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明細書 :立体ディスプレイ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5943273号 (P5943273)
公開番号 特開2013-210590 (P2013-210590A)
登録日 平成28年6月3日(2016.6.3)
発行日 平成28年7月5日(2016.7.5)
公開日 平成25年10月10日(2013.10.10)
発明の名称または考案の名称 立体ディスプレイ
国際特許分類 G02B  27/22        (2006.01)
G02B  26/10        (2006.01)
G03B  21/00        (2006.01)
G03B  21/14        (2006.01)
H04N  13/04        (2006.01)
FI G02B 27/22
G02B 26/10 C
G02B 26/10 104Z
G03B 21/00 Z
G03B 21/14 Z
H04N 13/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 22
出願番号 特願2012-082528 (P2012-082528)
出願日 平成24年3月30日(2012.3.30)
審査請求日 平成27年2月6日(2015.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】吉田 俊介
個別代理人の代理人 【識別番号】100098305、【弁理士】、【氏名又は名称】福島 祥人
審査官 【審査官】堀部 修平
参考文献・文献 特開2005-115177(JP,A)
特開平07-193841(JP,A)
特開2008-146221(JP,A)
特開2013-117575(JP,A)
特開2010-081440(JP,A)
調査した分野 G02B 27/22 - 27/26
H04N 13/04
G02B 26/10
特許請求の範囲 【請求項1】
立体形状データに基づいて立体画像を提示するための立体ディスプレイであって、
第1の方向に沿って並びかつ前記第1の方向に交差する第2の方向において少なくとも1列に配置されるとともに、前記第1の方向に沿った第1の軸を中心として揺動可能かつ前記第2の方向に沿った第2の軸を中心として揺動可能に構成される反射面をそれぞれ有する複数の反射素子と、
前記複数の反射素子の前記反射面に光線を照射する光線発生器と、
前記複数の反射素子の前記反射面により反射された光線を透過させる光線制御子と、
前記複数の反射素子および前記光線発生器を制御する制御手段とを備え、
前記複数の反射素子の前記反射面は、前記第1の方向に平行な面内で異なる方向に光線を反射するように設けられ、
前記複数の反射素子の各々は、
支持枠と、
前記第1および第2の軸のうち一方の軸を中心として回転可能に前記支持枠に取り付けられる可動枠と、
前記第1および第2の軸のうち他方の軸を中心として回転可能に前記可動枠に取り付けられる反射部材とを含み、
前記反射部材は前記反射面を有し、
前記制御手段は、各反射素子の前記反射面への光線の照射時に、各反射素子の前記反射面が前記第1の軸を中心として揺動するとともに前記第2の軸を中心として揺動することにより一定時間内において各反射素子の前記反射面でそれぞれ異なる方向に反射された複数の光線からなる光線群が形成されるように前記複数の反射素子を制御し、前記立体形状データに基づいて、前記光線制御子を透過した前記複数の反射素子からの複数の光線群により立体画像が提示されるように前記光線発生器を制御するように構成され
前記複数の反射素子からの光線を前記第1の方向において第1の角度範囲で拡散させて透過させるとともに前記第2の方向において第2の角度範囲で拡散させて透過させ、
前記第1および第2の角度範囲は、前記光線群により提示される立体画像に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像の立体形状が認識されるように設定される、立体ディスプレイ。
【請求項2】
前記光線発生器は、光線を前記第1の方向に平行な面内で偏向させるように構成され、
前記制御手段は、光線が前記第1の方向に走査されることにより前記複数の反射素子の前記反射面に順次光線が照射されつつ各反射素子の前記反射面が前記第1の軸を中心として揺動することにより一定時間内において各反射素子の前記反射面でそれぞれ異なる方向に反射された複数の光線からなる光線群が形成されるように前記光線発生器および前記複数の反射素子を制御するように構成される、請求項記載の立体ディスプレイ。
【請求項3】
前記第2の角度範囲は、前記第1の角度範囲よりも大きく設定される、請求項1または2記載の立体ディスプレイ。
【請求項4】
前記複数の反射素子は、さらに前記第2の方向において複数列に配置され、
前記光線発生器は、前記複数列の複数の反射素子に光線を照射するように構成される、請求項1~3のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を提示する立体ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のプロジェクタを用いることにより裸眼で視認可能な立体画像を提示する立体ディスプレイが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された立体ディスプレイは、光線制御子および複数のプロジェクタを備える。光線制御子は、円錐台形状を有し、大径の底部開口が上方を向くようにテーブルの天板の円形孔部に嵌め込まれる。テーブルの下方に、複数のプロジェクタが光線制御子の軸を中心とする円周上に配置される。各プロジェクタは、光線を光線制御子の外周面に照射するとともにその光線を水平面内および垂直面内で偏向させる。制御装置は、立体形状データに基づいて、複数のプロジェクタにより発生される光線群により立体画像が提示されるように複数のプロジェクタを制御する。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010-32952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載された立体ディスプレイによれば、観察者は、光線制御子の上方に提示される立体画像をテーブルの周囲の位置から見ることができる。
【0006】
