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明細書 :アシスト装置およびアシスト用衣服およびアシスト制御用プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-195499 (P2020-195499A)
公開日 令和2年12月10日(2020.12.10)
発明の名称または考案の名称 アシスト装置およびアシスト用衣服およびアシスト制御用プログラム
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
B25J  11/00        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
B25J 11/00 Z
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2019-102582 (P2019-102582)
出願日 令和元年5月31日(2019.5.31)
公序良俗違反の表示 1.WINDOWS
発明者または考案者 【氏名】塚原 淳
【氏名】宮下 智也
【氏名】廣田 将
【氏名】白鳥 典彦
【氏名】野澤 秀隆
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
4C046
Fターム 3C707AS38
3C707HS21
3C707HT04
3C707XK03
3C707XK06
3C707XK12
3C707XK42
3C707XK58
4C046AA09
4C046AA25
4C046AA27
4C046AA42
4C046AA49
4C046BB07
4C046CC01
4C046CC04
4C046DD03
4C046DD21
4C046DD38
4C046DD39
4C046DD40
4C046DD41
4C046EE03
4C046EE04
4C046EE12
4C046EE17
4C046FF02
4C046FF11
4C046FF25
要約 【課題】軽量で装着時の違和感が無いアシスト装置を提供する。
【解決手段】アシスト装置1はズボン状の衣服5に装着できるような形状を有し、空気の流入により一方向に収縮する一つまたは複数の収縮型インフレータブルアクチュエータ2と、収縮型インフレータブルアクチュエータに対しエアチューブ201を通し空気の流入または流出を行う一または複数のポンプと、装着者の姿勢に応じて空気の流入と流出を制御するコントローラとを備えたコントローラユニット100とを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
空気の流入により一方向に収縮する一つまたは複数の収縮型インフレータブルアクチュエータと、
前記収縮型インフレータブルアクチュエータに対し空気の流入または流出を行う一つまたは複数のポンプと、装着者の姿勢に応じて前記空気の流入と流出を制御するコントローラとを備えたコントローラユニットと、を有するアシスト装置。
【請求項2】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは、2枚の変形可能なシートの周辺を密封状態に貼り合わせたインフレータブル構造体を成し、さらにその内側を通気可能な状態で部分的に貼り合わせたことにより複数の小胞に分割形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のアシスト装置。
【請求項3】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは略長方形状の平面構造を成し、短辺と平行に複数の小胞に分割形成されたことを特徴とする請求項2に記載のアシスト装置。
【請求項4】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは、収縮方向の一端を装着者の大腿部に相当する位置に、収縮方向の他の一端を装着者の膝蓋骨下部に相当する位置に、それぞれ直接的または間接的に固定される、請求項1~3のいずれかに記載のアシスト装置。
【請求項5】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは少なくとも右膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータと左膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータとで構成され、前記右膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータは装着者の右足大腿部の前側に相当する位置に、前記左膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータは装着者の左足大腿部の前側に相当する位置に、それぞれ設けられたことを特徴とする請求項4に記載のアシスト装置。
【請求項6】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは、さらに右膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータと左膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータを有し、前記右膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータは装着者の右足大腿部の後側に相当する位置に、前記左膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータは装着者の左足大腿部の後側に相当する位置に、それぞれ設けられたことを特徴とする請求項5に記載のアシスト装置。
【請求項7】
空気の流入により厚さ方向に膨張する膨張型インフレータブルアクチュエータをさらに備え、前記膨張型インフレータブルアクチュエータは装着者の臀部に相当する位置に直接的または間接的に固定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかのいずれかに記載のアシスト装置。
【請求項8】
前記膨張型インフレータブルアクチュエータは、それぞれの平面形状が略円形である一対のインフレータブル構造体であることを特徴とする請求項7に記載のアシスト装置。
【請求項9】
前記コントローラは、装着者の起立動作開始時に前記膨張型インフレータブルアクチュエータに空気を流入させるフェーズと、対象動作の検出後、前記膨張型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左右の膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズを順次実行することを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載のアシスト装置。
【請求項10】
前記膨張型インフレータブルアクチュエータに対する空気の流入と流出、および前記膝関節伸展用収縮型インフレータブルアクチュエータに対する空気の流入は、前記ポンプと前記膨張型インフレータブルアクチュエータまたは前記膝関節伸展用収縮型インフレータブルアクチュエータの間にエアチューブを介して接続されたバルブの弁の切り替えにより制御されることを特徴とする請求項9に記載のアシスト装置。
【請求項11】
前記コントローラは、装着者の歩行動作に応じて、
前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、
前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、
前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、
前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、を循環的に実行することを特徴とする、請求項10に記載のアシスト装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のアシスト装置が設けられたアシスト用衣服。
【請求項13】
請求項8に記載のアシスト装置に記載のコントローラによって実行されるアシスト制御用プログラムであって、
前記装着者の起立動作開始時に前記膨張型インフレータブルアクチュエータに空気を流入させるステップと、
動作を検証するステップと、
対象動作が検出された場合、前記膨張型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左右の膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、を含むプログラム。
【請求項14】
請求項11に記載のアシスト装置に記載のコントローラによって実行されるアシスト制御用プログラムであって、
前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、
前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、
前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、
前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、を循環的に実行するプログラム。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、起立動作および歩行動作における比較的軽い支援を行う、アシスト装置およびアシスト用衣服およびアシスト制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超高齢社会を迎えた我が国では、運動器の機能不全によって起立・着座・歩行能力が低下した「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」発症者が増加している。ロコモティブシンドロームは2007年に日本整形外科学会が提唱した概念である。主な原因の関節疾患、高齢による衰弱、骨折・転倒が全体の約半数を占めていると言われている。
【0003】
このように、ロコモティブシンドロームは、運動器自体に関する疾患や加齢による運動器機能不全が含まれていることから、一旦発症すれば、日常生活における自立度の低下を招くので、要介護状態の進行につながる深刻な社会課題のひとつとなってきている。
【0004】
そこで、従来、起立や歩行などの日常生活動作を支援するウェアラブルロボットが開発されている。その多くは体重をフルに支えるために、剛体の外骨格フレームや高出力用の大型アクチュエータを使用するものである(特許文献1)。
【0005】
その一方で、近年、ソフトアクチュエータを用いたウェアラブルロボットの開発が注目を集めている(特許文献2、非特許文献1)。ソフトアクチュエータはパワーの点では電磁モータを用いた外骨格型アシストロボットには劣るものの、システム全体が軽量であり、装着者との親和性といった点でメリットがある。よって、ある程度の自立が可能な高齢者や障碍者に適している。
【0006】
非特許文献1には、ポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)生地をベースに、バンドやサポーターと面ファスナーで構成されたウェアラブルロボットが開示されている。遊星歯車付きモータによる回転トルクを、プーリーを介してワイヤ駆動させることで、歩行時における足関節の底屈動作のアシストを行っている。
【0007】
特許文献2には、マッキベン型アクチュエータと称されるコイル状の伸縮アクチュエータで装着者の腰部と膝部を連結し、大腿部の前後の筋肉を補助するアシスト装置が開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-213538号公報
【特許文献2】特開2018-83275号公報
【0009】

