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明細書 :骨格筋幹細胞誘導方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-103393 (P2019-103393A)
公開日 令和元年6月27日(2019.6.27)
発明の名称または考案の名称 骨格筋幹細胞誘導方法
国際特許分類 C12N   5/10        (2006.01)
A61K  35/34        (2015.01)
A61P  21/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 5/10
A61K 35/34
A61P 21/00
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2017-236186 (P2017-236186)
出願日 平成29年12月8日(2017.12.8)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 貴彦
出願人 【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C087
Fターム 4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA02
4B065BA03
4B065BB19
4B065BB25
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB47
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA94
要約 【課題】骨格筋幹細胞の誘導方法の提供。
【解決手段】(i)Pax3遺伝子またはPax7遺伝子、及び(ii)Notchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子を体細胞に導入する工程を含む、骨格筋幹細胞の誘導方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
(i)Pax3遺伝子及び/またはPax7遺伝子、及び
(ii)少なくとも1種のNotchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子
を体細胞に導入する工程を含む、骨格筋幹細胞の誘導方法。
【請求項2】
少なくとも1種の増殖を促進する転写因子をコードする遺伝子をさらに導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Pax3遺伝子及び/またはPax7遺伝子、Heyl遺伝子、並びにKlf4遺伝子を導入する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
遺伝子を導入する体細胞が一過的にMyoD1ファミリー遺伝子を発現した体細胞である、または遺伝子を導入後にMyoD1ファミリー遺伝子を一過的に発現させる工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
体細胞が中胚葉細胞である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
中胚葉細胞が多能性幹細胞由来である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の骨格筋幹細胞を含む、筋疾患の治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主に骨格筋幹細胞誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋ジストロフィーなどの難治性筋疾患は、様々な研究が展開されているにも関わらず、いまだ普遍的な治療法はない。
【0003】
ジストロフィン欠損によるDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)のモデルマウスを用いた研究により、骨格筋系譜幹細胞移植は有効な治療法になりうると期待されている(非特許文献1)。しかし、ヒトにおいては治療に十分な質と量の骨格筋幹細胞を調整することが困難であり、骨格筋幹細胞の調整開発が求められている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Sakai H, Sato T, Sakurai H, Yamamoto T, Hanaoka K, et al. (2013) Fetal Skeletal Muscle Progenitors Have Regenerative Capacity after Intramuscular Engraftment in Dystrophin Deficient Mice. PLoS ONE 8(5): e63016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、骨格筋幹細胞の誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、(i)Pax3遺伝子またはPax7遺伝子、及び(ii)Notchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子を体細胞に導入する工程を含む方法により、骨格筋幹細胞の誘導ができることを見出した。本発明は、斯かる発見にさらに検討を重ねて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する:
