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明細書 :両親媒性高分子、およびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-218530 (P2019-218530A)
公開日 令和元年12月26日(2019.12.26)
発明の名称または考案の名称 両親媒性高分子、およびその利用
国際特許分類 C08G  69/44        (2006.01)
A61K   9/51        (2006.01)
A61K  47/34        (2017.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  51/06        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
C08L  77/12        (2006.01)
C08K   5/00        (2006.01)
A61K  31/337       (2006.01)
FI C08G 69/44
A61K 9/51
A61K 47/34
A61P 43/00 121
A61P 35/00
A61K 51/06 100
A61K 45/00
C08L 77/12
C08K 5/00
A61K 31/337
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2018-119349 (P2018-119349)
出願日 平成30年6月22日(2018.6.22)
発明者または考案者 【氏名】牧野 顕
【氏名】清野 泰
【氏名】岡沢 秀彦
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C084
4C086
4J001
4J002
Fターム 4C076AA65
4C076AA67
4C076AA94
4C076AA95
4C076CC27
4C076FF31
4C076FF67
4C084AA12
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA06
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA06
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZB26
4J001DA03
4J001DB05
4J001DC03
4J001DC12
4J001DD07
4J001DD08
4J001EA13
4J001EE29A
4J001FA03
4J001FB01
4J001FC01
4J001GA12
4J001GB12
4J001GD02
4J001GD08
4J001JA20
4J001JC06
4J002CL081
4J002FD206
4J002GB04
4J002HA06
要約 【課題】新規の両親媒性高分子等を提供することを目的とする。
【解決手段】親水性高分子鎖と、疎水性高分子鎖とを有する、両親媒性高分子であり、前記親水性高分子鎖が、下記の式(1):
【化1】
JP2019218530A_000021t.gif
(式中、Rは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数2~6の飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、nは、30~200である。)
で示される構造を含む高分子鎖であることを特徴とする、両親媒性高分子を提供する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
親水性高分子鎖と、疎水性高分子鎖とを有する、両親媒性高分子であり、
前記親水性高分子鎖が、下記の式(1):
【化1】
JP2019218530A_000018t.gif
(式中、Rは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数2~6の飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、nは、30~200である。)
で示される構造を含む高分子鎖であることを特徴とする、両親媒性高分子。
【請求項2】
前記疎水性高分子鎖が、下記の式(2):
【化2】
JP2019218530A_000019t.gif
(式中、mは、15~100である。)
で示される構造を含む高分子鎖であることを特徴とする、請求項1に記載の両親媒性高分子。
【請求項3】
下記の式(3):
【化3】
JP2019218530A_000020t.gif
(式中、Rは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数2~6の飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、Xは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の二置換性アルキル基であり、mは、15~100であり、nは、30~200である。)
で示される高分子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の両親媒性高分子。
【請求項4】
温度応答性であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の両親媒性高分子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の両親媒性高分子により形成されてなる分子集合体。
【請求項6】
疎水性物質を内包することを特徴とする、請求項5に記載の分子集合体。
【請求項7】
前記疎水性物質が、低分子薬剤および治療用放射性薬剤からなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項6に記載の分子集合体。
【請求項8】
前記疎水性物質が、低分子薬剤および治療用放射性薬剤であることを特徴とする、請求項7に記載の分子集合体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の分子集合体を含むことを特徴とする、化学物質搬送システム用分子材料。
【請求項10】
請求項5~8のいずれか1項に記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、ナノポーラス構造を有することを特徴とする、凝集体。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか1項に記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、前記分子集合体に内包された前記疎水性物質が徐放されることを特徴とする、凝集体。
【請求項12】
請求項8に記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、前記分子集合体に内包された前記治療用放射性薬剤が放出されず、かつ、前記分子集合体に内包された前記低分子薬剤が徐放されるものであることを特徴とする、凝集体。
【請求項13】
前記低分子薬剤の放出率が90%以上であることを特徴とする、請求項12に記載の凝集体。
【請求項14】
粒子径が5μm以上であることを特徴とする、請求項10~13のいずれか1項に記載の凝集体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性高分子に関する。また、本発明は、前記両親媒性高分子により形成されてなる分子集合体、および前記分子集合体を含む化学物質搬送システム用分子材料に関する。さらに、本発明は、前記分子集合体により形成されてなる凝集体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ナノテクノロジーへの関心が高まってきており、ナノサイズ物質特有の性質を活かした新規機能性材料の開発が進んでいる。この新規機能性材料は、エネルギー、エレクトロニクス、医薬等の幅広い分野での応用が可能となっている。
【0003】
特に、医薬の分野においては、薬剤搬送システム(ドラッグデリバリーシステム、「DDS」とも称する。)における分子材料として、これらの新規機能性材料の適用が検討されている。
【0004】
例えば、がん治療の分野では、従来からの治療法の一つとして、放射線内照射療法が広く行われている。放射線内照射療法は、非密封の放射性同位元素を用いた治療と、密封された放射性同位元素を用いた治療(「密封小線源療法」とも称される。)と、に分類される。このうち、密封小線源療法は、局所に大線量を照射することが可能であるため、生物学的効果比(RBE)の高い低線量率照射による治療を可能とする。また、密封小線源療法は、内包された放射性核種が漏出しないという利点をも有する。しかし、密封小線源療法は、放射性同位元素を密封した金属カプセルを体内に永久挿入する必要がある、との問題があった。
【0005】
このような問題を解決するべく、非特許文献1、および特許文献1~3には、機能性高分子材料を用いた技術が開示されている。
【0006】
非特許文献1には、放射性同位元素で標識した温度応答性高分子が開示されている。
【0007】
特許文献1には、ナノキャリアとして優れた生体適合性を示すナノ粒子を提供すること等を目的とした、両親媒性ブロックポリマーが開示されている。
【0008】
特許文献2には、がん組織以外への組織への集積性が低く、生体に対する安全性が高く、粒径制御が容易であり、調製法が容易且つ安全である分子集合体を提供すること等を目的とした、両親媒性ブロックポリマーと疎水性ポリマーとからなる粒子状分子集合体が開示されている。
【0009】
特許文献3には、内包させる標識剤や薬剤の種類や目的に応じて、標的部位での保持時間を調整すること等を目的とした、分岐型両親媒性ブロックポリマーおよび機能性物質を含む分子集合体が開示されている。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特許第4936312号公報
【特許文献2】特許第5531332号公報
【特許文献3】特許第5723074号公報
【0011】