【非特許文献1】Alan T. Asbeck, Stefano M. M. De Rossi, Ignacio Galiana, Ye Ding, and Conor J. Walsh,“Stronger, Smarter, Softer: Next Generation Wearable Robots,”IEEE Robotics and Automation Magazine, vol.21, no.4, pp.22-33, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のソフトアクチュエータを使用したアシスト装置は、装着者との親和性といった点で次のような課題を有していた。まず、非特許文献1の技術においては、システム全体の重量が約5.5kgあり、しかもアクチュエータを含む制御ユニットが外部に備え付けのシステム構成であるため、日常における常時使用に適さないといった課題があった。
【0011】
また、特許文献2の技術においては、着座時にコイル状アクチュエータを尻に敷く構造であるため、アクチュエータそのものの破損は防げても、着座時に、装着者に違和感を与えたり、場合によっては苦痛を与えたりする、といった懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係るアシスト装置は、空気の流入により一方向に収縮する一つまたは複数の収縮型インフレータブルアクチュエータと、前記収縮型インフレータブルアクチュエータに対し空気の流入または流出を行う一つまたは複数のポンプと、装着者の姿勢に応じて前記空気の流入と流出を制御するコントローラとを備えたコントローラユニットと、を有する。
【0013】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは、2枚の変形可能なシートの周辺を密封状態に貼り合わせたインフレータブル構造体を成し、さらにその内側を通気可能な状態で部分的に貼り合わせたことにより複数の小胞に分割形成されたものであってもよい。
【0014】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは略長方形状の平面構造を成し、短辺と平行に複数の小胞に分割形成されたものであってもよい。
【0015】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは、収縮方向の一端を装着者の大腿部に相当する位置に、収縮方向の他の一端を装着者の膝蓋骨下部に相当する位置に、それぞれ直接的または間接的に固定されていてもよい。
【0016】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは少なくとも右膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータと左膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータとで構成され、前記右膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータは装着者の右足大腿部の前側に相当する位置に、前記左膝関節伸展用インフレータブルアクチュエータは装着者の左足大腿部の前側に相当する位置に、それぞれ設けられたものであってもよい。
【0017】
前記収縮型インフレータブルアクチュエータは、さらに右膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータと左膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータを有し、前記右膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータは装着者の右足大腿部の後側に相当する位置に、前記左膝関節屈曲用インフレータブルアクチュエータは装着者の左足大腿部の後側に相当する位置に、それぞれ設けられたものであってもよい。
【0018】
空気の流入により厚さ方向に膨張する膨張型インフレータブルアクチュエータをさらに備え、前記膨張型インフレータブルアクチュエータは装着者の臀部に相当する位置に直接的または間接的に固定されていてもよい。
【0019】
前記膨張型インフレータブルアクチュエータは、それぞれの平面形状が略円形である一対のインフレータブル構造体であってもよい。
【0020】
前記コントローラは、装着者の起立動作開始時に前記膨張型インフレータブルアクチュエータに空気を流入させるフェーズと、対象動作の検出後、前記膨張型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左右の膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズを順次実行するものであってもよい。
【0021】
前記膨張型インフレータブルアクチュエータに対する空気の流入と流出、および前記収縮型インフレータブルアクチュエータに対する空気の流入は、前記ポンプと前記膨張型インフレータブルアクチュエータまたは前記収縮型インフレータブルアクチュエータの間にエアチューブを介して接続されたバルブの弁の切り替えにより制御されてもよい。
【0022】
前記コントローラは、装着者の歩行動作に応じて、前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるフェーズと、を循環的に実行するものであってもよい。
【0023】
本開示の一態様に係るアシスト用衣服は、前記アシスト装置が設けられたものである。
【0024】
本開示の一態様に係るアシスト制御用プログラムは、前記コントローラによって実行されるプログラムであって、前記装着者の起立動作開始時に前記膨張型インフレータブルアクチュエータに空気を流入させるステップと、動作を検証するステップと、対象動作が検出された場合、前記膨張型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左右の膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、を含む。
【0025】
本開示の一態様に係るアシスト制御用プログラムは、前記コントローラによって実行されるプログラムであって、前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、前記右膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記右膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、前記左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの空気を前記左膝関節伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータに流入させるステップと、を循環的に実行する。
【発明の効果】
【0026】
本開示の一態様によれば、軽量でかつ違和感の無い装着で、着座状態から起立、さらに歩行までをアシストすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本開示の第1の実施の形態のアシスト装置の概念図
【図2】本開示の第1の実施の形態の収縮型インフレータブルアクチュエータの斜視図
【図3】本開示の第1の実施の形態の収縮型インフレータブルアクチュエータ試作品の写真
【図4】本開示の第1の実施の形態の収縮型インフレータブルアクチュエータ試作品の装着時の写真
【図5】本開示の第2の実施の形態のアシスト装置の概念図
【図6】装着者の着座時の臀部の荷重分布を示すマップ
【図7】本開示の第2の実施の形態の膨張型インフレータブルアクチュエータ試作品の写真
【図8】本開示の第2の実施の形態のアシスト装置のブロック図
【図9】本開示の第2の実施の形態のアシスト装置の装着者の着座状態から起立状態までの姿勢の変化を示したイメージ図
【図10】本開示の第2の実施の形態のアシスト装置のコントローラが実行するプログラムのフローチャート
【図11】本開示の第2の実施の形態のアシスト装置の着座状態から起立状態に至る間のバルブの切り替わりを示すブロック動作図
【図12】本開示の第2の実施の形態のアシスト装置の空気の流れを示す概念図
【図13】本開示の第2の実施の形態のアシスト装置の効果を示す概念図
【図14】本開示の第3の実施の形態のアシスト装置の空気の流れを示す概念図
【図15】本開示の第3の実施の形態のアシスト装置の歩行動作直前のバルブの切り替え示すブロック図
【図16】本開示の第3の実施の形態のアシスト装置の歩行状態のバルブの切り替え示すブロック図
【図17】本開示の第3の実施の形態のアシスト装置の歩行状態のバルブの切り替え示すブロック図
【図18】本開示の実施例2の実験結果を示すグラフ
【図19】本開示の実施例2の収縮型インフレータブルアクチュエータの斜視図
【図20】本開示の実施例2の実験結果を示すグラフ
【図21】本開示の実施例3の実験におけるセンサの装着位置を示す写真
【図22】本開示の実施例3の実験結果を示すグラフ
【図23】本開示の実施例4の動作を示すタイミングチャート
【図24】本開示の実施例4の実験結果を示すグラフ
【図25】本開示の実施例5の実験結果を示すグラフ
【図26】本開示の実施例5の実験結果を示すグラフ
【図27】本開示の実施例6の実験結果を示すグラフ
【図28】本開示の実施例6の実験結果を示すグラフ
【図29】本開示の実施例6の実験結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態(以降、第1の実施の形態)について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は第1の実施の形態のアシスト装置の概念図を示す。図1において、アシスト装置1はズボン状の衣服5に装着できるような形状を有する。2は空気の流入により一方向に収縮する一対の収縮型インフレータブルアクチュエータ(収縮型IfA)であり、本実施の形態では左右一対設けられている。100はコントローラユニットであり、収縮型インフレータブルアクチュエータ2に対しエアチューブ201を通し空気の流入または流出を行う一または複数のポンプと、装着者の姿勢に応じて前記空気の流入と流出を切替えるコントローラとを備える(図示せず)。

