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明細書 :赤外光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6829517号 (P6829517)
登録日 令和3年1月26日(2021.1.26)
発行日 令和3年2月10日(2021.2.10)
発明の名称または考案の名称 赤外光素子
国際特許分類 H01S   1/02        (2006.01)
H01L  31/108       (2006.01)
H01L  31/10        (2006.01)
FI H01S 1/02
H01L 31/10 C
H01L 31/10 H
請求項の数または発明の数 8
全頁数 9
出願番号 特願2018-529884 (P2018-529884)
出願日 平成29年7月24日(2017.7.24)
国際出願番号 PCT/JP2017/026743
国際公開番号 WO2018/021259
国際公開日 平成30年2月1日(2018.2.1)
優先権出願番号 2016144974
優先日 平成28年7月23日(2016.7.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年3月6日(2019.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
発明者または考案者 【氏名】石谷 善博
個別代理人の代理人 【識別番号】100098729、【弁理士】、【氏名又は名称】重信 和男
【識別番号】100163212、【弁理士】、【氏名又は名称】溝渕 良一
【識別番号】100204467、【弁理士】、【氏名又は名称】石川 好文
【識別番号】100148161、【弁理士】、【氏名又は名称】秋庭 英樹
【識別番号】100156535、【弁理士】、【氏名又は名称】堅田 多恵子
【識別番号】100195833、【弁理士】、【氏名又は名称】林 道広
審査官 【審査官】百瀬 正之
参考文献・文献 特開2016-111219(JP,A)
特開2008-052224(JP,A)
特開2005-195707(JP,A)
特開2012-047595(JP,A)
特開2011-181708(JP,A)
特開2011-077396(JP,A)
特表2015-524166(JP,A)
国際公開第2006/030608(WO,A1)
特開平09-074239(JP,A)
特開2007-300022(JP,A)
特開2008-002960(JP,A)
特開2011-211191(JP,A)
特開2011-155024(JP,A)
特開平05-095131(JP,A)
特開2004-226531(JP,A)
特開2016-014785(JP,A)
米国特許出願公開第2011/0198515(US,A1)
調査した分野 H01S 1/00-1/06
H01S 3/00-3/30
G02F 1/35
H01L 31/08
H01P 1/00-1/08
H01P 1/20-1/219
H01P 7/00-7/10
H01Q 13/00-13/28
H03L 1/00-9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体又は絶縁体の単一層の基板に、ストライプ状、格子状又は円環状の導電体が形成され、その間隔が縦光学(LO)フォノンエネルギーに共鳴する赤外光の1/2波長以下であ前記基板は、2種以上のLOフォノンモードを有し、前記LOフォノンモードエネルギーが伝導帯若しくは価電子帯内、または伝導帯若しくは価電子帯間の遷移エネルギー領域に含まれ、電磁誘起透明化により光吸収スペクトルを制御し当該モードに共鳴する赤外光を発光する又は検出する赤外光素子。
【請求項2】
半導体又は絶縁体の単一層の基板に、ストライプ状、格子状又は円環状の導電体が形成され、その間隔がLOフォノン-プラズモンの結合(LOPC)モードエネルギーに共鳴する赤外光の1/2波長以下であ前記基板は、2種以上のLOPCモードを有し、前記LOPCモードエネルギーが伝導帯若しくは価電子帯内、または伝導帯若しくは価電子帯間の遷移エネルギー領域に含まれ、電磁誘起透明化により光吸収スペクトルを制御し当該モードに共鳴する赤外光を発光する又は検出する赤外光素子
【請求項3】
前記基板がn型又はp型の半導体である請求項1又は2に記載の赤外光素子。
【請求項4】
前記基板がp型半導体である場合、p型不純物以外にこれより深い準位を形成するアクセプタ性の準位を有する半導体であり、