【非特許文献1】Kohei Sano et al., J. Nucl. Med., 58, 1380-1385, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献1の技術では、温度応答性高分子に薬剤を内包する性質がないために、その他の薬剤(例えば、抗がん剤、放射線増感剤)を組み合わせて使用することができないという問題がある。
【0013】
また、特許文献1~3の技術では、分子集合体が凝集するという性質を持たないため、標的部位に分子集合体を注入した際に、その部位に該分子集合体が滞留せず、効果的な治療を行うことができないという問題がある。
【0014】
したがって、本発明の一態様は、上記の課題の克服を可能とする高分子材料を提供すること、例えば、新規の両親媒性高分子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、温度応答性を有する新規の両親媒性高分子を見出すことに成功した。また、該両親媒性高分子により形成される分子集合体が温度応答的に凝集体を形成すること、および該分子集合体により形成された凝集体が種々の有用な性質を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一実施形態は以下の構成を包含する。
<1>親水性高分子鎖と、疎水性高分子鎖とを有する、両親媒性高分子であり、
前記親水性高分子鎖が、下記の式(1):
【0016】
【化1】
JP2019218530A_000003t.gif

【0017】
(式中、Rは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数2~6の飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、nは、30~200である。)
で示される構造を含む高分子鎖であることを特徴とする、両親媒性高分子。
<2>前記疎水性高分子鎖が、下記の式(2):
【0018】
【化2】
JP2019218530A_000004t.gif

【0019】
(式中、mは、15~100である。)
で示される構造を含む高分子鎖であることを特徴とする、<1>に記載の両親媒性高分子。
<3>下記の式(3):
【0020】
【化3】
JP2019218530A_000005t.gif

【0021】
(式中、Rは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数2~6の飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、Xは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の二置換性アルキル基であり、mは、15~100であり、nは、30~200である。)
で示される高分子であることを特徴とする、<1>または<2>に記載の両親媒性高分子。
<4>温度応答性であることを特徴とする、<1>~<3>のいずれかに記載の両親媒性高分子。
<5><1>~<4>のいずれかに記載の両親媒性高分子により形成されてなる分子集合体。
<6>疎水性物質を内包することを特徴とする、<5>に記載の分子集合体。
<7>前記疎水性物質が、低分子薬剤および治療用放射性薬剤からなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、<6>に記載の分子集合体。
<8>前記疎水性物質が、低分子薬剤および治療用放射性薬剤であることを特徴とする、<7>に記載の分子集合体。
<9><6>~<8>のいずれかに記載の分子集合体を含むことを特徴とする、化学物質搬送システム用分子材料。
<10><5>~<8>のいずれかに記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、ナノポーラス構造を有することを特徴とする、凝集体。
<11><6>~<8>のいずれかに記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、前記分子集合体に内包された前記疎水性物質が徐放されることを特徴とする、凝集体。
<12><8>に記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、前記分子集合体に内包された前記治療用放射性薬剤が放出されず、かつ、前記分子集合体に内包された前記低分子薬剤が徐放されるものであることを特徴とする、凝集体。
<13>前記低分子薬剤の放出率が90%以上であることを特徴とする、<12>に記載の凝集体。
<14>粒子径が5μm以上であることを特徴とする、<10>~<13>のいずれかに記載の凝集体。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、新規の両親媒性高分子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る両親媒性高分子の1HNMR測定による結果を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る分子集合体溶液の温度を変化させたときの吸光度の変化を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る分子集合体溶液の温度を変化させたときの分子集合体溶液の見た目(濁度)の変化を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る凝集体の構造を走査型電子顕微鏡(SEM)により解析した図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る凝集体において、内包されたドセタキセルおよび放射性同位元素の漏出実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。

【0025】
〔1.概要〕
本発明の一実施形態において、新規の両親媒性高分子を提供する。また、本発明の一実施形態において、前記両親媒性高分子により形成されてなる分子集合体、および前記分子集合体含む化学物質搬送システム用分子材料を提供する。さらに、本発明の一実施形態において、前記分子集合体により形成されてなる凝集体を提供する。

