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明細書 :局所注射針

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-083907 (P2019-083907A)
公開日 令和元年6月6日(2019.6.6)
発明の名称または考案の名称 局所注射針
国際特許分類 A61M   5/32        (2006.01)
FI A61M 5/32 530
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2017-213187 (P2017-213187)
出願日 平成29年11月2日(2017.11.2)
発明者または考案者 【氏名】田代 圭太郎
【氏名】青柳 誠司
【氏名】鈴木 啓太
出願人 【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科薬科大学
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
【識別番号】514231181
【氏名又は名称】株式会社ナノ・グレインズ
個別代理人の代理人 【識別番号】100165179、【弁理士】、【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
【識別番号】100154852、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 太一
【識別番号】100174986、【弁理士】、【氏名又は名称】林 康旨
審査請求 未請求
テーマコード 4C066
Fターム 4C066AA09
4C066BB01
4C066KK08
4C066KK19
4C066LL30
要約 【課題】内視鏡観察下で好適に粘膜下層へ局注することができる局所注射針を提供する。
【解決手段】局所注射針1は、管状の挿入部10と、挿入部10に進退可能に挿通された針管20と、挿入部10に進退可能に挿通され、挿入部10から突没することにより互いの先端部が接近および離間する2以上の把持部材31a、31b、32a、32bを有する組織把持部30とを備え、組織把持部30の把持範囲A1の中心は針管20の中心軸X上に位置し、把持部材31a、31b、32a、32bの先端部に設けられた把持爪35A、35B、35C、35Dは、他の把持爪と正対しない方向に延びている。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
管状の挿入部と、
前記挿入部に進退可能に挿通された針管と、
前記挿入部に進退可能に挿通され、前記挿入部から突没することにより互いの先端部が接近および離間する2以上の把持部材を有する組織把持部と、
を備え、
前記組織把持部の把持範囲の中心は前記針管の中心軸上に位置し、
前記把持部材の先端部に設けられた把持爪は、他の把持爪と正対しない方向に延びている、
局所注射針。
【請求項2】
前記把持部材の先端部は、その延長線が前記針管の中心軸を通らない方向に延びている、請求項1に記載の局所注射針。
【請求項3】
前記組織把持部は前記挿入部内に配置された操作パイプに固定されており、前記針管が前記操作パイプに挿通されている、請求項1または2に記載の局所注射針。
【請求項4】
前記把持部材のうち少なくとも2つは、一本の線材を中間部で折り返して形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の局所注射針。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下で使用される局所注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡観察下で、組織に対して液体が注入されることがある。例えば、内視鏡下粘膜下層切除術(ESD)において、切除対象となる粘膜上の病変を筋層から離間させるために、粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸などが注入される。また、粘膜下層に墨汁を注入する点墨という手技により、腹腔鏡手術や開腹手術等の際に腹腔側から認識できるように病変の位置を示すことが知られている。
【0003】
胃や腸の壁の厚みは1センチメートルに満たないため、簡単に注射針が貫通してしまう。注射針が貫通すると、組織内に液体を注入できないため、胃壁や腸壁に対する局所注射(局注)は、繊細な操作が必要とされる難度の高い手技である。
【0004】
組織に局注を行うための医療機器として、特許文献1に記載の薬液注入用カテーテルが知られている。このカテーテルは、薬液注入部位を把持可能な先端部を有する複数の把持用部材を備えている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-8264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカテーテルは、主な対象として心筋組織を想定している。発明者は、特許文献1に記載のカテーテルにおいて、とりわけ把持用部材による組織の把持態様について改善すべき点を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、内視鏡観察下で好適に粘膜下層への局注が可能な局所注射針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、管状の挿入部と、前記挿入部に進退可能に挿通された針管と、前記挿入部に進退可能に挿通され、前記挿入部から突没することにより互いの先端部が接近および離間する2以上の把持部材を有する組織把持部とを備え、前記組織把持部の把持範囲の中心は前記針管の中心軸上に位置し、前記把持部材の先端部に設けられた把持爪は、他の把持爪と正対しない方向に延びている局所注射針である。
【0009】
前記把持部材の先端部は、その延長線が前記針管の中心軸を通らない方向に延びてもよい。
前記組織把持部は前記シース内に配置された操作パイプに固定されており、前記針管が前記操作パイプに挿通されてもよい。
前記把持部材のうち少なくとも2つは、一本の線材を中間部で折り返して形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の局所注射針によれば、内視鏡観察下で好適に粘膜下層へ局注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る局所注射針の全体図である。
【図2】同局所注射針の先端部の拡大斜視図である。
【図3】同先端部を平面方向から見た状態を示す図である。
【図4】同先端部の拡大正面図である。
【図5】組織把持部および操作パイプを示す図である。
【図6】同先端部の拡大正面図であり、組織把持部および針管が挿入部内に収容された状態を示す。
【図7】組織把持部に把持された組織を模式的に示す断面図である。
【図8】組織把持部に把持された組織と、針管との位置関係を示す模式図である。
【図9】本発明の変形例に係る局所注射針の先端部を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の局所注射針について、図1から図8を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の局所注射針1は、長尺の挿入部10と、挿入部10に挿通された針管20および組織把持部30と、挿入部10の基端側に設けられた操作部40とを備えている。

