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明細書 :新規放射線防護剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年5月9日(2019.5.9)
発明の名称または考案の名称 新規放射線防護剤
国際特許分類 A61K  31/445       (2006.01)
A61K  31/4709      (2006.01)
A61K  31/454       (2006.01)
A61K  31/4535      (2006.01)
A61P  37/00        (2006.01)
A61P  39/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P   1/04        (2006.01)
FI A61K 31/445
A61K 31/4709
A61K 31/454
A61K 31/4535
A61P 37/00
A61P 39/00
A61P 43/00 105
A61P 1/04
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2018-528829 (P2018-528829)
国際出願番号 PCT/JP2017/026101
国際公開番号 WO2018/016523
国際出願日 平成29年7月19日(2017.7.19)
国際公開日 平成30年1月25日(2018.1.25)
優先権出願番号 2016142646
優先日 平成28年7月20日(2016.7.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】植田 弘師
【氏名】出口 雄一
【氏名】永井 潤
【氏名】水田 賢志
【氏名】鈴木 啓司
【氏名】松下 洋輔
【氏名】酒井 佑宜
出願人 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086BC28
4C086GA04
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB07
4C086ZB21
4C086ZC37
要約 本発明は、
式(I)で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩を有効成分として含有する放射線防護剤
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(式中、環Aは縮合環を表わし、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表わす)、特に下記化合物を有効成分として含有する放射線防護剤
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を提供する。本発明の放射線防護剤は放射線被曝から生じる細胞損傷及び細胞死を減少させ、且つ、免疫関連細胞に対する保護効果を有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I)で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩を有効成分として含有する放射線防護剤。
【化1】
JP2018016523A1_000019t.gif
(式中、環Aは縮合環を表わし、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表わす)
【請求項2】
環Aが含窒素縮合環である、請求項1記載の剤。
【請求項3】
環Aが、インドール又はキノリンである、請求項2記載の剤。
【請求項4】
環Aがナフタレンである、請求項1記載の剤。
【請求項5】
環Aがテトラヒドロベンゾチオフェンである、請求項1記載の剤。
【請求項6】
がメチル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の剤。
【請求項7】
式(I)で表される化合物が、下記化合物群から選択される、請求項1記載の剤。
【化2】
JP2018016523A1_000020t.gif

【請求項8】
式(I)で表される化合物が、下記化合物群から選択される、請求項1記載の剤。
【化3】
JP2018016523A1_000021t.gif

【請求項9】
式(I)で表される化合物が下記化合物である、請求項1記載の剤。
【化4】
JP2018016523A1_000022t.gif

【請求項10】
放射線照射後の免疫細胞への保護効果を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の剤。
【請求項11】
放射線照射後の腸管細胞への保護効果を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の剤。
【請求項12】
放射線照射が、がんの放射線治療によるものである、請求項10又は11記載の剤。
【請求項13】
放射線障害の予防及び/又は治療薬である、請求項1~12のいずれか1項に記載の剤。
【請求項14】
放射線障害が、がんの放射線治療時の副作用である、請求項13記載の剤。
【請求項15】
式(I)で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩を有効成分として含有する、放射線障害の予防及び/又は治療薬。
【化5】
JP2018016523A1_000023t.gif
(式中、環Aは縮合環を表わし、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表わす)
【請求項16】
放射線障害が、がんの放射線治療時の副作用である、請求項15記載の予防及び/又は治療薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線被曝後に放射線障害を軽減できる作用、即ち放射線防護作用を有する化合物を含有してなる放射線防護剤に関する。より詳細には、放射線被曝から生じる細胞損傷及び細胞死を減少させ、且つ、免疫関連細胞に対する保護効果を有する放射線防護剤に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線被曝後に放射線障害を軽減できる薬剤を放射線防護剤という。著しい放射線被曝は主に1)造血系、2)消化器系、及び3)心血管/中枢神経系において障害をもたらす。放射線防護剤は、がんの放射線療法の補助のための薬剤としても研究が為されている。
従来の放射線防護剤は、放射線の間接作用によって生ずるラジカルや活性酸素の低減などにより防護効果を示すと考えられている。例えば、システアミン(メルカプトエチルアミン)、WR-2721(S-2-(3-アミノプロピルアミノ)エチル二水素ホスホロチオエート;アミホスチン)等のアミノチオール誘導体がその代表である。しかしながら、現在知られている薬剤は、いずれも判断力、機敏性の低下や嘔吐などの副作用が強く、実用化されていない。さらに既存の放射線防護剤は効果を発揮するには被曝直前に投与する必要があり、突発的な事故による被曝も起こり得ることから、被曝後であっても効果を発揮する放射線防護剤の開発が望まれている。
【0003】
リゾホスファチジン酸(LPA)は、組織傷害時に産生される脂質メディエーターであり、各種のGタンパク質(Gq/11/14、G12/13、Gi/o)と共役する7回膜貫通型受容体(LPA、LPA、LPA、LPA、LPA、LPA)に作用し、神経およびグリア細胞を始めとする各種の細胞に対して栄養因子として働くことが知られている。近年、LPA受容体アゴニストが放射線防護剤として有効であるということが報告されている(特許文献1、非特許文献1)が、効果、安全性等の点からまだ実用化には至っていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2010-510238号公報
【0005】

