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明細書 :フッ素雲母の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-193131 (P2020-193131A)
公開日 令和2年12月3日(2020.12.3)
発明の名称または考案の名称 フッ素雲母の製造方法
国際特許分類 C01B  33/42        (2006.01)
C04B  35/16        (2006.01)
C04B  35/553       (2006.01)
C04B  35/64        (2006.01)
C09K  11/61        (2006.01)
FI C01B 33/42
C04B 35/16
C04B 35/553
C04B 35/64
C09K 11/61
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2019-100949 (P2019-100949)
出願日 令和元年5月30日(2019.5.30)
発明者または考案者 【氏名】樽田 誠一
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G073
4H001
Fターム 4G073AA01
4G073BA03
4G073BA04
4G073BA10
4G073BA17
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA80
4G073BD12
4G073CM23
4G073FA12
4G073FA30
4G073FC09
4G073FC28
4G073FD23
4G073FD27
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA33
4G073GB02
4G073GB09
4G073UA20
4H001XA03
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA14
4H001XA19
4H001YA63
要約 【課題】 フッ素雲母を簡易に人工合成することを可能にするフッ素雲母の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るフッ素雲母の製造方法は、フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を加熱してフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、前記焼成工程において、マイクロ波の照射により発熱する発熱層が内面に形成されたセラミック加熱容器に前記成形体を密封せずに収容し、該セラミック加熱容器にマイクロ波を照射し、前記成形体を焼成温度まで加熱して焼成体を得ることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を加熱してフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、
前記焼成工程において、マイクロ波の照射により発熱する発熱層が内面に形成されたセラミック加熱容器に前記成形体を密封せずに収容し、該セラミック加熱容器にマイクロ波を照射し、前記成形体を焼成温度まで加熱して焼成体を得ることを特徴とするフッ素雲母の製造方法。
【請求項2】
フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加熱・溶融した後、徐冷し結晶化させることでフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、
前記焼成工程において、マイクロ波の照射により発熱する発熱層が内面に形成されたセラミック加熱容器に前記混合原料を密封せずに収容し、該セラミック加熱容器にマイクロ波を照射し、前記混合原料を溶融温度まで加熱して焼成体を得ることを特徴とするフッ素雲母の製造方法。
【請求項3】
フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を加熱してフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、
前記焼成工程において、前記焼成体を加熱・焼成する加熱炉をあらかじめフッ素雲母の焼成温度まで昇温させておき、昇温された加熱炉に前記成形体を密封せずに収容して焼成を開始することにより焼成体を得ることを特徴とするフッ素雲母の製造方法。
【請求項4】
フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を加熱してフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、
前記焼成工程において、前記焼成体を加熱・焼成する加熱炉をあらかじめフッ素雲母の焼成温度まで昇温させておき、昇温された加熱炉に前記混合原料を密封せずに収容して加熱を開始することにより焼成体を得ることを特徴とするフッ素雲母の製造方法。
【請求項5】
前記混合原料として、紫外線照射により発光する元素を添加した原料を使用し、紫外線照射により発光する発光特性を有するフッ素雲母を製造することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のフッ素雲母の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素雲母として、Naテニオライト、Kテニオライト、Liテニオライトのいずれか一つを製造することを特徴とする請求項1または2記載のフッ素雲母の製造方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素雲母の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雲母は代表的なケイ酸塩の層状化合物であり、下記の一般式で表される化学組成を備える。