しかしながら、間隙(途切れ)のない高品質の立体画像を提示するためには、多数のプロジェクタを密に配置する必要がある。それにより、立体ディスプレイのコストが高くなる。また、プロジェクタのレンズおよびケース等の部品の物理的な制約により、複数のプロジェクタを例えば1mm以下のような小さなピッチで配置することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、少ない数の光線発生器でコストの増加を抑制しつつ品質が向上された立体画像を提示することが可能な立体ディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る立体ディスプレイは、立体形状データに基づいて立体画像を提示するための立体ディスプレイであって、第1の方向に沿って並びかつ第1の方向に交差する第2の方向において少なくとも1列に配置されるとともに、第1の方向に沿った第1の軸を中心として揺動可能かつ第2の方向に沿った第2の軸を中心として揺動可能に構成される反射面をそれぞれ有する複数の反射素子と、複数の反射素子の反射面に光線を照射する光線発生器と、複数の反射素子の反射面により反射された光線を透過させる光線制御子と、複数の反射素子および光線発生器を制御する制御手段とを備え、複数の反射素子の反射面は、第1の方向に平行な面内で異なる方向に光線を反射するように設けられ、複数の反射素子の各々は、支持枠と、第1および第2の軸のうち一方の軸を中心として回転可能に支持枠に取り付けられる可動枠と、第1および第2の軸のうち他方の軸を中心として回転可能に可動枠に取り付けられる反射部材とを含み、反射部材は反射面を有し、制御手段は、各反射素子の反射面への光線の照射時に、各反射素子の反射面が第1の軸を中心として揺動するとともに第2の軸を中心として揺動することにより一定時間内において各反射素子の反射面でそれぞれ異なる方向に反射された複数の光線からなる光線群が形成されるように複数の反射素子を制御し、立体形状データに基づいて、光線制御子を透過した複数の反射素子からの複数の光線群により立体画像が提示されるように光線発生器を制御するように構成され、複数の反射素子からの光線を第1の方向において第1の角度範囲で拡散させて透過させるとともに第2の方向において第2の角度範囲で拡散させて透過させ、第1および第2の角度範囲は、光線群により提示される立体画像に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像の立体形状が認識されるように設定されるものである。
【0009】
その立体ディスプレイにおいては、第1の方向に沿って並ぶ少なくとも1列の複数の反射素子の反射面に光線発生器により光線が照射される。それにより、複数の反射素子の反射面により第1の方向に平行な面内で異なる方向に光線がそれぞれ反射される。このとき、各反射素子の反射面が第1の方向に平行な第1の軸を中心として揺動し、第2の方向に沿った第2の軸を中心として揺動する。それにより、一定時間内において各反射素子の反射面で光線が第1の軸に直交する面内でそれぞれ異なる方向に反射されるとともに第2の軸に直交する面内でそれぞれ異なる方向に反射され、反射された複数の光線からなる光線群が形成される。それにより、少ない数の反射素子を用いて異なる方向の複数の光線をより密に形成することが可能となる。複数の反射素子の反射面により反射された光線群は、光線制御子を透過する。立体形状データに基づいて、光線制御子を透過した複数の光線群により立体画像が提示される。この場合、複数の反射素子が第1の方向に沿って並ぶので、視域を第1の方向に平行に延びるように定義することができる。そのため、観察者は、第1の方向に平行な任意の位置から立体画像を視認することができる。
また、複数の反射素子からの光線が第1の方向において第1の角度範囲で拡散して透過するとともに第2の方向において第2の角度範囲で拡散して透過し、第1および第2の角度範囲は、光線群により提示される立体画像に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像の立体形状が認識されるように設定される。それにより、第1および第2の方向に広がるように定義された視域に隙間なく複数の光線群を形成することが可能となる。その結果、高品質の立体画像が提示される。
【0010】
このようにして、複数の反射素子により複数の光線発生器と等価な機能が実現される。ここで、各反射素子は光線発生器に比べて安価かつ小型に作製することができる。それにより、複数の反射素子を密に配置することが可能となる。その結果、少ない数の光線発生器でかつコストの増加を抑制しつつ品質が向上された立体画像を提示することが可能となる。
【0014】
) 光線発生器は、光線を第1の方向に平行な面内で偏向させるように構成され、制御手段は、光線が第1の方向に走査されることにより複数の反射素子の反射面に順次光線が照射されつつ各反射素子の反射面が第1の軸を中心として揺動することにより一定時間内において各反射素子の反射面でそれぞれ異なる方向に反射された複数の光線からなる光線群が形成されるように光線発生器および複数の反射素子を制御するように構成されてもよい。
【0015】
この場合、光線発生器による第1の方向における光線の走査および第1の軸を中心とする各反射素子の反射面の揺動により、一定時間内において各反射素子の反射面でそれぞれ異なる方向に複数の光線が反射される。したがって、少ない数の光線発生器を用いて異なる方向の複数の光線をより密に形成することが可能となる。その結果、コストの削減が可能となる。
【0016】
2の角度範囲は、第1の角度範囲よりも大きく設定されてもよい。
【0017】
この場合、第1の方向に平行に延びるように定義された視域から観察者の眼の位置が第2の方向にずれた場合でも、観察者は立体画像を視認することができる。
【0018】
) 複数の反射素子は、さらに第2の方向において複数列に配置され、光線発生器は、複数列の複数の反射素子に光線を照射するように構成されてもよい。
【0019】
この場合、第1および第2の方向に広がる視域を定義することができる。それにより、観察者は、第1および第2の方向における任意の位置から立体画像を視認することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、少ない数の光線発生器でかつコストの増加を抑制しつつ品質が向上された立体画像を提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的斜視図である。
【図2】図1の立体ディスプレイの模式的側面図である。
【図3】図1の立体ディスプレイの模式的平面図である。
【図4】1つの反射素子の構成の一例を示す模式図である。
【図5】反射素子での光線の走査を示す模式図である。
【図6】反射素子の反射面の揺動による光線の反射方向の変化を示す上面図である。
【図7】反射素子の反射面をY軸を中心として揺動させた場合における光線の反射を示す図である。
【図8】反射素子の反射面をX軸を中心として揺動させた場合における光線の反射を示す図である。
【図9】立体画像の提示方法を説明するための模式的平面図である。
【図10】立体画像の提示方法を説明するための模式的断面図である。
【図11】本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理を説明するための模式的平面図である。
【図12】第2の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的斜視図である。
【図13】立体画像の提示方法を説明するための模式的側面図である。
【図14】第3の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的縦断面図である。
【図15】第3の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的平面図である。
【図16】第4の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的縦断面図である。
【図17】第4の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る立体ディスプレイについて説明する。

