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明細書 :成長性遺伝形質を有するアカマダラハタの識別方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-000116 (P2018-000116A)
公開日 平成30年1月11日(2018.1.11)
発明の名称または考案の名称 成長性遺伝形質を有するアカマダラハタの識別方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2018.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAZ
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-132224 (P2016-132224)
出願日 平成28年7月4日(2016.7.4)
発明者または考案者 【氏名】坂本 崇
【氏名】尾崎 照遵
【氏名】カノンポーン・ケシュワン
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】501168814
【氏名又は名称】国立研究開発法人水産研究・教育機構
【識別番号】516200460
【氏名又は名称】デパートメント オブ フィッシャリーズ ミニストリー オブ アグリカルチャー アンド コーペレイティブズ
【氏名又は名称】Department of Fisheries Ministry of Agriculture and Cooperatives
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
【識別番号】100116090、【弁理士】、【氏名又は名称】栗原 和彦
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
Fターム 4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ57
4B063QR08
4B063QR32
4B063QS25
要約 【課題】アカマダラハタの高成長性マーカーを開発して、個体を殺すことなく高成長性の形質を持つ魚を判別することのできる方法の提供。
【解決手段】クエについて開発した遺伝マーカーを利用して、アカマダラハタの遺伝地図を作成し、養殖アカマダラハタの体重(BW)の大きい群と小さい群について上記遺伝マーカーについてQTL解析を行ったところ、成長性遺伝形質に影響を与える6つの主要な遺伝マーカーが見出された、これらのDNAマーカー座配列又はその部分配列であって、そのマイクロサテライト配列を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドから成る、成長性遺伝形質を有するアカマダラハタを識別するための遺伝マーカー。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記(1)~(6)のいずれかのDNAマーカー座配列又はその部分配列であって、そのマイクロサテライト配列を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドから成る、成長性遺伝形質を有するアカマダラハタを識別するための遺伝マーカー。
(1)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00010FRA(配列番号1)(その487~534位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(2)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00935FRA(配列番号2)(その131~162位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(3)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00846FRA(配列番号3)(その173~206位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(4)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00924FRA(配列番号4)(その321~344位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(5)連鎖群21上のDNAマーカー座CfuSTR210(配列番号5)(その106~127位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(6)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr01255FRA(配列番号6)(その113~136位がマイクロサテライト配列に相当する。)
【請求項2】
アカマダラハタ、その卵又はそれらの加工品から抽出したDNAについて、請求項1に記載の遺伝マーカーを検出することから成る、アカマダラハタの成長性遺伝形質を識別する方法。
【請求項3】
下記工程から成る成長性遺伝形質を有するアカマダラハタの識別方法。
1)アカマダラハタ、その卵又はそれらの加工品から抽出したDNAについて、請求項1に記載の遺伝マーカーであるポリヌクレオチドを増幅する工程、
2)別途継代飼育の結果、成長性遺伝形質を有すると認められる系統のアカマダラハタについて、上記1)と同じ工程を実施する工程、及び
3)1)と2)の工程の増幅結果を比較し、これらが一致する場合に、アカマダラハタが成長性遺伝形質を有すると識別する工程
【請求項4】
工程3)において、比較するポリヌクレオチドのサイズが一致する場合に、アカマダラハタが成長性遺伝形質を有すると識別する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
下記(1)~(6)のいずれかのDNAマーカー座配列中の連続する少なくとも18個の塩基から成るオリゴヌクレオチドであって、そのマイクロサテライト配列を挟む2つの塩基配列のうち、一方の塩基配列から成るポリヌクレオチド、及び他方の塩基配列から成るオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド、又はこれらに相補的な配列の2つのオリゴヌクレオチドから成るPCR用プライマー。
