TOP > 国内特許検索 > 可変磁気結合回路 > 明細書

明細書 :可変磁気結合回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-186418 (P2019-186418A)
公開日 令和元年10月24日(2019.10.24)
発明の名称または考案の名称 可変磁気結合回路
国際特許分類 H01L  39/22        (2006.01)
FI H01L 39/22 K
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2018-076790 (P2018-076790)
出願日 平成30年4月12日(2018.4.12)
発明者または考案者 【氏名】吉原 文樹
出願人 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110001634、【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4M113
Fターム 4M113AC07
4M113AC45
4M113AD17
4M113AD23
要約 【課題】構造を簡略化しつつ、制御における混線を低減する。
【解決手段】可変磁気結合回路は、磁束の状態を有する回路要素である被結合対象の間で磁気結合する可変磁気結合回路であって、ループ状に電流が流れる超伝導体のループ経路と、前記ループ経路上に配置されたインダクタ部と、前記ループ経路上に配置され、直列接続された少なくとも2つのジョセフソン接合を有し、与えられた電荷に基づいて、前記被結合対象の間の磁気結合強度を変更する結合強度変更部とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
磁束の状態を有する回路要素である被結合対象の間で磁気結合する可変磁気結合回路であって、
ループ状に電流が流れる超伝導体のループ経路と、
前記ループ経路上に配置されたインダクタ部と、
前記ループ経路上に配置され、直列接続された少なくとも2つのジョセフソン接合を有し、与えられた電荷に基づいて、前記被結合対象の間の磁気結合強度を変更する結合強度変更部と
を備えることを特徴とする可変磁気結合回路。
【請求項2】
磁気結合される2つの前記被結合対象のうちの少なくとも1つは、超伝導量子回路である
ことを特徴とする請求項1に記載の可変磁気結合回路。
【請求項3】
磁気結合される2つの前記被結合対象は、いずれも磁束量子ビット回路である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変磁気結合回路。
【請求項4】
磁気結合される2つの前記被結合対象は、磁束量子ビット回路と超伝導共振回路とである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変磁気結合回路。
【請求項5】
磁気結合される2つの前記被結合対象には、第1の被結合対象と、第2の被結合対象とが含まれ、
前記結合強度変更部は、
前記第1の被結合対象と前記第2の被結合対象との結合を解除するゼロ結合状態にする場合に、前記第1の被結合対象と前記ループ経路との間の第1の相互インダクタンス、前記第2の被結合対象と前記ループ経路との間の第2の相互インダクタンス、及び前記ループ経路の自己インダクタンスに基づく結合強度を示す可変成分と、前記第1の被結合対象と前記第2の被結合対象との間の第3の相互インダクタンスに基づく結合強度を示す固定成分とが打ち消すように、前記電荷が与えられる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の可変磁気結合回路。
【請求項6】
前記インダクタ部は、前記ループ経路上に配置された1つ以上のジョセフソン接合を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の可変磁気結合回路。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可変磁気結合回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁束量子ビットなどの回路要素間の可変磁気結合を行う可変磁気結合回路が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。このような従来の可変磁気結合回路では、磁束制御(磁束バイアス)を用いて、可変磁気結合を制御していた。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】R.Harris, et al.,“Compound Josephson-junction coupler for flux qubits with minimal crosstalk”PHYSICAL REVIEW B 80, 052506(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の可変磁気結合回路では、制御に2系統の磁束バイアスを必要とするため、磁束バイアス同士の混線が発生することがあった。また、従来の可変磁気結合回路では、磁束バイアスによって磁気結合を制御するために、例えば、立体的に配線を交差させるクロスオーバ構造などの複雑な構造を必要としていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、構造を簡略化しつつ、制御における混線を低減することができる可変磁気結合回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、磁束の状態を有する回路要素である被結合対象の間で磁気結合する可変磁気結合回路であって、ループ状に電流が流れる超伝導体のループ経路と、前記ループ経路上に配置されたインダクタ部と、前記ループ経路上に配置され、直列接続された少なくとも2つのジョセフソン接合を有し、与えられた電荷に基づいて、前記被結合対象の間の磁気結合強度を変更する結合強度変更部とを備えることを特徴とする可変磁気結合回路である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の可変磁気結合回路において、磁気結合される2つの前記被結合対象のうちの少なくとも1つは、超伝導量子回路であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の可変磁気結合回路において、磁気結合される2つの前記被結合対象は、いずれも磁束量子ビット回路であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の可変磁気結合回路において、磁気結合される2つの前記被結合対象は、磁束量子ビット回路と超伝導共振回路とであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の可変磁気結合回路において、磁気結合される2つの前記被結合対象には、第1の被結合対象と、第2の被結合対象とが含まれ、前記結合強度変更部は、前記第1の被結合対象と前記第2の被結合対象との結合を解除するゼロ結合状態にする場合に、前記第1の被結合対象と前記ループ経路との間の第1の相互インダクタンス、前記第2の被結合対象と前記ループ経路との間の第2の相互インダクタンス、及び前記ループ経路の自己インダクタンスに基づく結合強度を示す可変成分と、前記第1の被結合対象と前記第2の被結合対象との間の第3の相互インダクタンスに基づく結合強度を示す固定成分とが打ち消すように、前記電荷が与えられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の可変磁気結合回路において、前記インダクタ部は、前記ループ経路上に配置された1つ以上のジョセフソン接合を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造を簡略化しつつ、制御における混線を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態による可変磁気結合回路の一例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態による可変磁気結合回路の電荷制御の動作原理を説明する図である。
【図3】第1の実施形態による可変磁気結合回路におけるゼロ結合の動作原理を説明する図である。
【図4】第1の実施形態による可変磁気結合回路によって、磁束量子ビットを結合する場合の一例を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態による可変磁気結合回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による可変磁気結合回路について、図面を参照して説明する。