【非特許文献1】Patil, R. et al., Chemistry & Biology 22, 206-216, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、放射線被曝から生じる細胞損傷及び細胞死を減少させ、且つ、免疫関連細胞に対する保護効果を有する放射線防護剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、LPA受容体アゴニストに着目し、その放射線防護作用について種々の検討を行った。結果、ある特定の構造を有するLPA受容体アゴニストが、放射線照射によって誘導されるアポトーシス(特に腸管細胞)に対して強い抑制効果を有すること、加えて放射線照射後のT細胞やB細胞等の免疫細胞への保護効果をも有していることを見出した。さらに、これらの化合物に優れた、放射線照射後の延命効果があることをマウス個体(インビボ)において確認して本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下を提供する。
[1]式(I)で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩を有効成分として含有する放射線防護剤。
【0009】
【化1】
JP2018016523A1_000003t.gif

【0010】
(式中、環Aは縮合環を表わし、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表わす)
[2]環Aが含窒素縮合環である、上記[1]記載の剤。
[3]環Aが、インドール又はキノリンである、上記[2]記載の剤。
[4]環Aがナフタレンである、上記[1]記載の剤。
[5]環Aがテトラヒドロベンゾチオフェンである、上記[1]記載の剤。
[6]Rがメチル基である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の剤。
[7]式(I)で表される化合物が、下記化合物群から選択される、上記[1]記載の剤。
【0011】
【化2】
JP2018016523A1_000004t.gif

【0012】
[8]式(I)で表される化合物が、下記化合物群から選択される、上記[1]記載の剤。
【0013】
【化3】
JP2018016523A1_000005t.gif

【0014】
[9]式(I)で表される化合物が下記化合物である、上記[1]記載の剤。
【0015】
【化4】
JP2018016523A1_000006t.gif

【0016】
[10]放射線照射後の免疫細胞への保護効果を有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の剤。
[11]放射線照射後の腸管細胞への保護効果を有する、上記[1]~[10]のいずれかに記載の剤。
[12]放射線照射が、がんの放射線治療によるものである、上記[10]又は[11]記載の剤。
[13]放射線障害の予防及び/又は治療薬である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の剤。
[14]放射線障害が、がんの放射線治療時の副作用である、上記[13]記載の剤。
[15]式(I)で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩を有効成分として含有する、放射線障害の予防及び/又は治療薬。
【0017】
【化5】
JP2018016523A1_000007t.gif

【0018】
(式中、環Aは縮合環を表わし、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表わす)
[16]放射線障害が、がんの放射線治療時の副作用である、上記[15]記載の予防及び/又は治療薬。
[17]式(I)で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩の有効量をそれを必要とする対象に投与することを特徴とする、放射線障害の予防及び/又は治療方法。
【0019】
【化6】
JP2018016523A1_000008t.gif

【0020】
(式中、環Aは縮合環を表わし、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表わす)
[18]放射線障害が、がんの放射線治療時の副作用である、上記[17]記載の予防及び/又は治療方法。
[19]放射線障害の予防及び/又は治療に使用する為の式(I)で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩。
【0021】
【化7】
JP2018016523A1_000009t.gif