項1、(i)Pax3遺伝子及び/またはPax7遺伝子、及び
(ii)少なくとも1種のNotchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子
を体細胞に導入する工程を含む、骨格筋幹細胞の誘導方法。
【0008】
項2、少なくとも1種の増殖を促進する転写因子をコードする遺伝子をさらに導入する、項1に記載の方法。
【0009】
項3、Pax3遺伝子及び/またはPax7遺伝子、Heyl遺伝子、並びにKlf4遺伝子を導入する、項2に記載の方法。
【0010】
項4、遺伝子を導入する体細胞が一過的にMyoD1ファミリー遺伝子を発現した体細胞である、または遺伝子を導入後にMyoD1ファミリー遺伝子を一過的に発現させる工程を含む項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0011】
項5、体細胞が中胚葉細胞である、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0012】
項6、中胚葉細胞が多能性幹細胞由来である、項5に記載の方法。
【0013】
項7、項1~6のいずれか1項に記載の骨格筋幹細胞を含む、筋疾患の治療剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、骨格筋幹細胞の誘導方法が提供される。本発明の方法により得られる骨格筋幹細胞は、移植する本人の体細胞から容易に誘導できるので、得られた骨格筋幹細胞を移植した場合にも免疫学的な拒絶応答などの問題は生じない。十分な質と量の骨格筋幹細胞を調整することが可能となり、難治性筋疾患の治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】マウス胚発生期(Fetus)、弱週令期(infant)、成体期それぞれからGFP陽性細胞を採取した。
【図1B】マイクロアレイ法を用いた網羅的遺伝子発現解析によるPax3陽性細胞の主成分分析結果。1)マウス胚性幹細胞(ESC)、2)マウス生殖幹細胞(GSC)、3)マウス繊維芽細胞(MEF)、4)マウス神経幹細胞(NSC)、5)マウスiPS細胞(iPS)、及び6)Pax3陽性骨格筋幹細胞(Pax3-GFP)。
【図1C】共通する転写因子群108遺伝子。
【図1D】抜粋した18種類の転写因子。
【図2A】骨格筋幹細胞を検出する為の遺伝子改変マウス情報。(DM; dermomyotome, M; myotome, DML; dorsomedial lip, VLL; ventolateral lip)
【図2B】骨格筋幹細胞への分化誘導の概念図。
【図2C】遺伝子改変マウス由来線維芽細胞の回収法。
【図2D】筋制御因子MyoDを遺伝子改変線維芽細胞に導入した際の経時的なGFP及びRFP発現変化。
【図2E】Pax3-GFP発現の解析結果。
【図3A】ヒトPAX3遺伝子座へのGFP遺伝子ノックインならびに誘導型MYOD遺伝子の模式図。
【図3B】PAX3発現の免疫染色図。
【図3C】ドキシサイクリン(DOX)添加によるMYOD発現誘導(赤)ならびに筋細胞への分化の様子。
【図3D】DOX無添加・添加時におけるGFP発現(PAX3)およびmCherry(DOX-MYOD)発現。
【図3E】図3D条件時におけるGFP陽性細胞中に転写産物解析。
【図3F】ヒトiPS細胞から中胚葉系譜細胞への分化誘導時の細胞形態(下パネル)とGFP発現(上パネル)。
【図3G】中胚葉誘導7日目のGFP発現プロット図(上パネル)、並びに、外胚葉(neural)及び中胚葉(PSM; presomitic mesoderm, somite)の割合(下パネル)。
【図3H】中胚葉誘導時のGFP陽性細胞における遺伝子発現変化。
【図4A】方法の概要。
【図4B】中胚葉細胞にPAX3, HEYL, KLF4各遺伝子導入後に72時間DOX処理した後、1週間骨格筋幹細胞培養条件でGFP発現が検出された細胞集団。
【図4C】中胚葉細胞に72時間DOX処理した細胞集団とPAX3, HEYL, KLF4遺伝子を導入しDOX処理した集団中のGFP陽性発現比率。
【図4D】図4Cにおける細胞内遺伝子発現比較。
【図4E】骨格筋の分化誘導結果。
【図5A】移植実験の概要。
【図5B】移植後の骨格筋断面図。ジストロフィン(DYS)、ヒト核(hNUC)、核全般(DAPI)、ラミニンa2鎖(LAMA2)の免疫染色結果。
【図5C】3遺伝子導入後DOX処理し一週間培養した細胞集団中でGFP陽性細胞(+GFP+ cells)とGFP陰性細胞(+GFP- cells)に選別後、同数細胞を移植した結果(左パネル)、およびその定量グラフ(右パネル)。
【図5D】図5Cと同条件時における骨格筋幹細胞マーカーPAX7発現の免疫染色図(左パネル)およびその定量グラフ(右パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、骨格筋幹細胞の誘導方法に関する。

