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明細書 :アルギン酸リアーゼ及び当該酵素を用いる不飽和ウロン酸単糖の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年5月9日(2019.5.9)
発明の名称または考案の名称 アルギン酸リアーゼ及び当該酵素を用いる不飽和ウロン酸単糖の製造方法
国際特許分類 C12N  15/60        (2006.01)
C12N  15/63        (2006.01)
C12N   9/88        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
G01N  30/02        (2006.01)
G01N  30/26        (2006.01)
G01N  30/72        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
C12P  19/02        (2006.01)
FI C12N 15/60
C12N 15/63 Z
C12N 9/88
C12M 1/00 C
G01N 30/02 B
G01N 30/26 A
G01N 30/72 C
G01N 30/88 N
C12P 19/02 ZNA
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 22
出願番号 特願2018-510583 (P2018-510583)
国際出願番号 PCT/JP2017/013871
国際公開番号 WO2017/175694
国際出願日 平成29年4月3日(2017.4.3)
国際公開日 平成29年10月12日(2017.10.12)
優先権出願番号 2016075364
優先日 平成28年4月4日(2016.4.4)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】柴田 敏行
【氏名】三宅 英雄
【氏名】村瀬 祥光
【氏名】田中 礼士
【氏名】モリ テツシ
【氏名】竹山 春子
【氏名】高橋 真美
出願人 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100108280、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 洋平
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4B050
4B064
Fターム 4B029AA02
4B029BB16
4B029BB20
4B029CC01
4B050CC03
4B050DD02
4B050EE10
4B050FF02
4B050FF11E
4B050FF12E
4B050FF14E
4B050LL05
4B064AF02
4B064CA19
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC24
4B064DA16
要約 【課題】 新規なアルギン酸リアーゼ及び当該酵素を用いた不飽和ウロン酸単糖の製造方法を提供すること。
【解決手段】 配列番号1に示されるアミノ酸配列又は当該配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドによって達成される。このポリペプチドは、(a)ウロン酸部分を含むアルギン酸に対し、当該ポリペプチドを接触させる酵素添加工程、(b)前記アルギン酸とポリペプチドの混合物を前記エキソ型アルギン酸リアーゼ活性が働く温度で保持する酵素作用工程を備えた4-deoxy-L-erythro-5-hexoseulose uronic acid(DEH)の製造方法に用いられる。
【選択図】 図10
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エキソ型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項3】
請求項2に記載のDNAを請求項1に記載のポリペプチドを発現可能な状態で有する発現用ベクター。
【請求項4】
(a)ウロン酸部分を含むアルギン酸に対し、請求項1に記載のポリペプチドを接触させる酵素添加工程と、
(b)前記アルギン酸とポリペプチドの混合物を前記エキソ型アルギン酸リアーゼ活性が働く温度で保持する酵素作用工程と、
を備える4-deoxy-L-erythro-5-hexoseulose uronic acid(DEH)の製造システム。
【請求項5】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エンド型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項7】
請求項6に記載のDNAを請求項5に記載のポリペプチドを発現可能な状態で有する発現用ベクター。
【請求項8】
(c)ウロン酸部分を含むアルギン酸に対し、請求項1に記載のポリペプチド及びエンド型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドの二種類のポリペプチドを接触させる複数酵素添加工程と、
(d)前記アルギン酸と二種類のポリペプチドの混合物を前記アルギン酸リアーゼ活性が働く温度で保持する複数酵素作用工程と、
を備えるDEHの製造システム。
【請求項9】
前記エンド型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドが、請求項5に記載のポリペプチドである請求項8に記載のDEHの製造システム。
【請求項10】
陰イオン分析用カラムと、移動相として一種類のギ酸含有アンモニウム緩衝液とを有するHPLC(高速液体クロマトグラフ)部を備えるDEH測定用LC-MS(液体クロマトグラフ質量分析計)装置。
【請求項11】
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)において陰イオン分析用カラムを使用し、移動相として一種類のギ酸含有ギ酸アンモニウム緩衝液を用いるLC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析)を用いたDEHの測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギン酸リアーゼ及び当該酵素を用いる不飽和ウロン酸単糖の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の水生植物の種類別生産量の割合を見ると、700万トン中68.6%を褐藻類が占め、その構成多糖類はアルギン酸が最も多く、約30%である。褐藻類はコンブやワカメなど一部は食用として利用されているが、大部分は未利用資源である。褐藻類は、耕地や新鮮な水、肥料を必要とせず、天然でゲル状に存在しているため、陸生バイオマスに比べると容易に酵素反応を行えるなどの利点が注目されている。特に日本は国土が海に囲まれ、世界でも有数の海洋面積を誇ることから、褐藻類の利用ができれば安定した原料供給源と成り得る。また、褐藻類の構成多糖類としてはアルギン酸が最も多いことから、アルギン酸の利用が重要となってくる。
アルギン酸はβ-D-マンヌロン酸とそのC5エピマーであるα-L-グルロン酸の2種のウロン酸がグリコシド結合で結合した直鎖状のポリマーであり(図1)、β-D-マンヌロン酸が結合したpoly(M)ブロック、α-L-グルロン酸が結合したpoly(G)ブロック、β-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸が交互に結合したpoly(M・G)ブロックの3画分が混在している。
【0003】
これまでに、アルギン酸を代謝することができる数種類の微生物が発見されており、これらの微生物はアルギン酸リアーゼを持つ。アルギン酸リアーゼはβ-eliminationによってグリコシド結合を切断するpolysaccharide lyases(PLs)に属する。現在、アルギン酸リアーゼはPL5、PL6、PL7、PL14、PL15、PL17、PL18ファミリーに分けられている。また、切断様式としては、ポリマーを飽和オリゴ糖と不飽和オリゴ糖に分解するエンド型のものと、ポリマーを飽和単糖や不飽和単糖に分解するエキソ型のものの2種類が知られている。現在のところ、PL5とPL7ファミリーはエンド型、PL15とPL17ファミリーはエキソ型であるとされている。
エキソ型アルギン酸リアーゼによる分解で生じた不飽和単糖は非酵素的反応により不飽和二重結合が開裂することにより開環し、4-deoxy-L-erythro-5-hexoseulose uronic acid(DEH)になる。一部の海洋微生物や代謝改変した発酵微生物はDEHを資化することで乳酸やコハク酸などの有機酸や、バイオエタノールなどのバイオ燃料を作ることができる。このため、DEHを効率的に製造する方法が研究されている(特許文献1、2、非特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-235773号公報
【特許文献2】特開2012-210208号公報
【0005】

