから粘弾性を算出する粘弾性推定ステップ。
【0018】
上記A)~F)のステップによれば、対象物体表面が静的な場合に観測される静的陰影分布情報と、対象物体表面が微小振動している場合に観測される動的陰影分布情報の比をとり、法線の振動の1周期内に観測された位置に光が入射する時間を計算して、法線の振動の1周期の時間を算出し、法線の振動の角速度を算出して、物体の弾性波による最大変位を推定する。そして、推定した最大変位と弾性波による最大応力とから粘弾性を算出する。
【0019】
本発明の粘弾性計測方法では、照射した光が計測対象の物体表面で反射した反射光、或は、計測対象の物体を透過し屈折した透過光によって、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化が生じる。
【0020】
次に、本発明の粘弾性計測装置について説明する。
本発明の粘弾性計測装置は、物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で計測する装置であって、下記1)~4を備える。
1)物体を弾性波で加圧あるいは加振することにより物体表面形状を微小変位させる弾性波発信部、
2)微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射部、
3)物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を取得するカメラ部、
4)取得した陰影変化の画像からピクセル強度の変位量を取得して粘弾性を算出する推定部。
【0021】
上記の弾性波発信部から発信される弾性波は、計測対象の物体の共振周波数を含む特定の周波数には限定されない音波または超音波であることが好ましい。なお、空気中の音波や超音波だけでなく、気体、液体および半固体中の音波や超音波でもよい。
【0022】
上記の推定部は、非振動の物体表面の陰影画像を用いて、陰影変化の画像のピクセル強度から散乱光成分を除き、散乱光成分を除いた光成分強度の変位量の変位波形の単一振動周期に対して、物体表面とカメラ部の位置関係から定まる観測領域における観測時間に基づく陰影変化から粘弾性を算出する。
【0023】
上記の光照射部は、照射された光が計測対象の物体表面で反射した反射光、或は、計測対象の物体を透過し屈折した透過光によって、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化が生じるように配置される。
【0024】
上記の弾性波発信部は、複数の音波発信モジュールから成り、各音波発信モジュールは、それぞれから発信された音波が同位相で集束するように配置され、計測対象の物体表面に、収束点が位置するように、弾性波発信部が配設されることが好ましい。物体表面の変位を容易に与えることができるからである。また、各音波発信モジュールは、それぞれから発信された音波が同位相で並行に発信するように配置され、計測対象の物体表面を面で振動させることでも構わない。
【0025】
また、本発明の粘弾性計測装置は、被検体に弾性波と光を照射し、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化を用いて、物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で計測する装置であって、下記a)~f)の構成を備える。
a)弾性波を付加しない静的状態の物体表面に対して光を照射して静的陰影分布情報を取得する静的陰影分布情報取得部、
b)物体を弾性波で加圧あるいは加振し、物体表面形状を微小変位させる弾性波発信部、
c)微小変位する物体表面に対して光を照射する光照射部、
d)物体表面の法線の振動に基づく動的陰影分布情報を取得する動的陰影分布情報取得部、
e)静的陰影分布情報と前記動的陰影分布情報の比から、法線の振動の1周期の時間を算出し、法線の振動の角速度を算出して、物体の弾性波による最大変位を推定する最大変位推定部、
f)推定した最大変位と弾性波による最大応力とから粘弾性を算出する粘弾性推定部。
【0026】
上記a)~e)の構成によれば、対象物体表面が静的な場合に観測される静的陰影分布情報と、対象物体表面が微小振動している場合に観測される動的陰影分布情報の比をとり、法線の振動の1周期内に観測された位置に光が入射する時間を計算して、法線の振動の1周期の時間を算出し、法線の振動の角速度を算出して、物体の弾性波による最大変位を推定する。そして、推定した最大変位と弾性波による最大応力とから粘弾性を算出する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の粘弾性計測方法および装置によれば、物体の粘弾性を非接触かつ非破壊で短時間に計測できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例の粘弾性計測方法の処理フロー図
【図2】粘弾性計測方法の説明図(1)
【図3】粘弾性計測方法の説明図(2)
【図4】実施例の粘弾性計測装置の機能ブロック図
【図5】物体表面上での反射光とカメラレンズとカメラセンサの位置関係を示す模式図
【図6】カメラセンサの画素内における反射光の振動周期および観測領域の説明図
【図7】粘弾性推定ステップの処理フロー図
【図8】複数の超音波発信モジュールから成る超音波発信器の説明図
【図9】容器内のシャボン玉液の粘弾性の計測における陰影変化の画像
【図10】容器内のシャボン玉液の粘弾性の計測プロット図
【図11】動的粘弾性の計測の光学系の概念図
【図12】動的粘弾性の計測の説明図
【図13】水の温度変化による粘性変化を示す粘弾性の計測グラフ(実施例6)
【図14】接着剤の硬化過程における粘性変化を示す粘弾性の計測グラフ(実施例7)
【図15】粘度グレードが既知のオイルの粘弾性の計測グラフ(実施例8)
【図16】9種類の計測対象物体の粘弾性の計測グラフ(実施例9)