【0017】
骨格筋幹細胞
骨格筋幹細胞(Muscle satellite cells、SC)とは、骨格筋中に存在する組織幹細胞であり、筋肉の損傷時の再生に寄与する細胞である。骨格筋幹細胞は単核の細胞であり、生体内では多核の筋繊維の基底膜下に存在している。骨格筋幹細胞は、発生・成長期の筋前駆細胞から転写因子Pax3及び/またはPax7を発現する細胞として、派生すると考えられている。

【0018】
体細胞
本発明の格筋幹細胞の誘導方法は、特定の遺伝子を原材料の体細胞に導入する工程を含む。

【0019】
原材料の体細胞としては哺乳動物由来のものを使用する。哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、サル、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳類及びヒトが挙げられ、特にヒトが挙げられる。

【0020】
骨格筋幹細胞を誘導される原材料の体細胞は、特に限定されない。例えば、例えば線維芽細胞、ケラチノサイト、口腔粘膜上皮細胞、鼻腔粘膜上皮細胞、気道粘膜上皮細胞、胃粘膜上皮細胞、腸管粘膜上皮細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、歯肉細胞(歯肉線維芽細胞、歯肉上皮細胞)、歯髄細胞、歯根膜細胞、骨髄細胞、骨髄由来間質細胞、白血球、リンパ球、筋細胞、結膜上皮細胞、破骨細胞などの体細胞を用いることができる。

【0021】
また、胚性幹細胞(Embryonic stem cell:ES細胞)や人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)などの多能性幹細胞;多能性幹細胞から分化誘導した内胚葉、中胚葉、外胚葉の細胞;多能性幹細胞から分化誘導した各種の体細胞も使用することができる。

【0022】
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)、神経幹細胞(Neural stem cell)、肝幹細胞(hepatic stem cell)、腸幹細胞、皮膚幹細胞、毛包幹細胞、色素細胞幹細胞などの体性幹細胞を使用することもできる。

【0023】
これらの体細胞は、当業者に公知の手法により取得することができる。

【0024】
原材料の体細胞の好ましい一例として、ヒトiPS細胞201B7株が挙げられる。ヒトiPS細胞201B7株の作製方法は、文献:Takahashi et al., Cell (2007) 131, 861-872.に記載されている。

【0025】
本発明の好ましい態様においては、原材料の体細胞として、多能性幹細胞から分化誘導した中胚葉細胞を使用する。

【0026】
中胚葉細胞としては、中軸中胚葉細胞、沿軸中胚葉細胞、側板中胚葉細胞が挙げられる。中でも、沿軸中胚葉細胞が好ましい。

【0027】
中胚葉細胞として、中軸中胚葉細胞、沿軸中胚葉細胞または側板中胚葉細胞をさらに分化させた細胞を使用することもできる。例えば、沿軸中胚葉細胞から分化誘導した体節細胞を使用することができる。

【0028】
多能性幹細胞から中胚葉細胞の分化誘導は、例えば、文献:Loh et al., Cell (2017) 166, 451-467.に記載の方法により実施することができる。

【0029】
具体的には、
(1)多能性幹細胞から沿軸中胚葉細胞へと分化誘導を行い、
(2)次いでGSK-3阻害剤とALK阻害剤の組み合わせである化合物CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-Dichlorophenyl)-5-(5-methyl-1H-imidazol-2-yl)-2-pyrimidinyl]amino]ethyl]amino]-3-pyridinecarbonitrile、GSK-3阻害剤)及びLDN193189(4-(6-(4-(piperazin-1-yl)phenyl)pyrazolo[1,5-a]pyrimidin-3-yl)quinoline hydrochloride、ALK2及びALK3の阻害剤)、ならびに成長因子FGF2を用いて、体節細胞へと分化誘導を行うことで、多能性幹細胞から中胚葉細胞の分化誘導を行うことができる。

【0030】
遺伝子
本発明の骨格筋幹細胞の誘導方法は、
(i)Pax3遺伝子またはPax7遺伝子、及び、
(ii)Notchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子
を原材料の体細胞に導入する工程を含む。

【0031】
(i)Pax3遺伝子またはPax7遺伝子
Pax3遺伝子またはPax7遺伝子は、それぞれpaired box(Pax)ファミリーに属する転写因子公知の遺伝子である。