0.5~12~3410(OH,F)2
ここでXは12配位の陽イオン(主にK、Na、Ca)を表し、Yは八面体シートを形成する6配位の陽イオン(主にAl3+、Mg2+、Fe2+)、Zは四面体シートを形成する4配位の陽イオン(主にSi4+,Al3+)である。図21に雲母の結晶構造を示す。雲母の構造は二つのZO4四面体シートの間にYイオンを含む八面体シートが上下から挟まれたタブレットが1つの層を形成し、そのタブレットが層間イオンを挟んで積み重なった層状構造をなす。タブレットとタブレットとの間(層間)には層間イオンとしてXが存在し弱く結合する。このため雲母はその層間で劈開する。
【0003】
代表的な雲母として、フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F2)がある。この雲母は、四面体シートにあるSiとAlとの比が3:1(三ケイ素型)であり、四面体シートにSi4+よりも電荷が+1小さいAl3+が入るために生ずる陽電荷の不足を層間イオンが補償する電荷平衡方式をとっている。
また、三ケイ素型とは別の、四面体シートに入る陽イオンがSi4+のみのもの(四ケイ素型)であるテニオライト(KMg2LiSi4O10F2)がある。この雲母は、八面体シートにあるMg2+の一部がLiに置換することによって生じる陽電荷の不足を層間イオンが補償する電荷平衡方式となる。この四ケイ素型の層間域を介した層間の結合は、三ケイ素型と比べて弱いと考えられ、この両者の電荷平衡方式の違いがそれぞれの特性の相違となってあらわれる。
【0004】
雲母の構造中の陽イオンは他の陽イオンと同形置換することが可能であり、これによって多種類の雲母の合成が可能である。四面体層や八面体層にある陽イオンの同形置換では、それらイオン種を換えるだけでなく、層電荷をも変えることが可能であり、こうして種々の特性を備える雲母を作り出すことができる。
【0005】
フッ素雲母の人工合成は古くから行われてきた(特許文献1~5)。るつぼを用いる雲母の合成方法には、原料粉を加圧成形した成形体をるつぼにセットし、加熱して固相反応により製造する方法(固相法)と、原料粉を加熱して溶融した後、放冷(アニール処理)し結晶化させて製造する方法(溶融法)がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平9-194210号公報
【特許文献2】特開平10-114515号公報
【特許文献3】特開2000-272918号公報
【特許文献4】特許2004-231786号公報
【特許文献5】特許2012-246206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固相法あるいは溶融法によりフッ素雲母を製造する際には、800℃といった高温に原料を加熱して焼成するため、通常、耐熱性と非反応性を備える白金るつぼを使用する。白金るつぼを使用する際には、原料が散逸しないように、るつぼを密封して外部と遮断する。白金るつぼを密封するには、白金製の蓋をバーナーで加熱しながら、るつぼの開口部に蓋を加圧してるつぼと蓋とを一体化て密封する。このように、白金るつぼを使ってフッ素雲母を合成する方法は、るつぼが高価であるという費用面の他に、焼成するため操作が煩雑であるという問題があった。なお、白金るつぼのかわりにセラミック製のるつぼを使用する場合もあるが、その場合は、るつぼを密封しないため、原料粉の組成を工夫する必要があったり、得られた焼成体の全体が雲母構造にならないといった問題があった。
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、きわめて容易にかつ確実にフッ素雲母を製造することを可能にするフッ素雲母の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1のフッ素雲母の製造方法は、フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を加熱してフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、前記焼成工程において、マイクロ波の照射により発熱する発熱層が内面に形成されたセラミック加熱容器に前記成形体を密封せずに収容し、該セラミック加熱容器にマイクロ波を照射し、前記成形体を焼成温度まで加熱して焼成体を得ることを特徴とする。
この第1のフッ素雲母の製造方法は、混合原料を成形して成形体を焼成することでフッ素雲母を製造する方法であり、固相法、溶融法のいすれにも適用することができる。
また本発明に係る第2のフッ素雲母の製造方法は、フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加熱・溶融した後、徐冷し結晶化させることでフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、前記焼成工程において、マイクロ波の照射により発熱する発熱層が内面に形成されたセラミック加熱容器に前記混合原料を密封せずに収容し、該セラミック加熱容器にマイクロ波を照射し、前記混合原料を溶融温度まで加熱して焼成体を得ることを特徴とする。第2のフッ素雲母の製造方法は、溶融法によりフッ素雲母を製造する場合に適用することができる。
【0009】
第1、第2のフッ素雲母の製造法では、内面にマイクロ波の照射により発熱する発熱層が設けられているセラミック加熱容器を使用することにより、セラミック加熱容器にマイクロ波を照射することで、短時間のうちにセラミック加熱容器の内部が高温になり、成形体あるいは混合原料が、短時間で加熱される。
