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明細書 :表面修飾ナノファイバー、電解質膜、電解質膜の製造方法、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-031082 (P2018-031082A)
公開日 平成30年3月1日(2018.3.1)
発明の名称または考案の名称 表面修飾ナノファイバー、電解質膜、電解質膜の製造方法、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池
国際特許分類 D06M  13/292       (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01M   8/02        (2016.01)
H01B   1/06        (2006.01)
D06M  15/21        (2006.01)
D04H   1/728       (2012.01)
FI D06M 13/292
H01M 8/10
H01M 8/02 P
H01M 8/02 E
H01B 1/06 A
D06M 15/21
D04H 1/728
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 31
出願番号 特願2016-162455 (P2016-162455)
出願日 平成28年8月23日(2016.8.23)
発明者または考案者 【氏名】川上 浩良
【氏名】田中 学
【氏名】牧之内 貴仁
出願人 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
個別代理人の代理人 【識別番号】100150876、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 裕一郎
審査請求 未請求
テーマコード 4L033
4L047
5G301
5H026
5H126
Fターム 4L033AA06
4L033AB07
4L033AC15
4L033BA39
4L033BA99
4L033CA32
4L033CA70
4L047AA26
4L047AB08
4L047BA08
4L047CA06
4L047CB08
4L047CC12
4L047DA00
4L047EA22
5G301CD01
5G301CE01
5H026AA06
5H026BB01
5H026BB03
5H026CX02
5H026CX03
5H026EE18
5H026HH01
5H026HH03
5H026HH05
5H126AA02
5H126AA05
5H126BB06
5H126FF02
5H126FF03
5H126GG18
5H126HH01
5H126HH03
5H126JJ01
5H126JJ03
5H126JJ05
要約 【課題】複合電解質膜を構成する新たなナノファイバーを開発し、30μm以下に薄膜化した場合にも十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性とを有する電解質膜を提供すること。
【解決手段】ポリマーナノファイバーの表面に酸性物質および塩基性物質を修飾した表面修飾ナノファイバーであって、
該酸性物質はプロトン伝導性を有し、該塩基性物質は酸性物質の修飾量を増大することを特徴とする表面修飾ナノファイバーおよび該ナノファイバーを含む電解質膜 並びにポリマーナノファイバーからなる不織布を形成する工程、前記不織布を表面修飾処理する工程、前記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、表面修飾ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程、及び表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程を具備する複合膜の製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリマーナノファイバーの表面に分子修飾部位を有する表面修飾ナノファイバーであって、
該分子修飾部位はプロトン伝導性を有する
ことを特徴とする表面修飾ナノファイバー。
【請求項2】
前記分子修飾部位は、下記A)、B)、C)を有することを特徴とする請求項1に記載の表面修飾ナノファイバー。
A)ポリマーナノファイバーと相互作用可能な官能基を有する。
B)酸性物質および塩基性物質から構成される。
C)前記酸性物質および塩基性物質は、交互積層構造からなる。
【請求項3】
前記酸性物質は、プロトン伝導性を示す酸性官能基を複数有する低分子あるいは高分子群より選択される構造を有し、
前記塩基性物質は、塩基性官能基を複数有する低分子あるいは高分子群より選択される構造を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の表面修飾ナノファイバー。
【請求項4】
前記のプロトン伝導性を示す酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基又はカルボン酸基であり、
前記塩基性官能基は、三級窒素、四級窒素、四級リン又は四級硫黄を有する基である
ことを特徴とする請求項3に記載の表面修飾ナノファイバー。
【請求項5】
前記三級窒素を有する基は、アミン誘導体、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体であり、前記四級窒素を有する基は、アンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基であり、前記四級リンを有する基は、ホスホニウム基であり、前記四級硫黄を有する基はスルホニウム基である
ことを特徴とする請求項4に記載の表面修飾ナノファイバー。
【請求項6】
前記表面の分子修飾部位の存在割合が、表面修飾ナノファイバー全体中5~90質量%であり、
前記表面修飾ナノファイバーの繊維径が1000nm以下であること、
を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の表面修飾ナノファイバー。
【請求項7】
前記ポリマーナノファイバーは、下記PA)、PB)、PC)の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の表面修飾ナノファイバー。
PA)主鎖に、芳香族基あるいは/および脂肪族基を含む繰り返し単位を含む。
PB)前記主鎖骨格、あるいは側鎖官能基に、酸性物質あるいは塩基性物質と相互作用可能な塩基性あるいは酸性官能基を複数有する。
PC) 電界紡糸法により形成される繊維であり、その繊維径が300nm以下である。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜であって、
前記表面修飾ナノファイバーの存在割合が、電解質膜全体中10~90質量%であり、
厚さが30μm以下であること、
を特徴とする表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜。
【請求項9】
ポリマーナノファイバーからなる不織布を形成する工程、
前記不織布に表面修飾処理を施す工程、
前記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、表面修飾ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させてマトリクスポリマー充填不織布を得る工程、及び
得られたマトリクスポリマー充填不織布を後処理する工程
を具備する電解質膜の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体。
【請求項11】
請求項10に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾ナノファイバーおよびナノファイバー不織布にマトリクスポリマーが導入されてなる電解質膜に関し、さらに詳しくは、固体高分子形燃料電池等に有用な高分子電解質膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布に各種物質が導入されてなる複合膜は各種分野に応用されており、近年では固体高分子形燃料電池における電解質膜として注目されている。
固体高分子形燃料電池における電解質膜として高分子電解質膜が提案されており、その例としてはNafion(登録商標)に代表されるフッ素系電解質がある。しかし、これらのフッ素系電解質膜は、低加湿条件下でプロトン伝導性が低下するため発電性能が悪い、燃料ガス透過にともなう副反応により膜および触媒劣化を誘発する、膜強度に乏しく寸法変化をともなう長期安定性に劣る、またフッ素を使用するために高コストである、などの問題がある。
【0003】
一方、フッ素材料を使用しない炭化水素系の高分子電解質膜についても開発が検討されている。炭化水素系高分子電解質膜では、イオン伝導性を高めるためにスルホン酸基の数を増やすことが提案されているが、この提案では、膜が水膨潤のために変形しやすく、また、機械強度が弱くなり、長期安定性に優れた膜を得ることが困難であるという問題がある。
【0004】
そこで、種々開発が行われており、中でもスルホン化ポリイミドが、高い熱安定性と機械強度を持ち、製膜性に優れることから、高性能の電解質材料として提案されている(特許文献1~4)。しかし、これらの提案にかかるスルホン化ポリイミドは、高温低加湿下ではイオン伝導性が低くなるという問題があったため、幅広い温度範囲で高いイオン伝導性を示し、機械強度に優れた高分子電解質膜として、リン酸ドープ型スルホン化ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンド膜が提案されている(特許文献5)。
このような膜は、-20℃程度の低温から120℃程度の高温まで広い温度範囲で高いイオン伝導性を示し、膜中に水分が少ない低加湿条件下でもイオン伝導性に優れるという特徴がある。
しかし、近年、高分子電解質膜は、無加湿で高いイオン伝導性が求められ、膜抵抗を下げる目的から、膜厚が下げられる傾向にある。上記のブレンド膜は、主鎖に剛直な構造を持っていることから、高い機械強度を示すが、脆いために薄膜化すると取扱いが困難になるという問題がある。また、膜厚が薄くなることによってガスの透過性が高まり、過酸化水素が大量に発生するため、酸化安定性が悪く、長期的に安定な膜ではなかった。
【0005】
そこで、特許文献6において、幅広い温湿度範囲で高いイオン伝導性を示し、薄膜でも取り扱い性に優れ、長期安定性に優れた複合膜、及びその製造方法を提供する提案がなされている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-358978号公報
【特許文献2】特開2005-232236号公報
【特許文献3】特開2005-272666号公報
【特許文献4】特開2007-302741号公報
【特許文献5】特開2011-68872号公報
【特許文献6】特開2012-238590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献6の提案時よりも現在ではより一層の薄膜化、具体的には膜厚を20μm以下にしようという要求がある。このような膜厚とすると、十分なイオン電導性(プロトン伝導性)が発揮できない、ガス透過性を低く抑えることが困難である、等の問題が生じていた。
要するに、従来提案されている複合膜では、現在要求されているほどに膜厚を薄くした場合に十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性とを両立させることが困難であり、20μm以下に薄膜化した場合にも十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性とを有する複合膜の開発が要望されているのが現状である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、複合電解質膜を構成する新たなナノファイバー(表面修飾ナノファイバ)を提供し、20μm以下に薄膜化した場合にも十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性とを有する電解質膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、不織布を構成するナノファイバーを構成する物質およびナノファイバーの作製方法の工夫により、上記課題を解消し得るのではないかと考えた。種々の物質について検討した結果、高分子ナノファイバーにプロトン伝導性を有する酸性分子と塩基性分子を交互に積層させることで表面修飾ナノファイバーを作製し、複合ナノファイバー不織布の空隙をマトリクスポリマーで充填することにより、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1. ポリマーナノファイバーの表面に分子修飾部位を有する表面修飾ナノファイバーであって、
該分子修飾部位はプロトン伝導性を有する
ことを特徴とする表面修飾ナノファイバー。
2.前記分子修飾部位は、下記A)、B)、C)を有することを特徴とする1に記載の表面修飾ナノファイバー。
A)ポリマーナノファイバーと相互作用可能な官能基を有する。
B)酸性物質および塩基性物質から構成される。
C)前記酸性物質および塩基性物質は、交互積層構造からなる。
3.前記酸性物質は、プロトン伝導性を示す酸性官能基を複数有する低分子あるいは高分子群より選択される構造を有し、
前記塩基性物質は、塩基性官能基を複数有する低分子あるいは高分子群より選択される構造を有する
ことを特徴とする2に記載の表面修飾ナノファイバー。
4.前記のプロトン伝導性を示す酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基又はカルボン酸基であり、
前記塩基性官能基は、三級窒素、四級窒素、四級リン又は四級硫黄を有する基である
ことを特徴とする3に記載の表面修飾ナノファイバー。
5.前記三級窒素を有する基は、アミン誘導体、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体であり、前記四級窒素を有する基は、アンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基であり、前記四級リンを有する基は、ホスホニウム基であり、前記四級硫黄を有する基はスルホニウム基であることを特徴とする4に記載の表面修飾ナノファイバー。
5.前記ポリマーナノファイバーは、下記PA)、PB)、PC)の構造を有することを特徴とする1に記載の表面修飾ナノファイバー。
PA)主鎖に、芳香族基あるいは/および脂肪族基を含む繰り返し単位を含む。
PB)前記主鎖骨格、あるいは側鎖官能基に、酸性物質あるいは塩基性物質と相互作用可能な塩基性あるいは酸性官能基を複数有する。
PC) 電界紡糸法により形成される繊維であり、その繊維径が300nm以下である。
7.前記表面の分子修飾部位の存在割合が、表面修飾ナノファイバー全体中5~90質量%であり、
前記表面修飾ナノファイバーの繊維径が1000nm以下であること、
を特徴とする1~6のいずれかにに記載の表面修飾ナノファイバー。
8.1~7のいずれかに記載の表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜であって、
前記表面修飾ナノファイバーの存在割合が、電解質膜全体中10~90質量%であり、
厚さが30μm以下であること、
を特徴とする表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜。
9.ポリマーナノファイバーからなる不織布を形成する工程、
前記不織布に表面修飾処理を施す工程、
前記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、表面修飾ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させてマトリクスポリマー充填不織布を得る工程、及び
得られたマトリクスポリマー充填不織布を後処理する工程
を具備する電解質膜の製造方法。
10.8に記載の電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体。
11.10に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面修飾ナノファイバーは、従来複合膜に用いられてきたナノファイバー特性を上回るものであり、該ナノファイバーを含む電解質膜は、20μm以下に薄膜化した場合にも十分なイオン電導性(プロトン伝導性)、ガスバリア性、および膜強度を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の表面修飾ナノファイバーを摸式的に示す概要図である。
【図2】図2は、本発明の表面修飾ナノファイバーおよび該ナノファイバーを含む電解質膜の側面を摸式的に示す概要図である。
【図3】図3は、本発明の表面修飾ナノファイバーおよび該ナノファイバーを含む電解質膜の製造方法における各工程を摸式的に示す概要図である。
【図4】図4は、実施例1で得られた表面修飾ナノファイバー(PBIナノファイバー)不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
【図5】図5は、実施例2で得られた酸性物質を単層修飾したPBIナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
【図6】図6は、実施例3で得られた酸性物質と塩基性物質を交互に三層修飾したPBIナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
【図7】図7は、実施例4で得られた酸性物質と塩基性物質を交互に五層修飾したPBIナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
【符号の説明】
【0012】
1:不織布、6:マトリクスポリマー、100:電解質膜、101:表面修飾ナノファイバー、101A:ポリマーナノファイバー、101B:分子修飾部位
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔表面修飾ナノファイバー〕
まず、本発明の表面修飾ナノファイバーについて説明する。
本発明の表面修飾ナノファイバーは、ポリマーナノファイバーおよびその表面に導入された分子修飾部位からなる。詳細には、図1に示すように表面修飾ナノファイバー101は、ポリマーナノファイバー101Aと、その表面に導入された分子修飾部位101Bとからなる。図1において分子修飾部位101Bは2層であるかのように記載しているが、1層のみでも、3層以上積層してもよい。好ましくは1~5層である。ここで積層するとは、後述するように、例えばまず1層目の分子修飾部位をポリマーナノファイバーに酸性物質を導入することで酸性の分子修飾部位を形成した場合、この導入処理が終了した後、更に塩基性物質の導入を行うことで2層目に塩基性の分子修飾部位を形成することができる。このように酸性物質の導入の処理と塩基性物質の導入の処理とを所望の回数繰り返して行うことにより、所望の積層数(図1の101Bの数)でポリマーナノファイバーの表面に分子修飾部位が形成された本発明の表面修飾ナノファイバーとすることができる。
そして、後述するように、本発明の電解質膜は、前記表面修飾ナノファイバーを有することを特徴とし、好ましくは前記表面修飾ナノファイバーと接触した状態で存在するマトリクスポリマーを具備する。
以下、まず各構成部分の構成成分から説明する。