【非特許文献1】Bioprocess Biosyst Eng, Vol.37, No.10, Page 2105-2111 (2014.10)
【非特許文献2】日本生物工学会大会講演要旨集、Vol. 67th, Page 97 (2015.09.25)
【非特許文献3】マリンバイオテクノロジー学会大会講演要旨集、Vol. 17th, Page 68 (2015.05.30)
【非特許文献4】マリンバイオテクノロジー学会大会講演要旨集、Vol. 16th, Page 53 (2015.05.31)
【非特許文献5】日本生物工学会大会講演要旨集、Vol. 65th, Page 59 (2013.08.25)
【非特許文献6】Da Mao Wang, Hee Taek Kim, Eun Ju Yun Do Hyoung Kim, Yong-Cheol Park, Hee Chul Woo, Kyoung Heon Kim (2014) Optimal production of 4-deoxy-L-erythro-5-hexoseulose uronic acid from alginate for brown macro algae saccharification by combining endo- and exo-type alginate lyases. Bioprocess Biosyst Eng 37, 2105-2111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、未だに工業的なレベルでウロン酸単糖を製造可能なアルギン酸リアーゼ及び当該酵素を用いたウロン酸単糖の製造方法は知られていなかった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規なアルギン酸リアーゼ及び当該酵素を用いた不飽和ウロン酸単糖の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための発明に係るポリペプチドは、配列番号1(MSTENKSRSNLFPLDEPKAGRLTIQYGPLETTTLIENPPRFSWLPVIEDGATYALRISTDPEYSAANTLLFSGIQLNFFTPDAPLAAGTWYWSYAQCDASGKPVTEWSTSRRITLDEGLPQTPLAPRKTRFDAATRAHPRLWMDGGRLEQFRKDVAADPTHCTWSTFFEGSVLPWMDRDIIEEPVGYPDHKRVAKIWRKVYIECQELMYAIRHLAVGGQVTQDAAMLARAKEWLLSAARWNPAGTTSRAYTDEWAFRVNLALAWGYDWLYDQLDEDERTLVRTALLERTRQTADHLMRHASIHLFPFDSHAVRAVSAVLIPACIALLDDEPEAEDWLNYAVEFLFTVYSPWGDHDGGWAEGPHYWMTGMAYLIDAANLLRGWSGIDLYQRPFFQKTGDFPLYTKAPDTRRATFGDDSTMGDLPAIKVGYNLRQYAGVTGNGAYQWYYDEILRTNPGTEMAFYNWGWWDFRFDEMLYRTDFPIVEAVPPADEDALRWFKGIGWVAIQHRMQAPDEHVQFVFKSSPYGSISHSHGDQNAFCLSAFGEDLAIQSGHYVAFNSTMHQNWRRQTLSKNAILIDGKGQYAGKDKAIAMQSTGKVNIAEDRGDHIFLQGDATEAYRTLSPEVRSVVRDVYFVNREYFVIVDAIDADTPVSIDWRLHANAPFNLGDSSFRYTGEKAGFYGQILWSEAGPAELTQETGFPDVDPSEIEGLPVSTCLTARFPKSTRHRIATLIVPYALDAPRRIFSFLDDQGYDCDLYFTDANDNSFRVIVPKTFDVGTPGIKNN)に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エキソ型アルギン酸リアーゼ活性を有する。
【0008】
また、上記アミノ酸配列を備えたポリペプチドをコードするDNAを提供できる。当該DNAは、上記アミノ酸配列を備えたポリペプチドを発現可能な状態で有する発現用ベクターを提供できる。
また、別の発明に係る4-deoxy-L-erythro-5-hexoseulose uronic acid (DEH)の製造システムは、(a)ウロン酸部分を含むアルギン酸に対し、上記ポリペプチドを接触させる酵素添加工程と、(b)前記アルギン酸とポリペプチドの混合物を前記エキソ型アルギン酸リアーゼ活性が働く温度で保持する酵素作用工程とを備える。上記(a)及び(b)の工程を備えた方法によってもDEHを製造できる。
また、別の発明に係るポリペプチドは、配列番号2(MSLKLRTFCLAGTATIFVALPSTYALAAGTGACTGVSQLAIVSASDDGTFDDIYAPEFAIDGEFGPSSRWSSLGEGKQLVLDLGEPQTVSEVGLAWYKGNERTSSFTLEASNDGENWMPLMDRTESAGKSEAVEKYSFDATEARYVRVTGMGNSASGWNSLYEAQVFGCGSGEIAATGDGSGEVKEADVSAYGLRTDVPPSENFDLTHWKLTLPADRDNDGKVDEIEEEELQGWSDPRFFYTDPATGGMVFRTAPDGKTTSGSHYTRSELREMIRGGDKSIATRVDDGTPNKNNWVFSTAPEEAQALAGGVDGTMTATLAVNHVTRTGESGKIGRVIIGQIHAMDDEPIRLYYRKLPTNKYGSIYFAHEPVGGDDDLVNVIGDRGSDIDNPADGIALDEVFSYEIKVTSEEKDGELHPILNVSITRDDGTVVKAEPYDMFESGYSTDKDFMYFKAGAYSQNNSITWPDDFDQVTFYALDVTHGE)に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エンド型アルギン酸リアーゼ活性を有する。
【0009】
また、上記アミノ酸配列を備えたポリペプチドをコードするDNAを提供できる。当該DNAは、上記アミノ酸配列を備えたポリペプチドを発現可能な状態で有する発現用ベクターを提供できる。
また、別の発明に係るDEHの製造システムは、(c)ウロン酸部分を含むアルギン酸に対し、配列番号1に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エキソ型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド、及びエンド型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドの二種類のポリペプチドを接触させる複数酵素添加工程と、(d)前記アルギン酸と二種類のポリペプチドの混合物を前記アルギン酸リアーゼ活性が働く温度で保持する複数酵素作用工程とを備える。上記(c)及び(d)の工程を備えた方法によってもDEHを製造できる。
このとき、エンド型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドとしては、いずれのエンド型アルギン酸リアーゼを用いることもできるが、配列番号2に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エンド型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドを用いることが好ましい。
本件発明に係るポリペプチドは、配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである。また、本件発明に係る不飽和ウロン酸単糖の製造方法に用いられるポリペプチドは、配列番号1及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する。
【0010】
アミノ酸配列の相同性としては、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、より好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%、又は100%同一である。
配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドは、当然にアルギン酸リアーゼ活性を有する。
配列番号1に示すアミノ酸配列を持つポリペプチドは、エキソ型アルギン酸リアーゼ活性を有する新規な酵素(Exo.Al.Ly)である。このアミノ配列は、公知のエキソ型アルギン酸リアーゼのアミノ酸配列と比較して40%以下の相同性しか示さなかった。また、その酵素活性は、公知の酵素の活性に比べても、十分に強いものであった。
配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドは、配列番号1に示すポリペプチドのエキソ型アルギン酸リアーゼ活性と比べて、30%以上、好ましくは50%以上又は70%以上のエキソ型アルギン酸リアーゼ活性を有する。
【0011】
上記アミノ酸配列を備えたポリペプチドをコードするDNAとは、配列番号1に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エキソ型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを意味する。DNAは、3個の連続する塩基が一つのアミノ酸をコードしており、アミノ酸の種類によっては、複数のコードが対応しうる。DNA配列は、上記ポリペプチドをコードするものであれば、遺伝暗号を参照して、適当な配列を指定できる。但し、発現に用いる発現用ベクターの安定性・発現系に応じて、タンパク質発現性の良好なものを指定することが好ましい。大腸菌で発現するベクターを用いる場合には、配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNAとして、配列番号3に示すものを使用できる。
【0012】
配列番号2に示すアミノ酸配列を持つポリペプチドは、エンド型アルギン酸リアーゼ活性を有する新規な酵素(Endo.Al.Ly)である。このアミノ酸配列は、公知のエンド型アルギン酸リアーゼのアミノ酸配列と比較して40%以下の相同性しか示さなかった。また、その酵素活性は、公知の酵素の活性に比べても、十分に強いものであった。
配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドは、配列番号2に示すポリペプチドのエンド型アルギン酸リアーゼ活性と比べて、30%以上、好ましくは50%以上又は70%以上のエンド型アルギン酸リアーゼ活性を有する。
上記アミノ酸配列を備えたポリペプチドをコードするDNAとは、配列番号2に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を備えるものであって、エンド型アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを意味する。DNA配列は、上記ポリペプチドをコードするものであれば、遺伝暗号を参照して、適当な配列を指定できる。大腸菌で発現するベクターを用いる場合には、配列番号2のアミノ酸配列をコードするDNAとして、配列番号4に示すものを使用できる。
【0013】
本発明において、「単離された」ポリペプチドというときは、自然界に存在しない程度まで分離・精製され、目的とするアルギン酸リアーゼ活性を示すことを意味し、必ずしも不純物を全く含まないことを意味するものではない。
本発明において、「アルギン酸」とは、不飽和ウロン酸単糖を製造するための出発材料として使用するものを意味し、褐藻類から得られたアルギン酸やエンド型アルギン酸リアーゼによって部分的に分解されたアルギン酸(例えばオリゴ糖)が含まれる。
本発明において、「不飽和ウロン酸単糖」とは、アルギン酸又はアルギン酸オリゴ糖末端から、エキソ型アルギン酸リアーゼのβ-脱離反応により遊離した非還元末端に二重結合を持つ不飽和単糖を意味する。
本発明において、「ウロン酸部分」とは、アルギン酸中においてβ1-4結合したMもしくはGを意味する。
【0014】
本発明において、アルギン酸と一種類又は二種類のポリペプチドを「接触させる」とは、ポリペプチドが有するアルギン酸リアーゼ活性を示す状態で、両物質を固体、水溶液又は懸濁液のいずれかの形態で混合することを意味する。アルギン酸と一種類又は二種類のポリペプチドは、混合する前にそれぞれ異なる形態であっても良い。
本発明において、「アルギン酸リアーゼ活性が働く温度」とは、ポリペプチドが持つアルギン酸リアーゼ活性が失われることなく、所定の時間(例えば、72時間以下、好ましくは24時間以下、更に好ましくは3時間以下)作用しうる温度のことを意味する。温度条件については、その他の反応条件(例えば、アルギン酸濃度、ポリペプチドの濃度、水溶液の種類(アルギン酸とポリペプチド以外の成分を含まない水、適当な塩を含む水溶液など)などの条件を含む)に応じて、適宜に決定できる。
アルギン酸に二種類のポリペプチド(エンド型アルギン酸リアーゼ又はエキソ型アルギン酸リアーゼ)を接触させる場合には、二種類のポリペプチドを同時に接触させることもできる、順次に接触させることもできる。
【0015】
また、別の発明に係るDEH測定用LC-MS(液体クロマトグラフ質量分析計)装置は、陰イオン分析用カラムと、移動相として一種類のギ酸含有ギ酸アンモニウム緩衝液とを有するHPLC(高速液体クロマトグラフ)部を備える。また、本発明は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)において陰イオン分析用カラムを使用し、移動相として一種類のギ酸含有ギ酸アンモニウム緩衝液を用いるLC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析)を用いたDEHの測定方法を提供できる。
