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明細書 :薄型アンテナ及びそれを用いた通信装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-010097 (P2021-010097A)
公開日 令和3年1月28日(2021.1.28)
発明の名称または考案の名称 薄型アンテナ及びそれを用いた通信装置
国際特許分類 H01Q   9/16        (2006.01)
H01Q  19/10        (2006.01)
H01Q  19/30        (2006.01)
H01Q   1/24        (2006.01)
FI H01Q 9/16
H01Q 19/10
H01Q 19/30
H01Q 1/24 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2019-122691 (P2019-122691)
出願日 令和元年7月1日(2019.7.1)
発明者または考案者 【氏名】牧野 滋
出願人 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査請求 未請求
テーマコード 5J020
5J047
Fターム 5J020AA03
5J020BA06
5J020BC09
5J020BD03
5J020BD04
5J020CA04
5J020DA03
5J047AA04
5J047AA07
5J047AB07
5J047FD00
要約 【課題】小型化でき、さらに薄型化を図ったアンテナの提供を目的とする。
【解決手段】金属層と、前記金属層に誘電体層を介して対向配置した放射素子層を有し、前記金属層と放射素子層との間に非接触給電素子を配置してあることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
金属層と、前記金属層に誘電体層を介して対向配置した放射素子層を有し、
前記金属層と放射素子層との間に非接触給電素子を配置してあることを特徴とする薄型アンテナ。
【請求項2】
前記非接触給電素子は、一対の素子からなるダイポール素子であることを特徴とする請求項1記載の薄型アンテナ。
【請求項3】
前記放射素子層は、前記ダイポール素子に対応させて所定のスリット部を有する一対の放射素子からなることを特徴とする請求項1記載の薄型アンテナ。
【請求項4】
ベース部と側壁部とからなる断面略L字形状の金属層と、前記ベース部に誘電体層を介して対向配置した放射素子層を有し、
前記ベース部と放射素子層との間に非接触給電素子を配置したことを特徴とする請求項1記載の薄型アンテナ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の薄型アンテナに通信モジュールを実装してあることを特徴とする通信装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で薄型化を可能にしたアンテナ及びそれを用いた小型の通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射板付きのダイポールアンテナにあっては、インピーダンス整合をとるためにダイポールアンテナと反射板の間に0.25波長の間隔が必要であるために薄型化が困難であることから、本出願人はこれまでに金属膜の上に誘電体層を介して所定幅で周期的に設けたスリットを有する金属膜を形成した磁気壁基板を提案することで薄型化を達成し(特許文献1)、さらには金属層の上に誘電体層を介して1つのスリットを有する一対の放射素子を配置し、さらにその上に誘電体層を介して非接触給電素子としてダイポールアンテナを配置することで、長さ方向の小型化を達成している(特許文献2)。
本発明者は、さらに薄型化を図るべく精意研究した結果、本発明に至った。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特許第5398426号公報
【特許文献2】特許第6452477号公報
【特許文献3】特願2018-076866号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、小型化でき、さらに薄型化を図ったアンテナの提供を目的とする。
また、このアンテナを用いることで小型化を図った通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る薄型アンテナは、金属層と、前記金属層に誘電体層を介して対向配置した放射素子層を有し、前記金属層と放射素子層との間に非接触給電素子を配置してあることを特徴とする。
【0006】
本出願人が先に提案している特許文献2に記載の発明にあっては、金属層の上に誘導体層を介して放射素子層を形成し、さらにその上に誘電体層を介してダイポールアンテナ(ダイポール素子)からなる非接触給電素子を配置したのに対して本発明は、この非接触給電素子を金属層と放射素子層との間に配置できれば、先の放射素子層の上に誘電体層を介して配置した非接触給電素子からなる厚みの部分を薄くできるのではないかとの着想に基づき、検討した結果、本発明に至った。