【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による可変磁気結合回路1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、可変磁気結合回路1は、ループ経路11と、コイル12と、結合強度変更部13とを備える。

【0016】
可変磁気結合回路1は、磁束の状態(電流の状態)を有する回路要素である被結合対象(21、22)の間で磁気結合する超伝導量子回路である。可変磁気結合回路1は、例えば、被結合対象21と、被結合対象22との間に配置され、被結合対象21と被結合対象22との間の磁気結合を制御する。
なお、本実施形態において、被結合対象21と被結合対象22とは、特に区別しない場合には、被結合対象20として説明する。

【0017】
被結合対象20(第1の被結合対象の一例)は、磁束の状態(電流の状態)を有する回路要素であり、例えば、超伝導体のループ経路と、インピーダンス部とを備える超伝導量子回路である。被結合対象20は、例えば、磁束量子ビット、超伝導共振回路、等である。なお、超伝導量子回路には、抵抗成分は含まれない。
図1において、被結合対象21は、超伝導量子回路であり、ループ経路211と、インピーダンス部212とを備える。

【0018】
ループ経路211は、超伝導体で構成されたループ状の経路である。また、インピーダンス部212は、インピーダンスZを有する。
また、被結合対象21は、ループ経路211に電流Iが流れている状態であるものとする。

【0019】
また、被結合対象22(第2の被結合対象の一例)は、超伝導量子回路であり、ループ経路221と、インピーダンス部222とを備える。
ループ経路221は、超伝導体で構成されたループ状の経路である。また、インピーダンス部222は、インピーダンスZを有する。
また、被結合対象22は、ループ経路221に電流Iが流れている状態であるものとする。

【0020】
ループ経路11は、超伝導体で構成された経路であり、ループ状に電流が流れる超伝導体の配線である。ループ経路11の経路上には、後述するジョセフソン接合131及びジョセフソン接合132と、コイル12とが配置されている。また、ループ経路11は、磁束Φでバイアスされているものとする。
コイル12(インダクタ部の一例)は、ループ経路11上に配置されたインダクタである。

【0021】
結合強度変更部13は、ループ経路11上に配置され、直列接続された少なくとも2つのジョセフソン接合(131,132)を有し、与えられた電荷に基づいて、被結合対象20の間の磁気結合強度を変更する。結合強度変更部13は、例えば、電圧源30から電圧を印加することで、ジョセフソン接合(131,132)の間の超伝導体に電荷を与えて、アハロノフ・キャッシャー効果(Aharonov Casher効果)によって、被結合対象21と被結合対象22との間の磁気結合強度を変更する。なお、以下の説明において、電荷を与えることを、電荷バイアスと表記することがある。

【0022】
結合強度変更部13は、電圧源30からの電圧に基づく電荷バイアスを変更することで、例えば、2つの被結合対象20の間の磁気結合を解除するゼロ結合の状態から、2つの被結合対象20の間を磁気結合させる状態まで、被結合対象20の磁気結合強度を変更する。
また、結合強度変更部13は、ジョセフソン接合131と、ジョセフソン接合132と、コンデンサ133とを備える。

