TOP > 国内特許検索 > 魚病の予防及び治療剤 > 明細書

明細書 :魚病の予防及び治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-004195 (P2021-004195A)
公開日 令和3年1月14日(2021.1.14)
発明の名称または考案の名称 魚病の予防及び治療剤
国際特許分類 A61K  31/185       (2006.01)
A61K  31/14        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
FI A61K 31/185
A61K 31/14
A61P 31/04 171
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2019-117995 (P2019-117995)
出願日 令和元年6月26日(2019.6.26)
発明者または考案者 【氏名】木谷 洋一郎
【氏名】小坂 優斗
【氏名】鈴木 信雄
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査請求 未請求
テーマコード 4C206
Fターム 4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206JA04
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZB35
4C206ZC65
要約 【課題】低濃度で環境負荷が低く、操作安全性にも優れた魚病の予防及び治療剤の提供を目的とする。
【解決手段】魚類における魚病の感染予防又は治療に用いるための、モノアルキル硫酸エステルの塩又は塩化ベンザルコニウムを含有することを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
魚類における魚病の感染予防又は治療に用いるための、モノアルキル硫酸エステルの塩又は塩化ベンザルコニウムを含有する、魚病の予防及び治療剤。
【請求項2】
前記モノアルキル硫酸エステルの塩はラウリル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸アンモニウムである、請求項1記載の魚病の予防及び治療剤。
【請求項3】
魚類に有しているL-アミノ酸オキシダーゼを活性化することで、抗菌活性が得られるものである、請求項1又は2に記載の魚病の予防及び治療剤。
【請求項4】
魚類の飼育水に請求項1~3のいずれかの記載の魚病の予防及び治療剤を0.5~5mMの濃度になるように添加することを特徴とする、魚病の予防及び治療方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は魚類を細菌感染症等の疾病から予防あるいは、その治療に有効な魚病の予防及び治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖場や水族館等においては飼育密度が高く、魚類が魚病に感染しやすく、その予防や治療が重要となる。
現在、疾病予防に対するワクチンが使用され、治療に各種抗生物質等が使用されているが、投与等の操作が煩雑であり、耐性菌の発生も問題となる。
【0003】
特許文献1には、藻類の抽出物と乳酸球菌又はポリフェノールを含有する魚類の感染予防・治療剤を開示する。
しかし、同公報に開示する予防・治療剤は比較的高濃度であるとともに、経口法,薬浴法を用いるものであり、投与操作が大変である。
【0004】
これに対して本発明者らは、魚類が本来持っている生体防御機構を利用した魚病対策を検討した。
例えば、本発明者らが研究成果として発表した非特許文献1に開示するように、魚類の体表粘液から抗菌タンパク質としてL-アミノ酸オキシダーゼ(LAO)が同定され、血清中からもL-アミノ酸オキシダーゼが同定されている。
キジハタ血清中のLAOは約450kDaで約70kDaサブユニットの6量体であることが示唆されている。
このLAOは過酸化水素を介して抗菌活性を示すものと推定されることから、このLAO活性を刺激し、増強できる物質が得られれば、魚病対策に有効であると検討した結果、本発明に至った。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-307346号公報
【0006】

【非特許文献1】木谷洋一郎,小坂優斗,「キジハタEpinephelus akaara血清に含まれるL-アミノ酸オキシダーゼについて」平成30年度日本水産学会春季大会,東京海洋大学,東京都(2018.3.26-30)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低濃度で環境負荷が低く、操作安全性にも優れた魚病の予防及び治療剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る魚病の予防及び治療剤は、魚類における魚病の感染予防又は治療に用いるための、モノアルキル硫酸エステルの塩又は塩化ベンザルコニウムを含有する。
ここで、前記モノアルキル硫酸エステルの塩はラウリル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸アンモニウムであるのが好ましい。
【0009】
モノアルキル硫酸エステルの塩は、陰イオン性に属する界面活性剤である。
ラウリル硫酸ナトリウムは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とも称され、比較的保存安定性に優れ、人に対する安全性も高い。
塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)は、陽イオン界面活性剤の一種である。
【0010】
本発明に係る魚病の予防及び治療剤の作用を以下、説明する。
魚類の表皮細胞や血清中に生体防御物質としてL-アミノ酸オキシダーゼ(LAO)を有し、このLAOは図8に示すように基質L-アミノ酸に作用して過酸化水素を産生し、この過酸化水素より抗菌作用が生じるものと推定される。
図1にて「FAD」は、フラビンアデニンジヌクレオチドの略であり、酸化還元反応の補因子である。
本発明に係る魚病の予防及び治療剤は、このLAOの活性を刺激し、抗菌活性が増強されるものと推定される。
詳細は後述するが、本発明に係る薬剤は0.5~5mM程度の極薄い濃度で抗菌活性効果が認められる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る魚類の細菌感染症を予防及び治療するための薬剤は、使用する濃度が薄いので環境負荷が低い。
また、これらは陰イオン性又は陽イオンの界面活性剤でもあることから、長期保存が可能であり、取り扱い時の人に対する安全性にも問題がない。
また、水槽内で使用した場合には、この水槽内の洗浄作用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】魚病細菌Vibrio anguillarum及びAeromonas salmonicidaに対する抗菌活性試験結果を示す。
【図2】SDS濃度に対するLAO活性の試験結果を示す。
【図3】NaCl濃度に対するLAO活性の試験結果を示す。
【図4】SDS濃度に対するLAO活性の試験結果その2を示す。
【図5】SDS濃度に対するLAO活性の試験結果その3を示す。
【図6】ラウリル硫酸アンモニウム濃度に対するLAO活性の試験結果を示す。
【図7】塩化ベンザルコニウム濃度に対するLAO活性の試験結果を示す。
【図8】LAOが抗菌活性を示す反応系の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る魚病の予防及び治療剤の抗菌活性について試験評価したので以下、説明する。
キジハタ血清にはL-アミノ酸オキシダーゼ(以下、必要に応じて単にLAOと表現する)が含まれ、このLAOがL-アミノ酸基質に作用することで過酸化水素を介した抗菌活性を示す。
そこで、次のような試験を実施した。
ミューラーヒントン培地(NaCl不含)にキジハタ血清の2倍段階希釈系列を調製し、同培地で1×10に調整した魚病細菌Vibrio anguillarumまたはAeromonas salmonicidaを加えた。
これを基本とし、培地中に終濃度0.04%となるようにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えた群、これに終濃度20unit/mLとなるようにカタラーゼを加えた群、同濃度のカタラーゼのみを加えた群を同時に培養した。
カタラーゼはキジハタ血清中に含まれるL-アミノ酸オキシダーゼが産生する過酸化水素の消尽を目的として加えた。
これらを20℃で16時間培養後、細菌の増殖が抑えられていると、培地に濁りが生じないことから、培地の混濁を目視で認めない最大希釈倍率を抗菌活性の値として評価した。
その結果、図1に示すようにVibrio anguillarumに対してSDS添加群における抗菌活性は4096倍以上を示したが、そのほかの群における抗菌活性は検出されなかった。
また、Aeromonas salmonicidaに対してはSDS添加群の抗菌活性は2048倍を示し、SDSとカタラーゼを同時に添加した群では抗菌活性が認められなかった。
試薬不添加群およびカタラーゼのみ添加群で32倍の抗菌活性を示したが、これはSDSで不活化するそのほかの抗菌物質によるものであると予想された。
以上の結果から、キジハタ血清はSDSで抗菌活性が増強し、かつカタラーゼ添加でその活性が減少することが確かめられた。
すなわち、血清単体もしくはSDS単体では抗菌活性を示さないが、血清中にSDSが存在することで過酸化水素を介した強力な抗菌作用を示すことが確認された。