【0029】
図2に、本実施の形態における収縮型インフレータブルアクチュエータ2の斜視図を示す。収縮型インフレータブルアクチュエータ2は、2枚の変形可能なシートの周辺をエアチューブ201との接続部分を除き密封状態に貼り合わせたインフレータブルな構造体を成す。さらにその内側が通気可能な状態で部分的に貼り合わされることにより複数の小胞に分割形成されている。本実施の形態では、図2に示されるように略長方形状の平面構造を成し、短辺と平行に複数の小胞に分割形成されている。本実施の形態において、「略長方形状」というのは、幾何学上の長方形の形状のみならず、角を落とした長方形や、連結用の突起を設けた長方形の形状も含まれるとする。

【0030】
この収縮型インフレータブルアクチュエータ2に空気を流入させると(図2中ON)、収縮型インフレータブルアクチュエータ2は全体としては厚み方向に膨張するものの、長手方向(分割線と直角方向)には収縮するように変形する。また空気を流出させると(図2中OFF)元のシート状に戻る。空気の流入量と収縮量との関係については実施例2で詳細に説明する。

【0031】
本実施の形態において、収縮型インフレータブルアクチュエータ2は、収縮方向の上端が装着者の大腿部に設けられたバンド11にワイヤ13を介して接続されている。また、下端は装着者の膝蓋骨の直下に設けられたバンド12にワイヤ14を介して、それぞれ連結されている。ワイヤ14は膝蓋骨を迂回するように2本設けられてもよい。また、ワイヤ14との整合上、ワイヤ13も2本構成にしてもよい。なお、ワイヤ13、14は独立して設ける必要はなく収縮型インフレータブルアクチュエータ2と一体成型されたものでもよい。また、収縮型インフレータブルアクチュエータ2の長さが装着者の大腿部の長さと同等であれば、ワイヤ13またはワイヤ14を用いずにバンド11またはバンド12にそれぞれ直結させてもよい。また、バンド11、12は補強材として装着者が着用する衣服5に縫い込まれたものであってもよい。

