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明細書 :スーパーコンティニュアム光源

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-067804 (P2017-067804A)
公開日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 スーパーコンティニュアム光源
国際特許分類 G02F   1/365       (2006.01)
H01S   3/067       (2006.01)
H01S   3/10        (2006.01)
G02B   6/024       (2006.01)
G02B   6/02        (2006.01)
G02B   6/26        (2006.01)
FI G02F 1/365
H01S 3/067
H01S 3/10 Z
G02B 6/024
G02B 6/02 376A
G02B 6/02 411
G02B 6/26 321
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2015-189265 (P2015-189265)
出願日 平成27年9月28日(2015.9.28)
発明者または考案者 【氏名】西澤 典彦
【氏名】宮地 光彦
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【識別番号】508016295
【氏名又は名称】NUシステム株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100087723、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 修
【識別番号】100165962、【弁理士】、【氏名又は名称】一色 昭則
審査請求 未請求
テーマコード 2H137
2H150
2K102
5F172
Fターム 2H137AB01
2H137BA01
2H137BC16
2H150AC37
2H150AC43
2H150AE24
2H150AF15
2H150AH15
2H150AH33
2H150AH50
2K102AA05
2K102BA20
2K102BA21
2K102BB02
2K102BB03
2K102BC02
2K102BD09
2K102DA06
2K102EB06
2K102EB11
2K102EB20
2K102EB24
2K102EB25
5F172AF03
5F172AM08
5F172CC04
5F172DD03
5F172EE13
5F172NN12
5F172NN28
5F172NQ53
5F172NR12
5F172NR14
5F172NS05
5F172NS26
要約 【課題】スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルを安定化すること。
【解決手段】図1のように、スーパーコンティニュアム光源は、ファイバーレーザー10と、ファイバーレーザー10からのソリトンパルスを増幅するファイバー増幅器20と、偏波保持型の波長シフトファイバー30と、波長シフトファイバー30からのソリトンパルスを非線形光学効果によりスーパーコンティニュアム光に変換して出力する偏波保持型の高非線形光ファイバー40と、を有している。ファイバー増幅器20は、正常分散特性を有した偏波保持型のEDF23を備えている。このような特性のEDF23を用いることで、偏波面およびパルス波形を保持したまま十分な強度までソリトンパルスを増幅することができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
スーパーコンティニュアム光を生成する光源であって、
励起光源と、前記励起光源からの連続光を入力するループ状に構成された第1の希土類ドープ光ファイバーとを有し、ループ状の光路中にカーボンナノ構造体を分散させたフィルムが挿入され、前記連続光を一方向に巡回させて、前記カーボンナノ構造体による可飽和特性を用いてパルスを発生させて出力するファイバーレーザーと、
前記ファイバーレーザーの出力する前記パルスを入力し、そのパルスを増幅する第2の希土類ドープファイバーを備えたファイバー増幅器と、
前記ファイバー増幅器の出力するパルスの中心波長を長波長側にシフトさせる偏波保持型の波長シフトファイバーと、
前記波長シフトファイバーの出力するパルスを入力して、非線形光学効果により、スーパーコンティニュアム光に変換する正常分散特性を有する高非線形光ファイバーと、
を有し、
前記第2の希土類ドープファイバーは、正常分散特性を有し、かつ偏波保持型である、
ことを特徴とするスーパーコンティニュアム光源。
【請求項2】
前記ファイバー増幅器、前記波長シフトファイバー、および前記高非線形光ファイバーを内部に保持し、その内部の温度を一定に保持する温度コントローラをさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載のスーパーコンティニュアム光源。
