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明細書 :ルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒およびルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒による二酸化炭素固定化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-189794 (P2020-189794A)
公開日 令和2年11月26日(2020.11.26)
発明の名称または考案の名称 ルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒およびルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒による二酸化炭素固定化方法
国際特許分類 C07F   9/54        (2006.01)
B01J  31/24        (2006.01)
FI C07F 9/54 CSP
B01J 31/24 Z
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2019-094967 (P2019-094967)
出願日 令和元年5月21日(2019.5.21)
発明者または考案者 【氏名】戸田 泰徳
【氏名】菅 博幸
【氏名】橋本 耕佑
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4H050
Fターム 4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BA44A
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BC04A
4G169BC04B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BD14A
4G169BD14B
4G169BE28A
4G169BE28B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169CB25
4G169CB65
4G169CB74
4G169DA02
4G169FA01
4G169FB77
4H050AA01
4H050AB82
要約 【課題】温和な条件下での、エポキシドと二酸化炭素の反応による二酸化炭素固定化反応の提供。
【解決手段】ホスホニウムイリドをイオン性配位子として用いる。エポキシドと二酸化炭素の反応において、ホスホニウムイリドと金属ヨウ化物から調製した錯体を触媒として用いる二酸化炭素固定化方法であって、1)ヨウ化物イオンがエポキシドを求核攻撃し、2)中間体としてアルコキシドを生成し、3)前記アルコキシドが二酸化炭素と反応し、4)環状カーボネートを生成するとともに触媒を再生する、工程を含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式で表される(ここで、Arはアリール基、Gは水素原子またはメトキシ基)イオン性配位子。

【化1】
JP2020189794A_000013t.gif

【請求項2】
テトラアリールホスホニウム塩から調製されたことを特徴とする請求項1に記載のイオン性配位子。
【請求項3】
前記アリール基は4-メトキシフェニル基(4-MeOC)であり、前記Gはメトキシ基(MeO)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン性配位子。
【請求項4】
前記アリール基はフェニル基(Ph)であり、前記Gは水素原子(H)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン性配位子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のイオン性配位子が金属ハロゲン化物に配位してなるルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒。
【請求項6】
前記金属ハロゲン化物における金属イオンはリチウム、マグネシウム、またはカルシウムイオンであることを特徴とする請求項5に記載のルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒。
【請求項7】
前記金属ハロゲン化物は、ヨウ化リチウムn水和物、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、またはヨウ化カルシウムn水和物であることを特徴とする、請求項6に記載のルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載のルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒を用いた二酸化炭素固定化方法。
【請求項9】
前記金属ハロゲン化物は、金属ヨウ化物であることを特徴とする請求項8に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項10】
前記金属ハロゲン化物は、ヨウ化リチウムであることを特徴とする請求項9に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項11】
エポキシドと二酸化炭素の反応による請求項8から10に記載の二酸化炭素固定化反応。
【請求項12】
1)前記金属ハロゲン化物のハロゲン化物イオンが前記エポキシドを求核攻撃し、
2)中間体としてアルコキシドを生成し、
3)前記アルコキシドが前記二酸化炭素と反応し、
4)環状カーボネートを生成するとともに前記ルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒を再生する工程を含む請求項11のいずれかに記載の二酸化炭素固定化方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、金属ハロゲン化物とホスホニウムイリドよりなるルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒および前記ルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒を用いた二酸化炭素固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリーンケミストリーの観点から、有機合成化学の分野においては、環境低負荷な分子変換技術の開発が強く求められている。有機反応の多くは酸により促進されるため、新規酸触媒の開発は高効率・高選択的な物質合成を実現する上で特に重要である。このような背景の下、様々な分子性酸触媒が開発され、従来困難であった反応を可能にしてきた。
【0003】
近年、二酸化炭素の回収および貯蔵技術が注目されており、二酸化炭素を利用する有機反応が活発に研究されている。二酸化炭素は安価、低毒性、不燃性、再利用可能であるため、二酸化炭素を有機化合物中のC1炭素源として用いる二酸化炭素固定化反応が活発に研究されている(非特許文献1)。
【0004】
エポキシドと二酸化炭素の反応による環状カーボネート合成は最もよく研究されている二酸化炭素固定化反応の一つである。環状カーボネートはポリカーボネートの原料や非プロトン性極性溶媒、リチウムイオン電池の電解液などに利用される有用物質である(非特許文献2)。また、二酸化炭素は一酸化炭素やホスゲン等の炭素源と比較して一般に反応性が低く、不活性分子の化学変換という観点からも興味深い研究対象とされている。
【0005】
第四級アンモニウム塩やホスホニウム塩、アルカリ金属などのハライド塩は、エポキシドと二酸化炭素からの環状カーボネート合成にしばしば用いられる。また、ルイス酸性金属錯体とアンモニウム塩を組み合わせた触媒系も報告されている(非特許文献3)。
【0006】
また、ホスホニウムイリドよりなるイオン性求核触媒と、これを用いたアルコールのアシル化方法が既に提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2019-037937号公報
【0008】