【0022】
(式中、環Aは縮合環を表わし、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表わす)
[20]放射線障害が、がんの放射線治療時の副作用である、上記[19]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
以下、式(I)で表される化合物(化合物(I)とも称する)及びその医薬上許容され得る塩を本発明化合物と総称する場合がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明化合物は、放射線照射によって引き起こされる幹細胞のアポトーシスを抑制して結果として小腸絨毛組織あるいはT細胞などの免疫細胞保護効果を発揮する。さらに、このような保護効果は放射線照射後においても発揮される。従って、本発明化合物は、従来にない、低濃度で有効な、且つ、免疫細胞への保護効果を有する放射線防護剤、及び放射線照射によって引き起こされる所謂放射線障害の予防及び/又は治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】腸管培養細胞に本発明化合物(化合物1及び化合物2)のアポトーシス抑制効果を示したグラフである。化合物1についてはエナンチオマー(R体及びS体)についても調べた。放射線照射により誘導されたアポトーシス細胞の割合を測定した。
【図2】マウス個体に対する放射線照射時における本発明化合物(化合物1)の延命効果を調べた結果を示す図である。上段はマウス個体生存率を、下段はマウス個体体重推移を示す。γ線照射前後30分に本発明化合物(N=11)もしくはベヒクル(N=22)を腹腔内投与した。p<0.01
【図3】マウス個体に対する放射線照射時における本発明化合物(化合物2)の延命効果を調べた結果を示す図である。
【図4】マウス個体に対する放射線照射時における本発明化合物の延命効果を調べた結果を示す図である。γ線照射後(0.5、1、3、6時間後)に本発明化合物もしくはベヒクルを腹腔内投与した。
【図5】放射線照射時における本発明化合物の小腸保護効果を調べた結果を示す図である。上段が、小腸の絨毛組織を顕微鏡下で観察した像であり、下段左図が小腸絨毛面積を調べた結果を、下段右図が小腸絨毛長さを調べた結果を、それぞれ示したグラフである。
【図6】放射線照射時における本発明化合物の小腸保護効果がLPA遺伝子欠損マウス(LPA2KO)ではほぼ完全に消失していることを示す図である。
【図7】放射線照射時における本発明化合物の小腸クリプト分裂細胞維持効果を調べた結果を示すグラフである。分裂細胞のマーカーであるKi67を指標とし、Ki67陽性細胞を含むクリプト構造の数を測定した。
【図8】放射線照射時における本発明化合物の小腸免疫細胞の保護効果を調べた結果を示すグラフである。小腸絨毛組織におけるT細胞及びB細胞の割合を測定した。T細胞のマーカーとしてCD3を、B細胞のマーカーとしてB220をそれぞれ用い、γ線照射9日後の各マーカーの発現を調べた。
【図9】放射線照射時における本発明化合物の脾臓及び骨髄における本発明化合物(化合物1)の保護効果を示すグラフである。脾臓に対する保護効果はCD3陽性領域を、骨髄に対する保護効果はKi67陽性細胞の数を測定することで評価した。
【図10】口腔扁平上皮がん細胞株の一種であるSAS細胞に対する本発明化合物(化合物1)の放射線保護効果を調べた結果を示すグラフである。上段はSAS細胞においてLPA受容体の発現が低いことを確認した図である。SAS細胞に対して本発明化合物は放射線防護効果を発揮しないことが示された。
【図11】放射線照射により誘導されたアポトーシスにおける本発明化合物の抑制効果を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味を有する。
本明細書において使用する用語を以下に定義する。

【0026】
本明細書中、「縮合環」とは、2個又はそれ以上の環が2個又はそれ以上の原子を共有して結合している環式構造を意味する。
縮合環として、好ましくは1つの単環式芳香族環又は単環式ヘテロ芳香環を含む縮合環であり、より好ましくは単環式の芳香環、ヘテロ芳香環、脂肪族環及びヘテロ脂肪族環からなる群より選ばれた2つの環からなる縮合環である。
単環式の芳香環としては、例えば、ベンゼンが挙げられる。単環式のヘテロ芳香環としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子(該硫黄原子は酸化されていてもよい)および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する、5または6員のヘテロ芳香環が挙げられる。5員のヘテロ芳香環の好適な具体例としては、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール(例、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール)、チアジアゾール(例、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール)、トリアゾール(例、1,2,3-トリアゾール、1,3,4-トリアゾール)等が挙げられる。6員のヘテロ芳香環の好適な具体例としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン(例、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン等)が挙げられる。
単環式の脂肪族環としては、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等が挙げられる。ヘテロ脂肪族環としては、前記ヘテロ芳香環を水素添加したものが挙げられる。
該縮合環の具体例としては、ナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、テトラヒドロベンゾチオフェン、イソベンゾフラン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、インドリジン、プリン、プテリジン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。