【0032】
(ii)Notchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子
細胞膜上に存在するNotch受容体に対してリガンドが結合すると、Notch細胞内ドメインが核内に移行し、核内に存在するエフェクター転写因子と会合し標的遺伝子の活性化が起こる。Notchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子とは、このようなNotch受容体の下流で機能するエフェクター転写因子をコードする遺伝子である。Notchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子としては、Heyl遺伝子、Hey1遺伝子、Hes1遺伝子等が挙げられる。Notchシグナル経路のエフェクター転写因子をコードする遺伝子は、1種または2種以上を導入することができる。

【0033】
(iii)増殖を促進する転写因子をコードする遺伝子
本発明の誘導方法において、上記(i)及び(ii)の遺伝子に加えて、増殖を促進する転写因子をコードする遺伝子を導入することが、骨格筋幹細胞の誘導効率から好ましい。増殖を促進する転写因子をコードする遺伝子としては、Klfファミリー遺伝子が挙げられる。Klfファミリー遺伝子は増殖を促進する転写因子をコードすることが知られている。、Klf遺伝子としては、Klf4遺伝子、Klf2遺伝子、Klf5遺伝子等が挙げられる。増殖を促進する転写因子をコードする遺伝子は、1種または2種以上を導入することができる。

【0034】
本発明の効果を損なわない範囲で、他のさらに導入することもできる。このような遺伝子として、例えば、Egr2(Krox20)遺伝子、Mef2c遺伝子、Pitx2遺伝子などを挙げることができるが、これに限定されない。

【0035】
本発明の誘導方法において、原材料の体細胞に導入する遺伝子の好ましい例としては、Pax3遺伝子及びHeyl遺伝子の組み合わせ;Pax7遺伝子及びHeyl遺伝子の組み合わせ;Pax3遺伝子、Heyl遺伝子、及びKlf4遺伝子の組み合わせ;Pax7遺伝子、Heyl遺伝子、及びKlf4遺伝子の組み合わせが例示される。Pax3遺伝子、Heyl遺伝子、及びKlf4遺伝子の組み合わせ;Pax7遺伝子、Heyl遺伝子、及びKlf4遺伝子の組み合わせが好ましく、Pax3遺伝子、Heyl遺伝子、及びKlf4遺伝子の組み合わせが特に好ましい。

【0036】
上記の遺伝子の塩基配列及び各遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は公知である。本発明において使用することができる遺伝子のcDNA塩基配列及びこれがコードするタンパク質のアミノ酸配列について、米国生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供するGenBankに登録アクセッション番号で登録されている(複数のリビジョン(revision)が登録されている場合、最新のリビジョンを指すと理解される。)を以下に例示する:
ヒトPax3遺伝子cDNA配列:NM_000438、NM_001127366、NM_013942、NM_181457、NM_181458、NM_181459、NM_181460、NM_181461(例えば、NM_000438.5、NM_001127366.2、NM_013942.4、NM_181457.3、NM_181458.3、NM_181459.3、NM_181460.3、NM_181461.3)、
ヒトPax3タンパク質アミノ酸配位列:NP_000429、NP_001120838、NP_039230、NP_852122、NP_852123、NP_852124、NP_852125、NP_852126(例えば、NP_000429.2、NP_001120838.1、NP_039230.1、NP_852122.1、NP_852123.1、NP_852124.1、NP_852125.1、NP_852126.1)。

【0037】
ヒトPax7遺伝子cDNA配列:NM_001135254、NM_002584、NM_013945(例えば、NM_001135254.1、NM_002584.2、NM_013945)、
ヒトPax7タンパク質アミノ酸配位列:NP_001128726、NP_002575、NP_039236(例えば、NP_001128726.1、NP_002575.1、NP_039236.1)。

【0038】
ヒトHeyl遺伝子cDNA配列:NM_014571(例えば、NM_014571.3)、
ヒトHeylタンパク質アミノ酸配位列:NP_055386(例えば、NP_055386.1)。

【0039】
ヒトHey1遺伝子cDNA配列:NM_001040708、NM_001282851、NM_012258(例えば、NM_001040708.1、NM_001282851.1、NM_012258.3)、
ヒトHey1タンパク質アミノ酸配位列:NP_001035798、NP_001269780、NP_036390(例えば、NP_001035798.1、NP_001269780.1、NP_036390.3)。

