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明細書 :免疫チェックポイント阻害薬使用における免疫関連副作用の予測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年5月16日(2019.5.16)
発明の名称または考案の名称 免疫チェックポイント阻害薬使用における免疫関連副作用の予測方法
国際特許分類 G01N  33/68        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
C07K  14/705       (2006.01)
C07K  14/52        (2006.01)
FI G01N 33/68
G01N 33/53 D
G01N 33/15 Z
C07K 14/705
C07K 14/52
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 30
出願番号 特願2018-525312 (P2018-525312)
国際出願番号 PCT/JP2017/024244
国際公開番号 WO2018/003995
国際出願日 平成29年6月30日(2017.6.30)
国際公開日 平成30年1月4日(2018.1.4)
優先権出願番号 2016131913
優先日 平成28年7月1日(2016.7.1)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】藤村 卓
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091982、【弁理士】、【氏名又は名称】永井 浩之
【識別番号】100091487、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 行孝
【識別番号】100082991、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 泰和
【識別番号】100105153、【弁理士】、【氏名又は名称】朝倉 悟
【識別番号】100120617、【弁理士】、【氏名又は名称】浅野 真理
【識別番号】100126099、【弁理士】、【氏名又は名称】反町 洋
【識別番号】100188651、【弁理士】、【氏名又は名称】遠藤 広介
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4H045
Fターム 2G045AA40
2G045DA36
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA01
4H045DA86
4H045EA50
要約 本発明は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するためのデータを取得する新規方法または該副作用の発症を予測する新規方法を提供する。
より詳細には、本発明は、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを含んでなる、副作用の発症を予測するためのデータを取得する方法または該副作用の発症を予測する方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するためのデータを取得する方法であって、
前記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記抗PD-1抗体がニボルマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗CTLA4抗体がイピリムマブである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体医薬が抗癌剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記副作用が免疫関連副作用である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マーカーがsCD163およびCXCL5の組み合わせである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における前記マーカーのレベルと、前記抗体医薬投与前の対象から採取された生物学的試料における、対応するマーカーのレベルとの比較データを取得することを含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における前記マーカーのレベルまたは前記比較データが、副作用を発症する指標となる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における前記マーカーのレベルまたは前記比較データが、対象にステロイドを投与する指標となる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記比較データが副作用を発症する指標となる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測する方法であって、
前記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定すること
を含んでなる、方法。
【請求項12】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用をモニタリングする方法であって、
前記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定すること
を含んでなる、方法。
【請求項13】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与された対象において、該抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するための、sCD163またはCXCL5を含んでなるマーカー。
【請求項14】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するための、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を含んでなる診断薬。
【請求項15】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するための、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を含んでなる診断用キット。
発明の詳細な説明
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2016年7月1日に出願された日本国特許出願2016-131913号に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガン細胞は、ガン細胞を攻撃する免疫細胞の活性を下げることにより、免疫細胞の攻撃を阻止している。この仕組みは「免疫チェックポイント」と呼ばれている。したがって、この「免疫チェックポイント」を阻害することにより、免疫細胞の働きを再び活発にしてガン細胞を攻撃することができる。免疫チェックポイント阻害薬は、ガン細胞により活性の下げられた免疫細胞を活性化させ、ガン細胞を攻撃させる薬である。
【0004】
免疫チェックポイント阻害薬として、具体的には、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体等が挙げられる。抗PD-1抗体であるニボルマブおよびペムブロリズマブは、悪性黒色腫の治療に有用であることが知られており、また、非小細胞肺癌や腎細胞癌に対する治療効果も報告されている(特許文献1、非特許文献1)。また、抗CTLA4抗体であるイピリムマブまたはトレメリムマブも、黒色腫および他の悪性腫瘍の治療に有用であることが知られている(特許文献2)。
【0005】
一方、免疫チェックポイント阻害薬の投与に起因する自己免疫関連の副作用の出現は従来の薬剤に比して多いことが知られている。例えば、抗PD-1抗体(ニボルマブ)または抗CTLA4抗体(イピリムマブ)を根治切除不能悪性黒色腫の患者に投与した場合のグレード3以上の有害事象の発生率が、ニボルマブ単独では16.3%、イピリムマブ単独では27.3%、ニボルマブとイピリムマブとの併用では55.0%であることが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
免疫チェックポイント阻害薬の投与に起因する副作用には、下垂体機能障害、自己免疫性大腸炎、間質性肺炎、重度肝障害等の生命にかかわる重篤な副作用が存在する。これら副作用の出現時期、進行速度等は予測できないため、患者が自宅で発症に気付かずに、受診時には致命的な状況であることも少なくない。
【0007】
したがって、免疫チェックポイント阻害薬の投与に起因する副作用の発症前において、発症の可能性(危険性)を予測できる技術的手段の開発が求められている。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Larkin J, Chiarion-Sileni V, Gonzalez R, Grob JJ, Cowey CL, Lao CD, et al. Combined Nivolumab and Ipilimumab or Monotherapy in Untreated Melanoma. N Engl J Med 2015; 373: p.23-34.