【0023】
ジョセフソン接合131及びジョセフソン接合132は、ループ経路11上に、例えば、直列に接続され、ループ経路11上の超伝導体の間に、絶縁体などのトンネル障壁により弱結合を設けることで形成される。
なお、本実施形態において、ジョセフソン接合131と、ジョセフソン接合132とは、結合強度変更部13が備える任意のジョセフソン接合を示す場合、又は、特に区別しない場合には、ジョセフソン接合130として説明する。

【0024】
コンデンサ133は、第1端がジョセフソン接合131と、ジョセフソン接合132との間の超伝導体(ループ経路11)に接続され、第2端が電圧源30に接続されている。コンデンサ133は、電圧源30から印加された電圧によって、ジョセフソン接合131と、ジョセフソン接合132との間の超伝導体に電荷バイアスを与えるために利用される。コンデンサ133の第1端側(ジョセフソン接合131と、ジョセフソン接合132との間の超伝導体に接続される側)の電極は、電荷バイアスが与えられる(印加される)電極として機能する。

【0025】
電圧源30は、例えば、電池などの直流電源であり、結合強度変更部13に電荷バイアスを印加するために、電圧を結合強度変更部13のコンデンサ133に電圧を供給する。電圧源30は、結合強度変更部13に供給する電圧を変更可能に構成されており、供給する電圧を変更することにより、可変磁気結合回路1の磁気結合強度(被結合対象20の間の磁気結合の強度)を制御可能である。

【0026】
次に、本実施形態による可変磁気結合回路1の電荷制御の動作原理について説明する。
図2は、本実施形態による可変磁気結合回路1の電荷制御の動作原理を説明する図である。
図2に示すように、本実施形態による可変磁気結合回路1では、ジョセフソン接合131と、ジョセフソン接合132との間のループ経路11に電荷バイアスを与えると、ループ経路11内の磁束と、ループ経路11外の磁束との間で、トンネル効果に2つの経路ができる。この2つの経路は、ジョセフソン接合131を経由する経路と、ジョセフソン接合132を経由する経路とである。可変磁気結合回路1では、この2つの経路の間で干渉が発生し、ジョセフソン接合131とジョセフソン接合132との間の電荷qの大きさによって、干渉の状態が変化する。そのため、電荷バイアスを変化させることにより、ループ経路11内の磁束と、ループ経路11外の磁束との間で、トンネル効果を制御することが可能になる。

【0027】
このように、本実施形態による可変磁気結合回路1では、電荷バイアスによる干渉の変化(アハロノフ・キャッシャー効果)を利用したトンネル効果の制御により、被結合対象20の間の磁気結合強度を変更する。この場合、磁束バイアスでなく電荷バイアスによって制御するため、被結合対象20の磁束の状態への影響を抑制できる。

【0028】
なお、可変磁気結合回路1における被結合対象20の間の磁気結合強度Leffは、以下の式(1)で表される。

【0029】
【数1】
JP2019186418A_000003t.gif

【0030】
ここで、MACは、ループ経路211とループ経路11との間の相互インダクタンスであり、MBCは、ループ経路221とループ経路11との間の相互インダクタンスである。また、MABは、ループ経路211とループ経路221との間の相互インダクタンスである。また、Lは、ループ経路11の自己インダクタンスである。

【0031】
式(1)の第1項は、相互インダクタンスMAC(第1の相互インダクタンス)、相互インダクタンスMBC(第2の相互インダクタンス)、及びループ経路11の自己インダクタンスLに基づく結合強度を示す可変成分である。また、式(1)の第2項は、相互インダクタンスMAB(第3の相互インダクタンス)に基づく結合強度を示す固定成分である。
なお、(1/L)は、エネルギーEを磁束Φにより2回微分した、以下の式(2)で表される。また、ここでのエネルギーEは、基底状態のエネルギーであり、可変磁気結合回路1は、常に基底状態で動作する。

【0032】
【数2】
JP2019186418A_000004t.gif

【0033】
電荷バイアスによる干渉の変化によって、磁束Φに対するエネルギーEの曲線が変化するため、結合強度変更部13は、与えられた電荷バイアスによって、上記の式(2)により、(1/L)を制御し、上述した第1項の可変成分の値を変更することで、磁気結合強度Leffを制御する。