【0025】
(1)第1の実施の形態
(1-1)立体ディスプレイの構成
図1は第1の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的斜視図である。図2は図1の立体ディスプレイの模式的側面図である。図3は図1の立体ディスプレイの模式的平面図である。以下の説明において、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向と定義する。X方向は観察者10から見て左から右または右から左へ向かう水平方向であり、図1~図3では、左から右へ向かう方向を矢印Xで示す。また、Y方向は観察者10から見て上から下または下から上へ向かう鉛直方向であり、図1~図3では、上から下へ向かう鉛直方向を矢印Yで示す。さらに、Z方向はX方向およびY方向に直交する奥行き方向であり、図1~図3では、観察者から遠ざかる奥行き方向を矢印Zで示す。

【0026】
図1~図3に示すように、立体ディスプレイは、少なくとも1つの走査型プロジェクタ1、X方向に沿って配列される複数の反射素子2、および平面形状の光線制御子3を備える。本例では、1つの走査型プロジェクタ1が設けられる。図2に示すように、立体ディスプレイは、記憶装置4および制御装置5をさらに備える。

【0027】
走査型プロジェクタ1は、複数の反射素子2の反射面に光線を照射するように複数の反射素子2の反射面の前方(手前)に配置される。この走査型プロジェクタ1は、光線を出射するとともにその光線をXZ面内で偏向させることにより、光線で複数の反射素子2の反射面をX方向に走査することができる。また、走査型プロジェクタ1は、光線の方向ごとおよび時間ごとに光線の色を設定することができる。それにより、走査型プロジェクタ1は、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。ここで、光線とは、拡散しない直線で表される光をいう。各反射素子2の構成については、後述する。

【0028】
光線制御子3は、複数の反射素子2により反射された光線を透過させつつ一定角度範囲内で拡散させるように複数の反射素子2の前方(手前)に配置される。光線制御子3の機能の詳細については、後述する。

【0029】
記憶装置4は、例えばハードディスク、メモリカード等からなる。記憶装置4には、立体画像100を提示するための立体形状データが記憶される。制御装置5は、例えばパーソナルコンピュータからなる。制御装置5は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて走査型プロジェクタ1および複数の反射素子2を制御する。それにより、光線制御子3の前方(手前)および後方(背後)の空間に立体画像300が提示される。

【0030】
(1-2)反射素子2の構成
図4は1つの反射素子2の構成の一例を示す模式図である。以下の説明において、X方向に平行な軸をX軸と呼び、Y方向に平行な軸をY軸と呼び、Z方向に平行な軸をZ軸と呼ぶ。

【0031】
図4の反射素子2は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により作製される。

【0032】
反射素子2は、支持枠21、可動枠22および反射部材23により構成される。支持枠21は、XY面上に配置される。可動枠22は、矢印aで示すように、X軸を中心として回転可能に支持枠21に取り付けられる。反射部材23は、矢印bで示すように、Y軸を中心として回転可能に可動枠22に取り付けられる。反射部材23の一面が反射面24となる。反射面24の一辺の長さは、例えば0.5mm~1mm程度である。

【0033】
このような構成により、反射面24は、Y軸を中心として揺動可能に設けられるとともに、X軸を中心として揺動可能に設けられる。これにより、反射面24に入射した光線をXZ面内の任意の角度およびYZ面内の任意の角度で反射させることが可能となる。その結果、反射面24から前方の任意の方向に光線を出射することができる。

【0034】
(1-3)光線の走査および反射素子2の動作
図5は反射素子2での光線の走査を示す模式図である。図5に示すように、図1の走査型プロジェクタ1により、矢印で示すように、複数の反射素子2の反射面24が光線でX方向に走査される。それにより、複数の反射素子2の反射面24上に順次光線が照射される。点線で示すように、光線の断面は、反射面24の一辺の長さと同じかまたはやや小さい直径を有する。

【0035】
図6は反射素子2の反射面24の揺動による光線の反射方向の変化を示す上面図である。

【0036】
図6には、それぞれ時点t1~t8における反射面24の状態が示される。時点t1~t4では、反射面24がY軸を中心としてX方向から時計回りに角度θ1~θ4それぞれ傾斜している。この場合、θ1>θ2>θ3>θ4である。時点t5~t8では、反射面24がX方向から反時計回りに角度θ5~θ8それぞれ傾斜している。この場合、θ5<θ6<θ7<θ8である。これらの状態で、時点t1~t8の期間に、走査型プロジェクタ1からの光線Lが反射面24に入射する。それにより、時点t1~t4では、光線Lが反射面24によりそれぞれ入射方向に対して時計回りに角度2θ1~2θ4傾斜した方向に反射される。時点t5~t6では、光線Lが反射面24によりそれぞれ入射方向に対して時計回りに角度2θ5~2θ8傾斜した方向に反射される。その結果、一定時間内に反射面24から異なる方向に光線L1~L8が順次出射される。

【0037】
図7は反射素子2の反射面24をY軸を中心として揺動させた場合における光線の反射を示す図である。図7に矢印cで示すように、反射素子2の反射面24をY軸を中心として揺動させることにより、一定時間内に反射面24により異なる方向にそれぞれ複数の光線L1~L8が反射される。この場合、反射面24を複数の光線L1~L8の出射点とみなすことができる。

【0038】
図8は反射素子2の反射面24をX軸を中心として揺動させた場合における光線の反射を示す図である。図8に矢印dで示すように、反射素子2の反射面24をX軸を中心として揺動させることにより、一定時間内に反射面24により異なる方向にそれぞれ光線L11~L15が反射される。この場合、反射面24を複数の光線L11~L15の出射点とみなすことができる。

【0039】
具体的には、走査型プロジェクタ1からの光線Lを各反射素子2の反射面24に照射している間に、X軸を中心として反射面24を一定角度に傾斜させた状態でY軸を中心として反射面24を順次異なる複数の角度に傾斜させる。次に、X軸を中心とする反射面24の傾斜角度を変更した後、Y軸を中心として反射面24を順次異なる複数の角度に傾斜させる。この操作を繰り返し行うことにより、一定時間内に反射面24から複数の異なる方向に光線が出射される。

【0040】
このように、走査型プロジェクタ1からの光線Lを各反射素子2の反射面24に照射した状態で、反射面24をY軸およびX軸を中心として揺動させることにより、光線Lを反射面24で異なる複数の方向に時分割で反射させることができる。

【0041】
この場合、走査型プロジェクタ1は、時分割で光線Lの色を設定することができる。したがって、図7および図8の反射面24で反射される光線L1~L8,L11~L15は、それぞれ任意の色に設定される。その結果、それぞれ設定された色の光線が光線制御子3を透過する。

【0042】
(1-4)光線制御子3の構成
図1~図3の光線制御子3は、アクリルまたはポリカーボネート等からなる平面状の透明シートにより形成される。透明シートの一面または両面には、X方向に延びる複数の直線状レンズがY方向に密に並ぶように設けられている。各直線状レンズは、例えばかまぼこ形の垂直断面を有する。直線状レンズが半円形の断面を有してもよい。透明シートの代わりに半透明シートを用いてもよい。

【0043】
光線制御子3は、光線を透過させつつX方向において(XZ面内で)第1の角度範囲で微小拡散させ、光線を透過させつつY方向において(YZ面内で)第1の角度範囲よりも大きい第2の角度範囲で拡散させる機能を有する。