【0032】
図3に本実施の形態における収縮型インフレータブルアクチュエータ2の試作品(左は空気流出時、右側は空気流入時)の写真を、図4に収縮型インフレータブルアクチュエータ2の試作品を装着者の右足前方に位置するように装着したときの写真を示す。当該試作品は熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic PolyUrethane:TPU)フィルムを用いている。TPUはポリエチレンに比べ伸びやすく破れにくい性質を持っているため、過度に膨張してしまった際の破裂を防ぐことができる。2枚のTPUフィルムを重ね、長手方向に小胞に分割されるように熱溶着する。なお、小胞間で通気性を確保するため、小胞分割壁の中央部は熱溶着されないよう予めマスキングしておく。

【0033】
図4の場合、収縮型インフレータブルアクチュエータ2は装着者太もも前部の筋肉(大腿四頭筋)を補助する機能を有する。すなわち装着者が膝を伸ばす動作(膝関節伸展動作)をする際、大腿四頭筋を収縮させるが、この運動を収縮型インフレータブルアクチュエータ2が補助することにより、大腿四頭筋の負荷を減らすことができる。さらに収縮型インフレータブルアクチュエータ2は2枚の熱可塑性シートを貼りあわせて形成されているため、軽量で柔軟性があり、装着者が違和感を受けることなく装着でき、衣服の中に縫い込むことも可能となる。さらに収縮型インフレータブルアクチュエータを大腿部の前面と後面に配置することで、それぞれ伸筋と屈筋の役割を担わせることができる

【0034】
以下、本開示の第2の実施の形態について説明する。図5は本開示の第2の実施の形態のアシスト装置1の概念図である。図5において、21a、21b、22a、22bは、それぞれ右膝関節伸展用、左膝関節伸展用、右膝関節屈曲用、左膝関節屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータであり、それぞれ第1の実施の形態の収縮型インフレータブルアクチュエータ2と同等の機能を有すものである。伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータ21a、21bは装着者前面に配置され、大腿部のバンド11および膝蓋骨下部のバンド12と、それぞれワイヤを介して連結されている。本実施の形態においても、バンド11、12は、それぞれ左右一対設けられているとする。なお、第1の実施例と同様、前記ワイヤは収縮型インフレータブルアクチュエータと一体成型したものでもよく、また前記ワイヤを用いずに収縮型インフレータブルアクチュエータをバンド11またはバンド12にそれぞれ直結させてもよい。また、バンド11、12は補強材として装着者が着用する衣服5に縫い込まれたものであってもよい。

【0035】
屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータ22a、22bは装着者後面に設けられ、同様にバンド11、12と、それぞれワイヤを介して連結(またはワイヤを用いずに直結)している。また、各収縮型インフレータブルアクチュエータ21a、21b、22a、22bにはコントローラユニット(100)からエアチューブ201a、201b、202a、202bを介して空気が流入する。なお、図5においてコントローラユニットは装着者後面にも設けられているように(破線で)示されているが、1つのコントローラユニット100から前後にエアチューブが配管されるものであってもよい。

【0036】
さらに図5において、3a、3bは、空気の流入により厚み方向に膨張する膨張型インフレータブルアクチュエータである。膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bは装着者のそれぞれ左右の臀部の位置に配置されるよう、臀部に対し間接的に固定されている。固定の方法としては腰部や大腿部のバンドに連結されてもよいし、装着者が着用する衣服5に直接固定されて設けられてもよい。

【0037】
膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bはそれぞれ平面形状が略円形であるとする。ここで、略円形とは真円のみならず新円に近い楕円形やソラマメ状の閉曲線図形、さらには真円に近い、好ましくは八角以上の多角形であってもよい。図7に本開示の第2の実施の形態の膨張型インフレータブルアクチュエータの試作品の写真を示す。当該試作品は熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic PolyUrethane:TPU)フィルムを用いている。略円形状の2枚のTPUフィルムを重ね、空気の流入(流出)口を除き外周を溶着することにより形成している。

【0038】
膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bがそれぞれ略円形であることが好ましいのは、図6に示すように、装着者の着座時の臀部の圧力分布(BodiTrak社製圧力分布計測装置を使用)が略円形となっていることによる。そこで例えば円形の膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3b(同図中実線)を、圧力が最も高い部分がほぼ中心となるように装着者の臀部に対して配置すれば、後述の起立時の動作(図13)をより安定に支援することができる。以下、起立時の支援動作について順次説明する。

【0039】
図8に本実施の形態のアシスト装置の制御ブロック図を示す。図8において、収縮型インフレータブルアクチュエータ21a、21b、22a、22b、および膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bはそれぞれ図3および図7で示されたものをシンボル化したものである。さらに、図8において、コントローラユニット100は、バルブ41a、41b、42a、42b、43a、43b、およびポンプ50a、50b、53、およびコントローラ101を含む。さらに、コントローラユニット100は、電源71、スイッチ72、76、DCDCコンバータ74、75、ジャンクション73、60a、60b、63を含む。コントローラ101は6個の出力ポートを有し、それぞれNPNトランジスタ102を介し、バルブ41a、41b、42a、42b、43a、43bの切替えを行う。

【0040】
ポンプ50aは、フェーズに応じて右側に配置された(伸展用)収縮型インフレータブルアクチュエータ21a、(屈曲用)収縮型インフレータブルアクチュエータ22a、および膨張型インフレータブルアクチュエータ3aに対し、空気の流入または流出を行う。ポンプ50bは、フェーズに応じて左側に配置された(伸展用)収縮型インフレータブルアクチュエータ21b、(屈曲用)収縮型インフレータブルアクチュエータ22b、および膨張型インフレータブルアクチュエータ3bに対し、空気の流入または流出を行う。ポンプ53は膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bに空気を流入する。ポンプ50a、50b、53は空気の吸入と流出を同時に行うものであり、各インフレータブルアクチュエータに対して空気を流入するか流出するかは、コントローラ101の指示の下、バルブ41a、41b、42a、42b、43a、43bの切り替えによって実行される。