【0034】
次に、本実施形態による可変磁気結合回路1におけるゼロ結合を行う場合について説明する。
図3は、本実施形態による可変磁気結合回路1におけるゼロ結合の動作原理を説明する図である。

【0035】
図3において、グラフの縦軸は、結合強度を示し、横軸は、電荷q/(2e)を示している。ここで、eは、電気素量である。また、波形W1は、電荷q/(2e)の変化に対する上記の式(1)の第1項(可変成分)の変化を示している。また、波形W2は、上記の式(1)の第2項(固定成分)を示している。

【0036】
波形W1の第1項(可変成分)は、(1/L)が上述した式(2)によりエネルギーEの磁束Φに対する2階微分であるため、負の値になっており、電荷q0において、第1項(可変成分の値と、波形W2の第2項(固定成分)の値とが等しくなる。すなわち、結合強度変更部13は、電荷q0が与えられることにより、磁気結合強度Leffを“0”(ゼロ)にすることが可能である。

【0037】
このように、本実施形態による可変磁気結合回路1では、結合強度変更部13は、被結合対象21と被結合対象22との結合を解除するゼロ結合状態にする場合に、式(1)の第1項(可変成分)と、式(1)の第2項(固定成分)とが打ち消すように、電荷q0が与えられる。

【0038】
次に、図4を参照して、本実施形態による可変磁気結合回路1を磁束量子ビットの結合に使用した場合の一例について説明する。
図4は、本実施形態による可変磁気結合回路1によって、磁束量子ビットを結合する場合の一例を示すブロック図である。

【0039】
図4に示すように、可変磁気結合回路1は、2つの被結合対象20の間に接合され、2つの被結合対象20は、それぞれ磁束量子ビット(磁束量子ビット回路)である。
被結合対象21は、磁束量子ビットであり、インピーダンス部212として、ジョセフソン接合212A、ジョセフソン接合212B、及びジョセフソン接合212Cを備える。

【0040】
ジョセフソン接合212A、ジョセフソン接合212B、及びジョセフソン接合212Cは、ループ経路211上に、直列に接続されている。また、ジョセフソン接合212A及びジョセフソン接合212Bは、ジョセフソン接合212Cよりも臨界電流が大きく設定されている。

【0041】
また、被結合対象22は、磁束量子ビットであり、インピーダンス部222として、ジョセフソン接合222A、ジョセフソン接合222B、及びジョセフソン接合222Cを備える。

【0042】
ジョセフソン接合222A、ジョセフソン接合222B、及びジョセフソン接合222Cは、ループ経路221上に、直列に接続されている。また、ジョセフソン接合222A及びジョセフソン接合222Bは、ジョセフソン接合222Cよりも臨界電流が大きく設定されている。

【0043】
図4において、可変磁気結合回路1は、電圧源30によって供給される電圧が制御されることによって、結合強度変更部13に与えられる電荷が制御される。可変磁気結合回路1では、結合強度変更部13に与えられる電荷の制御によって、磁束量子ビットである2つの被結合対象20の間の磁気結合強度を、ゼロ結合状態から強い磁気結合状態である深結合状態まで制御することが可能である。ここで、深結合状態とは、例えば、磁気結合強度が、量子ビット、又は共振回路の周波数と同程度以上となる結合状態である。

【0044】
以上説明したように、本実施形態による可変磁気結合回路1は、磁束の状態(電流の状態)を有する回路要素である被結合対象20の間で磁気結合する可変磁気結合回路であって、ループ経路11と、コイル12(インダクタ部)と、結合強度変更部13とを備える。ループ経路11は、ループ状に電流が流れる超伝導体の経路(配線)である。コイル12は、ループ経路11上に配置されるインダクタである。結合強度変更部13は、ループ経路11上に配置され、直列接続された少なくとも2つのジョセフソン接合130(131,132)を有し、与えられた電荷(電荷バイアス)に基づいて、被結合対象20の間の磁気結合強度を変更する。

【0045】
これにより、本実施形態による可変磁気結合回路1は、結合強度変更部13に与えられた電荷(電荷バイアス)によって、2つのジョセフソン接合130(131,132)による干渉であるアハロノフ・キャッシャー効果によって、被結合対象20の間の磁気結合強度を変更することができる。
本実施形態による可変磁気結合回路1では、電荷(電荷バイアス)によって、磁気結合強度を変更することができるため、以下の3つの特性を満たすことが可能である。
(a)被結合対象20の間のゼロ結合の実現
(b)制御における磁束バイアス同士の混線の低減
(c)クロスオーバ構造などの複雑な構造を必要としない構造の簡略化