【0044】
光線制御子3は、光線をX方向において第1の角度範囲で微小拡散させる理由は、次の通りである。隣り合う反射面24間に隙間が生じないように複数の反射素子2を配置することは難しい。この場合、複数の反射素子2の反射面24で反射された光線間に隙間が生じる。そこで、光線制御子3により光線が微小拡散されることにより、X方向において隣り合う光線間に隙間が生じることが防止される。したがって、第1の角度範囲は、複数の反射素子2の配置に基づいて光線制御子3を透過した複数の光線間にX方向における隙間が実質的に形成されないように設定されることが好ましい。一方、第1の角度範囲が大きすぎると、多数の反射素子2からの光線が重なり合う。それにより、観察者10が立体画像300の立体形状を適切に認識することが難しくなる。したがって、第1の角度範囲は、複数の光線により提示される立体画像300に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像300の立体形状が認識されるように設定されることが好ましい。

【0045】
ここで、「実質的に間隙が形成されず」とは、立体画像300に観察者10の眼で認識される程度の間隙が形成されないことを意味する。実際には、複数の反射素子2の大きさ、複数の反射素子2間の間隔、提示されるべき立体画像300の大きさ、提示されるべき立体画像300の位置、および観察者10と立体画像300との間の距離等の観察条件を考慮して設定される。

【0046】
光線制御子3は、各反射素子2からの光線をX方向において第1の角度範囲で微小拡散させて透過させるので、観察者10は、X方向の任意の位置で一本の光線のみを視認することができる。

【0047】
また、光線制御子3は、各反射素子2からの光線をY方向において第1の角度範囲よりも大きい第2の角度範囲で拡散させて透過させるので、観察者10は、一本の光線を上下方向の任意の位置から視認することができる。

【0048】
(1-5)立体画像300の提示方法
図9は立体画像300の提示方法を説明するための模式的平面図である。図9においては、6つの反射素子2の反射面24-1,24-2,…,24-6が丸印で示される。

【0049】
例えば、光線制御子3の前方の位置PGに緑色の画素を提示する場合には、反射面24-1で位置PGを通る方向に緑色の光線L21を反射させ、反射面24-3で位置PGを通る方向に緑色の光線L23を反射させ、反射面24-5で位置PGを通る方向に緑色の光線L25を反射させる。それにより、緑色の光線L21,L23,L25の交点に点光源となる緑色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置I21にある場合、位置I23にある場合および位置I25にある場合に、位置PGに緑色の画素が見える。

【0050】
同様にして、光線制御子3の前方の位置PRに赤色の画素を提示する場合には、反射面24-2で位置PRを通る方向に赤色の光線L22を反射させ、反射面24-4で位置PRを通る方向に赤色の光線L24を反射させ、反射面24-6で位置PRを通る方向に赤色の光線L26を反射させる。それにより、赤色の光線L22,L24,L26の交点に点光源となる赤色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置I22にある場合、位置I24にある場合および位置I26にある場合に、位置PRに赤色の画素が見える。

【0051】
このようにして、複数の反射面24の各々から立体画像300の各位置を通る方向に提示すべき色の光線が出射される。

【0052】
複数の反射素子2がX方向において密に並べられており、光線制御子3を透過する光線間にX方向における隙間が存在しない場合、X方向のいずれの位置から光線制御子3を観察しても位置PR,PGを通過する適切な光線が眼に入射することになり、人の眼はそこに点光源があるように認識する。実物体の表面にて反射または拡散した照明光を人は物体として認識するので、物体の表面は点光源の集合とみなすことができる。すなわち、物体の表面としたいある位置PR,PGの色を複数の反射面24-1~24-6より飛来する光線によって適切に再現することにより、立体画像300を提示することができる。

【0053】
このようにして、立体画像300を光線制御子3の前方または後方の空間に提示することができる。この場合、観察者は、X方向における異なる位置で同一の立体画像300をそれぞれ異なる方向から視認することができる。

【0054】
図1の走査型プロジェクタ1により出射される光線の色は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて制御装置5により算出される。具体的には、制御装置5は、立体形状データとして予め定義される三次元の立体形状の面と各光線との交点を求め、光線に与えるべき適切な色を算出する。

【0055】
制御装置5は、算出した光線群の各光線の色に基づいて走査型プロジェクタ1を制御する。それにより、光線制御子3の前方または後方に立体画像300が提示されるように、走査型プロジェクタ1から算出された色をそれぞれ有する光線が出射される。

【0056】
上記のようにして、本実施の形態に係る立体ディスプレイによれば、立体画像300の指向性表示が可能となる。

【0057】
図10は立体画像300の提示方法を説明するための模式的断面図である。図10には、反射素子2の反射面24で反射された3本の光線が示される。

【0058】
図10に示すように、反射素子2の反射面24で反射された光線は、光線制御子3により垂直方向において(YZ面内で)第2の角度範囲α(拡散角)で拡散される。それにより、観察者は、第2の角度範囲α内においてY方向の異なる位置で反射面24で反射される同じ色の光線を見ることができる。例えば、観察者が視線を基準の位置Eから上方の位置E’に移動させた場合でも、立体画像300の同じ部分を見ることができる。この場合、Y方向における観察者の眼の位置により観察者が視認する立体画像300の位置が移動する。このように、反射面24で反射された光線が光線制御子3でY方向において拡散されるため、観察者が視線を上下に移動させても立体画像300を観察することができる。

【0059】
(1-6)両眼視差の発生原理
ここで、本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理について説明する。

【0060】
図11は本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理を説明するための模式的平面図である。図11には、反射素子2の4つの反射面24a,24b,24c,24dが示される。

【0061】
図11において、観察者が光線制御子3の点P31を見た場合には、右眼100Rに反射面24aで反射された光線Laが入射し、左眼100Lに反射面24bで反射された光線Lbが入射する。また、観察者が光線制御子3の点P32を見た場合には、右眼100Rに反射面24cで反射された光線Lcが入射し、左眼100Lに反射面24dで反射された光線Ldが入射する。

【0062】
ここで、光線Laの色と光線Ldの色とは同じであり、光線Lbの色は光線Laの色と異なり、光線Lcの色は光線Ldの色とは異なるとする。この場合、光線制御子3上の点P31の色は見る方向により異なる。また、光線制御子3上の点P32の色も見る方向により異なる。

