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明細書 :照明装置、照明方法および照明システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-155912 (P2020-155912A)
公開日 令和2年9月24日(2020.9.24)
発明の名称または考案の名称 照明装置、照明方法および照明システム
国際特許分類 H04N   7/18        (2006.01)
H04N   5/74        (2006.01)
H04N   5/225       (2006.01)
H04N   5/232       (2006.01)
G06T   1/00        (2006.01)
H05B  47/00        (2020.01)
G09G   5/00        (2006.01)
G09G   5/10        (2006.01)
G09G   5/28        (2006.01)
G03B  21/00        (2006.01)
FI H04N 7/18 Z
H04N 5/74 Z
H04N 5/225 600
H04N 5/232
G06T 1/00 280
H05B 37/02 H
H05B 37/02 G
G09G 5/00 550C
G09G 5/00 510B
G09G 5/00 550X
G09G 5/10 B
G09G 5/28 610Z
G03B 21/00 D
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2019-052179 (P2019-052179)
出願日 平成31年3月20日(2019.3.20)
発明者または考案者 【氏名】明石 行生
【氏名】久野 悠太
【氏名】村上 香織
【氏名】稲谷 大
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000028、【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2K203
3K273
5B057
5C054
5C058
5C122
5C182
Fターム 2K203FA82
2K203GB53
2K203GB62
2K203GB69
2K203KA56
2K203MA40
3K273PA09
3K273QA13
3K273RA08
3K273SA21
3K273SA38
3K273SA46
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA32
3K273TA45
3K273TA78
3K273UA21
3K273VA04
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CD02
5B057CD12
5B057DA07
5B057DA08
5B057DC16
5C054CA04
5C054CB02
5C054CC02
5C054CF01
5C054CF06
5C054EJ04
5C054FA07
5C054FC14
5C054FD07
5C054FE09
5C054HA00
5C058BA08
5C058BA18
5C058BA27
5C058BB25
5C058EA02
5C122EA42
5C122FH11
5C122FH14
5C122GA34
5C122GD04
5C122GG01
5C122GG18
5C122HA85
5C182AA04
5C182AA13
5C182AC02
5C182AC03
5C182BA14
5C182CA01
5C182CA02
5C182CB03
5C182CB11
5C182CB42
5C182FA52
要約 【課題】文字を含む視対象の認識を容易にする。
【解決手段】文字を含む視対象の認識のし易さと視対象である文字の大きさ、明るさ、およびコントラストとの関係の少なくとも一部を反映した明視モデルを予め記憶しておき、視対象の撮像画像から、視対象である文字の少なくとも明るさとコントラストとを認識し、この視対象の明視性を所望の範囲とするように、明視モデルを用いて撮像画像から投影画像を生成する。この投影画像を、プロジェクタを用いて視対象に投影することで、視対象に投影画像を重畳し、少なくとも視対象のコントラストを高める。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
視対象を照らす照明装置であって、
視対象を撮像する撮像部と、
文字を含む視対象の認識のし易さと前記視対象である文字の少なくとも明るさとコントラストとの関係を反映した明視モデルを記憶する記憶部と、
前記撮像された前記視対象の撮像画像に対応した投影画像を前記視対象に投影し、前記視対象に前記投影画像を重畳するプロジェクタと、
前記視対象の撮像画像から、前記視対象である文字の少なくとも前記明るさと前記コントラストとを認識し、前記視対象の明視性を所望の範囲とするように、前記明視モデルを用いて前記撮像画像から前記投影画像を生成する画像生成部と
を備えた照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明装置であって、
前記明視モデルは、前記視対象である文字の大きさと明るさとコントラストとの関係を反映したモデルであり、コントラスト感度が一定の範囲に含まれる被験者を用いて実験的に得られたモデルである照明装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の照明装置であって、
前記明視モデルは、当該照明装置を用いる使用者が属する視覚特性のグループ毎に予め構築されたモデルである照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の照明装置であって、
前記使用者の視覚特性を判定するための画像を、明るさとコントラストとが相違する複数の態様で表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記複数の態様の画像の少なくとも1つを、前記使用者が選択することにより、前記使用者が属する視覚特性のグループを特定するグループ特定部と
を備えた照明装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の照明装置であって、
前記明視モデルは、当該照明装置を用いる使用者毎に予め用意されたモデルである照明装置。
【請求項6】
前記画像生成部は、前記視対象の撮像画像に基づいて、前記視対象が移動していると判定した場合には、前記投影画像を、前記視対象が移動していない場合よりも少なくともコントラストを緩和した画像として生成する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、前記撮像画像に含まれるエッジに対してアンチエイリアス処理を施して、前記投影画像を生成する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の照明装置であって、
前記撮像部と前記プロジェクタとを組み込んだ頭部と、
前記頭部を支持するスタンド部と
を備え、
前記スタンド部が載置される平面上の所定の範囲であって、前記視対象が置かれ得る範囲を前記撮像部により撮像すると共に、前記所定の範囲に置かれた前記視対象に対して、前記生成された投影画像を前記プロジェクタによって重畳する
照明装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の照明装置であって、
使用者が視認している視対象上の位置を特定する視認位置特定部を備え、
前記画像生成部は、前記特定された前記視対象上の位置の撮像画像から、前記投影画像を生成する
照明装置。
【請求項10】
視対象を照らす照明方法であって、
視対象を撮像し、
文字を含む視対象の認識のし易さと前記視対象である文字の少なくとも明るさとコントラストとの関係を反映した明視モデルを予め記憶し、
前記視対象の撮像画像から、前記視対象である文字の少なくとも明るさとコントラストとを認識し、前記視対象の明視性を所望の範囲とするように、前記明視モデルを用いて前記撮像画像から投影画像を生成し、
前記投影画像を、プロジェクタを用いて前記視対象に投影することで、前記視対象に前記投影画像を重畳する
照明方法。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の照明装置である第1の照明装置と、前記第1の照明装置とは別に設けられプロジェクタを用いて所定の範囲を照明する第2の照明装置とを備えた照明システムであって、
前記第2の照明装置は、
前記第1の照明装置が照明する範囲とは異なり、かつ前記第1の照明装置の照明範囲より広い範囲を照明し、
前記照明する範囲を撮像した照明範囲画像を解析して、前記照明範囲画像のエッジを強調するエッジ強調画像を生成し、前記エッジ強調画像を当該第2の照明装置の前記プロジェクタにより投影し、前記照明範囲に前記エッジ強調画像を重畳する
照明システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、文字などを読み易くする照明の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
読書や文章の校正、製図などの視作業をする際、文字や線図などの視対象の見え易さ(明視性)が低いと、作業効率が低下する。明視性に影響を与える要素としては、視対象の大きさ、視対象の明るさ、視対象と背景との間の輝度と色彩のコントラスト(以下、単にコントラストという)の3要素を挙げることができる。
【0003】