前記基板がn型半導体である場合は、n型不純物以外にこれより深い準位を形成するドナー性の不純物を有する半導体であり、
禁制帯幅より小さいエネルギーをもつレーザを導入することによって、光吸収スペクトルを変調して動作する請求項に記載の赤外光素子。
【請求項5】
価電子帯-伝導帯のバンド間励起を行うレーザを導入して、光吸収スペクトルを変調できる請求項記載の赤外光素子。
【請求項6】
1ps以下の時間幅をもつパルス光を入力することにより量子もつれ現象を伴った単一赤外光子を輻射する請求項記載の赤外光素子。
【請求項7】
金属の代わりに導電率が高い半導体その他の材料を用いて、導電率が低い半導体との界面に生じる分極電荷により生じる電場を遮蔽できる構造をもつ請求項1又は2記載の赤外光素子
【請求項8】
半導体との接合がオーミック接続となる金属とショットキー接続となる金属が対となって形成されている請求項1又は2に記載の赤外光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光素子に関する。より具体的には、たんぱく質等有機分子の分光測定、無線LAN、医療等に利用される波長10μm以上の赤外線及びTHz振動数領域の電磁波を輻射する又は検出する赤外光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のTHz領域のレーザには、量子カスケードレーザ(QCL)、共鳴トンネルダイオード(RTD)によるレーザがある。QCLでは一般に発振周波数の減少に伴って動作温度の低温化が必要であり、例えば1.8THzでは最高温度163Kでの動作が報告されている(例えば下記非特許文献1参照)。
【0003】
また、温度増加対策については、量子準位に共鳴させた差周波発生により室温で発振がなされた報告がある(下記非特許文献2参照)。
【0004】
また、下記非特許文献3には、RTDにおいて、基本波による室温でのレーザ発振の周波数では1.46THzの報告がある。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】S.Kumar et al.,Nat.Phys.7,166(2011)
【非特許文献2】Q.Lu,Nat.Sci.Rep.6,23595(2016)
【非特許文献3】K.Morita et al.,Appl.Phys.Express 4,102102(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、下記非特許文献2に記載の技術では、その量子効率が低いといった課題がある。その出力は、2.06μmで0.6μW程度に過ぎない。
【0007】
また、上記非特許文献3の技術では、これ以上の周波数では高調波をとる必要があり、出力が急激に低下するといった課題がある。非線形光学結晶を用いたものでは、多くが1ps程度以下の超短パルスによる差周波生成によるものであり、超短パルスレーザ光を生成する光学系が必要なため、装置が大きくなる。連続光の発生は二つのダイオードレーザ(LD)と二重共振器構造を用いたものがあるが、その出力パワーは小さい。
【0008】
また、高電子移動度トランジスタ(HEMT)では、200GHz程度で出力が消滅しているのが現状であり、1THz以上の動作は確認されていない。
【0009】
一方、フォノンを利用した電磁波の輻射やレーザでは、外部電場の入力に伴うピエゾ効果を利用したフォノン生成によるものがあり、2種フォノンモードを用いて真空準位と合わせた3準位系によるレーザ発振が確認されている。この構造による発振周波数は170KHz程度であり(I.MahboobらPhys.Rev.Lett.,110,127202(2013))、THzにおよぶものではない。この動作原理で用いられているフォノンモードは音響フォノンであり、光との結合の強い光学フォノンではなく、このために高効率な発振を得ることは困難であると思われる。
【0010】
これらの状況から、数THz~20THz程度の領域における室温動作のコンパクトレーザ動作には新たな動作原理が求められている。
【0011】