上記構成によれば、HPLCの移動相として一種類のギ酸含有ギ酸アンモニウム緩衝液を用いれば,グラジエント送液を用いることなくDEHを分析できる。このため、グラジエント送液を用いる方法に比べると、サンプル1本あたりの測定に掛かる時間が少なくて済むため、多くのサンプルを迅速に処理できる。
陰イオン分析用カラムとしては、各社の市販品を用いることができる。但し、これらのうちShodex IC NI-424またはI-524Aを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エキソ型アルギン酸リアーゼ活性を持つ配列番号1に示すポリペプチド、エンド型アルギン酸リアーゼ活性を持つ配列番号2に示すポリペプチド、及びこれらのポリペプチドを用いた不飽和ウロン酸単糖の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アルギン酸の化学構造を示す図である。
【図2】PCRで増幅したExo.Al.Ly遺伝子のアガロース電気泳動結果を示す写真図である。Lane Mは1 kb DNA Ladder(NEW ENGLAND Bio Labs)、Lane 1はExo.Al.Lyを、それぞれ示す。
【図3】目的遺伝子を導入した各プラスミドのアガロースゲル電気泳動結果を示す写真図である。Lane Mは1 kb DNA Ladder(NEW ENGLAND Bio Labs)、Lane AはpET25b(+)-Endo.Al.Ly、Lane BはpET22b(+)-Exo.Al.Lyを、それぞれ示す。
【図4】(A)Endo.Al.Ly及び(B)Exo.Al.Lyの発現を確認した結果を示すSDS-PAGE写真図である。Lane Mはタンパク質マーカー、Lane 1はIPTG誘導なし、Lane 2はIPTG0.1 mM添加、Lane 3はIPTG1 mM添加を、それぞれ示す。
【図5】(A)Endo.Al.Ly及び(B)Exo.Al.Lyの可溶化を確認した結果を示すSDS-PAGE写真図である。Lane Mはタンパク質マーカー、Lane 1は分離前懸濁液、Lane 2は可溶性画分、Lane 3は不溶性画分を、それぞれ示す。
【図6】(A)Endo.Al.Ly及び(B)Exo.Al.LyをNiアフィニティークロマトグラフィーで精製した後のSDS-PAGE写真図である。Lane Mはタンパク質マーカー、Lane 1~11は溶出画分を、それぞれ示す。
【図7】(A)Endo.Al.Ly及び(B)Exo.Al.Lyを陰イオン交換クロマトグラフィーで精製した後のSDS-PAGE写真図である。Lane Mはタンパク質マーカー、Lane 1~11は溶出画分を、それぞれ示す。
【図8】(A)Endo.Al.Ly及び(B)Exo.Al.Lyをゲル濾過クロマトグラフィーで精製した後のSDS-PAGE写真図である。Lane Mはタンパク質マーカー、Lane AはEndo.Al.Ly、Lane BはExo.Al.Lyを、それぞれ示す。
【図9】(A)Endo.Al.Ly及び(B)Exo.Al.Lyの酵素活性を確認した結果を示すグラフである。
【図10】(A)Endo.Al.Ly及び(B)Exo.Al.Lyの組み合わせによるTLCの結果を示す写真図である。Lane Mはマーカー(Glucose(Glu)、Maltose(Maltose))、Lane 1はExo.Al.Lyのみによる生成物、Lane 2はEndo.Al.Lyのみによる生成物、Lane 3はEndo.Al.Ly及びExo.Al.Lyによる生成物を、それぞれ示す。
【図11】Exo.Al.Lyのみによる生成物をLC/MSで測定した結果を示すクロマトグラムである。(A)TIC、(B)SIMモード(m/z 175)の測定結果を、それぞれ示す。
【図12】Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyで処理したときの生成物をLC/MSで測定した結果を示すクロマトグラムである。(A)TIC、(B)SIMモード(m/z 175)の測定結果を、それぞれ示す。
【図13】(A)PolyMまたは(B)PolyGを基質として、Exo.Al.LyまたはEndo.Al.Lyの組み合わせによって分解活性を確認したTLCの結果を示す写真図である。Lane Mはマーカー(グルコース(Glu)、マルトース(Mal))、Lane 1はEndo.Al.Lyのみ、Lane 2はExo.Al.Lyのみ、Lane 3はEndo.Al.Ly及びExo.Al.Lyによる生成物をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
<Exo.Al.Ly及びEndo.Al.Ly発現用組換え体の作製、並びにExo.Al.Ly及びEndo.Al.Lyの発現と精製>
エンド型アルギン酸リアーゼ(Exo.Al.Ly)とエキソ型アルギン酸リアーゼ(Endo.Al.Ly)の2つの酵素タンパク質を使用し、酵素反応によりアルギン酸からDEHを調製するため、大腸菌発現ベクターを用いて、タンパク質発現用プラスミドを構築し、酵素タンパク質を発現、可溶化し、単一バンドとなるまで精製した。Exo.Al.LyをコードするDNAとして、配列番号3(ATGTCGACGGAAAACAAATCCCGTTCAAACCTGTTTCCACTTGATGAGCCCAAAGCGGGACGGCTGACGATCCAATATGGCCCGCTCGAAACGACGACGCTGATTGAAAACCCGCCACGCTTCTCATGGCTGCCGGTCATCGAGGATGGCGCAACCTATGCGCTGCGCATCTCGACCGATCCCGAATATTCCGCGGCAAACACCCTCCTGTTTTCGGGCATCCAGCTGAACTTCTTCACGCCTGATGCACCTTTGGCGGCAGGCACTTGGTACTGGTCCTATGCACAATGCGATGCCTCGGGAAAGCCCGTTACCGAATGGAGCACGAGCCGTCGCATCACTCTCGACGAGGGTCTGCCACAGACACCGCTGGCACCACGCAAGACGCGTTTTGACGCGGCGACCCGTGCGCACCCGCGCCTGTGGATGGACGGCGGCCGGCTGGAACAGTTCCGCAAGGATGTTGCCGCCGACCCGACGCATTGCACATGGTCTACCTTTTTCGAGGGTTCGGTTCTGCCGTGGATGGACCGCGACATCATCGAAGAGCCTGTGGGCTATCCGGATCACAAGCGTGTCGCGAAGATCTGGCGCAAGGTCTACATCGAGTGTCAGGAACTGATGTATGCGATCCGCCACCTTGCTGTGGGCGGTCAGGTTACCCAGGACGCGGCAATGCTGGCACGCGCCAAGGAATGGCTGCTCAGCGCCGCACGCTGGAATCCGGCAGGCACCACCTCGCGCGCCTATACCGATGAATGGGCTTTCCGTGTGAACCTCGCACTCGCATGGGGTTATGACTGGCTCTATGACCAGCTGGACGAGGATGAGCGTACGCTGGTCCGCACCGCCTTGCTGGAGCGTACGCGCCAGACGGCGGATCACCTGATGCGCCACGCCAGCATCCACCTGTTTCCGTTTGACAGCCACGCTGTCCGCGCGGTGTCTGCGGTTCTGATCCCCGCCTGTATTGCCTTGCTGGATGATGAACCCGAGGCCGAGGACTGGCTGAACTATGCGGTGGAATTCCTGTTCACCGTCTATTCGCCGTGGGGCGATCATGACGGTGGCTGGGCCGAGGGTCCGCACTACTGGATGACGGGTATGGCCTATCTGATCGACGCGGCAAACCTGCTGCGCGGCTGGAGCGGAATCGACCTGTACCAACGCCCGTTCTTCCAGAAAACCGGGGACTTCCCGCTTTATACCAAGGCGCCGGACACACGTCGGGCCACATTCGGCGATGATAGCACCATGGGCGATCTGCCCGCGATCAAGGTCGGATATAACCTGCGTCAATACGCAGGGGTGACCGGCAACGGTGCCTACCAATGGTACTACGACGAAATCCTGCGCACCAACCCCGGCACGGAAATGGCCTTCTACAACTGGGGCTGGTGGGATTTCCGGTTTGACGAAATGCTCTACCGCACGGACTTCCCGATCGTAGAGGCAGTTCCGCCCGCGGATGAGGATGCACTGCGCTGGTTCAAGGGCATCGGTTGGGTCGCGATCCAGCACCGTATGCAGGCACCGGACGAGCATGTTCAATTCGTGTTCAAATCCTCTCCCTACGGCTCGATCAGCCACAGCCATGGGGATCAGAACGCGTTCTGTCTGTCGGCATTCGGTGAGGATCTTGCAATCCAGTCCGGCCATTATGTCGCCTTCAACTCGACAATGCACCAGAACTGGCGTCGCCAGACCCTGTCGAAGAACGCCATCCTGATCGACGGAAAAGGCCAGTACGCCGGCAAGGACAAGGCGATTGCCATGCAATCGACCGGTAAGGTCAATATTGCCGAGGATCGTGGCGATCATATCTTCCTGCAGGGGGATGCGACCGAAGCCTATCGCACATTGTCACCCGAGGTCCGCTCGGTTGTCCGTGATGTGTATTTCGTGAATCGCGAATATTTCGTGATCGTGGATGCCATCGATGCGGATACGCCCGTCAGCATCGACTGGCGTCTGCACGCGAATGCTCCGTTCAATCTGGGTGATAGCAGCTTCCGCTATACCGGTGAAAAGGCCGGTTTCTATGGCCAGATCCTGTGGTCCGAGGCGGGTCCTGCCGAACTGACGCAGGAAACCGGCTTTCCGGATGTCGATCCGAGCGAAATCGAGGGACTGCCGGTCAGCACCTGCCTGACCGCCCGTTTCCCCAAATCCACCCGTCATCGTATCGCGACCTTGATCGTCCCGTATGCTCTGGATGCGCCGCGCCGCATTTTCAGCTTCCTTGATGATCAGGGTTACGACTGCGATCTCTATTTCACCGATGCCAATGACAATAGTTTCAGGGTGATTGTTCCCAAGACGTTCGACGTGGGAACACCTGGCATCAAAAATAACTGA)を、Endo.Al.LyをコードするDNAとして、配列番号4(ATGAGTCTGAAGCTACGCACGTTCTGTTTGGCAGGTACGGCGACTATTTTTGTCGCATTACCATCAACCTATGCATTGGCAGCCGGAACCGGCGCATGCACCGGGGTGTCCCAGCTGGCCATTGTATCGGCCAGCGATGACGGCACTTTCGATGACATCTACGCACCTGAATTCGCGATCGACGGCGAATTCGGCCCAAGTTCGCGCTGGTCATCCCTTGGGGAGGGGAAGCAGCTTGTTCTGGATCTGGGAGAGCCCCAGACCGTAAGCGAGGTTGGTCTGGCCTGGTACAAGGGCAATGAGCGCACATCCAGCTTTACGCTGGAAGCTTCGAATGACGGCGAAAACTGGATGCCTTTGATGGACCGCACGGAAAGTGCCGGAAAATCCGAGGCTGTGGAGAAATACAGCTTTGACGCGACCGAGGCCCGCTATGTTCGGGTGACCGGTATGGGCAATAGCGCGAGCGGCTGGAACAGCCTTTACGAGGCACAGGTGTTCGGCTGTGGCTCAGGTGAGATTGCGGCCACAGGCGACGGTTCCGGAGAGGTCAAGGAAGCAGACGTCAGCGCCTATGGCCTGCGTACCGACGTTCCGCCAAGCGAGAACTTCGATCTGACCCACTGGAAGCTGACATTGCCGGCGGATCGGGACAATGACGGCAAAGTGGACGAGATTGAGGAAGAAGAGCTGCAGGGTTGGTCTGATCCCCGGTTCTTCTATACCGATCCGGCAACGGGTGGCATGGTTTTCCGCACCGCTCCGGATGGAAAGACCACCTCGGGATCGCATTATACGCGCAGCGAACTGCGCGAGATGATCCGCGGCGGTGACAAGAGCATTGCCACGCGCGTGGATGACGGAACGCCCAACAAGAACAACTGGGTGTTCTCGACGGCGCCCGAAGAGGCGCAGGCCCTTGCCGGCGGGGTGGACGGGACCATGACGGCCACGTTGGCGGTGAACCATGTGACCCGTACCGGAGAATCCGGCAAGATCGGGCGTGTCATCATCGGCCAGATCCACGCGATGGATGACGAGCCTATCCGGCTTTATTATCGCAAGCTTCCGACCAATAAATACGGCTCCATCTATTTCGCGCATGAGCCGGTAGGGGGCGACGATGATCTGGTCAACGTCATCGGGGATCGTGGAAGCGATATTGACAACCCTGCGGATGGCATCGCGCTGGACGAAGTGTTCTCTTACGAGATCAAGGTGACATCCGAAGAAAAGGATGGAGAGCTGCATCCGATTCTGAATGTTTCCATCACGCGCGATGACGGAACGGTGGTGAAAGCCGAACCCTACGACATGTTCGAAAGCGGGTATTCGACCGACAAGGACTTCATGTACTTCAAGGCCGGAGCCTATTCGCAGAACAATTCCATCACATGGCCGGACGATTTCGATCAGGTGACCTTCTACGCGCTGGATGTGACGCACGGCGAATAA)をそれぞれ用いた。