【0009】

【特許文献1】特開2016-064989号公報
【特許文献2】特表2015-526525号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明は、免疫チェックポイント阻害薬である、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象における副作用の発症の可能性(危険性)を予測する新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【0011】
本発明者らは、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することにより、前記抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測しうることを見出した。
【0012】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するためのデータを取得する方法であって、
上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定すること
を含んでなる、方法。
(2)上記抗PD-1抗体がニボルマブである、(1)に記載の方法。
(3)上記抗CTLA4抗体がイピリムマブである、(1)または(2)に記載の方法。
(4)上記抗体医薬が抗癌剤である、(1)~(3)のいずれか一つに記載の方法。
(5)上記副作用が免疫関連副作用である、(1)~(4)のいずれか一つに記載の方法。
(6)上記マーカーがsCD163およびCXCL5の組み合わせである、(1)~(5)のいずれか一つに記載の方法。
(7)上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における前記マーカーのレベルと、上記抗体医薬投与前の対象から採取された生物学的試料における、対応するマーカーのレベルとの比較データを取得することを含んでなる、(1)~(6)のいずれか一つに記載の方法。
(8)上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における上記マーカーのレベルまたは上記比較データが、副作用を発症する指標となる、(7)に記載の方法。
(9)上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における上記マーカーのレベルまたは上記比較データが、対象にステロイドを投与する指標となる、(7)に記載の方法。
(10)前記比較データが副作用を発症する指標となる、請求項8または9に記載の方法。
(11)抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測する方法であって、
上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定すること
を含んでなる、方法。
(12)上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における前記マーカーのレベルと、上記抗体医薬投与前の対象から採取された生物学的試料における、対応するマーカーのレベルとを比較することを含んでなる、(11)に記載の方法。
(13)上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における前記マーカーのレベルが、あらかじめ設定された閾値から外れた場合には副作用を発症する可能性が高いと予測する、(12)に記載の方法。
(14)抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用をモニタリングする方法であって、
上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定すること
を含んでなる、方法。
(15)抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与された対象において、該抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するための、sCD163またはCXCL5を含んでなるマーカー。
(16)抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するための、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を含んでなる診断薬。
(17)抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するための、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を含んでなる診断用キット。
【0013】
本発明によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することにより、上記抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測することができる。本発明の方法は、予め副作用の発症を予測して薬剤を投与し、副作用の発症を防止、抑制もしくは遅延、または副作用を軽減する上で有利である。また、本発明の方法を用いることにより、副作用の発症を予測して、副作用による障害を減らすことができる。また、本発明の方法を用いることにより、簡便な手段で、上記抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Aは、ニボルマブを投与した患者毎のニボルマブ投与前後の血清中のsCD163濃度の変化を示すグラフである。Bは、ニボルマブを投与した患者毎のニボルマブ投与前後の血清中のCXCL5濃度の変化を示すグラフである。
【図2】sCD163濃度の増減比データに基づき作成したROC曲線を示す。
【発明の具体的説明】
【0015】
データを取得する方法/副作用の発症を予測する方法
本発明の方法は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを一つの特徴としている。ここで、用いるマーカーはsCD163およびCXCL5の組み合わせが好ましい。かかる方法によれば、得られたデータに基づいて、副作用の発症を予測することができる。
【0016】
本発明の方法は、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における上記マーカーのレベルと、前記抗体医薬投与前の対象から採取された生物学的試料における、対応するマーカーのレベルとの比較データを取得することを含んでなる。ここで、比較データとは、例えば、上記レベルの差または比をいう。また、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における上記マーカーのレベルまたは上記比較データが、副作用を発症する指標となる。さらに、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料における上記マーカーのレベルまたは上記比較データが、対象に薬剤、好ましくはステロイド、を投与する指標となる。上記副作用を発症する指標または対象に薬剤、好ましくはステロイド、を投与する指標としては、上記比較データが好ましい。マーカーのレベルについては後述する。
【0017】
sCD163、CXCL5
本発明の、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象における、該抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するためのマーカーは、sCD163またはCXCL5を含んでなる。
本発明における「CD163」は、1本鎖の膜貫通型タンパク質で、スカベンジャーレセプターシステイン-リッチファミリーのメンバーであり、「M130」と相互に使用される。また、「sCD163(可溶型CD163)」は、CD163が切断されて可溶型となったものである。本発明における「sCD163」は、sCD163の改変体、アイソフォーム、および種ホモログを含んでよい。
本発明における「CXCL5」は、好中球/単球走化性タンパク質であって、CXCモチーフのN末端側にELRモチーフを有するELRグループのメンバーであり、「LIX」および「GCP-2」と相互に使用され、CXCL5の改変体、アイソフォーム、および種ホモログを含んでよい。
【0018】
また、生物学的試料におけるsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルとは、例えば、生物学的試料における上記マーカーの濃度または量であり、好ましくは、生物学的試料におけるsCD163の濃度、またはCXCL5の濃度である。なお、測定するsCD163の濃度としては、例えば、1ng/mL~500ng/mLの範囲の濃度が挙げられる。また、測定するCXCL5の濃度としては、例えば、10pg/mL~10000pg/mL、10pg/mL~5000pg/mLの範囲の濃度が挙げられる。
【0019】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体