【0014】
<構成成分>
(ポリマーナノファイバー)
前記ポリマーナノファイバーは、後述する本発明の電解質膜を固体高分子形燃料電池用の高分子電解質膜として使用した場合に、酸性物質および塩基性物質からなる表面に導入される分子修飾部位を表面に保持することができる構成部分であり、プロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための基礎となる部分である。さらに、ポリマーナノファイバーの優れた熱的、機械的、化学的性質を活かして、電解質膜の力学強度の向上、ガスバリア性の向上、それらに伴う薄膜化の実現に寄与する重要な部分である。
前記ポリマーナノファイバーを構成する構成成分としては、主鎖に、芳香族基あるいは/および脂肪族基を含む繰り返し単位を含み、主鎖骨格、あるいは側鎖官能基に、酸性物質あるいは塩基性物質と相互作用可能な塩基性あるいは酸性官能基を有し、電界紡糸法によりナノファイバーを与える十分な分子量を有することが好ましい。
すなわち、本発明に用いられる前記ポリマーナノファイバーは下記PA)、PB)、PC)の構造を有するのが好ましい。
PA)主鎖に、芳香族基あるいは/および脂肪族基を含む繰り返し単位を含む。
PB)主鎖骨格あるいは側鎖官能基に、酸性物質あるいは塩基性物質と相互作用可能な塩基性あるいは酸性官能基を複数有する。
PC) 電界紡糸法により形成される繊維であり、その繊維径が好ましくは300nm以下、さらに好ましくは100~250nmである。このような繊維径となるにはポリナノファイバーの構成成分の分子量が重要であるが、分子量は、構成成分の構造により異なるので、それぞれの構造の説明において説明する。また、ポリマーナノファイバーのアスペクト比は100以上であるのが好ましい。なお、上記繊維径は電界紡糸法により形成される場合には上記の範囲内とするのが好ましいが、それ以外の紡糸法の場合には上記の繊維径でなくてもよく、1000nm以下とすることができる。
ここで「相互作用」とはイオン結合や水素結合の形成だけではなく、共有結合や電荷移動錯体の形成や疎水性相互作用、イオン交換も含まれる。
ポリマーナノファイバーの主鎖骨格における、酸性物質と相互作用可能な塩基性官能基としては、-NH基、>NH基、>N-基、=N-基等を挙げることができる。
ここで前記塩基性官能基を有するポリマーとしては以下に構造式を示すポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチオアゾール、ポリインドール、ポリキノリン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等を挙げることができる。
これらの中でもポリベンズイミダゾールは、酸性物質と相互作用可能な塩基性官能基を有し、熱的安定性、機械的特性、化学的安定性に優れ、電解質膜の機械的強度や耐熱性を向上させることができ、さらにはナノファイバー形成能も比較的良好であり、電解質膜の薄膜化に寄与できるため好適である。
また、主鎖骨格における塩基性物質と相互作用可能な酸性官能基としては、スルホニルイミド構造(-S(=O)-NH-S(=O)-)等を挙げることができる。
また、側鎖に塩基性あるいは酸性官能基を導入可能な主鎖骨格としては、下記に示すポリアリーレンエーテル(PAE)、下記に示すポリイミド(PI)、下記に示すポリスチレンおよびその共重合体(PSt)、ポリフェニレン(PP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(SPPS)、ポリビニル誘導体およびその共重合体(PV)等を用いることができる。
酸性物質と相互作用可能な塩基性官能基としては、アミン誘導体、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体など二級または三級窒素、あるいはアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基など四級窒素、あるいはホスホニウム基やスルホニウム基など四級リンや四級硫黄などが挙げられ、前記主鎖骨格の任意の位置に導入して用いることができる。
塩基性物質と相互作用可能な酸性官能基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基が挙げられ、前記主鎖骨格の任意の位置に導入して用いることができる。
また、フルオロアルキル主鎖およびフルオロアルキルスルホン酸基を有するNafion(登録商標)等の市販品を前記ポリマーナノファイバーといて用いることもできる。
使用に際しては、前記の構造を有するポリマー単独で構成されてなるナノファイバーまたは該ポリマー複数の混合物からなるナノファイバーとして用いることができる。
ポリマーナノファイバーの具体例としては、以下の化学式で表される化合物(ポリマー)等からなるナノファイバーを好ましく挙げることができる。