【非特許文献1】Sakakura,T.;Choi,J.-C.;Yasuda,H. Chem.Rev.2007,107,2365-2387.
【非特許文献2】Aresta,M.;Dibenedetto,A.;Angelini,A. Chem.Rev.2014,114,1709-1742.
【非特許文献3】Ema,T.;Miyazaki,Y.;Shimonishi,J.;Maeda,C.;Hasegawa,J. J.Am.Chem.Soc.2014,136,15270-15279.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、二酸化炭素固定化反応の多くは高圧の二酸化炭素条件あるいは高温条件で実施されており、常圧および常温に近い条件での反応が望まれる。また、ホスホニウムイリドをイオン性配位子として用いた例はあまりなく、これと金属ハロゲン化物から調製した錯体による二酸化炭素固定化の報告例はない。
【0010】
そこで発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ね、金属ハロゲン化物に配位して二酸化炭素固定化に対する高い触媒能を示すホスホニウムイリドを見出した。本発明は、このホスホニウムイリドを含むルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒による温和な条件下での二酸化炭素固定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係るイオン性配位子は、下記式で表される(ここで、Arはアリール基、Gは水素原子またはメトキシ基)。

【化1】
JP2020189794A_000003t.gif

【0012】
前記イオン性配位子はテトラアリールホスホニウム塩から調製されてもよい。
【0013】
前記アリール基は4-メトキシフェニル基(4-MeOC)であり、前記Gはメトキシ基(MeO)であってもよい。
【0014】
前記アリール基はフェニル基(Ph)であり、前記Gは水素原子(H)であってもよい。
【0015】
本開示の一態様に係るルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒は前記イオン性配位子が金属ハロゲン化物に配位したものである。
【0016】
前記金属ハロゲン化物における金属イオンはリチウム、マグネシウム、またはカルシウムイオンであってもよい。
【0017】
前記金属ハロゲン化物は、ヨウ化リチウムn水和物、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、またはヨウ化カルシウムn水和物であってもよい。
【0018】
本開示の一態様に係る二酸化炭素固定化方法は、前記ルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒を用いる。
【0019】
前記金属ハロゲン化物は、金属ヨウ化物であってもよい。
【0020】
前記金属ハロゲン化物は、ヨウ化リチウムであってもよい。
【0021】
前記二酸化炭素固定化方法はエポキシドと二酸化炭素の反応によるものでもよい。
【0022】
前記二酸化炭素固定化方法は、
1)前記金属ハロゲン化物のハロゲン化物イオンが前記エポキシドを求核攻撃し、
2)中間体としてアルコキシドを生成し、
3)前記アルコキシドが前記二酸化炭素と反応し、
4)環状カーボネートを生成するとともに前記ルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒を再生する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本開示の一態様によれば、アルコキシドが二酸化炭素と反応して生成する炭酸イオン中間体を金属イオンへの配位を利用し安定化することにより、二酸化炭素が取り込まれることによるエントロピー的に不利な工程を容易にし、その結果、効率的な触媒サイクルを構築できる。例えば、エポキシドと二酸化炭素の反応において、穏やかな条件で所望の環状カーボネートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本実施の形態におけるルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒による二酸化炭素固定化反応の触媒サイクルを示す。
【図2】図2は実施例1におけるにおけるホスホニウムイリドの合成過程を示す。
【図3】図3は実施例2における二酸化炭素固定化反応の検討結果を示す。
【図4】図4は実施例3における基質一般性の検討結果を示す。
【図5】図5は実施例3におけるイソシアネートとの反応の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態(以下、本実施の形態)について図面を参照して詳細に説明する。

【0026】
図1は本実施の形態におけるルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒を用いた、エポキシドと二酸化炭素の反応による二酸化炭素固定化反応の触媒サイクルを図式化したものである。本実施の形態においては、下記の基本式で示されるホスホニウムイリドが金属錯体におけるイオン性配位子として用いられる。

【化2】
JP2020189794A_000004t.gif
ここで、ここで、Arはアリール基、Gは水素原子またはメトキシ基を表す。

【0027】
従来、ホスホニウムイリドは、アニオン性炭素原子の求核性を利用して、Wittig反応などに用いられてきた。また、特許文献1では、特殊な構造を有するホスホニウムイリドを、イオン性求核触媒として用いることにより、選択的アシル化触媒として機能させる技術が示されている。しかし、一般に、イオン性の配位子は稀であり、さらに本実施の形態のホスホニウムイリド用いてイオン性の配位子を実現することは全く新規な試みとなる。