本発明における「抗体」は、全長抗体であって、ジスルフィド結合で連結された少なくとも2個の重鎖(H)と2個の軽鎖(L)を含む糖タンパク質を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(以下、Vと略すこともある。)と重鎖定常領域とから構成されている。重鎖定常領域は、3個のドメインC1、C2およびC3から構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(以下、Vと略すこともある。)と軽鎖定常領域から構成されている。軽鎖定常領域は、1個のドメインCで構成されている。VおよびV領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と称される変異性の高い領域に小分割され、それらには、フレームワーク領域(FR)と称され、より保存性の高い領域が散在している。上記重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含んでいる。
かかる「抗体」としては、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、低分子化抗体、ドメイン抗体、合成抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体複合体、一本鎖抗体、抗体誘導体、抗体類似体、およびそのそれぞれの抗原結合断片が挙げられる。
【0020】
本発明における抗体の「抗原結合断片」(または、単に「抗体断片」ともいう)とは、特異的に抗原(例えば、PD-1)に結合する能力を保持する抗体の1個以上の断片を示すものである。抗体の「抗原結合断片」に含まれる結合断片の例として、(i)V、V、CおよびC1ドメインから構成される1価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域中ジスルフィド架橋で結合した2個のFab断片を含む2価の断片であるF(ab´)断片、(iii)VおよびC1ドメインから構成されるFd断片、(iv)抗体のシングルアームのVおよびVドメインで構成されるFv断片、(v)Vドメインから構成されるdAb断片、または(vi)単離相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2個のドメインであるVおよびVは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組み換え技術を用いてそれらを単一タンパク質鎖として作製できる合成リンカーにより連結でき、この鎖中では、VおよびV領域が対となって1価の分子を形成できる(単一鎖のFv(scFv))。このような単一鎖の抗体も、抗体の「抗原結合断片」に含まれる。
【0021】
本発明における「PD-1」は、免疫応答調節のシグナルを介する免疫レセプターであって、CD28/CTLA-4ファミリーに属するI型膜タンパク質である。本発明における「PD-1」は、「ProgrammedDeath1」、「ProgrammedCellDeath1」、「タンパク質PD-1」、「PD1」、「PDCD1」、および「hPD-1」と相互に使用され、PD-1の改変体、アイソフォーム、種ホモログ、およびPD-1と少なくとも1個の共通エピトープを有するアナログを含んでよい。
【0022】
本発明における「抗PD-1抗体」とは、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、PD-1に特異的に結合する抗体であってよい。かかる抗体は、アミノ酸配列の構造の一部を特異的に認識する抗体でもあってもよく、全体構造を特異的に認識する抗体でもよい。また、上記抗体としては、特に限定されるものではないが、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはラムブロリズマブが挙げられ、好ましくはニボルマブ、またはペムブロリズマブである。
【0023】
本発明における「CTLA4」は、T細胞の活性化を抑制する調節因子であって、「細胞毒性Tリンパ球関連抗原-4」、「CTLA-4」、「CTLA-4抗原」および「CD152」と相互に使用され、ヒトCTLA4の改変体、アイソフォーム、種ホモログ、およびCTLA4と少なくとも1個の共通エピトープを有するアナログを含んでよい。
【0024】
本発明における「抗CTLA4抗体」とは、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、CTLA4に特異的に結合する抗体であってよい。かかる抗体は、アミノ酸配列の構造の一部を特異的に認識する抗体でもあってもよく、全体構造を特異的に認識する抗体でもよい。また、上記抗体としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、イピリムマブ、またはトレメリムマブである。
【0025】
本発明における「PD-L1」は、PD-1のリガンドであって、「CD274」、「ProgrammedCellDeath1Ligand1」、「PDCD1L1」、「B7-H」、および「B7H1」と相互に使用され、PD-L1の改変体、アイソフォーム、種ホモログ、およびPD-L1と少なくとも1個の共通エピトープを有するアナログを含んでよい。
【0026】
本発明における「抗PD-L1抗体」とは、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、PD-L1に特異的に結合する抗体であってよい。かかる抗体は、アミノ酸配列の構造の一部を特異的に認識する抗体でもあってもよく、全体構造を特異的に認識する抗体でもよい。また、上記抗体としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、MPDL3280A(RG7446)、またはアテゾリズマブである。
【0027】
本発明における「抗体医薬」は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つのものである。上記抗体またはその抗原結合断片は、1種のみを対象に投与してもよく、2種以上を組み合わせて同時にまたは別々に対象に投与してもよい。2種以上の組み合わせの例としては、抗PD-1抗体と抗CTLA4抗体との組み合わせ等が挙げられる。上記抗体の投与方法としては、特に限定されるものではないが、静脈投与が好ましい。
【0028】
本発明の対象は、好ましくはヒトであり、より好ましくは、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与により治療されうる疾患に罹患しているか、または該疾患に罹患する可能性のあるヒトである。ここで、「治療」には、確立された病態を治療することだけでなく、将来確立される可能性のある病態を予防することをも含む。
【0029】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与により治療されうる疾患としては、特に限定されるものではないが、癌、肉腫、または悪性中皮腫が挙げられる。したがって、上記抗体医薬は、抗癌剤であってよい。癌、肉腫、または悪性中皮腫としては、具体的には、悪性黒色腫(メラノーマ)(例えば、転移性悪性悪性黒色腫、根治切除不能悪性黒色腫)、皮膚有棘細胞癌、乳房外パジェット病、またはメルケル細胞癌等の皮膚癌;腎癌(例えば、腎細胞癌、透明細胞カルシノーマ);前立腺癌(例えば、ホルモン難治性前立腺アデノカルシノーマ);乳癌;結腸癌;肺癌(例えば、非小細胞肺癌);骨癌;膵癌;頭頚部癌;皮膚若しくは眼窩内悪性メラノーマ;子宮癌;卵巣癌;直腸癌;肛門部癌;胃癌;精巣癌;子宮癌;卵管のカルシノーマ;子宮内膜カルシノーマ;子宮頚部カルシノーマ;膣カルシノーマ;外陰部カルシノーマ;食道癌;小腸癌;大腸癌;内分泌系癌;甲状腺癌;副甲状腺癌;副腎癌;柔組織肉腫;多発性骨髄腫;尿道癌;陰茎癌;慢性若しくは急性白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病);小児固形癌;進行性固形癌;膀胱癌;腎臓若しくは尿管の癌;腎盂カルシノーマ;尿路上皮癌;中枢神経系(CNS)腫瘍;リンパ腫(例えば、リンパ球性リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫(ホジキン病)、T細胞リンパ腫);胸膜悪性中皮腫;心膜悪性中皮腫;腹膜悪性中皮腫;腫瘍新脈管形成;脊椎腫瘍;脳幹グリオーム;下垂体アデノーマ;カポシ肉腫;扁平上皮癌;扁平細胞癌;アスベスト誘発癌を含む環境誘発癌;またはそれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、皮膚癌、より好ましくは、悪性黒色腫、皮膚有棘細胞癌、乳房外パジェット病、またはメルケル細胞癌である。
【0030】
本発明における抗体医薬の投与に起因する副作用としては、特に限定されるものではないが、免疫関連副作用(免疫に関連すると推察される副作用:irAE)が好ましい(例えば、医薬品インタビューフォーム オプジーボ(R)点滴静注20mg・100mg、2016年4月改訂(第9版)、日本皮膚科学会悪性黒色腫の新薬に関する安全性検討委員会、抗CTLA-4抗体イピリムマブ(ヤーボイ(R))の特性と副作用への対応について、平成27年8月24日参照)。また、本発明の上記副作用の具体的な態様としては、間質性肺疾患、重症筋無力症、筋炎、大腸炎、1型糖尿病、肝機能障害(肝障害)、肝炎(例えば、自己免疫性肺炎)等の肺障害、下垂体機能低下症、下垂体炎等の下垂体機能障害、甲状腺機能低下症等の甲状腺機能障害、神経障害、腎障害、脳炎、副腎機能不全等の副腎障害、重度の皮膚障害、静脈血栓塞栓症、infusion reaction、乾癬、乾癬様皮疹、下痢(例えば、重度の下痢)、関節リウマチ、ブドウ膜炎、上強膜炎、滑膜包炎、放射性皮膚炎の増悪、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(以下、脱髄性多発神経炎ともいう)、胆道障害または腎炎が挙げられ、好ましくは下垂体機能障害である。