【0013】
図2は、局所注射針1の先端部を拡大して示す斜視図である。挿入部10は、管状に形成されており、可撓性を有する。本実施形態の挿入部10は、図2に示すように、公知のコイルシースで形成されているが、樹脂製チューブなど他の材料で形成されてもよい。挿入部10の長さや外径等の各部寸法は、針管20や組織把持部30の寸法等を考慮して適宜設定することができる。

【0014】
針管20としては、ステンレス鋼やニッケルチタン(NiTi)合金等で形成された、公知の長尺な針管を適宜選択して用いることができる。針管20の先端形状も、対象組織等に合わせて適宜選択されてよい。針管20は、挿入部10を通って操作部40内を延び、操作部40の後端から突出している。針管20の後端部には、樹脂等で形成された接続部材21が取り付けられており、接続部材21にシリンジ等を接続することにより、針管20内に生理食塩液や墨汁等の所望の液体を供給することができる。

【0015】
図2に示すように、組織把持部30は、把持部材31a、31b、32a、および32bの4本の把持部材を有する。各把持部材31a、31b、32a、32bは、挿入部10の先端から突出して挿入部10に支持されなくなると、自身の先端側領域が挿入部10の外径よりも外方に突出するように曲げぐせがつけられている。把持部材は、金属や樹脂で形成することができ、ステンレス鋼やNiTi合金等が材質として特に好ましい。

【0016】
各把持部材31a、31b、32a、32bの先端部は、図3に示すように、局所注射針1の平面視において、針管20の中心軸Xに接近する方向に折り曲げられている。これにより、組織把持部30は、各把持部材の先端部に計4つの把持爪を備えている。

【0017】
図4は、局所注射針1の正面図である。局所注射針1の正面視において、各把持部材31a、31b、32a、32bにそれぞれ設けられた把持爪35A、35B、35C、および35Dは、針管20の中心軸Xに向かって延びていない。すなわち、各把持爪の延長線上に中心軸Xは存在しない。また、各把持爪は、自身以外の他の3つの把持爪のいずれとも正対しない方向に延びている。
局所注射針1の正面視において、挿入部10に支持されない状態の各把持部材における先端部の折り曲げ開始点34A、34B、34C、および34Dを結ぶことにより、組織把持部30の把持範囲A1を定義することができる。局所注射針1の正面視において、把持範囲A1は、長辺の長さが挿入部10の外径よりも長い長方形であり、当該長方形における対角線の交点として定義される把持範囲A1の中心は、中心軸Xと一致する。

【0018】
図5に示すように、各把持部材は、挿入部10内に挿通された操作パイプ36に取り付けられている。把持部材31aおよび31bは、一本の線状部材(線材)を中間部31cで折り返すことにより形成されている。把持部材31aおよび31bの基端側領域は、操作パイプ36の先端部に設けられた接続パイプ37の外周面に設けられた溝37aおよび37bにそれぞれ挿入され、溶接や接着等により接続パイプ37に固定されている。図5では見えないが、把持部材32aおよび32bも、同様に、一本の線材を中間部で折り返して形成され、接続パイプ37の外周面に設けられた溝に挿入されて固定されている。