検知器では、分子や結晶に固有の光吸収周波数を選択的に検出できる素子が、化学分析や物質識別のために必要である。これまでの遠赤外およびTHz波領域の光検出器は、焦電効果やショットキーダイオードなどによるものであり、その検出スペクトル範囲は大きかった。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、光との相互作用が強いLOフォノンを利用できる構造により室温で動作するコンパクトなTHz光源を得ること、さらにフォノン系で光学利得が発生する構造を有する素子によりレーザ光を得ることを目的とする。また、THz検知器では、測定対象となる分子や結晶固有の光吸収波長に合わせた狭帯域の光検出をできる動作原理と素子構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の第一の観点に係る赤外光素子は、半導体又は絶縁体の単一層の基板に、ストライプ状、格子状又は円環状の導電体が形成され、その間隔が縦光学(LO)フォノンエネルギーに共鳴する赤外光の1/2波長以下であ前記基板は、2種以上のLOフォノンモードを有し、前記LOフォノンモードエネルギーが伝導帯若しくは価電子帯内、または伝導帯若しくは価電子帯間の遷移エネルギー領域に含まれ、電磁誘起透明化により光吸収スペクトルを制御し当該モードに共鳴する赤外光を発光する又は検出することができるものである。
【0014】
また、本発明の第二の一観点に係る赤外光素子は、半導体又は絶縁体の単一層の基板に、ストライプ状、格子状又は円環状の導電体が形成され、その間隔がLOフォノン-プラズモンの結合(LOPC)モードエネルギーに共鳴する赤外光の1/2波長以下であ前記基板は、2種以上のLOPCモードを有し、前記LOPCモードエネルギーが伝導帯若しくは価電子帯内、または伝導帯若しくは価電子帯間の遷移エネルギー領域に含まれ、電磁誘起透明化により光吸収スペクトルを制御し当該モードに共鳴する赤外光を発光する又は検出するものである。
【0016】
また、上記第一及び第二の観点における赤外光素子においては、限定されるわけではないが、基板がn型又はp型の半導体であることが好ましい。
【0017】
また、上記第一及び第二の観点における赤外光素子においては、限定されるわけではないが、基板がp型半導体である場合、p型不純物以外にこれより深い準位を形成するアクセプタ性の準位を有する半導体であり、基板がn型半導体である場合は、n型不純物以外にこれより深い準位を形成するドナー性の不純物を有する半導体であり、禁制帯幅より小さいエネルギーをもつレーザを導入することによって、光吸収スペクトルを変調して動作するものであることが好ましい。
【0018】
また、上記第一及び第二の観点における赤外光素子においては、限定されるわけではないが、価電子帯-伝導帯のバンド間励起を行うレーザを導入して、光吸収スペクトルを変調できるものであることが好ましい。
【0019】
また、上記第一及び第二の観点における赤外光素子において、限定されるわけではないが、1ps以下の時間幅をもつパルス光を入力することにより量子もつれ現象を伴った単一赤外光子を輻射するものであることが好ましい。
【0020】
また、上記第一及び第二の観点における赤外光素子において、限定されるわけではないが、金属の代わりに導電率が高い半導体その他の材料を用いて、導電率が低い半導体との界面に生じる分極電荷により生じる電場を遮蔽できる構造をもつものであることが好ましい。
【0021】
また、上記第一及び第二の観点における赤外光素子において、限定されるわけではないが、半導体との接合がオーミック接続となる金属とショットキー接続となる金属が対となって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によって、光との相互作用が強いLOフォノンを利用できる構造により室温で動作するコンパクトなTHz光源を得ること、さらにフォノン系で光学利得が発生する構造を有する素子によりレーザ光を得ることができる。また、THz検知器では、測定対象となる分子や結晶固有の光吸収波長に合わせた狭帯域の光検出をできる動作原理と素子構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】輻射を生成する金属/半導体複合構造の例を示す図である。ハッチング部分は金属、その他は半導体を示す。
【図2】LOフォノンとプラズモンの結合(LOPC)モードの高(+)低(-)エネルギー分枝を示す図である。
【図3】量子干渉効果におけるフォノン過程、電子遷移、光学遷移の関係を示す図である。
【図4】Znドープp型Ga0.5In0.5P量子干渉による光吸収スペクトルの制御例を示す図である。LOおよびLOのフォノンエネルギー位置で光吸収スペクトルがほぼ0になるドーピング条件が存在する。それぞれ、Zn密度は2.5×1019cm-3および3.5×1019cm-3である。
【図5】共振器を取り付けたレーザ素子の例を示す図である。
【図6】赤外・THzの検知素子の例を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る赤外光素子の構造を示す図である。