【0046】
本実施形態による可変磁気結合回路1は、電荷バイアスによって磁気結合強度を制御するため、2系統の磁束バイアスを必要とした従来の可変磁気結合回路に比べて、磁束バイアスによる制御を1系統減らすことができる。なお、ここでの従来の2系統の磁束デバイスとは、1系統は、磁束Φをゼロではない動作点にバイアスするためのものであり、もう1系統は、磁気結合強度の制御用である。

【0047】
例えば、可変磁気結合回路がrf-SQUID(Radio Frequency-Superconducting Quantum Interference Device)であり、磁気結合が10箇所必要な超伝導量子回路があった場合に、2系統の磁束バイアスを必要とした従来の可変磁気結合回路では、C(20,2)=190通りの混線チャネルの組合せが発生することになる。これに対して、本実施形態による可変磁気結合回路1は、rf-SQUIDである場合には、1系統の磁束バイアスと1系統の電荷バイアスを必要であるため、混線チャネルの組合せは、磁束バイアス同士の混線と電荷バイアス同士の混線とを併せてもC(10,2)×2=90通りであり、従来の可変磁気結合回路の半分以下となる。そのため、本実施形態による可変磁気結合回路1は、制御における混線の低減することができる。

【0048】
また、本実施形態では、ジョセフソン接合130は、例えば、π接合のような特殊なジョセフソン接合である必要はない。ただし、ジョセフソン接合130は、π接合のような特殊なジョセフソン接合であってもよく、この場合、磁束Φがゼロでよいため、磁束Φをゼロではない動作点にバイアスするために使用していた直流磁束バイアスを1系統低減できる。

【0049】
また、本実施形態による可変磁気結合回路1は、電荷バイアスによる制御であるため、従来の可変磁気結合回路のような立体的な配線の交差であるクロスオーバ構造を必要としない。そのため、本実施形態による可変磁気結合回路1は、構造を簡略化(単純化)することが可能であり、製造工程を簡略化することが可能である。

【0050】
また、本実施形態では、磁気結合される2つの被結合対象20のうちの少なくとも1つは、超伝導量子回路である。例えば、磁気結合される2つの被結合対象20は、いずれも磁束量子ビット(磁束量子ビット回路)である(図4参照)。
これにより、本実施形態による可変磁気結合回路1は、例えば、磁束量子ビットなどの超伝導量子回路の間の磁気結合を適切に制御することができる。

【0051】
また、本実施形態では、磁気結合される2つの被結合対象20のうちの少なくとも1つは、磁束量子ビット又は超伝導共振回路であってもよい。例えば、磁気結合される2つの被結合対象20は、磁束量子ビットと超伝導共振回路とであってもよい。
このように、本実施形態による可変磁気結合回路1では、様々な超伝導量子回路の間の磁気結合に利用することができる。本実施形態による可変磁気結合回路1は、例えば、量子アニール方式などの量子コンピュータにおいて、磁束量子ビット同士の可変磁気結合に容易に利用することができる。

【0052】
この場合、量子コンピュータは、可変磁気結合回路1と同様の効果を奏し、回路構成や演算操作を簡略化することができるとともに、混線の低減及び演算操作速度の向上が期待できる。また、本実施形態による可変磁気結合回路1は、従来の磁束バイアス制御の可変磁気結合回路1との互換性を有しているため、量子コンピュータの一部の可変磁気結合回路を、本実施形態による可変磁気結合回路1に置き換えることも可能である。
なお、量子コンピュータは、量子アニール方式に限定されるものではなく、他の方式の量子コンピュータであってもよい。

【0053】
また、本実施形態では、磁気結合される2つの被結合対象20には、第1の被結合対象(例えば、被結合対象21)と、第2の被結合対象(例えば、被結合対象22)とが含まれる。結合強度変更部13は、第1の被結合対象と第2の被結合対象との結合を解除するゼロ結合状態にする場合に、可変成分(上記の式(1)の第1項)と、固定成分(上記の式(1)の第2項)とが打ち消すように、電荷が与えられる。ここで、可変成分は、例えば、被結合対象21とループ経路11との間の相互インダクタンスMAC(第1の相互インダクタンス)、被結合対象22とループ経路11との間の相互インダクタンスMBC(第2の相互インダクタンス)、及びループ経路11の自己インダクタンスLに基づく結合強度を示す。また、固定成分は、被結合対象21と被結合対象22との間の相互インダクタンスMAB(第3の相互インダクタンス)に基づく結合強度を示す。なお、被結合対象21のループ経路211と被結合対象22のループ経路221とは、固定の距離に配置されているため、固定成分は、固定値(定数値)となる。
これにより、本実施形態による可変磁気結合回路1は、与える電荷を制御することにより、被結合対象21と被結合対象22との間のゼロ結合状態を実現することができる。