【請求項3】
前記ファイバー増幅器は、前記高非線形光ファイバーが出力するスーパーコンティニュアム光の強度に基づき、励起光の強度を制御する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスーパーコンティニュアム光源。
【請求項4】
前記第2の希土類ドープファイバーの分散値β2 は、前記ファイバーレーザーの出力するパルスの中心波長において0ps2 /kmより大きく+65ps2 /km以下である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスーパーコンティニュアム光源。
【請求項5】
前記スーパーコンティニュアム光は、中心波長が1.5μm以上1.9μm以下である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスーパーコンティニュアム光源。
【請求項6】
前記パルスは、ソリトンパルスであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のスーパーコンティニュアム光源。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲に連続したスペクトルを有したパルス光であるスーパーコンティニュアム光源に関する。
【背景技術】
【0002】
超短パルス光を高非線形光ファイバーに導入し、スーパーコンティニュアム光を発生させるスーパーコンティニュアム光源が知られている(たとえば特許文献1)。スーパーコンティニュアム光の波長帯域は数百nmに及ぶ。このような広帯域光は、光断層計測や分光計測などの先端光計測分野において非常に有用である。
【0003】
また、特許文献2には、正常分散の偏波保持型EDF(エルビウムドープファイバー)が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-063042号公報
【特許文献2】特開2011-18765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスーパーコンティニュアム光源は、ソリトンパルスの偏光方向が時間的に不安定なため、スーパーコンティニュアム光の出力を安定させるために長時間を要していた。また、スーパーコンティニュアム光のスペクトル波形についても時間的に変化し、安定していなかった。そのため、スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルのさらなる安定化を図る必要があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、スーパーコンティニュアム光源の出力を時間的に安定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スーパーコンティニュアム光を生成する光源であって、励起光源と、励起光源からの連続光を入力するループ状に構成された第1の希土類ドープ光ファイバーとを有し、ループ状の光路中にカーボンナノ構造体を分散させたフィルムが挿入され、連続光を一方向に巡回させて、カーボンナノ構造体による可飽和特性を用いてパルスを発生させて出力するファイバーレーザーと、ファイバーレーザーの出力するパルスを入力し、そのパルスを増幅する第2の希土類ドープファイバーを備えたファイバー増幅器と、ファイバー増幅器の出力するパルスの中心波長を長波長側にシフトさせる偏波保持型の波長シフトファイバーと、波長シフトファイバーの出力するパルスを入力して、非線形光学効果により、スーパーコンティニュアム光に変換する正常分散特性を有する高非線形光ファイバーと、を有し、第2の希土類ドープファイバーは、正常分散特性を有し、かつ偏波保持型である、ことを特徴とするスーパーコンティニュアム光源である。
【0008】
本発明において、ファイバー増幅器、波長シフトファイバー、および高非線形光ファイバーを内部に保持し、その内部の温度を一定に保持する温度コントローラをさらに有していてもよい。スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルのさらなる安定化を図ることができる。
【0009】
また、本発明において、ファイバー増幅器は、高非線形光ファイバーが出力するスーパーコンティニュアム光の強度に基づき、励起光の強度を制御するものであってもよい。このようなフィードバック制御をすることにより、スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルをさらに安定化させることができる。
【0010】