拡大鏡などは、視対象を大きく見せることにより明視性を高め、照明器具は、視対象を明るくすることで、明視性を改善しようとする。高齢者及び弱視者が快適に視作業ができるためには、コントラストを高めることが望ましいが、文字等のコントラストを高める手段は実用化されていない。コントラストを改善する手法としては、例えば第1の照明光により照明されている物体上に、その物体の陰影に応じた第2の照明光を、プロジェクタ等により投影する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第3276637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1などに示された技術は、視対象である物体の陰影を強調するものの、第2の照明光で物体を照らすから、視対象の明るさも高めており、これによりコントラストを低下させるため、明視性の改善が不十分な場合があり得る。特に、読書や文章の校正、製図といった文字の読取りを伴う作業における明視性の改善については、十分な考慮が払われていない。さらに、高齢化に伴う文字の読取り難さや、疲労や障害による文字の読取りの困難さなどは、個人差が大きいが、こうした視認する側の個人差の問題についても、何ら考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の第1の態様として、視対象を照らす照明装置が提供される。この照明装置は、視対象を撮像する撮像部と、文字を含む視対象の認識のし易さと前記視対象である文字の少なくとも明るさとコントラストとの関係を反映した明視モデルを記憶する記憶部と、前記撮像された前記視対象の撮像画像に対応した投影画像を前記視対象に投影し、前記視対象に前記投影画像を重畳するプロジェクタと、前記視対象の撮像画像から、前記視対象である文字の少なくとも前記明るさと前記コントラストとを認識し、前記視対象の明視性を所望の範囲とするように、前記明視モデルを用いて前記撮像画像から前記投影画像を生成する画像生成部とを備える。この照明装置によれば、文字を含む視対象の明視性を高めることができる。なお、「プロジェクタ」とは、画像を投影する装置であり、光源や画像の形成手法などは問わないことはいうまでもない。例えば、キセノンランプ、LED、レーザなどの光源の光を液晶などでオン・オフして画像を投影するプロジェクタや、多数の微少なミラーを用い、ミラーの角度を制御して反射光の射出をオン・オフするデジタルミラーデバイス(DMD)を用いたプロジェクタ、あるいはレーザ光の射出方向を多軸のミラーにより高速に制御して画像を描くタイプのプロジェクタなど、多種多様なプロジェクタを利用することができる。また、これらを組み合わせ、視対象全体を液晶プロジェクタなどで照明し、使用者が見ている狭い範囲の文字等の輪郭外側をレーザ描画により照明すると言った利用も、「ブロジェクタ」による投影画像の重畳に該当する。また、本明細書における「文字」とは、絵文字やピクトグラム、サイン、標識、図記号などを含む広義の文字を意味する。つまり、「文字」とは、意味を伝達するために作られた符号の意であり、例えばモールス符号、図面において物の形状や柄などを伝達するための線分なども、本明細書における「文字」に含まれる。
【0008】
(2)こうした照明装置において、前記明視モデルは、前記視対象である文字の大きさと明るさとコントラストとの関係を反映したモデルであり、コントラスト感度が一定の範囲に含まれる被験者を用いて実験的に得られたモデルとしてもよい。こうすれば、被験者を用いて実際に得られたモデルを用いて、明視性の改善を図ることができる。
【0009】
(3)こうした照明装置において、前記明視モデルは、当該照明装置を用いる使用者が属する視覚特性のグループ毎に予め構築されたモデルとしてもよい。こうすれば、グループ毎に明視モデルを用意すれば足りる。
【0010】
(4)こうした照明装置において、前記使用者の視覚特性を判定するための画像を、明るさとコントラストとが相違する複数の態様で表示する表示部と、前記表示部に表示された前記複数の態様の画像の少なくとも1つを、前記使用者が選択することにより、前記使用者が属する視覚特性のグループを特定するグループ特定部とを備えるものとしてもよい。こうすれば、照明装置の使用時に、使用者の属する視覚特性のグループを容易に特定できる。
【0011】
(5)こうした照明装置において、前記明視モデルは、当該照明装置を用いる使用者毎に予め用意されたモデルとしてもよい。こうすれば、使用者個人個人の特性に合わせた明視性の向上をはかることができる。前記明視モデルは、文字の読み易さに基づいた読み易さモデル、視標の検出のし易さに基づいた検出モデルなど、種々の形態が可能である。
【0012】
(6)こうした照明装置において、前記画像生成部は、前記視対象の撮像画像に基づいて、前記視対象が移動していると判定した場合には、前記投影画像を、前記視対象が移動していない場合よりも少なくともコントラストを緩和した画像として生成するものとしてもよい。こうすれば、視対象が動いている際の見にくさを抑制することができる。
【0013】
(7)こうした照明装置において、前記画像生成部は、前記撮像画像に含まれるエッジに対してアンチエイリアス処理を施して、前記投影画像を生成するものとしてもよい。こうすれば、視対象の解像度がプロジェクタの解像度よりも高い場合でも、見やすい表示を実現することができる。
【0014】
(8)こうした照明装置において、前記撮像部と前記プロジェクタとを組み込んだ頭部と、前記頭部を支持するスタンド部とを備え、前記スタンド部が載置される平面上の所定の範囲であって、前記視対象が置かれ得る範囲を前記撮像部により撮像すると共に、前記所定の範囲に置かれた前記視対象に対して、前記生成された投影画像を前記プロジェクタによって重畳するものとしてもよい。こうすれば、上記の各照明装置を実用的な形態で容易に実現することができる。
【0015】
(9)こうした照明装置において、使用者が視認している視対象上の位置を特定する視認位置特定部を備え、前記画像生成部は、前記特定された前記視対象上の位置の撮像画像から、前記投影画像を生成するものとしてもよい。こうすれば、投影画像を生成する範囲が狭くて済み、処理を簡略なものにできる。また、プロジェクタによる投影範囲も狭くできるので、省電力化を図ることができる。あるいはコントラストを高めることが容易となる。使用者が視対象を視認している範囲は、かなり狭い。中心視野は、数度程度の画角範囲に限られることが知られている。このため、使用者の瞳孔の位置と向きをカメラで撮像し、使用者の視線方向を認識するといった視認位置特定部を設け、視認している位置における文字等のみを、読み易さの改善を行なう対象とすることでも、読み易さの改善に関し、十分な効果を得ることができる。視認位置特定部は、この他、視認位置をLEDなどで誘導するものとし、読み取りを誘導している位置を視認位置として特定する構成なども可能である。
【0016】
(10)本開示の第2の態様として、視対象を照らす照明方法が提供される。この照明方法は、視対象を撮像し、文字を含む視対象の認識のし易さと前記視対象である文字の少なくとも明るさとコントラストとの関係を反映した明視モデルを予め記憶し、前記視対象の撮像画像から、前記視対象である文字の少なくとも明るさとコントラストとを認識し、前記視対象の明視性を所望の範囲とするように、前記明視モデルを用いて前記撮像画像から投影画像を生成し、前記投影画像を、プロジェクタを用いて前記視対象に投影することで、前記視対象に前記投影画像を重畳する。こうすれば、文字を含む視対象の明視性を高めるこができる。
【0017】
(11)本開示の第3の態様として、照明システムが提供される。この照明システムは、上記の照明装置である第1の照明装置と、前記第1の照明装置とは別に設けられプロジェクタを用いて所定の範囲を照明する第2の照明装置とを備えた照明システムである。ここで、前記第2の照明装置は、前記第1の照明装置が照明する範囲とは異なり、かつ前記第1の照明装置の照明範囲より広い範囲を照明し、前記照明する範囲を撮像した照明範囲画像を解析して、前記照明範囲画像のエッジを強調するエッジ強調画像を生成し、前記エッジ強調画像を当該第2の照明装置の前記プロジェクタにより投影し、前記照明範囲に前記エッジ強調画像を重畳する。このときのエッジとは、例えば、階段の段鼻のように生活環境の安全性を高めるために目立たせる必要がある境界部を指す。この照明システムによれば、文字を含む視対象のみならず、広い範囲に存在する物体のエッジを強調表示するので、文字を含む視対象を含む環境全体の明視性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の照明装置の概略構成図。
【図2】映像処理部の内部構成を示すブロック図。
【図3】投影される画像の一例を示す説明図。
【図4】背景輝度および輝度コントラストと読み易さのレベルとの関係を例示する説明図。
【図5】コントラスト感度の測定に用いた内照式の円形視標を有する測定装置を示す説明図。
【図6】独立変数である「文字の大きさ(寸法)」「輝度コントラスト」「背景輝度」の内容を示す説明図。
【図7A】文字の大きさとして、10ポイント、14ポイント、21ポイントを選択し、グループ1の被験者の読み易さモデル(平均値)を示す説明図。
【図7B】文字の大きさとして、10ポイント、14ポイント、21ポイントを選択し、グループ2の被験者の読み易さモデル(平均値)を示す説明図。
【図7C】文字の大きさとして、10ポイント、14ポイント、21ポイントを選択し、グループ3の被験者の読み易さモデル(平均値)を示す説明図。
【図8】明視モデルを簡易に選択する手法を示す説明図。
【図9】文字のアンチエイリアスの処理について説明する説明図。
【図10】第2実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の照明装置100の概略構成図である。この照明装置100は、撮像部に相当するビデオカメラ10およびプロジェクタ40を組み込んだ照明部本体20と、これをベース部52の上方に支えるスタンド51とを備える。ビデオカメラ10は、ベース部52上の資料等の載置スペースを撮像可能である。ビデオカメラ10は、いわゆる4K画像を撮像可能な解像度を有する。ビデオカメラ10は、ベース部52上の資料TXに自動的に焦点を合わせる自動焦点機構および撮像する画像の明るさを自動的に調整する自動絞り機構とを備える。更に、ビデオカメラ10は、撮像方向と倍率を制御する自由雲台15を有する。