【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0030】
まず、本発明の粘弾性計測方法の一実施形態について説明する。図1は、粘弾性計測方法の処理フローを示している。図1に示すように、粘弾性計測方法の処理は、超音波発信ステップ、光照射ステップ、画像取得ステップ、粘弾性推定ステップの4つのステップから成る。
【0031】
1)超音波発信ステップ
このステップでは、被検体の物体表面を超音波で加圧し加振し、物体表面形状を微小変位させる。超音波の周波数は、被検体の物体の共振周波数を含む特定の周波数には限定されない。すなわち、被検体の物体を共振させる固有振動数の探索時間を必要としない。被検体の物質は、空気中に置かれ、超音波は空気中を伝搬する。また、被検体の物質としては、液状又は半固体状の物質を用いる。
微小変位は、物体表面形状が変化していないという仮定をおいても問題のない程度の変位である。超音波を物体表面に照射すると、物体表面に振動が生じるが、照射前後の変位の変化量が所定の小さな範囲内に収まるようにするのであるが、具体的な制御は、後述の光照射ステップにおいて、その反射光のゆらぎ幅が所定範囲に収まるようにする。
図8に示すように、使用する超音波発信器60は、複数の超音波発信モジュール10からそれぞれ発信された超音波19が1点に収束するように配置し、計測対象の物体表面12に収束点が位置するようにして超音波を発信して、超音波の強度を高めている。
【0032】
2)光照射ステップ
このステップでは、微小変位する物体表面に対して光を照射する。照射する光の波長は、特に限定されないが、物体表面上の陰影をカメラで撮影する必要があることから、一般の照明光を用いる。
物体表面形状を微小変位させると共に、物体表面に光を照射すると、物体表面の法線方向の変化に基づき、物体表面上の陰影が変化する。照射した光が被検体の物体表面で反射する鏡面反射光、または、透光性の被検体であれば、被検体の物体を透過し屈折した透過光を用いることができる。
【0033】
3)画像取得ステップ
このステップでは、物体表面の法線方向の変化に基づく陰影変化の画像を取得する。
画像取得には、ディジタルカメラやディジタルビデオカメラを用いる。超音波照射によって微小変位する物体表面に対して光照射し、微小変位かつ光照射の状態下で、物体表面上に表れる陰影変化をカメラ撮影する。撮影した画像は、粘弾性を演算するためにコンピュータに転送する。
【0034】
4)粘弾性推定ステップ
このステップでは、取得した陰影変化の画像からピクセル強度の変位量を取得して粘弾性を算出する。粘弾性推定方法については後述する。
【0035】
図2と図3は、粘弾性計測方法の説明図である。図2(1)は、物体表面が非振動の状態の模式図である。物体表面12に対して照明光源11から光が照射されているが、超音波発信モジュール10から超音波は発信されていない。したがって、照射光14は物体表面12に対し鏡面反射し、反射光15は受光面17に到達し、受光領域部18を形成している。物体内部13において、照射光14による散乱光16が発生し、一部は受光面17に到達し、受光領域部18を形成している。
【0036】
図2(2)は、物体表面が超音波照射によって微振動している状態の模式図である。超音波発信モジュール10から超音波19が発信され、物体表面12に微小変位20が生じている。超音波発信モジュール10から超音波19が発信されている状態で、照明光源11から光が照射されると、物体表面12の微小変位20によって、物体表面の法線方向の変化に基づき、反射光15が振れることになる。物体表面形状が微小変位であったとしても物体の法線方向は大きく変化するため、反射光15が振れ幅は大きいものとなり、受光領域部18はある程度の拡がりをもつ。なお、ここでは、微小変位の場合、物体の形状は変化せず法線方向のみが変化していると見做している。
【0037】
図2(3)は、物体表面が超音波照射によって強く振動している状態の模式図である。超音波発信モジュール10から超音波19が発信され、物体表面12に強い振動が生じ、物体表面のラインが変形し、形状変形している(形状変形した物体表面21)。超音波発信モジュール10から超音波19が強く発信されている状態で、照明光源11から光が照射されると、物体表面12が強い振動を起こしているため、物体の表面形状が変化し、物体の形状は変化せず法線方向のみが変化していると見做すことはできない。物体表面の形状変化に基づき、反射光15が大きく振れることになり、受光領域部18は大きく拡がってしまう。
【0038】