この製造方法の場合は、成形体あるいは混合原料が短時間で加熱されることにより、成形体あるいは混合原料をるつぼに収納して密封する操作を行う必要がない。したがって、フッ素雲母を焼成して得る操作が容易であるとともに、焼成体の主要部分が単一相となる高品質のフッ素雲母が得られるという利点がある。
【0010】
本発明に係る第3のフッ素雲母の製造方法は、フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を加熱してフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、前記焼成工程において、前記焼成体を加熱・焼成する加熱炉をあらかじめフッ素雲母の焼成温度まで昇温させておき、昇温された加熱炉に前記成形体を密封せずに収容して焼成を開始することにより焼成体を得ることを特徴とする。この第3のフッ素雲母の製造方法は固相法、溶融法、いずれにも適用可能である。
また、本発明に係る第4のフッ素雲母の製造方法は、フッ素雲母の合成に用いる原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を加熱してフッ素雲母の焼成体を得る焼成工程とを備えるフッ素雲母の製造方法であって、前記焼成工程において、前記焼成体を加熱・焼成する加熱炉をあらかじめフッ素雲母の焼成温度まで昇温させておき、昇温された加熱炉に前記混合原料を密封せずに収容して加熱を開始することにより焼成体を得ることを特徴とする。この第4のフッ素雲母の製造方法は、溶融法について適用するフッ素雲母の製造方法である。
第3、第4のフッ素雲母の製造方法では、加熱炉をあらかじめ焼成温度まで昇温させた状態で成形体あるいは混合原料を加熱開始するから、成形体あるいは混合原料を短時間で焼成温度まで加熱することができ、成形体あるいは混合原料をるつぼ等に収納して密封する必要がない。また、焼成体の主要部分が単一相となる高品質のフッ素雲母を得ることが可能であり、フッ素雲母を効率的に製造することができる。
【0011】
本発明方法に係るフッ素雲母の製造方法は、焼成温度、焼成時間等を適宜設定することによって、種々のフッ素雲母の製造方法に適用することができる。また、Eu等の発光元素を添加して、発光性を有するフッ素雲母や、適宜添加物を添加することにより導電性等の特徴的な特性を備えるフッ素雲母を製造する方法としても利用することが可能であり、その適用範囲が添加物を備えないフッ素雲母の製造に限定されるものではない。
本発明方法の好適な適用例として、Naテニオライト、Kテニオライト、Liテニオライトの製造に適用する例を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明方法によれば、きわめて容易にかつ確実にフッ素雲母を製造することが可能であり、発光元素を添加したフッ素雲母等の種々のフッ素雲母を製造する方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るフッ素雲母の製造工程を示すフロー図である。
【図2】実験例1のNaテニオライト(x=0.0、0.05、0.10:焼成30分間)について測定したXRDパターンである。
【図3】実験例1のNaテニオライト(x=0.0、0.10、0.15:焼成60分間)について測定したXRDパターンである。
【図4】実験例1のNaテニオライト(x=0.0、0.05、0.10、0.15:焼成90分間)について測定したXRDパターンである。
【図5】実験例2で得られたNaテニオライト(x=0.0、0.05、0.10、0.15)について測定したXRDパターンである。
【図6】実験例3、実験例4で得られたNaテニオライトについて測定したXRDパターンである。
【図7】実験例1で得られたNaテニオライト(x=0.10)のSEM像である。
【図8】実験例3で得られたNaテニオライト(x=0.0)のSEM像である。
【図9】実験例1で得られたNaテニオライト(600W,30分間)に254nmあるいは365nmの波長の紫外線を照射したときの発光を観察した結果を示す写真である。
【図10】実験例1で得られたNaテニオライト(600W,90分間)に254nmあるいは365nmの波長の紫外線を照射したときの発光を観察した結果を示す写真である。
【図11】実験例5のKテニオライト(x=0.0、0.05 焼成60分間、90分間)について測定したXRDパターンである。
【図12】実験例5で得られたKテニオライト(60分間、90分間焼成)のXRDパターンと、再加熱処理を行って得られたKテニオライトのXRDパターンである。
【図13】実験例6で得られたKテニオライトのXRDパターンと、再加熱処理を行って得られたKテニオライトのXRDパターンである。
【図14】実験例5で得られたKテニオライト(x=0.05)のSEM像である。
【図15】実験例5で原料(2)を用いて作製したKテニオライトのSEM像である。
【図16】実験例6で得られたKテニオライトのSEM像でる。
【図17】実験例5で作製したKテニオライト(x=0.05)に、254nmと365nmの紫外線を照射したときの発光を観察した結果を示す写真である。
【図18】実験例7と実験例8で得られたLiテニオライトについて測定したXRDパターンである。
【図19】実験例7で得られたLiテニオライトのSEM像である。
【図20】実験例8で得られたLiテニオライトのSEM像である。
【図21】雲母の結晶構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るフッ素雲母の製造方法においては、フッ素雲母の組成にしたがって原料を秤量し、原料を混合して混合原料を調製する工程と、混合原料を加圧成形して成形体を作製する工程と、成形体を焼成して焼成体を得る焼成工程とを備える。図1に、本発明に係るフッ素雲母の製造工程のフロー図を示す。