また、免疫関連副作用(irAE)は例えば投与後8週以降、または8~12週後に発症することが知られている。
免疫関連副作用は、「グレード」または「irAE評価」により評価される。ここで、「irAE評価」は、疾患の重篤度を表す指標であり、1~3で表される。1とは、「irAEのため追加で治療介入を必要としない」という状態を示し、2とは、「irAEのため薬剤介入等が必要だが入院治療を必要としない、もしくは治療の中断を必要としない」という状態を示し、3とは、「irAEのため入院を伴う薬剤介入等が必要かつ治療の中断を要する」という状態を示す。なお、「irAE評価」と「グレード」との対応は各疾患により異なる。
【0031】
測定方法
本発明で用いることができる生物学的試料としては、血清、血漿、血液、または尿等が挙げられ、好ましくは血清である。
また、上記生物学的試料の採取時期は、副作用の発症を予防する観点から、上記副作用の発症前が挙げられる。上記副作用の発症前としては、例えば、上記抗体医薬の投与前、上記抗体医薬の投与後またはその両者が挙げられる。ここで、上記抗体医薬の投与前としては、上記抗体医薬を投与する前に加え、上記抗体医薬の投与時または投与直後も含んでいてもよい。さらに、上記抗体医薬の投与後としては、例えば、上記抗体医薬を投与してから12週以内が挙げられ、好ましくは8週以内、さらに好ましくは6週以内である。また、上記抗体医薬の投与前、投与後は、それぞれ上記抗体医薬の1回目の投与前、1回目の投与後としてよい。
さらに、上記生物学的試料の採取時期は、モニタリングや後述の薬剤の効果の確認等の観点から、上記抗体医薬の投与後としては、上記抗体医薬を投与してからの期間は制限されず、さらに、投与後に2回以上測定してもよい。
【0032】
sCD163またはCXCL5を測定するためには現在既知のあらゆる方法を採用することができる。例えば、免疫測定法、電気泳動法、ウエスタンブロッティング法、質量分析法等が挙げられ、好ましくは免疫測定法である。
【0033】
免疫測定法としては、例えば、免疫比濁測定法、酵素免疫測定法等が挙げられる。免疫測定法は、タンパク質等を抗原として測定する免疫測定法であって、抗体としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を用いることができ、好ましくはそのポリクローナル抗体やモノクローナル抗体を用いることができる。抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分としては、市販品の抗体を用いることができ、また、周知の方法により、製造することもできる。また、抗sCD163抗体または抗CXCL5抗体はそれぞれ、sCD163またはCXCL5に特異的に結合しうる限り特に限定されず、アミノ酸配列の構造の一部を特異的に認識する抗体でもあってもよく、全体構造を特異的に認識する抗体でもよい。
【0034】
免疫比濁測定法としては、生物学的試料におけるsCD163またはCXCL5と、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分とを反応させて抗原抗体反応させ、その結果、発生する濁りの度合いからsCD163またはCXCL5のレベルを測定するものであれば、とくに限定されない。そのような方法として、TIA法、ラテックス免疫比濁法、ネフェロメトリー法を例示することができる。TIA法は、免疫比濁測定法において濁りの度合いを特定の吸光度において測定する方法である。また、ラテックス免疫比濁法は、免疫比濁測定法において、抗体として抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分をラテックス粒子に結合させたものを用いて測定する方法である。さらに、ネフェロメトリー法は、免疫比濁測定法において濁りの度合いを、一定角度以上の大きさに散乱した光を集めて散乱光として測定する方法である。
【0035】
酵素免疫測定法としては、プレートを支持体とした、ELISA法等のEIA法を挙げることが出来る。はじめに固相に直接または間接的に抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を一次抗体として結合させる。
sCD163またはCXCL5を酵素免疫測定法で測定する場合には、例えば、固相に結合した一次抗体に、sCD163またはCXCL5を測定するための生物学的試料を加えて反応させる。一定時間反応させた後、固相を洗浄し二次標識抗体を加えて二次反応させる。固相を再度洗浄し、固相に結合した標識部分を測定する。
【0036】
上記二次標識抗体を用いる免疫測定法において、標識物質としては西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)アルカリホスファターゼ等の酵素を用いることができる。例えば、HRP標識抗体を利用した場合には基質に既知のDAB、TMB、OPD等を用いることができる。また、標識物質には、HRPのような酵素だけではなく、金コロイド、ユーロピウム等の標識金属やFITC、ローダミン、Texas Red、Alexa、GFP等の化学的、生物的各種蛍光物質、32P、51Cr等の放射性物質等標識可能なあらゆる物質が挙げられる。また、本発明で標識物質を用いる場合、アビジン-ビオチン系またはストレプトアビジン-ビオチン系を用いることもできる。その場合には、例えば、ビオチンで標識された二次標識抗体とともに、HRP等の酵素で標識されたストレプトアビジンまたはアビジンを用いることができる。また、ルシフェラーゼ標識抗体による化学発光イムノアッセイ、蛍光色素標識抗体による蛍光イムノアッセイ、フローサイトメトリー法等を挙げることができる。
【0037】
電気泳動法としては、一般的にはSDS-PAGE法を挙げることができる。そのほかにもセルロース・アセテートを支持体としたもの等がある。タンパク質の染色にはクマシー・ブリリアント・ブルー、ポンソーS染色、アミドブラック染色、直接酵素活性を利用する方法等がある。
【0038】
また、ウエスタンブロッティング法による検出も有効である。すなわち、電気泳動をしたゲルをニトロセルロース膜やPVDF膜等に転写し、次いで、一次抗体である抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分、さらに、二次標識抗体であるHRP標識抗IgG等を反応させ、次いで、HRP発色試薬で発色させ、sCD163またはCXCL5に相当するバンドの発色度合いにより、sCD163またはCXCL5を測定することができる。
【0039】
質量分析法としては、例えば、質量分析器を使用した分析方法を挙げることができる。例えば、表面増強レーザー脱離イオン化(Surface Enhanced Laser Desorption/Ionization)飛行時間型質量分析計(SELDI-TOF MS法)、マトリックス支援レーザーイオン化(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization)飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF MS法)、ESI法(Electrospray Ionization)を用いる方法を例示できる。SELDI-TOF MS法は、チップ表面の官能基に目的物質を均一に捕捉したまま不純物を除去し、レーザー光でイオン化するため、再現性のあるS/N比の高いイオンスペクトルが得られるので好ましい。
【0040】
副作用の発症の予測
また、本発明においては、上述のような測定により得られたデータを用いて、上記抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測することができる。上記予測工程では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与された(すなわち、投与後の)対象から採取された生物学的試料におけるsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルと、投与前の対象から採取された生物学的試料における、対応するマーカーのレベルとを比較することが好ましい。
【0041】
したがって、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与する前の対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定する工程を含んでもよい。また、上記抗体医薬投与後に2回以上上記マーカーのレベルを測定している場合は、任意の2つの測定ポイントにおける上記マーカーのレベルを比較してもよい。
【0042】
また、生物学的試料におけるsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルは、上記の測定方法により測定でき、ELISA法による測定が好ましい。
【0043】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、上記予測工程は、医師による判断を含まない。
【0044】