図3は、図2(2)に示す状態、すなわち、物体表面が超音波照射によって微小変位している状態を示している。物体表面に対する超音波照射が継続すると、物体表面の微小変位が継続し、物体表面は微小振動を生じる。物体表面12の一点を観測すると、時間の経過によって微小変位の変位量が変化する。そのため、照明光源11からの照射光の鏡面反射による反射光の方向が変化する。微小振動の振幅の大小によって、物体表面12の反射光の方向が変化する。このため、外部から物体表面12を観察すると、陰影変化が生じることになる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の粘弾性計測装置の一実施形態について説明する。図4は、実施例の粘弾性計測装置の機能ブロック図を示している。
粘弾性計測装置1は、物体を超音波で加振することにより物体表面12の表面形状を微小変位させる超音波波発信部2、物体表面12に対して光を照射する光照射部3、物体表面12の陰影変化を取得するカメラ部4、取得した陰影変化の画像から粘弾性を算出する推定部5から構成される。
【0040】
超音波の周波数は、被検体の物体の共振周波数を含む特定の周波数には限定されず、被検体の物体を共振させる固有振動数の探索時間を必要としない。反射光のゆらぎ幅が所定範囲に収まるように超音波の強度を調整し、物体表面形状が変化していないという仮定をおいても問題のない程度の微小変位となるようにする。
推定部5では、非振動の物体表面の陰影画像を用いて、陰影変化の画像のピクセル強度から散乱光成分を除き、散乱光成分を除いた光成分強度の変位量の変位波形の単一振動周期に対して、物体表面とカメラ部の位置関係から定まる観測領域における観測時間に基づいて粘弾性を算出する。
【実施例3】
【0041】
次に、粘弾性推定ステップについて説明する。まず、物体表面が微小振動している場合に、物体表面上での反射光の挙動について説明する。
図5は、物体表面上での反射光とカメラレンズとカメラセンサの位置関係を示す模式図である。照明光源11から出た照射光14は、物体表面12の法線nの方向に応じて振動表面で鏡面反射する。物体表面12が微小振動することから、反射光15の方向は振動に応じて変化する。反射光は角φ0と角φ1の間のφの方向に対応するカメラセンサの画素上に観察されることになる。よって、カメラで物体表面12を撮影すると、カメラレンズ30を通った反射光(15,15a,15b)はカメラセンサ31に到達し撮像されるが、カメラレンズ30から外れる反射光(15c,15d)はカメラセンサ31に到達せず撮像されない。
【0042】
すなわち、微小変位している物体表面で反射する光は、カメラレンズ30から外れるものが存在することを前提に、物体表面の陰影変化の画像のピクセル強度の変位量の時間的変化を観察する必要がある。そのため、カメラセンサ31の画素内における反射光15の変位量を考える際に、図6に示すように、カメラセンサの画素内における光強度の変位量の変位波形に対して、観測領域を設け、この観測領域内の変位波形を捉え、粘弾性を推定する。
【0043】
以下では、粘弾性推定ステップについて説明する。
図7は、粘弾性推定ステップの処理フローを示している。粘弾性推定ステップでは、物体表面の陰影変化の画像を入力した後、予め取得した非振動の物体表面の陰影画像を参照して、陰影変化の画像のピクセル強度から散乱光成分を除去する。そして、散乱光が除去された光成分強度の変位量の変位波形における観測領域内の変動を取得する。観測領域内の変動の観測時間を取得する。
その後、超音波強度を微小変化させて、再び物体表面の陰影変化の画像を入力し、陰影変化の画像のピクセル強度から散乱光成分を除去し、散乱光が除去された光成分強度の変位量の変位波形における観測領域内の変動を取得し、観測領域内の変動の観測時間を取得する。そして、微小変化させた時の観測時間と、変化前の観測時間の差分を取得し、粘弾性を算出する。
【0044】
次に、粘弾性の推定手法について詳述する。以下の数式では被検体の物質の粘弾性を|C|として表す。まず、物体表面で観察される光強度について説明する。カメラセンサのピクセルcにおける受光強度をI(c,t)とすると(tは時間)、I(c,t)は、物体表面からの鏡面反射成分S(c,t)と物体内部からの散乱成分G(t,c)から成る。ここで、鏡面反射成分S(c,t)は、物体表面の法線方向に依存して変化するが、散乱成分G(t,c)は安定している。これを前提として、観察強度I(c)は、下記数式に示すようにカメラの露光時間Tの積分に比例する。
【0045】
【数1】
JP2018016652A1_000003t.gif