【0040】
ヒトHes1遺伝子cDNA配列:NM_005524(例えば、NM_005524.3)、
ヒトHes1タンパク質アミノ酸配位列:NP_005515(例えば、NP_005515.1)。

【0041】
ヒトKlf4遺伝子cDNA配列:NM_001314052、NM_004235(例えば、NM_001314052.1、NM_004235.5)、
ヒトKlf4タンパク質アミノ酸配位列:NP_001300981、NP_004226(例えば、NP_001300981.1、NP_004226.3)。

【0042】
ヒトKlf2遺伝子cDNA配列:NM_016270(例えば、NM_016270.3)、
ヒトKlf2タンパク質アミノ酸配位列:NP_057354(例えば、NP_057354.1)。

【0043】
ヒトKlf5遺伝子cDNA配列:NM_001286818、NM_001730(例えば、NM_001286818.1、NM_001730.4)、
ヒトKlf5タンパク質アミノ酸配位列:NP_001273747、NP_001721(例えば、NP_001273747.1、NP_001721.2)。

【0044】
ヒトEgr2遺伝子cDNA配列:NM_000399、NM_001136177、NM_001136178、NM_001136179、NM_001321037(例えば、NM_000399.4、NM_001136177.2、NM_001136178.1、NM_001136179.2、NM_001321037.1)、
ヒトEgr2タンパク質アミノ酸配位列:NP_000390、NP_001129649、NP_001129650、NP_001129651、NP_001307966(例えば、NP_000390.2、NP_001129649.1、NP_001129650.1、NP_001129651.1、NP_001307966.1)。

【0045】
ヒトMef2c遺伝子cDNA配列:NM_001131005、NM_001193347、NM_001193348、NM_001193349、NM_001193350、NM_001308002、NM_002397(例えば、NM_001131005.2、NM_001193347.1、NM_001193348.1、NM_001193349.1、NM_001193350.1、NM_001308002.1、NM_002397.4)、
ヒトMef2cタンパク質アミノ酸配位列:NP_001124477、NP_001180276、NP_001180277、NP_001180278、NP_001180279、NP_001294931、NP_002388(例えば、NP_001124477.1、NP_001180276.1、NP_001180277.1、NP_001180278.1、NP_001180279.1、NP_001294931.1、NP_002388.2)。

【0046】
ヒトPitx2遺伝子cDNA配列:NM_000325、NM_001204397、NM_001204398、NM_001204399、NM_153426、NM_153427(例えば、NM_000325.5、NM_001204397.1、NM_001204398.1、NM_001204399.1、NM_153426.2、NM_153427.2)、
ヒトPitx2タンパク質アミノ酸配位列:NP_000316、NP_001191326、NP_001191327、NP_001191328、NP_700475、NP_700476(例えば、NP_000316.2、NP_001191326.1、NP_001191327.1、NP_001191328.1、NP_700475.1、NP_700476.1)。

【0047】
本発明の方法において、上記の遺伝子を体細胞に導入する手段は、遺伝子導入による分化誘導の手法において広く用いられている手段により行うことができる。具体的には、目的遺伝子を、1又は複数の発現ベクターに組み込み、対象とする体細胞に発現ベクターを導入し、細胞内で発現させることが好ましい。

【0048】
遺伝子を導入する方法としては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどのウイルス性ベクターを感染させる方法が挙げられる。また、カチオニック・リポソーム、カチオニック・ポリマー、電気穿孔法等の非ウイルスベクターで、プラスミドベクターやエピゾーマルベクター、遺伝子の発現産物(mRNA、タンパク質)をトランスフェクションする方法も用いることもできる。

【0049】
MyoD1ファミリー遺伝子の一過的に発現
本発明の方法において、遺伝子を導入する体細胞が一過的にMyoD1ファミリー遺伝子を発現した体細胞である、または遺伝子を導入後にMyoD1ファミリー遺伝子を一過的に発現させる工程をさらに含むことが好ましい。なお、本明細書において「一過的に発現した」を「primed」と表現する場合がある。