【0007】
本発明において、前記非接触給電素子は、一対の素子からなるダイポール素子であり、前記放射素子層は、前記ダイポール素子に対応させて所定のスリット部を有する一対の放射素子からなる構造であってもよく、また、ベース部と側壁部とからなる断面略L字形状の金属層と、前記ベース部に誘電体層を介して対向配置した放射素子層を有し、前記ベース部と放射素子層との間に非接触給電素子を配置することで、本出願人が先に出願している特許文献3に記載の内容を取り込み、さらに薄くて小型化を図ることもできる。
また、本発明に係る薄型アンテナに通信モジュール(チップ)を実装することで小型の通信装置が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る薄型アンテナにあっては、非接触給電素子を放射素子層と金属層の間に配置したので、その分、特許文献2の構造よりもさらに薄型になる。
また、放射素子と非接触給電素子との間隔、あるいは金属層と非接触給電素子との間隔を調整することで、アンテナ特性の可変制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る薄型アンテナの構造例を示す。(a)は断面図、(b)は構成部品の分解図、(c)は外観斜視図を示す。
【図2】本発明に係る薄型アンテナと、特性を比較するために用いた特許文献2に記載のアンテナの断面図を示す。
【図3】本発明に係る薄型アンテナと、図2に示した比較例のアンテナとのVSWR特性を示す。(In free space)は自由空間での値を示し、(On metal)は導体上での値を示す。
【図4】放射素子層の上側にダイポール素子を配置した比較例(a)に対する放射素子層と金属層との間にダイポール素子を配置した本発明(b)とにおいて、全体の厚みを同じにした場合の断面図、及び各寸法を示す。
【図5】図4で示した構造の自由空間と、導体上でのインピーダンス特性及びVSWR特性の比較を示す。
【図6】図4で示した構造の放射パターンの比較を示す。
【図7】図4で示した構造の放射効率曲線を示す。
【図8】比較例(a)の第1誘電体層の厚みと、本発明に係る薄型アンテナ(b)の誘電体層の全厚みとを同じにし、この誘電体層の中間の位置にダイポール素子を配置した例を示す。
【図9】図8に示した構造の違いによるインピーダンス特性比較、及びVSWR特性比較を示す。
【図10】図8に示した構造の違いによる放射パターンの比較を示す。
【図11】図8示した構造の違いによる放射効率曲線の比較グラフを示す。
【図12】ダイポール素子の配置高さの相違による特性比較を調査するために用いたアンテナの断面構造を示す。第1誘電体層21、及び第2誘電体層22の厚みの合計t=3.12mに対して、第1誘電体層21の厚みを(1)1×t/8,(2)2×t/8,(3)3×t/8,(4)4×t/8,(5)5×t/8,(6)6×t/8,(7)7×t/8と変化させた場合の評価サンプルの断面図を示す。
【図13】図12に示した各評価サンプル(1)~(7)のインピーダンス特性及びVSWR特性の比較結果を示す。
【図14】比較のために図2に示した構造において、第1誘電体層の厚みt’(=3.12mm)に対して、第2誘電体層の厚みh’を変化させた場合を評価するために用いた評価サンプルの断面図を示す。(1)h’=t/8,(2)h’=2t/8,(3)h’=3t/8,(4)h’=4t/8,(5)h’=5t/8,(6)h’=6t/8,(7)h’=7t/8,(8)h’=8t/8である。
【図15】図14に示した評価サンプルのインピーダンス特性、VSWR特性を示す。
【図16】第1誘電体層、及び第2誘電体層に比誘電率(εr)=4.4,誘電正接(tanδ)=0.02のものを用いて特性を評価した構造例を示す。
【図17】図16に示した構造のインピーダンス特性及びVSWR特性を示す。
【図18】図16に示した構造の薄型アンテナの放射パターンを示す。
【図19】特許文献3に記載してある構造に本発明に係る構造を適用した例を示す。
【図20】本発明に係る薄型アンテナの非接触給電素子と同一平面上、即ち第1誘電体層と第2誘電体層との間に通信モジュールを実装した構造例を示す。(a)は断面構造、(b)は外観斜視図、(c)は放射素子層の配置図、(d)は非接触給電素子(ダイポール素子)に通信モジュールを接続した状態、(e)は金属層を示す。
【図21】図20に対して、本発明に係る薄型アンテナの放射素子層の上面に通信モジュールを配置した構造例を示す。
【図22】図20に対して、本発明に係る薄型アンテナの背面(金属層の裏面)に通信モジュールを配置した構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る薄型アンテナの構造例を、特許文献2に記載の構造例を比較例として取り上げ説明する。