【0020】
この自由雲台15は、ビデオカメラ10の姿勢、即ちチルト、パンを制御する。自由雲台15は、更にビデオカメラ10の倍率、つまりズームの機能も有する。従って、ベース部52におかれた資料TXの位置および大きさを自動判別し、例えば資料TXがA4サイズであれば、その外形形状を撮像範囲とするように光学的にズームする。このとき、資料TXがベース部52の中心ではなく、偏った位置に置かれている場合には、照明部本体20、自由雲台15を用いてビデオカメラ10の姿勢をチルトおよびパンして撮像位置を変更する。こうした種々の機構および機能は、ビデオカメラとしては周知の技術なので、詳しい説明は省略する。

【0021】
照明部本体20は、ビデオカメラ10が撮像した映像を入力する映像入力部21、この映像を処理する映像処理部30、処理した映像をプロジェクタ40に出力する映像出力部23を備える。映像入力部21は、ビデオカメラ10によって得られた画像を台形補正する機能を有する。ここで台形補正とは、ビデオカメラ10が撮像した資料TXの画像が、ビデオカメラ10に正対していないことにより縦横の少なくとも一方方向に台形形状に歪んでいるとき、これを正対位置の画像、つまり歪みのない画像に補正する機能を言う。ビデオカメラ10とプロジェクタ40とは、物理的に同一位置に置くことができないので、撮像と投影の物理的な位置の違いを補正するために、一旦正対位置の画像にするのである。なお、これに対応して、投影画像の形状を、逆変換する機能が、映像出力部23には備えられている。映像入力部21と映像出力部23とは、画像の形状を変換する際、ビデオカメラ10とプロジェクタ40との位置のズレを考慮して、ビデオカメラ10により撮像した画像と、プロジェクタ40が投影する画像とが、ベース部52上で全く同一になるように処理している。

【0022】
ビデオカメラ10は、4K画像を撮像可能であることからその解像度は、3840×2160画素である。これは、A4横(297mm×210mm)程度の大きさの書類を撮像しているとすると、およそ300dpi程度の解像度で映像を撮像できることになる。同様に、プロジェクタ40も4K仕様であり、同じ画素数の映像を投影することができる。なお、本実施形態でのプロジェクタ40の明るさは、最大で約2000ルーメンである。

【0023】
このプロジェクタ40にも、ビデオカメラ10と同様、自由雲台45が備えられている。従って、照明部本体20は、自由雲台45を用いて、プロジェクタ40の姿勢をチルトおよびパンして投影位置を変更し、更にズーム機能を用いて、投影する画像の大きさを調整する。従って、照明部本体20は、プロジェクタ40による投影の位置や大きさを所望の位置および大きさに制御可能である。