さらに、本発明の別の態様によれば、副作用の発症の予測とは、副作用が発症する前にその発症を予測することに加えて、副作用のグレードが低い場合において副作用が発症していることの予測も含む。ここで、副作用のグレードが低いとは、好ましくは1~2である。本発明の別の態様によれば、副作用の発症の予測とは、免疫関連副作用(irAE)評価が低い場合において副作用が発症していることの予測も含む。ここで、irAE評価が低いとは、好ましくは1~2である。
【0045】
副作用の発症の予測に際し、副作用を発症した対象(群)における上記抗体医薬の投与前後の生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルの差または比と、副作用を発症しない対象(群)における対応するマーカーのレベルの差または比について比較し、統計学的処理を行ってもよい。また、上記抗体医薬投与後に2回以上上記マーカーのレベルを測定している場合は、任意の2つの測定ポイントにおける上記マーカーのレベルの差または比を比較してもよい。その結果、副作用を発症した対象(群)と副作用を発症しない対象(群)との間に有意差がある場合には、用いた前記マーカーのレベルの差または比を、副作用の発症の可能性を予測する指標とすることができる。上記統計処理としては、U検定(ノンパラメトリカル)、または対応のあるt-検定(正規分布の場合)が挙げられる。
【0046】
本発明の上記抗体医薬の投与に起因する副作用の発症の予測は、例えば、上記抗体医薬を投与後の対象から採取された生物学的試料におけるsCD163のレベルが、投与前の対象の生物学的試料におけるsCD163のレベルに比べて高い場合、副作用を発症する可能性が高いとの指標に基づいて行うことができる。
【0047】
また、上記抗体医薬投与後の対象から採取された生物学的試料におけるsCD163のレベルが、投与前の対象から採取された生物学的試料におけるsCD163のレベルに比べて好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは1.6倍以上、さらにより好ましくは1.8倍以上、さらにより一層好ましくは2倍以上高い場合、副作用を発症する可能性が高いと予測することができる。また、上記抗体医薬投与後の対象から採取された生物学的試料におけるsCD163濃度が、投与前の対象の生物学的試料におけるsCD163濃度に比べて好ましくは10ng/mL、より好ましくは15ng/mL、さらに好ましくは20ng/mL、さらにより好ましくは40ng/mL以上高い場合、副作用を発症する可能性が高いと予測することができる。
【0048】
本発明の上記抗体医薬の投与に起因する副作用の発症の予測は、例えば、上記抗体医薬を投与後の対象から採取された生物学的試料におけるCXCL5のレベルが、投与前の対象の生物学的試料におけるCXCL5のレベルに比べて高い場合、副作用を発症する可能性が高いとの指標に基づいて行うことができる。
【0049】
また、上記抗体医薬投与後の対象から採取された生物学的試料におけるCXCL5のレベルが、投与前の対象の生物学的試料におけるCXCL5のレベルに比べて、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上、さらにより好ましくは1.3倍以上高い場合、副作用を発症する可能性が高いと予測することができる。また、上記抗体医薬投与後の対象から採取された生物学的試料におけるCXCL5の濃度が、投与前の対象の生物学的試料におけるCXCL5の濃度に比べて、好ましくは50pg/mL、より好ましくは100pg/mL、さらに好ましくは150pg/mL以上高い場合、副作用を発症する可能性が高いと予測することができる。
【0050】
また、本発明の一つの態様によれば、対象において測定されたsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルが、上記抗体医薬の投与に起因する副作用の発症について、予め設定された閾値から外れる場合には、副作用を発症する可能性が高いと予測することができる。予め設定された閾値から外れる場合とは、例えば、上記マーカーのレベルが予め設定された閾値と同じもしくは該閾値より高い場合をいい、後述のように閾値が上限値と下限値を有する場合には、上記マーカーのレベルが該上限値と同じもしくは該上限値より高い、または下限値と同じもしくは該上限値より低い場合をいう。
【0051】
上記の別の態様によれば、副作用を発症した対象(群)または副作用を発症しない対象(群)における上記抗体医薬投与前後のsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベル差またはレベル比から予め閾値を設定することができる。また、上記抗体医薬投与後に2回以上上記マーカーのレベルを測定している場合は、任意の2つの測定ポイントにおける上記マーカーのレベルの差または比に基づいて予め閾値を設定することができる。副作用の発症の予測は、上記閾値と、副作用の発症を予測する対象の対応するマーカーのレベル差またはレベル比とを比較することにより行ってもよい。
当業者であれば、副作用を発症した対象(群)、副作用を発症しない対象(群)または副作用を発症した対象(群)および副作用を発症しない対象(群)(以下、全対象(群)ともいう)の上記抗体医薬投与前後のsCD163およびCXCL5から選択されるマーカーのレベル差またはレベル比から、閾値を適宜設定することができる。閾値としては、特に限定されるものではないが、例えば副作用を発症した対象(群)、副作用を発症しない対象(群)または全対象(群)の上記マーカーのレベル差または比の平均値、中央値、Xパーセンタイル値を使用することができ、好ましくは平均値である。ここでXは任意の数値を選択することができ、3、5、10、15、20、30、40、60、70、80、85、90、95、97を適宜使用することができる。閾値は1つであってもよいし、副作用の種類、投与する抗体医薬の種類、抗体医薬を投与する対象の状態、測定するマーカーの種類等またはそれらの組合せに応じて複数設定することもできる。
また、閾値としては、例えば副作用を発症した対象(群)、副作用を発症しない対象(群)または全対象(群)から採取された生物学的試料における上記マーカーのレベル差または比の平均値、中央値、Xパーセンタイル値を中心に、特定の数値幅を設けることができる。中心の数値としては、平均値を用いることが好ましい。上記数値幅は、副作用を発症した対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差または比と、副作用を発症しない対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差または比とに基づいて決定できる。または、上記数値幅は、全対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差または比に基づいて決定できる。上記数値幅として、例えば、全対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差または比の標準偏差、標準誤差を用いることができる。また、全対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差または比を用いてROC曲線を作成し上限値および下限値を設定してもよい。また、上記閾値は、数値幅を有することから、上限値と下限値とが存在する。
また、閾値としては、副作用を発症した対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差もしくは比と、副作用を発症しない対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差もしくは比とに基づいて、または全対象(群)上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベル差または比に基づいて特定の上限値および下限値を設定できる。ここで、前記上限値および前記下限値はそれぞれ独立して設定してもよく、前記上限値と下限値の絶対値が同じになるように設定してもよい。例えば、全対象(群)を用いてROC曲線を作成し上限値および下限値を設定してもよく、また、全対象(群)における任意の2つのXパーセンタイル値(Xの値は異なるものである)を上限値および下限値と設定してもよい。
【0052】
上記閾値としては、例えば、上記抗体医薬投与後のCXCL5のレベルの、抗体医薬投与前のCXCL5のレベルに対する比が、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.3倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上である場合を有意とし、その比を閾値として用いることができる。また、例えば、上記抗体医薬投与後のsCD163のレベルの、抗体医薬投与前の対応するsCD163のレベルに対する比が、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは1.6倍以上、さらにより好ましくは1.8倍以上、さらにより一層好ましくは2倍以上である場合を有意とし、その比を閾値として用いることができる。