【0015】
【化1】
JP2018031082A_000003t.gif
で表されるポリマー。
(式中Xは、O、CO、SO、S、CH、C(CH、C(CF等が挙げられ、
Yは、少なくとも1つの芳香環あるいは脂肪族炭化水素を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
nは好ましくは2~5000、さらに好ましくは100~1000の整数を示す。)
上記PBIの具体例としては以下の化合物を挙げることができる。
【化2】
JP2018031082A_000004t.gif

【0016】
(nは上述のとおり)
前記PBIは、特開2012-238590号公報の0018~0021に記載の製造方法に準じて製造することができる。

【0017】
また、前記ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、5.0×10~1.0×10であることが好ましく、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比Mw/Mnは、1~5であることが好ましい。これらをこの範囲内とすることにより、より均一なナノファイバーを製造することが可能となる。

【0018】
前記複合ナノファイバーの繊維径は500nm以下であることが、複合膜の膜厚を薄くし、且つプロトン伝導性も向上させる観点で好ましく、50~300nmであるのがさらに好ましい。
このようなファイバーの製造方法については後述する。

【0019】
【化3】
JP2018031082A_000005t.gif

(式中、nは2~5000の数を示し、mは2~5000の数を示す))

【0020】
【化4】
JP2018031082A_000006t.gif

(式中、nは2~5000の数を示す)

【0021】
【化5】
JP2018031082A_000007t.gif
(式中、Rは炭素数1~18の直鎖状あるいは分岐状の炭化水素基、もしくは水酸基等を有する炭化水素基を示す。(式中、nは2~5000の数を示し、mは2~5000の数を示す))

【0022】
酸性官能基であるスルホン酸基を側鎖に導入したスルホン化ポリアリーレンエテール(SPAE)としては以下の重合体を挙げることができる。

【0023】
【化6】
JP2018031082A_000008t.gif

【0024】
(式中X、Yは、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-、-S-、-CH-、-C(CH—、—C(CF-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
Xおよび/あるいはYの芳香環中に少なくとも一つのスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基を有し、
nは好ましくは2~5000、より好ましくは100~500の整数を示す。
なお、酸官能基のカウンターカチオンは、プロトン、ナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、イミダゾリウム等、任意のカチオン種が挙げられる。)
また、酸官能基を局所的に導入可能な下記のようなブロック構造を有する重合体を用いることもできる。

【0025】
【化7】
JP2018031082A_000009t.gif

【0026】
(式中aで表される繰り返し単位は親水部であり、
X1は、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-、-S-、-CH-、-C(CH—、—C(CF-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
式中Y1も、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-、-S-、-CH-、-C(CH—、—C(CF-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
X1および/あるいはY1の芳香環中に少なくとも一つ、望ましくは多数、例えば2~4個ののスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基を有し、
aは好ましくは1~500、さらに好ましくは4~50の整数を示す。)
(式中bで表される繰り返し単位は疎水部であり、
X1は、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、アルキル基、フルオロアルキル基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-、-S-、-CH-、-C(CH—、—C(CF-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
式中Y1も、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、アルキル基、フルオロアルキル基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-、-S-、-CH-、-C(CH—、—C(CF-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
X1,Y1の芳香環中に酸官能基は含まず、bは好ましくは1~500、より好ましくは4~50の整数を示す。)
また、nは好ましくは1~1000、より好ましくは1~100、特に好ましくは8~100の整数を示す。)
さらに、スルホン酸基を局所的に導入可能な下記のようなグラフト構造を有する重合体を用いることもできる。

【0027】
【化8】
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【0028】
(X1、Y1、X2、Y2、X3、Y3は、それぞれ同一若しくは異なる基を示し、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-、-S-、-CH-、-C(CH—、—C(CF-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
X1、Y1、X2、Y2、X3、Y3の芳香環中に少なくとも一つ、望ましくは多数、例えば2~4個のスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基を有し、
a、b、cはそれぞれ1~500の整数を示す。
なお、a、bで表される繰り返し単位は前述のブロック構造を有しても構わない。)
さらに具体的には以下の重合体を用いることができる。

【0029】
【化9】
JP2018031082A_000011t.gif



【0030】
(x、yは、それぞれ1~1000の整数を示す)
上記SPAEは、たとえばスルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(SPAES)であれば以下のようにして得ることができる。
すなわち、窒素雰囲気下、N,N-ジメチルアセトアミド等の重合溶媒と共沸剤(トルエンなど)を用い、4,4‘-ビスフルオロフェニルスルホン‐3,3‘-ジスルホン酸ナトリウム、4,4‘-ビスフルオロフェニルスルホン、4,4’-ビフェノール及び炭酸カリウムを加え、100℃以上の温度で1~10時間攪拌し、その後さらに温度を上げて1~10時間攪拌して得ることができる。

【0031】
なお、重量平均分子量、重合度は、以下の方法でGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定、算出することができ、ポリスチレン換算値である。
<GPCによる分子量の測定方法>
微量のLiBr(10mM)を添加したジメチルホルムアミド(以下「DMF」という。)を用い、合成したポリマーの分子量をポリスチレン換算で測定する。サンプル溶液は1mg/mlの濃度でポリマーを臭化リチウム添加DMFに溶解させて作製する。

【0032】
一方、塩基性ポリマーとしては、上記に示すポリアリーレンエーテル(PAE)、上記に示すポリイミド(PI)、上記に示すポリスチレンおよびその共重合体(PSt)などに四級アンモニウム基やイミダゾリウム基などを導入した構造が挙げられる。具体例としては以下の化合物等を挙げることができる。これら合成方法は、特開2013-237942他に記載の通りである。

【0033】
【化10】
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(XはCl、Br、I、OH、HCOなどを示す。m、nはそれぞれ1~2000の整数を示す。)

【0034】
【化11】
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(XはCl、Br、I、OH、HCOなどを示す。m、nはそれぞれ1~10000の整数を示す。)
上述の例示した各ポリマーの分子量は、いずれも、PBIと同様であり、質量平均分子量(Mw)は、5.0×10~1.0×10であることが好ましく、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比Mw/Mnは、1~5であることが好ましい。

【0035】
<構成成分>
(分子修飾部位を構成する酸性物質)
前記ポリマーナノファイバーに導入される前記酸性物質は、前記ポリマーナノファイバーの構成成分が塩基性官能基を有するポリマー化合物である場合に好ましく導入される。
前記酸性物質は、本発明の表面修飾ナノファイバーを本発明の電解質膜として使用した場合にプロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための物質である。
前記酸性物質としては、ポリマーナノファイバーに含まれる塩基性官能基と相互作用することが可能であり、かつ酸性官能基としてプロトン伝導に寄与することができる物質が好ましく用いられる。酸性物質として好ましくは、酸置換基を2個以上有する酸性物質(プロトン伝導性を示す酸性官能基を複数有する低分子あるいは高分子群より選択される構造を有する物質)である。ここで酸置換基としては、リン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、硝酸基、ビニル性カルボン酸基、ルイス酸基等を挙げることができる。
前記酸性物質としては、ポリリン酸、フィチン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、スクアリン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸等が挙げられる。これらの中でもフィチン酸は、比較的分子量が大きいにも関わらず水溶液の粘度が比較的低く、また、一分子中に6つのホスホン酸基を有することでポリマーナノファイバー表面の塩基性官能基、塩基性物質と多点で酸塩基相互作用することで、水の存在下において溶出しにくいため、好適である。
前記酸性物質は、後述の塩基性物質により表面修飾を施したポリマーナノファイバーに対して導入処理して図1に示すような多層に分子修飾部位が形成された表面修飾ナノファイバーを得ることも可能である。酸性物質が水溶性を示す場合、表面修飾後に水洗浄を繰り返すことで、ポリマーナノファイバーと相互作用していない酸性物質は除去することができ、その後塩基性物質と相互作用させることで、酸性物質と塩基性物質が交互に多層積層した表面修飾構造を構築することができるので、水溶性の酸性物質を好ましく用いることができる。
なお、酸性物質としてポリマー(以下、このポリマーを酸性ポリマーという)を用いる場合は、ポリマーナノファイバーの空隙に到達可能な比較的低い粘度が求められる。例えば、酸性ポリマーの重量平均分子量を1万以下に抑える、あるいは10質量%以下の希薄溶液を調整して導入処理に用いることで、ナノファイバーへの修飾および洗浄により過剰な酸性ポリマーの除去が容易な酸性物質として酸性ポリマーを使用することができる。
その他ポリマーナノファイバー後処理における積層構造形成後の最終工程、すなわちさらなる塩基性物質による積層を行わない条件において用いることができる物質として、本発明の電解質膜において用いることができる酸性基を2つ以上有するプロトン伝達物質の他に、酸性基を1つしか有さない酸性物質を用いることもできる。たとえば、上述した酸性物質の他に、具体的には、リン酸、メタンホスホン酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルフィン酸、ギ酸、酢酸、硝酸、塩酸、アスコルビン酸、クロム酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸等を挙げることができる。
なお、前記酸性物質により形成される分子修飾部位は、前記酸性物質と前記塩基性官能基とが相互作用して形成される部位であり、具体的な分子修飾部位の形成態様は以下のような態様が挙げられる。例えば、塩基性官能基として三級窒素を有する官能基を有するポリマーファイバーを用い、ホスホン酸基やスルホン酸基などを有する化合物を酸性物質として組み合わせた場合は、「酸-塩基相互作用」、すなわち三級窒素がプロトン化して四級になり、酸性官能基がアニオン(ホスホネート、スルホネート)になり、塩を形成する作用により分子修飾部位を形成する。一方、塩基性官能基として四級窒素、四級硫黄、四級リンを有する官能基を有するポリマーファイバーを用い、ホスホン酸基やスルホン酸基などを有する化合物を酸性物質として組み合わせた場合は、「静電相互作用」、すなわち、四級カチオン(プラス電荷)と水中で乖離した酸アニオン(マイナス電荷)がひきつけあい、酸のプロトン(H)と四級カチオン(N等)とがイオン交換する相互作用等により分子修飾部位を形成する。