【0019】
1.試験方法
(1) Exo.Al.Ly遺伝子のサブクローニング
共同研究者由来のプラスミド(Endo.Al.Lyを組み込んだもの。以下「Exo.Al.Ly遺伝子プラスミド」という)を用いた。大腸菌を用いてタンパク質発現系を作製することとした。発現後のタンパク質の精製を円滑に行うために、Endo.Al.Lyをコードする遺伝子の終始コドンを欠損させ、C末端側にHis-Tagを付加した。シグナルナルペプチド及び終始コドンを含まないExo.Al.Ly遺伝子の塩基配列領域を増幅させるようにプライマーを設計した。DNAポリメラーゼとしてKOD-Plus-Neo(TOYOBO)、鋳型としてExo.Al.Ly遺伝子プラスミドを用いた。設計した二種類のプライマー(Exo.Al.Ly_Nde1_F:配列番号5:tat cat tgC ATA TGa tgt cga cgg aaa aca aat ccc及びExo.Al.Ly_Xho1_R:配列番号6:gca gCT CGA Ggt tat ttt tga tgc cag。但し、制限酵素の認識部位は、大文字で示した。)を用い、次の条件でPCRを行い、目的遺伝子配列を増幅した。
PCR溶液として、5μLの10×PCR buffer、5μLの2mM dNTPs、3μLの25mM MgSO4、1.5μLの10μM Exo.Al.Ly_Nde1_F、1.5μLの10μM Exo.Al.Ly_Xho1_R、1μLのDNAテンプレート、1μLのDNAポリメラーゼ(KOD-Plus-Neo)にdH2Oを添加して、全量を50μLとしたものを用いた。PCR条件として、まず94℃にて2分間の変性反応を行った後、増幅サイクルとして、(i)98℃にて10秒間の変性、(ii)60℃にて30秒間のアニーリング及び(iii)68℃にて1分20秒間の合成反応を設定し、(i)~(iii)を30回繰り返した。
PCRを実施した後、増幅された遺伝子配列をアガロースゲル電気泳動で分画し、Wizard SV Gel and PCR Clean-up System(Promega)を用いて精製した。