【0050】
MyoDファミリー遺伝子は筋肉の分化の制御に関与するbHLH(basic helix loop helix
)型転写因子をコードする一群の遺伝子である。具体的には、MyoD1、Myf5、myogenin、MRF4が挙げられ、好ましくはMyoD1である。

【0051】
MyoDファミリー遺伝子の一過的な発現をする手段は、当該遺伝子の一過的な発現が達成されれば特に限定されない。例えば、特開2014-533491、に記載の方法を使用することができる。なかでも、テトラサイクリン応答性プロモーターの制御下のMyoDファミリー遺伝子を有するベクターを細胞に導入し、ドキシサイクリンの存在下で培養を行うことによりMyoDファミリー遺伝子の一過的な発現を実現する手段が、好ましい態様としてあげられる。

【0052】
MyoDファミリー遺伝子の一過的な発現の期間としては、例えば、1週間(7日)以下、好ましくは3~5日程度、より好ましくは3日程度とすることができる。

【0053】
ヒト(Homo sapiens)のMyoD1遺伝子のcDNA塩基配列及びこれがコードするタンパク質のアミノ酸配列は、下記のアクセッション番号で登録されている(複数のリビジョン(revision)が登録されている場合、最新のリビジョンを指すと理解される。):

【0054】
ヒトMyoD遺伝子cDNA配列:NM_002478(例えば、NM_002478.4)、
ヒトMyoDタンパク質アミノ酸配位列:NP_002469(例えば、NP_002469.2)。

【0055】
培養
本発明の方法において、哺乳動物の分化した体細胞を、遺伝子の導入後、培地中で培養することが好ましい。

【0056】
培養は、細胞及び培地を格納するための適切な容器中で行なうことができる。好適な培養を行なう手法として、約37℃程度および二酸化炭素濃度約5%程度の条件下で培養する手法が例示されるが、これに限定されるものではない。上記条件での培養は、例えば公知のCO2インキュベータを用いて行なうことができる。

【0057】
培養を行う期間は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されるものではない。例えば、12時間~1ヶ月程度、1日~3週間程度、3日間~2週間程度とすることができる。必要に応じて、培地交換を行うことができる。培養条件は、常法に準じることが好ましい。

【0058】
培養において、必要において継代を行うことができる。継代を行う場合は、コンフルエント状態に到達する前または直後に細胞を回収し、細胞を新しい培地に播種する。また、本発明の培養において、培地を適宜交換することもできる。

【0059】
培地
本発明の方法で用いる培地は、特に限定されない。DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、EMEM(Eagle's minimal essential medium)、αMEM(alpha Modified Minimum Essential Medium)などの通常の液体培地を用いることができる。必要に応じて、血清成分(Fetal Bovine Serum(FBS)、Human Serum(HS))、ストレプトマイシン、ペニシリンなどの抗菌薬、Non-Essential Amino Acids(NEAA)等の成分を添加することができる。

【0060】
調製
かくして、体細胞から骨格筋幹細胞が誘導される。

【0061】
調製された骨格筋幹細胞は、ある態様においては、導入した上記遺伝子を外来性の遺伝子として有する。ここで、「外来性」とは、主に上記の導入手段の結果導入された遺伝子又はその発現産物の態様であって、天然の態様とは異なる態様を指す。例えば、天然のプロモーター以外のプロモーターに発現を制御される遺伝子、天然以外の染色体上の位置、若しくは、染色体外に存在する遺伝子の態様などが挙げられる。

【0062】
骨格筋幹細胞は、骨格筋幹細胞以外の細胞(例えば、元の体細胞。)との混合物として得られる場合がある。このような場合、骨格筋幹細胞と骨格筋幹細胞以外の細胞とを、必要に応じて、分離することができる。分離をするための手段は特に限定されない。例えば、Pax3タンパク質及び/またはPax7タンパク質の発現を指標として、セルソーターやマグネティックビーズを用いて分離することができる。