【0015】
フッ素雲母の製造にあたっては、まず、フッ素雲母を製造するための混合原料を用意する。
前述したとおり、フッ素雲母は、12配位の陽イオン(K、Na、Ca等)、八面体シートを構成する6配位の陽イオン(Al3+、Mg2+、Li+、Fe2+等)、4面体シートを構成する4配位の陽イオン(Si4+,Al3+等)とフッ素とを組成として含む。
混合原料を調製する際には、製造しようとするフッ素雲母に合わせて、適宜原料を選択し、秤量して原料を用意する。
また、フッ素雲母にEu等の添加物を加える場合には、適宜添加量を秤量して添加する。

【0016】
フッ素雲母の合成に使用する原料としては、適宜原料を選択して使用すればよい。例えば、Na原料としては、フッ化ナトリウム、ケイフッ化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を使用することができ、K原料としては、フッ化カリウム、ケイフッ化カリウム、炭酸カリウム等を使用することができ、Li原料としては、フッ化リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム等を使用することができる。

【0017】
また、Mg原料としては、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等を使用することができ、、Al原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム等を使用することができ、Si原料としては、二酸化ケイ素、シリカゲル等を使用することができる。F原料としては、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化ナトリウム等を使用することができる。

【0018】
また、発光特性を付与するための元素として、例えばEuを添加するときは、酸化ユーロピウム、塩化ユーロピウム、フッ化ユーロピウム等を使用することができる。

【0019】
図1において、混合原料を調製する工程では、秤量した原料を混合する処理を行う。この混合処理では、乾式混合と湿式混合を併合して用いることができる。乾式混合としては、例えば乳鉢で原料を混合する処理を利用することができ、湿式混合としては、例えば2-プロパノールを溶媒として混合する処理を利用することができる。湿式混合を使用した場合は、その後に乾燥処理を行い、溶媒を除去してから次の成形体を作製する工程へ進む。

【0020】
成形体を作製する工程は、図1の成形ステップと乾燥ステップに相当する。成形ステップでは、混合原料を円柱体等のブロック状に成形して成形体を形成する。成形体を成形する方法としては、CIP成形((冷間静水圧加圧)等を利用することができる。
固相法を利用してフッ素雲母を製造する際には、混合原料を成形体にすることで、原料同士の接触性を向上させ、固相反応を促進させることでより確実に焼成することができる。溶融法を利用して製造する場合は、混合原料を成形して成形体とする処理は必ずしも必要とせず、混合原料のまま溶融し、アニール処理により結晶化させてフッ素雲母を得ることができる。溶融法による場合は、図1に示す成形ステップと混合原料を使用し、
成形体を作製する工程における乾燥ステップは、成形体中に残留する水分や混合処理で使用した溶媒を除去するためのものである。
なお、成形体を作製する工程では、焼成工程に進む前に成形体を仮焼し、焼成時に発生する不要なガスをあらかじめ排出させる処理をする場合もある。

【0021】
焼成工程は、成形体を加熱して焼成する工程である。
固相法による製造工程では、この焼成工程は、成形体を固相反応が生じる温度まで加熱し、その温度で一定時間焼成することにより焼成体を得る工程である。固相反応を生じさせた後は、室温まで自然放冷させればよい。
溶融法による製造工程では、この焼成工程は、混合原料を溶融温度まで加熱して混合原料を溶融し、その後、融液を降温させ、結晶化させることで焼成体(フッ素雲母)を得る工程である。融液を降温させる速度は適宜設定すればよい。

【0022】
本発明方法においては、成形体(固相法)あるいは混合原料(溶融法)を焼成温度まで加熱する方法として、マイクロ波とセラミック加熱容器を利用する。
セラミック加熱容器は平底の壺形をした本体と、蓋とからなる。本体の内面にはマイクロ波が照射されると発熱する発熱層として炭化ケイ素層が設けられている。これによってセラミック加熱容器に成形体を収納して、セラミック加熱容器にマイクロ波を照射するとセラミック加熱容器の内部が高温に昇温する。セラミック加熱容器にマイクロ波を照射する方法は、具体的には、電子レンジの処理室にセラミック加熱容器をセットし、電子レンジをONにする方法である。実験では、市販の電子レンジ(600W、700W)を使用してフッ素雲母を製造した。

【0023】
本発明方法によれば、成形体や混合原料をるつぼに密封して収納する必要はない。実際の焼成操作は、成形体を磁製るつぼに収納し、蓋をして、セラミック加熱容器に収容し、セラミック加熱容器に蓋をし、密封することなく、電子レンジの処理室にセットし、電子レンジをONにする操作を行えばよい。電子レンジによる焼成時間は30分~90分間程度である。一定時間焼成した後、電子レンジからセラミック加熱容器を取り出し、室温まで自然放冷させることでフッ素雲母を得ることができる。

【0024】
本発明に係るフッ素雲母を製造する他の製造方法は、加熱炉をあらかじめフッ素雲母の焼成温度まで昇温させておき、その状態で成形体を収納した磁製るつぼを加熱炉内に導入し、一定時間焼成した後、室温まで自然放冷させる方法である。