さらに、閾値が、上記抗体医薬投与後のCXCL5のレベルの、抗体医薬投与前のCXCL5のレベルに対する比の全対象(群)の平均値を中心に特定の数値幅を設けた値である場合には、該数値幅は、例えば、20~75%、好ましくは30~60%、特に好ましくは40~50%である。閾値が、上記抗体医薬投与後のCXCL5のレベルの、抗体医薬投与前のCXCL5のレベルに対する差の全対象(群)の平均値を中心に特定の数値幅を設けた値である場合には、該数値幅は、例えば、50~400pg/mL、好ましくは70~200pg/mL、特に好ましくは100~150pg/mLである。また、閾値が、上記抗体医薬投与後のsCD163のレベルの、抗体医薬投与前のsCD163のレベルに対する比の全対象(群)の平均値を中心に特定の数値幅を設けた値である場合には、該数値幅は、例えば、15~50%、好ましくは20~40%、より好ましくは25~35%である。閾値が、上記抗体医薬投与後のsCD163のレベルの、抗体医薬投与前のsCD163のレベルに対する差の全対象(群)の平均値を中心に特定の数値幅を設けた値である場合には、該数値幅は、例えば、1~25ng/mL、好ましくは2~10ng/mL、より好ましくは2.5~5ng/mLである。
また、上記抗体医薬投与後のCXCL5のレベルの、抗体医薬投与前のCXCL5のレベルに対する比を用いる場合の閾値として特定の上限値と下限値を設定する場合は、該上限値は、例えば、20~60%、好ましくは30~50%であり、該下限値は、例えば、-60~-20%、好ましくは-50~-30%である。上記抗体医薬投与後のCXCL5のレベルの、抗体医薬投与前のCXCL5のレベルに対する差を用いる場合の閾値として特定の上限値と下限値を設定する場合は、該上限値は、例えば、50~300pg/mL、好ましくは100~200pg/mLであり、該下限値は、例えば、-300~-50pg/mL、好ましくは-200~-100pg/mLである。また、上記抗体医薬投与後のsCD163のレベルの、抗体医薬投与前のsCD163のレベルに対する比を用いる場合の閾値として特定の上限値と下限値を設定する場合は、該上限値は、例えば、20~60%、30~50%、好ましくは35~45%であり、該下限値は、例えば、-40~0%、-30~-10%、好ましくは-25~-15%である。また、上記抗体医薬投与後のsCD163のレベルの、抗体医薬投与前のsCD163のレベルに対する差を用いる場合の閾値として特定の上限値と下限値を設定する場合は、該上限値は、例えば、7.5~25ng/mL、好ましくは7.5~12.5ng/mLであり、該下限値は、例えば、-15~2.5ng/mL、好ましくは-2.5~2.5ng/mLである。
予め設定された閾値と、対象のレベル差またはレベル比とを比較することにより、対象が副作用を発症する可能性を予測、判定または決定することが可能になる。
【0053】
また、上記の別の態様によれば、副作用を発症した対象(群)または副作用を発症しない対象(群)における上記抗体医薬投与後のsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルから予め閾値を設定することができる。副作用の発症の予測は、上記閾値と、副作用の発症を予測する対象の対応するマーカーのレベルとを比較することにより行ってもよい。
当業者であれば、副作用を発症した対象(群)または副作用を発症しない対象(群)の上記抗体医薬投与後のsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルから、閾値を適宜設定することができる。閾値としては、特に限定されるものではないが、例えば副作用を発症した対象(群)または副作用を発症しない対象(群)の上記マーカーのレベルの平均値、中央値、Xパーセンタイル値を使用することができ、好ましくは平均値である。ここでXは任意の数値を選択することができ、3、5、10、15、20、30、40、60、70、80、85、90、95、97を適宜使用することができる。閾値は1つであってもよいし、副作用の種類、投与する抗体医薬の種類、抗体医薬を投与する対象の状態、測定するマーカーの種類等またはそれらの組合せに応じて複数設定することもできる。
また、閾値としては、例えば副作用を発症した対象(群)または副作用を発症しない対象(群)における上記抗体医薬投与後の生物学的試料における上記マーカーのレベルの平均値、中央値、Xパーセンタイル値を中心に、特定の数値幅を設けることができる。中心の数値としては、平均値を用いることが好ましい。上記数値幅は、副作用を発症した対象(群)の上記抗体医薬投与後の上記マーカーのレベルと、副作用を発症しない対象(群)の上記抗体医薬投与後の上記マーカーのレベルとに基づいて決定できる。また、上記閾値は、数値幅を有することから、上限値と下限値とが存在する。
また、閾値としては、副作用を発症した対象(群)の上記抗体医薬投与後の上記マーカーのレベルと、副作用を発症しない対象(群)の上記抗体医薬投与前後の上記マーカーのレベルとに基づいて、特定の上限値および下限値を設定できる。ここで、前記上限値および前記下限値はそれぞれ独立して設定してもよく、前記上限値と下限値の絶対値が同じになるように設定してもよい。
予め設定された閾値と、対象のレベルとを比較することにより、対象が副作用を発症する可能性を予測、判定または決定することが可能になる。
【0054】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用をモニタリングする方法であって、抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを含んでなる方法が提供される。かかる方法は、データを取得する方法、副作用の発症を予測する方法と同様の手法により実施することができる。かかるモニタリングは、対象における副作用の発症状況または副作用のグレードまたはirAE評価を経時的に確認する上で有利である。
【0055】
本発明では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象において、該抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するための、sCD163またはCXCL5を含んでなるマーカーも提供される。上記マーカーはsCD163単独またはCXCL5単独を用いてもよく、また、sCD163とCXCL5とを組み合わせてもよく、さらに、他のマーカーと組み合わせてもよい。かかるマーカーの態様は、データを取得する方法、副作用の発症を予測する方法に関する記載に準じて実施することができる。
【0056】
本発明では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象において、該抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するためにsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーを検出またはそのレベルを測定する診断薬も提供される。上記診断薬を用いることにより、例えば、上記に説明した各種の測定方法を行うことができる。上記測定方法としては、例えば、免疫測定法、電気泳動法、ウエスタンブロッティング法、質量分析法等が挙げられ、好ましくは免疫測定法である。ここで、免疫測定法としては、イムノクロマトグラフィー法も含まれる。
したがって、上記診断薬としては、例えば、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を含有させることができる。抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分としては、上記免疫測定法における抗体と同様のものを使用することができる。
かかる診断薬の態様は、データを取得する方法、副作用の発症を予測する方法に関する記載に準じて実施することができる。
【0057】
また、本発明では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象において、該抗体医薬に起因する副作用の発症を予測するために、sCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーを検出またはそのレベルを測定する診断用キットも提供される。これらのキットには、上記に説明した各種の測定方法を行うために、測定方法に応じて、各種の試薬を構成成分として含有させることができる。上記測定方法としては、例えば、免疫測定法、電気泳動法、ウエスタンブロッティング法、質量分析法等が挙げられ、好ましくは免疫測定法である。ここで、免疫測定法としては、イムノクロマトグラフィー法も含まれる。
したがって、上記診断用キットとしては、例えば、抗sCD163抗体、抗CXCL5抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの成分を含有させることができる。上記キットには、更に、標識物質の発色系試薬等、実施する測定方法に応じて、周知の試薬を含有させることができる。
上記の診断用キットの態様は、データを取得する方法、副作用の発症を予測する方法または診断薬に関する記載に準じて実施することができる。
本発明の別の態様によれば、上記診断キットは、後述の、薬剤の予防投与の判断に用いるため、または投与した薬剤の効果を確認するために用いることもできる。本発明の別の好ましい態様によれば、上記診断キットは、後述の、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症の予測のための検査の計画を調整または決定するためのデータを取得するために用いることもできる。