【0046】
物体の振動表面と非振動表面は、入射光源の鏡面反射の方向に位置するカメラによって観察され、観察Iv(c)(振動表面上)とIn(c)(非振動表面上)は、観察された鏡面反射成分S(c)と観察された散乱成分G(c)を用いて下記数式で表される。ここで、時間θは、図6に示すように、カメラセンサの画素内における反射光の単一振動周期の観測領域内の観測時間の合計時間(θ=θ0+θ1+θ2)である。また、αは、時間θと正弦波形の位相ωに依存する。また、各φに関して、角φ0とφ1は、図4に示す物体表面とカメラ位置の関係から幾何学的に推定することができる。なお、超音波による振動強度を変化させる前(被検体の粘弾性|C|の変位を持つ場合における)に観測可能な時間は、振動周期(T)に依存する。そのため、単一振動周期の観測領域内の観測時間の合計時間を正確に表す場合は、θ=T×(θ0+θ1+θ2)/2πとなる。
【0047】
【数2】
JP2018016652A1_000004t.gif

【0048】
上記数式におけるパラメータαを推定するために、対象物cに僅かな変位c+Δcを加えることによって、物体表面の異なる陰影観測を追加する。すなわち、対象物cの粘弾性は小さな変動量Δc内では線形の関係を持つので、その時の時間θが下記数式のような小さな変化ΔC内に反比例していると仮定する。
【0049】
【数3】
JP2018016652A1_000005t.gif

【0050】
この仮定の下で、追加された観察は、下記数式のように表すことができる。時間θは、上記の数式2と下記数式4から、これらの方程式を同時に解くことにより得られる。
【0051】
【数4】
JP2018016652A1_000006t.gif

【0052】
【数5】
JP2018016652A1_000007t.gif

【0053】
そして、被検体の物質の粘弾性|C|は、y1、y2およびδ1を用いた下記数式を用いて算出する。ここで、y1、y2およびδ1は、図4の角φ0とφ1を用いて計算され、y1、y2は観測領域を決定するパラメータである。
【0054】
【数6】
JP2018016652A1_000008t.gif

【実施例4】
【0055】
ここでは、液体の物質として、シャボン玉液を例に用いて、上述の実施例の粘弾性計測方法、粘弾性計測装置を用いて、粘弾性を計測した結果について説明する。
図9は、容器内のシャボン玉液の粘弾性の計測における陰影変化の画像を示している。図9(a)は、計測対象物体のシャボン玉液、具体的には、容量が異なる2種類の容器に入れたシャボン玉液(左の容器5mLと右の容器25mL)の撮像画像である。図9(b)は、非振動状態(超音波を発信していない状態)の陰影変化をカメラで取得した画像である。図9(c),(d)は、微振動状態(超音波を発信している状態)の陰影変化をカメラで取得した画像である。図9(e)は、2種類の容量のシャボン玉液の粘弾性推定マップを示したものである。
【0056】
ここで、カメラは、1280×1024の解像度で、16ビット、30fpsのものを使用した。超音波発信器には、0.064(N/m)のものを使用した。照明光源には、プロジェクタ光源を使用した。そして、カメラとプロジェクタ光源の位置および向きを固定して、カメラでシャボン玉液の表面の陰影画像として、図9(b)~(d)の3種類の画像を取得した。
図9(e)の粘弾性推定マップから、シャボン玉液の周りの容器の剛体部は、シャボン玉液の部分に比べて、低い粘弾性を持っていることを確認することができた。
【0057】
図10は、容器内のシャボン玉液の粘弾性の計測結果のプロットを示している。シャボン玉液の濃度が変化すると、粘弾性が変化することが知られている。図10のプロットから、推定結果の丸印は、概ね、シャボン玉液の濃度に比例して粘弾性が上っていることがわかる。すなわち、粘弾性の推定結果は、既知のシャボン玉液の粘弾性と同様な変化をしており、実施例の粘弾性計測方法や粘弾性計測装置を用いて、粘弾性が推定できることが示されたことになる。
なお、図10のプロットの粘弾性の値に関しては、スケール倍の不定性がある。
ここで、本粘弾性計測方法は、微小な変化を利用して粘弾性を推定するため、シャボン玉液の計測の場合、シャボン玉の泡がはじけた衝撃の影響や界面張力を強く受け、それらがノイズとなって、濃度に比例して粘弾性が上らない部分もあったと推察している。
【実施例5】
【0058】
上述の如く、超音波は、空気の疎密波であるため十分にその力が強い場合には、物体に対し非接触で力学的な働きをすることが可能である。以下の実施例で用いる超音波発信器60は、図8に示すように、超音波発信モジュール10が密に並べられた構成となっている。
各超音波モジュール10から放射された超音波は、空間上で干渉し、強め合うことにより、空間中の任意の点において力学的な力を発生させることが可能である。超音波による力学的な力は、スピーカーと同様に音量を調整することにより、0.1~0.5gまで細かく調整可能である。各超音波モジュール10からは周期的な疎密波が出力されており、対象物体を加振する力Γ(t)は下記数式のように表現できる。
【0059】
【数7】
JP2018016652A1_000009t.gif