この場合も、成形体を収納した磁製るつぼに蓋をし、密封せずに、加熱炉に導入して焼成する。加熱炉はあらかじめフッ素雲母の焼成温度まで加熱されているから、成形体は短時間で焼成温度にまで加熱されて焼成される。

【0025】
なお、溶融法によりフッ素雲母を製造する場合も、上述したマイクロ波とセラミック加熱容器を利用して混合原料を加熱する方法と、加熱炉を混合原料を溶融する温度まで昇温させた状態で、混合原料を加熱炉に導入して加熱する方法を利用することができる。混合原料をそのまま使用して焼成工程へ進める場合は、図1の成形ステップと乾燥ステップは経過しない。ただし、溶融法による場合も、混合原料を加圧成形した成形体を作製して、焼成工程へ進めることも可能である。

【0026】
本発明方法において特徴的な処理は、固相法による場合も溶融法による場合も、成形体あるいは混合原料をを短時間でフッ素雲母の焼成温度にまで到達させるところにある。マイクロ波を利用する加熱方法も、加熱炉をあらかじめ昇温させておく操作も、成形体あるいは混合原料をできるだけ短時間で焼成温度(溶融温度)まで到達するようにするためのものである。このように、成形体あるいは混合原料が短時間で焼成温度(溶融温度)に到達することから、るつぼを密封する操作を行うことなく、確実にフッ素雲母を製造することが可能になる。

【0027】
フッ素雲母は組成によって溶融温度が異なるから、マイクロ波とセラミック加熱容器を使用するときは、マイクロ波の出力を調整したり、焼成時間を調整したりすることで、適切な焼成条件を設定してフッ素雲母を製造することができる。加熱炉をあらかじめ昇温させておく場合も、加熱炉の温度設定と焼成時間を適宜設定すればよい。この制御方法は固相法による場合も溶融法による場合もまったく同様である。
本発明方法によれば、大気下で処理することが可能であり、るつぼを密封するという煩雑な操作を不要とし、マイクロ波とセラミック加熱容器を使用する方法、あるいは加熱炉のあらかじめ焼成温度まで昇温させるという、きわめて簡便な方法でフッ素雲母を製造することを可能とするものであり、フッ素雲母を容易に製造する方法として好適に利用することができる。
【実施例】
【0028】
固相法によりフッ素雲母を製造する方法として、異なる製造方法によりフッ素雲母を製造した実験結果について説明する。実験で製造したフッ素雲母は、Naテニオライト、Kテニオライト、Liテニオライトの3種である。また、希土類元素としてEuを添加したフッ素雲母についても製造する実験を行った。以下にそれぞれの実験結果について説明する。
【実施例】
【0029】
・Naテニオライトの合成
[実験例1:マイクロ波を利用する方法]
実験例1はマイクロ波とセラミック加熱容器を利用してフッ素雲母を製造した例である。この実験では、Euを添加したマイカ(Na1-3x Eux)Mg2LiSi4O10 F2(x=0.05、0.10、0.15)3種と、Euを添加していないNaテニオライト(Na1-3x Eux)Mg2LiSi4O10 F2(x=0.0)を作製した。
【実施例】
【0030】
合成に使用する原料として下記の試薬を用いた。
フッ化ナトリウム(NaF):和光純薬工業株式会社和光 特級
酸化マグネシウム(MgO):関東化学工業株式会社 特級
高純度二酸化ケイ素(SiO2):和光純薬工業株式会社和光 純度99.9%
フッ化リチウム(LiF):和光純薬工業株式会社和光 特級
フッ化マグネシウム(MgF2):和光純薬工業株式会社和光 特級
酸化ユウロピウム(Eu2O3): 和光純薬工業株式会社和光 特級
【実施例】
【0031】
(混合原料の調製)
上記の原料をNaテニオライトの組成(Na1-3x Eux)Mg2LiSi4O10 F2(x=0.0、0.05、0.10、0.15)となるように、全量0.5gとして秤取し、めのう乳鉢を用いて乾式で10分間混合し、さらに2-プロパノールを溶媒として湿式で10分間混合し、その後、150℃で2h以上乾燥させて混合原料(4種)を調製した。各原料の秤取量を表1に示す。
【表1】
JP2020193131A_000003t.gif
【実施例】
【0032】
(成形体の作製)
上述した混合原料を掌圧で一軸加圧成形をした後、150 MPaでCIP成形した。次いで、成形体中の水分とアルコール分を除去するため、成形体を密封せずに150℃で24時間乾燥させて成形体を作製した。成形体は円柱体状に成形したもので、径:約10mm、高さ:約20mmである。成形体は白色である。
【実施例】
【0033】
(焼成処理)
乾燥後の成形体を磁器製のるつぼ(磁製るつぼ)にセットし蓋をして、セラミック加熱容器に収容し蓋をし、密封せずに、出力600Wの電子レンジの処理室にセットし、電源をONとして、30~90分間焼成した。
実験で使用したセラミック加熱容器は、商品名「アートボックス」として市販されているセラミック加熱容器である。
電子レンジで焼成した後、電子レンジからセラミック加熱容器を取り出し、そのまま室温まで自然放冷させて焼成体を得た。
【実施例】
【0034】
[実験例2:白金るつぼを使用する方法]
実験例2では白金るつぼを使用し、加熱炉で焼成してフッ素雲母を作製した。混合原料の調製方法と成形体(4種)を作製する方法は実験例1と同様である。
得られた成形体を白金るつぼに収納し、白金製の蓋をセットし、バーナーで蓋を加熱しながら蓋を白金るつぼに加圧して、るつぼを完全に密封した。
成形体を密封した白金るつぼを加熱炉に導入し、昇温速度を10℃/minとして室温から焼成温度まで昇温させ、60分間焼成し、焼成後、降温速度を5℃/minとして室温まで降温させた。なお、x=0.0、0.05の試料については焼成温度を1100℃、x=0.10の試料については焼成温度を1200℃、x=0.15の試料については焼成温度を1300℃に設定した。それぞれの焼成温度は、予備実験によりなるべく非晶質相が生成されないようにする温度として設定した。