【0027】
当該縮合環は、置換可能な位置に任意で置換基を有していてもよい。該縮合環が有していてもよい置換基としては、
(1)ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、
(2)低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等のC1-6アルキル基等)、
(3)シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-6シクロアルキル基等)、
(4)低級アルキニル基(例えば、エチニル、1-プロピニル、プロパルギル等のC2-6アルキニル基等)、
(5)低級アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等のC2-6アルケニル基等)、
(6)アラルキル基(例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、フェネチル等のC7-12アラルキル基等)、
(7)アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等のC6-10アリール基等)、
(8)低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ等のC1-6アルコキシ基等)、
(9)アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等のC6-10アリールオキシ基等)、
(10)ホルミル基又は低級アルカノイル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル等のC1-6アルキル-カルボニル基等)、
(11)アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル、ナフトイル等のC6-10アリール-カルボニル基等)、
(12)ホルミルオキシ基又は低級アルカノイルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ等のC1-6アルキル-カルボニルオキシ基等)、
(13)アリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等のC6-10アリール-カルボニルオキシ基等)、
(14)カルボキシル基、
(15)低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル等のC1-6アルコキシ-カルボニル基等)、
(16)アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル等のC7-12アラルキルオキシ-カルボニル基等)、
(17)カルバモイル基、
(18)モノ-、ジ-又はトリ-ハロゲノ-低級アルキル基(例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル等のモノ-、ジ-又はトリ-ハロゲノ-C1-6アルキル基等)、
(19)オキソ基、
(20)アミジノ基、
(21)イミノ基、
(22)アミノ基、
(23)モノ-低級アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ等のモノ-C1-6アルキルアミノ基等)、
(24)ジ-低級アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ等のジ-C1-6アルキルアミノ基等)、
(25)置換基を有していてもよい、炭素原子と1個の窒素原子に加えて窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれたヘテロ原子を1~3個含んでいてもよい3~8員の含窒素複素環基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、アミノ基、モノ-C1-6アルキルアミノ基、ジ-C1-6アルキルアミノ基、カルボキシル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、カルバモイル基、モノ-C1-6アルキル-カルバモイル基、ジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、C6-10アリール-カルバモイル基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、及びハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニルアミノ基、オキソ基等から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい、炭素原子と1個の窒素原子に加えて窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれたヘテロ原子を1~3個含んでいてもよい3~8員の含窒素複素環基;例えば、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピリジル、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イミダゾリジニル、ピペリジル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、ピペラジニル、N-メチルピペラジニル、N-エチルピペラジニル等)、
(26)アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等のC1-3アルキレンジオキシ基等)、
(27)ヒドロキシ基、
(28)ニトロ基、
(29)シアノ基、
(30)メルカプト基、
(31)スルホ基、
(32)スルフィノ基、
(33)ホスホノ基、
(34)スルファモイル基、
(35)モノ-低級アルキルスルファモイル基(例えば、N-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N-プロピルスルファモイル、N-イソプロピルスルファモイル、N-ブチルスルファモイル等のモノ-C1-6アルキルスルファモイル基等)、
(36)ジ-低級アルキルスルファモイル基(例えば、N,N-ジメチルスルファモイル、N,N-ジエチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N,N-ジブチルスルファモイル等のジ-C1-6アルキルスルファモイル基等)、
(37)低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ等のC1-6アルキルチオ基等)、
(38)アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等のC6-10アリールチオ基等)、
(39)低級アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル等のC1-6アルキルスルフィニル基等)、
(40)アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル等のC6-10アリールスルフィニル基等)、
(41)低級アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等のC1-6アルキルスルホニル基等)、
(42)アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等のC6-10アリールスルホニル基等)、
(43)低級アルキルカルボニルアミノ基(例えば、メチルカルボニルアミノ等のC1-6アルキルカルボニルアミノ基等)等からなる群(本明細書中、置換基群Aという)から選択される置換基が挙げられる。

【0028】
本明細書中、「炭素数1~6のアルキル基」とは、直鎖又は分岐状の炭素数1~6のアルキル基を意味し、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル等が挙げられる。

【0029】
以下、化合物(I)について説明する。

【0030】
【化8】
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【0031】
式(I)において、環Aは縮合環を示す。
環Aにおける縮合環としては、好ましくは、含窒素複素環であり、より好ましくはインドール又はキノリンである。環Aにおける縮合環としては、ナフタレンやテトラヒドロベンゾチオフェンもまた好ましい。
式(I)において、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。
における炭素数1~6のアルキル基としては、好ましくはメチルである。

【0032】
化合物(I)の中でも好ましくは下記式で表される化合物である。

【0033】
【化9】
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【0034】
より好ましくは下記式で表される化合物である。
【化10】
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【0035】
特に好ましくは、下記式で表される化合物である。

【0036】
【化11】
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【0037】
化合物(I)の医薬上許容され得る塩としては、例えば、トリフルオロ酢酸、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ホスホン酸、塩酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、硫酸等の酸との酸付加塩;例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩;例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン等の有機塩基との塩等が挙げられる。

【0038】
化合物(I)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有する場合には、いずれか一方の異性体も、異性体の混合物も化合物(I)に包含される。例えば、化合物(I)に光学異性体が存在する場合には、ラセミ体から分割された光学異性体も化合物(I)に包含される。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)によりそれぞれを単品として得ることができる。また、化合物(I)には、互変異性体等の構造異性体及び幾何異性体が存在し、かかる異性体も本発明の範囲内である。

【0039】
化合物(I)は、結晶であっても無晶形であってもよい。化合物(I)が結晶である場合、結晶形が単一であっても結晶形混合物であっても化合物(I)に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。

【0040】
化合物(I)は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、いずれも化合物(I)に包含される。