【0041】
以下、図9で示される起立動作の際に、図10に本開示の第2の実施の形態のアシスト装置のコントローラ101が実行するプログラムのフローチャートを示す。まずポンプ53をONし、膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bに空気を流入する(S1)。その後動作検証を行い(S2)、対象動作が検出されれば(S3)次のステップに進む。以上のステップは前記起立動作(図9)におけるフェーズ(phase1)に相当する。ここで対象動作とは椅子から離れたやや中腰状態の動作を意味し、このとき股関節最大屈曲が検出される。この股関節最大屈曲は、例えば衣服5の膝付近に曲げセンサ等を設けて検出できるが、角加速度センサや生体電位センサを用いてもよい。動作検証と対象動作の詳細については実施例3と実施例6で改めて説明する。

【0042】
対象動作が検出されるとポンプ53をOFFとし、代わりにポンプ50a、50bをONとする。併せてバルブ43a、43bをONとする(以上S4)。以上の動作は前記起立動作(図9)におけるフェーズ(phase2)に相当する。図11にphase1終期のアシスト装置の状態(同図(a))と、phase2におけるアシスト装置の状態(同図(b))を模式的に示す。phase2においては膨張型インフレータブルアクチュエータ3aから、バルブ43a、ポンプ50a、バルブ41aを経て、収縮型インフレータブルアクチュエータ21aに空気を流入する流路が形成される。その結果、膨張型インフレータブルアクチュエータ3aに充満した高圧の空気がポンプ50aでさらに加圧されて、収縮型インフレータブルアクチュエータ21aに流れ込む(図中点線矢印)。同様に、膨張型インフレータブルアクチュエータ3bに充満した空気がポンプ50aを通って収縮型インフレータブルアクチュエータ21bに流れ込む。

【0043】
以上のように、流路の切り替えにより、phase1において充填された空気圧を利用して、phase2における収縮型インフレータブルアクチュエータに空気を流入することができる(図12)。その結果、エネルギー効率の高い起立支援を実現することができる。起立支援の例を図13に示す。まず、phase1において、膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bの膨張により、離床動作(体重重心上方移動)を支援し、phase2において収縮型インフレータブルアクチュエータ21a、21bを縮ませることで、起立時の膝関節伸展動作を支援する。起立が完了すればすべてのポンプを停止させる(S5)。

【0044】
なお、本実施の形態において、コントローラ101はマイクロプロセッサであり、図10のフローチャートはそのプログラムによって実行されてもよい。また、そのプログラムは不揮発性メモリ上に予め組み込まれたものであってもよいし、通信回線を介してサーバーからダウンロードされたものであってもよい。

【0045】
以下、本開示の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、歩行動作の支援機能について説明する。まず表1に本実施の形態におけるアシストフェーズを示す。また、表2に各フェーズにおける収縮型インフレータブルアクチュエータ21a、21b、22a、22b(表2中では、それぞれRight ex. IfA、Right fl. IfA、Left ex. IfA、Left fl. IfA)の状態を示す。さらに、この状態となるような収縮型インフレータブルアクチュエータの動作を模式的に図14に、空圧制御機器のON/OFF状態を図15~17に示す。なお、本実施の形態においては膨張型インフレータブルアクチュエータ3a、3bは動作させない。
【表1】
JP2020195499A_000003t.gif

【表2】
JP2020195499A_000004t.gif

【0046】
本実施の形態において、Neutral(phase)とは、両脚支持期や静止時などのアシストを行わないフェーズを意味する。このとき、全ての収縮型インフレータブルアクチュエータに少し空気が入っているものの駆動はしていない(図15)。ここで装着者が歩行動作を開始すると、以下のフェーズが順次、循環的に実行される。

【0047】
最初のフェーズ(R-Flexion phase)は右脚の膝関節が屈曲する遊脚初期から遊脚中期の状態である(図16(a))。このとき、右膝関節伸展支援用のインフレータブルアクチュエータ21aの空気はポンプ50aにより右膝関節屈曲支援用の収縮型インフレータブルアクチュエータ22aに送られる。その結果、右膝関節屈曲支援用の収縮型インフレータブルアクチュエータ22aが収縮動作を行い、屈曲支援用の収縮型インフレータブルアクチュエータ21aは完全に空気が抜けて伸びきった状態となっている。また,このとき対脚は支持脚となっているので、対脚の収縮型インフレータブルアクチュエータ21b、22bはニュートラルの状態である。

【0048】
次のフェーズ(R-Extension phase)は右脚の膝関節が伸展する遊脚中期から初期接地までの状態である(図16(b))。このとき、右膝関節屈曲支援用のインフレータブルアクチュエータ22aの空気はポンプ50aにより右膝関節伸展支援用の収縮型インフレータブルアクチュエータ21aに送られる。その結果、右膝関節伸展支援用の収縮型インフレータブルアクチュエータ21aが収縮動作を行い、同右膝関節屈曲支援用のインフレータブルアクチュエータ22aは空気が抜けて伸びきった状態となっている。対脚の収縮型インフレータブルアクチュエータ21b、22bは依然ニュートラル状態である。

【0049】
左脚のL-Flexionphase((図17(a)))、L-Extensionphase((図17(b)))については、それぞれ右脚のFlexion phaseおよびExtension phaseと同様であるため、説明は省略する。各フェーズの切替えのタイミングについては実施例6で説明する。なお、本実施の形態において、表1および2の切り替え動作はコントローラ101(マイクロプロセッサ)のプログラムによって実行されてもよい。また、そのプログラムは不揮発性メモリ上に予め組み込まれたものであってもよいし、通信回線を介してサーバーからダウンロードされたものであってもよい。