【実施例】
【0035】
[実験例3:焼成温度に昇温させた加熱炉にセットする方法]
この実験では、成形体を焼成する加熱炉(電気炉)をあらかじめ焼成温度まで昇温させておき、昇温した加熱炉に成形体をセットして焼成することでフッ素雲母を製造した。
実験は、(Na1-3x Eux)Mg2LiSi4O10 F2でx=0.0としたもの、すなわちNaテニオライトの組成NaMg2LiSi4O10 F2となるように前記試薬を全量0.5gとして秤取し、実験例1と同様の方法で混合原料を調製した。また、成形体を成形する方法も実験例1と同様である。
成形体を磁製るつぼにセットし蓋をして、密封せずに、あらかじめ昇温させた加熱炉に導入して焼成した。加熱炉の温度は1000℃または1100℃とし、焼成時間は60分間とした。焼成後、磁製るつぼを加熱炉から取り出し、自然放冷させて焼成体を得た。
【実施例】
【0036】
[実験例4:加熱炉にセットした後に焼成温度まで昇温させる方法]
この実験では、加熱炉に成形体を導入した後、室温から、昇温速度を10℃/minとして加熱炉を1000℃まで昇温させ、1000℃で60分間加熱した後、降温速度を5℃/minとして室温まで降温させて焼成体を得た。
成形体を作製するまでの処理方法は実験例3と同様である。得られた成形体を磁製るつぼにセットし蓋をして、密封せずに加熱炉に導入し、室温から焼成温度まで昇温させて焼成体を得た。
【実施例】
【0037】
<XRD解析>
図2~6に、上述した実験例1~4の方法で得られた焼成体のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定は焼成体を粉砕した粉砕マイカについて行った。
図2、3、4は、実験例1(マイクロ波加熱)で得られた焼成体についての測定結果である。それぞれ30、60、90分間加熱したときのXRDパターンを示す。x=0.0、0.05、0.10の組成のサンプルについては、30、60、90分間の加熱によって、いずれも単一相のNaテニオライトが得られている。x=0.15の組成では、マイカの他に、シリカやわずかにクリストバライトの回折ピークが現れ、完全にはマイカ単一相になっていない。
【実施例】
【0038】
図5は、実験例2(白金るつぼを使用)で得られた焼成体についてのXRDパターンである。
x=0.0および0.05のサンプルでは、1100℃でマイカの回折ピークのみが現れ、マイカが単一相として得られた。x=0.10および0.15のサンプルでは、マイカの他にクリストバライトの回折ピークが現れ、マイカの単一相になっていない。この測定結果は、Euの添加量が多くなると、マイカ単一相がが得にくくなることを示唆する。
【実施例】
【0039】
図6は、実験例3(焼成温度まで昇温させた加熱炉を使用)と、実験例4(室温から徐々に加熱炉を昇温させる)で得られた焼成体についてのXRDパターンを示す。
加熱炉をあらかじめ昇温して焼成した場合(グラフ(c))は、焼成温度が1000℃で単一相が得られ、1100℃ではわずかであるがリヒテライトの回折ピークが現れ、単一相にはならなかった。
また、加熱炉を徐々に室温から昇温させて焼成した場合(グラフ(d))は、リヒテライトやクオーツが生成され、マイカ単一相が得られなかった。
【実施例】
【0040】
以上の実験結果から、NaテニオライトでEuを添加していないもの(x=0.0)、Euを添加したもの(x=0.05、0.10)についての製造方法としては、フッ素雲母の単一相が得られるマイクロ波(電子レンジ)とセラミック加熱容器を用いる製造方法が最も適した方法であると考えられる。
マイクロ波とセラミック加熱容器を利用する方法が有効である理由は、マイクロ波照射によって原料が急速に加熱され、短時間で焼成温度まで昇温するためであると考えられる。マイクロ波加熱による焼成方法における焼成温度(昇温温度)は、単一相のフッ素雲母が得られていることから、昇温温度は固相反応が生じる800℃を超える温度に到達していたと考えられる。マイクロ波加熱による場合は、マイクロ波(電子レンジ)の出力を調整することで昇温温度を適宜調整することが可能である。
【実施例】
【0041】
また、図6に示すXRD解析結果は、焼成温度に昇温させた状態で成形体を焼成開始する、すなわち短時間のうちに成形体を昇温させて焼成すると、成形体をるつぼ等に密封することなく、単一相のフッ素雲母を得ることができ、成形体を焼成温度まで徐々に昇温させて焼成させる方法では、単一相のフッ素雲母が得られ難いことを示す。この実験結果は、成形体を室温から焼成温度まで昇温させる昇温過程においてマイカの生成を阻害する何らかの化学変化が起きていることを示唆するものと考えられる。
この実験結果は、加熱炉をあらかじめ焼成温度まで昇温させ、その状態で成形体を加熱炉に導入して焼成する方法が、単一相のフッ素雲母を製造する方法として有効な方法であることを示唆する。
【実施例】
【0042】
<SEM像観察>
図7は、実験例1で90分間焼成して得られたNaテニオライト(x=0.10)のSEM像である。図8は、実験例3(1000℃、60分間焼成)で得られたNaテニオライト(x=0.0)のSEM像である。いずれのSEM像においても、フッ素雲母の特徴である板状粒子と層状構造を確認することができる。
【実施例】
【0043】
<発光特性>
図9、10に、実験例1で製造したNaテニオライトに254nmあるいは365nmの波長の紫外線を照射したときの発光を観察した結果を示す。図9は600Wで30分間焼成したもの、図10は600Wで90分間焼成したサンプルである。いずれのサンプルも、Eu3+による橙色の強い発光が観察され、紫外線励起による蛍光体として作用することが確かめられた。図9、10で、可視光下では焼成体は白色、365nmの紫外線照射によるときの発光色は赤色、254nmの紫外線照射によるときは黄色(オレンジ色)である。