【0063】
光線Laにより立体画像300の点Paが作られ、光線Lbにより立体画像300の点Pbが作られ、光線Lcにより立体画像300の点Pcが作られ、光線Ldにより立体画像300の点Pdが作られる。

【0064】
図11の例では、立体画像300の点Paと点Pdとが同じ位置にある。すなわち、光線Laと光線Ldとの交点に立体画像300の点Pa,Pdが作られる。点Pa,Pdは、仮想的な点光源となすことができる。この場合、右眼100Rで点Pa,Pdを見る方向と左眼100Lで点Pa,Pdを見る方向とが異なる。すなわち、右眼100Rの視線方向と左眼100Lの視線方向との間に輻輳角がある。これにより、光線群により形成される画像の立体視が可能となる。

【0065】
(1-7)第1の実施の形態の効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、1つの走査型プロジェクタ1により出射された光線を複数の反射素子2により一定時間内で異なる複数の方向に反射させることができる。それにより、複数の走査型プロジェクタ1と等価な機能が実現される。ここで、反射素子2は、走査型プロジェクタ1に比べて小型に作製することができる。それにより、複数の反射素子2をX方向に密に配置することが可能となる。また、複数の反射素子2により反射された各光線が光線制御子3によりX方向において微小拡散される。したがって、X方向において隙間のない光線群が形成される。また、反射素子2は、走査型プロジェクタ1に比べて小型で安価である。その結果、コストを増加させることなくX方向の任意の位置の観察者10に間隙(途切れ)のない高品質の立体画像300を提示することが可能となる。

【0066】
また、観察者10は、光線制御子3の前方または後方に提示される立体画像300をX方向の任意の位置から見ることができる。したがって、複数の人が特別な装置を用いることなく任意の位置から裸眼で立体画像300を観察することができる。また、観察者10の人数も制限されない。

【0067】
さらに、各反射素子2により反射された各光線が光線制御子3によりY方向において拡散される。それにより、観察者10の視点の高さが上下しても、観察者10が立体画像300を観察することが可能となる。したがって、観察者10の視点の高さが制限されない。

【0068】
(2)第2の実施の形態
(2-1)立体ディスプレイの構成
図12は第2の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的斜視図である。第2の実施の形態に係る立体ディスプレイが第1の実施の形態に係る立体ディスプレイと異なるのは、以下の点である。

【0069】
図12に示すように、複数の反射素子2がX方向およびY方向に沿って二次元的に配列される。本実施の形態では、走査型プロジェクタ1は、光線を出射するとともにその光線をXZ面内およびYZ面内で偏向させることにより、光線で複数の反射素子2の反射面をX方向およびY方向に走査することができる。この場合、走査型プロジェクタ1は、X方向およびY方向に配列された複数の反射素子2の反射面に順次光線を照射することができる。それにより、走査型プロジェクタ1は、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。各反射素子2の構成および動作は、図2の反射素子2の構成および動作と同様である。

【0070】
光線制御子3は、光線を透過させつつX方向およびY方向において(XZ面内およびYZ面内で)所定の角度範囲で微小拡散させる機能を有する。光線制御子3により光線が微小拡散されることにより、X方向およびY方向において隣り合う光線間に隙間が生じることが防止される。光線の拡散の角度範囲は、複数の反射素子2の配置に基づいて光線制御子3を透過した複数の光線間にX方向およびY方向における隙間が実質的に形成されないように設定される。一方、拡散の角度範囲が大きすぎると、多数の反射素子2からの光線が重なり合う。それにより、観察者10が立体画像300の立体形状を適切に認識することが難しくなる。したがって、拡散の角度範囲は、複数の光線により提示される立体画像300に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像300の立体形状が認識されるように設定される。

【0071】
光線制御子3は、例えば平面状の透明シートと微小拡散層との積層構造を有する。透明シートは、アクリルまたはポリカーボネート等の透明材料により形成される。透明シートの少なくとも一面に微小拡散層が形成される。微小拡散層中には、大きさおよび形状が不規則な複数の粒子が分散的に配置される。粒子は、例えばガラスまたは他の高分子材料等からなる。微小拡散層は、入射した光線が微小拡散して透過するように構成される。透明シートの代わりに半透明シートを用いてもよい。

【0072】
例えば、樹脂溶液中に複数の粒子を混合し、その溶液を透明シートの少なくとも一面に塗布して硬化させることにより、微小拡散層を形成することができる。また、透明シートの少なくとも一面に例えば紫外線硬化樹脂からなる接着剤を塗布し、その接着剤に複数の粒子を分散的に接着させることにより、微小拡散層を形成することができる。なお、微小拡散層を単独で形成することが可能である場合には、透明シートが設けられなくてもよい。

【0073】
あるいは、光線制御子3は、光線を所定の角度範囲で微小拡散させるために透明シートの表面に不規則なパターンを有する凹凸が形成された構造を有してもよい。また、凹凸の代わりに透明シートに光透過部と遮光部とを格子状のパターンとして形成し、回折格子のような2値のビットパターンにより類似の光学特性を実現してもよい。透明シートの代わりに半透明シートを用いてもよい。

【0074】
制御装置5は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて走査型プロジェクタ1および複数の反射素子2を制御する。それにより、光線制御子3の前方または後方に立体画像300が提示される。

【0075】
(2-2)立体画像300の提示方法
図13は立体画像300の提示方法を説明するための模式的側面図である。図13には、Y方向に配列される複数の反射素子2の反射面24が丸印で示される。

【0076】
図13において、例えば、光線制御子3の前方の位置PRに赤色の画素を提示する場合には、反射面24Aで位置PRを通る方向に赤色の光線L31を反射させ、反射面24Cで位置PRを通る方向に赤色の光線L33を反射させる。それにより、赤色の光線L31,L33の交点に点光源となる赤色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置IAにある場合および位置IBにある場合に、位置PRに赤色の画素が見える。

【0077】
同様に、光線制御子3の前方の位置PGに緑色の画素を提示する場合には、反射面24Bで位置PRを通る方向に緑色の光線L32を反射させ、反射面24Dで位置PGを通る方向に緑色の光線L34を反射させる。それにより、緑色の光線L32,L34の交点に点光源となる緑色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置IAにある場合および位置IBにある場合に、位置PGに緑色の画素が見える。