【0019】
操作パイプ36は、挿入部10内を通って操作部40内まで延びている。針管20は、挿入部10内において、操作パイプ36内に挿通されている(図4参照)。したがって、組織把持部30および針管20は、挿入部10に対して挿入部10の長手方向に相対移動可能である。さらに、組織把持部30と針管20とも、挿入部10の長手方向に相対移動可能である。

【0020】
操作部40は、図1に示すように、細長の操作部本体41と、操作部本体41に取り付けられたスライダ42とを有する。操作部本体41の先端部には、挿入部10の基端部が接続されている。スライダ42には、操作部本体41の内部空間に延びた操作パイプ36の後端部が接続されている。
スライダ42は、それぞれ操作部本体41に対して操作部本体41の長手方向に摺動可能に取り付けられている。

【0021】
使用者が操作部本体41を保持してスライダ42を操作部本体41に対して摺動させると、操作パイプ36が挿入部10に対して進退し、組織把持部30の各把持部材を挿入部10の先端から突没させて、各把持部材を接近および離間させることができる。
使用者が接続部材21を保持して操作部本体41に対して進退させると、針管20が挿入部10に対して進退し、針管20を挿入部10の先端から突没させることができる。
使用者は、スライダ42および接続部材21を適宜操作することにより、針管20と組織把持部30との位置関係を変更することもできる。

【0022】
上記のように構成された局所注射針1の使用時の動作について説明する。
使用者は、図示しない内視鏡を患者の体内に挿入し、処置対象部位の付近に内視鏡の先端部を接近させる。使用者は、内視鏡の操作部に開口する鉗子口から局所注射針1を挿入し、内視鏡の処置具チャンネル内に局所注射針1を挿通する。局所注射針1は、内視鏡を患者の体内に挿入する前に処置具チャンネルに挿通されてもよい。

【0023】
局所注射針1を鉗子口に挿入する際、使用者は、スライダ42および接続部材21を操作部40の後端側に移動させ、組織把持部30および針管20が完全に挿入部10内に収容された状態にしてから挿入する。
図6に、組織把持部30および針管20が完全に挿入部10内に収容された状態の局所注射針1の正面図を示す。この状態において、組織把持部30の把持範囲A1として定義される長方形の長辺の長さは挿入部10の内径以下となっている。しかし、把持範囲A1の対角線の中心が針管20の中心軸Xと一致(略一致を含む。)している点、および、各把持爪35A、35B、35C、35Dが中心軸Xに向かって延びておらず、かつ自身以外の他の3つの把持爪のいずれとも正対しない方向に延びている点は保持されている。

【0024】
使用者は、処置具チャンネル内で局所注射針1を内視鏡の先端側に向かって移動(前進)させる。挿入部10の先端部が内視鏡の先端に開口した処置具チャンネルから突出したら、使用者は、スライダ42を操作して、組織把持部30を挿入部10から突出させ、把持範囲A1を大きくする。

【0025】
使用者は、内視鏡あるいは局所注射針1を操作して、組織把持部30の把持爪を処置対象部位の組織に接触させる。続いて使用者は、把持爪が組織に接触した状態を保ちながら、組織把持部30に対して挿入部10を前進させたり、スライダ42を後退させたりして、各把持部材31a、31b、32a、32bの基端側を徐々に挿入部10内に収容していく。

【0026】
各把持部材の基端側が挿入部10内に収容されていくと、把持爪35Aと35Cとの距離、および把持爪35Bと35Dとの距離が徐々に短くなる。その結果、組織把持部30に把持された処置対象部位の組織が針管20の中心軸Xに接近するように手繰り寄せられ、針管20の前方に盛り上がるように移動する。

【0027】
図7に、組織把持部30が把持した組織Tsを模式的断面図で示す。処置対象部位が消化器官である場合、把持爪35A等は、組織Tsのうち、内側最表層の粘膜Mcのみに係止しているため、粘膜Mcのみが手繰り寄せられるとともに、粘膜Mcと結合した粘膜下層Smが伸展されて針管20を刺入するスペースが形成される。