【0041】
本発明化合物は、放射線によって誘導されるアポトーシスに対し、顕著な抑制効果を示し、さらに、放射線照射後の免疫細胞、特に小腸絨毛組織や脾臓における免疫細胞に対する保護作用を有する。本発明化合物が有するこのように優れた放射線防護作用により、本発明化合物は、哺乳動物(例、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ等、好ましくはヒト)に対し、放射線防護剤として、また、放射線被曝によって生じる放射線障害の予防及び/又は治療薬として有用である。
本発明における放射線とは、放射性物質から放出されるα線、β線、γ線や人工的に作り出したX線、陽子線、炭素線、中性線、電子線を含み、本発明における放射線障害とは、かかる放射線の被曝や放射線療法に伴う障害であり、天然に存在する放射線源による被曝(自然被曝)は含まない。例えば、原発事故や核爆発による全身性の放射線被曝に起因する急性および/または晩発性放射線障害、あるいはがん治療等の医療目的での放射線照射または放射線被曝事故等による局所性の放射線被曝による急性および/または晩発性放射線障害が挙げられる。これらのうち、本発明化合物は、局所性または全身性の急性放射線障害の防護に用いることが好ましく、特に好ましくは造血・免疫系障害の防護に用いることが好ましい。
また、本発明における防護は、このような放射線被曝やがんの放射線治療時に伴う障害(副作用)の予防および/または治療が含まれるが、治療に用いることが好ましい。
がんの放射線治療時の副作用には急性障害と晩発障害がある。急性障害としては、皮膚障害、口腔等の粘膜障害、悪心、嘔吐、下痢等の消化管障害、咽頭浮腫、呼吸困難、脱毛、頭蓋内圧亢進等が挙げられる。晩発障害としては、白内障、脳壊死、歯若しくは顎骨の壊死、食道狭窄、間質性肺炎/肺線維症、心不全、イレウス、腸出血、膀胱炎又は二次的に誘発されるがん等が挙げられる。本発明化合物は、免疫細胞及び腸管細胞の保護効果に優れていることから、がんの放射線治療時の副作用の軽減に有効である。
放射線被曝による障害もがんの放射線治療時の副作用に準じるが、より重篤な症状を呈する場合がある。

【0042】
本発明の放射線防護剤、あるいは放射線障害の予防及び/又は治療薬は、放射線被曝の前または後60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内、さらに好ましくは10分以内、特に好ましくは5分以内に投与を開始する。また、放射線被曝から1日後以降に更に追加投与をすることも、延命効果や生存率向上の観点から好ましい。

【0043】
本発明の放射線防護剤、放射線障害の予防及び/又は治療薬の投与量は、投与する化合物の種類、放射線障害の防護(予防または治療)の目的、患者の年齢や状態などの条件に応じて適宜選択可能であるが、例えば、生体内で本発明化合物またはその薬理学的に許容される塩の濃度が投与直後に0.5~20μM、好ましくは1~15μM、より好ましくは5~10μMとなるように、投与する。1回の投与あたりの投与量は、体重1kgあたり、化合物(I)として5~50mg、さらに好ましくは20~40mg、特に好ましくは25~30mgである。

【0044】
本発明化合物は、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤;シロップ剤、注射剤等の液状製剤;貼付剤、軟膏剤、硬膏剤等の経皮吸収剤;吸入剤;坐剤として、適宜製剤化することができる。

【0045】
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用されている各種有機あるいは無機担体物質を用いることができる。具体的には、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等を配合することができる。又、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることもできる。

【0046】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。

【0047】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、精製タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。

【0048】
結合剤の例としては、結晶セルロース、白糖、マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。

【0049】
崩壊剤の例としては、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。

【0050】
溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられる。

【0051】
溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。

【0052】
懸濁化剤の例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。

【0053】
等張化剤の好適な例として、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。

【0054】
緩衝剤の好適な例として、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤の好適な例として、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。

【0055】
防腐剤の好適な例として、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。
着色剤の好適な例として、例えばタール色素、カラメル、三二酸化鉄、酸化チタン、リボフラビン類等が挙げられる。
甘味剤の好適な例として、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップ等が挙げられる。

【0056】
化合物(I)、その異性体、溶媒和物及びそれらの医薬上許容され得る塩は、商業的に入手可能なものであるか、あるいはその基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知(既報)の合成法を適用し、さらに所望に応じて適宜修飾して製造することができる。かかる修飾としては、アルキル化、アシル化、アミノ化、イミノ化、ハロゲン化、還元、酸化等が挙げられ、通常当分野で用いられる反応又は方法が利用される。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料もしくは中間体の段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。保護基の化学的特性、その導入の手法、及びその除去は例えばT. Greene and P. Wuts “Protective Groups in Organic Synthesis” (3rded.), John Wiley & Sons NY (1999)に詳述されている。

【0057】
原料化合物は、特に述べない限り、市販されているものを容易に入手できるか、あるいは公知の化合物ライブラリーリソースにより提供を受けることができ、また、その情報に基づいて自体公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。