(1)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00010FRA(配列番号1)(その487~534位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(2)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00935FRA(配列番号2)(その131~162位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(3)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00846FRA(配列番号3)(その173~206位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(4)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00924FRA(配列番号4)(その321~344位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(5)連鎖群21上のDNAマーカー座CfuSTR210(配列番号5)(その106~127位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(6)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr01255FRA(配列番号6)(その113~136位がマイクロサテライト配列に相当する。)
【請求項6】
アカマダラハタが成長性遺伝形質を有するか否かを識別するための診断キットであって、請求項5に記載のPCR用プライマーを含むキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、高成長性の遺伝的形質(以下「成長性遺伝形質」という。)を有するアカマダラハタ(Tiger Grouper / Epinephelus fuscoguttatus)を識別する方法に関し、より詳細には、特定のDNAマーカー(以下「遺伝マーカー」又は「MSマーカー」ともいう。)を用いて成長性遺伝形質を有するアカマダラハタを識別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハタ科魚類は一般に市場価値が高く、ハタ科の魚であるアカマダラハタは、東南アジア諸国で盛んに養殖されている。アカマダラハタの養殖においては、市場に出荷できるサイズになるまで2年程度の長時間を要している。
発明者らは、既に、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)とクエ(Kelp Grouper / Epinephelus bruneus)のマイクロサテライトを用いて作成した連鎖地図とこれを用いた成長性遺伝形質のQTL解析の結果を発表している(非特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Genetics 155(3) 1331-1345 (2000)
【非特許文献2】Mar Biotechnol DOI 10.1007/s10126-015-9673-5 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
養殖アカマダラハタは成長に長時間を要し、出荷のためには数年の飼育期間を設けなければならない。そのため飼料等の飼育コストが大きく、感染症の罹患リスクも大きい。そのため、成長性遺伝形質を持つ個体を選別できれば、これらのコストやリスクを最小限にして、養殖現場の生産性を向上し、種苗生産現場における育種研究を効率化することができる。
本発明は、アカマダラハタの高成長性マーカーを開発して、高成長性の形質を持つ魚を判別することのできる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らがクエ(Kelp Grouper / Epinephelus bruneus)について開発した遺伝マーカー(非特許文献2)(100 個程度)を利用して、アカマダラハタのオス親、メス親及びその子孫(解析家系)について、各遺伝マーカー間の関連性(連鎖関係)を見出すことにより、アカマダラハタの遺伝地図を作成した(詳細は省略する)。
別途、養殖アカマダラハタの体重(BW)の大きい群と小さい群について上記遺伝マーカーについてQTL解析を行ったところ、成長性遺伝形質に影響を与える6つの主要な遺伝マーカーが発見され(後述の実施例1)、その有用性を他の家系で確認した(後述の実施例2)。このことは、これらの遺伝マーカーを用いてアカマダラハタの成長性遺伝形質を検出できることを示している。
【0006】
即ち、本発明は、下記(1)~(6)のいずれかのDNAマーカー座配列又はその部分配列であって、そのマイクロサテライト配列を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドから成る、成長性遺伝形質を有するアカマダラハタを識別するための遺伝マーカーである。
(1)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00010FRA(配列番号1)(その487~534位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(2)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00935FRA(配列番号2)(その131~162位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(3)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00846FRA(配列番号3)(その173~206位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(4)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00924FRA(配列番号4)(その321~344位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(5)連鎖群21上のDNAマーカー座CfuSTR210(配列番号5)(その106~127位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(6)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr01255FRA(配列番号6)(その113~136位がマイクロサテライト配列に相当する。)