【0060】
ここで、γ[Pa・s]は対象物体を加圧する最大の力を表し、fMは対象物体を加振する周波数を表す。また、tは時間を表す。超音波モジュール10から出力される周波数は、超音波モジュール固有のものではあるが、超音波から出力される信号を変調することで任意の周波数の力で対象物体を加振することが可能である。超音波発信器60を用い、 十分に長い時間、同じ周波数の超音波で対象物体を加振した場合には、対象物体上の変位x(t)は下記数式のように表現できる。
【0061】
【数8】
JP2018016652A1_000010t.gif

【0062】
ここで、Cは対象物体上の最大変位を表し、δは弾性と粘性の割合によって決定される振動の位相遅れを表す。この場合、超音波による最大応力と最大変位Cの関係は、下記数式のように表現できる。ここで、Gは動的粘弾性を表す。以下の実施例では、観測される陰影分布情報から最大変位Cを推定し、応力との関係から対象物体の動的粘弾性Gを推定する。
【0063】
【数9】
JP2018016652A1_000011t.gif

【0064】
動的粘弾性Gを推定するために、超音波によって対象物体を微小変位させ、それにより対象物体上の法線方向が変化することを利用する。
図11に示すように、光源11から放射された照射光14は、容器25に入れられた対象物体26上で反射し反射光15となり受光面17(拡散反射板)上に入射する。この際、受光面17上に入射する点は対象物体26上の反射位置と法線方向によって決定される。超音波発信器60から出力される超音波19によって、対象物体26が加振されており、加振する力が十分に弱い場合には、対象物体26上で起こる変位は無視できるほど小さくなる。しかし、対象物体26上で起こる法線方向の変化によって、受光面17上に反射光15が入射する位置は大きく異なる。振動の周期に比べ対象の観測時間が十分に長い場合には、受光面17上の反射光は、残像効果により広がりを持って観測される。受光面17の陰影分布情報を撮像するカメラ(図示せず)の位置、対象物体26上の加振位置、受光面17の位置が既知の場合、受光面17上で観測される明るさと広がりは幾何学的に決定できる。
【0065】
具体的には、受光面17上の局所領域で観測される陰影分布情報I(x,y)は、局所領域に入射する光の強度と入射時間に比例する。そのため、陰影分布情報I(x,y)を推定するためには、 各局所領域に光が入射する時間を推定すれば良い。対象物体表面が静的な場合には、法線方向は常にn0となる。そのため、鏡面反射方向は変化せず、対象物体26上で反射された鏡面反射光は、受光面17上の一点にのみ入射する。このような場合、観測される陰影分布情報は、最大値IMAXとなり、下記数式のように表すことができる。
【0066】
【数10】
JP2018016652A1_000012t.gif