【0036】
<構成成分>
(分子修飾部位を構成する塩基性物質)
酸性官能基を有するポリマーナノファイバーの後処理により、ナノファイバー表面に塩基性物質を修飾することが可能である。
前記ポリマーナノファイバーに導入される前記塩基性物質は、前記ポリマーナノファイバーの構成成分が酸性性官能基を有するポリマー化合物である場合に好ましく導入される。
なお、前記酸性物質は、本発明の表面修飾ナノファイバーを本発明の電解質膜として使用した場合にプロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための物質であるので塩基性物質を導入して分子修飾部位を形成する場合でも前記酸性物質を用いて形成する分子修飾部位は有するのが好ましい。
前記塩基性物質は、本発明の複合膜を高分子電解質膜として使用した場合に、プロトンを伝導するための酸性物質を表面の分子修飾部位により多く保持する、プロトンアクセプターとして作用し酸性物質からのプロトンの解離を促進する、酸塩基相互作用により形成される塩構造により低湿度条件においても優れた水保持能を有する、などの電解質膜としての主たる機能を向上させるための物質である。
前記塩基性物質としては、ポリマーナノファイバーに含まれる酸性官能基と相互作用することが可能であり、かつ塩基性官能基として酸性官能基と相互作用することができる物質が好ましく用いられる。塩基性物質としては、塩基性官能基を2個以上有する塩基性物質(塩基性官能基を複数有する低分子あるいは高分子群より選択される構造を有する物質)である。ここで塩基性官能基としては、イミダゾール基、オキサゾール基、アミノ基、ピロール基、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等を挙げることができる。
前記塩基性物質としては、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリピロール、ポリジアリルジメチルアンモニウム、四級アンモニウム基置換ポリスチレン、四級アンモニウム基置換ポリアリーレンエーテル、四級アンモニウム基置換ポリフェニレン、四級アンモニウム基置換ポリアクリレート、四級ホスホニウム基置換ポリスチレン、四級ホスホニウム基置換ポリアクリレート、四級スルホニウム基置換ポリスチレン、四級スルホニウム基置換ポリアクリレート等が挙げられる。これらの中でもポリジアリルジメチルアンモニウムは比較的カチオン密度が大きく水溶性を示し、また一分子中に複数のアンモニウム基を有することでポリマーナノファイバー表面の酸性官能基、酸性物質と多点で酸塩基相互作用することで、水の存在下において溶出しにくいため、好適である。
さらに、塩基性物質としては、部分的に酸性官能基を導入した両性分子型の適用も可能である。前記両性分子型塩基性物質としては、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンなどの一部塩基性官能基にプロパンスルホン酸基を導入したポリマーなどが挙げられる。
前記塩基性物質は、前述の酸性物質により表面修飾を施したポリマーナノファイバーに対して導入処理して図1に示すような多層に分子修飾部位が形成された表面修飾ナノファイバーを得ることも可能である。塩基性物質が水溶性を示す場合、表面修飾後に水洗浄を繰り返すことで、ポリマーナノファイバーと相互作用していない塩基性物質は除去することができ、その後酸性物質と相互作用させることで、塩基性物質と酸性物質が交互に多層積層した表面修飾構造を構築することができるので、水溶性の塩基性物質を好ましく用いることができる。
なお、塩基性物質としてポリマー(以下、塩基性ポリマーという)を用いる場合は、ポリマーナノファイバーの空隙に到達可能な比較的低い粘度が求められる。例えば、塩基性ポリマーの重量平均分子量を1万以下に抑える、あるいは10質量%以下の希薄水溶液を調整することで、ナノファイバーへの修飾および水洗浄により過剰な塩基性ポリマーの除去を容易とすることで塩基性ポリマーを塩基性物質として用いることができる。
なお、前記塩基性物質により形成される分子修飾部位は、前記塩基性物質と前記酸性官能基とが相互作用して形成される部位であり、具体的な分子修飾部位の形成態様は以下のような態様が挙げられる。例えば、塩基性物質として三級窒素を有する官能基を有する物質を用い、ホスホン酸基やスルホン酸基などの酸性官能基を有するポリマーファイバーに組み合わせた場合は、「酸-塩基相互作用」、すなわち三級窒素がプロトン化して四級になり、酸性官能基がアニオン(ホスホネート、スルホネート)になり、塩を形成する作用により分子修飾部位を形成する。一方、塩基性物質として四級窒素、四級硫黄、四級リンを有する物質を用い、ホスホン酸基やスルホン酸基などの酸性官能基を有するポリマーファイバーに組み合わせた場合は、「静電相互作用」、すなわち、四級カチオン(プラス電荷)と水中で乖離した酸アニオン(マイナス電荷)がひきつけあい、酸のプロトン(H)と四級カチオン(N等)とがイオン交換する相互作用等により分子修飾部位を形成する。
(量比関係)
前記分子修飾部位の存在割合は、ポリマーナノファイバーと分子修飾部位の両者が上述のような構造をとることから前記分子修飾部位の存在量を十分多くすることでプロトン伝達性能が出るため、本発明の表面修飾ナノファイバー中5~90質量%であるのが好ましく、20~80質量%であるのがさらに好ましい。5質量%未満であるとプロトン伝導度向上が不十分となる場合があり、90質量%を超えると相互作用していない酸性あるいは塩基性物質の洗浄による除去が不十分な場合が生じて各種性能が低下する可能性があるので、前記範囲内とするのが特に好ましい。

【0037】
<構成成分>
(マトリクスポリマー)
前記マトリクスポリマーとしては、電解質膜を形成した場合に膜強度を向上させることができ、プロトン伝導性にも優れたポリマーを好ましく用いることができる他、プロトン電導性を有しない高分子化合物を用いることもできる。このようなプロトン電導性を有しない高分子化合物は、従来提案されている高分子化合物からなる不織布を用いた電解質膜では採用しえないマトリクスであるが、本発明の表面修飾ナノファイバーを用いた場合には、プロトン電導性が良好であるため、採用することが可能となる。このようなプロトン電導性を有しない高分子化合物を用いた場合、ガスバリア性がさらに向上し、強度の高い高分子化合物を選択することも可能となり、膜強度もさらに向上させることができ、膜厚もさらに薄くすることが可能となる。 上記のプトロン電導性にも優れたポリマーとしては、上述のスルホン化ポリアリーレンエーテル(SPAE)、下記に示すNafion(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー、下記に示すスルホン化ポリイミド(SPI)、下記に示すスルホン化ポリベンズイミダゾール(SPBI)、下記に示すスルホン化ポリフェニレン(SPP)、下記に示すスルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)、下記に示すポリフェニレンスルフィド(SPPS)、下記に示すスルホン化ポリスチレンおよびその共重合体(SPSt)、下記に示すポリビニルスルホン酸およびその共重合体(PVS)等を用いることができる。また、使用に際しては単独または混合物として用いることができる。

【0038】
代表的なパーフルオロスルホン酸ポリマーの一例として、Nafion(登録商標)の構造を以下示す。
【化12】
JP2018031082A_000014t.gif

市販品であり、式中のx,mについては商品の品番によって異なり、必要に応じて種々のNafionを用いることができる。

【0039】
上記スルホン化ポリイミド(SPI)としては、従来高分子電解質膜を構成するために提案されたスルホン化ポリイミドを含め、任意のスルホン化ポリイミドを用いることができる。本発明において好ましく用いられるスルホン化ポリイミドとしては、例えば、下記式(2)で示されるスルホン化ポリイミドが挙げられる。

【0040】
【化13】
JP2018031082A_000015t.gif

【0041】
前記式(2)中、Rは、少なくとも1つの芳香環を有する4価の基を表し、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族の4価の残基、ベンゼン環、ナフタレン環などの2個の芳香環が直接連結された化合物の4価の芳香族残基、2個のベンゼン環が-C(CF-、-SO-、-CO-などの基により連結された化合物の4価の残基などが好ましいものとして挙げられ、より好ましくは2個の芳香環を有する化合物の4価の残基である。