本発明は、スーパーコンティニュアム光の中心波長が1.5μm以上1.9μm以下の帯域に存在するものにおいて特に有効である。そのようなスーパーコンティニュアム光は、従来、出力やスペクトルを安定にすることが困難であったが、本発明によればそのようなスーパーコンティニュアム光も出力やスペクトルを安定化することができる。さらに望ましいのは、スーパーコンティニュアム光の中心波長が1.5μm以上1.7μm以下の場合である。
【0011】
本発明の第2の希土類ドープファイバーは、ファイバーレーザーの出力するパルスの中心波長において分散値β2 が0ps2 /kmより大きく+65ps2 /km以下であるとよい。分散値β2 がこの範囲外であると、パルス波形を保持したまま十分な強度まで増幅することが難しくなるためである。さらに望ましくは+5ps2 /km以上+60ps2 /km以下である。
また、さらに望ましくはパルスがソリトンパルスである。この場合、高い効率でスーパーコンティニュアム光を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2の希土類ドープファイバーとして正常分散特性を有した偏波保持型のものを用いているため、偏波面およびパルス波形を保持したままパルスを増幅することができ、スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルの時間的安定性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のスーパーコンティニュアム光源の構成を示した図。
【図2】ファイバーレーザー10の構成を示した図。
【図3】実施例2のスーパーコンティニュアム光源の構成を示した図。
【図4】変形例のスーパーコンティニュアム光源の構成を示した図。
【図5】実施例1のスーパーコンティニュアム光源のスーパーコンティニュアム光のスペクトルを示したグラフ。
【図6】比較例のスーパーコンティニュアム光源のスーパーコンティニュアム光のスペクトルを示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1のスーパーコンティニュアム光源の構成を示した図である。実施例1のスーパーコンティニュアム光源は、ファイバーレーザー10と、ファイバー増幅器20と、波長シフトファイバー30と、高非線形光ファイバー40と、を有している。
【実施例1】
【0016】
[ファイバーレーザー10の構成]
ファイバーレーザー10は、図2に示すように、リング型レーザ発振器であり、偏波保持型のエルビウムドープファイバー(EDF)11と、樹脂フィルム12と、偏波保持型の光アイソレータ13と、励起光源14と、偏波保持型の光カプラ15、16とを備えている。
本実施例では、リング型レーザ発振器の全分散値の総和が負になるように設定されており、ソリトンパルスが発生する。なお、リング型レーザ発振器の全分散値の総和をゼロとした場合は、ストレッチパルスとなり、正とした場合には、散逸性ソリトンパルスとなる。ファイバーレーザー10は、必ずしもソリトンパルスを発生させるものでなくともよいが、ストレッチパルスや散逸性ソリトンパルスと比較して、ソリトンパルスを用いた方が高い効率でスーパーコンティニュアム光を得ることができる。
【実施例1】
【0017】
また、光カプラ15、EDF11、光アイソレータ13、光カプラ16、樹脂フィルム12、の順に接続され、そして再び光カプラ15に接続されてリング型の共振器を構成している。これらを接続する光ファイバーも偏波保持型のものを用いている。
【実施例1】
【0018】
EDF11は、偏波保持型であり、たとえばPANDA型の構造である。EDF11の発振するレーザ光の中心波長は1558nmであり、その長さは3.5mである。EDF11は、後述するファイバー増幅器20のEDF23と同一構成、同一特性のものを用いてもよい。
【実施例1】
【0019】
樹脂フィルム12は、樹脂材にカーボンナノチューブが混合されて拡散されたものである。カーボンナノチューブは可飽和吸収体であり、1560nm帯の光に対して、強度の低い光が入射したときは吸収し、強度の高い光が入射したときは透過する可飽和吸収特性を有する。カーボンナノチューブは製造方法によってその構造などが異なり、吸収スペクトルも異なるため、所望のスーパーコンティニュアム光の特性に応じて、カーボンナノチューブの製造方法も選択するとよい。カーボンナノチューブ以外のカーボンナノ構造体を用いてもよい。たとえば、グラフェンが壁状に単層、多層に形成されたカーボンナノウォール、フラーレン、グラフェンなどである。本実施例では、カーボンナノチューブ粉末をポリイミドフィルムに混合して拡散したものを用いた。
【実施例1】
【0020】
樹脂フィルム12およびそれに接続する光ファイバーのコネクタ部分は、窒素や希ガスなどの不活性ガスの雰囲気とするか、あるいは真空とするのがよい。樹脂フィルム12中のカーボンナノチューブが酸化などによって劣化し、その結果ファイバーレーザー10からのソリトンパルスの出力が経時的に変動してしまうのを抑制することができる。
【実施例1】
【0021】