【0058】
又、各反応及び原料化合物合成の各反応において、反応中に一般的に知られる溶媒を用いる場合がある。
一般的に知られる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ピリジン、ルチジン等の芳香族へテロ環化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化物、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2,2-ジメチルエタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の炭化水素化合物、ギ酸、酢酸等のカルボン酸類、あるいは、水等が挙げられる。
又、反応において用いられる溶媒は、単一の溶媒を用いる場合も、2種類から6種類の溶媒を混合して用いる場合もある。
又、反応において、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等のアミン類や水酸化ナトリウムや炭酸カリウム等の塩基を共存させて行なう場合がある。
又、反応において、例えば、塩酸、硫酸、酢酸等の酸を共存させて行なう場合がある。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。また、使用する試薬及び材料は特に限定されない限り商業的に入手可能である。
【実施例】
【0060】
合成例1
【実施例】
【0061】
【化12】
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【実施例】
【0062】
2-キノリンカルボキシアルデヒド(471mg)をトリフルオロエタノールに溶解し、2-ピペコリン(297mg)を加えて、60℃にて15分撹拌した。40℃に温度を下げて、水素化ホウ素ナトリウム(114mg)を加えて、1時間撹拌した。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(40mL)で希釈後、酢酸エチルエステルで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧下留去後、残渣物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチルエステル:メタノール=10:1)で精製し、2-((2-メチルピペリジン-1-イル)メチル)キノリンを茶褐色液状の生成物(65mg、収率9%)として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ1.18 (d, J = 6.1 Hz, 3H), 1.31-1.45 (m, 2H), 1.50-1.56 (m, 2H), 1.66-1.71 (m, 2H), 2.17-2.22 (m, 1H), 2.46-2.49 (m, 1H), 2.77 (dt, J = 3.7, 11.8 Hz,1H), 3.59 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.27 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 7.48-7.52 (m, 1H), 7.67-7.72 (m, 2H), 7.79 (d, J =8.1 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 8.3 Hz, 1H),8.10 (d, J = 8.6 Hz,1H).
【実施例】
【0063】
合成例2
【実施例】
【0064】
【化13】
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【実施例】
【0065】
(1)2-キノリンカルボキシアルデヒド(1.0g)をメタノールに溶解し、氷冷下にて水素化ホウ素ナトリウム(292mg)を加えて、1時間撹拌した。反応液を減圧下留去後、残渣物を酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧下留去後、白色固体(1.0g)を得た。得られた白色固体(1.0g)をジクロロメタン10mLに溶解し、塩化チオニル(500μL)を加えて、室温にて10時間撹拌した。反応終了後、炭酸カリウム水溶液(10mL)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥した。溶液を減圧下留去後、残渣物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチルエステル:ヘキサン=1:2)で精製し、2-(クロロメチル)キノリンを白色固体(816mg、収率73%)として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ4.85 (s, 2H), 7.56-7.59 (m, 1H), 7.63 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.73-7.76 (m, 1H), 7.84 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 8.6 Hz,1H).
(2)上記(1)で得られた、2-(クロロメチル)キノリン(300mg)をアセトンに溶解し、2-ピペコリン(200mg)と炭酸カリウム(464mg)を加えて、室温にて20時間撹拌した。反応液を水で希釈後、酢酸エチルエステルで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧下留去後、残渣物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチルエステル:メタノール=10:1)で精製し、茶褐色液状の2-((2-メチルピペリジン-1-イル)メチル)キノリン365mg(90%)を得た。
【実施例】
【0066】
製造例 本発明化合物の基本構造を有する化合物の取得