【0042】
また、式(2)中、Rは、スルホン酸基を有し、且つ、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表し、例えば、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、>CR(Rは、炭素原子とともにフルオレン環構造を形成)などの基により連結され、ベンゼン環にあるいはベンゼン環の置換基にスルホン酸基を有するスルホン化芳香族化合物の2価の残基などが好ましいものとして挙げられる。ベンゼン環の置換基としては、アルキル基、アルキルオキシ基、フェニル基などが好ましく挙げられる。

【0043】
更に、式(2)中、Rは、少なくとも1つの芳香環を有する、スルホン酸基を有しない2価の基を表し、例えば、ベンゼン環あるいは含窒素複素環などの複素環を構造中に有する非スルホン化化合物の2価の残基などが好ましいものとして挙げられる。また、式(2)中、nは1以上、好ましくは50以上の整数、例えば50~2000であり、mは0または1以上、好ましくは30以上の整数、例えば30~1000である。より具体的には、R、R、Rとしては例えば次のような基が挙げられる。

【0044】
【化14】
JP2018031082A_000016t.gif

【0045】
【化15】
JP2018031082A_000017t.gif



【0046】
【化16】
JP2018031082A_000018t.gif



【0047】
本発明において用いられる、前記式(2)で表されるスルホン化ポリイミドは、例えば、下記反応式に示すような、芳香族カルボン酸二無水物とスルホン化芳香族ジアミンと任意成分である非スルホン化芳香族ジアミンのモノマーから合成することができる。

【0048】
【化17】
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【0049】
式中、R、R、R、n、mは、上記で定義したものである。
前記の芳香族カルボン酸二無水物としては、例えば、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビスフチル-1,1’,8,8’-テトラカルボン酸二無水物が好ましいものとして挙げられる。前記のスルホン化芳香族ジアミンとしては、主鎖がスルホン酸基により修飾された主鎖型モノマーと、側鎖にスルホン酸基が修飾した側鎖型のモノマーとが挙げられる。スルホン化芳香族ジアミンの好ましい例としては、例えば、2,2-ベンジジンジスルホン酸、4,4’-ジアミノフェニルエーテルジスルホン酸、3,3’-ビス(3-スルホプロポキシ)ベンジジン、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン-2,7-ジスルホン酸、2,2’-ビス(4-スルホフェニル)ベンジジンなどが挙げられる。前記の非スルホン化芳香族ジアミンの好ましい例としては、例えば、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(p-フェニレンオキシ)ジアミン、2,2-ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,5-ジアミノピリジンが挙げられる。非スルホン化芳香族ジアミンモノマーを用いることで、膜安定性や酸保持能を付与することができる。
スルホン化芳香族ジアミンモノマー及び非スルホン化芳香族ジアミンモノマーを組み合わせて用いることで、スルホン化共重合ポリイミドが得られるが、共重合体はランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
共重合の際のスルホン化ジアミンモノマー(n)と非スルホン化芳香族ジアミンモノマー(m)との比率n/mは、30/70~100/0であることが好ましい。n/mが30/70未満では複合膜のプロトン伝導性が低く、好適な複合膜を得ることが難しくなる。高いプロトン伝導性を得るためには、n/mが70/30~100/0であることが望ましい。
スルホン化ポリイミドの質量平均分子量(Mw)は、1.0×10~1.0×10であることが製膜性の観点から好ましく、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比Mw/Mnは、1~5であることが強度の点で好ましい。

【0050】
(SPI)
また、上記SPIとしては、以下に示すブロック構造を有するものを用いることもできる。

【0051】
【化18】
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【0052】
(式中、Aはスルホン酸基を有する炭素数6~30の芳香族基を表し、Bはスルホン酸基を有するポリイミド側鎖を有する炭素数6~30の芳香族基を表し、Cは置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族基を表し、mおよびnは1以上の整数であり、rは0または1以上の整数であり、Yは1以上の数である。また、m/(n+r)が90/10~10/90の範囲にあり、ブロック重合体である。)
上記基Aにおけるスルホン酸基は、芳香族基に直接置換されたものでもよいし、例えば-O(CH2)-基、-C6H4-(フェニル)基、-O-C6H4-基等を介して側鎖に導入されたものでもよい。芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環などが単独で用いられてもよいが、2個以上の環が直接結合あるいは-O-、-SO2-、-C(CF3)2-基などを介して結合されたものでもよい。
基Aの例としては、例えば、下記の基が好ましいものとして挙げられる。

【0053】
【化19】
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【0054】
一方、上述のように、基Bはスルホン酸基を有するポリイミド側鎖を有する炭素数6~30の芳香族基を表し、基Cは置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族基を表す。スルホン酸基を有するポリイミド側鎖は,炭素数6~30の芳香族基に直接または-O-、-CO-、-NH-基などを介して連結される。また、基Cの置換基としては、-OH、-COOH、-NH2のような基が挙げられる。前記直接結合部、あるいは-O-、-CO-、-NH-基などを含む炭素数6~30の芳香族基である基Bとしては、例えば、下記の基が好ましいものとして挙げられ、置換基を有してもよい炭素数6~30の芳香族基である基Cとしては、下記の基において、基-D-が、-H、-D-Hあるいは-D-OHとなっているような基が好ましいものとして挙げられる。

【0055】
【化20】
JP2018031082A_000022t.gif

【0056】
(式中、Dは、-O-、-CO-、-NH-、-CO-NH-、-CO(=O)-あるいは直接結合を表す。)

【0057】
また、上記SPIとしては、上記(1)式で表される重合体に下記(2)で表される基を導入してなるグラフト重合体を用いることもできる。この場合、上記(1)で表される重合体は、ランダム重合体及びブロック重合体のいずれをも採用可能であり、ランダム重合体の場合はグラフト重合体となり、ブロック重合体の場合はブロックグラフト重合体となる。

【0058】
【化21】
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【0059】
(式中、Rは、スルホン酸基を有する炭素数6~30の芳香族基を表し、xは1以上の整数を示す。)
上記式(2)の基Rとしては、上記式(1)の基Aと同様の基が好ましいものとして挙げられる。基Aと基Rとは同じであっても、異なるものであってもよい。具体的には以下の基が好ましい。

【0060】
【化22】
JP2018031082A_000024t.gif



【0061】
また、mおよびn+rは、好ましくは1~100の整数であり、m/(n+r)は好ましくは90/10から10/90の範囲内であり、Yは好ましくは1~150の数を示す。主鎖を構成するポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5万~50万が好ましい。また、側鎖を構成するポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~50万が好ましい。

【0062】
さらに、グラフト側鎖の重量平均分子量と、主鎖の重量平均分子量の比が、0.01<Mw(グラフト側鎖)/Mw(主鎖)<20であること、主鎖ポリマーに対する側鎖ポリマーのグラフト率が、1<グラフト率<100であること好ましい。

【0063】
ここでグラフト率とは、主鎖中の側鎖導入部位すべてに側鎖が導入された場合を100%として計算した割合であり、〔n/(n+r)〕×100である。例えば後述する実施例3、4において、合成例1または2で用いたDABAのカルボン酸基すべてに合成例3で作製された側鎖部分末端のアミノ基が反応しアミド結合を形成した場合100%である。具体的には以下の式で算出される。
IEC(イオン交換容量)=スルホン酸基当量×グラフト率/(主鎖単位分子量-(側鎖分子量×グラフト率)より
グラフト率(%)={(主鎖単位分子量×IEC)/[スルホン酸基当量-(側鎖分子量×IEC)]}×100

【0064】
上記スルホン化ポリベンズイミダゾール(SPBI)としては下記の構造を有する重合体等を挙げることができる。

【0065】
【化23】
JP2018031082A_000025t.gif



【0066】
(式中Xは、O、CO、SO、S、CH、C(CH、C(CF等が挙げられ、
Yは、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、スルホン酸基を少なくとも一つ置換された、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
nは好ましくは2~5000、さらに好ましくは100~500の整数を示す。)

【0067】
具体的には以下に示す重合体等を用いることができる。
【化24】
JP2018031082A_000026t.gif


上記SPBIは、たとえばジスルホン化ポリ(ベンズイミダゾール)であれば以下のようにして得ることができる。
すなわち、窒素雰囲気下、ポリリン酸を溶媒および縮合剤として用い、3,3‘-ジアミノベンジジン、4,8-ジスルホニル-2,6-ナフタレンジカルボン酸を加え、80℃以上の温度で1~2時間攪拌、その後さらに温度を上げて200℃で8~10時間攪拌し、水中に滴下後、沈殿物を10質量%の水酸化カリウム水溶液で洗浄、回収することで得ることができる。

【0068】
上記スルホン化ポリフェニレン(SPP)としては以下に示す重合体等を挙げることができる。

【0069】
【化25】
JP2018031082A_000027t.gif
(nは上述のとおりである)

【0070】
(式中R1、R2,R3,R4は、水素基、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、あるいは芳香環を有する1価あるいは複数の芳香環が連結した2価の基であり、スルホン酸基などが置換された、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-などで連結されているベンゼン環などを含む1価あるいは2価の基が挙げられ、nは1~5000の整数を示す。)

【0071】
具体的には以下に示す重合体を用いることができる。
【化26】
JP2018031082A_000028t.gif
(nは上述のとおりである)

【0072】
上記スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPOとしては以下の重合体などを挙げることができる。

