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明細書 :ペロブスカイト太陽電池およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-190928 (P2018-190928A)
公開日 平成30年11月29日(2018.11.29)
発明の名称または考案の名称 ペロブスカイト太陽電池およびその製造方法
国際特許分類 H01L  31/0224      (2006.01)
H01L  31/072       (2012.01)
H01L  51/44        (2006.01)
FI H01L 31/04 266
H01L 31/06 400
H01L 31/04 112Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-094767 (P2017-094767)
出願日 平成29年5月11日(2017.5.11)
発明者または考案者 【氏名】白井 康裕
【氏名】イスラム モハマッド ボデュール
【氏名】柳田 真利
【氏名】宮野 健次郎
出願人 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
審査請求 未請求
テーマコード 5F151
Fターム 5F151AA20
5F151BA18
5F151CB13
5F151CB15
5F151DA07
5F151DA20
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA15
5F151FA16
5F151FA17
5F151FA18
5F151FA23
5F151FA24
5F151GA03
5F151GA05
要約 【課題】高い光電変換効率を維持して長期間連続発電可能な高い光照射耐性を有するペロブスカイト太陽電池を提供する。
【解決手段】透明性支持体1、透明導電層2、ホール輸送層3、ペロブスカイト層4、電子輸送層5、ホールブロッキング層6、および裏面電極7を含むペロブスカイト太陽電池101であって、透明伝導層2はインジウムスズ酸化物(ITO)、ホール輸送層3はニッケル酸化物、裏面電極7はITOとする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
透明性支持体、透明導電層、ホール輸送層、ペロブスカイト層、電子輸送層、ホールブロッキング層、および裏面電極を含むペロブスカイト太陽電池であって、
前記透明伝導層はインジウムスズ酸化物(ITO)、前記ホール輸送層はニッケル酸化物、前記裏面電極はITOからなる、ペロブスカイト太陽電池。
【請求項2】
透明性支持体、透明導電層、ホール輸送層、ペロブスカイト層、電子輸送層、ホールブロッキング層、および裏面電極を含むペロブスカイト太陽電池であって、
前記透明伝導層はITO、前記ホール輸送層はニッケル酸化物、前記裏面電極はITOと金属の積層膜からなり、
前記裏面電極のITOは前記ホールブロッキング層に接している、ペロブスカイト太陽電池。
【請求項3】
前記裏面電極のITOの膜厚が200nm以上350nm以下である、請求項2記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項4】
前記ニッケル酸化物は有機物を含まない、請求項1から3の何れか1記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項5】
前記ペロブスカイト層は塩素を含有するペロブスカイトからなる、請求項1から4の何れか1記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項6】
前記電子輸送層は[6,6]-フェニル-C61-ブチル酸メチルエステル(PCBM)膜、前記ホールブロッキング層はアルミニウム亜鉛酸化膜からなる、請求項1から5の何れか1記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項7】
透明性支持体上に透明導電層を形成する工程と、ホール輸送層を形成する工程と、ペロブスカイト層を形成する工程と、電子輸送層を形成する工程と、ホールブロッキング層を形成する工程と、裏面電極を形成する工程とを順次行ってペロブスカイト太陽電池を製造するペロブスカイト太陽電池の製造方法において、
前記透明伝導層はITO膜、前記ホール輸送層はニッケル酸化物膜、前記裏面電極はITO膜からなり、
前記ホール輸送層の形成工程はスパッタリング法による、ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記裏面電極は、ITO膜と金属膜からなり、
前記裏面電極の形成工程は、ITO膜を形成する工程と金属膜を形成する工程を順次行う工程からなる、請求項7記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記裏面電極のITO膜の膜厚は200nm以上350nm以下である、請求項7または8記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト太陽電池に係り、更に詳しくは、光照射耐性に優れたペロブスカイト太陽電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの地球環境問題の観点から化石燃料に代わるクリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換できる太陽電池が注目されている。
【0003】
太陽光を効率良く電気に変換できる太陽電池で、現在実用化されているものとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンおよびテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。これらの無機系太陽電池の課題としては、例えば、シリコン系では非常に純度の高いものが要求され、精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
【0004】
これに対して、新しいタイプの太陽電池として、ペロブスカイト太陽電池が注目されている。ペロブスカイト太陽電池は、光電変換部であるペロブスカイトが塗布で製造できるため、安価で高効率な太陽電池として期待されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
ペロブスカイト太陽電池は、例えば、透明な基体上に形成された透明電極層、ホール輸送層(電子ブロッキング層)、ペロブスカイト層、電子輸送層、ホールブロッキング層および裏面電極から構成される。電極層にITO(Indium Tin Oxide)を用いたペロブスカイト太陽電池が特許文献2に、ホール輸送層にNiO(Nickel Oxide)を用いたペロブスカイト太陽電池が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2017—22354号公報
【0006】