【0050】
以上、前記実施の形態によれば、装着者の起立時および歩行時の支援を軽量な仕組みで実現することが可能となる。さらに装着者が着座中は、起立支援用の膨張型インフレータブルアクチュエータは抜気されてシート状となっているため、着座時の違和感は殆ど無い。他のインフレータブルアクチュエータも、非動作時はシート状であるため、通常は「衣服の一部」として着用し、筋肉に疲労感や痛みのあるときにのみ、動作させることもできる。

【0051】
なお、前記実施の形態において、衣服5はズボン状としたが、ベストやジャンパーなどの上着であってもよく、膝関節の屈伸運動の支援以外に、腕関節の屈伸運動や背筋の曲げ伸ばしを支援するものであってもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本開示における実施例について説明する。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
本実施例ではコントローラユニット100(図8参照)の具体的な構成例について説明する。まず、バッテリー71にはリチウムイオンポリマー二次電池(LiPo)を採用した。LiPoはリチウムイオン二次電池などのように外装に金属製の缶を用いないため、小型・軽量でありながら大容量であり、比較的寿命も長い。
【実施例】
【0054】
コントローラ101にはシングルボードコンピュータ(Aidilab:UDOOX86)を用いた。UDOOX86にはメインプロセッサ(QuadCore64-bitnew-generationx86Braswell14nm)のみならずArduinoTM101互換モジュール(Intel(登録商標)CurieTM)も搭載されていて、MacやWindowsやLinux(登録商標)を使用しながらArduinoTM101に容易にアクセスできるというメリットがある。デジタル入出力ピンはBraswell、Curieにそれぞれ20本、14本あり、A/DコンバータやPWM出力に設定できる。
【実施例】
【0055】
インフレータブルアクチュエータを駆動させる空気供給源(ポンプ50a、50b、53)として,ブラシレスDCポンプ(日東工器(株):DP0210TA-Y1)を使用した。質量0.32kgと軽量でありながら1分あたり10Lの空気を吐出する。ブラシレスDCモータを使用しているためメンテナンス性に優れ、しかも高効率である。また2つのピストンを搭載したツインヘッドタイプであるため駆動時の振動が小さい。
【実施例】
【0056】
バルブ41a、41b、42a、42b、43a、43bは、それぞれ5ポートソレノイドバルブ(SMC(株):VK3120-5GS-01)を用いた。2つの流路を切り替え、片脚につき1台のポンプを駆動させたまま2つのインフレータブルアクチュエータを交互に駆動している。
【実施例】
【0057】
前記シングルボードコンピュータ(コントローラ)は12VDC駆動であり、ポンプ50a、50b、53およびバルブ41a、41b、42a、42b、43a、43b、はすべて24VDC駆動であるため、DCDCコンバータ74、75もそれぞれ12V出力、24V出力のものを用いている。
【実施例】
【0058】
(実施例2)
本実施例では収縮型インフレータブルアクチュエータ試作品の性能評価実験(応答性、最大変位量)とその結果について説明する。厚さ0.07mmのTPUフィルムを用い、設計パラメータの異なる3種類の収縮型インフレータブルアクチュエータを試作した(表3)。それらに0.4kg、0.8kg、1.2kgの錘を吊り、DCポンプで駆動し、最大変位量と変位が最大になるのに要した応答時間を各3回、直尺とストップウォッチで計測した。なお、DCポンプは日東工器(株)DP0210T(吐出空気量10L/min)を用いた。

【表3】
JP2020195499A_000005t.gif

【実施例】
【0059】
図18(a)に上記3種類の収縮型インフレータブルアクチュエータ(IfA1、IfA2、IfA3)の負荷に対する最大変位量を、同図(b)にそれぞれの応答時間を示す。IfA1(L=160mm)とIfA2(L=80mm)を比較すると、長い方が最大変位量は大きくなるが(図18(a))、応答時間は大きく変化していない(同図(b))ことが判る。応答時間は空気供給源であるDCポンプの吐出空気量に大きく依存すると考えられる。一方、IfA1(W=70mm)とIfA3(W=100mm)を比較すると、最大変位量に大きな違いは見られず、応答時間は遅くなった。このことから収縮型インフレータブルアクチュエータは、長さと最大変位量の間に成り立つ関係をモデル化できると考えられる。
【実施例】
【0060】
以下、インフレータブルアクチュエータの最大変位量のモデル化について説明する。収縮型インフレータブルアクチュエータはインフレータブル構造体の最小単位である各小胞が楕円柱状に膨張することで長さ方向に変位するとする(図19)。そこで、楕円の長軸の長さを2a、短軸の長さを2bとしたとき、楕円周CはGauss-Kummer級数により,二項係数を含む無限級数和として次式のように表される
【数1】
JP2020195499A_000006t.gif
【実施例】
【0061】
式(3.1)を初項でのみ近似すると、以下のように書ける。
【数2】
JP2020195499A_000007t.gif
【実施例】
【0062】
ここで、各小胞の幅をl(エル)とすると,l(エル)=C/2の関係から、さらに次式のように表すことができる.
【数3】
JP2020195499A_000008t.gif
【実施例】
【0063】
さらに収縮型インフレータブルアクチュエータの全長をL、小胞の数(分割数)をm、熱溶着時のシール幅をsとすると,各小胞の幅をl(エル)は以下のように表せる。
【数4】
JP2020195499A_000009t.gif
【実施例】
【0064】
ここで、要素1つあたりの変位量Δdは次式で表すことができる。
【数5】
JP2020195499A_000010t.gif