【0026】
本発明者らは、化学物質(疎水性物質)を内包し得る分子集合体について検討するにあたり、その一例として、薬剤を内包する分子集合体に着目して研究を進めた。本発明者らは、そのような分子集合体について詳細に検討を行った結果、以下の知見を得ることに成功した。
・新規の温度応答性両親媒性高分子を見出した。
・該両親媒性高分子により形成される分子集合体は、温度応答的に凝集体を形成することを見出した。
・該分子集合体により形成された凝集体は、該分子集合体に内包された低分子薬剤を徐放する性質を有することを見出した。
・該分子集合体により形成された凝集体は、該分子集合体が低分子薬剤および治療用放射性薬剤を内包する場合に、低分子薬剤のみを徐放する性質を有することを見出した。
・該分子集合体により形成された凝集体は、該分子集合体に内包された低分子薬剤の極めて高い放出率を有することを見出した。

【0027】
上述の通り、従来技術では、薬剤の併用に関する問題(非特許文献1)、および放出速度の制御に関する問題(特許文献1~3)等、種々の問題が存在していた。このような状況下、本発明の一実施形態において、上記従来技術における問題点をすべて解決できる両親媒性高分子、ならびにそれにより形成された分子集合体および凝集体を見出すことは、予測困難なことであった。

【0028】
このように、本発明の両親媒性高分子、ならびにそれにより形成された分子集合体および凝集体は、上記の知見に基づく種々の効果を奏することから、医療(医薬)の分野のみならず、広く工業技術の分野において、極めて有用な新規機能性材料を提供することができる。

【0029】
〔2.両親媒性高分子〕
本発明の一実施形態に係る両親媒性高分子(以下、「本発明の両親媒性高分子」と称する。)は、親水性高分子鎖と、疎水性高分子鎖とを有する、両親媒性高分子であり、前記親水性高分子鎖が、下記の式(1):

【0030】
【化4】
JP2019218530A_000006t.gif

【0031】
で示される構造を含む高分子鎖である。

【0032】
本発明の一実施形態において、上記式(1)におけるRは、直鎖状もしくは分岐状であるアルキル基である。アルキル基の炭素数は、2~6個であることが好ましく、2~4個であることがより好ましく、3個であることが特に好ましい。Rの炭素数が上記より少ない場合、両親媒性分子は温度応答性を示さなくなり、Rの炭素数が上記より多い場合もまた、両親媒性分子は温度応答性を示さないことが予測される。また、アルキル基は、飽和アルキル基であってもよく、不飽和アルキル基であってもよい。アルキル基の構造は、目的に応じて、適宜設計し得る。

【0033】
本発明の一実施形態において、上記式(1)におけるRは、好ましくは、プロピル基、アリル基およびイソプロピル基である。

【0034】
本発明の一実施形態において、上記式(1)におけるnは、30~200であることが好ましく、50~100であることがより好ましく、70であることが特に好ましい。nが上記より小さい場合、両親媒性高分子の親水度が減少する結果、凝集体を形成し、適当な分子集合体が得られない。また、nが上記より大きい場合、両親媒性高分子の親水度が増加する結果、水への可溶性が増大し、適当な分子集合体が得られない。

【0035】
本発明の一実施形態において、上記式(1)におけるRは、好ましくは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数2~6の飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、nは、30~200である。

【0036】
本発明の一実施形態において、本発明の両親媒性高分子における親水性高分子鎖側の末端部分(換言すれば、上記式(1)で示される構造を含む親水性高分子鎖と疎水性高分子鎖とがリンカーを介して結合する側とは反対側の末端部分)は、本発明の両親媒性高分子の機能を阻害しない範囲において適宜設計することができる。上記末端部分は、例えば、合成上の都合等により、任意の置換基や分子で修飾してもよい。上記末端部分は、例えば、グリコール酸、アセチル基等で修飾され得る。

【0037】
本発明の両親媒性高分子は、好ましくは、前記疎水性高分子鎖が、下記の式(2):

【0038】
【化5】
JP2019218530A_000007t.gif

【0039】
で示される構造を含む高分子鎖である。

【0040】
本発明の一実施形態において、上記式(2)におけるmは、15~100であることが好ましく、20~50であることがより好ましく、30であることが特に好ましい。mが上記より小さい場合、疎水性が担保できなくなり、mが上記より大きい場合、分子集合体の形成が困難になる。

【0041】
本発明の一実施形態において、上記式(2)で示されるポリ乳酸は、ポリ-L-乳酸(PLLA)およびポリ-D-乳酸(PDLA)のいずれであってもよい。なお、後述する実施例では、本発明の一例として、PLLAを用いた例を示すが、本発明は、何らこれらに限定されることはない。

【0042】
本発明の一実施形態において、本発明の両親媒性高分子における疎水性高分子鎖側の末端部分(換言すれば、上記式(2)で示される構造を含む疎水性高分子鎖と親水性高分子鎖とがリンカーを介して結合する側とは反対側の末端部分)は、本発明の両親媒性高分子の機能を阻害しない範囲において適宜設計することができる。上記末端部分は、例えば、合成上の都合等により、任意の置換基や分子で修飾してもよい。上記末端部分は、例えば、グリコール酸、アセチル基等で修飾され得る。

【0043】
本発明の両親媒性高分子は、好ましくは、下記の式(3):

【0044】
【化6】
JP2019218530A_000008t.gif

【0045】
で示される高分子である。

【0046】
上記式(3)におけるXは、本発明の両親媒性高分子の親水性高分子鎖と、疎水性高分子鎖とを連結するリンカーである。したがって、本発明の一実施形態において、上記式(3)におけるXは、発明の両親媒性高分子の親水性高分子鎖と、疎水性高分子鎖とを連結することが可能な構造であり、かつ、本発明の一実施形態における効果を奏する構造であれば、特に限定されない。