また、本発明は、アカマダラハタ、その卵又はそれらの加工品から抽出したDNAについて、この遺伝マーカーを検出することから成る、アカマダラハタの成長性遺伝形質を識別する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】アカマダラハタの連鎖群(LG)12のMSマーカーの関連を示す地図である。Fはメス、Mはオスを示す。マーカー座Ebr00010FRAとEbr00935FRAは、それぞれ同一連鎖群上にある。
【図2】アカマダラハタの連鎖群(LG)12のMSマーカーの関連を示す地図である。Fはメス、Mはオスを示す。マーカー座Ebr00846FRA、Ebr00924FRA及びCfuSTR210はメスの同一連鎖群上にあり、マーカー座CfuSTR210及びEbr01255FRAはオスの同一連鎖群上にある。
【図3】表1及び2に示す3つのマーカー座の塩基配列を示す図である。太字はマイクロサテライト配列、下線は実施例で用いたプライマー配列を示す。マーカー座Ebr00010FRA、Ebr00935FRA及びEbr00846FRAのマイクロサテライト配列(繰返配列)は、それぞれ、(ATGT)12、(AC)16及び(AC)17である。
【図4】表1及び2に示す3つのマーカー座の塩基配列を示す図である。太字はマイクロサテライト配列、下線は実施例で用いたプライマー配列を示す。マーカー座Ebr00924FRA、CfuSTR210及びEbr01255FRAのマイクロサテライト配列(繰返配列)は、それぞれ、(AC)12、(AC)11及び(AC)12である。
【図5】解析家系AにおけるMSマーカー(Ebr00010FRA)の検出を示すゲル電気泳動像である。この図において、雌親魚はNo.1とNo.4で示されるバンドを持ち、雄親魚はNo.2とNo.3で示されるバンドを持ち、解析家系Aの高成長形質を示した子孫1と2は、雌親由来のNo.4のバンドを持ち、解析家系Aの低成長形質を示した子孫3と4は、雌親由来のNo.1のバンドを持っている。

【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
成長性遺伝形質を有するアカマダラハタを識別するために用いる本発明の遺伝マーカーを下表に示す。
【表1】
JP2018000116A_000002t.gif
このマーカーは発明者らがクエ(Kelp Grouper / Epinephelus bruneus)について開発した遺伝マーカー(非特許文献2)に含まれる遺伝マーカーであり、これらを用いてアカマダラハタの成長性遺伝形質についてQTL解析を行ったところ、この表1に示す遺伝マーカーが成長性遺伝形質に影響を与えることを見出した(後述の実施例参照)。
一般的にMS領域を増幅するプライマーの配列は、近縁種でも比較的に保存性が高く、MSマーカーは、そのMSマーカーを開発した種以外の近縁種でも利用可能なことが多くの論文で示されている(例えば、Morris et al., 1996;Sakamoto et al., 1996;Ohara et al., 2003)。このことは、魚類だけでなく哺乳類等においても報告されている(例えば、Moore et al., 1991)。そのため、本発明のアカマダラハタの成長性遺伝形質の解析においても、その近縁種であるクエについて開発した遺伝マーカー(非特許文献2)を利用した。
【0009】
本発明のアカマダラハタが成長性遺伝形質を有するか否かを識別する方法は下記工程から成る。
工程1)
アカマダラハタ、その卵又はそれらの加工品からDNAを抽出し、そのDNAについて、下記いずれかのマーカー座配列又はそのマイクロサテライト配列を含む部分配列から成るポリヌクレオチドを増幅する。
(1)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00010FRA(配列番号1)(その487~534位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(2)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00935FRA(配列番号2)(その131~162位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(3)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00846FRA(配列番号3)(その173~206位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(4)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00924FRA(配列番号4)(その321~344位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(5)連鎖群21上のDNAマーカー座CfuSTR210(配列番号5)(その106~127位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(6)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr01255FRA(配列番号6)(その113~136位がマイクロサテライト配列に相当する。)
【0010】
この増幅(PCR反応)に用いるプライマーとしては、上記マイクロサテライト配列のポリヌクレオチドを増幅できるものであればよく、このポリヌクレオチドと、好ましくはストリンジェントな条件で、特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであれば限定されない。ここで特異的にハイブリダイズするとは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントな条件下において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。ストリンジェントな条件は、例えば、60℃、6×SSCの条件である。