【実施例】
【0065】
したがって,最大変位量ΔDは次式で求められる。
【数6】
JP2020195499A_000011t.gif

L、m、sは設計パラメータであり、収縮型インフレータブルアクチュエータの設計時に一意に決定する定数である。すなわち最大変位量ΔDは駆動時の収縮型インフレータブルアクチュエータの厚さb(楕円近似したときの短軸の長さ)のみに依存し、bは荷重の大きさに依存する。
【実施例】
【0066】
この最大変位量の計算式と実際の最大変位量を比較するために、最大変位量とそのときの収縮型インフレータブルアクチュエータの厚さを同様に測定した。要素数(小胞数)8、幅70mm、長さ160mmの収縮型インフレータブルアクチュエータに、それぞれ0.4kg、0.8kg、1.2kg、1.6kg、2.0kgの錘を吊り下げ、それぞれ5回駆動(収縮動作)させた。まず、変位が最大になったときの収縮型インフレータブルアクチュエータの厚さを測定したグラフを図20(a)に示す。荷重の大きさを大きくすると厚さは単調に減少することが確認できた。さらに、この厚さから求めた最大変位量の計算値(式3.11)と実際の測定値を同図(b)に示す。
【実施例】
【0067】
以上の結果から、荷重を増やしたときに最大変位量は、計算値・測定値共に単調に減衰することが確認された。すなわち、式(3.11)を用いれば、必要なアシスト量(下腿の荷重)に基づき、収縮型インフレータブルアクチュエータの設計パラメータを容易に決定することができる。なお、計算値と測定値との間に若干の誤差があるが、これらの誤差には試作段階での誤差や測定偏差も含まれる。
【実施例】
【0068】
(実施例3)
本実施例では、起立動作時の実験とその結果について説明する。第1の実施の形態において、Phase1からPhase2への切替えは、対象動作を検出した時に行うとし、その対象となる動作は起立動作の離床時である股関節最大屈曲であるとした。そこで、本実施例ではAHRS(AttitudeHeadingReferenceSystem)と呼ばれる、加速度センサ、角速度センサおよび磁気センサより成る9軸の計測システムを使用して股関節最大屈曲を検出した。
【実施例】
【0069】
AHRSを腰,右大腿,左大腿,右下腿,左下腿の5か所に装着することで(図21)左右の股関節角度と膝関節角度を計測することができた。図22に、実際に測定された起立時の股関節角度と対象動作検出のタイミング信号を示す。このタイミング信号に基づき、Phase1からPhase2への切替えが行われる(図10参照)。
【実施例】
【0070】
(実施例4)
本実施例では、歩行時のアシストの実験とその結果について説明する。被験者1名(健常男性、23歳)の腰部、大腿、下腿に計5つのAHRSを装着し(図21)、トレッドミル上を快適歩行速度である4km/hで歩行させた。膝関節角度の極値を適切に検出できていることを確認するために、アシストフェーズが切り替えられたタイミングでフラグを立てるようにした。さらに、膝関節の屈曲・伸展に合わせ、実際に収縮型インフレータブルアクチュエータが交互に駆動していることを確認するために、2つの収縮型インフレータブルアクチュエータの内圧を気圧センサ(NXPUSAInc.製:MPXV5010GC7U)を使って計測しながら同じ実験を行った。
【実施例】
【0071】
図23に右膝関節角度とR-Flexion、R-Extension、Neutral(第3の実施の形態、表2参照)の3つのアシストフェーズのフラグを示す。膝関節角度の極値を検出したタイミングで前記3つのアシストフェーズのフラグが立っていることが確認できた。
【実施例】
【0072】
さらに、図24に右膝関節角度と屈曲用の(Flexer)収縮型インフレータブルアクチュエータ(22aまたは22b)と伸展用の(Extensor)収縮型インフレータブルアクチュエータ(21aまたは21b)の内圧を示す。R-Extensionphaseに切り替わると(43.2秒付近)、およそ0.1s後に屈曲用IfAの内圧が減少し、伸展用のインフレータブルアクチュエータの内圧が上昇しているのが確認できた。なお、収縮型インフレータブルアクチュエータ駆動直後は、体積変化を伴いながら空気が流入するため、内圧は緩やかに増加し、体積が最大となった後、内圧は急激に上昇することが示されている。
【実施例】
【0073】
一方、NeutralphaseではDCポンプは駆動しておらず、伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータ内の空気は圧力勾配に従って屈曲用の(Flexer)収縮型インフレータブルアクチュエータに流入するため、伸展用の(Extensor)収縮型インフレータブルアクチュエータの内圧が減少し始めるのに時間を要している。だが、実際にインフレータブルアクチュエータを装着した際、荷重が加わることでより早く空気の流出入が起こると考えられる。Neutralphaseでは、既に屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータに空気が残留した状態であるので、R-Flexionphaseに入っても屈曲用の収縮型インフレータブルアクチュエータの内圧に大きな変化は見られない。しかし、伸展用の収縮型インフレータブルアクチュエータの内圧が急激に減少していることから、屈曲用IfAが適切に駆動していることが推定できる。
【実施例】
【0074】
(実施例5)
本実施例では、膨張型インフレータブルアクチュエータ(3aまたは3b)の試作品の実験とその結果について説明する。試作品は円形の平面形状を有し、直径20cm、16cm、12cmの3種類を用意した。内圧は大気圧からの差であるゲージ圧で表すこととし、0kPaから10kPaまで計測できるゲージ圧センサを使用した。ポンプは日東工器(株)製(空気流入量10L/min、24VDC)を用いた。
【実施例】
【0075】