【0058】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定し、得られた副作用の発症の予測結果に基づき、該副作用の発症を予防、抑制もしくは遅延する方法、発症した副作用のグレードまたはirAE評価を低く保持する方法、または、発症した副作用を改善する方法が提供される。ここで、副作用のグレードまたはirAE評価が低いとは、好ましくは1~2である。上述の、副作用の発症を予防、抑制もしくは遅延する方法、発症した副作用のグレードまたはirAE評価を低く保持する方法、または、発症した副作用を改善する方法としては、例えば、有効量の薬剤を投与すること、または、投与している上記抗体医薬の量の低減または上記抗体医薬の投与の中止または休止が挙げられる。投与される薬剤は、発症が予測された、または、発症した副作用に有用な薬剤が選択される。例えば、副作用が免疫関連副作用の場合には、副腎皮質ホルモン等のステロイド、免疫抑制剤が挙げられ、ステロイドとして、具体的には、コルチゾール(ヒドロコルチゾン、コルチゾン)、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン)、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾンまたはそれらの塩等が挙げられる。投与される薬剤としては、好ましくは、血中半減期が3時間程度、生物学的半減期が12~36時間である、中間型のステロイド、より好ましくはメチルプレドニゾロン、プレドニゾロンである。上記いずれかの別の好ましい態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定し、副作用の発症の予測結果に基づき、薬剤を予防投与するか否かの判断に用いる方法を含んでなる。
【0059】
したがって、本発明の別の好ましい態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬を投与した対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定し、得られた副作用の発症の予測結果に基づき、該副作用の発症を予防、抑制もしくは遅延する方法、発症した副作用のグレードまたはirAE評価を低く保持する方法、または、発症した副作用を改善する方法であって、有効量の薬剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含むものである。
【0060】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、投与した薬剤の効果を確認する方法であって、上述の薬剤が投与された対象から採取された生物学的試料において、sCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを含んでなる方法が提供される。上記薬剤の効果を確認する方法は、副作用の発症を予測する方法に関する記載に準じて実施することができる。ここで、薬剤の効果を確認するために、マーカーのレベル差またはレベル比を用いる場合には、薬剤の効果を確認する対象における、上記薬剤投与後の対象からの生物学的試料における上記マーカーのレベルと、上記抗体医薬投与前の対象から採取された生物学的試料における上記マーカーのレベルとを用いてよい。上記薬剤の投与後としては、例えば、上記薬剤を投与してから12週以内が挙げられ、好ましくは9週以内、さらに好ましくは6週以内である。上記薬剤の効果としては、例えば、副作用の発症を予防、抑制もしくは遅延すること、発症した副作用のグレードまたはirAE評価を低く保持すること、または、発症した副作用を改善することが挙げられる。
【0061】
上記薬剤の有効量は、特に限定されず、薬剤の種類、純度、副作用の種類、程度、対象の種類、性質、性別、年齢、症状等に応じて当業者によって、適宜決定される。例えば、かかる有効量としては、0.1~20mg/体重kg/日、好ましくは1.0~20mg/体重kg/日を1回または数回等が挙げられる。
【0062】
本発明の対象は、哺乳動物、例えば、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウシ、霊長類などであり、好ましくはヒトであり、より好ましくは、癌、肉腫、または悪性中皮腫に罹患したヒトである。また、薬剤、好ましくはステロイド、を投与されたヒトであってもよい。
【0063】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症の予測を補助する方法であって、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを含んでなる方法が提供される。
【0064】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を診断する方法であって、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを含んでなる方法が提供される。
【0065】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症の診断を補助する方法であって、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを含んでなる方法が提供される。
【0066】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つ抗体医薬を投与された対象における、該抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するためのマーカーとしての、sCD163またはCXCL5の使用が提供される。また、上記sCD163またはCXCL5は、好ましくは、上記対象から採取された生物学的試料中に含まれるものである。
【0067】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つ抗体医薬を投与された対象において、該抗体医薬の投与に起因する副作用の発症を予測するためのマーカーの製造における、sCD163またはCXCL5の使用が提供される。
【0068】
また、本発明の別の態様によれば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体およびそれらの抗原結合断片から選択される少なくとも一つの抗体医薬の投与に起因する副作用の発症の予測のための検査の計画を調整または決定するためのデータを取得する方法であって、上記抗体医薬を投与された対象から採取された生物学的試料においてsCD163およびCXCL5から選択される少なくとも一つのマーカーのレベルを測定することを含んでなる方法が提供される。通常、臨床検査は、上記抗体医薬の投薬間隔である2~3週間毎に行われている。上記方法において、得られたデータに基づき、副作用を発症する可能性が高いと予測された場合には、通常より短い間隔、例えば、1週間毎~週2回、に変更することができる。さらに、臨床検査項目も、副作用を発症する可能性が高いとの予測に伴い、通常の臨床検査項目から変更することができる。
【0069】
上記の通常の臨床検査項目を以下に例示する。
プロトコル治療:0週(投与前)
・身体所見:ECOG, PS
・皮膚所見:皮膚転移巣の有無、大きさ、個数
・血液検査(血算):赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビン値、ヘマトクリット、白血球分画
・生化学検査:AST、ALT、γ-GTP、ALP、LDH、総ビリルビン、BUN、クレアチニン、CK、TSH、T3、T4、KL6、コルチゾール
・併用治療・支持療法:プロトコル治療中に実施した併用療法・支持療法の内容を記録する。
・自他覚所見:以下の項目について、CTCAE v4.0-JCOGでGradeを判定する。
胃腸障害、皮膚および皮下組織障害、精神障害、呼吸器、胸郭および縦隔障害
プロトコル治療:3週
・身体所見:ECOG, PS
・皮膚所見:皮膚転移巣の有無、大きさ、個数
・血液検査(血算):赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビン値、ヘマトクリット、白血球分画
・生化学検査:AST、ALT、γ-GTP、ALP、LDH、総ビリルビン、BUN、クレアチニン、CK、TSH、T3、T4、KL6、コルチゾール
・併用治療・支持療法:プロトコル治療中に実施した併用療法・支持療法の内容を記録する。
・自他覚所見:以下の項目について、CTCAE v4.0-JCOGでGradeを判定する。
胃腸障害、皮膚および皮下組織障害、精神障害、呼吸器、胸郭および縦隔障害
プロトコル治療終了時(6週)
・身体所見:ECOG, PS
・皮膚所見:皮膚転移巣の有無、大きさ、個数
・血液検査(血算):赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビン値、ヘマトクリット、白血球分画
・生化学検査:AST、ALT、γ-GTP、ALP、LDH、総ビリルビン、BUN、クレアチニン、CK、TSH、T3、T4、KL6、コルチゾール
・胸部CT:間質性肺炎の有無、胸水の有無を検証
・自他覚所見:以下の項目について、CTCAE v4.0-JCOGでGradeを判定する。
胃腸障害、皮膚および皮下組織障害、精神障害、呼吸器、胸郭および縦隔障害
【0070】
上記の「副作用を発症する可能性が高いと予測された場合」に短い間隔で測定する臨床検査項目を例示する。
末梢血、白血球分画、CRP
【0071】