【0011】
本発明に係る薄型アンテナの構造例を図1に示す。
(a)は断面図、(b)に部品の構成例を示す。
金属層11の上に、第1誘電体層21を介して非接触給電素子13としてダイポール素子を配置してある。
ダイポール素子の上側には第2誘電体層22を介して金属板や金属膜からなる放射素子層12を有する。
非接触給電素子13は、長方形状の金属層の長手方向に沿って、中央部に設けたスリット部Sの両側に一対の素子13a,13bを有する例になっており、全長はlである。
一対の素子13a,13bの中央部側(スリット部側)に給電点F,Fを有し、この部分に図示を省略したが、背面側からスルーホール等を介して外部とそれぞれ結線されている。
本実施例では、ダイポール素子の上に第2誘電体層22を介して配置した放射素子層12もダイポール素子のスリット部Sに対応させて、その真上にスリット部Sが位置するように左右一対の放射素子12a,12bを配置した例になっている。
本実施例では放射素子12a,12bの形状が長方形になっているか、特許文献2に示すように切欠き部を有していてもよい。
本明細書では、図1にて薄型アンテナの左右方向の全長をLmm,幅をWmm,ダイポール素子13の全長をl(エル)mmと表現する。

【0012】
本発明に係る薄型アンテナは、非接触給電素子13を金属層11と放射素子層12との間に配置した点に特徴がある。
この点の作用,効果を検証するのに図2に示した金属層111の上に、第1誘電体層121を介して放射素子層112を配置し、その上に第2誘電体層122を介して、ダイポール素子113を配置した構造、即ち最上部にダイポール素子を配置したアンテナを比較例として取り上げた。
本明細書では図1(a)、図2において、本発明に係る放射素子層12と金属層11との全体の厚みをtmm、放射素子層12と非接触給電素子との間隔をhmmと表現する。
一方、従来構造においては、放射素子層112の上方に非接触給電素子113を有することからt’+h’が全体の厚みになるように表現する。
これらを比較したVSWR特性を図3のグラフに示す。
図3中(In free space)は自由空間中での値を示し、(On metal)は金属上(導体上)での測定値を示す。
図3のグラフから本発明に係る薄型アンテナ構造は、従来よりさらに薄型化が可能であるとともに、広帯域特性も向上することが明らかになった。

【0013】
次に設計上のパラメーターをいろいろ変えて比較検討したので以下、説明する。
図4は、比較例(a)と本発明(b)において、全体の厚みを3.2mm同一にし、比較例(a)は放射素子112(112a,112b)の上側にダイポール素子113(1113a,113b)を配置し、本発明に係る薄型アンテナ(b)は、内側にダイポール素子13(13a,13b)を配置した。
第1誘電体層21には、比誘電率(εr)=2.59,誘電正接(tanδ)=0.0028の基板を用い、第2誘電体層22には比誘電率(εr)=2.53,誘電正接(tanδ)=0.0018の基板を用いた。
スリット部Sの寸法は0.5mmである。
図5に、そのインピーダンス特性及びVSWR特性を示す。
図中Rはレジスタンス成分、Xはリアクタンス成分を示す。
本発明に係るアンテナは、帯域が広帯域化しているのが分かる。
なお、比帯域幅は自由空間で本発明が9.6%,比較例は7.3%であった。
また、導体上では本発明が6.3%,比較例は5.2%であった。
図6に放射パターンを示し、図7に放射効率曲線を示すが、それらにおいては本発明と比較例とに殆ど差が認められなかった。

【0014】
図8は、比較例(a)の金属層111と放射素子層112との間隔t’=3.12mmに対して、本発明に係る薄型アンテナ(b)の第1誘電体層の厚み1.56mm,第2誘電体層の厚み1.56mmとすることで、t=3.12mmの寸法が比較例の第1誘電体層の厚みとほぼ同じになるように設定した例である。
この場合のインピーダンス特性、VSWR特性を図9に示し、やはり、本発明に係るアンテナ構造は薄くできるとともに広帯域化している。
なお、図10に放射パターン,図11に放射効率曲線を示すが、これらには差が殆ど無かった。

【0015】
図12は全体の厚みを同一にし、第1誘電体層の厚みと第2誘電体層の厚みの比率を変えた例である。
t=3.12mmに対して、第1誘電層21の厚みを(1)~(7)までt/8ずつ大きくし、hの寸法を(1)~(7)までt/8ずつ小さくした。
図13に、インピーダンス特性及びVSWR特性を示す。
このことから全体の厚みを同じにしても、第1誘電体層と第2誘電体層の厚み比率を可変すると、所定の範囲にてアンテナ特性を可変制御できることが分かる。