【0073】
【化27】
JP2018031082A_000029t.gif

【0074】
(式中R1、R2,R3,R4は、水素基、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、あるいは芳香環を有する1価あるいは複数の芳香環が連結した2価の基であり、スルホン酸基などが置換された、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-などで連結されているベンゼン環などを含む1価あるいは2価の基が挙げられ、nは1~5000の整数を示す。)

【0075】
具体的には以下の重合体を用いることができる。
【化28】
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(nは上述のとおりである)

【0076】
(SPPS)
上記ポリフェニレンスルフィド(SPPSとしては以下に示す重合体等を挙げることができる。

【0077】
【化29】
JP2018031082A_000031t.gif

【0078】
(式中R1、R2,R3,R4は、水素基、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、あるいは芳香環を有する1価あるいは複数の芳香環が連結した2価の基であり、スルホン酸基などが置換された、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、-O-、-CO-、-SO-などで連結されているベンゼン環などを含む1価あるいは2価の基が挙げられ、
nは1~5000の整数を示す。)
具体的には以下の重合体を挙げることができる。

【0079】
【化30】
JP2018031082A_000032t.gif

(nは上述のとおりである)

【0080】
上記スルホン化ポリスチレンおよびその共重合体(SPSt)としては以下の重合体等を挙げることができる。

【0081】
【化31】
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【0082】
(Rはアルキル、アルキルエステル、ベンゼンなどの芳香環などであり、スチレン、スルホン化スチレン、あるいはスルホン化エステル置換スチレンと共重合できるビニルモノマー全般を含む、m、nはそれぞれ1~10000の整数を示す。)

【0083】
上記ポリビニルスルホン酸およびその共重合体(PVS)としては以下の重合体等を挙げることができる。

【0084】
【化32】
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【0085】
(Rはアルキル、アルキルエステル、ベンゼンなどの芳香環などであり、ビニルスルホン酸あるいはビニルスルホン酸エステルと共重合できるビニルモノマー全般を含む、m、nはそれぞれ1~10000の整数を示す。)

【0086】
<電解質膜>
(全体構成)
本発明の電解質膜は、上述の本発明の表面修飾ナノファイバーを含み、前記表面修飾ナノファイバーの存在割合が、後述する量比関係を満足し、厚さが30μm以下であり、より好ましくは2~30μmであり、最も好ましくは2~10μmである。厚さについてこの範囲を満足することで近年要求されている厚さを満足することができる。
本発明の電解質膜について図2を参照して説明すると、電解質膜100は、表面修飾ナノファイバーからなる不織布層(各ナノファイバーが絡合された不織布形態で存在している層)1を有し、不織布層1において表面修飾ナノファイバーの間隔を埋めるようにマトリクスポリマー(わかりにくくなるため特に図示せず)が充填されている。
さらに、本発明の電解質膜においては、ナノファイバー後処理、すなわち表面修飾工程において、酸性物質あるいは塩基性物質を表面に有するポリマーナノファイバーを複数の酸性官能基を有する酸性物質あるいは複数の塩基性官能基を有する塩基性物質で修飾することで、酸性物質あるいは塩基性物質はポリマーファイバー表面の塩基性あるいは酸性官能基と2箇所以上で相互作用する状態となるだけではなく、複数の表面修飾ナノファイバーと2箇所以上で結合して一種の橋懸け構造を形成する。
このような橋懸け構造を形成することにより、従来のものよりも膜厚を薄くしても強固な不織布構造を形成することができ、しかも表面修飾ナノファイバーにはプロトン伝達可能な酸性物質が結合した状態であるためプロトンの伝達性能の面でも有利である。
前記表面修飾ナノファイバーが形成している不織布層1において前記マトリクスポリマーを充填する前の不織布自体の空隙率が10~90%であるのが、プロトン伝導性と複合膜とした際の膜強度やガスバリア性の点で好ましい。特に上述した繊維径のポリマーナノファイバーをこの範囲の空隙率で不織布化したものを用いることが、本発明の所望の効果を発揮する点で好ましい。空隙率の測定については後述する。
ここで、前記空隙率とは、後述する製造方法において説明するように、まずポリマーナノファイバーにより不織布を製造し、その後表面修飾工程の後に得られた表面修飾ナノファイバー不織布にマトリクスポリマーを投入して不織布をマトリクスポリマーの溶液に浸漬させると共に所望の形状に成形するが、この溶液に浸漬する前の不織布の状態における各表面修飾ナノファイバー間に存在する空間の割合である。すなわち、空隙率は不織布に外接する仮想立体の体積に対する、前記空間の割合であり、(前記空間の合計体積/仮想立体の体積)×100で表される。

【0087】
(量比関係)
前記電解質膜全体に対する前記マトリクスポリマーの存在割合は、前記空隙率で存在する表面修飾ナノファイバー間に存在する空隙を埋めて複合膜の外形を形成する程度の量あれば十分であるが、好ましくは前記表面修飾ナノファイバーとの合計量を100とした場合、9~90質量%であり、10~90質量%であるのがさらに好ましく、20~90質量%であるのが最も好ましい。5質量%未満であるとナノファイバー空隙へのマトリクスポリマーの充填が不十分となりプロトン伝導性やガスバリア性の低下を引き起こし、90質量%を超えると表面修飾ナノファイバーの効果が十分に発揮されない。図1に示すように複数層分子修飾部位が導入される場合、各層の導入量は任意に設定できるが、たとえば3層以上の構造の場合、1層目が2~15質量%、2層目が1~10質量%、3層目以降が0.2~10質量%の導入量にて分子修飾部位の各層を形成することができる。
(他の成分)
本発明の電解質膜には、上述の各成分の他に本発明の趣旨を損なわない範囲で種々添加剤を添加することができる。例えば複合膜の機械特性を向上させるためにシリカ粒子などの無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子の粒子径は1nm~1μmであるのが膜の均一性を保つために好ましく、100nm以下であるのがより好ましく、20nm以下であるのが更に好ましい。

【0088】
<製造方法>
次に本発明の電解質膜の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、好ましくは上記の本発明の電解質膜を製造する方法であって、図3に示すように、
前記ポリマーナノファイバーからなる不織布を形成する工程(図3のA)、
前記不織布に表面修飾処理を施す工程(図3のB)、
前記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、表面修飾ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程(図3のC)、及び
表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程(図示せず)
を行うことにより実施できる。
更に説明する。

【0089】
(不織布を形成する工程、図3A)
不織布を形成する工程は、上記ポリマーナノファイバーの原料であるポリマーを溶媒に溶解してなる紡糸液を吐出機10を用いて捕集体30上に吐出する等して形成することができる。
吐出機を用いた微細ファイバーの不織布の製造については、例えば、特開2003-73964号公報、特開2004-238749号公報、特開2005-194675号公報に開示されている。以下、特開2005-194675号公報に開示の製造装置を用いた例示に準じて説明する。

【0090】
図3に示す吐出機10は、紡糸液を吐出するノズル11と紡糸液を貯蔵するタンク12とを有する。また、ノズル11に対向して位置する、アースされた捕集体30を有する。そのため、図示しない電圧印加装置によって印加し、ノズル11と捕集体30との間に電界を形成すると、ノズル11から吐出され、電界によって延伸されて形成した繊維は、捕集体30へ向かって飛翔し、捕集体30上に堆積して、ポリマーナノファイバーからなる不織布1を形成する。
前記溶媒としては例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられ、原料ポリマー濃度は、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。紡糸液の粘度は、100~10000mPa・sであることが好ましく、500~5000mPa・sであることがより好ましい。
前記の装置を用いると、紡糸液はノズル11から捕集体30に向けて押し出されるとともに、アースされた捕集体30と電圧印加装置によって印加されたノズル11との間の電界による延伸作用を受け、繊維化しながら捕集体30へ向かって飛翔する(いわゆる静電紡糸法である)。そして、この飛翔した繊維は直接、捕集体30上に集積し、不織布を形成する。なお、紡糸液は、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、ディスペンサ等によりタンク12からノズル11に供給される。この他、紡糸に際して用いられる装置の詳細については特開2012-238590号公報0047~0056の記載が適宜適用される。
ここで得られる不織布の厚みは30μm未満であるのが複合膜全体の厚さを低減する観点から好ましく、5μm以下であるのがさらに好ましい。