励起光源14は、波長980nmのレーザーダイオードである。励起光源14の出力する連続光は、光カプラ15を介して、光ファイバー11に入力される。また、連続光は、光アイソレータ13により、光ファイバー11の中を一方向にのみ循環する。
【実施例1】
【0022】
このファイバーレーザー10では、以下のように動作してパルス光を出力する。発振するレーザ光の振幅は雑音成分により時間的に高周波数で変動しているために、瞬時的に透明となる閾値を越える瞬間の光だけがカーボンナノチューブで吸収されずに、通過することになり、パルス光となる。このパルス光がリング型の共振器を巡回する連続光に重畳されて、誘導放出が促進されてそのパルス光の強度が大きくなり、さらに、カーボンナノチューブを透過し易くなる。このようにしてパルス光が正帰還により成長し、リング型の共振器を巡回する間に、カーボンナノチューブによる可飽和特性と、ファイバ非線形効果と、波長分散効果によって安定したソリトンパルスとなる。また、ファイバーレーザー10は、その光路が樹脂フィルム12を除いて全て偏波保持型のもので構成されているため、ソリトンパルスの偏光方向が時間的に安定している。
【実施例1】
【0023】
このソリトンパルスは、分岐比が50%の光カプラ16により分離されて、偏波保持ファイバー17を介して出力される。そして、偏波保持型の光アイソレータ21を介した後、パルス拡幅ファイバー22に入力される。パルス拡幅ファイバー22は、ソリトンパルスのパルス幅をやや拡大して、波形を成形するためのシングルモードファイバーである。また、パルス拡幅ファイバー22は偏波保持型であり、たとえばPANDA型の構造である。このパルス拡幅ファイバー22は必ずしも必要ではないが、後段のファイバー増幅器20によって効率的にソリトンパルスを増幅させるために設けることが望ましい。
【実施例1】
【0024】
[ファイバー増幅器20の構成]
ファイバー増幅器20は、偏波保持型のEDF23と、偏波保持型の光カプラ24と、励起光源25とを備えている。図1のように、パルス拡幅ファイバー22の出力端は、光カプラ24の2つの入力端の一方に接続されている。また、光カプラ24の他方の入力端は励起光源25に接続されている。励起光源25は、波長1480nmのレーザー光である励起光を出力するレーザーダイオードである。光カプラ24は、パルス拡幅ファイバー22からのソリトンパルスと励起光源25からの励起光を合波して出力する。光カプラ24の出力端は、EDF23の入力端に接続されている。また、EDF23の出力端は、光アイソレータ31の入力端に接続されている。
【実施例1】
【0025】
EDF23は、偏波保持型であり、たとえばPANDA型の構造である。また、EDF23は、ソリトンパルスの波長帯(すなわち中心波長をλ0、半値幅をΔλとして、λ0-Δλからλ0+Δλの波長帯域)で正常分散特性を有している。また、EDF23は、モードフィールド径が5.7μm、波長1530nmにおける光吸光度が96dB/m、分散値β2 が35ps2 /kmのものを用いた。このような分散特性を有するEDF23は、その構造や材料を調整し、構造分散や材料分散を調整することで得られる。
【実施例1】
【0026】
ファイバーレーザー10の出力するソリトンパルスの中心波長(本実施例では1530nm)における分散値β2 は上記値に限るものではなく、0ps2 /kmより大きければ任意の値でよい。ただし、分散値β2 は0ps2 /kmより大きく+65ps2 /km以下とすることが望ましい。分散値β2 がこの範囲外であると、パルス波形を保持したまま十分な強度まで増幅することが難しくなるためである。さらに望ましくは+5ps2 /km以上+60ps2 /km以下である。
【実施例1】
【0027】
偏波保持型のEDFを用いてソリトンパルスを増幅する場合、従来のスーパーコンティニュアム光源で用いられていた異常分散特性の偏波保持型EDFでは、パルス波形を保ったまま十分な強度まで増幅することはできなかったが、正常分散特性を有した偏波保持型のEDF23を用いることで、偏波面およびパルス波形を保持したまま十分な強度まで増幅することができる。異常分散特性のEDFを用いるとソリトンパルスをうまく増幅できない理由は、異常分散ではパルス幅を圧縮する方向に作用するためであると考えられる。一方、正常分散特性のEDF23を用いるとパルス波形を保ったまま増幅できる理由は、正常分散では、パルス幅を拡張する方向に作用するため、EDF23中を伝搬するパルスはシミラリトンパルスとして伝搬していると考えられ、シミラリトンパルスは相似形を保持して伝搬するので、パルスの放物線形状とリニアチャープ特性を保持したまま増幅でき、その結果、良好なパルス波形を保ったまま増幅できるものと考えられる。
【実施例1】
【0028】
また、従来はファイバー増幅器に励起光源を2つ設けて十分な増幅を図っていたが、実施例1のファイバー増幅器20は上記のように正常分散特性のEDF23を用いているため、エルビウムのドープ量を高濃度とすることができ、励起光源25を1つ設けるのみで十分に増幅することができ、構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。励起光の吸収の大きさは、40dB/m~140dB/mとするのが望ましい。この範囲であれば、励起光源25が1つでも十分な増幅が可能となる。より望ましい励起光の吸収の大きさは70dB/m~120dB/mである。