【0047】
本発明の一実施形態において、上記式(3)におけるXは、直鎖状もしくは分岐状であるアルキル基である。アルキル基の炭素数は、例えば、1~10個であり、1~6個であることが好ましく、2~3個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。また、アルキル基は、飽和アルキル基であってもよく、不飽和アルキル基であってもよい。

【0048】
本発明の一実施形態において、上記アルキル基は、二置換性アルキル基である。本明細書において「二置換性アルキル基」とは、アルキル基の主鎖においてC以外の元素が2個導入されたアルキル基を意味する。C以外の元素としては、特に限定されないが、N、O等が挙げられる。これらは、上記式(3)におけるXと、親水性高分子鎖および/または疎水性高分子鎖との結合様式により変わり得る。例えば、前記結合様式が、アミド結合である場合、C以外の元素はNであり、エステル結合である場合、C以外の元素はOである。したがって、本発明の一実施形態において、二置換性アルキル基は、好ましくは、上記式(3)におけるXと、親水性高分子鎖および/または疎水性高分子鎖との結合部位において、2個のC以外の元素を有し得る。二置換性アルキル基は、上記定義に含まれるものであれば特に限定されない。

【0049】
本発明の一実施形態において、上記アルキル基は、好ましくは、アルキル基の1位および2位のCにアミノ基が導入されている。

【0050】
本発明の一実施形態において、上記式(3)におけるXは、好ましくは、直鎖状もしくは分岐状である炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の二置換性アルキル基であり、より好ましくは、1,2-ジアミノエタンである。

【0051】
また、他の一実施形態において、上記式(3)におけるXは、側鎖が任意の置換基により置換されたアルキル基であってもよい。

【0052】
本発明の一実施形態において、上記リンカーの設計は、当該技術分野において公知である任意の技術を用いて、行うことができる。

【0053】
本発明の両親媒性高分子は、好ましくは、下記の式(4):

【0054】
【化7】
JP2019218530A_000009t.gif

【0055】
で示される高分子である。

【0056】
本発明の一実施形態において、上記式(4)におけるR、mおよびnは、上述した通りである。

【0057】
本発明の一実施形態において、本発明の両親媒性高分子が適当な分子集合体を形成するためには、上記式(3)または(4)におけるmおよびnのバランス、換言すれば、疎水性高分子鎖と、親水性高分子鎖との長さのバランスが重要な要因の一つである。上記式(3)または(4)におけるmおよびnは、疎水性高分子鎖と、親水性高分子鎖との長さのバランスを考慮して、適当な分子集合体の形成が可能となるように、適宜決定し得る。

【0058】
本発明の両親媒性高分子は、温度応答性の性質を有する。

【0059】
本明細書において「温度応答性」とは、温度を特定の温度から異なる温度に変えたときに、物質の性質が変化することを意味する。

【0060】
本発明の両親媒性高分子において、目的に応じて、親水性高分子鎖を適宜変更することにより、異なる温度領域での温度応答性を有する両親媒性高分子を設計することができる。例えば、上記式(1)、(3)または(4)において、Rを、プロピル基、アリル基およびイソプロピル基とすることにより、それぞれ、15~25℃、27~54℃および47~58℃の温度領域で温度応答性を有する両親媒性高分子を設計することができる。

【0061】
本発明の両親媒性高分子は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いて製造することができる。本発明の両親媒性高分子は、例えば、後述する実施例に記載の方法により製造することができる。

【0062】
〔3.分子集合体〕
本発明の一実施形態に係る分子集合体(以下、「本発明の分子集合体」と称する。)は、本発明の両親媒性高分子、例えば、上記〔1.両親媒性高分子〕に記載の両親媒性高分子により形成されている。

【0063】
本発明の分子集合体は、本発明の両親媒性高分子が自己集合することにより形成される。

【0064】
本発明の一実施形態において、本発明の分子集合体は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いて本発明の両親媒性高分子を自己集合させることにより、調製することができる。例えば、後述する実施例に記載の方法により、本発明の分子集合体を調製することができる。

【0065】
本発明の分子集合体は、好ましくは、疎水性物質を内包する。

【0066】
本明細書において「疎水性物質」とは、物質単独でまたは他の物質と結合して、物質全体として一定の疎水度(脂溶性)を有する物質(化学物質)を意味する。したがい、例えば、目的物質である親水性物質が疎水性物質と結合して、全体として疎水度(脂溶性)を有する物質もまた、「疎水性物質」の概念に包含される。そのような物質としては、例えば、プロドラッグ等が挙げられる。

【0067】
また、本明細書において「内包する」とは、本発明の分子集合体において、内部に形成された空間(換言すれば、本発明の両親媒性高分子の疎水性部位に囲まれた空間)に任意の物質が存在することを意味する。

【0068】
本発明の分子集合体は、疎水性部分が内側に集合し、疎水性部分が外側に配置されたコアシェル型高分子ミセルの形態を有する。それ故に、本発明の分子集合体は、その内部に任意の物質、例えば、疎水性物質を内包することができる。本発明の分子集合体は、疎水性部分が内側に集合する形態を有するため、該疎水性部分と親和性が高い疎水性物質が安定的に内包され得る。

【0069】
本発明の一実施形態において、疎水性物質は、本発明の分子集合体に内包される物質であれば特に限定されないが、例えば、低分子薬剤、治療用放射性薬剤、シグナル剤等が挙げられる。