【0014】
次に、いろいろな試薬を用いてLAO活性を評価したので以下、説明する。

【0015】
これまでに本発明者らにより、NaClの添加によりLAO活性の増強が認められることから、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とNaClの濃度を変化させながら、それらを比較評価した。
<LAO活性の測定方法>
適宜1M Tris-HCl緩衝液(pH7.5)で希釈した血清25マイクロリットルに塩化ナトリウム水溶液もしくはドデシル硫酸ナトリウム水溶液25マイクロリットルを終濃度0-2Mもしくは0-1.4mMとなるよう加えた。
次にオルトフェニレンジアミン0.25mg/mLおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ0.01unit/mLを含む1M Tris-HCl緩衝液(pH7.5)50マイクロリットルを加え150分間37℃で反応させた。
反応後、100マイクロリットルの1M硫酸を加え反応を停止させ、分光光度計で492nmの吸光度を測定した。
活性の評価には0-0.5mMに段階希釈した過酸化水素を試料として測定し、検量線から得られた過酸化水素産生量と反応時間から活性(unit)を推定した。

【0016】
図2にSDS濃度変化に対するLAO活性を示し、図3にNaCl濃度変化に対するLAO活性を示す。
図2と図3とを比較すると、NaClは0.5Mの濃度以上にしないと、LAO活性が高活性にならないのに対して、SDSは0.5mM~1.4mMの薄い濃度、即ちNaClの約1/1000以下の低濃度にて、LAOが高活性を示した。

【0017】
図4及び図5は、SDSが高濃度になった場合のLAO活性を確認したものである。
図4は、SDSの1.4mM以下の低濃度におけるLAO活性変化であり、図5は140mMまで高濃度側に変化させたグラフである。
その結果、SDS濃度は0.5mM~5mM程度の薄い濃度範囲がよく、10mMを超えると、逆にLAO活性が低下した。

【0018】
図6は、ラウリル硫酸アンモニウムの濃度変化に対するLAO活性変化の測定結果を示す。
この結果から、ラルリル硫酸アンモニウムもSDSと同様のLAO活性作用を示した。
図7は、塩化ベンザルコニウムの濃度変化に対するLAO活性変化の測定結果を示す。
塩化ベンザルコニウムは、陽イオン界面活性剤の一種であるが、0.01~0.04%の低濃度でLAOの活性を示した。

【0019】
次に、いろいろな試薬を用いてLAO活性を評価した。
その結果、以下の試薬ではLAO活性が認められなかった。
(1)SDS及びラウリル硫酸アンモニウムは、陰イオン性に属する界面活性剤としても使用されていることから、非イオン性の界面活性剤に属する商品名TritonX-100{29-[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノキシ]-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサノナコサン-1-オール},及び商品名Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)を0~2%の濃度範囲で評価したが、LAO活性化作用は微弱であった。
(2)陽イオン性の界面活性剤に属する塩化セチルピリジニウムを評価したが、これはLAO活性を示さなかった。
(3)その他に、尿素,塩化テトラメチルアンモニウムを評価したが、LAO活性化作用は有していなかった。

【0020】
以上のことからLAO活性を刺激し、抗菌活性を増強するにはモノアルキル硫酸エステルの塩又は塩化ベンザルコニウムを用いるのが効果的であることが明らかになった。
上記のモノアルキルは炭素数8以上、好ましくは12以上である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7