【実施例1】
【0029】
なお、このファイバー増幅器20による増幅において、パルス幅は多少広くなる。そのため、ファイバー増幅器20の後段に、補償ファイバーを用いても良い。補償ファイバーには、単一モードファイバか、LMA-PCF( 大口径フォトニック結晶ファイバー) を用いると良い。このファイバーは、異常分散のファイバーで、パルス幅を小さくするようにして、ファイバー増幅器でのパルス幅の拡大を補償するものである。
【実施例1】
【0030】
[波長シフトファイバー30の構成]
波長シフトファイバー30の入力端は、偏波保持型の光アイソレータ31の出力端に接続され、波長シフトファイバー30の出力端は、フィルタ32に接続されている。波長シフトファイバー30は、偏波保持型(たとえばPANDA型)の構造のシングルモードファイバーであり、ソリトンパルスの波長帯で異常分散の特性を持つ。ファイバー中で誘起される非線形効果によって、強度が高いほどより長波長側にソリトンパルスの中心波長がシフトする。また、ファイバー長が長い方が波長がより長波長側にシフトするが、パルス幅が広がるため、適切な長さに調節されている。また、光アイソレータ31の両端は偏波保持型の光ファイバーを直結し、波長シフトファイバー30と光アイソレータ31は偏波保持型の光ファイバーで直結する構造となっている。また、ファイバーレーザー10から波長シフトファイバー30の出力端までは、全光伝送路が偏波保持型の光ファイバーで直結されており、レンズなどの空間伝搬部が排除されている。これにより、出力されるスーパーコンティニュアム光の安定化を図っている。
【実施例1】
【0031】
波長シフトファイバー30の出力端は、フィルタ32を介して高非線形光ファバー40に接続されている。フィルタ32は、入力側から順に、波長シフトファイバー30の出力端と接続する光ファイバーと、レンズと、所定の波長のみを透過させる光学フィルタと、レンズと、高非線形光ファイバー40の入力端と接続する光ファイバーと、で構成されている(いずれも図示しない)。そのうち、光ファイバーは偏波保持型であり、たとえばPANDA型の構造である。従来はレンズと光学フィルタとの間にλ/2板とλ/4板を設けていたが、実施例1のスーパーコンティニュアム光源は光路が偏波保持型で構成されているため、必要としない。そのため、フィルタ32の構成は従来よりも簡素とすることができ、低コスト化を図ることができる。
【実施例1】
【0032】
[高非線形光ファイバー40の構成]
高非線形光ファイバー40の入力端は、フィルタ32の出力端と接続されている。また、使用性を向上させるために、高非線形光ファイバー40の出力端に、シングルモードファイバー41が接続されている。高非線形光ファイバー40は、入力するソリトンパルスの中心波長を基準に±200nmの範囲内の波長において、分散が零である正常分散高非線形ファイバー(ND-HNLF)である。正常分散高非線形ファイバーとしては、非線形性γが23W-1km-1、長さ5mのファイバーを用いた。
【実施例1】
【0033】
高非線形光ファイバー40は、入力するソリトンパルスの中心波長を基準に±200nmの範囲内の波長において、分散値β2 が0ps2 /km以上、12ps2 /km以下である正常分散高非線形ファイバーを用いるとよい。また、非線形係数は、10W-1km-1以上が好ましく、20W-1km-1以上がより好ましい。また、この高非線形光ファイバー40への光の入射は、レンズで絞って行ってもよい。
【実施例1】
【0034】
高非線形光ファイバー40に入力されたソリトンパルスは、高非線形光ファイバー40の非線形光学効果によりスペクトル幅が拡張され、スーパーコンティニュアム光に変換される。そして、高非線形光ファイバー40の出力端から、スーパーコンティニュアム光が出力される。スーパーコンティニュアム光の中心波長、および半値幅は、ファイバー増幅器20の励起光源25の駆動電流によって調整することができ、駆動電流が1100~1500mAの範囲において、中心波長は1700~1750nm、半値幅は200~250nmであった。
【実施例1】
【0035】
ファイバーレーザー10の出力端から高非線形光ファイバー40の入力端までの間の光路のどこかに、偏光子を設け、直線偏光のみを透過させるようにしてもよい。たとえば、フィルタ32と高非線形光ファイバー40のとの間に偏光子を挿入してもよい。偏光方向が時間的により安定化するため、高非線形光ファイバー40から出力されるスーパーコンティニュアム光のさらなる安定化を図ることができる。
【実施例1】
【0036】
なお、パルス拡幅ファイバー22、EDF23、波長シフトファイバー30の長さ、光カプラ24やフィルタ32の光ファイバー部分の長さを適宜調整することで、ソリトンパルスのパルス幅を調整することができ、スーパーコンティニュアム光をより安定化させることができる。