【非特許文献1】Nature Photonics,vol.8,p.128(2013)
【非特許文献2】Advanced Materials,vol.28,p.p.3937-3943(2016)
【非特許文献3】APPLIED PHYSICS LETTERS,vol.106,p.221104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い光照射耐性を有する、言い換えれば、高い光電変換効率を維持して長期間連続発電可能なペロブスカイト太陽電池およびそのペロブスカイト太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ペロブスカイト太陽電池の経時変化が起こる原因を詳細に検討したところ、ペロブスカイト層と、ホール輸送層および裏面電極の金属層との間で相互拡散が起こることによることを突き止めた。そして、下記に示す構成により、上記光照射耐性に係る課題を解決した。
(構成1)
透明性支持体、透明導電層、ホール輸送層、ペロブスカイト層、電子輸送層、ホールブロッキング層、および裏面電極を含むペロブスカイト太陽電池であって、
前記透明伝導層はインジウムスズ酸化物(ITO)、前記ホール輸送層はニッケル酸化物、前記裏面電極はITOからなる、ペロブスカイト太陽電池。
(構成2)
透明性支持体、透明導電層、ホール輸送層、ペロブスカイト層、電子輸送層、ホールブロッキング層、および裏面電極を含むペロブスカイト太陽電池であって、
前記透明伝導層はITO、前記ホール輸送層はニッケル酸化物、前記裏面電極はITOと金属の積層膜からなり、
前記裏面電極のITOは前記ホールブロッキング層に接している、ペロブスカイト太陽電池。
(構成3)
前記裏面電極のITOの膜厚が200nm以上350nm以下である、構成2記載のペロブスカイト太陽電池。
(構成4)
前記ニッケル酸化物は有機物を含まない、構成1から3の何れか1記載のペロブスカイト太陽電池。
(構成5)
前記ペロブスカイト層は塩素を含有するペロブスカイトからなる、構成1から4の何れか1記載のペロブスカイト太陽電池。
(構成6)
前記電子輸送層は[6,6]-フェニル-C61-ブチル酸メチルエステル(PCBM)膜、前記ホールブロッキング層はアルミニウム亜鉛酸化膜からなる、構成1から5の何れか1記載のペロブスカイト太陽電池。
(構成7)
透明性支持体上に透明導電層を形成する工程と、ホール輸送層を形成する工程と、ペロブスカイト層を形成する工程と、電子輸送層を形成する工程と、ホールブロッキング層を形成する工程と、裏面電極を形成する工程とを順次行ってペロブスカイト太陽電池を製造するペロブスカイト太陽電池の製造方法において、
前記透明伝導層はITO膜、前記ホール輸送層はニッケル酸化物膜、前記裏面電極はITO膜からなり、
前記ホール輸送層の形成工程はスパッタリング法による、ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
(構成8)
前記裏面電極は、ITO膜と金属膜からなり、
前記裏面電極の形成工程は、ITO膜を形成する工程と金属膜を形成する工程を順次行う工程からなる、構成7記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
(構成9)
前記裏面電極のITO膜の膜厚は200nm以上350nm以下である、構成7または8記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽電池は、1000時間後の光照射後であっても初期の光電変換効率(PCE)を維持する高い光照射耐性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のペロブスカイト太陽電池の構成を示す模式図である。
【図2】本発明のペロブスカイト太陽電池の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の太陽電池の発電特性の経時変化を示す特性図である。
【図4】本発明の太陽電池の発電特性の経時変化を対数軸で示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
本発明の(実施の形態1の)ペロブスカイト太陽電池101は、図1に示すように、少なくとも透明基板1、透明電極層2、ホール輸送層3、ペロブスカイト層4、電子輸送層5、ホールブロッキング層6、および裏面電極7を含む。そして、透明基板1側から光21が照射される構成になっている。