【0024】
本実施形態では、照明部本体20の使用者PSは、照明装置100のベース部52上に資料TXを適当におき、これを読むことになる。ビデオカメラ10およびプロジェクタ40により実現される撮像と投影の解像度を300dpi程度にするため、ここではA4程度の資料TXを読むものとして説明するが、ビデオカメラ10およびプロジェクタ40が8K仕様(7680×4320画素)であれば、A3横程度の大きさの資料まで、同じ程度の解像度で扱うことができる。もとより、更に画素数の高いビデオカメラ10やプロジェクタ40を用いても良いし、これより低い解像度で扱うのであれば、画素数の少ないビデオカメラ10およびプロジェクタ40を用いても良い。

【0025】
図2は、映像処理部30の内部構成を示すブロック図である。画像生成部に相当する映像処理部30は、眼光学神経モデル変換部31、読み易さモデル参照部33、コントラスト強調部34、付加画像処理部35、記憶部に相当する個人別視覚データベース36、撮像・投影制御部38を備える。個人別視覚データベース36には、映像処理部30の外部に設けられた視覚データ入力・選択部60が接続されている。また、撮像・投影制御部38は、自由雲台15,45に接続されており、映像入力部21から入力した入力画像Vinを解析して、上述したビデオカメラ10の姿勢および倍率の制御、およびプロジェクタ40の姿勢および投影倍率の制御を行なう。

【0026】
眼光学神経モデル変換部31は、映像入力部21から入力される入力画像Vinを受け取り眼光学神経モデルによる光学像に変換する処理を行なう。映像入力部21がビデオカメラ10から受け取る映像信号は、いわゆる動画であるが、映像入力部21は、これをフレーム毎の静止画像(毎秒30フレーム)に分け、入力画像Vinとして、眼光学神経モデル変換部31に出力する。眼光学神経モデル変換部31は、これを網膜画像Vrに変換する。

【0027】
本実施形態では、眼光学神経モデルとして、光幕輝度モデルを適用した。光幕輝度モデルは、使用者PSが見ている対象からの光が眼球に入射すると、光が散乱されて、光幕が形成され、見えにくさが生じる現象をモデル化したものである。こうした光幕が生じるメカニズムは以下の通りである。眼に入った光は、角膜や水晶体で散乱する。水晶体は白内障などを発症していなければ、可視光に対して透明とみなせるが、有機物であり、具体的には、微少な繊維状の細胞から構成されている。水晶体は、加齢とともに水晶体内のタンパク質の粒子が増え、これが変性する。微少なタンパク質の粒子が水晶体の中で増加すると、水晶体は、いわばすりガラスのように白濁する(白内障)。眼球に入射した光は、水晶体で散乱する。この散乱光は、視野に光の幕をつくり、視野の各部の輝度を高くする。これが光幕輝度である。

【0028】
一般的に文字などの視対象とその背景とのコントラストCは、次式(1)により求められる。
C=(Lt-Lb)/Lb …(1)
ここで、Ltは視対象輝度、Lbは背景輝度である。これに光幕がかかると、対象のコントラストCは、次式(2)のコントラスC′に変化する。
C’={(Lt+Lv)-(Lb+Lv)}/(Lb+Lv)
=(Lt-Lb)/(Lb+Lv) …(2)
ここで、Lvは光幕による輝度である。式(1)(2)を比べれば分かるように、分母にLvが足された分だけ光幕輝度Lvが大きくなるほど、コントラストC’は、光幕輝度を考慮しない場合のコントラストCより小さくなる。つまり、水晶体などにより散乱が大きくなって、光幕輝度Lvが大きくなるほど、コントラストは低下し、使用者PSから見た視対象(ここでは資料TX)の明視性は低下する。

【0029】
また、後述するコントラスト感度などの眼の特性を測定するときや画像の鮮明度を評価するときなど、明暗が連続する正弦波や矩形波などの縞模様の視対象におけるコントラストは、次式(3)により求められる。
C=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin) …(3)
ここで、Lmaxは、縞模様の最大輝度であり、Lminは、縞模様の最小輝度である。このような縞模様の視対象に光幕がかかると、次の式で表されるように、式(2)と同様に、コントラストが低下して明視性が低下することがわかる。
C’=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin+Lv) …(4)
以降、視対象のコントラストには、式(1)の定義を用い、コントラスト感度には、式(3)の定義を用いる。

【0030】
一般に、光幕輝度Lvは、次式(5)により求められる。
Lv=aE/θ2 …(5)
ここで、Eは目の位置での照度、θは光源と視対象との角度であり、aは係数である。係数aは、水晶体での散乱の強さに応じた値をとる。水晶体での散乱の強さは、上記の通り、水晶体の状態によるから、使用者PSにより相違する。従って、個人別視覚データベース36に使用者PS毎の係数a記憶しておき、使用者PS毎に光幕輝度Lvを計算して、眼光学神経モデルを求めるようにしてもよい。式(5)が示しているのは、同じ使用者PSであれば、光源からの光による使用者PSの眼の位置の照度が高く、また使用者PSが見ようとしている視対象と光源との角度が小さければ、光幕輝度Lvは大きくなるということである。資料TXが白地の用紙に黒で文字が印刷されているような場合、文字のない白地の部分は、照明の光が反射する光源として働くから、光幕輝度Lvは、微少な光源からの光により生じる光幕輝度を、使用者PSが注視している場所の周りの角度θについて積分して求めることができる。

【0031】
光幕輝度Lvの大きさは、使用者PSの眼光学神経モデル、例えば水晶体の濁り方などにより影響をうける。したがって、係数aは、本来は、使用者PSごとに定められる。もとより、水晶体の白濁はある程度年齢に比例するので、年齢別のモデルを用意して、個人別ではなく年齢別に、眼光学神経モデルを切換えるようにしても良い。あるいは、いくつかの眼光学神経モデルを用意しておき、使用者PSに選択させるようにしてもよい。使用者PSは、自己の眼光学神経モデルを認識できるわけではないので、複数の眼光学神経モデルを用意し、これを順次切換えて、照明装置100が後述する処理により資料TXを照明した状態で、最も見やすいと感じる眼光学神経モデルを選択し、それをその使用者PSの眼光学神経モデルとして個人別視覚データベース36に記憶するものとすればよい。もとより、眼光学神経モデルを用いた変換は必須ではなく、次に説明する読み易さモデルだけで処理を行なってもよい。

【0032】
読み易さモデル参照部33は、眼光学神経モデル変換部31が個人別視覚データベース36から読み出して設定した眼光学神経モデルに従って、入力画像Vinを変換した網膜画像Vrを受け取ると、この網膜画像Vrの輝度とコントラストを手がかりに、個人別視覚データベース36に記憶された使用者PSの読み易さモデルを参照する。