【実施例1】
【0037】
以上のように、実施例1のスーパーコンティニュアム光源は、ファイバーレーザー10から高非線形光ファイバー40までの光路をフィルタ32を除いて全て偏波保持構造で構成しているため、偏波面が時間的に安定している。さらにEDF23として正常分散の偏波保持型を使用しているため、偏波面およびパルス波形を保持したままソリトンパルスを効率的に増幅することができる。その結果、スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルを短期に安定化させることができ、かつ長時間安定させることができる。また、光路を全て偏波保持構造としているため偏光方向が保持されるので、従来のスーパーコンティニュアム光源で必要とした偏波コントローラなどを省くことができ、構成の簡略化、低コスト化を図ることができる。
【実施例1】
【0038】
次に、実施例1のスーパーコンティニュアム光源に関する各種実験結果について説明する。
【実施例1】
【0039】
図5は、実施例1のスーパーコンティニュアム光源からのスーパーコンティニュアム光のスペクトルを測定した結果を示したグラフである。スペクトルは、動作開始から15分ごとに60分後まで測定した。図5のように、1時間の長い間、スペクトルはほとんど変化しておらず、ほぼ一定の形状を保っており、実施例1のスーパーコンティニュアム光源によれば、スペクトルが時間的に非常に安定したスーパーコンティニュアム光を得られることがわかる。また、安定するまでの時間も非常に短いことがわかる。
【実施例1】
【0040】
図6は、比較例のスーパーコンティニュアム光源からのスーパーコンティニュアム光のスペクトルを測定した結果を示したグラフである。スペクトルは、動作開始から15分ごとに60分後まで測定した。比較例のスーパーコンティニュアム光源は、実施例1のスーパーコンティニュアム光源におけるファイバー増幅器20のEDF23を、正常分散の偏波保持型のものから正常分散の非偏波保持型のものに置き換え、EDF23より後段の偏波保持型のファイバーを非偏波保持型に置き換えたものであり、他の構成は実施例1のスーパーコンティニュアム光源と同様の構成である。
【実施例1】
【0041】
図6のように、動作開始から30分後まではスペクトル形状が時間的にやや不安定であり、ばらつきを有していることがわかる。また、45分後は、1610nm付近の波長帯以外は出力が大きく低下していることがわかる。また、60分後は、45分後に比べて出力がおよそ回復するものの、1350~1450nmの帯域は出力が低下したままであり、他の帯域も出力にばらつきがある。このように、比較例のスーパーコンティニュアム光源からのスーパーコンティニュアム光は、スペクトル形状が時間的に安定していないことがわかる。
【実施例2】
【0042】
図3は、実施例2のスーパーコンティニュアム光源の構成を示した図である。実施例2のスーパーコンティニュアム光源は、実施例1のスーパーコンティニュアム光源に光カプラ200とスペクトル測定装置201と、をさらに設け、ファイバー増幅器20の励起光源25を、励起光源205に置き換えたものである。
【実施例2】
【0043】
光カプラ200は、高非線形光ファイバー40の出力端に接続されていて、スーパーコンティニュアム光の一部を分岐させて出力させ、残りの大部分はそのまま出力させるものである。分岐比は、たとえば1~20%である。光カプラ200の光ファイバー部分はシングルモードファイバーである。
【実施例2】
【0044】
スペクトル測定装置201は、光カプラ200の分岐側の出力端に接続されており、スーパーコンティニュアム光が入力される。そして、スペクトル測定装置201はスーパーコンティニュアム光のスペクトル、すなわち波長ごとの強度分布を計測する。
【実施例2】
【0045】
励起光源205は、スペクトル測定装置201に接続されている。励起光源205は、スペクトル測定装置201によって測定したスーパーコンティニュアム光のスペクトルに基づき、出力する励起光の強度を制御する。励起光源205のその他の構成、機能については励起光源25と同様である。
【実施例2】
【0046】
実施例2のスーパーコンティニュアム光源は、スーパーコンティニュアム光の強度によってファイバー増幅器20の励起光の強度をフィードバック制御することで、スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルをさらに安定化させることができる。
【実施例2】
【0047】
[各種変形例]