【0070】
本発明の一実施形態において、低分子薬剤は、本発明の分子集合体により形成される凝集体から放出される(好ましくは、徐放される)薬剤であれば特に限定されない。低分子薬剤としては、例えば、抗がん剤、放射線増感剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、ステロイド剤、ホルモン剤、血管新生阻害剤等が挙げられる。これらの低分子薬剤は、単独でまたは複数種類を組み合わせて用いることができる。

【0071】
抗がん剤としては、特に限定されないが、例えば、カンプトテシン、エキサテカン、(カンプトテシン誘導体)、ゲムシタビン、ドキソルビシン、イリノテカン、SN-38(イリノテカン活性代謝)、5-FU、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル等が挙げられる。

【0072】
放射線増感剤としては、特に限定されないが、例えば、BUdR等のハロゲン化ピリミジン類、Metronidazole、Misonidazole、Nimorazole等のイミダゾール類等が挙げられる。

【0073】
本発明の一実施形態において、低分子薬剤の好ましい組み合わせは、治療効果の高い組み合わせとなるように、適宜設定され得る。

【0074】
本発明の一実施形態において、治療用放射性薬剤は、治療用途で使用される放射性同位元素を含む薬剤である。放射性同位元素としては、例えば、治療用の放射線を放出する核種であり、例えば、64Cu、125I、198Au、90Y、131I、188Re等が挙げられる。

【0075】
本発明の一実施形態において、治療用放射性薬剤は、本発明の分子集合体から放出されないように修飾されていることが好ましい。そのような修飾としては、例えば、放射性薬剤に疎水性高分子鎖を結合することが挙げられる。放射性薬剤に疎水性高分子鎖を結合した治療用放射性薬剤の一例として、以下の式(5)で示される[64Cu]-DOTA-PLLAが挙げられる。

【0076】
【化8】
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【0077】
放射性薬剤に疎水性高分子鎖を結合する方法は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いることができる。

【0078】
本発明の一実施形態において、シグナル剤は、検出によりイメージングを可能にする特性を有する物質であり、例えば、蛍光剤、放射性同位元素と、磁性剤等が挙げられる。

【0079】
蛍光剤としては、特に限定されないが、フルオレセイン系色素、インドシアニン系色素等のシアニン系色素、ローダミン系色素、量子ドット等が挙げられる。

【0080】
放射性同位元素としては、ポジトロンやガンマ線等のイメージングが可能な放射線を放出する核種等が挙げられる。

【0081】
磁性剤としては、特に限定されないが、例えば、フェリクローム等の磁性体、フェライトナノ粒子、ナノ磁性粒子等が挙げられる。

【0082】
本発明の一実施形態において、低分子薬剤は、他の疎水性物質である治療用放射性薬剤、シグナル剤等と組み合わせて用いることができる。

【0083】
本発明の一実施形態において、疎水性物質は、低分子薬剤および治療用放射性薬剤からなる群より選択される少なくとも一つである。また、本発明の一実施形態において、疎水性物質は、低分子薬剤および治療用放射性薬剤である。低分子薬剤と治療用放射性薬剤とを組み合わせて用いることにより、例えば、がん等の疾患において、より有効な疾患の治療を行うことが可能となる。

【0084】
本発明の一実施形態において、低分子薬剤と治療用放射性薬剤との組み合わせは、治療目的に応じて、放射性同位元素の線質、半減期、治療効果持続期間等を考慮して、適宜、適当な組み合わせを選択し得る。

【0085】
また、本発明の一実施形態において、疎水性物質は、低分子薬剤およびシグナル剤である。低分子薬剤とシグナル剤とを組み合わせて用いることにより、例えば、低分子薬剤が目的の疾患部位に到達しているかをトレースすることが可能となる。

【0086】
本発明の一実施形態において、低分子薬剤とシグナル剤との組み合わせは、目的に応じて、適宜、適当な組み合わせを選択し得る。

【0087】
本発明の一実施形態において、本発明の分子集合体に疎水性物質を内包させる方法は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いることができる。例えば、後述する実施例に記載の方法により、本発明の分子集合体に疎水性物質を内包させることができる。

【0088】
本発明の分子集合体の粒子径は、例えば、10~2000nmであり、好ましくは20~1000nmである。粒子径が上記より小さい場合、分子集合体を体内に注入後、凝集する前に拡散してしまう可能性が高くなる。また、粒子径が上記より大きい場合、体内への注入が困難になったり、内包した低分子薬剤の放出効率が低下したりする。

【0089】
本発明の分子集合体の粒子径は、動的光散乱法(DLS)による測定で決定できる。具体的には、本発明の分子集合体の粒子径は、後述する実施例に記載の方法で決定できる。

【0090】
本発明の一実施形態において、本発明の分子集合体は、凝集体を形成する。本発明の分子集合体は、凝集体を形成することにより、例えば、それを体内に注入した際に、注入部位において滞留できるという利点を有する。

【0091】
〔4.化学物質搬送システム用分子材料〕
本発明の一実施形態に係る化学物質搬送システム用分子材料(以下、「本発明の分子材料」と称する。)は、本発明の分子集合体、例えば、上記〔2.分子集合体〕に記載の分子集合体を含む。

【0092】
本発明の分子集合体は、上述の通り、その内部に、任意の物質(例えば、疎水性物質)を内包することができる。したがって、分子集合体に目的の物質を内包させることにより、化学物質搬送システム用の分子材料として利用することが可能である。