【0033】
個人別視覚データベース36に記憶された読み易さモデルについて、図3を用いて説明する。図3は、文字や線画が記載された資料TXの一部を例示するものである。資料TXは、文字が無着色の紙に黒インクで文字が印刷されたものである。これを、色温度5200ケルビンの照明装置で照明し、資料TX上での輝度を1000cd/m2 としたものが、画像ORGであるとする。これに対して、画像PG1、PG2は、色温度はそのままで、照明装置の明るさを変えて、資料TX上での輝度をそれぞれ50cd/m2 、200cd/m2 とした画像であるとする。図示されているように、同じ資料TXであっても、地色の部分の輝度が低くなれば、読み易さは低下する。文字の部分はもともと輝度は低く、また照明を明るくしても、その輝度はほとんど変化しない。このため、資料TX全体を照明によって明るく照らして、その輝度(以下、背景輝度という)を高めると一般に、輝度コントラストは高くなる。

【0034】
資料TXの読み易さは、視対象の大きさ、視対象の明るさ(背景輝度)、視対象と背景とのコントラスト(輝度コントラストという)の3要素の影響を受ける。使用者PSが資料TXを読み取る時には、視対象の大きさ、つまり文字のポイント数などを照明装置が変更することはできない。本実施形態では、この点を踏まえ、照明装置により、視対象の背景輝度(明るさ)と輝度コントラストを変更する。かかる処理は、使用者PSにとって視対象の読み易さが、視対象の背景輝度と輝度コントラストを変更することによってどのように変るかを実験的に求めたことにより、導かれた。発明者等は、多数の被験者を用いて、視対象であるTXの読み易さについて実験し、その結果を整理した。図4は、実験結果を踏まえ、背景輝度と輝度コントラストと読み易さのレベルとの関係の一例を示す。

【0035】
この図4は、以下の実験を行なって抽出したものである。実験には、60歳から85歳までの男女37名の被験者が参加した。被験者には、実験に先立ってコントラスト感度の測定を行った。コントラスト感度の測定には、図5に示す、輝度コントラストと空間周波数が種々異なる正弦波が印刷された内照式の円形視標(視覚0.87度)を有する測定装置(CSV-1000E)を用いた。この場合、縞模様の視対象を用いて測定するため、コントラスト感度を測定するときのコントラストは前述の式(3)を用いて計算した。また、コントラスト感度は、閾値の輝度コントラスト(50パーセンタイル値の輝度コントラスト)の逆数として求めた。この円形視標は、内側を白色塗装で塗装した高さ1800mm、幅1500mm、奥行き1700mmの直方体箱型ブース内に置かれ、視標は、調光器付の蛍光灯(6本)により照光された。視標からの距離を一定にするために、顎台が用意された。実験を通した、明るさを一定に保つため、ブース内の照度をモニターした。

【0036】
直方体箱型ブース内には、外部の明かりは入らないようにした。図6に、実験においては、「文字の大きさ(寸法)」「輝度コントラスト」「背景輝度」を独立変数とした。各独立変数の内訳は図示の通りである。独立変数は明視三要素である。各独立変数は、それぞれ4水準とした。従って、実験条件は、64通りであった。従属変数は、読み易さのレベルLとし、以下の様に定義した。
L=1:読めない
L=2:読みにくい
L=3:多少読みにくいが読める
L=4:苦労せずに読める
L=5:読みやすい
L=6:非常に読み易い

【0037】
実験では、被験者は、一人ずつ実験ブースの開口部の前に座り、顎台の上に顎を載せて、視標までの距離を一定にした。この状態で実験者は、実験ブースの開口部を通して、ブースの内部の正面壁面に掲示してある視標を見た。視標は、予め64条件のうちのいずれかの条件に設定しておいた。被験者は、1分間、ブース内の視標を観察しながら、その明るさに順応した上で、実験者の指示により、被験者は視標の読み易さを口答で評価した。従って、背景輝度は、被験者にとって順応輝度となっていたと認められる。

【0038】
上記の手順を、64通りの視標について、繰り返した。実験結果には、個人間で読み易さ評価にばらつきが見られた。そこで、コントラスト感度に応じて被験者を3つのグループに分けた。3つのグループのコントラスト感度の範囲は、異以下の通りである。
グループ1:0.33~1.18(9名)
グループ2:1.19~1.40(20名)
グループ3:1.41~1.64(8名)
各グループについて、64条件のそれぞれについて、被験者の読み易さ評価を平均した。その結果、コントラスト感度により分類した3つのグループのそれぞれにおいて、文字の大きさについて4条件、輝度コントラストについて4条件、背景輝度について4条件、を組み合わせた64条件の各条件について、読み易さ評価の平均値が得られた。文字の輝度コントラストは、式(1)により定義する。

【0039】
上述のコントラスト感度により分類したグループ1~3の各々において、文字の大きさ4条件、輝度コントラスト4条件、背景輝度4条件を組み合わせた64条件の各条件について得られた読み易さ評価の平均値を用いて、以下の手順により読み易さモデルを作成した。
1)50パーセンタイル値の抽出
コントラスト感度が異なる各グループに分類された被験者(グループン・9名、グループ2・20名、グループ3・8名)のデータについて、4つの文字の大きさのそれぞれについて、4つの背景輝度のそれぞれについて、4つの輝度コントラストのそれぞれについて、読み易さの評価の50パーセンタイル値を求めた。具体的には、横軸に1から6までの評価値を取り、縦軸には、各評価値を選んだ被験者の累積割合(%)を取った。その累積割合は、評価値1から徐々に増加する確率曲線を描く。その確率曲線の回帰式を求め、その回帰式を用いて50パーセンタイル値(3グループ×64条件)を読み取った。

【0040】
上記実験では、文字大きさも独立変数として扱ったが、本実施形態の照明装置100では、文字の大きさ自体を変更することはできない。照明装置100は、与えられた大きさの文字の視標に施す背景輝度と輝度コントラストを制御して、読み易さを向上させようとするものである。そのため、上で求めた読み易さの近似曲面から、コントラスト感度のグループ毎に、文字の大きさ毎に、種々の輝度コントラストと背景輝度との組み合わせに対して得られると考えられる読み易さを取得できるモデルに変換した。変換の詳細は省略するが、各グループ1~3について、文字の大きさのそれぞれについて、輝度コントラスト4条件×背景輝度4条件の16の組み合わせに対する読み易さの近似値が得られた。図7A、図7B、図7Cは、得られた16個のデータのうち、新聞や書籍などで頻出する文字の大きさとして、10ポイント、14ポイント、21ポイントを選択し、読み易さモデルを示すものである。図7A~図7Cにおいて、等高線の数値は、上述した読み易さのレベルL(1~6)に対応する。