【0078】
このようにして、観察者は、Y方向における異なる位置(異なる高さ)で同一の立体画像300を視認することができる。

【0079】
(2-3)第2の実施の形態の効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、複数の反射素子2をX方向およびY方向に密に配置することが可能となる。また、複数の反射素子2で反射された光線が光線制御子3によりX方向およびY方向において微小拡散される。したがって、X方向およびY方向において隙間のない光線群が形成される。その結果、コストを増加させることなくX方向およびY方向の任意の位置の観察者10に間隙(途切れ)のない高品質の立体画像300を提示することが可能となる。

【0080】
また、観察者10は、光線制御子3の前方または後方に提示される立体画像300をX方向およびY方向の任意の位置から見ることができる。したがって、複数の人が特別な装置を用いることなく任意の位置から裸眼で立体画像300を観察することができる。また、観察者10の人数も制限されない。この場合、観察者10の位置により立体画像300の位置が変化することもない。

【0081】
(3)第3の実施の形態
(3-1)立体ディスプレイの構成
図14は第3の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的縦断面図である。図15は第3の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的平面図である。図15には、図14の光線制御子3が図示されていない。

【0082】
第3の実施の形態に係る立体ディスプレイが第2の実施の形態に係る立体ディスプレイと異なるのは、以下の点である。

【0083】
図14および図15の立体ディスプレイは、走査型プロジェクタ1、複数の反射素子2、光線制御子3、記憶装置4(図2参照)および制御装置5(図2参照)を備える。

【0084】
図14に示されるように、複数の反射素子2は、上下方向の軸500を中心とする回転対称な湾曲面を形成するように軸500を中心とする複数の円周上に配置されている。図14の例では、湾曲面は放物線形状の断面を有する。各反射素子2は、X軸が軸500を中心とする湾曲面の円周方向を向きかつY軸が軸500を中心とする湾曲面の半径方向を向くように設けられる。

【0085】
走査型プロジェクタ1は、軸500上に配置されている。走査型プロジェクタ1は、光線を出射するとともにその光線を軸500を中心とする円周方向に移動させるとともに上下方向に揺動させることにより、光線で複数の反射素子2の反射面を円周方向および半径方向に走査することができる。この場合、走査型プロジェクタ1は、湾曲面を形成するように配置された複数の反射素子2の反射面に順次光線を照射することができる。それにより、走査型プロジェクタ1は、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。反射素子2の構成および動作は、図2の反射素子2の構成および動作と同様である。

【0086】
光線制御子3は、軸500を中心として回転対称な円錐形状を有し、底部が上方を向くように複数の反射素子2の上方に配置される。光線制御子3の底部は開口している。光線制御子3の構造および機能は、図12の光線制御子3の構造および機能と同様である。この光線制御子3は、入射した光線を透過させつつ稜線方向および円周方向において微小拡散させる。光線制御子3は、例えば、テーブルの天板の円形孔部に嵌め込まれる。

【0087】
テーブルの周囲にいる観察者は、テーブルの天板の斜め上方から光線制御子3の内周面を観察することができる。

【0088】
制御装置5(図2)は、記憶装置4(図2)に記憶される立体形状データに基づいて走査型プロジェクタ1および複数の反射素子2を制御する。それにより、光線制御子3の内部および上方に立体画像300が提示される。

【0089】
(3-2)第3の実施の形態の効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、複数の反射素子2を円周方向および半径方向に密に配置することが可能となる。また、複数の反射素子2で反射された光線が光線制御子3により円周方向および稜線方向において微小拡散される。したがって、円周方向および稜線方向において隙間のない光線群が形成される。その結果、コストを増加させることなく円周方向および高さ方向の任意の位置の観察者に間隙(途切れ)のない高品質の立体画像300を提示することが可能となる。

【0090】
また、観察者は、光線制御子3の内部または上方に提示される立体画像300を円周方向および高さ方向の任意の位置から見ることができる。したがって、複数の人が特別な装置を用いることなく任意の位置から裸眼で立体画像300を観察することができる。また、観察者の人数も制限されない。この場合、観察者の位置により立体画像300の位置が変化することもない。

【0091】
(4)第4の実施の形態
(4-1)立体ディスプレイの構成
図16は第4の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的縦断面図である。図17は第4の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的平面図である。図17には、図16の光線制御子3が図示されていない。

【0092】
第4の実施の形態に係る立体ディスプレイが第3の実施の形態に係る立体ディスプレイと異なるのは、以下の点である。

【0093】
図16および図17の立体ディスプレイは、複数の走査型プロジェクタ1、複数の反射素子2、光線制御子3、記憶装置4(図2参照)および制御装置5(図2参照)を備える。

【0094】
本実施の形態における複数の反射素子2の配置は、第3の実施の形態における複数の反射素子2の配置と同様である。

【0095】
複数の走査型プロジェクタ1は、軸500を中心とする複数の円周上に配置されている。また、複数の走査型プロジェクタ1は複数段に配置される。図14の例では、複数の走査型プロジェクタ1が上段、中段および下段に配置される。各段には複数の走査型プロジェクタ1が等角度間隔で配置される。

【0096】
湾曲面は、複数の走査型プロジェクタ1に対応して複数の領域に区分される。図16および図17の例では、湾曲面が上段、中段および下段の走査型プロジェクタ1に対応して上段、中段および下段の環状領域に区分され、各段の環状領域が複数の部分環状領域に区分される。各走査型プロジェクタ1は、光線を出射するとともにその光線を軸500を中心とする円周方向に移動させるとともに上下方向に揺動させることにより、光線で対応する部分環状領域の複数の反射素子2の反射面を円周方向および半径方向に走査することができる。この場合、各走査型プロジェクタ1は、対応する部分環状領域の複数の反射素子2の反射面に順次光線を照射することができる。それにより、各走査型プロジェクタ1は、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。反射素子2の構成および動作は、図2の反射素子2の構成および動作と同様である。また、光線制御子3の形状、構造および機能は、図14の光線制御子3の形状、構造および機能と同様である。

【0097】
制御装置5(図2)は、記憶装置4(図2)に記憶される立体形状データに基づいて複数の走査型プロジェクタ1および複数の反射素子2を制御する。それにより、光線制御子3の内部および上方に立体画像300が提示される。