【0020】
(2)Exo.Al.Lyコンストラクトの構築
PCRで増幅したExo.Al.LyおよびpET22b(+)(Novagen)をXho I、Nde I(TOYOBO)で制限酵素処理した。その後、アガロースゲル電気泳動により目的とするDNAを分画し、Wizard SV Gel and PCR Clean-up System(Promega)を用いて精製した。
精製したインサート遺伝子とプラスミドベクターの質量比が3:1になるようにライゲーション反応液を調製し、Ligation high Ver. 2(TOYOBO)を用いて16℃で30分間、ライゲーション反応を行った。その後、ライゲーション産物を大腸菌DH5αに形質転換させ、100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に植菌して、37℃で一晩静置培養した。

【0021】
培養後、LB寒天培地に生じたコロニーに目的遺伝子が挿入されていることを確認するため、コロニーPCRを行った。ポリメラーゼとしてQuick-Taq(TOYOBO)、プライマーとして前述のExo.Al.Ly_Nde1_F及びExo.Al.Ly_Xho1_Rを用い、コロニーを鋳型としてPCRを実施した。
PCR溶液として、60μLのQuick-Taq、2.4μLの10μM Exo.Al.Ly_Nde1_F、2.4μLの10μM Exo.Al.Ly_Xho1_RにdH2Oを添加して、全量を120μLとしたものを用いた。PCR条件として、まず94℃にて2分間の変性反応を行った後、増幅サイクルとして、(i)94℃にて30秒間の変性、(ii)60℃にて30秒間のアニーリング及び(iii)68℃にて2分30秒間の合成反応を設定し、(i)~(iii)を25回繰り返した。
PCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認することで目的遺伝子が挿入されているコロニーを選択した。選択したコロニーをLB液体培地で37℃にて一晩振とう培養した。その後、Wizard Plus SV MiniprepsDNA Purification System(Promega)を用いてプラスミドDNAを抽出した。このプラスミドDNAをpET22b(+)-Exo.Al.Lyとした。

【0022】
(3) Endo.Al.LyおよびExo.Al.Lyの発現確認
上記(1)及び(2)と類似の手順で配列番号2に示すポリペプチド(Endo.Al.Ly)をコードし、大腸菌を用いてEndo.Al.Lyを発現できるプラスミド(pET25b(+)-Endo.Al.Lyプラスミド)を得た。
こうして、pET22b(+)-Exo.Al.LyプラスミドおよびpET25b(+)-Endo.Al.Lyプラスミドを大腸菌BL21(DE3)株に形質転換させ、100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地にそれぞれ植菌し、37℃で一晩静置培養させた。培養したLB寒天培地上のコロニーを採取し、寒天培地と同濃度のアンピシリンを含むLB液体培地5 mLに植菌し、37℃、160 rpmで振とう培養した。培養液の濁度がOD600=0.4~0.6になったのを確認し、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)の終濃度が0.1 mM及び1 mMになるように加え、IPTGを添加しないものをコントロールとして、3種類の条件で37 ℃、160 rpmで一晩振とう培養した。
培養後、各培養液1 mLを13000 rpm、3分間遠心分離し、上清を除き、50 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5) 20μLで少量の菌体を懸濁させた。この菌体懸濁液と2×SDSサンプル緩衝液20μLを混合して調製したサンプルを3分間煮沸し、10 %ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを行い、目的タンパク質の発現確認を行った。