【0028】
この状態で使用者が針管20を前進させると、針管20の先端が前方に位置する組織に刺入される。針管20が所定の深さだけ組織に刺入された状態で、使用者が接続部材21に接続したシリンジ(不図示)等を操作すると、シリンジ等の内部にある流体を組織内に注入することができる。処置対象部位が消化器官の場合は、粘膜Mcのみが手繰り寄せられて上述のようにスペースができているため、容易に粘膜下層Sm内に針管20の先端が位置するように針管20を組織Tsに刺入して、粘膜下層Sm内に流体を注入することができる。
接続部材21へのシリンジ等の接続のタイミングは、針管20の組織への刺入後に限られず、適宜のタイミングで行われてよい。

【0029】
以上説明したように、本実施形態の局所注射針1によれば、複数の把持部材を有する組織把持部30により処置対象部位の組織を針管20の前方に手繰り寄せるように移動させることができる。したがって、使用者は、針管20を前進させるだけで、容易に処置対象部位の組織に針管を刺入し、所望の流体を確実に組織内に注入することができる。
局所注射針1を用いることにより、内視鏡観察下で好適に粘膜下層へ局注することができる。

【0030】
従来の局所注射針のように、組織を手繰り寄せずに針管を刺入すると、針管前方の組織量が少ないために、針管の刺入量の調節が難しく、流体が組織内に注入されずに流出してしまったり、針管が組織を貫通してしまったりする可能性が少なくない。局所注射針1では、スライダ42により組織把持部30を適宜操作することで、針管20の前方に位置する組織の量を自由に調節することができる。その結果、針管20を細かく操作するなどしなくても、容易に針管20の刺入量の調節を行うことができ、針管が組織を貫通してしまう事態の発生も著しく低減することができる。

【0031】
図8には、組織Tsを手繰り寄せた状態の組織把持部30の把持爪と、針管20との位置関係を模式的に示している。図8は、局所注射針1を正面から見た状態であり、図面を見やすくするために挿入部10を省略して示している。
組織把持部30により、組織Tsは、針管20の前方において針管20が刺入されやすいように盛り上がっているが、把持爪35A、35B、35C、35Dは、いずれも中心軸Xに向かっていないため、組織Tsを強く把持しても針管20の前方に把持爪が位置することがなく、針管20の刺入を妨げない。
また、把持爪35A、35B、35C、35Dのいずれも、自身以外の把持爪と正対しない方向に延びているため、正対する2つの把持爪の先端間に組織が挟まれて、正対する強い力が加わる等の事態も発生しない。その結果、刺入される組織が押しつぶされたり挫滅したりすることがなく、刺入に好適な状態を保持しつつ針管20の前方に手繰り寄せられる。

【0032】
さらに、組織把持部30における4本の把持部材は、接続パイプ37の外周面に形成された溝内に配置されているため、把持部材が接続パイプ37の外周面上に突出しないように配置できる。したがって、挿入部10内における寸法増大を抑えて組織把持部30を構成することができる。
これに加えて、把持爪は、中心軸Xに向かわず、かつ自身以外の把持爪と正対しない向きに延びているため、組織把持部30が挿入部10内に完全に収容された際に挿入部10内で把持爪が干渉しにくい。その結果、把持爪を長くして組織を把持する性能を高めやすい一方、局所注射針1全体を細径に構成しやすい。

【0033】
加えて、4本の把持部材は、2本の線材を中間部で折り返して構成されているため、部品点数が少なくなり、簡素な構成とすることができる。さらに、中間部が抜け止めとして機能するため、把持部材が操作パイプ36から脱落することも好適に防止される。

【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。

【0035】
例えば、把持部材の数は、上述した4本に限られず、図9に示す変形例のように、針管20の中心軸Xを挟むように配置された2本であってもよいし、3本や5本以上であってもよい。
把持部材が2本の場合、把持範囲A1は、2つの折り曲げ開始点を結んだ線分となり、その中心は、当該線分の中点として定義される。把持範囲A1が、四角形以外の多角形である場合、把持範囲A1の中心は、すべての折り曲げ開始点を通る円の中心と定義する。

【0036】
また、線材の先端部を折り曲げて把持爪を形成するのに代えて、別途準備した爪部材を線材に溶接する等により把持爪を形成してもよい。この場合、線材と詰め部材との接続部の位置に基づいて把持範囲A1が設定されればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 局所注射針
10 挿入部
20 針管
30 組織把持部
31a、31b、32a、32b 把持部材
31c 中間部
35A、35B、35C、35D 把持爪
36 操作パイプ
A1 把持範囲
X 針管の中心軸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8