【0098】
(4-2)第4の実施の形態の効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、第3の実施の形態に係る立体ディスプレイと同様に、複数の反射素子2を円周方向および稜線方向に密に配置することが可能となる。また、複数の反射素子2で反射された光線が光線制御子3により円周方向および稜線方向において微小拡散される。したがって、円周方向および半径方向において隙間のない光線群が形成される。その結果、コストを増加させることなく円周方向および高さ方向の任意の位置の観察者に間隙(途切れ)のない高品質の立体画像300を提示することが可能となる。

【0099】
また、観察者は、光線制御子3の内部または上方に提示される立体画像300を円周方向および高さ方向の任意の位置から見ることができる。したがって、複数の人が特別な装置を用いることなく任意の位置から裸眼で立体画像300を観察することができる。また、観察者の人数も制限されない。この場合、観察者の位置により立体画像300の位置が変化することもない。

【0100】
さらに、複数の走査型プロジェクタ1が用いられるので、各反射素子2の反射面に光線が照射される時間を十分に確保することができる。それにより、明るい立体画像の提示が可能となる。

【0101】
(5)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。

【0102】
上記第1~第4の実施の形態では、反射素子2が反射素子の例であり、反射面24が反射面の例であり、走査型プロジェクタ1が光線発生器の例であり、光線制御子3が光線制御子の例であり、制御装置5が制御手段の例である。第1および第2の実施の形態では、X方向が第1の方向の例であり、Y方向が第2の方向の例であり、第3および第4の実施の形態では、円周方向が第1の方向の例であり、半径方向が第2の方向の例である。第1~第4の実施の形態では、X軸が第1の軸の例であり、Y軸が第2の軸の例である。

【0103】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。

【0104】
(6)他の実施の形態の形態
(a)上記の第1および第2の実施の形態では、1つの走査型プロジェクタ1が用いられるが、複数の走査型プロジェクタ1が用いられてもよい。この場合、複数の反射素子2が複数の組に区分され、各走査型プロジェクタ1が1つの組の複数の反射素子2に対応付けられる。各走査型プロジェクタ1は、対応する組の複数の反射素子2に光線を照射するように配置される。それにより、各反射素子2の反射面24の各反射点に光線が照射される時間を長くすることができる。したがって、複数の反射素子2の数を増加させることにより、さらに高品質の立体画像300を提示することが可能となる。

【0105】
(b)上記の第1~第4の実施の形態では、光線発生器として、走査型プロジェクタ1を用いているが、これに限定されない。光線発生器としては、DMD(デジタルミラーデバイス)、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)またはLCD(液晶ディスプレイ)等の空間光変調器および複数のレンズからなるレンズアレイ等の投影系を備えた一般的なプロジェクタを用いることもできる。この場合、1または複数の反射素子2に異なる方向の複数の光線を同時に照射することができる。

【0106】
(c)上記の第1の実施の形態では、複数の反射素子2が直線状に配置されているが、複数の反射素子2が曲線状に配置されてもよい。

【0107】
(d)上記の第2の実施の形態では、複数の反射素子2が平面状に配置されているが、複数の反射素子2が曲面状に配置されてもよい。

【0108】
(e)上記の第3および第4の実施の形態では、複数の反射素子2が回転対称な湾曲面を形成するように配置されているが、複数の反射素子2が平面、曲面または環状面を形成するように配置されてもよい。また、複数の反射素子2が1つの円周上に環状に配置されてもよい。この場合には、光線制御子3が光線を円周方向において第1の角度範囲で拡散させて透過させかつ稜線方向において第1の角度範囲よりも大きい第2の角度範囲で拡散させて透過させるように形成される。それにより、観察者が上下方向に移動した場合でも、立体画像を視認することができる。

【0109】
(f)上記の第1~第4の実施の形態では、反射素子2がMEMSにより形成されるが、反射素子2としてガルバノミラーまたはポリゴンミラーのように光線を反射方向を変更可能な他の反射素子が用いられてもよい。

【0110】
(g)上記の第1および第2の実施の形態では、光線制御子3が平面状に形成されているが、光線制御子3が曲面状に形成されてもよい。

【0111】
(h)上記の第3および第4の実施の形態では、光線制御子3が円錐形状に形成されるが、光線制御子3が円錐台形状に形成されてもよく、または光線制御子3が平面状もしくは曲面状に形成されてもよい。

【0112】
(i)上記の第1および第2の実施の形態では、観察者10が光線制御子3の前方から立体画像300を観察するように構成されるが、本発明はこれに限定されない。光線制御子3の前方に鏡が配置されることにより観察者10が光線制御子3の後方(複数の反射素子2の側)から立体画像300を観察可能なように立体ディスプレイが構成されてもよい。それにより、光線制御子3の前方側(複数の反射素子2と反対側)にスペースが不要となる。

【0113】
第1の実施の形態では、平面状の鏡が配置される。第2の実施の形態では、複数の反射素子2の複数列に対応してX方向に延びる帯状の複数の鏡が配置されることが好ましい。複数の鏡は、観察者10の眼に光線が入射するようにそれぞれ異なる角度で傾斜される。

【0114】
(j)上記の第3および第4の実施の形態に係る立体ディスプレイが次のように変形されてもよい。湾曲面を形成する複数の反射素子2がその内面側(反射面の側)が下を向くように光線制御子3の開口の上方に配置される。1または複数の走査型プロジェクタ1は、光線制御子3の中心軸またはその周囲でかつ光線制御子3と複数の反射素子2との間の空間に配置される。また、光線制御子3の外側を取り囲むように鏡が配置される。この変形例では、1または複数の走査型プロジェクタ1から複数の反射素子2に光線が照射され、複数の反射素子2で反射された複数の光線が光線制御子3の内側から外側に透過し、鏡で反射される。鏡で反射された複数の光線により光線制御子3の上方に立体画像300が提示される。観察者10は、立体画像300を光線制御子3の上方から観察することができる。

【0115】
(k)上記の第1~第4の実施の形態において、光線制御子3が蓄光効果を有してもよい。その場合、各反射素子2に光線が照射される時間を短くすることができる。その結果、反射素子2の数を増加させることが可能となる。それにより、立体ディスプレイの解像度を向上させることができる。