【0012】
本発明のペロブスカイト太陽電池は、透明電極層2と裏面電極7または少なくとも裏面電極7のホールブロッキング層6に接する面側がインジウムスズ酸化膜(ITO)で構成され、またホール輸送層がニッケル酸化膜(NiO、xは2以上4以下)で構成されることを特徴とする。

【0013】
透明電極層2と裏面電極7は、照射された光に感応して光電子を発生するペロブスカイト層4とは直接接せず、透明電極層2との間にはホール輸送層3、裏面電極7との間には電子輸送層5とホールブロッキング層6を挟んでいる。しかしながら、透明電極層2と裏面電極7、特に裏面電極7とペロブスカイト層4との間で相互拡散が起こり、それが照射耐性の劣化、経時変化の原因になっていることが詳細な検討の結果わかった。すなわち、これらの電極を構成する金属成分の一部がペロブスカイト層4に拡散し、一方で、ペロブスカイト層4を構成する沃素(I)の一部がこれらの金属層に拡散することが照射耐性の劣化、経時変化の原因の1つであることが分かった。

【0014】
また、ホール輸送層3がPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホナート))やPTAA(ポリ(ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン))のような有機物の場合は、光照射によりこれらの物質が変質しやすいことと、ペロブスカイトを形成する成分が拡散しやすいことから、照射耐性の劣化、経時変化の原因の1つであることが分かった。

【0015】
そこで、様々な無機材料を詳細に評価検討したところ、ホール輸送層3にNiO膜を用いることで、光照射耐性が向上することを見出した。さらに、ホール輸送層3にNiO膜を用いるとともに、透明電極層2と裏面電極7または少なくとも裏面電極7のホールブロッキング層6に接する面側をITOとすることで、相乗効果により大幅に光照射耐性が向上することを見出した。そして、この光照射耐性の向上は、ホール輸送層3にNiO膜を用いたことによる向上分と、透明電極層2と裏面電極7または少なくとも裏面電極7のホールブロッキング層6に接する面側をITOとしたことによる向上分の単純和を超える向上であることが詳細な検討の結果分かった。
また、ホール輸送層3に用いるNiO膜は、スパッタリング法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法で形成されたものが照射耐性向上の観点から特に好ましいことを見出した。

【0016】
次に、本発明のペロブスカイト太陽電池を構成する各材料層について説明する。

【0017】
透明基板1は、太陽光を透過させ、所定値以上の剛性を持つものであれば特に限定されない。石英ガラス、フリントガラスやソーダ石灰フロートガラスなどの各種のガラスを好んで用いることができるが、アクリルやポリカーボネートなどの透明なプラスチックなども用いることができる。ガラスは、太陽光に対して透明度が高く(透過率が高く)、十分な剛性をもち、また耐光性、耐候性に優れるという特徴をもつ。プラスチックは、容易に自在な形状に加工が可能であり、また柔軟性を付与させることができるため、曲面状の太陽電池を作製したり、太陽電池を柔軟に曲げて使用したりする上で好ましい。