【0026】
本図で示すように、本実施形態に係る赤外光素子(以下「本素子」という。)は、半導体又は絶縁体の基板に、ストライプ状、格子状又は円環状の導電体が形成され、その間隔が縦光学(LO)フォノンエネルギーに共鳴する赤外光の1/2波長以下であって、当該モードに共鳴する赤外光を発光するまたは検出することができるものである。ここで赤外光の波長としては特に限定されるわけではないが、波長10μm以上であってTHzの周波数の波長を含むものであることが好ましく、より具体的には波長10μm以上1mm以下の波長であることが好ましく、より好ましくは500μm以下の波長である。このため、導電体の間隔としては5μm以下とすることで波長10μm程度の範囲を抑えることができる。具体的には導電体の間隔として余裕を持たせて4μm以上600μm以下程度の範囲とすることで本素子の効果を発揮することができる範囲となる。
【0027】
本素子では、この構造にレーザ光を導入するとラマン散乱によりLOフォノンが生成する。本素子では導電体と半導体との界面に分極電荷を生じさせ、この分極電荷振動によりLOフォノンに共鳴する輻射を発生させることができる。
【0028】
本素子において、導電体としては、電気を通すことができるものである限りにおいて限定されるわけではないが、例えば金、銅、チタン等の金属、電子密度1019cm-3以上の高密度n型半導体を例示することができるがこれに限定されない。なお、本素子が発光を行う発光素子である場合、導電体全体がアース等に接続され、導通している必要は必ずしも必要ではない。また導電体の厚さとしては特に限定されず、1μm以上あることが好ましい。
【0029】
また、本素子において、基板は、上記の通り半導体又は絶縁体である。半導体としては、特に限定されるわけではないが、例えばSi、GaN、GaAs、InP等の半導体が挙げられる。絶縁体ではサファイア、SiO等が挙げられるが、これらの絶縁体および半導体では結晶格子の振動を誘起するレーザ光の光子エネルギーがバンドギャップ程度であることが望ましい。また、本素子を熱で励起しようとする場合は、基板自体を200℃位の温度とすることで可能であって、例えばヒーター等の過熱手段によって過熱することが可能である。この材質の場合は、例えばAlGaN系結晶ではそれ以上の温度でも可能であるため好ましい。
【0030】
また上記の記載および後述の記載からも明らかなように、半導体は不純物がドーピングされていることが好ましい。p型の半導体とすると量子干渉効果を発揮しやすくなるとともに、n型とすることで波長をずらすことが可能となる。
【0031】
また、本素子を検出器として用いる場合は、二つの異なる材料を用い、これらの材料と半導体の接合が、一方はオーミック接合、他方がショットキー接合である必要がある。ただし半導体の禁制帯幅より大きな光子エネルギーをもつ励起光が必要である。検出器で電圧を加えている理由は、暗電流低減を目的としたバイアス電圧印加のためである。すなわち、検出器として用いる場合は二つの異なる材料を上記所望の間隔で配置し、それぞれに、これらの間に電圧を印加する電源装置を接続する構成となる。一方、光を励起する場合は必ずしも二つの異なる材料ではなくてもよくまた電源装置を接続しなくてもよい。
【0032】
LOフォノンではフォノン励起状態と真空状態の2準位系を構成する。通常、2準位系では原理的に反転分布ができない。ここで、二つ以上のフォノンモードと電子系の連続準位が存在する系を構築することにより、フォノンモードと連続準位の結合系を形成し、発光スペクトルピーク波長と吸収スペクトルピーク波長をずらすことが可能であり、この電磁誘起透明化を実現して光学利得が得られレーザ発振ができる構造となる。また、LOフォノンとプラズモンの結合(LOPC)モード(図2)の高低両エネルギー分枝を用いると、LOフォノンモードエネルギーから共鳴エネルギーをずらすことが可能である。またこの高低両LOPCモードと真空準位と合わせて3準位系を構成することも可能であり、電磁誘起透明化機構の発現の有無に関わらず、レーザ光を生成できるエネルギー系が構築される。電磁誘起透明化はp型またはn型不純物の添加密度すなわち価電子帯の正孔密度の制御により、光吸収スペクトルを制御することができる。更に、このLOPCモードの周波数変調や電磁誘起透明化による光吸収スペクトル変化は、外部信号である外部レーザの導入により制御できる。
【0033】
狭帯域の赤外光およびTHz波検知器では、図1で見られるストライプ状、格子状、同心円状の電極構造を形成し、さらにこの対となっている電極の片方を半導体に対してオーミック接続、もう片方をショットキー接続とし、電子のバンド間遷移を行う光の照射により伝導帯に電子、価電子帯に正孔を生じさせ、LOフォノンまたはLOPCモードに共鳴する赤外光またはTHz光の照射時に電流を大きくすることができ、光検知器として動作させることができる。