実施例1、2のスーパーコンティニュアム光源において、スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルのさらなる安定化のために、全体もしくは一部を温度コントローラの内部に配置し、その内部の温度を一定に保持するようにしてもよい。一部を配置する場合は、ファイバー増幅器20、波長シフトファイバー30、および高非線形光ファイバー40は少なくとも温度コントローラの内部に配置するとよい。温度コントローラは、たとえば窓部を有した筐体と、窓部を介して筐体内部と外部との間の排気、吸気を行うファンを有し、ファンの回転数によって内部の温度が一定となるように制御する。たとえば、温度が室温で一定となるようにする。他にもペルチェ素子を用いて温度制御するなど、従来知られている他の方法によって温度制御を行ってよい。
【実施例2】
【0048】
一例として、実施例1のスーパーコンティニュアム光源のうち、ファイバーレーザー10以降の光路(すなわち、パルス拡幅ファイバー22、ファイバー増幅器20、波長シフトファイバー30、および高非線形光ファイバー40、シングルモードファイバー41)を温度コントローラ300の内部に配置し、シングルモードファイバー41の出力端を温度コントローラ300から引き出した構成を図4に示す。
【実施例2】
【0049】
また、実施例1、2のファイバーレーザー10およびファイバー増幅器20は、エルビウムドープファイバー(EDF)を用いるものであったが、エルビウム以外の希土類元素をドープした希土類ドープファイバーであってもよい。たとえば、ツリウム、イッテルビウム、プラセオジムなどの希土類元素である。増幅のために光ファイバーに添加する希土類元素は、ファイバーレーザー10により生成したいソリトンパルスの波長により選択される。ファイバーレーザー10が例えばエルビウムドープファイバーを用いたレーザーであれば、ファイバー増幅器20の増幅にも、エルビウムドープファイバーを用いると良い。
【実施例2】
【0050】
ファイバー増幅器20の希土類ドープファイバーの入力部と出力部には、任意の光学素子を取り付けても良い。例えば、出力部には、増幅用の希土類元素の励起光が後段に出射されないように、波長選択阻止性の光学フィルタを配置してもよい。
【実施例2】
【0051】
また、実施例1、2のスーパーコンティニュアム光源が出力するスーパーコンティニュアム光の中心波長は1700~1750nmであったが、本発明は、スーパーコンティニュアム光の中心波長が1.5μm以上1.9μm以下の帯域に存在するものにおいて特に有効である。そのようなスーパーコンティニュアム光は、従来、出力やスペクトルを安定にすることが困難であったが、本発明によればそのようなスーパーコンティニュアム光も出力やスペクトルを安定化することができる。さらに望ましいのは、スーパーコンティニュアム光の中心波長が1.5μm以上1.7μm以下の場合である。
【実施例2】
【0052】
また、上記と同様の理由により、本発明は、スーパーコンティニュアム光の半値幅が100nm以上のものにおいて特に有効である。さらに望ましいのは、スーパーコンティニュアム光の半値幅が200nm以上2000nm以下の場合である。
【実施例2】
【0053】
また、実施例1、2では、すべての光ファイバー部分をPANDA型の偏波保持ファイバーで構成しているが、他の偏波保持型の構造を用いてもよい。たとえば、ボウタイ型や楕円ジャケット型などの応力付与型の構造(PANDA型も応力付与型の一種である)や、楕円コア型のものを用いてもよい。ただし、PNADA型の偏波保持ファイバーは偏波クロストーク特性に優れているだけでなく温度変化に対しても良好な偏波保持特性を有しているため、実施例1、2のようにすべての光ファイバー部分にPANDA型を用いることが望ましい。PANDA型とすることで、スーパーコンティニュアム光の出力およびスペクトルを温度変化に対してより安定とすることができる。
【実施例2】
【0054】
また、実施例1、2におけるファイバーレーザー10はリング型であり、エルビウムドープファイバーを用いたものであったが、数ピコ秒乃至それ以下のパルス幅のパルス光を発生させ得るものであれば任意の構成のファイバーレーザー等を用いることが可能である。発生させるレーザ波長は、1.55μm、1.7μmが、一般的に用いられるが、この波長に限定するものではない。水分の吸収率の低い1.5μm~2.3μm帯を用いることができる。生成されるパルス光のパルス幅は1ps以下が好ましく、500fs以下が更に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のスーパーコンティニュアム光源は、分光分析などの光源として利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10:ファイバーレーザー
11、23:EDF
12:樹脂フィルム
13、21、31:光アイソレータ
14、25:励起光源
15、16、24、200:光カプラ
20:ファイバー増幅器
22:パルス拡幅ファイバー
30:波長シフトファイバー
32:フィルタ
40:高非線形光ファイバー
201:スペクトル測定装置
300:温度コントローラ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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