【0091】
(不織布に表面修飾処理を施す工程、図3B)
ついで本工程により、得られた不織布に表面修飾処理を施すことにより、不織布形態で本発明の表面修飾ナノファイバーを得る。本発明においては前記ポリマーナノファイバーの後処理として、表面修飾処理を施す工程を、マトリクスと接触させる工程の前に行うことが特徴である。これによりプロトン伝達を担う酸性物質および、その修飾量および効果を向上させる塩基性物質を前記ポリマーナノファイバーに化学的相互作用による吸着させつつ、相互作用せずに容易に溶出する余分な酸性物質および塩基性物質プロトン伝達物質は除去することができ、薄膜化とガスバリア性および高伝導度(とくにガスバリア性)との両立を達成することができる。
表面修飾処理は、図3のBに示すように、得られた不織布を任意の容器40に入れ、容器40に別の注入容器50から酸性物質あるいは塩基性物質含有溶液を注入し、不織布を一定時間浸漬、その後純水などの溶媒により洗浄することにより行うことができる。この際、ポリマーナノファイバーが塩基性官能基を有する場合には酸性物質含有溶液を用い、ポリマーナノファイバーが酸性官能基を有する場合には塩基性物質含有溶液を用いる。
酸性物質含有溶液の濃度は、その溶液粘度が高くなり過ぎない範囲、すなわち500mPa・s以下の範囲で、0.5~70質量%、好ましくは1~50質量%とするのが好ましい。浸漬条件は、温度15~80℃、0.25~3時間とするのが好ましい。塩基性物質含有溶液の濃度は、その溶液粘度が高くなり過ぎない範囲、すなわち500mPa・s以下の範囲で、0.5~70質量%、好ましくは1~50質量%とするのが好ましい。浸漬条件は、温度15~80℃、0.25~3時間とするのが好ましい。
そして、各浸漬終了後、余分な酸性物質あるいは塩基性物質を除去するために洗浄を行うのが好ましい。特に上述の本発明の電解質膜においては、上述のように酸性物質や塩基性物質がポリマーナノファイバーに結合するので、結合していない余分な酸性物質や塩基性物質は除去した方が膜強度やガスバリア性の観点、更には燃料電池用の高分子電解質膜として使用した場合には、触媒の被毒が生じないという観点から好ましく、また、除去しても結合している表面の分子修飾部位の存在により十分なプロトン伝達性を発揮するので問題がない。洗浄は水などの洗浄液を用いて15~80℃で0.25~24時間行うのが好ましい。
酸性物質および塩基性物質の表面修飾量(ポリマーナノファイバーへの吸着量)は、表面修飾処理前後の不織布の質量変化あるいはイオン交換容量を測定することで算出することができる。重量変化の測定には、余分な酸性物質あるいは塩基性物質を洗浄後、50~150℃の条件で、5~24時間真空乾燥を行うなどして十分に乾燥させるのが好ましい。
本工程において用いることができる酸性物質は、上述の酸官能基を2つ以上有する酸性物質の他に、酸官能基を一つしか有さない酸性物質を用いることもできる。たとえば、酸官能基を一つ有する硝酸などを使用した場合、酸性物質はポリマーナノファイバーを構成する酸性ポリマーあるいは分子修飾部位に存在する酸性物質の酸性官能基のカウンターイオンをプロトンフォームにイオン交換する、あるいはポリマーナノファイバーを構成する塩基性ポリマーあるいは分子修飾部位に存在する塩基性物質の塩基性官能基を中和するのに使用される。ポリマーナノファイバーと化学的相互作用していない酸官能基を一つしか有さない酸性物質の多くは洗浄操作により除去することが可能である。
そして、本工程は繰り返し行うことができる。たとえば、ポリマーナノファイバーが酸性官能基を有し、まず表面修飾処理を行って塩基性物質で表面修飾されて塩基性の分子修飾部位が形成されている場合、酸性物質含有溶液を用いて再度上述の表面修飾処理を行うことにより、上述の積層された分子修飾部位を導入することができる。一方、ポリマーナノファイバーが塩基性官能基を有し、まず表面修飾処理を行って酸性物質で表面修飾されて酸性の分子修飾部位が形成されている場合、塩基性物質含有溶液を用いて再度上述の表面修飾処理を行うことにより、上述の積層された分子修飾部位を導入することができる。
このように本工程を、酸性物質と塩基性物質を交互に変更して繰り返し行うことで、所望の積層数で分子修飾部位が形成されてなる本発明の表面修飾ナノファイバーからなる不織布を得ることができる。

【0092】
(不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、表面修飾ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程、図3C)
この工程では前工程で得られた表面修飾ナノファイバーからなる不織布を容器40’に入れ、容器40’に別の注入容器50’からマトリクスポリマーの溶液を投入し、この溶液に前記不織布を浸漬することにより行う。
前記マトリクスポリマー溶液に用いられる溶剤としては、用いるマトリクスポリマーにより任意であるが、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられ、その他溶媒と併用してもよい。また、前記溶液におけるマトリクスポリマーの濃度は、2~20質量%とするのが好ましい。
浸漬させた状態とした後、溶媒を蒸発させることにより本発明の電解質膜を得ることができる。溶媒の蒸発は、例えば、15~150℃における自然乾燥、真空乾燥または熱風式オーブンにより1~48時間処理することにより実施することができる。
また、ポリマーを安定化させるためにマトリクスポリマーをいったん塩とした後上記溶液として処理することもできるがこの場合には上記の蒸発処理終了後に得られた電解質膜を酸処理することが好ましい。

【0093】
(表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程)
得られた表面修飾ナノファイバーを含む電解質膜を後処理することで、残存する溶媒や低分子を除去する、酸官能基のカウンターイオンをプロトンに交換する、膜を緻密化させ安定性やガスバリア性を向上させるといった効果が期待できる。
後処理として主に溶液処理および加熱処理がある。溶液処理に用いられる物質としては、過酸化水素水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液、エタノール/塩酸混合溶液、エタノール/硝酸混合溶液等が挙げられる。溶液処理の終了後、50~150℃で1~48時間真空乾燥処理を行うなどして加熱処理を行うことができる。