【0054】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態による可変磁気結合回路1aについて説明する。
本実施形態では、インダクタ部12aに、コイル12の代わりにジョセフソン接合(121,122)を用いる場合の一例について説明する。

【0055】
図5は、本実施形態による可変磁気結合回路1aの一例を示すブロック図である。
図5に示すように、可変磁気結合回路1aは、ループ経路11と、インダクタ部12aと、結合強度変更部13とを備える。
なお、この図において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成には、同一の符号を付与し、その説明を省略する。

【0056】
インダクタ部12aは、ループ経路11上に配置された2つのジョセフソン接合(121,122)を備える。すなわち、インダクタ部12aは、ループ経路11上に配置された1つ以上のジョセフソン接合120を備える。

【0057】
ジョセフソン接合121及びジョセフソン接合122は、ループ経路11上に流れる電流が自身の臨界電流よりも十分に小さい場合に、インダクタとして機能する。なお、ジョセフソン接合121及びジョセフソン接合122は、ジョセフソン接合130よりも臨界電流が大きく設定されている。
なお、本実施形態において、ジョセフソン接合121と、ジョセフソン接合122とは、インダクタ部12aが備える任意のジョセフソン接合を示す場合、又は、特に区別しない場合には、ジョセフソン接合120として説明する。

【0058】
インダクタ部12a以外の構成は、第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態による可変磁気結合回路1aの動作原理についても第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。

【0059】
以上説明したように、本実施形態による可変磁気結合回路1aは、ループ経路11と、インダクタ部12aと、結合強度変更部13とを備える。また、インダクタ部12aは、ループ経路11上に配置された1つ以上のジョセフソン接合120を備える。
これにより、本実施形態による可変磁気結合回路1aは、1つ以上のジョセフソン接合120がインダクタとして機能するため、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏し、構造を簡略化しつつ、制御における混線を低減することができる。

【0060】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、結合強度変更部13は、2つのジョセフソン接合130を備える例を説明したが、これに限定されるものではなく、2つ以上のジョセフソン接合130を備えるようにしてもよい。結合強度変更部13は、2つ以上の偶数個のジョセフソン接合130を備える場合には、一部の区間が重なり合う平行した超伝導体の配線の重なり合う部分に絶縁体を配置することでジョセフソン接合130を用意に形成することができるため、結合強度変更部13をより簡易な構成で実現することができる。

【0061】
また、上記の各実施形態において、被結合対象20として、磁束量子ビット、及び超伝導共振回路を適用する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波の導波路(超伝導電送線路)に適用してもよい。すなわち、磁気結合される2つの被結合対象20のうちの少なくとも1つは、マイクロ波の導波路(超伝導電送線路)であってもよい。
また、上記の各実施形態において、可変磁気結合回路1(1a)を量子コンピュータに適用する例を説明したが、他の超伝導回路を用いた量子情報処理に適用してもよいし、超伝導デジタル回路、超伝導検出器などに適用してもよい。

【0062】
また、上記の各実施形態において、結合強度変更部13は、電荷バイアスを与えるためのコンデンサ133を含む例を説明したが、これに限定されるものではない。結合強度変更部13は、例えば、電荷バイアスを与えるための電極を備えるようにしてもよいし、外部にコンデンサ133を備えるようにしてもよい。
また、上記の第2の実施形態において、インダクタ部12aが2つのジョセフソン接合120を備える例を説明したが、これに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上のジョセフソン接合120を備えるようにしてもよい。
また、上述した図4において、磁束量子ビットの一例を説明したが、これに限定されるものではない。磁束量子ビットは、例えば、3つ以上の大きい接合のジョセフソン接合などの他の構成の磁束量子ビットであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,1a 可変磁気結合回路、11,211,221 ループ経路、12 コイル、12a インダクタ部、13 結合強度変更部、20,21,22 被結合対象、30 電圧源、120,121,122,130,131,132,212A,212B,212C,222A,222B,222C ジョセフソン接合、133 コンデンサ、212,222 インピーダンス部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4