【0018】
透明電極2の材料は、前述のように、インジウムスズ酸化物(ITO)である。この膜は、耐光性を向上させる観点からスパッタリング法で成膜することが好ましい。具体的には、ターゲットをITO、スパッタリングガスをアルゴン(Ar)ガスやクリプトン(Kr)ガスなどの貴ガスとしたRFスパッタリングが好ましい。基板温度は室温でよいが、室温に限るものではない。また、ITO成膜後150℃以上の熱処理を加えると、太陽光透過率の向上と電気抵抗の低抵抗化が図れるので好ましい。一方で、300℃を超える熱処理は、逆に電気抵抗が上がるため好ましくない。
ITOは透明度が高く、透明性導電膜としては比較的電気抵抗率が低いという特徴がある。さらに、インジウム(In)やスズ(Sn)が酸化されて固定化されるため、これらの金属は拡散しにくく、耐光性向上に必要な相互拡散防止機能を有する。
透明電極2のITOの膜厚は、150nm以下が好ましい。ITOの膜抵抗は低いほど良く、15Ω/sq以下であることが好ましい。

【0019】
透明電極2の抵抗を下げるために、ITO膜と透明性基板1との間に金属リード線を加えてもよい。金属リード線の材質としては、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等を挙げることができる。金属リード線は、透明性基板1上にスパッタ法または蒸着法等で形成し、その上にITO膜を形成することが好ましい。ただし、金属リード線を設けることにより、入射光量の低下を招くので、金属リード線の太さは、0.01mm以上3mm以下であることが好ましい。

【0020】
ホール輸送層3は、前記のように、NiO膜からなる。この膜はスパッタリング法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法で形成するのが好ましい。
ホール輸送層3をNiO膜で構成することによって、ピンホールやクラックが少ない大きい面積の層を形成することができ、また、光照射耐性が高くなる。
ホール輸送層3の厚みは、30nm以上250nm以下であることが好ましく、電気抵抗と層の厚さ均一性を考慮すると、50nm以上150nm以下がより好ましい。

【0021】
ホール輸送層3の導電性を向上させるため、NiO膜にNi以外の金属イオンをドーピングすることも好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等のイオンが挙げられる。具体的な金属イオンは、Li、Na、K、Mg2+、Cu2+、Fe2+、Mn2+、およびZn2+から選ばれる少なくとも一種であり、さらにより好ましくはLiおよびMg2+から選ばれる少なくとも一種である。LiとMg2+を同時に使用してもよい。ドーピング濃度は、0.5mol%以上50mol%以下が好ましく、2mol%以上30mol%以下がより好ましい。これらの金属イオンは、例えばスパッタリングを行うときのターゲット材料に含有させておくことにより、ホール輸送層3に導入することが可能である。

【0022】
ペロブスカイト層4を構成する材料は特に限定されず、CHNHPbI、CH(NHPbI、CsPbI、CHNHSnI、CHNHSnPb(1-x)、CH(NHSnI等が挙げられ、好ましくはCHNHPbI、CH(NHPbIを挙げることができる。
さらに、これらの材料の沃素(I)の一部を塩素(Cl)によって置き換えた材料、例えば、CHNHPbI3—xClにすると光電変換効率と光照射耐性が向上し、放置経時変化が少なくなるのでより好ましい。ここで、沃素の一部を塩素に置換する反応としては、相互拡散法(Chlorine-mediated Interdiffusion method)を挙げることができる。

【0023】
ペロブスカイト層4は、スピンコートなどの塗布法により形成することができる。例えば、溶剤に溶かしたペロブスカイト前駆体を準備し、それをスピンコート後、熱処理を加えることによりペロブスカイト層4を形成することができる。
ペロブスカイト層4形成の具体例としてCHNHPbIを挙げると、ヨウ化メチルアンモニウムCHNHI(「MAI」と略する)とヨウ化鉛PbIを溶剤に溶かしたペロブスカイト前駆体溶液を準備し、それをスピンコートする。溶剤としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)を用いることができる。スピンコートの際に、ストライエーションの低減と膜厚均一性を目的に、揮発調製として少量のトルエンなども滴下すると好ましい。熱処理の温度は50℃以上120℃以下が好ましい。