東京大学創薬オープンイノベーションセンターのCore Libraryに含まれる9600化合物について、GqカルシウムアッセイによりLPA受容体アゴニスト作用をスクリーニングし、優れたLPA受容体アゴニスト活性を有する化合物を得て、その基本構造を見出した。次いでその基本構造に基づいて化合物合成の最適化を行い(化合物1については上記合成例1及び2を参照)、下記の化合物(化合物1~4)を得た。得られた化合物について、その放射線防護作用について調べた。
【実施例】
【0067】
【化14】
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【実施例】
【0068】
(※Gqカルシウムアッセイ)
LPA受容体を安定して発現する細胞を用いて、LPA誘導性カルシウムトランジエントを誘導する能力(EC50)について調べた。具体的な試験方法としては以下の通り。
B103細胞に対してLipofectamine2000(Thermo Fisher Scientific社)によってヒトLPA受容体を強制発現させた細胞を24時間培養する。その後10000細胞/ウェルになるように384ウェルプレートに該細胞を播種し、8μM QUEST FLUO-8H、1mg/ml Amaranth、0.1% BSAを加え30分間インキュベーションを行った。さらに適切な濃度に調整された試験化合物を加えた後にFunctional Drug Screening System/μCell(浜松ホトニクス)を用いて緑色蛍光カルシウムインジケーターであるQUEST FLUO-8H由来の蛍光強度を測定した。このカルシウム上昇を化合物によるLPA受容体の活性化強度とした。
同様にして、LPA受容体、LPA受容体、LPA受容体又はLPA受容体を安定して発現する細胞を作製し、それらの細胞を用いて、LPA誘導性カルシウムトランジエントを誘導する能力(EC50)について調べた。
化合物1及び2について測定した各LPA受容体に対するアゴニスト活性を表1に示す。
【実施例】
【0069】
【表1】
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【実施例】
【0070】
実施例1:培養腸管上皮細胞における本発明化合物のアポトーシス抑制効果-1
5%ウシ胎仔血清、インスリン(10μg/ml)を添加したDMEM培地中で培養した腸管上皮細胞(IEC6細胞)を実験に使用した。γ線照射装置(ポニー工業 PS-3100SB)を用いて9グレイのγ線([137Cs])を細胞に照射しアポトーシスを誘導した。
製造例で得られた化合物1~4を用い、アポトーシスが誘導された細胞の割合を調べて、その抑制効果を評価した。具体的にはアポトーシス細胞の割合は以下のようにして評価した。
γ線照射24時間後においてIEC6細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した後に、アポトーシス細胞においてのみ核全体に分布することが知られているヒストンH2AXに対する抗リン酸化ヒストンH2AX抗体(BioLegend社製613401)を用いて蛍光免疫染色法によってアポトーシス細胞の割合を測定した。
化合物1並びに化合物2についての結果を図1に示す。
この方法を用いることにより、本発明化合物1、化合物2ともに有意なアポトーシス抑制効果が認められた。
また、化合物1のエナンチオマーについても検討した結果、R体の化合物1の方がS体と比較すると強いアゴニスト活性を有しており、低濃度の条件においてR体化合物1がS体化合物1よりもより強いアポトーシス抑制効果を示すことが確認された(図1)。
【実施例】
【0071】
実施例2:放射線照射時における本発明化合物の延命効果
9グレイのγ線([137Cs])をマウス個体の全身に照射した。γ線照射前後30分に本発明化合物(化合物1)(30mg/kg)又はベヒクルを腹腔内投与し、投与の有無とマウスの生存率と体重推移の関係について調べた。具体的には以下のようにして調べた。
8週齢のC57BL/6J雄性マウスに対して麻酔下においてγ線照射装置(ポニー工業 PS-3100SB)を用いて9グレイのγ線を全身に照射した。その後、陽圧クリーンラックにてマウスの飼育を継続し、個々のマウスのγ線照射後の生存期間を計測した。
結果を図2に示す。マウスに対してγ線照射前後30分に本発明化合物を腹腔内投与した個体群において有意な延命効果と体重減少抑制効果が確認された。
同様に、本発明化合物(化合物2)をγ線照射前後30分に腹腔内投与した個体群においても有意な延命効果が確認された(図3)。
さらに、本発明化合物(化合物1)の投与の時期とその延命効果について調べた。照射後のみの投与とし、照射後0.5、1、3、及び6時間後に本発明化合物を投与した。結果を図4に示す。放射線を照射した後のみの投与であっても、有意な延命効果が得られ、特に0.5~1時間後に投与すると顕著な延命効果があった。
【実施例】
【0072】
実施例3:放射線照射時における本発明化合物の小腸保護作用
γ線照射前後30分に本発明化合物(化合物1)(30mg/kg)又はベヒクルを腹腔内投与し、投与の有無とγ線照射後の腸管の保護作用との関係について調べた。具体的には9グレイのγ線([137Cs])をマウス個体の全身に照射した後、9日目に頚椎脱臼による安楽死処置を行った直後に小腸を摘出し、4%パラホルムアルデヒドによる固定を4℃にて16時間行った。その後、パラフィンブロック作製装置(マイルストーン製)並びにパラフィン切片作製装置(サーモフィッシャー製)を使用して厚さ5μmの小腸組織パラフィン切片を作製した。この小腸組織パラフィン切片に対してヘマトキシリン・エオシン染色を行い、小腸組織の画像撮影をオールインワン蛍光顕微BIOREVO(KEYENCE)を用いて行った。撮影した画像に対して画像解析ソフトImageJ(NIH)を用いて小腸の絨毛組織の面積、長さを計測した。
結果を図5に示す。γ線照射後72時間において、ベヒクル投与の対照群と比較して本発明化合物投与群では小腸の個々の絨毛の平均面積が大きく、平均長さが長く、γ線を照射していない正常群に近い状態であった。このことから、本発明化合物が放射線による腸管組織の障害を軽減していることがわかる。
化合物1による小腸における放射線防護作用は、LPA遺伝子欠損マウス(LPA2KO)においてほぼ完全に消失した。典型例を図6に示す。この結果はもう1匹のLPA遺伝子欠損マウスにおいても再現できた。LPA遺伝子欠損マウスはJerold Chun博士(Scripps Institute, La jolla, CA)より供与された。