上述の、副作用の発症を予防、抑制または遅延する方法、発症した副作用のグレードまたはirAE評価を低く保持する方法、発症した副作用を改善する方法、副作用の発症の予測を補助する方法、副作用の発症を診断する方法、副作用の発症の診断を補助する方法、マーカーとしての使用、マーカーの製造のための使用、副作用の発症の予測のための検査の計画を決定するためのデータを取得する方法の態様はいずれも、データを取得する方法、副作用の発症を予測する方法と同様の手法により実施することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術範囲は、これらの例示に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書に記載の単位や測定方法はJIS規格による。
【0073】
試験例1:ニボルマブ投与前後の患者の血清中のsCD163およびCXCL5の測定
ニボルマブを投与した悪性黒色腫に罹患した患者8名を対象として行った。ニボルマブを投与した患者8名のうち7名には、ニボルマブ投与に起因する副作用は認められなかった。一方、1名の患者にはニボルマブ投与に起因する副作用が認められた。副作用の認められた患者は、黒色腫転移巣を有しており、3週間に一度2mg/kgのニボルマブが投与された。ニボルマブ投与6ヶ月後に、MRIにて脳への転移、CTスキャンにて全身への転移を検査した結果、脳に転移していると診断された。同時期に、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが増加し始め(2.84μIU/mL)、ニボルマブ投与8ヶ月後に血清中のTSHレベルが7.07μIU/mLであることが確認され、上記患者は下垂体機能性低下症に罹患していることが疑われた。そのため、上記患者に関し、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)負荷試験を行ったところ、血清中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の低下(1.0ng/mL未満)およびコルチゾールの低下(0.8μg/dL)が認められたことから、上記患者はACTH欠損症と診断された。
【0074】
上記患者8名について、ニボルマブの投与前および投与6週後の血清を採取し、血清中のsCD163およびCXCL5の濃度をELISA法にて測定した。具体的には、血清中のsCD163濃度測定はsCD163に特異的に結合する抗体を含むキットHuman CD163 DuoSet(カタログ番号:DY1607)(R and D system、Minneappolis,MN)を用いて、プロトコールに従い行った。血清中のCXCL5濃度測定はHuman CXCL5/ENA-78 DuoSet ELISA(カタログ番号:DY254)(R and D system、Minneappolis,MN)を用いて、プロトコールに従い行った。
【0075】
また、TNFαの濃度に関しても、ニボルマブの投与前および投与6週後の血清を採取し、血清中のTNFαの濃度を、ELISA法にて測定した。具体的には、血清中のTNFα濃度測定はHuman TNFa DuoSet(カタログ番号:DY210)(R and D system、Minneappolis,MN)を用いて、プロトコールに従い行った。
【0076】
図1A、Bに示される通り、ニボルマブ投与に起因する副作用が認められた1名の患者では、ニボルマブ投与に起因する副作用が認められなかった7名の患者に比べて、血清中のsCD163およびCXCL5の濃度がアップレギュレートされた(検体数 n=3の場合、対応のあるt検定、p<0.05で有意差有り)。【0077】
試験例2:ニボルマブ投与前後の患者の血清中のsCD163およびCXCL5の測定(46症例)
試験例1と同様にニボルマブを投与した悪性黒色腫に罹患した患者46名を対象とした。具体的には、患者1~46に、3週間に一度2mg/kgまたは2週間に一度3mg/kgニボルマブを投与した。上記患者46名について、ニボルマブの投与前および投与6週後の血清を採取し、血清中のsCD163およびCXCL5の濃度をELISA法にて測定した。なお、上記46名の患者のうち、患者1~8は試験例1の患者と同じ患者であり、試験例1の後に継続して診察を行った。
結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
JP2018003995A1_000002t.gif

【0079】
患者4、5、および7は、試験例1の診察時点ではニボルマブ投与に起因する副作用が確認されていなかった。その後の診察により、患者4はニボルマブ投与8週後に、患者5はニボルマブ投与60週後に、患者7はニボルマブ投与16週後に、表1の副作用の発症が認められた。また、患者8はニボルマブ投与30週後に下垂体炎の発症が認められた。
【0080】
上記表1の結果に基づき予め設定したカットオフ値(閾値)を指標として、以下の基準に従い陽性的中率、陰性的中率、および的中率を求めた。
具体的には、実際に副作用が認められた患者のうち、本試験においても副作用を発症する可能性が高いと判定された場合を「陽性」とし、副作用を発症する可能性が高いと判定されなかった場合を「偽陰性」とした。
実際に副作用が認められかった患者のうち、本試験においても副作用を発症する可能性が高いと判定されなかった場合を「陰性」とし、副作用を発症する可能性が高いと判定された場合を「偽陽性」とした。
本試験において副作用を発症する可能性が高いと判定された患者のうち実際に副作用が認められた患者、すなわち、陽性患者、の割合を陽性的中率とした。
本試験において副作用を発症する可能性が高いと判定されなかった患者のうち実際に副作用が認められなかった患者、すなわち、陰性患者、の割合を陰性的中率とした。
実際に副作用が認められた患者のうち、本試験において副作用を発症する可能性が高いと判定された患者の割合を感度とした。
実際に副作用が認められかった患者のうち、本試験において副作用を発症する可能性が高いと判定されなかった患者の割合を特異度とした。
全患者に対する陽性患者および陰性患者の割合を本試験における的中率とした。
【0081】
全46症例の増減比データについて、sCD163の平均値は10.8%、CXCL5での平均値は0.0%であった。平均値を中心とした増減比データについて、sCD163の標準偏差は30.8%、CXCL5での標準偏差は40.5%であった。
【0082】
1.sCD163およびCXCL5の標準偏差を基にした閾値設定
sCD163およびCXCL5の増減比データの平均値を中心に標準偏差(σ)から±1σで閾値を設定した。(設定された閾値:sCD163の上限42%下限-20%、CXCL5の上限41%下限-41%)
ここで、測定されたCXCL5の増減比が上記閾値の上限値以上もしくは下限値以下であるか、または、測定されたsCD163の増減比が上記閾値の上限値以上もしくは下限値以下である患者を、副作用を発症する可能性が高い患者とした。
上記基準に基づき、的中率等を求めた。
この結果を表2に示す。
【表2】
JP2018003995A1_000003t.gif

【0083】
2.sCD163のROC曲線を基にした閾値設定
46症例のsCD163の増減比データとその平均値の差分の絶対値に基づいてROC曲線を作成した。図2にROC曲線を示す。
ROC曲線の横軸は、(1-特異度)を表し、これは、偽陽性の割合と共に増大する。縦軸は、感度を表す。なお、作成にあたり、irAE=1を「陽性」としている。このROC曲線で「感度-(1-特異度)」が最大となる点は0.231で、ROC曲線下の面積(AUC)は0.746であった。
sCD163の平均値を中心に±21.3%で閾値を設定した。
(設定された閾値は、sCD163の上限32%下限-11%)
測定されたsCD163の増減比データが、上記閾値の上限値以上または下限値以下である患者を、副作用を発症する可能性が高い患者とした。
上記基準に基づき、的中率等を求めた。
この結果を表3に示す。
【表3】
JP2018003995A1_000004t.gif

【0084】
3.sCD163およびCXCL5のROC曲線を基にした閾値設定
さらに、2に記載のsCD163と同様に、CXCL5の増減比データとその平均値の差分の絶対値に基づいてROC曲線を作成し、CXCL5の閾値も設定した。
(設定された閾値としては、sCD163の上限32%下限-11%、CXCL5の上限48%下限-48%であった。)
ここで、測定されたCXCL5の増減比が上記閾値の上限値以上もしくは下限値以下であるか、または、測定されたsCD163の増減比が上記閾値の上限値以上もしくは下限値以下である患者を、副作用を発症する可能性が高い患者とした。
上記基準に基づき、的中率等を求めた。
その結果、陽性的中率は71.4%、陰性的中率は88.9%、感度は90.9%、的中率は78.3%であり、上記2のsCD163のみの場合に比べて上昇した。一方、特異度は、上記2のsCD163のみの場合と同程度であった。
【0085】
4.sCD163およびCXCL5で同じ閾値幅にて設定
sCD163およびCXCL5の閾値を、平均値を中心に±32%に設定した。(閾値は、sCD163の上限43%下限-21%、CXCL5上限32%下限-32%であった。)
ここで、測定されたCXCL5の増減比が上記閾値の上限値以上もしくは下限値以下であるか、または、測定されたsCD163の増減比が上記閾値の上限値以上もしくは下限値以下である患者を、副作用を発症する可能性が高い患者とした。
上記基準に基づき、的中率等を求めた。
この結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
JP2018003995A1_000005t.gif
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2