【0041】
以上の実験結果を踏まえて、照明装置100としての処理を説明するために、明視の簡易なモデルの一例を示したのか、先述の図4である。図4は、上述した実験において、被験者を用いて得られたデータを、読み易さをパラメータとして、背景輝度と輝度コントラストの関係として示したものである。実験においては、資料TX上の文字の大きさ、背景輝度、輝度コントラストの3つを変化させて、読み易さを測ったが、照明装置によっては文字の大きさを変更することはできないので、図4は、実験結果から、文字の大きさを14ポイントに固定した上で、背景輝度と輝度コントラストとを変更した場合の読み易さとして示した。図4は、文字を含む視対象の認識のし易さと視対象である文字の少なくとも明るさと輝度コントラストとの関係を反映した明視モデルに相当する。

【0042】
図4において、横軸の輝度コントラストCは、背景輝度Lbと視標輝度Ltとを用いて、次式(6)のように定義した。
C=(Lb-Lt)/Lb …(6)
背景輝度Lbは、紙(白色)の部分の輝度、視標輝度Ltは、紙に印刷された文字(黒色)の部分の輝度である(共に単位は、カンデラcd/m2 )。輝度は輝度計を用いて測定した。なお、14ポイントの文字のように紙面での面積が小さい部分については、二次元輝度計を用いて測定しても良いし、同じ濃度のインクで輝度計が計測できる程度の面積を塗りつぶし、その部分の輝度を測定して、視標輝度Ltとしても差し支えない。

【0043】
図4は、グループ2の被験者のデータを元にして作成したが、グループ1では、グラフが右上方向にシフトし、グループ3では左下方向にシフトしたが、同程度の読み易さとなる背景輝度Lbと輝度コントラストCとの関係、換言すれば、読み易さのレベルLのグラフの形状は、同じ傾向を示した。ある読み易さのレベルLのグラフは、背景輝度Lb方向への傾きが垂直に近く、これと比較すると輝度コントラストC方向への傾きは緩やかであった。このことから、例えば、所定の背景輝度Lbおよび所定の輝度コトンラストCである点P1において、グループ2のある被験者にとっての読み易さがレベルL=3、つまり多少読みにくいが読めるという状態であったとき、これをレベルL=4、つまり苦労せずに読める、にしようとすると、照明装置によって背景輝度Lbを高めるだけでは実現できないのに対して、輝度コトンラストCを高めて、点P2の背景輝度および輝度コトンラストとすれば実現できることが分かった。この関係は、他の読み易さのレベルLから、より読み易いレベルL+1にしようとするときにも同様である。

【0044】
図4は、グループ2の被験者に関して実験したデータの平均値を示すが、照明装置100を用いる個々の使用者について、図7A~図7Cに相当するデータを取得して用いることも可能である。個人別視覚データベース36には、各群に属する人の平均的なデータを記憶してもよいし、個人個人のデータを記憶するものとしてもよい。つまり、ここで言う「個人別視覚データ」とは、特定の個人個人のデータでも良いし、視覚データを分類し、各区分毎の代表的な視覚データとして記憶しても差し支えない。

【0045】
図2に示した映像処理部30は、図4に例示した関係を利用して、以下の様に照明を行なう。まず、照明部本体20に備えられたビデオカメラ10が、ベース部52上の資料TXを撮像する。このビデオカメラ10が撮影した映像は映像入力部21に入力され、入力画像Vinとして照明部本体20に入力される。入力画像Vinは、眼光学神経モデル変換部31と共に、撮像・投影制御部38に入力される。撮像・投影制御部38は、自由雲台15,45を用いて、上述したビデオカメラ10およびプロジェクタ40の姿勢とズームの制御を行なう。

【0046】
他方、眼光学神経モデル変換部31は、入力した入力画像Vinを、眼光学神経モデルを用いて、網膜画像Vrに変換する。このとき利用する眼光学神経モデルとしては、種々の態様があり得る。例えば以下の態様を考えることができる。
[1]照明装置100の使用者PSの眼光学神経モデルを、個人別視覚データベース36に記憶しておき、使用者PSに応じて、適用する。使用者PSの判別は、使用者PSの顔認識や、使用者PSによる視覚データ入力・選択部による入力、IDカードによる判別など、種々の手法を用いることができる。
[2]予め複数の眼光学神経モデルを用意しておき、このうちから、使用者PSの眼光学神経モデルに近いものを、視覚データ入力・選択部60を用いて、使用者PSに選択させて用いる。
[3]眼光学神経モデルを利用しない。この場合は、入力画像Vinをそのまま出力する。

【0047】
眼光学神経モデル変換部31は、入力画像Vinを、選択した眼光学神経モデルを用いて、網膜画像Vrに変換する。変換された網膜画像Vrは、読み易さモデル参照部33に入力され、読み易さモデル参照部33は、個人別視覚データベース36から使用者PSの読み易さモデル(明視モデル)を読み出す。読み易さモデルは、図4に示したモデルである。この際、いずれの読み易さモデルを用いるかは、使用者PS毎に用意したものを選択するものとしてもよいし、予め用意された複数の読み易さモデルのうちから、使用者PSの読み易さモデルに近いものを選択してもよい。あるいは、その場で、図8に一例を示したように、プロジェクタ40から所定の大きさの文字を所定の輝度および輝度コントラストにより表示し、使用者PSにより、読み易さのレベルLを入力させ、これにより、読み易さモデルを選択するものとしてもよい。こうした場合には、図8に示したように、サンプルの行・列に「ABC・・・」「あいう・・」といった符号を付し、表示された文字に対して、例えば「Aあ・・L=1(読めない)、Bあ・・L=2(読みにくい)、・・・、Cう・・L=4(苦労せずに読める)」といったように、視覚データ入力・選択部60を用いて、読み易さのレベルを入力または選択させればよい。こうすることで、使用者が属するグループを特定するグループ特定部として機能させたり、個人の視覚特性を特定させたりすることができる。

【0048】
読み易さモデル参照部33は、使用者PSに対応した読み易さモデルを参照し、この読み易さモデルに従って、読み易さをどの程度改善するかを決定し、コントラスト強調部34に輝度コントラストCの強調を指示する。コントラスト強調部34は、網膜画像Vrに対して、どの程度、輝度コントラストCを高めるかを求め、プロジェクタ40によって資料TXに重ねて投影する画像の輝度を決定する。