【0067】
ここで、αは受光面17の放射輝度Eを観測される陰影分布情報に変換する比例定数である。また、φは静的な状態の法線方向n0との角度の差分を表す。また、δ(・)はディラックのデルタ関数を表す。
図12(1)(a)に示すように、超音波が照射されず、対象物体26の表面が静的な場合には、法線方向との差分φ[Rad]が常に0となり(図12(1)(b)を参照)、一方向のみ反射光が観測されるため、陰影分布は、空間的にインパルス応答として表現される(図12(1)(c)を参照)。受光面17の受光領域部18は点状となり、観測画像イメージは、図12(1)(d)のようになる。
【0068】
一方、図12(2)(a)に示すように、超音波発信器60により超音波19が照射される場合には、対象物体26の表面が微小振動しており、その物体表面の変位が無視可能なほど小さい場合には、鏡面反射方向は法線方向にのみ依存し決定され、周期的に変位する反射光が観測される(図12(2)(b)を参照)。また、陰影分布は、図12(2)(c)のようになり、受光面17の受光領域部18は上下2方向に拡がった形状となり、観測画像イメージは、図12(2)(d)のようになる。
ここで、対象物体上の位置p(t)の傾きは、下記数式のように表現できる。
【0069】
【数11】
JP2018016652A1_000013t.gif

【0070】
上記式より、傾き方向a(t)は下記数式から求めることができる。
【0071】
【数12】
JP2018016652A1_000014t.gif

【0072】
傾き方向と法線方向は直交しているため、傾き方向a(t)と法線方向n(t)の関係は回転行列Rを用いて、下記数式のように表現できる。
【0073】
【数13】
JP2018016652A1_000015t.gif

【0074】
ここで、回転行列Rの要素は、2つのベクトルが直交しているという条件から一意に決定可能である。図11に示すように、n0とn(t)の成す余弦cosφ(t)、並びにφ(t)は、下記数式のように表現できる。
【0075】
【数14】
JP2018016652A1_000016t.gif

【0076】
【数15】
JP2018016652A1_000017t.gif

【0077】
そして、法線が振動することによっておこる反射分布は、角速度の逆数として表されることから、dt/dφは、下記数式を用いて算出できる。dt/dφより、p(t)における反射率分布が計算できる。
【0078】
【数16】
JP2018016652A1_000018t.gif

【0079】
対象物体表面が静的な場合に観測される静的陰影分布情報と、対象物体表面が微小振動している場合に観測される動的陰影分布情報の比をとることによって、1周期内に観測された位置に光が入射する時間が計算できる。このため、対象物体表面が静的な場合と微小振動している場合の2種類の陰影分布情報と、上記dt/dφの算出式より、動的粘弾性Gが推定可能となる。
なお、後述の実施例では、動的粘弾性Gを単に粘弾性として表している。
【実施例6】
【0080】
上述の実施例5で示す粘弾性計測方法、粘弾性計測装置を用いて、水の温度変化による粘性変化(粘弾性の変化)を計測した結果について説明する。
図13は、水の温度変化による粘性変化を示す粘弾性の計測グラフである。図13のグラフでは、水の温度が15℃から70℃の範囲において、水の粘弾性の真値と、上述の実施例の粘弾性計測方法により推定した結果を表している。推定結果は、水の温度が15℃、30℃、45℃、60℃、70℃の時の推定結果をプロットしている。
図13のグラフから、温度変化した場合の水の粘弾性推定結果は、概ね、温度が上昇するにつれ、粘弾性が低くなるといった傾向が見られ、水の温度変化に伴う粘弾性の真値と同様な傾向を示していることが確認できた。この結果から、実施例の粘弾性計測方法が、水の温度変化による粘弾性の微小な変化を捉え、変化した粘弾性を推定できることがわかった。
【実施例7】
【0081】
上述の実施例5の粘弾性計測方法、粘弾性計測装置を用いて、接着剤の硬化過程における粘性変化(粘弾性の変化)の計測結果について説明する。
図14は、接着剤の硬化過程における粘性変化を示す粘弾性の計測グラフである。
接着剤は、市販の木工用ボンド(コニシ株式会社製)を用いた。ガラス基板の表面に接着剤を滴下し、自然乾燥させて、滴下直後(0分)から30分経過までの粘弾性を計測した。計測は2~3分毎に行った。図14のグラフから、接着剤の硬化過程における粘弾性推定結果は、時間が経過するにつれて、粘弾性が高くなるといった傾向が見られ、これは接着剤が乾き、ゴムのような高弾性体に変わる現象と一致している。
【実施例8】
【0082】
粘弾性が既知の物体として、ISO(International Organization for Standardization)の粘度グレードが既知の潤滑油について、上述の実施例5の粘弾性計測方法、粘弾性計測装置を用いて、粘弾性を計測した結果について説明する。
潤滑油などの液体は、弾性成分が無視できるほど小さいことが知られている。そのため、実験では、推定結果は全て粘性成分によるものであると見做すことにした。本実験に用いた潤滑油(株式会社三共コーポレーション製)は3種類であり、それぞれタービン用潤滑油(Oil VG32),コンプレッサー用潤滑油(Oil VG68),チェーンソー用潤滑油(Oil VG100)である。ここで、VGとは、ISOの国際規格で定められた粘度グレードのことであり、VGの後の数字は粘度指数を表している。この粘度指数が大きいほど粘度の高い油となり、逆に小さいほど粘度の低い油となる。
【0083】
図15と下記表1に、粘度グレードが既知の潤滑油の粘弾性の計測結果を示す。図15(1)は観測される陰影分布情報を示し、図15(2)は潤滑油の粘弾性の真値と推定結果を示す。図15(1)から、超音波振動なしの場合から振動出力20%、30%となるにつれて、潤滑油表面の観測輝度が小さくなっていることがわかる。また、図15(2)から、算出された潤滑油の粘弾性は比例の関係となり、また、表1に示すように粘弾性推定値(外乱の影響を考慮したもの)の値が概ね真値と近似しており、正しく推定できていることを確認できた。なお、粘弾性推定値は、図15(2)に示すように、外乱の影響を無視した推定値よりも、外乱の影響を考慮した推定値の方が安定して良い結果となる傾向がある。外乱の影響とは、鏡面反射光以外の成分つまり、散乱光、拡散反射光、環境光による影響をいう。
【0084】
【表1】
JP2018016652A1_000019t.gif