【0023】
(4)大量培養と酵素タンパク質の可溶化
大腸菌BL21(DE3)で植菌したLB寒天培地上に生えたコロニーを100μg/mLのアンピシリンを含むLB液体培地5 mLにそれぞれ植菌し、37℃で一晩振とう培養し、これを前培養液とした。
上記と同濃度のアンピシリンと終濃度1%(w/v)となるようにグルコースを加えた2×YT培地400 mLを本培養液とし、前培養液400μLを植菌し、37 ℃、160 rpmで振とう培養した。培養液の濁度がOD600=0.4~0.6になったことを確認して、本培養液を10分間氷冷した。その後、IPTGを終濃度0.1 mMになるように加え、20 ℃で二晩振とう培養した。
培養後、培養液を4 ℃、6000 rpm、25分間遠心分離し、上清を除くことで集菌し湿菌体を得た。湿菌体1 gあたり10 mLの割合で100 mM NaClを含む20 mMリン酸緩衝液(pH 7.4)を加え、懸濁した。この懸濁液を氷上で3分間超音波破砕(OUT PUT 4、DUTY 40:TOMMY ULTRASONMIC DISRUPTOR UD-201)し、その後、2分間氷上静置した。これを4回繰り返すことで菌体を完全に溶菌させた。超音波破砕した懸濁液を4℃、13000 rpm、20分間遠心分離し、上清を回収した。回収した上清を再度、4℃、13000 rpm、20分間遠心分離し、その上清を可溶性画分として回収した。

【0024】
(5) Niアフィニティークロマトグラフィーによる精製
Ni Sepharose 6 Fast Flow(GE Healthcare)を13.5 mLのオープンカラム(GE Healthcare)に3 mL詰め、ミリQ水で十分に洗浄した後、50 mM NaClと20 mM イミダゾールを含む10 mMリン酸緩衝液(pH 7.4)を流すことにより、担体を平衡化させた。超音波破砕により得られたEndo.Al.Ly、Exo.Al.Lyの可溶性画分に平衡化した担体をそれぞれ供し、4 ℃、一晩スターラーで撹拌することで目的タンパク質の担体への吸着を行った。担体を含んだタンパク質溶液をオープンカラムに移し、流速2 mL/minで流した。これを素通し画分として回収した。平衡化用の緩衝液と同じ緩衝液20 mLでカラムを洗浄し、洗浄画分として回収した。その後、50 mM NaClと500 mM イミダゾールを含む10 mM リン酸緩衝液(pH 7.4)を20mL流し、1 mLずつ溶出画分として回収した。次いで、50 mM NaClと50 mM EDTAを含む10 mM リン酸緩衝液(pH 7.4)を20 mL流し、溶出後洗浄画分として回収した。最後に、20 %エタノールで担体の洗浄と保管を行った。
溶出画分をSDS-PAGEに供し、Endo.Al.Ly、Exo.Al.Lyを含む画分をそれぞれ確認した。これらの画分をそれぞれまとめ、20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)で4 ℃一晩透析した。

【0025】
(6)陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製
透析後のEndo.Al.Ly、Exo.Al.Lyをそれぞれ含むタンパク質溶液をAKTAprime plus(GE Healthcare)を用いて陰イオン交換クロマトグラフィーに供した。陰イオン交換カラムには1 mLのHiTrap Q HP(GE Healthcare)を用いた。陰イオン交換クロマトグラフィーは全工程を流速1 mL/minで行った。10 mLの20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)でカラムを平衡化した後、透析後のEndo.Al.Ly、Exo.Al.Lyを含むタンパク質溶液をそれぞれ流すことで目的タンパク質の担体への吸着を行った。その後、5 mLの20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)で洗浄した。次いで、0~1.0 M NaClを含む20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)の直線的濃度勾配によって、担体に吸着したタンパク質を溶出させ、1 mLずつ溶出画分として回収した。溶出後、1.0 M NaClを含む20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)5 mLで洗浄した。溶出画分をSDS-PAGEに供すことで目的タンパク質を含む画分を選別し、これらの画分を集めた。ゲル濾過クロマトグラフィーに供するため、Amicon Ultra-15 30k MWCO(MILLIPORE)を用いて溶液を10 mLまで濃縮した。

【0026】
(7)ゲル濾過クロマトグラフィーによる精製
AKTAprime plus(GE Healthcare)を用いて、陰イオン交換クロマトグラフィー後のEndo.Al.Ly、Exo.Al.Lyを含むタンパク質溶液それぞれにゲル濾過クロマトグラフィーを行った。カラムにはHiLoadTM16/60 SuperdexTM75 pg(GE Healthcare)を用いた。120 mLの100 mM NaClを含む20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)を流速0.3 mL/minで流し、カラムを平衡化した。上記(6)のEndo.Al.Ly、Exo.Al.Lyを含むタンパク質溶液それぞれをカラムに添加し200 mLの100 mM NaClを含む20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)、流速1 mL/minにて、タンパク質溶液を3 mLずつ溶出させ、280 nmの吸光により検出された溶出画分を回収した。SDS-PAGEにて、目的タンパク質が単一バンドとして確認できた画分を集め、20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)で4 ℃、一晩透析を行った。

【0027】
(8)濃度測定
Endo.Al.Ly、Exo.Al.Lyのタンパク質濃度は、波長280 nmにおける吸光度を測定し、下記式(1)を用いて、モル吸光計数εから計算した。
式(1):ε=(♯Trp)×5500+(♯Tyr)×1490

【0028】
2.試験結果
(1)コンストラクトの構築
PCRで増幅したExo.Al.Ly遺伝子のアガロースゲル電気泳動の結果を図2に示した。制限酵素処理後、ライゲーション反応を行い、コロニーPCRにより目的遺伝子の導入されたコロニーを選択した。その後、プラスミド抽出をして、pET22b(+)ベクター(5.5 kb)にExo.Al.Ly遺伝子(2.4 kb)が導入されたpET22b(+)-Exo.Al.Ly(7.9 kb)を構築できたことをアガロースゲル電気泳動により確認した。また、pET25b(+)(5.5 kb)ベクターにEndo.Al.Ly遺伝子(1.5 kb)が導入されたプラスミドpET22b(+)-Endo.Al.Ly(7.0 kb)をアガロースゲル電気泳動により確認した。結果を図3に示した。いずれの発現用ベクターについても、目的の大きさにバンドが認められた。