【0028】
本実施の形態では、以下、式1または式2で示されるホスホニウムイリドを金属錯体におけるイオン性配位子として用いる。

【化3】
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【化4】
JP2020189794A_000006t.gif

【0029】
これらのホスホニウムイリドは後述のようにテトラアリールホスホニウム塩を前駆体として化学合成されたものである。式1では前記基本式のアリール基を4-メトキシフェニル基(4-MeOC)とし、Gをメトキシ基(MeO)としている。式2ではアリール基をフェニル基(Ph)とし、Gを水素原子(H)としている。

【0030】
前記ホスホニウムイリドは図1の二酸化炭素固定化反応においてそれぞれ金属ハロゲン化物のイオン性配位子として作用すると考えられる。図1において、まず、1)ヨウ化物イオンがエポキシドを求核攻撃し、2)中間体としてアルコキシドを生成し、3)前記アルコキシドが二酸化炭素と反応し、4)環状カーボネートを生成するとともに触媒を再生する。以上のように触媒サイクルが成立する。

【0031】
なお、前記金属錯体はリチウム、マグネシウム、またはカルシウムイオンに式1または式2のホスホニウムイリドが配位したものであってもよい。また、前記金属ハロゲン化物は、ヨウ化リチウムn水和物、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、またはヨウ化カルシウムn水和物であってもよい。

【0032】
以下、実施例について説明する。
【実施例】
【0033】
(実施例1)ホスホニウムイリドの合成
まず、式3あるいは式4で示されるテトラアリールホスホニウム塩を前駆体として前記式1あるいは式2で示されたホスホニウムイリドの合成を行った(図2)。

【化5】
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【化6】
JP2020189794A_000008t.gif

【実施例】
【0034】
テトラアリールホスホニウム塩(式3あるいは式4)をメタノール中、室温で水酸化ナトリウムと反応させると脱HBr反応が進行し、高収率でホスホニウムイリド(式1あるいは式2)を単離できる。
【実施例】
【0035】
(実施例2)反応条件の最適化
エポキシド二酸化炭素の反応において、ホスホニウムイリドと金属ヨウ化物の検討を行った結果を図3に示す。反応は1,2-エポキシヘキサン(式5)に対し、5mol%のホスホニウムイリド(式1あるいは式2)および10mol%のヨウ化リチウムn水和物存在下、1気圧の二酸化炭素雰囲気下、モレキュラーシーブを添加し、0.3Mのクロロベンゼン中、35℃で24時間攪拌する条件で行った。

【化7】
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【実施例】
【0036】
結果を同図下表のentry1とentry2の行に示す。反応は円滑に進行し、それぞれNMR収率94%、66%で環状カーボネート(式6)を得た。なお、図3下表において、ligandの列にある「L1」はホスホニウムイリド(式1)を、「L2」はホスホニウムイリド(式2)を意味する。

【化8】
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【実施例】
【0037】
次に対照実験として、ホスホニウムイリド非存在下における反応を行ったところ、反応はほとんど進行しなかった(entry3)。また、前記ホスホニウムイリドのかわりにトリフェニルホスフィン(PhP)やトリエチルアミン(EtN)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いた場合には、大幅な収率の低下が認められた(entry4-6)。このことは、前記ホスホニウムイリドとヨウ化リチウムn水和物がルイス酸・ハロゲン化物イオン複合型触媒として作用し、反応を促進していることを明示している。
【実施例】
【0038】
ヨウ化マグネシウムを用いた場合には、ホスホニウムイリド(式1)とホスホニウムイリド(式2)の何れの場合も高収率で環状カーボネート(式6)が得られ、ホスホニウムイリド非存在下でも中程度の収率で環状カーボネート(式6)が得られた(entry7-9)。ヨウ化カルシウムn水和物を用いた場合にも、ホスホニウムイリド(式1)とホスホニウムイリド(式2)の何れの場合も高収率で環状カーボネート(式6)が得られた(entry10,11)。また、ヨウ化リチウムn水和物の場合と同様にホスホニウムイリドの添加効果が大きいことを明らかにした(entry12)。
【実施例】
【0039】
(実施例3)基質一般性
ヨウ化リチウムn水和物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウムn水和物を用いる反応についてエポキシド1の一般性を検討した(図4)。その結果、ホスホニウムイリド(式1)あるいはホスホニウムイリド(式2)を用いることにより、良好な単離収率で目的の環状カーボネート2(式7)を得ることに成功した。

【化9】
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【実施例】
【0040】
さらに、エポキシドとイソシアネート(RNCO)の反応を行った(図5)。その結果、ホスホニウムイリド(式2)とヨウ化マグネシウムから調製した錯体を触媒として用いることにより、良好な単離収率で目的のオキサゾリジノン3(式8)が得られることを明らかにした。

【化10】
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【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、高圧あるいは高温を要する従来法の代替として、二酸化炭素固定化反応を促進する触媒として用いることができる。


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4