【0011】
このようなプライマーとして、下記いずれかのマーカー座配列中の連続する少なくとも18個の塩基から成るオリゴヌクレオチドであって、そのマイクロサテライト配列を挟む2つの塩基配列のうち、一方の塩基配列から成るポリヌクレオチド、及び他方の塩基配列から成るオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド、又はこれらに相補的な配列の2つのオリゴヌクレオチドを用いることができる。
(1)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00010FRA(配列番号1)(その487~534位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(2)連鎖群12上のDNAマーカー座Ebr00935FRA(配列番号2)(その131~162位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(3)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00846FRA(配列番号3)(その173~206位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(4)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr00924FRA(配列番号4)(その321~344位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(5)連鎖群21上のDNAマーカー座CfuSTR210(配列番号5)(その106~127位がマイクロサテライト配列に相当する。)
(6)連鎖群21上のDNAマーカー座Ebr01255FRA(配列番号6)(その113~136位がマイクロサテライト配列に相当する。)
これらプライマーは好ましくは18~25個、より好ましくは20~25個の塩基から成るオリゴヌクレオチドである。
また、増幅産物の解析方法として質量分析法やキャピラリ電気泳動法などを用いてもよい。
【0012】
工程2)
別途、成長性遺伝形質と認められる系統のアカマダラハタを、継代飼育する。この継代飼育は通常2世代程度行う。このアカマダラハタに対して、上記工程1)と同様にマイクロサテライト配列を増幅する。
【0013】
工程3)
1)と2)の工程の増幅結果を比較し、これらが一致する場合に、アカマダラハタが成長性遺伝形質を有すると識別する。一致しない場合は、アカマダラハタが成長性遺伝形質ではないと識別する。この工程において、比較するポリヌクレオチドのサイズが一致する場合に、アカマダラハタが成長性遺伝形質を有すると識別してもよい。
【0014】
本発明のDNAマーカーを用いてアカマダラハタが成長性遺伝形質を有するか否かを識別するための診断キットは、上記PCR用プライマーから成り、更に、熱耐性DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼなど)や検出のため増幅産物に対合させるプローブを含んでもよい。更に、このキットは、その他の消耗試薬として、例えば、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dATP, dCTP, dGTP, dTTP)、バッファー等を含んでもよい。
【実施例】
【0015】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
飼育例
解析家系として交配家系を作出した。その作出には、タイ水産局クラビ研究所で飼育されているアカマダラハタを用いた。各解析家系は、アカマダラハタを雄1個体と雌1個体で人為交配し、F1世代3家系を作出した(解析家系A、解析家系B、解析家系C)。
【0016】
実施例1
上記人為交配により作出した各解析家系について、得られた稚魚を5ヶ月間飼育した後、形態異常個体や浮き袋不良個体を取り除き、平均150mm程度で同サイズの正常魚の各個体に個体識別用のピットタグを体内に挿入し、評価飼育試験に用いた。最終的に、解析家系Aは500個体、解析家系Bは270個体、解析家系Cは262個体を高成長形質評価試験に用いた。各解析家系はそれぞれ別の生簀で12ヶ月間飼育した。飼育試験後に体重を測定し、高成長形質を評価した。
【0017】
<マーカー型の判定>
表現型の判定を行った戻し交配家系の各個体の尾鰭を1cm角の大きさで採取し、lysis buffer [125mM NaCl, 10mM Tris-HCl(pH7.5), 10mMEDTA(Ph8.0)]、Proteinase K(20mg/ml)(Takara)5μl、10%SDS 50μlを含む消化溶液を500 μl加え、37℃で一晩インキュベートした。PCI(phenol : chloroform : isoamylalchorl = 25 : 24 : 1)を等量加えてよく混和し、遠心分離(12000rpm、25℃、10分)、上清を新しいチューブに移した。さらに、CIA(chloroform:isoamylalchorl=24:1)を等量加えて転倒混和した後、遠心分離(12000rpm、25℃、5分)、上清を新しいチューブに移した。そこへ3M酢酸ナトリウムを1/10量、続いて2-propanolを等量加え、転倒混和した。遠心分離(15000rpm、4℃、10分)を行い、DNAペレットが析出していることを確認した後、上清を捨てた。70%エタノールを1ml加えて転倒混和することでDNAペレットおよびチューブの壁面を洗い、その後遠心分離(15000rpm、4℃、5分)を行って上澄みを捨て、5分程度の風乾を行った。風乾の後、TE buffer [10mM Tris-HCl(pH 8.0), 1mM EDTA(pH 8.0)]を50μl加えてDNAの溶解を行った。
【0018】
第1段階の解析には、ハタ・クエ類MSマーカー(非特許文献2)を用い、表1に示すMSマーカーを含む合計456個のMSマーカー座を用いて解析した。本実施例で用いたプライマー(表1のMSマーカーに対応するもののみ)を表2に示す。プライマーの合成および蛍光標識は全てオペロンバイオテクノロジー株式会社に委託した。forward primerの5' 側を蛍光標識(TET)して用いた。この他のマーカーについても同様にしてプライマーを合成した(詳細は省略する)。