図25(a)にΦ20cm膨張型インフレータブルアクチュエータの内圧の変化を示す。約3秒のところで空気流入を開始した。開始直後は急速に内圧が上昇し、その後、約2kPaで内圧は一旦一定となり、10秒付近で内圧が再度上昇した。このような変化は、体積膨張に伴い膨張型インフレータブルアクチュエータが塑性変形を起こしたことによると考えられる。このことから空気流入開始から内圧が一定である範囲が膨張型インフレータブルアクチュエータを塑性変形させずに安全に使用できる空気流入量だと言える。
【実施例】
【0076】
膨張型インフレータブルアクチュエータの直径がΦ16cm、Φ12cmと小さくなるにつれ、内圧が一定となる範囲が狭くなる傾向にある(同図(b)、(c))。図示はしていないが、Φ10cm膨張型インフレータブルアクチュエータでは、気圧が一定になる範囲が殆ど無く、用意したゲージ圧センサの上限となる10kPaにいきなり達してしまった。
【実施例】
【0077】
図26に膨張型インフレータブルアクチュエータの負荷試験の結果を示す。各直径の膨張型インフレータブルアクチュエータを二枚の板の間に設置し、上の板に0.7kg、5kg、10kg、15kg、20kg、25kg、30kgの錘を乗せて、それぞれ3回ずつ計測した。実験終了後、破裂や塑性変形が無いことを確認した。同図に示されるとおり、直径が大きいほど高く上昇させることができる。
【実施例】
【0078】
(実施例6)
本実施例では、筋電計を用いて起立動作の計測実験とその結果について説明する。図9で示したように、座位姿勢からの起立動作は、着座時における体幹の前傾によって重心を前方に移動させる動作フェーズ(Phase1)と、臀部離床時において下肢関節を伸展させ、重心を上方に移動させる動作フェーズ(Phase2)に分類することができる。特に本実施例では、Phase1における座面高の違いによって、Phase2時における筋活動に変化が現れるかを検証する。
【実施例】
【0079】
本実施例では30cm、40cm、50cmの台を用意し起立動作を各高さ5回ずつ計測した。動作の計測には慣性式モーションキャプチャ(XsensTechnologies社製、MVNAwinda)を用い、股・膝・足関節角度と腰部前後方向、垂直方向の加速度を計測した。また、ワイヤレス筋電計(COMETASystems社製、MiniWave)を用いて左右の大腿直筋と外側広筋に電極を貼り、起立動作時の生体電位信号から筋活動量(Electromyography:略してEMG)を計測した。得られたEMGから自乗平均平方根(RootMeanSquare:RMS)を算出し、積分筋電図(integrated EMG:iEMG)を算出した。
【実施例】
【0080】
座面高30cm、40cm、50cmの異なる条件下において起立動作を行った際の下肢関節角度データ、大腿直筋・外側広筋の生体信号から算出したiEMG、腰部の前後方向・垂直方向における加速度データを図27(a)、(b)、(c)に示す。同様に、他の被験者による結果を図28(a)、(b)、(c)に示す。いずれの場合も、大屈曲時において、大腿直筋と外側広筋のiEMGの増加が確認された。またこのとき、前後・垂直方向における腰部加速度は、前方向と上方向に増加が確認された。
【実施例】
【0081】
図29(a)、(b)は、被験者毎の各座面条件下における生体電位信号のRMS値を示す。同図より明らかなように、座面の高さに伴い、起立時に大腿直筋と外側広筋に発生するRMS値が減少する傾向が確認できた。さらに,統計的有意差(p<0.01、p<0.05)が認められた。
【実施例】
【0082】
Phase1からPhase2への遷移時において、大腿直筋と外側広筋のiEMGが増加したのは、臀部の離床直後に膝関節の伸展運動である抗重力動作が両筋群によって行われたためと思料できる。したがって,Phase1からPhase2に遷移する離床時では膝関節の伸展運動を支援する必要性は極めて高い。また腰部前後方向の加速度が前方向に増加したのはPhase1の重心の前方移動がなされたためと考えられる。垂直方向の加速度が上方向に増加したのはPhase2の重心の上方移動が始まったためと考えられる。その後、下方向の加速度が増加したのは、立位姿勢になり体重心の上方移動が止まるため,下方向の加速度が生じたと考えられる。以上のことから、腰部の加速度情報を用いることで離床時を推定できる。
【実施例】
【0083】
また、図29(a)、(b)には,座面の高さが高くなるにつれ大腿直筋と外側広筋のRMS値が減少していることが示されている。座面高の違いによるRMS値変化の主たる原因はPhase1における初期姿勢の違いにある。座面位置が高くなるに伴い、初期姿勢時の体重心も高い位置に分布し、離床してから立位姿勢になるまでのPhase2において、体重心の移動距離は短くなる。このような要因によって、大腿直筋と外側広筋の筋活動量が変化したものと考察できる。
【実施例】
【0084】
以上を踏まえ、Phase1においては臀部離床前の体重心の上方移動をアシストする膨張型インフレータブルアクチュエータが、Phase2においては臀部離床後の膝関節伸展動作をアシストする収縮型インフレータブルアクチュエータが、それぞれ必要になると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、筋力の弱った高齢者や病気療養者の日常生活の補助に用いることができる。また、健常者であっても、起立と着座動作が多い技術系の業務や登山などのスポーツにおいて、筋肉疲労を軽減する目的で使用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 アシスト装置
2 収縮型インフレータブルアクチュエータ
3a、3b 膨張型インフレータブルアクチュエータ
5 衣服
11、12、13 バンド
21a、21b、22a、22b 収縮型インフレータブルアクチュエータ
41a、41b、42a、42b、43a、43b バルブ
50a、50b、53 ポンプ
100 コントローラユニット
101 コントローラ
201 エアチューブ
201a、201b、202a、202b エアチューブ
302a、302b エアチューブ

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28