【0063】
治療用途
本発明により得られる骨格筋幹細胞は、種々の疾患を治療するために用いることができる。この場合、骨格筋幹細胞は治療剤であり、移植材料の形態で提供されうる。植材料とは、筋組織(特に、筋繊維)の修復、再建のために生体内に導入する。

【0064】
上記の治療する対象となる疾患としては、外傷や損傷による筋損傷、筋ジストロフィーなどの難治性筋疾患、さらには加齢や廃用性による筋萎縮が例示されるが、これに限定されない。

【0065】
本明細書において、特に明示のない限り、「治療」という用語は、患者が特定の疾患又は障害を患っている間に行う処置を意図し、これによって疾患若しくは障害の重症度、又は1つ若しくは複数のその症状が軽減されるか、又は疾患若しくは障害の進行が遅延又は減速することを意味する。本明細書において、「治療」には「予防」を含むものとする。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例だけに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
<材料と方法>
実験マウス
Pax3GFP/+ (Relaix et al. 2005, Nature)及びBAC MyoD-Cre; Rosa26CAG-LSL-tdTomato/+ (Sato et al. 2014, Nat Commun)からは骨格筋幹細胞採取のために掛け合わせ、Dmd-/y (Kudoh et al. 2000, BBRC)とNSG(日本チャールズリバー)をそれぞれ掛け合わせて作成した免疫不全筋ジストロフィーモデルマウスを細胞移植用に準備した。
【実施例】
【0068】
採取した細胞移植実験は下記の通りである。Dmd-/y: NSG8週齢オスマウスの下肢前脛骨筋に対して5.0×105細胞を、20μLの10% matrigel (BD)、2% horse serum(SIGMA)および10μM Y-27632(Nacalai)を含有するHBSS溶液(GIBCO)で懸濁し、筋注射を行なった。その後、4週間後に免疫染色により解析を行なった。
【実施例】
【0069】
細胞分取法
マウス胚、成体マウス骨格筋組織及びヒトiPS細胞由来細胞集団より目的の生細胞を分取するため、FACSJazz(BD)を用いた。マウス胚、マウス後肢、腹筋および横隔膜組織から骨格筋組織を単離後、0.2%コラゲナーゼ溶液(Worthington)にて37℃で数時間反応させて組織を解離させた。反応溶液中から単細胞を回収するため、濾過(BD; cell strainer 35μm)して毎分1000回転にて5分間遠心を行った。沈殿した細胞集団に細胞分取用溶液(1%BSA in PBS)に再懸濁し、死細胞除去のため1μg/mL Propidium iodide(Molecular Probes)を添加し、生細胞および蛍光発現細胞分取を行った。中胚葉系譜細胞の分取にはAPC標識済抗DLL1抗体(R&D、1/200希釈)を用いた。
【実施例】
【0070】
細胞培養法
マウス初代線維芽細胞は、0.1%ゼラチン溶液 in PBSを用いて培養皿をコートしたものに播種し、10% FBS in DMEM (Nacalai)にて培養を行った。pMXs vectorによる遺伝子強制発現には70% confluentの状態でウイルス感染により各遺伝子の強制発現を行い、その後、骨格筋幹細胞培養液(20% FBS含有DMEM/F12(Nacalai)に対して5ng/mL basic FGF(WAKO))にて2週間拡大培養を行った。
【実施例】
【0071】
ヒトiPS細胞の維持培養法はTakahashi et al. 2007 CellおよびNakagawa et al. 2014 Scientific Reportsに準じて行った。恒常的なDoxycycline(DOX: Tocris)処理を用いたMYOD強制発現による筋分化はTanaka et al 2013 PLoS Oneに準じて行った。ヒトiPS細胞から中胚葉系譜細胞への誘導はLoh et al. 2016 Cellを改良して行った。具体的な方法は下記の通りである。
【実施例】
【0072】