【0029】
(2)Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyの発現確認
IPTG誘導により目的タンパク質の発現を行った。発現したタンパク質のSDS-PAGEの結果を図4に示した。Endo.Al.LyおよびExo.Al.Lyの分子量はそれぞれ89 kDa、52 kDaであることから、図中の各分子量に相当する太いバンドは、目的タンパク質によるものであった。また、添加したIPTGの濃度変化によるバンドパターンへの大きな影響は見られなかったことから、これらの酵素はIPTGによる誘導がなくても発現していた。

【0030】
(3)大量培養と酵素タンパク質の可溶化
大腸菌の大量培養を行い、得られた菌体を超音波破砕により溶菌した。遠心分離を行うことで不溶性画分と可溶性画分に分画して回収した。得られた各画分のSDS-PAGE結果を図5に示した。Endo.Al.LyおよびExo.Al.Lyの分子量はそれぞれ89 kDa、52 kDaであり、図中の各分子量に相当する太いバンドは目的タンパク質によるものであった。Endo.Al.Ly、Exo.Al.Ly共に可溶性画分に目的タンパク質が確認できたことから、十分な可溶化を確認した。

【0031】
(4)Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyの精製
Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyは、それぞれHis-Tagを付加した状態で発現させたので、Niアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製を行った。精製した結果のSDS-PAGE泳動図を図6に示した。両タンパク質共に不純物が十分に除去できていなかったため、更に陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製を行った。精製した結果のSDS-PAGE泳動図を図7に示した。両タンパク質共にタンパク質マーカーの45 kDa付近に比較的濃いバンドが残っていた。そのため、次いでゲル濾過クロマトグラフィーを行った。結果を図8に示した。これにより、両タンパク質共に単一なバンドを得ることができた。
精製して得られたタンパク質溶液の波長280 nmにおける吸光度を測定し、タンパク質のモル濃度を求めたところ、Endo.Al.Lyは4.0μM、Exo.Al.Lyは3.7μMであった。培地1 LあたりEndo.Al.Lyは4.7 mg、Exo.Al.Lyは10.0 mgの精製酵素を回収できた。
こうして、本実施形態の方法によれば、Exo.Al.Ly及びEndo.Al.Lyは、大腸菌を用いて大量に発現・精製できた。
次に、各酵素タンパク質の酵素活性を測定した。

【0032】
<Exo.Al.Ly及びEndo.Al.Lyの酵素活性評価と生成物の同定>
アルギン酸リアーゼはpolysaccharide lyases(PLs)に属し、Endo.Al.Ly、Exo.Al.LyはそれぞれPL7、PL15ファミリーに分けられる。アルギン酸リアーゼの切断様式には、エンド型とエキソ型の2種類が存在する。エンド型ではアルギン酸のグリコシド結合をβ-elimination(脱離反応)によって切断し、不飽和オリゴ糖を生成する。一方、エキソ型ではアルギン酸やエンド型によって生成した不飽和オリゴ糖の非還元末端を認識し、β-eliminationによって順に切断する。PL7ファミリーはエンド型のアルギン酸リアーゼが属し、PL15ファミリーはエキソ型のアルギン酸リアーゼが属する。従って、Endo.Al.Lyはエンド型、Exo.Al.Lyはエキソ型の切断様式を持つ。
そこで、アルギン酸ナトリウムを基質として、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyにより酵素反応を行い、得られた生成物を薄層クロマトグラフィーに供することで、切断様式の確認および分解度を評価した。
併せて、酵素反応で得られた生成物をLC/MSを用いて分析し、生成物の評価を行った。

【0033】
1.試験方法
(1)酵素活性の確認
上述した方法で調製したEndo.Al.LyおよびExo.Al.Lyの酵素溶液をそれぞれ0.25 mg/mLとなるよう希釈した。酵素反応用の基質として、アルギン酸の可溶性塩であるアルギン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)を1.0%(w/v)となるようミリQで溶解して用いた。基質溶液4.0 mLに対し、希釈した酵素溶液を1.0 mL加え、基質濃度0.8%(w/v)、酵素濃度0.05 mg/mLの酵素反応液を調製した。25 ℃で酵素反応を行い、経時的に235 nmにおける吸光度を測定した。

【0034】
(2)酵素反応
1.0%(w/v)アルギン酸ナトリウム水溶液の基質溶液10 mLに1.60 mg/mLのEndo.Al.Lyを1 mL加えたもの、3.82 mg/mLのExo.Al.Lyを1 mL加えたもの、及びEndo.Al.LyとExo.Al.Lyとを各1.0 mLずつ加えたものの計3通りの酵素の組み合わせによる反応液を37 ℃で3日間反応させた。その後、未反応のアルギン酸ナトリウムと酵素を除去するため、Amicon Ultra-15 3000 MWCO(MILLIPORE)を用いて限外濾過(カットオフ分子量3000)した。限外濾過によりフィルターを通過した酵素反応液を凍結させ、凍結乾燥により、粉末状の酵素反応生成物を得た。酵素反応生成物の収量を測定し、酵素反応に加えた緩衝液(20 mM Tris-HCl)分の重量を差し引いた後、酵素反応生成物の収率を算出した。

【0035】
(3)薄層クロマトグラフィー(TLC)による生成物の検出
上記(2)で得た酵素反応後の凍結乾燥処理で得られた粉末状のEndo.Al.Ly生成物、Exo.Al.Ly生成物、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Ly生成物をそれぞれ30 mg/mLになるようミリQ水に溶かし、TLC試料とした。
市販されている物品として、アルギン酸の単糖やオリゴ糖の標品が存在しないため、大体の位置指標(マーカー)として、単糖にはグルコース、二糖にはマルトースを等量ずつ混合し、3.0 mg/mLとなるようにミリQ水に溶かし調製したものを用いた。
マーカー、試料をそれぞれ5μLずつTLCプレート シリカゲル60F254(Merck)にスポットした。ブタノール:酢酸:ミリQ水=2:1:1(v/v)で調製した展開溶媒を展開槽に加え、スポットしたTLCプレートを浸し、6時間程度展開した。終了後、十分に乾燥させた後、再び展開を行った。その後、乾燥させDPA試薬を噴霧した。DPA試薬は以下のように調製した。ジフェニルアミン4.0 gをアセトンに溶かし、アセトンで100 mLにメスアップし、これをA液とした。次に、アニリンを4.0 mLをアセトン96 mLに加えて混合し、これをB液とした。85 %リン酸をC液とした。A液:B液:C液=5:5:1の比で混合し、DPA試薬を調製した。噴霧後、TLCプレートを乾燥させ、ホットプレート上で10分間加熱し、各酵素の生成物を検出した。