【0093】
本発明の分子材料は、化学物質搬送システムにおいて内包される物質を代えることにより、種々の分野で利用できる。例えば、後述する〔6.用途〕に記載の分野で利用できる。

【0094】
〔5.凝集体〕
本発明の一実施形態に係る凝集体(以下、「本発明の凝集体」と称する。)は、本発明の分子集合体、例えば、上記〔2.分子集合体〕に記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、ナノポーラス構造を有する。

【0095】
本発明者らは、詳細な検討を行う中で、本発明の分子集合体により形成されてなる凝集体が、ナノポーラス構造(多孔質構造)を有することを見出した。本発明の凝集体は、ナノポーラス構造を有するが故に、該分子集合体に内包された低分子薬剤を高効率で徐放することを可能にする。

【0096】
本発明の一実施形態において、本発明の凝集体は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いて本発明の分子集合体を凝集させることにより、調製することができる。例えば、後述する実施例に記載の方法により、本発明の凝集体を調製することができる。

【0097】
本発明の凝集体は、本発明の分子集合体、例えば、上記〔2.分子集合体〕に記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、前記分子集合体に内包された前記疎水性物質が徐放されることが好ましい。

【0098】
本明細書において「徐放される」とは、分子集合体に内包された疎水性物質が経時的に分子集合体外へ放出されることを意味する。本発明の一実施形態において、徐放速度は、特に限定されることなく、目的に応じて適宜設定すればよい。

【0099】
徐放速度の制御は、例えば、分子集合体に内包される疎水性物質の種類、分子集合体の粒子径等を変えることにより行うことができる。

【0100】
例えば、分子集合体に内包される疎水性物質の種類に関しては、分子集合体に内包される疎水性物質の疎水度が高いほど、該疎水性物質が分子集合体内に留まる傾向が高くなり、その結果、疎水性物質の放出速度は遅くなる。また、疎水性物質の疎水度が低いほど、該疎水性物質が分子集合体内に留まる傾向が低くなり、その結果、疎水性物質の放出速度は速くなる。

【0101】
また、分子集合体の粒子径に関しては、分子集合体の粒子径が大きいほど凝集体の粒子径が大きくなるため、疎水性物質が凝集体表面に到達するまでの時間が長くなり、その結果、疎水性物質の放出速度は遅くなる。また、分子集合体の粒子径が小さいほど凝集体の粒子径が小さくなるため、疎水性物質が凝集体表面に到達するまでの時間が短くなり、その結果、疎水性物質の放出速度は速くなる。

【0102】
本発明の凝集体は、本発明の分子集合体、例えば、上記〔2.分子集合体〕に記載の分子集合体により形成されてなる凝集体であり、前記分子集合体に内包された前記治療用放射性薬剤が放出されず、かつ、前記分子集合体に内包された前記低分子薬剤が徐放されるものであることが好ましい。

【0103】
本発明の凝集体において、治療用放射性薬剤が内部に留まり、低分子薬剤が放出されることによって、疾患部位を多角的に治療することができる。また、低分子薬剤の放出速度が徐放であることにより、継続的に疾患部位を治療することができる。

【0104】
本発明の凝集体は、前記低分子薬剤の放出率が90%以上であることが好ましい。

【0105】
本発明の一実施形態において、低分子薬剤の放出率は、例えば、90%以上であり、好ましくは、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上であり、より好ましくは、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上であり、特に好ましくは、100%である。

【0106】
本発明の一実施形態において、低分子薬剤の放出率は、後述する実施例に記載の方法により測定および算出される。

【0107】
本発明の凝集体の粒子径は、例えば、5μm以上であり、好ましくは、10μm以上である。粒子径が上記より小さい場合、薬剤の注入部位に該薬剤が留まらずに流れてしまう恐れがある。また、本発明の凝集体の粒子径の上限は、特に限定されず、薬剤の注入部位における該薬剤の滞留性の観点から、凝集体の粒子径は大きいほど望ましい。

【0108】
本発明の凝集体の粒子径は、動的光散乱法(DLS)による測定で決定できる。具体的には、本発明の凝集体の粒子径は、後述する実施例に記載の方法で決定できる。

【0109】
〔6.用途〕
本発明の分子集合体は、内包される物質を代えることにより、種々の用途で利用可能である。

【0110】
例えば、分子集合体に内包される疎水性物質がシグナル剤である場合、分子イメージング用分子材料として利用できる。分子イメージング用分子材料の具体例としては、例えば、PET用分子材料、MRI用分子材料等が挙げられる。

【0111】
また、例えば、分子集合体に内包される疎水性物質が低分子薬剤および/または治療用放射性薬剤である場合、DDS用分子材料として利用できる。DDS用分子材料として利用する場合、DDSに関する一般的な知識に基づいて行うことができる。DDS用分子材料の投与対象についても特に限定されることなく、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトに投与され得る。

【0112】
その他にも、本発明の分子集合体は、(1)特定の物質の徐放が求められる分野、(2)特定の物質の運搬および運搬先での該物質の徐放が求められる分野、(3)複数の物質の徐放、または複数の物質の運搬および運搬先での該物質(全部または一部)の徐放が求められる分野等において利用され得る。そのような分野としては、例えば、触媒を担持させる担体、汚水・排水処理、塗り薬(口内炎の塗り薬等)、化粧品(パック類等)、塗料、接着剤、農薬等が挙げられる。