【実施例】
【0073】
実施例4:放射線照射時における本発明化合物の小腸クリプト分裂細胞維持効果
小腸の絨毛組織はその直下にある分裂細胞を含むクリプト構造より新しい細胞が供給されることにより絨毛構造を維持している。放射線照射によりこのクリプト分裂細胞が傷害を受けることが報告されている。
そこで12グレイのγ線([137Cs])を照射する対象となるマウス個体に対して、γ線照射前後30分に本発明化合物(化合物1)(30mg/kg)又はベヒクルを腹腔内投与し、投与の有無とγ線照射後の小腸のクリプト分裂細胞の状態との関係について調べた。分裂細胞のマーカーであるKi67を指標としてKi67陽性細胞を含むクリプト構造の維持における本発明化合物の効果をγ線照射後12時間及び72時間後で調べた。具体的には上記方法で作製した小腸組織パラフィン切片に対して抗Ki67抗体(Abcam社ab15580)を用いた蛍光免疫染色法によってKi67陽性細胞の定量解析を行った。
結果を図7に示す。γ線照射によりKi67陽性細胞を含むクリプト構造の数の減少が確認された。一方で、本発明化合物投与群においてはその減少が抑制された。このことから、放射線による分裂細胞死を本発明化合物が防護している可能性が示唆された。
【実施例】
【0074】
実施例5:放射線照射時における本発明化合物の免疫細胞保護効果
9グレイのγ線([137Cs])をマウス個体の全身に照射した。γ線照射前後30分に本発明化合物(化合物1)(30mg/kg)又はベヒクルを腹腔内投与し、投与の有無とγ線照射後の免疫細胞への影響との関係について調べた。具体的には実施例3の小腸パラフィン切片作製と同様に8週齢のC57BL/6J雄性マウスに対してγ線を照射し、照射後9日目に安楽死処置を行った直後に脾臓を摘出し、4%パラホルムアルデヒドによる後固定を4℃、16時間行った。小腸並びに脾臓組織パラフィン切片に対してT細胞マーカーとして抗CD3抗体(Abcam社ab16669)、B細胞マーカーとして抗B220抗体(BioLegend社103201)を用いた蛍光免疫染色法によってT細胞並びにB細胞の定量解析を行った。
小腸絨毛組織におけるT細胞及びB細胞の割合を調べた結果を図8に示す。γ線照射により免疫細胞が減少するが、本発明化合物の投与によりその減少が抑制され、且つ免疫細胞の増殖が確認された。特に、T細胞においてその効果が顕著であった。
これらT細胞やB細胞を供給する2次リンパ組織である脾臓におけるT細胞並びに1次リンパ組織である骨髄における増殖細胞について本発明化合物(化合物1)の保護効果の検討を実施した。結果を図9に示す。
まず、9グレイのγ線照射9日後の脾臓においてはベヒクル群と比較して化合物1投与によってT細胞マーカーであるCD3陽性細胞数の減少が保護された。また、γ線照射のLPA2KOに化合物1を投与した群ではこの保護効果は発揮されなかったことから、化合物1がLPA受容体を介して保護効果を発揮していることが示唆された。さらに9グレイのγ線照射9日後の骨髄においては分裂細胞マーカーであるKi67陽性細胞数の放射線照射による減少が化合物1の投与によって保護されていた。
また、本発明における防護は、がんの放射線治療時に伴う障害(副作用)の予防および/または治療が含まれる。LPA受容体アゴニストである化合物1はLPA受容体を発現していない細胞に対しては保護効果を発揮しないと想定され、従ってLPA受容体の発現が低い腫瘍に対する放射線治療時に応用することができると考えられる。遺伝子発現解析により口腔扁平上皮がん細胞株の一種であるSAS細胞においてLPA受容体の発現が低いことを同定した(図10上段)。このSAS細胞を左足に移植して20日経過したマウスに24グレイのγ線を照射し、その後の移植部位を観察した。結果を図10下段に示す。
γ線照射によるがん細胞の増殖に対しては化合物1を投与したマウス群においてもベヒクル群と同等の抑制効果が確認された。このことは化合物1が放射線照射からがん細胞株を保護しないこと示しており、骨髄などにおける正常細胞は保護するが標的となるがん細胞は保護しないという放射線治療時における副作用軽減剤に化合物1が成り得ることを示唆している。
【実施例】
【0075】
実施例6:培養腸管上皮細胞における本発明化合物のアポトーシス抑制効果-2
実施例1と同様にして本発明化合物(化合物1)のアポトーシス抑制効果について調べた。加えて、既知のLPA受容体アゴニストである、DBIBB(2-[4-(1,3-ジオキソ-1H,3H-ベンゾイソキノリン-2-イル)ブチルスルファモイル]安息香酸)及びGRI977143(2-((3-(1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-2(3H)-イル)プロピル)チオ)安息香酸)についてもそのアポトーシス抑制効果を調べた。
【実施例】
【0076】
【化15】
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【実施例】
【0077】
結果を図11に示す。本発明化合物が1.0μMの投与で有意なアポトーシス抑制効果を示したのに対し、既存のLPA受容体アゴニストであるDBIBBやGRI977143はより高い用量を必要とした。このことから、本発明化合物は既存のLPA受容体アゴニストに比べてより放射線防護作用に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明化合物は、放射線照射によって引き起こされる幹細胞のアポトーシスを抑制して結果として小腸絨毛組織あるいはT細胞などの免疫細胞保護効果を発揮する。さらに、このような保護効果は放射線照射後においても発揮される。従って、本発明化合物は、従来にない、低濃度で有効で、免疫細胞への保護効果を有する放射線防護剤、及び放射線照射によって引き起こされる放射線障害の予防及び/又は治療薬として有用である。
【0079】
本出願は、日本で出願された特願2016-142646(出願日2016年7月20日)を基礎としておりその内容は本明細書に全て包含されるものである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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