図9、10に示した焼成体は、円柱体に紫外線を照射して発光させたものであるが、焼成体を粉砕して粉末化したものに紫外線を照射しても同様に発光する。発光性を備える粉末化したフッ素雲母とすることで、他の材料と混合して利用するといったことが可能であり、種々用途への応用利用が可能になる。
【実施例】
【0044】
・Kテニオライトの合成
[実験例5:マイクロ波を利用する方法]
この実験では、マイクロ波と前述したセラミック加熱容器を利用してKテニオライトを作製した。Kテニオライトは組成(K1-3xEux)Mg2LiSi4O10F2で、Euを添加していないもの(x=0.0)とEuを添加したもの(x=0.05)の2種である。
合成に使用する原料には、下記の試薬を用いた。
フッ化カリウム(KF):和光純薬工業株式会社和光特級
ケイフッ化カリウム(K2SiF6):和光純薬工業株式会社和光
酸化マグネシウム(MgO):関東化学工業株式会社特級
高純度二酸化ケイ素(SiO2):和光純薬工業株式会社
フッ化リチウム(LiF):和光純薬工業株式会社和光特級
炭酸リチウム(Li2CO3):和光純薬工業株式会社和光特級
フッ化マグネシウム(MgF2):和光純薬工業株式会社和光特級
酸化ユーロピウム(Eu2O3): 和光純薬工業株式会社和光特級
【実施例】
【0045】
(混合原料の調製)
上記の原料をKテニオライトの組成(K1-3xEux)Mg2LiSi4O10F2(x=0.0,0.05)となるように全量0.5gとして秤取し、めのう乳鉢を用いて乾式で10分間、2-プロパノールを溶媒として湿式で10分間混合し、その後、150℃で2h以上乾燥させて混合原料を調製した。なお、x=0.0(Euを添加しない場合)については、下記の二種の原料を用いて合成を行った。
(1)KF、MgO、高純度SiO2、LiF
(2)KF、K2SiF6、MgO、高純度SiO2、LiF,Li2CO3
各原料の秤取量を表2に示す。
【表2】
JP2020193131A_000004t.gif
【実施例】
【0046】
(成形体の作製)
上述した方法で調製した混合原料を掌圧で一軸加圧成形をした後、150 MPaでCIP成形により円柱体に成形した。成形体中の水分とアルコール分を除去するため、成形体を密封せずに150℃で24時間乾燥させ成形体とした。成形体の寸法は、Naテニオライトを合成したときと同様で、径:約10mm、高さ:約20mmである。
【実施例】
【0047】
(焼成処理)
乾燥後の成形体を磁製るつぼに収納し、前述したセラミック加熱容器内にセットし、蓋をし、密封せずに出力600Wの電子レンジの処理室にセットし、焼成時間を60分間、90分間として、それぞれ焼成して焼成体を得た。
【実施例】
【0048】
(再加熱処理)
Kテニオライトを合成する実験では、焼成体に非晶質相が生じることが観察された(XRDパターンにハローパターンが出る)ため、マイクロ波を用いる焼成で得られた焼成体を、再度、溶融温度以上に加熱して非晶質相が生成されるか否か実験した。
再加熱処理は、電子レンジによる焼成処理によって得られた焼成体を乳鉢で粉砕し、粉砕マイカを掌圧で一軸加圧成形をした後、150 MPaでCIP成形し、成形体の水分とアルコールを除去する乾燥処理をして成形体(2次成形体)とし、この2次成形体を磁製るつぼに収納し蓋をして、密封せずに、あらかじめ800℃に昇温させた加熱炉に導入し、60分間再加熱する方法で行った。
【実施例】
【0049】
[実験例6:焼成温度に昇温させた加熱炉にセットする方法]
この実験では、前述した原料(2)を使用し、焼成温度に昇温させた加熱炉を用いてKテニオライトを焼成した。
原料(2)を、Kテニオライトの組成(KMg2LiSi4O10F2)となるように、全量0.5gとして秤取し(表2の(2)の組成)、めのう乳鉢を用いて乾式で10分間、2-プロパノールを溶媒として湿式で10分間混合し、実験例5と同様の方法で混合原料を調製し、次いで、成形体を調製した。
焼成処理は、成形体を磁製るつぼに収納し蓋をし、密封せずに、あらかじめ、1000℃または1100℃に昇温させた加熱炉に導入し、60分間焼成する処理とした。
この加熱炉をあらかじめ焼成温度まで昇温させて焼成した場合も、実験例5と同様に焼成体に非晶質相が存在することが認められたため、実験例5と同様の方法で、成形体(1次成形体)を加熱炉を用いて焼成した後、焼成体を粉砕して、2次成形体を調製し、これを再加熱する処理を行って、非晶質相が生成される2か否か実験した。
【実施例】
【0050】
<XRD解析>
図11に実験例5(マイクロ波加熱)で、60分間と90分間の焼成で得られた焼成体(x=0.0、0.05)について測定したXRDパターンを示す。このXRDパターンの測定結果を見ると、Kテニオライトが単一相で生成されていることが分かる。ただし、図11を見ると、ハローパターン(ベースがわずかに盛り上がる形態)があり、焼成体に非晶質相が存在していることを示す。
【実施例】
【0051】
図12は、実験例5(マイクロ波加熱)で60分間と90分間焼成して得られた焼成体のXRDパターンと、90分間焼成して得た焼成体を再加熱して得た焼成体のXRDパターンを対比して示す。図12は、焼成体を再加熱しても非晶質相が依然として残っていることを示す。図12に示す再加熱したサンプルは前述した(2)の原料を用いて焼成したサンプルについての測定結果であるが、(1)の原料を用いて焼成したサンプルについても同様の結果となった。
【実施例】
【0052】
図13は、実験例6(焼成温度まで昇温させた加熱炉を使用)で得られた焼成体のXRDパターンを示す。図13には、1000℃で1次焼成して再加熱したもの、1100℃で1次焼成して再加熱したものについてのXRDパターンを合わせて示す。