【0036】
(4)LC/MS分析による生成物の同定
上記(2)で得た酵素反応後の凍結乾燥処理で得られた粉末状のExo.Al.Ly生成物、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Ly生成物をLC/MSを用いて分析した。全質量数のシグナルの積算であるトータルイオンクロマトグラム(TIC)と、アルギン酸リアーゼの分解により生成するアルギン酸の単糖(DEH)の脱プロトン化した質量数を指定した選択的イオンモニタリング(SIM)のネガティブモード(m/z=175)による測定を行った。
LC/MSの詳細な分析条件は、下記の通りであった。
(i)LC/MS条件
カラム:Shodex IC NI-424(内径4.6 mm x 長さ100 mm)
移動相:0.1%ギ酸含有40 mMギ酸アンモニウム緩衝液
流速:0.5 mL/min
カラムオーブン:40℃
LC-MS:アジレント1260HPLC+アジレント6120シングル四重極質量分析装置
イオン化法:ESI/APCIマルチモード,ネガティブ測定
MS条件:dry gas: 12.0 L/min,nebulizer: 35 psi,dry temperature: 250℃,vapolizer:200℃,スキャン範囲:m/z 100からm/z 1000
(ii)DEHの同定
LC-MSのSIMモード(選択的イオンモニタリングモード)のネガティブ測定で,m/z 175(DEHの脱プロトン化したイオン[M-H]-に相当)を指定した。TIC(サンプル中に含まれる全ての化合物を検出)で検出されたピークとSIMモードで検出されたピークとの保持時間が完全に一致したため、Exo.Al.Lyの分解産物と、Exo.Al.Ly及びEndo.Aly.Lyの分解産物がDEHであると同定した。

【0037】
(5)基質特異性の確認
1.0%(w/v)のポリβ-D-マンヌロン酸(polyM)またはポリα-L-グルロン酸(polyG)を基質とする基質溶液10 mLに0.20 mg/mLのEndo.Al.Lyを1 mL加えたもの、0.20 mg/mLのExo.Al.Lyを1 mL加えたもの、及びEndo.Al.LyとExo.Al.Lyとを各1.0 mLずつ加えたものの計3通りの酵素の組み合わせによる反応液を37 ℃で3日間反応させた。
その後の処理は、上記「(2)酵素反応」及び「(3)薄層クロマトグラフィー(TLC)による生成物の検出」と同様の処理を行った。

【0038】
2.試験結果
(1)酵素活性の確認
時間経過に伴う235 nmにおける吸光度の変化をグラフ化したものを図9に示した。更に、反応開始から24時間後、48時間後に吸光度をした結果、Endo.Al.Lyでは24時間後に40.7、48時間後に51.2であり、Exo.Al.Lyでは24時間後に1.37、48時間後に1.58であった。図9から、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyのどちらの反応液も酵素反応開始後、時間経過に伴い235 nmにおける吸光度が上昇したことから、各酵素は基質であるアルギン酸ナトリウムを不飽和糖に分解する活性があることが確認できた。また、Endo.Al.Lyでは24時間後、48時間後にも吸光度の上昇を示したが、Exo.Al.Lyでは下降を示した。これは、エンド型のEndo.Al.Lyではリアーゼの脱離反応により、不飽和糖を生成し続けているのに対し、エキソ型のExo.Al.Lyでは末端から順に不飽和ウロン酸残基を切断していき、精製した不飽和単糖が開環し、DEHになり、不飽和二重結合が開裂したためであると考えられた。

【0039】
(2)酵素反応
Endo.Al.Lyのみ、Exo.Al.Lyのみ、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyの混合による3通りの酵素の組み合わせによる反応液を用意し、これらを3日間反応させ、限外濾過、凍結乾燥処理し、粉末状の生成物を得た。緩衝液(20 mM Tris-HCl)分の重量を差し引いた結果、生成物の収量は、Endo.Al.Lyのみでは16.4 mg、Exo.Al.Lyのみでは64.0 mg、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyの組み合わせでは83.8 mgであった。酵素反応に用いた基質は各100 mgであることから、収率はそれぞれ16.4 %、64.0 %、83.8 %であった。なお、Endo.Al.LYの添加量を同量とし、Exo.Al.Lyの添加量を2倍または3倍量としたところ、収率は上記とほぼ同様(85%程度)であった。
Saccharophagus degradans由来のエンド型アルギン酸リアーゼAlg7D(PL7)とエキソ型アルギン酸リアーゼAlg17C(PL17)によるアルギン酸ナトリウムを基質とした酵素反応の結果、DEHを45.5 %の収率で得られたと報告されている(非特許文献6)。しかし、本研究における、Endo.Al.LyとExo.Al.Lyの組み合わせによる酵素反応ではその約1.8倍高い値である83.8 %の収率でDEHを得ることができた。

【0040】
(3)薄層クロマトグラフィー(TLC)による生成物の検出
Endo.Al.Lyのみ、Exo.Al.Lyのみ、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyの混合による酵素反応で得られた生成物について、TLCを行うことでスポット検出し、生成物の分解度を確認した。TLCの結果を図10に示した。Endo.Al.Lyによる生成物は、二糖の指標であるマルトースよりも低い位置に2つ重なったようなスポットが確認できた。このことと、上記(1)での結果(すなわち、235 nmでの吸光度の上昇)から、Endo.Al.Lyの生成物はアルギン酸不飽和オリゴ糖であったと考えられた。Exo.Al.Lyの生成物は単糖の指標であるグルコースと同等の位置に単一のスポットを検出した。また、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyの両方を用いた際の生成物もグルコースと同じ位置に濃いスポットを検出した。こちらはスポットのテーリングが認められた。テーリングを示した原因として、生成物であるDEHの濃度が高かったために、溶媒による展開がしきれていなかったためであると考えられた。

【0041】
(4)LC/MS分析による生成物の同定
Exo.Al.Lyのみによる生成物をLC/MSを用いて、TIC及びSIMモードで測定した結果を図11に示した。TICの結果において、1.8 min付近に認められる小さなピークは、移動相由来のものであった。このため、生成物のピークは3.2 min付近の1ピークであることが確認できた。また、DEHの脱プロトン化した質量数を指定したSIMモードでの測定結果において、3.2 min付近に1ピークのみ確認できた。SIMモードでは、質量数を指定した測定を行っていることから、DEHによるピークであると判断した。また、TICのピークと保持時間が完全に一致していることと、TICのピークが1ピークであることから、Exo.Al.Lyの生成物はDEHのみであると判断した。また、陰イオン分析用カラムとして、Shodex IC NI-424に代えて、Shodex IC I-524Aを用いたところ、LCにおいてグラジエント条件を使用することなく、同様の結果が得られた。このため、市販の陰イオン分析用カラムを用いれば、同様の結果が得られるものと考えられた。
次に、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyを用いたときの生成物をLC/MSを用いて、TIC及びSIMモードで測定した結果を図12に示した。この測定結果は、Exo.Al.Lyの生成物をTICとSIMモードで測定した結果(図11)とほぼ同じであることを確認した。従って、Endo.Al.Ly及びExo.Al.Lyの両方を用いた生成物もDEHのみであると判断した。

【0042】
(5)基質特異性の確認
Endo.Al.Ly、Exo.Al.Ly及び両酵素をpolyMまたはpolyGを基質として作用させたところ、いずれの基質についても同様の分解活性を示した。従来のアルギン酸リアーゼはpolyMまたはpolyGに対して、特異的な反応を示すことがある。しかしながら、本実施形態のアルギン酸リアーゼについては、両基質に対する特異性は認められず、ほぼ同等に反応することが分かった。
このように、本実施形態によれば、新規なエキソ型アルギン酸リアーゼ(Exo.Al.Ly)及びエンド型アルギン酸リアーゼ(Endo.Al.Ly)を大量に作製し、当該酵素を用いてアルギン酸から不飽和ウロン酸単糖(DEH)を製造する方法を提供できた。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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