【0094】
<使用態様及び利点>
本発明の電解質膜は、正極と負極との間に挟持させて用いられる、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜として使用することができる。すなわち、固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体、ひいては固体高分子形燃料電池に用いることができる。本発明の電解質膜は、上述のように薄膜であり、且つ負極で発生したプロトンを正極に安定的に伝導させることができる。
このような高分子電解質には低膜抵抗性(膜抵抗(Ω・cm)=膜厚(cm)/プロトン伝導度(s/cm):s=1/Ω)が要求されるが、本発明の電解質膜は、特に高温低湿度条件下(80℃、30%RH)において優れた膜抵抗性(例えば0.58Ω・cm)程度を示す。
また、ガスバリア性が高いこと、すなわち低ガス透過流量(O:80℃95%RH下で<1.3×10—9(cm/(cm sec kPa))であることも要求される。この他、膜安定性(化学的、機械的、熱的)が高いことも要求されるところ本発明の電解質膜はその膜厚を従来の膜よりも薄膜としてもこれらの性能を満足するものである。
本発明の電解質膜が、従来の複合膜に比して、より薄膜としても高い低膜抵抗性を有し、しかもガスバリア性も高い、バランスのとれた複合膜であることの理由は定かではないが、以下のような理由が考えられる。
ポリマーナノファイバー表面に酸性物質および塩基性物質を修飾することで、ポリマーのファイバー表面において酸性物質を多く含有することが可能となる。さらに、一部の酸官能基が塩基性ポリマーと相互作用し、プロトンの解離を促進するとともに、塩の形成により水保持能が向上する。特に従来プロトン解離が困難となりプロトン伝導性の低下する低湿度条件においてその効果は顕著になる。すなわち、表面の分子修飾部位は低湿度条件においても効率的なプロトン伝達経路を有するといえる。要するに、本発明においては、上記分子修飾部位として少なくとも1層は酸性物質により形成された分子修飾部位を有することが好ましい。
また、2つ以上の酸官能基を有する酸性物質あるいは塩基性物質をポリマーナノファイバーに修飾することで、それらの分子修飾部位はポリマーナノファイバー同士を連結するように存在する。そのため、マトリクスポリマーと一体化した際に、効率的なプロトン伝達可能な経路を有する表面修飾ナノファイバー同士の間が広がりにくくなり、連続的なプロトンの伝達経路を形成しやすくなる。表面修飾ナノファイバー同士の連結により、プロトンがナノファイバー表面の分子修飾部位を伝って移動できるため、膜厚方向にも、プロトン伝達性能が向上していると考えられる。更に、ポリマーナノファイバー自体は、内部で高分子鎖の配向などに由来する密な構造を形成しており、力学強度やガスバリア性に優れる。これらナノファイバーが電解質膜中に存在することによって、電解質膜の強度やガスバリア性が向上されると考えられる。
このように構成された本発明の電解質膜は、上述の各性能バランスに優れるという効果を奏するのみではなく、フリーな酸性物質や塩基性物質が存在せず、燃料電池セルにおける酸性物質あるいは塩基性物質による白金触媒への被毒がないため特性低下を大幅に抑制できる。なお、不織布をホットプレスなどにより加圧して、微細ファイバーの密度を高めることができ、より一層の薄膜化も可能である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0096】
《合成例1:ポリベンズイミダゾール(PBI)の合成》
窒素雰囲気下、重合溶媒にポリリン酸(PPA)を用い、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)2.27g(10.6mmol)、4,4’-オキシビス安息香酸(OBBA)2.73g(10.6mmol)を量り取り、3質量%溶液となるようにポリリン酸(PPA)を加えて、攪拌しながら徐々に温度を上げていき、140℃で12時間攪拌し、ポリベンズイミダゾールを合成した。得られたポリマー溶液をイオン交換水に注ぎ再沈した後、水酸化ナトリウム溶液で中和し、洗浄した。吸引ろ過によりポリベンズイミダゾールを回収し、24時間自然乾燥させた後、100℃で真空乾燥した。
【実施例】
【0097】
NMR装置、商品名「Burker AVANCEIII500」(ブルカー・バイオスピン社製)を用いて、ポリベンズイミダゾールのH-NMRスペクトルを測定した。H-NMRスペクトルから目的ポリマーであるPBIが得られたことが確認できた。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、日本分光社製HPLCポンプPU-2080PLUS)を用いて、ポリベンズイミダゾールの分子量を測定した。なお、GPC溶媒として微量の臭化リチウム(10mmol/L)を添加したDMFを用い、キャリアを用いて調整した1mg/mLのポリベンズイミダゾール溶液よりポリスチレン換算の分子量を測定した。その結果、Mwが1.6×10であり、Mw/Mnは2.1であった。
【実施例】
【0098】
《実施例1:PBIナノファイバー不織布の作製》
ポリマー重量が8質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置商品名「ES-2000S」(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、エレクトロスピニングを行った(図3に示すA工程)。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、PBIナノファイバー不織布をアルミ箔上に積層した。続いて、60℃で15時間真空乾燥させた。
ナノファイバー不織布の一部を用い、オスミウムコーティングした後、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL製JSM-6100)によって観察、得られたSEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径を算出した。図4に、実施例1のナノファイバーのSEM像を示す。SEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径は248±44nmであった。
空隙率は、ファイバー不織布を3cm角に切り出し、乾燥質量(W)と膜厚計により測定した膜厚から算出した見かけの体積(V)、PBIの比重(1.5g/cm)を用いて、下記の式より算出した。
空隙率(%)=(1-(W/(V×1.5))×100
算出された空隙率は、90%程度であった。
【実施例】
【0099】
《実施例2:PBIナノファイバー不織布に対する酸性物質(フィチン酸)の単層修飾》
実施例1で得られたPBIナノファイバー不織布に酸性物質修飾を行った。PBIナノファイバーをフィチン酸水溶液(50wt%)に室温で1時間浸漬させ、その後80℃の純水中で繰り返しのべ24時間洗浄し、ドープされなかったフィチン酸を除去した(図3に示すB工程)。フィチン酸修飾したナノファイバーは60℃で15時間真空乾燥させた。この処理により、塩基性ポリマーナノファイバーに酸塩基相互作用するフィチン酸のみを修飾することができた。表面修飾前後のナノファイバー重量変化から、表面修飾ナノファイバー全体に対する分子修飾部位の割合は7.4質量%であることがわかった。
図5に、実施例2のナノファイバーのSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバー形状を維持していることを確認し、そのファイバー径は276±49nmであった。空隙率は、89%程度であった。
【実施例】
【0100】
《実施例3:PBIナノファイバー不織布に対する酸性物質(フィチン酸)と塩基性物質(ポリジアリルジメチルアンモニウム)を交互に三層修飾》
実施例2で得られたフィチン酸を分子修飾部位として修飾してなるPBIナノファイバー(本発明の表面修飾ナノファイバー、以下フィチン酸修飾PBIナノファイバーという場合がある)不織布に、塩基性物質を用いて実施例2と同様の工程を行うと共にさらにその後に酸性物質を用いて実施例2と同様の工程を行い、さらに一層ずつ分子修飾部位を導入した。処理は、フィチン酸修飾PBIナノファイバーをポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(1wt%)に室温で1時間浸漬させ、その後80℃の純水中で繰り返しのべ24時間洗浄し、修飾されなかった塩基性物質を除去した。塩基性物質を修飾したナノファイバーは60℃で15時間真空乾燥させた。上記後処理により、酸性ポリマーナノファイバーに酸塩基相互する塩基性物質のみを修飾することができた。
さらに、得られた塩基性物質で修飾したナノファイバーをフィチン酸水溶液(50wt%)に室温で1時間浸漬させ、その後80℃の純水中で繰り返しのべ24時間洗浄し、ドープされなかったフィチン酸を除去した。フィチン酸修飾したナノファイバーは60℃で15時間真空乾燥させた。上記後処理により、塩基性ポリマーナノファイバーに酸塩基相互するフィチン酸のみを修飾することができ、交互三層修飾ナノファイバー不織布を得た。表面修飾前後のナノファイバー重量変化から、交互三層修飾ナノファイバー全体に対する表面の分子修飾部位の割合(表面修飾されたナノファイバー不織布に対する分子修飾部位の導入量の重量分率)では12.5質量%であることがわかった。この結果から、単層修飾の場合より多くの酸性物質を導入できることが明らかとなった。
図6に、実施例3のナノファイバーのSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバー形状を維持していることを確認し、そのファイバー径は277±52nmであった。空隙率は、88%程度であった。
【実施例】
【0101】
《実施例4:PBIナノファイバー不織布に対する酸性物質(フィチン酸)と塩基性物質(ポリジアリルジメチルアンモニウム)を交互に五層修飾》
実施例3で得られた酸性物質と塩基性物質の交互三層修飾ナノファイバー不織布に、塩基性物質と酸性物質をさらにもう1層ずつ、実施例3と同様の方法で修飾した。
表面修飾前後のナノファイバー重量変化から、五層修飾ナノファイバー全体に対する表面の分子修飾部位の割合(表面修飾されたナノファイバー不織布に対する分子修飾部位の導入量の重量分率)は13.2質量%と見積もられ、単層修飾より多くの酸性物質を修飾できることが明らかとなった。
図7に、実施例4のナノファイバーのSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバー形状を維持していることを確認し、そのファイバー径は308±68nmであった。空隙率は、87%程度であった。
【実施例】
【0102】
《実施例5:酸性物質と塩基性物質の交互三層修飾ナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜の作製とプロトン伝導度測定》
実施例3で得られた膜厚25μm程度の酸性物質と塩基性物質の交互三層修飾PBIナノファイバー不織布をガラスシャーレ内に設置し、市販のNafion(登録商標)分散液をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた(図3のC工程)。酸性物質と塩基性物質の交互三層修飾PBIナノファイバー不織布とNafionの質量比は、空隙率、比重を考慮し、12/88とした。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで電解質膜を得た。
得られた電解質膜を純水洗浄後、後処理として、硝酸(1M)に80℃1時間浸漬させ、純水で繰り返し洗浄し、三層修飾ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜を得た。
作製した複合電解質膜の膜厚は、不織布の膜厚とほぼ同じ26.6μmであった。
【実施例】
【0103】
プロトン伝導度測定は恒温恒湿器商品名「SH-221」(ESPEC社製)を用いて温度と湿度を一定に保ち、インピーダンスアナライザー商品名「3532-50」(日置社製)を用いて、50kHz~5MHzまでの周波数応答性を測定し、三層修飾ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜の抵抗からプロトン伝導度を算出した。80℃-30%RH、80℃-95%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ4.6×10-3、1.0×10-1 Scm-1であった。結果を表1に示す。特に上述した要求されている低湿度条件では優れたプロトン伝導性を示した。
下記に示す比較例1~3と比べ、表面に酸性物質と塩基性物質を交互に複数層修飾することによるプロトン伝導性における優位性が明らかである。
【実施例】
【0104】
《比較例1:ナノファイバー非含有Nafion(登録商標)単独膜の作製とプロトン伝導度測定》
ナノファイバーマットは用いず、市販のNafion(登録商標)分散液のみを用いて、実施例5と同様に製膜、後処理を行い、得られたNafion単独膜のプロトン伝導度測定を行った。その結果を表1に示す。80℃-30%RH、80℃-95%RHにおけるプロトン伝導度は、それぞれ5.0×10-4、1.0×10-1Scm-1であった。
実施例5と比べ、低湿度条件において1桁低いプロトン伝導性を示し、明らかに劣る特性であった。
【実施例】
【0105】
《比較例2:未修飾ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜の作製とプロトン伝導度測定》
実施例1で得られた膜厚25μm程度の酸性物質の単層修飾PBIナノファイバー不織布を用い、実施例5と同様の手順で製膜、後処理を行い、単層修飾ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜を得た。PBIナノファイバー不織布とNafionの質量比は、空隙率、比重を考慮し、10/90とした。作製した複合電解質膜の膜厚は、不織布の膜厚とほぼ同じ25μm程度であった。
実施例5と同様にプロトン伝導度を算出した。80℃-30%RH、80℃-95%RHにおけるプロトン伝導度は、それぞれ6.0×10-4、4.5×10-2であった。結果を表1に示す。
比較例1より低湿度条件において優れたプロトン伝導性を示すものの、実施例5よりいずれも低い特性であった。
【実施例】
【0106】
《比較例3:酸性物質の単層修飾ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜の作製とプロトン伝導度測定》
実施例2で得られた酸性物質の単層修飾PBIナノファイバー不織布とNafionの質量比は、空隙率、比重を考慮し、11/89とした。
実施例2で得られた膜厚25μm程度の酸性物質の単層修飾PBIナノファイバー不織布を用い、実施例5と同様の手順で単層修飾ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜を得た。作製した複合電解質膜の膜厚は、不織布の膜厚とほぼ同じ25μm程度であった。
実施例5と同様にプロトン伝導度を算出した。80℃-30%RH、80℃-95%RHにおけるプロトン伝導度は、それぞれ2.5×10-3、7.1×10-2であった。結果を表1に示す。比較例1、2より優れたプロトン伝導性を有するものの、実施例5より低い特性であった。
【表1】
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図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6