【0116】
〈参考形態〉
(1) 本参考形態に係る立体ディスプレイは、立体形状データに基づいて立体画像を提示するための立体ディスプレイであって、第1の方向に沿って並びかつ第1の方向に交差する第2の方向において少なくとも1列に配置されるとともに、第1の方向に平行な第1の軸を中心として揺動可能に構成される反射面をそれぞれ有する複数の反射素子と、複数の反射素子の反射面に光線を照射する光線発生器と、複数の反射素子の反射面により反射された光線を透過させる光線制御子と、複数の反射素子および光線発生器を制御する制御手段とを備え、複数の反射素子の反射面は、第1の方向に平行な面内で異なる方向に光線を反射するように設けられ、制御手段は、各反射素子の反射面への光線の照射時に、各反射素子の反射面が第1の軸を中心として揺動することにより一定時間内において各反射素子の反射面でそれぞれ異なる方向に反射された複数の光線からなる光線群が形成されるように複数の反射素子を制御し、立体形状データに基づいて、光線制御子を透過した複数の反射素子からの複数の光線群により立体画像が提示されるように光線発生器を制御するように構成されるものである。
その立体ディスプレイにおいては、第1の方向に沿って並ぶ少なくとも1列の複数の反射素子の反射面に光線発生器により光線が照射される。それにより、複数の反射素子の反射面により第1の方向に平行な面内で異なる方向に光線がそれぞれ反射される。このとき、各反射素子の反射面が第1の方向に平行な第1の軸を中心として揺動する。それにより、一定時間内において各反射素子の反射面で光線が第1の軸に直交する面内でそれぞれ異なる方向に反射され、反射された複数の光線からなる光線群が形成される。複数の反射素子の反射面により反射された光線群は、光線制御子を透過する。立体形状データに基づいて、光線制御子を透過した複数の光線群により立体画像が提示される。この場合、複数の反射素子が第1の方向に沿って並ぶので、視域を第1の方向に平行に延びるように定義することができる。そのため、観察者は、第1の方向に平行な任意の位置から立体画像を視認することができる。
このようにして、複数の反射素子により複数の光線発生器と等価な機能が実現される。ここで、各反射素子は光線発生器に比べて安価かつ小型に作製することができる。それにより、複数の反射素子を密に配置することが可能となる。その結果、少ない数の光線発生器でかつコストの増加を抑制しつつ品質が向上された立体画像を提示することが可能となる。
なお、複数の反射素子の反射面は、第1の方向に平行な面内で異なる方向に光線を反射するように異なる向きに配置されてもよく、あるいは第1の方向に平行な面内で異なる方向に光線を反射するように揺動可能に構成されてもよい。
(2) 各反射素子の反射面は、第2の方向に沿った第2の軸の周りでさらに揺動可能に構成され、制御手段は、各反射素子の反射面への光線の照射時に、各反射素子の反射面が第1の軸を中心として揺動するとともに第2の軸を中心として揺動することにより一定時間内において各反射素子の反射面でそれぞれ異なる方向に反射された複数の光線からなる光線群が形成されるように複数の反射素子を制御するように構成されてもよい。
この場合、一定時間内において、各反射素子の反射面で光線が第1の軸に直交する面内でそれぞれ異なる方向に反射されるとともに第2の軸に直交する面内でそれぞれ異なる方向に反射される。それにより、各反射素子の反射面から異なる方向の複数の光線が出射される。したがって、少ない数の反射素子を用いて異なる方向の複数の光線をより密に形成することが可能となる。その結果、立体画像の品質がさらに向上する。
(3) 光線発生器は、光線を第1の方向に平行な面内で偏向させるように構成され、制御手段は、光線が第1の方向に走査されることにより複数の反射素子の反射面に順次光線が照射されつつ各反射素子の反射面が第1の軸を中心として揺動することにより一定時間内において各反射素子の反射面でそれぞれ異なる方向に反射された複数の光線からなる光線群が形成されるように光線発生器および複数の反射素子を制御するように構成されてもよい。
この場合、光線発生器による第1の方向における光線の走査および第1の軸を中心とする各反射素子の反射面の揺動により、一定時間内において各反射素子の反射面でそれぞれ異なる方向に複数の光線が反射される。したがって、少ない数の光線発生器を用いて異なる方向の複数の光線をより密に形成することが可能となる。その結果、コストの削減が可能となる。
(4) 光線制御子は、複数の反射素子からの光線を第1の方向において第1の角度範囲で拡散させて透過させるとともに第2の方向において第2の角度範囲で拡散させて透過させ、第1の角度範囲は、光線群により提示される立体画像に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像の立体形状が認識されるように設定され、第2の角度範囲は、第1の角度範囲よりも大きく設定されてもよい。
この場合、間隙がない高品質の立体画像が提示される。また、第1の方向に平行に延びるように定義された視域から観察者の眼の位置が第2の方向にずれた場合でも、観察者は立体画像を視認することができる。
(5) 複数の反射素子は、さらに第2の方向において複数列に配置され、光線発生器は、複数列の複数の反射素子に光線を照射するように構成されてもよい。
この場合、第1および第2の方向に広がる視域を定義することができる。それにより、観察者は、第1および第2の方向における任意の位置から立体画像を視認することができる。
(6) 光線制御子は、複数の反射素子からの光線を第1の方向において第1の角度範囲で拡散させて透過させるとともに第2の方向において第2の角度範囲で拡散させて透過させ、第1および第2の角度範囲は、光線群により提示される立体画像に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像の立体形状が認識されるように設定されてもよい。
この場合、第1および第2の方向に広がるように定義された視域に隙間なく複数の光線群を形成することが可能となる。その結果、高品質の立体画像が提示される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
裸眼で視認可能な立体画像を提示するために利用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 走査型プロジェクタ
2 反射素子
3 光線制御子
4 記憶装置
5 制御装置
10 観察者
21 支持枠
22 可動枠
23 反射部材
24,24-1,24-2,24-3,24-4,24-5,24-6,24a,24b,24c,24d,24A,24B,24C,24D 反射面
100 立体画像
100R 右眼
100L 左眼
300 立体画像
500 軸
a,b,X,Y,Z 矢印
E,E’,IA,IB,I21,I22~I26,p1~p8,PG,PR, 位置
L,L1~L8,L11~L15,L21~L26,La~Ld,L31~L34 光線
P31,P32,Pa~Pd 点
t1~t8 時点
α 角度範囲
θ1~θ8,2θ1~~2θ8 角度
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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