【0034】
金属薄膜等の導電体を格子状、ストライプ状、または円環状にすることによって、対向する半導体・金属界面に相反する符号をもつ分極電荷を発生し、電気双極子を形成する。金属または高伝導度をもつ物質により、生成された電気双極子の形成する電場を遮蔽し、電気双極子間の相互作用による電場の打ち消しあいを低減する。これにより、電気双極子が有意に存在することができ、電気双極子輻射がなされる。
【0035】
この半導体がp型であれば、正孔の価電子帯間遷移が存在する。この価電子帯間遷移のモデルは図3に記載されている。半導体のLOフォノンモードはこの価電子帯間遷移と結合するが、2種のLOフォノンモードが存在すれば、光学遷移はLOフォノンモードと価電子帯の結合により破壊的な干渉効果を生じる。この結果の例が図4に示されている。この結果、光吸収スペクトルを制御することが可能となる。輻射スペクトルと吸収スペクトルの重なりが小さくなれば、輻射は半導体に吸収されることなく外部へ放出される。
【0036】
また図5のように共振器構造を設けることにより、LOフォノン共鳴のレーザ発振が可能となる。具体的に本図の例では、本素子をDBR(Distributed Bragg Refrector)等の積層膜で挟み込む一方、励起レーザから本素子に光を入射し、THzのレーザ光を取り出す構造となっている。なおこの場合において、共振器から出た光の一部は帰還させて再励起のため励起レーザに再び入射され励起レーザからの光となる。また、本素子では例えば光吸収光変調用レーザも備えており、THzレーザに対し変調を行うこともできる。これにより面発光が可能である。
【0037】
またここで、アクセプタ性の深い準位を形成する不純物をドープした半導体材料を採用した場合、この準位への光励起により正孔密度を高くすることができる。これは、励起された電子が、価電子帯正孔との輻射性再結合確率が小さい状態にエネルギー緩和するために可能となる。この正孔励起のレーザ強度の制御により正孔密度を変えて、吸収スペクトルを変調できる。伝導帯価電子帯間の遷移による伝導電子は、LOPC状態を生成し、輻射・吸収ピークエネルギー位置を変調できる。深い準位に存在する電子と価電子帯正孔の再結合確率を上げることにより、当該正孔生成を行うレーザ光の入力/非入力の制御により、赤外/THz波の吸収スペクトルの高速変調、そしてレーザ出力の高速変調を行うことができる。
【0038】
超短パルスレーザでLOフォノンの生成を行う場合は、複数のLOフォノンモードが同時にコヒーレントに生成され、されに連続準位を媒介して、これらのモードはその結合状態を一定時間保つ。この時間内に放出される光子は複数LOモードの量子もつれ状態から放出されることになる。この光子を用いて、セキュリティー機能の高い無線光通信を行うことが可能になる。
【0039】
狭帯域の赤外光およびTHz波検知器では、光によりバンド間励起を起こし、伝導帯に電子、価電子帯に正孔を生成する。上記したようにオーミック接続とショットキー接続を行った金属電極間に入射されたLOフォノンに共鳴する電場は、生成された電子・正孔を大きな振幅で振動させる。整流性をもつ上記電極構造とすることにより、この電荷振動は一定方向へ電流を生成する。これにより検知器として動作する(図6)。本図で示すように、本素子は、半導体又は絶縁体の上にオーミック電極とショットキー電極の導電体を配置し、この間に電源装置により電場を形成しておくことで上記所望の効果を得ることができる。
【0040】
また本素子は、応用として、導電体表面にポラリトンを励起し導波路として用いることも可能である。この場合、誘電体又は絶縁体の厚さを0.1μmより大きくする一方2μmより厚いと減速してしまうためこれよりも薄くすることが好ましい。
【0041】
以上、本素子は、光との相互作用が強いLOフォノンを利用できる構造により室温で動作するコンパクトなTHz光源を得ること、さらにフォノン系で光学利得が発生する構造を有する素子によりレーザ光を得ることができる。また、THz検知器では、測定対象となる分子や結晶固有の光吸収波長に合わせた狭帯域の光検出をできる動作原理と素子構造を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、赤外光素子として産業上の利用可能性がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5