【0049】
図4に即して言えば、ビデオカメラ10が撮像した画像から、資料TXの背景輝度と輝度コントラストとを認識して、更に使用者PSの読み易さモデルを参照することで、照明装置100が動作していない状態での読み易さがレベルL=3であって、点P1の状態に相当すると判断すると、これを読み易さをレベルL=4とするために輝度コントラストをどの程度高めるかを求めることになる。つまり、プロジェクタ40よって、撮像した入力画像Vinと全く同じ画像を、資料TXに重畳することで、紙の白地の部分はプロジェクタ40からの画像により輝度(背景輝度)が高くなり、黒い文字の部分はプロジェクタ40による輝度上昇をさせないことから、資料TXの画像の輝度コントラストCを高めることができる。このとき、背景輝度も高められるので、使用者PSから見た資料TXの背景輝度と輝度コントラストとは、点P2の状態になるのではなく、点P3の状態になる。いずれにせよ、使用者PSから見た資料TXの読み易さは改善される。

【0050】
この実施形態では、照明部本体20は、網膜画像Vrを、コントラスト強調部34により輝度コントラストを強調するための画像に変換したのち、付加画像処理部35による付加的な画像処理を行なっている。この付加的な画像処理は、必ずしも行なう必要はない。その場合には、コントラスト強調部34により輝度コントラストを強調するための画像がそのまま出力画像Vout としてプロジェクタ40に出力される。

【0051】
B.付加画像処理:
付加画像処理には、以下の処理が含まれる。
(1)ビデオカメラ10で撮像した画像を解析し、撮像画像が静止していない、つまり資料TXが移動していると判定した場合には、撮像した画像を、資料TXが移動していない場合よりも少なくとも輝度コントラストを緩和した画像として生成する処理。こうすれば、資料TXを動かしているときには、プロジェクタ40が投影する画像は、これに追従するが、その際の輝度コントラストを低くしているので、使用者PSにとって動いて表示される資料TXの見え方が輝度コントラストの低いものとなり、不快感が緩和される。輝度コントラストの緩和には、プロジェクタ40による照明をオフにすることや、プロジェクタ40の輝度を低下すること、あるいはプロジェクタ40が表示する画像をビデオカメラ10が撮像した画像とは関係がない一様な明るさの画像にすること、等が含まれる。

【0052】
(2)ビデオカメラ10で撮像した画像に含まれるエッジ部に対するアンチエイリアス処理。プロジェクタ40はドット(光の点のオン・オフ)により画像を形成するので、解像度のいかんによらず、プロジェクタにおけるドットのならび方向に一致しない境界線、つまり斜めの線分は、図9に示すよう、ドットのならびと表現すべき線分とが一致しない。本実施形態では、ビデオカメラ10による撮像やプロジェクタ40による投影を4K画像としているので、A4程度の画像を表示する場合の解像度は約300dpi程度である。これに対して、資料TXが印刷物であれば、印刷物の解像度は300dpiより高いことがあるため、4K画像を用いても、両者が一致しない場合がある。このため、プロジェクタ40により照明として投写する画像に文字や斜めの線が含まれる場合、プロジェクタ40により形成されるドットのならびが、プロジェクタが形成するドットの縦横方向に一致しない場合、縦横方向にドットが増加または減少する場所で、その両側のドットの明るさを低下するアンチエイリアス処理を行なう。こうすれば、使用者PSには、斜めの線分の境界が滑らかに視認されるので、文字など、斜めの線分が多く含まれる対象の視認性が向上する。この効果は、照明装置100が取り扱う画像の解像度が低い場合には、より顕著である。また、画像を撮像するビデオカメラ10の解像度より、画像を形成するプロジェクタ40の解像度が低い場合にも、その効果は大きい。

【0053】
以上説明した第1実施形態によれば、視対象である資料TXの背景輝度と輝度コントラストとを適切に高めることで、資料TXの読み易さを改善することができる。このとき、照明装置100は、読み易さのモデル(明視モデル)に基づいて、背景輝度と輝度コントラストとを変更するので、使用者PSに合せた読み易さの向上を図ることができる。また、第1実施形態では、使用者PSの眼光学神経モデルを利用して、網膜画像vrを求めて処理を行なっているので、使用者PSの見え方に、より即した見えやすさの改善を行なうことができる。なお、眼光学神経モデルは利用しなくても差し支えない。

【0054】
C.第2実施形態:
次に第2実施形態について説明する。図10は、第2実施形態を示す概略構成図である。第2実施形態では、統合コントローラ200を設け、第1実施形態で説明した照明装置100と、部屋など環境全体を照明する照明装置とを制御する照明システムを構成している。統合コントローラ200は、照明装置100と天井240に取り付けられたプロジェクタ210とを制御する。天井240には、通常の照明器具250,260も設けられている。照明装置100のプロジェクタとプロジェクタ210とは、異なる照明範囲を照明する。

【0055】
第2実施形態においては、プロジェクタ210は、生活環境において必要となるエッジ等の強調を行なう。図10には、階段270を例示した。統合コントローラ200は、階段270の縁(ふち)などを視認しやすくするように、階段270の各ステップの上面の端部SS1を明るくし下側のステップの上面の端部SD1を照らさない画像を、プロジェクタ210を用いて投影する。従って、階段270のステップの上面の端部SS1の輝度は高くなり、縁の輝度コントラストも高まる。この結果、階段270を利用する使用者PS2は、階段270のステップの位置を視認しやすくなる。この場合、階段270の位置は移動しないので、プロジェクタ210により投影する画像は、予め用意しており、ビデオカメラで撮像していない。もとより、脚立などのように移動する家具の利用が想定される場合には、天井240にビデオカメラを用意し、環境を撮像し、必要なエッジを強調するようにしてもよい。また、ビデオカメラを用意して、室内などを撮像し、使用者PS2が移動する先々の環境を撮像し、移動する先々のエッジを強調するようにプロジェクタが投影する場所を制御してもよい。この場合、ビデオカメラやプロジェクタには、第1実施形態で用いた自由雲台を設け、使用者PSの移動に追従して撮像範囲や投影範囲を変更するものとしてもよい。

【0056】
更に、第2実施形態では、統合コントローラ200は照明装置100も制御しているので、使用者PS1が資料TXなどを読もうとする場合には、使用者PS1の視覚特性に合わせて読み易さを高める照明を実現するので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができ、使用者の利用環境を総合的に、見やすいものにすることができる。つまり使用者は、環境内において資料TXを読む場所まで移動することから、資料TXなどを読むと言った作業まで、シームレスに、明視の環境を享受することができる。