【0024】
電子輸送層5を構成する材料は特に限定されず、例えば、n型導電性高分子、n型低分子有機半導体、グラフェン材料、n型金属酸化物が挙げられる。好ましくは、[6,6]-フェニル-C61-ブチル酸メチルエステル(PCBM)が使用される。PCBMは、塗布法により形成することが可能であり、スループットと製造コストの観点から好ましく用いることができる。

【0025】
ホールブロッキング層6は、金属イオンがドープされた酸化膜、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、および酸化スズから選ばれる少なくとも一種である。またドープされる金属イオンは、例えば、W6+、Nb5+、Sb5+、Ta5+、Al3+、Y3+、Ga3+から選ばれる少なくとも一種である。ドーピング濃度は0.5mol%以上50mol%以下、好ましくは0.5mol%以上20mol%以下である。例えば、1.6mol%のアルミニウムがドープされた亜鉛酸化膜(AZO)をホールブロッキング層6として好んで用いることができる。
ホールブロッキング層6の厚みは30nm以上150nm以下であることが好ましく、電気抵抗と層の厚さの均一性を考慮すると、40nm以上100nm以下がより好ましい。

【0026】
裏面電極7の材料は、前述のように、インジウムスズ酸化物(ITO)である。この膜はスパッタリング法で成膜することが好ましい。具体的には、ターゲットをITO、スパッタリングガスをアルゴン(Ar)ガスやクリプトン(Kr)ガスなどの貴ガスとしたRFスパッタリングが好ましい。基板温度は室温でよいが、室温に限るものではない。また、ITO成膜後熱処理を加えることが有効であるが、ペロブスカイト層4などにダメージを与えないように、熱処理を加える場合は、140℃以下、好ましくは120℃以下の熱処理とする。
ITOは、インジウム(In)やスズ(Sn)が酸化されて固定化されているため、これらの金属は拡散しにくく、耐光性向上に必要な相互拡散防止機能を有する。
裏面電極7のITOの膜厚は0.3μm以上0.5μm以下が好ましい。ITOの膜抵抗は低いほど良く、20Ω/sq以下であることが好ましい。
以上のように、透明電極2を形成した以降の熱処理は、最大で140℃、好ましくは120℃以下であり、比較的低い温度で太陽電池101を形成することができる。

【0027】
(実施の形態2)
実施の形態2は、図2に示すように、太陽電池102の裏面電極が導電性バリア膜8と金属膜9からなる場合で、その他の透明基板1、透明導電層2、ホール輸送層3、ペロブスカイト層5およびホールブロッキング層6は実施の形態1と同じである。

【0028】
導電性バリア膜8はITOからなる。この膜はスパッタリング法で成膜することが好ましい。具体的には、ターゲットをITO、スパッタリングガスをアルゴン(Ar)ガスやクリプトン(Kr)ガスなどの貴ガスとしたRFスパッタリングが好ましい。基板温度は室温でよいが、室温に限るものではない。また、ITO成膜後熱処理を加えることが有効であるが、ペロブスカイト層4などにダメージを与えないように、熱処理を加える場合は、140℃以下、好ましくは120℃以下の熱処理とする。