【0016】
図14は比較のために図2に示した比較例において、第1誘電体層の厚みをt’=3.12mmに設定し、第2誘電体層の厚みh’=をt’/8ずつ(1)~(8)と増加させて、(8)においてはt’=h’=3.12mmとした例である。
図15に、そのインピーダンスの特性変化とVSWR特性の変化を示す。
グラフに示したかっこ書きの数字は図14の評価サンプル(1)~(8)に対応している。
図12の本発明に係る構造と図14の比較例とを相対比較すると、本発明に係る薄型アンテナの方が大きい範囲にて可変制御が可能である。

【0017】
次に誘電体層の特性を変えたものを実施例2として評価した。
その際の設計パラメーターを図16にて説明する。
全長L=63.3mm,幅W=30mm,スリット部幅S=0.5mm,ダイポール素子の全長l=21mm,全体の厚みt=0.3mm,h=0.07mm,放射素子12a,12bのグリット幅g=31.4mm、よって放射素子の長さ31.4mmは幅W=30mmよりも長くなっている。
第1及び第2誘電体層は、比誘電率εr=4.4,誘電正接tanδ=0.02と、先の実施例1よりも値の大きい基板を採用した。
図17に、インピーダンス特性及びVSWR特性のグラフを示す。
放射パターンを図18に示す。
グラフ中、fは自由空間、mは金属上を示す。
図17のグラフから自由空間における値は、中心周波数2.45GHz,VSWR=3以下の帯域幅は2.41~2.50GHzとなり、比帯域幅は3.27%であった。
金属上(導体上)における値は、中心周波数2.46GHz,帯域幅2.42~2.49GHz,比帯域幅2.85%であった。
正面利得は自由空間で1.12dBi,金属上にて0.85dBiであった。
これらのことから、誘電正接tanδ=0.02と実施例1よりも1桁大きいものを使用すると多少利得は低下するものの、厚みが約0.3mmとさらに薄くなることが明らかになった。

【0018】
図19に実施例3として、特許文献3の構造に本発明に係る構造を適用した例を示す。
本実施例は金属層をベース部11Aと、このベース部11Aから立設した側壁部11Bとからなる断面L字形状にした例になっている。
このようにすると、側壁部11Bが鏡像壁層として作用し、一枚の放射素子12Aを、この側壁部11Bとの間に所定のスリット部Sを形成させて配置することで、実施例1,2に対して長さが約半分に小型化できる。
この場合に、非接触給電素子13Aはベース部11Aと放射素子12Aとの間に誘電体層を介して配置される。
非接触給電素子13Aと側壁部11Bにはスルーホール等を形成し、リード線1を用いて、1a,1bの給電点に結線される。

【0019】
図20に、本発明に係る薄型アンテナに通信モジュール(チップ)30を実装した例を模式的に示す。
図20に示した実施例は、金属層11と放射素子層12(12a,12b)の間に設けた非接触給電素子13(13a,13b)と平面的に通信モジュール30を実装した例である。
従って、通信モジュール30も第1誘電体層21と第2誘電体層22との間に位置し、ダイポール素子13a,13bの給電点F,Fに回路パターン又はリード線(31,32)等にて直接結線される。
通信モジュール(チップ)にパッシグ型のものを用いることで、薄くて小型の通信装置となる。

【0020】
図20が非接触給電素子(ダイポール素子)に通信モジュール30を直接的に実装した例を示したが、図21は薄型アンテナの背面(金属層11の裏面)に通信モジュール30を実装し、スルーホール等を介してダイポール素子に給電する構造例を示す。
このようにすると、通信モジュールの駆動や制御に必要な回路部品も金属層の背面に実装できる。
図22は、薄型アンテナの上面(放射素子層の上面)に通信モジュール30を実装し、スルーホール等を介してダイポール素子(13a,13b)と電気接続(31,32)する例になっている。
この場合に、通信モジュール30に必要な回路や部品を放射素子層12の上面に実装することになる。
【符号の説明】
【0021】
11 金属層
12 放射素子層
13 非接触給電素子
21 第1誘電体層
22 第2誘電体層
スリット部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21