図13に示すXRDパターンは、焼成温度まで昇温させた加熱炉を用いることにより、フッ素雲母が生成されていることを示す。また、この場合もハローパターンが観察され、非晶質相が残っていることが分かる。また、再加熱処理により非晶質相を結晶化させる試みを行ったが、非晶質相がマイカに変化する結果は得られなかった。
非晶質相が残った理由としては、KテニオライトはNaテニオライトよりも合成に必要な温度が高いため、本実験での焼成条件では、単一相を生成するための焼成温度に達しなかったこと原因の一つと考えられる。
【実施例】
【0053】
<SEM観察>
図14は、実験例5において、表2に示すEuを添加した原料(x=0.05)を用いて、60分間焼成して得られた焼成体についてのSEM像を示す。図15は、実験例5において、表2のEuを添加していない原料(2)を用いて、90分間焼成して得られた焼成体についてのSEM像である。図16は、実験例6において、表2の原料(2)を1100℃で60分間焼成した焼成体のSEM像である。
いずれのサンプルについても、フッ素雲母に特徴的な板状粒子および層状構造が観察された。再加熱処理したサンプルについても、SEM像の観察により、同様に板状粒子および層状構造が観察された。
【実施例】
【0054】
<発光特性>
図17は、実験例5で、表2のEuを添加した原料(x=0.05)を使用して得られた焼成体に、254nmと365nmの紫外線を照射して発光特性を観察した結果を示す写真である。可視光では白色のサンプルが、365nmの紫外線照射により赤く発光し、254nmの紫外線照射により黄色(オレンジ色)に発光し、Eu3+による強い発光が観察された。
【実施例】
【0055】
<溶融法>
マイクロ波とセラミック加熱容器を用いて、溶融法により、Kテニオライトを製造する別の実験を行った。この実験で使用した混合原料は前述した(1)KF、MgO、高純度SiO2、LiFである。混合原料を成形した成形体を磁製るつぼに収納し蓋をして、セラミック加熱容器に収容し、密封せずに電子レンジ(700W)の処理室にセットし、90分間焼成して焼成体を得た。焼成・冷却後に磁製るつぼ中の成形体はその形をとどめず、磁製るつぼの底に溶け出した状態でたまっていた。これより、焼成中に成形体が溶融したことが分かる。
磁性るつぼから取り出した焼成体を観察・測定したところ、前述した固相法によって得られた焼成体と比べて非晶質相が最小となるKテニオライトが得られたことを確認した。
この実験結果は、マイクロ波とセラミック加熱容器を用いる加熱方法が、溶融法によってフッ素雲母を製造する方法にも有効であることを示す。
【実施例】
【0056】
・Liテニオライトの合成
[実験例7:マイクロ波を利用する方法]
実験例7ではマイクロ波とセラミック加熱容器を利用する焼成方法により、Liテニオライトを作製した。実験ではEuを添加していないLiテニオライト(LiMg2LiSi4O10F2)のみを作製した。
原料として、下記の試薬を用いた。
酸化マグネシウム(MgO):関東化学工業株式会社特級
高純度二酸化ケイ素(SiO2):和光純薬工業株式会社
フッ化リチウム(LiF):和光純薬工業株式会社和光特級
酸化ユーロピウム(Eu2O3): 和光純薬工業株式会社和光特級
【実施例】
【0057】
(混合原料の調製)
上記原料をLiテニオライトの組成LiMg2LiSi4O10F2となるように全量0.5gとして秤取し、めのう乳鉢を用いて乾式で10分間、2-プロパノールを溶媒として湿式で10分間混合し、その後、150℃で2h以上乾燥して混合原料とした。各原料の秤取量を表3に示す。
【表3】
JP2020193131A_000005t.gif
【実施例】
【0058】
(成形体の作製)
前記混合原料を掌圧で一軸加圧成形をした後、150 MPaでCIP成形して円柱体状とし、前述した実験例と同様に乾燥処理して成形体を得た。成形体のサイズは、径約10mm、高さ約20mmである。
【実施例】
【0059】
(焼成処理)
次いで、この成形体を磁製るつぼに収納し蓋をし、るつぼを密封せずにセラミック加熱容器の処理室にセットし、電子レンジ(600W)で60分間焼成し、焼成体を得た。焼成後は電子レンジからセラミック加熱容器を取り出し自然放冷させた。
【実施例】
【0060】
[実験例8:焼成温度に昇温させた加熱炉にセットする方法]
実験例7と同様の方法で調製した成形体を、磁製るつぼに収納し蓋をし、密封せずに、あらかじめ1000℃に昇温させた加熱炉に導入し60分間焼成して焼成体を得た。
【実施例】
【0061】
<XRDパターン>
図18に、実験例7の方法と実験例8の方法で得られた焼成体について測定したXRDパターンを示す。このXRDパターンから、いずれの焼成方法による場合も、Liテニオライトが生成されたこと、マイカ相とともにクリストバライト,リヒテライトおよびトリジマイトなどが観察され、単一相として形成されなかったことが分かる。
【実施例】
【0062】
<SEM観察>
図19に、実験例7(マイクロ波加熱)で90分間焼成して得られたLiテニオライト(x=0.0)のSEM像を示す。図20に、実験例8(焼成温度まで昇温させた加熱炉を使用)で得られたLiテニオライトのSEM像を示す。いずれのSEM像にも、マイカと考えられる板状粒子と層状構造が観察された。
【実施例】
【0063】
Liテニオライトは合成が困難であるとされているものであるが、実験例7、実験例8に示すように、マイクロ波とセラミック加熱容器を利用する焼成方法による場合も、加熱炉をあらかじめ焼成温度まで昇温させておいて焼成を開始する方法による場合も、Liテニオライトを得ることができることを確認することができた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20