【0113】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0115】
〔1.疎水性高分子鎖の合成〕
(化合物3)
化合物1と化合物2とを用いて、化合物3を得た。
【実施例】
【0116】
【化9】
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【実施例】
【0117】
具体的には、化合物1(828mg、4.26mmol、東京化成社製)に、化合物2(L-lactide、8.91g、61.8mmol、東京化成社製)と、tin(IV) octanoate(45mg、L-lactideに対して0.5wt%、和光純薬社製)とを加え、Ar雰囲気下、120℃で反応させた。反応開始から12時間後に、反応容器を室温まで空冷した。その後、得られた黄白色固体を、少量のクロロホルム(10mL程度)に溶解させた。該クロロホルム溶液を冷メタノール(100mL)に滴下することにより、白色沈殿として、化合物3(9.02g)を得た。
【実施例】
【0118】
(化合物4)
化合物3を用いて、化合物4を得た。
【実施例】
【0119】
【化10】
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【実施例】
【0120】
具体的には、化合物3(9.02g)をジクロロメタン(10mL)に溶解させた後、25% HBr-AcOH(20mL)を加えて、遮光、乾燥空気下で22時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を冷メタノール(200mL)に滴下し、析出した沈殿(白色)を遠心分離で回収した。得られた沈殿をクロロホルムに溶解させ、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、無水MgSOで脱水操作を行った。Celite(登録商標)(ナカライテスク社製)濾過によりMgSOを除去後、真空乾燥を行うことにより、化合物4(5.42g)を得た。
【実施例】
【0121】
〔2.両親媒性高分子の合成〕
(化合物7)
化合物5と化合物6とを用いて、化合物7を得た。
【実施例】
【0122】
【化11】
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【実施例】
【0123】
具体的には、化合物5(10g、0.11mol)のジクロロメタン(180mL)溶液に化合物6(3.57mL、44mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。ジクロロメタンを除去した後、1N塩酸水溶液(200mL)を加えて、100℃で24時間さらに撹拌した。溶媒を除去した後、エタノール/ジエチルエーテル系で再結晶し、化合物7(2.16g)を得た。
【実施例】
【0124】
(化合物8)
化合物7を用いて、化合物8を得た。
【実施例】
【0125】
【化12】
JP2019218530A_000014t.gif
【実施例】
【0126】
具体的には、化合物7(2.14g、16.3mmol)のトルエン(20mL)溶液に、1N NaOH水溶液(40mL)およびBenzyl Chlorformate(2.92g、17.1mmol)を加えて、4時間撹拌した。有機層を除去した後、水層のpHを1N HCl水溶液でpH 1程度とした後、酢酸エチルで目的物を抽出した。抽出物を無水MgSOで脱水し、Celite(登録商標)(ナカライテスク社製)濾過によりMgSOを除去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物8(3.33g、13.3mmol)を得た。
【実施例】
【0127】
(化合物9)
化合物8を用いて、化合物9を得た。
【実施例】
【0128】
【化13】
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【実施例】
【0129】
具体的には、化合物8(3.03g、12.1mmol)に塩化チオニル(3mL)を加えて、60℃で30分間撹拌した。反応溶液にヘキサン(50mL)に加えた。その後、複数回にわたって、ヘキサンの添加と上澄みの除去とを繰り返した後、酢酸エチルに溶解したもののみを回収し、液状の化合物9(N-カルボキシ無水物、1.40g、9.8mmol)を得た。
【実施例】
【0130】
(化合物12)
化合物4と、化合物9と、化合物11とを用いて、化合物12を得た。
【実施例】
【0131】
【化14】
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【実施例】
【0132】
具体的には、化合物4(0.13g、0.057mmol)と化合物9(0.58g、4.02mmol)とを、DMF(8mL)に溶解させ、室温で24時間撹拌して、化合物10を得た。その後、化合物10に、化合物11(22mg、0.29mmol)、縮合剤HATU(109mg、0.29mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(56mg、0.43mmol)を加えて、さらに24時間撹拌した。反応生成物を、透析およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー(Sephadex LH20)で精製し、化合物12(PLLA-block-PNnPG、467mg)を得た。高分子の構造および鎖長は、1HNMR測定により決定した。
【実施例】
【0133】
その結果、化合物12のmが30であり、nが70である高分子が得られたことが分かった(図1)。
【実施例】
【0134】
〔3.分子集合体の調製〕
アセトン(50μL)に化合物12(1.0mg)を添加し、溶解させた。該アセトン溶液を、氷冷したPBS(1.0mL)に素早く注入し、スターラーで撹拌することにより集合化させた。サイズ排除クロマトグラフィー(PD-10 prepacked column)により、4℃環境下で、分子集合体を精製した。
【実施例】
【0135】
分子集合体の粒子径は、Zetasizer ZSP(Malvern社製)を用いて、動的光散乱法(DLS)による測定で決定した。簡潔には、Zetasizer ZSPのキュベットに分子集合体の分散液を入れて、測定温度下(任意に設定可能)で測定した。なお、DLS測定の原理は、溶液中に分散している集合体にレーザー光を照射し、測定する散乱光のゆらぎから自己相関関数を求め、これにアインシュタイン-ストークスの式を適用して、粒子径を算出する。