【表2】
JP2018000116A_000003t.gif

【0019】
PCR法は、10×PCR reaction buffer(Mg2+), 2.5Mm dNTP, 1%BSA, 5U Taq DNA polymerase(Takara: Ex-Tag)50ng のテンプレートDNAを含む11μlの溶液で、GeneAmpPCRSystem9700(Applied Biosystems)にて、初期変性95℃ 3分間行った後、変性95℃ 30秒、アニーリング62℃ 1分、伸長72℃ 1分を1サイクルとして30サイクル、最終伸長を72℃ 5分間行い、12℃に急冷することでPCRを行った。PCR反応後、得られたPCR産物に等量のloading dyeを加え、95℃ 5分間熱変性によって1本鎖にし、6%変性ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動を行った。電気泳動後、ガラス板をバイオイメージングスキャナー (FLA-9000; FUJIFILM)で読み取り、コンピューターで映像化し、マーカーによって増幅されたアリルの分離パターン(マーカー型)を判定した。この電気泳動による解析では、ABI3100(Applied Biosystems)によるDNA断片解析法を用いる場合もある。合計456個のMSマーカーを用いて解析した。
【0020】
<QTL解析>
解析家系Aについては、はじめに成長の良かった45個体と成長が悪かった45個体を第一段階の解析に用いた。次に、第1段階の解析で統計学的に有意な遺伝マーカー(高成長形質と関連性がある)について、全個体(500個体)を用いて第2段階の解析を行った。
解析家系Aを用いた第1段階の解析では、上述のMSマーカーを用い、成長の良かった45個体と成長が悪かった45個体の合計90個体とその両親のマーカー型の情報を収集して、表現型(高成長・低成長)とマーカー型の対応関係を調べた。表現型は各個体の体重を用いた。QTL解析には、MapQTL softwareを用いた。
【0021】
マーカーEbr00010FRAを用いた電気泳動の結果を図5に示す。子孫1と2は高成長の個体であり、子孫3と4は低成長の個体であった。高成長の子孫1と2は親のバンドNo.4を受け継いでいることが分かる。全個体(90)について同様の解析を行った(結果は省略する)。結果を下表に示す。他のマーカーについても同様の解析を行った(結果は省略する)。
【表3】
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【0022】
第2段階では、解析個体数を全個体である500個体に増やし、第1段階の検定で有意であったMSマーカー(p<0.05)を用いてマーカー型の情報を収集し、第1段階と同様に表現型とマーカー型との対応関係を調べた。得られた結果を表4にまとめる。
第1段階の解析で、連鎖群12の5マーカー座および連鎖群21の4マーカー座は、Kruskal-wallis test:P<0.05であり、またMapQTL softwareのクロモソームワイドレベルであるLod score>2.2(連鎖の可能性が残るレベル)を超え、高成長形質と関連性があると考えられ、第2段階の解析で、連鎖群12のマーカー座Ebr00010FRAとEbr00935FRA、及び連鎖群21の[坂本1]マーカー座Ebr00846FRA、Ebr00924FRA、CfuSTR210及びEbr01255FRAは、Kruskal-wallis test:P<0.05であり、またMapQTL softwareのエクペリメンタルレベルであるLod score>1.9(連鎖と考えられるレベル)を大きく超える値となり、高成長形質と関連性があるといえる。
【0024】
【表4】
JP2018000116A_000005t.gif

【0025】
この結果、連鎖群12のマーカー座Ebr00010FRAとEbr00935FRA、及び連鎖群21のマーカー座Ebr00846FRA、Ebr00924FRA、CfuSTR210及びEbr01255FRAでは、連鎖ありとする基準値(MapQTL softwareのエクペリメンタルレベルLod score>1.9)を越えるLod Scoreであり、高成長形質と関連性があるといえる。
なお、クエ(Kelp Grouper / Epinephelus bruneus)において、その高成長形質と関連性があるとされた遺伝マーカー(非特許文献2:連鎖群13のEbr01242FRA、連鎖群17のEbr00702FRA、Ebr00314FRA、連鎖群18のElaSTR405Db、Ebr01212FRA)は、いずれもLod Scoreは低く(0.00~0.54)、アカマダラハタの高成長形質と関連性がある遺伝マーカーとはいえない。
【0026】
実施例2
解析家系Aで統計学的に有意となった遺伝マーカー(高成長形質と関連性がある)の有効性を検討するために第3段階の解析として、解析家系Bおよび解析家系Cの全個体(解析家系B:270個体、解析家系C:262個体)を用いて解析を行った。
【0027】
【表5】
JP2018000116A_000006t.gif
この解析で用いるQTL解析では、解析家系のサンプル数や解析マーカー数などにより、連鎖しているとする基準値が異なる。表5(第3段階:他家系)での基準値は、エクペリメンタルレベルでLod score>1.6が連鎖と考えられるレベルになる。
【0028】
実施例1において解析家系Aで高成長形質と関連性があるとされた6つのマーカー(連鎖群12のマーカー座Ebr00010FRAとEbr00935FRA、及び連鎖群12のマーカー座Ebr00846FRA、Ebr00924FRA、CfuSTR210及びEbr01255FRA)は、他の家系(解析家系Bおよび解析家系C)でも同様に統計学的に有意に高成長形質と関連性がある遺伝マーカーであることが明らかになった。このようにこれらの遺伝マーカーが、関連の無い複数の家系において統計学的に高成長形質と有意に関連性があることが示されたが、これをもってこれらの遺伝マーカーで識別される高成長形質はアカマダラハタにおいて遺伝形質であるといえる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4