【0057】
D.その他の実施形態:
(a)上記実施形態では、明視モデルとして、使用者個人の読み易さの特性(図4参照)を用いたが、この特性には、文字の大きさのパラメータは含まないものとし、データの容量を低減している。これに対して、明視モデルに、文字の大きさを含ませ、例えば文字の大きさ別の特性データとして明視モデルを備えるものとしてもよい。この場合、ビデオカメラで撮像した画像を解析して文字の大きさを認識し、文字の大きさ毎に用意された読み易さレベルを示す特性を用いて、プロジェクタが投影する画像の背景輝度(文字以外の部分の輝度)と輝度コントラストとを決定するようにすればよい。使用者にとっての文字の大きさは、使用者と資料との距離により変化するので、ビデオカメラで資料と使用者とを撮像し、両者の距離を推定して、使用者にとっての文字の大きさを決定し、文字の大きさ別の特性データを参照するものとすればよい。もとより、資料TXと使用者PSとの距離が固定であれば、認識した文字の大きさに応じて読み易さのモデルを選択するものとしてもよい。

【0058】
(b)照明装置100は、スタンドタイプとしたが、天井取付型や、天井から垂下するいわゆるペンダント型であっても差し支えない。ビデオカメラとプロジェクタとは、一体に組み込まれる必要は必ずしもなく、一方が天井に、他方がスタンド型として用意されても良い。いずれの場合でも、プロジェクタが照明する対象が特定できれば足りる。

【0059】
(c)上記実施形態では、使用者の眼光学神経モデルを用いて、ビデオカメラ10が撮像した画像を網膜画像に変換したが、網膜画像に変換することなく、輝度コントラストの強調を行なうものとしてもよい。また、使用者が認識する画像を網膜画像以外の画像として扱ってもよい。例えば、使用者の年齢に応じて輝度を低下させた画像として扱ってもよい。

【0060】
(d)上記実施形態では、照明装置100のプロジェクタ40以外の光源、つまり天井に設けられた照明器具などの光や、窓から差し込む戸外の光などの影響は一定として考慮していないが、資料TXを照らす他の光源の光による背景輝度自体を併せて調整するものとしてもよい。例えば、図4を例にとると、仮に天井の照明器具からの光や戸外からの光が強く、背景の輝度が元々高い場合、これにプロジェクタ40からの画像を重畳すると、背景輝度が過剰に高くなり、使用者PSによっては眩しさを感じる場合が想定される場合には、天井の照明器具の光量を低減したり、窓のブラインドやシャッターを下ろして戸外の光を制限したりするなどして、プロジェクタ40以外の光による背景輝度を一旦低下してから、プロジェクタ40による投影画像を重畳して、読み易さを改善するものとすればよい。こうした対応は、第2実施形態のように統合コントローラ200を設けた場合、統合コントローラ200によって、照明器具250,260等の光量を調整できるようすれば、容易に実現可能である。

【0061】
(e)読み易さのレベルLの改善は、種々の態様で実現可能である。例えば、一律に読み易さをL=4以上とするように、背景輝度と輝度コントラストとを調整してもよいし、プロジェクタ40により投影画像の重畳前の読み易さのレベルLを所定の幅、例えば値1だけ高めるものとしてもよい。あるいは少なくともレベルL=3未満にしないものとしてもよい。また、使用者PS毎にどのように読み易さを高めるかを個人別視覚データベース36に記憶しておき、これを参照して、投影画像の明るさなどを決定するようにしてもよい。なお、眼光学神経モデルと読み易さのモデル(明視モデル)とは、個人別視覚データベース36にまとめて記憶する必要は必ずしもなく、異なる記憶部に記憶するものとしてもよい。あるいは、ネット上に分散して記憶しておき、適宜参照するものとしてもよい。この場合、個人個人が自分の眼光学神経モデルや読み易さのモデルなどを管理する形態としてもよい。

【0062】
(f)プロジェクタ40により投影する投影画像に含まれる文字等の形状は、ビデオカメラ10が撮像した画像に含まれる文字等の形状と基本的には同じものだが、使用者PSが読み易さの改善を指示しない場合には、単なる照明器具として働かせてもよい。また、資料TXに文字以外の部分、例えば写真などが含まれる場合、写真の領域を認識し、写真の部分については、異なる背景輝度および輝度コントラストとしてもよい。例えば、写真がグラビアのようにグレースケールで表示されている場合には、写真全体を均質に照明して背景輝度のみを高めるようにしてもよい。他方、写真が新聞等における表示のように網点によって形成されている場合には、文字と同じように背景輝度と輝度コントラストを決定して、投影画像を重畳すればよい。

【0063】
(g)上記実施形態では、A4程度の資料TX全体の背景輝度と輝度コントラストを調整して読み易さを高めたが、使用者PSが資料TXを読んでいる場合、実際に視認している範囲は、A4の資料サイズと比べてかなり狭い。中心視野は、数度程度の画角範囲に限られることが知られている。このため、視認位置特定部を設け、使用者PSの瞳孔の位置と向きをカメラで撮像し、使用者PSの視線方向を認識し、視線方向、つまり視認位置に存在する文字等のみを読み易さの改善を行なう対象とすることも差し支えない。この場合、背景輝度と輝度コントラストとを改善する範囲は狭くなるため、プロジェクタ40の投影画素数を4Kより小さいものにすることができる。また、プロジェクタ40の光源の明るさも抑制することができる。こうした画素数が少なく明るさも抑制したプロジェクタであれば、小型化が容易であるため、使用者の頭部にマウントしたり、眼鏡に照明装置100を組み込んだりすることも可能である。もとより、投影画素数が大きく、光源の明るいプロジェクタを用い、中心視野に対応した狭い範囲に投影画像を重畳するものとすることで、プロジェクタの能力を、投影画像の解像度と、背景輝度および輝度コントラストの上昇を行なう範囲の拡大とに用いてもよい。こうした狭い位置のコントラストの上昇であれば、レーザ光による描画の手法を用い、文字等の輪郭の外側を、レーザ光でベクタ方式により描画するものとしてもよい。

【0064】
(h)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。

【0065】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
TX…資料、Vin…入力画像、Vout…出力画像、Vr…網膜画像、a…係数、10…ビデオカメラ、15…自由雲台、20…照明部本体、21…映像入力部、23…映像出力部、30…映像処理部、31…眼光学神経モデル変換部、33…読み易さモデル参照部、34…コントラスト強調部、35…付加画像処理部、36…個人別視覚データベース、38…撮像・投影制御部、40…プロジェクタ、45…自由雲台、51…スタンド、52…ベース部、60…視覚データ入力・選択部、100…照明装置、200…統合コントローラ、210…プロジェクタ、240…天井、250,260…照明器具、270…階段
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7A】
6
【図7B】
7
【図7C】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
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