【実施例】
【0136】
〔4.ドセタキセルおよび放射性同位元素内包ミセル(分子集合体)の調製〕
以下で示すスキームにより、化合物15(DOTA-PLLA)を合成した。
【実施例】
【0137】
【化15】
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【実施例】
【0138】
具体的には、両親媒性高分子の合成中間産物である化合物13(末端にアミノ基を有するポリ乳酸)120mgに、化合物14(tri-t-Bu-DOTA、東京化成社製)50mg、DMT-MM(和光純薬社製)24mg、DMF0.50mLを加えて、窒素雰囲気下、室温で一晩撹拌した。反応終了後、メタノールを5mL加えて、得られた沈殿物を、ジエチルエーテル1mLで3回洗浄した。真空ポンプで乾燥後、トリフルオロ酢酸(和光純薬社製)を200μL加えて、室温で撹拌することによりt-Bu基を脱保護し、目的の化合物15(DOTA-PLLA)51mgを得た。
【実施例】
【0139】
続いて、化合物15 5μgをクロロホルムに溶解したものを試験管に入れ、溶媒を減圧除去することで、試験管の側面にDOTA-PLLAのフィルムを形成した。この試験官に、64Cu水溶液(10μL、15.0MBq)、50mM Sodium Acetate Buffer(200μL)を加えて、室温で30分間振盪した。上清を取り除き、フィルムを100μLの脱イオン水で3回洗浄することにより、[64Cu]-DOTA-PLLA(10.9MBq)を得た。
【実施例】
【0140】
その後、ドセタキセル(0.3mg)、[64Cu]-DOTA-PLLA(5μg)および化合物12(1.0mg)にアセトン(50μL)を添加し、溶解させた。これらのアセトン溶液を、氷冷したPBS(1.0mL)に素早く注入し、スターラーで撹拌することにより、集合化させた。
【実施例】
【0141】
分子集合体の精製および粒子径の測定方法は、上記〔3.分子集合体の調製〕と同様の方法により行った。測定の結果、分子集合体の粒子径は、50nmであった。また、上記の条件(溶媒の種類、量等)を種々変更することにより、粒子径を、10~2000nmの範囲で変化させることが可能である。
【実施例】
【0142】
〔5.ドセタキセルの内包可能量の決定〕
アセトン(50μL)に化合物12(1.0mg)を溶解させたアセトン溶液(50μL)に、ドセタキセル(0.05mg、0.10mg、0.15mg、0.20mg、0.30mg、0.40mg、0.50mg)を添加し、それぞれ分子集合体を調製した。PD-10 prepacked columnにより、分子集合体を精製し、該分子集合体が含まれる画分に含まれるドセタキセルの量を、HPLCにより決定した。ドセタキセルの内包率を算出したところ、それぞれ58%、73%、96%、95%、95%、84%、85%であった。
【実施例】
【0143】
〔6.温度応答挙動の測定〕
分子集合体溶液の温度を、10℃から1℃ずつ上昇させた。1℃上昇させる毎に、7740Gで1分間遠心分離を行い、UV(254nm)における吸光度を測定した。10℃における吸光度を1として、温度による吸光度の変化をプロットした(図2)。その結果、温度を上昇させるにつれて、分子集合体溶液中の分子集合体が凝集する傾向が強まり、25℃において、分子集合体がほぼ完全に凝集体化していることが分かった。
【実施例】
【0144】
〔7.温度応答挙動の観察〕
分子集合体溶液の温度を、10℃から35℃まで上昇させて、温度変化による分子集合体溶液の見た目(濁度)の変化を観察した(図3)。その結果、10℃に比して35℃においてより高い濁度が観察され、35℃の分子集合体溶液は、分子集合体が凝集していることが示唆された。
【実施例】
【0145】
また、それぞれの温度での凝集体の粒子径の測定は、上記〔3.分子集合体の調製〕と同様の方法により行った。その結果、35℃での分子集合体の凝集体の粒子径は、5μm以上であることが分かった。
【実施例】
【0146】
さらに、凝集した分子集合体の構造を検討するために、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。簡潔には、親水化処理したスライドガラス上に、上記で調製した凝集体の分散液を滴下した。乾燥後、厚さが5-10nmとなるように、試料表面を金—パラジウムでコーティングし、走査型電子顕微鏡(JSM-6390、日本電子社製)により測定を行った。その結果、凝集した分子集合体は、ナノポーラス構造(多孔質構造)をとることが分かった。この結果は、本発明の一実施形態に係る凝集体において、それを形成する分子集合体に内包された薬剤が徐放されることを示唆する。また、図4の結果より、本発明の一実施形態に係る凝集体は、分子集合体が集合し、積層されることにより形成されると考えられる。
【実施例】
【0147】
〔8.ドセタキセルおよび放射性同位元素の漏出実験〕
上記〔4.ドセタキセルおよび放射性同位元素内包ミセル(分子集合体)の調製〕で調製した分子集合体溶液(1mL)を、透析膜(MWCO14000)に入れ、PBS中で透析を行った。外液を定期的に交換し、そこに漏出した内包した化合物の量を、HPLC(ドセタキセル)またはγカウンター(放射性同位元素)で測定した(図5)。その結果、ドセタキセルは、時間の経過と共に徐々に放出され、144時間後に100%放出されるのに対して(図5(b))、放射性同位元素は、96時間経過後でもほとんど放出されない(図5(a))ことが分かった。この結果は、本発明の一実施形態に係る凝集体が、比較的低分子であるドセタキセルを徐放的に放出しつつ、比較的高分子かつ疎水性に設計された放射性同位元素は放出しない特性を有することを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明によると、分子集合体および凝集体を形成した際に種々の有利な特性を示す、新規の両親媒性高分子を提供することができため、例えば、薬剤搬送システム、分子イメージングの分野等において、好適に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4