【実施例9】
【0085】
身の回りに存在する様々な計測対象物体に対して、上述の実施例5の粘弾性計測方法、粘弾性計測装置を用いて、粘弾性を計測した結果について説明する。
対象物体として見た目の色や鏡面反射の程度が異なる9種類の物体を用いた。9種類の物体は、水(Water)、醤油(Soy Sauce)、サラダ油(Salad Oil)、タバスコソース(Pepper Sauce)、マヨネーズ(Mayonnaise)、蜂蜜(Honey)、塩麹(Rice Malt)、バーベキューソース(Barbecue Sauce)、ケチャップ(Ketchup)である。これらの9種類の物体は、いずれも手で触った感触が異なるため、粘弾性の推定結果にも違いがあると予想される。実験環境の温度は空調を用いて20℃にコントロールし、計測対象物体の温度も実験環境と同じ温度になるように計測前に十分な時間をとった。また、9種類の物体をシャーレに入れて計測した。計測の際は、シャーレの底で起きる鏡面反射の影響を防ぐために、光吸収シートをシャーレの底に設置した。
【0086】
図16は、9種類の計測対象物体の粘弾性の計測グラフである。図16は(1)は観測される陰影分布情報を示し、図16は(2)は計測対象物体の粘弾性の推定結果を示す。図16は(2)の推定結果から、9種類の計測対象物体に関して、見た目の色や反射の程度に影響されず、概ね正しく粘弾性が推定されていることが確認でき、上述の実施例の粘弾性計測方法、粘弾性計測装置の有効性が確認できた。なお、図16は(2)は外乱の影響(散乱光、拡散反射光、環境光による影響)を考慮したものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、農業分野や漁業分野における生鮮物の品質調査、賞味に適した時期の推定、料理の定量化に有用である。また、本発明は、医療分野における触診の定量化を行う診断装置、並びに、内視鏡手術時など直接的な触診を行えない状況下で用いる診断装置として有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 粘弾性計測装置
2 超音波発信部
3 光照射部
4 カメラ部
5 推定部
10 超音波発信モジュール
11 照明光源
12 物体表面
13 物体内部
14 照射光
15,15a~15d 反射光
16 内部散乱光
17 受光面
18 受光領域部
19 超音波
20 微小振動
21 形状変形した物体表面
25 容器
26 対象物体
30 カメラレンズ
31 カメラセンサ
40 カメラ
50 コンピュータ
60 超音波発信器(超音波アレイ)
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
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(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
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(In Japanese)【図13】
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(In Japanese)【図14】
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(In Japanese)【図15】
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(In Japanese)【図16】
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