【0029】
ITOは、インジウム(In)やスズ(Sn)が酸化されて固定化されているため、これらの金属は拡散しにくく、耐光性向上に必要な相互拡散防止機能を有する。
また、導電性バリア膜8は、金属膜9からの反射光強度を増す反射増進膜の機能も併せもつ。すなわち、ホールブロッキング層6、導電性バリア膜8および金属9からなる面の反射率を、ホールブロッキング層6と金属9との界面の反射率より高くする機能を導電性バリア膜8は併せもつ。
この反射防止機能は光干渉によって生み出される。このため、導電性バリア膜の膜厚は200nm以上350nm以下とするのが好ましい。併せて、この膜厚範囲にすると、金属膜9とペロブスカイト層4とのその金属や沃素の相互拡散も防止され、光照射耐性も向上する。

【0030】
金属膜9は、裏面電極としての導電機能と、照射された光21を裏面側から逃すのではなく反射させて、ペロブスカイト層4の光電変換効率を向上させる光電変換効率向上効果を併せもつ。
導電性バリア膜8を構成するITOは、導電性をもつもののその導電率は1×10-4Ω・cm~2×10-4Ω・cmであり、導電率としては高くない。そこで、裏面電極としての導電性は主に金属膜9で確保する。なお、導電性バリア膜8のITOは、ペロブスカイト層4で発生した電子を金属膜9に輸送するには十分な導電性を有する。
金属膜9の材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、チタン(Ti)などの電極として用いられる金属を用いることができる。銅のように導電性は高いが拡散性を有する金属も導電性バリア膜8が拡散防止バリアとなるため用いることができる。また、AlCu、CuNiFe、NiCrなどの合金やWN、TiNなどの金属化合物も金属膜9として用いることができる。
金属膜9の膜厚は、十分な導電性と光の反射を確保するために100nm以上であることが好ましい。一方、必要以上に膜厚が厚いと金属膜成膜時のスループットが低下するため、200nm以下であることが好ましい。
金属膜9は蒸着法、スパッタリング法などで成膜することができる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
1.太陽電池の作製
1-1.透明電極層を備えた透明基板の準備
市販されている透明電極状にパターン化されたITO膜からなる透明電極層2を第1主表面上に備える透明基板1を準備した。そのITO膜の膜厚は150nmであり、膜抵抗は約15Ω/sqである。
【実施例】
【0033】
1-2.ホール輸送層の作製
ITO膜の上にホール輸送層3としてNiO膜をスパッタリング法により70nmの膜厚で成膜した。この成膜にはRFマグネトロンスパッタリング装置(SVC-700 RFINA、サンユー電子(株)製)を用いた。ターゲットは99.9%純度のNiO((株)高純度化学研究所製)である。スパッタリングガスをアルゴン(Ar)ガスとし、スパッタリングチャンバーの真空度を<2×10-3Paにした後、アルゴンガスを20sccmの流量でチャンバー内に導入し、室温下50Wのパワーでスパッタリングを行った。このときのアルゴンのガス圧は3.5Paである。なお、このスパッタリングの直前にITO膜2が被着された透明基板1を20分間UVオゾン洗浄した。
【実施例】
【0034】
1-3.ペロブスカイト層の作製
次に、NiO膜の上にハロゲン化鉛ペロブスカイト(CHNHPbI3-xCl)からなるペロブスカイト層3を280nmの膜厚で塗布法により形成した。
具体的には、ヨウ化鉛PbI(関東化学(株))を無水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた溶液(PbI溶液)をスピンコート法でNiO膜の上に塗布した。ヨウ化メチルアンモニウムCHNHI(MAI)と塩化メチルアンモニウムCHNHCl「MACl」と略する)(ともにバッテリーグレード、和光化学(株))をエチルアルコールに溶解させた溶液(MAI-MACl溶液)をペロブスカイトの前駆体として用い、それをスピンコート法でPbI膜の上に塗布した。ここで、PbI溶液の濃度を400mg/mL、MAIとMAClのモル比を19:1、MAI-MACl溶液の濃度を50mg/mLとした。まず、PbI溶液を3000rpm90秒の条件でスピンコートし、引き続きMAI-MACl溶液を4000rpm90秒の条件でスピンコートした。そして、スピンコート後ホットプレートを用いて100℃30分の熱処理により相互拡散を行った。
【実施例】
【0035】
1-4.電子輸送層の作製
以下の手順で、PCBMからなる電子輸送層5を作製した。
99%純度のPC61BM(SIGMA-ALDRICH社)を2重量%の比率で無水クロルベンゼンに溶かした溶液をペロブスカイト層4上に700rpm60秒の条件でスピンコートし、100℃10分で乾燥させて膜厚60nmの電子輸送層5とした。
【実施例】
【0036】
1-5.ホールブロッキング層の作製
アルミニウムがドープされた酸化亜鉛ナノ粒子(AZOナノ粒子)が懸濁されたインキであるNanograde N-21X(ナノグレード社)を3000rpm30秒の条件でスピンコートして膜厚80nmのAZO膜からなるホールブロッキング層6を作製した。ここで、同インキを塗布後には、100℃10分の熱処理を行った。
【実施例】
【0037】
1-6.裏面電極の作製
以下の手順で、300nmの膜厚のITOからなる裏面電極7を作製した。
このITO膜の成膜にはRFマグネトロンスパッタリング装置(SVC-700 RFINA、サンユー電子(株)製)を用いた。ターゲットは99.9%純度のITO((株)高純度化学研究所製)である。スパッタリングガスをアルゴンガスとし、スパッタリングチャンバーの真空度を<2×10-3Paにした後、アルゴンガスを20sccmの流量でチャンバー内に導入し、室温下50Wのパワーでスパッタリングを行った。このときのアルゴンのガス圧は0.15Paである。
【実施例】
【0038】
2.光照射耐性評価試験
得られた太陽電池にカバーガラスを設置してUVレジン(UV RESIN XNR5516Z、ナガセケムテックス(株))を用いて封止した後、光照射耐性評価を30℃の温度下で行った。
光照射耐性評価では、上記封止した太陽電池に対し100mW/cmの強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電出力の経時変化を測定した。
【実施例】
【0039】
その結果を図3および図4に示す。図3も図4も同じ実験データを基にしたものであるが、図3は時間軸をリニア軸とし、図4はそれを対数軸として表したものである。その結果、光照射を1000時間行った後の光電出力(Power)は、初期値の10.9mW/cmとほぼ変わらない10.7mW/cmであった。ここで、Jmaxは最大電力のときの電流値、M.P.Pointは最大電力のときの電圧値である。なお、図3および図4において、450時間のところで光照射特性曲線に異常点が現れているが、これは装置のメンテナンスによる異常値である。
図4の対数軸を用いた光照射耐性評価から補外で連続10万時間の時点での光電出力を予想すると、その値は初期値の83%となっている。10万時間は、日照時間換算にすると40年から50年に相当するので十分な光照射耐性が、本発明のペロブスカイト太陽電池に備わっていることが確認された。
【実施例】
【0040】
(比較例1)
比較例1では、裏面電極7をITOから膜厚150nmの銀(Ag)に変更した以外は実施例1と同様にして作製した太陽電池を用いて光照射耐性評価を行った。光照射耐性評価の手法も実施例1と同じである。裏面電極7のAgはスパッタリングで作製した。スパッタリングガスはアルゴンであり、その圧力は0.15Paとした。その結果、光照射を670時間行った後の光電出力は初期値の約87%に低下した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の太陽電池は、高い光電変換効率を維持して長期間連続発電可能な高い光照射耐性を有するので、実用化に向けて大変に有望である。
【符号の説明】
【0042】
1 透明基板 (透明性支持体)
2 透明導電層 (ITO膜)
3 ホール輸送層 (NiO膜)
4 ペロブスカイト層
5 電子輸送層 (PCBM膜)
6 ホールブロッキング層 (AZO膜)
7 裏面電極 (ITO膜)
8 導電性バリア膜 (ITO膜)
9 金属膜
21 光
101、102 太陽電池
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3