シングルセルの状態のヒトiPS細胞をGeltrex(GIBCO)溶液にて培養皿をコートしたものに播種し(50000細胞/6well)、10μM Y-27632 (Nacalai)を添加したmTeSR溶液(STEMCELL Technologies)にて培養する。3日後、中胚葉分化培地(IMDM/F12: 50:50 (GIBCO)に対して1% BSA(SIGMA)、1% CD lipid concentrate (GIBCO)、1% Insulin-Transferrin-Selenium (GIBCO)、20μM 1-Thioglycerol (SIGMA)、10μM SB431542 (StemGent)、10μM CHIR99021 (StemGent)、2μM DMH1(TOCRIS)、20ng/mL basic FGF(WAKO)に変えて2日おきに培養液を交換し、1週間培養する。得られた細胞集団をTrypLE Select(GIBCO)を用いて剥離し、PAX3-GFP陽性を含むDLL1陽性細胞を単離回収する。得られた細胞をスケールアップし、Geltrexコートした培養皿5.0×105細胞/6cmでさらに3日間中胚葉誘導培地にて培養を行う。剥離した細胞を回収し、エレクトロポレーター(NEPA21;ネッパジーン)を用いて目的の遺伝子を含むプラスミドDNAを細胞内に導入する準備を行う。DNA5μgを、回収した1.0×106細胞と混ぜて125voltにてTanaka et al 2013 PLoS Oneに準じた方法にて遺伝子導入を行う。導入作業後、Geltrexコートした培養皿に播種する。翌日から骨格筋幹細胞培養液中に1μg/mL DOXを添加し、72時間培養する。その後DOX非含有骨格筋幹細胞培養液に交換して少なくとも一週間、2日おきに培養液を交換し、GFP陽性細胞を確認してFACSにて単離回収する。その後FACsJAZZおよび蛍光顕微鏡BZX-700(Keyence)を用いて観察および統計処理を行った。
【実施例】
【0073】
マイクロアレイ解析およびリアルタイムPCR転写産物解析
total RNAを回収細胞よりRNeasy micro kit (QIAGEN)を用いて抽出し、Mouse Gene 1.0 ST Array (Affymetrix)を用いてhybridizationを行い、Affymetrix社のprotocol通りに実験を行った。既に成体マウスPax3陽性骨格筋幹細胞での遺伝子発現プロファイルはMontarras et al. 2005 ScienceおよびSakai et al. 2013 PLoS Oneにて作成しているものをデータベース上から入手し解析を行った。また抽出RNAを用いてのrealtime PCR解析のため、SuperScript VILO kit (Invitrogen)を用いてRNAをcDNAへ逆転写し、合成cDNAを鋳型としThunder Bird SYBR qPCR mix(TOYOBO)およびThermal Cycler Dice Realtime System(TAKARA)を用いてリアルタイムPCR解析を行った。その際、マウス、ヒト産物ともにリボソームタンパク質をコードするRpl13aをmRNA発現内部標準として用いた。
【実施例】
【0074】
プラスミドDNA調整
マウス成体骨格筋幹細胞およびヒトiPS細胞由来テラトーマからtotal RNAを抽出し、SuperScript3 reverse transcriptase(Invitrogen)及びoligo dT(Invitrogen)を用いてcDNA逆転写を行い、合成cDNAを鋳型とし登録された各遺伝子のCoding sequenceを含むようにprimer oligoを設計し、RT-PCRを行いpENTR1A vector(Invitrogen)にcloningを行った。細胞内遺伝子強制発現用plasmid作成のために、pMXs gateway vector(Takahashi et al. 2006 Cell)およびpPiggyBac EF1a gateway vector (Takana et al. 2013 PLoS One)にLR clonase(Invitrogen)により組み換えを行った。
【実施例】
【0075】
免疫染色
細胞および筋組織を4%パラホルムアルデヒド溶液(WAKO)で浸して4℃で10分固定し、切片化筋組織はFrozen Section Compound(Leica)に包埋しCryosectionに用いた。固定後のサンプルを0.1% Triron溶液にて反応後、Blocking One溶液(Nacalai tesque)にて室温で30分間反応後、0.2% BlockingOne溶液 を含むPBST(0.1% Tween20含有PBS)に一次抗体を添加し、4℃にて一晩反応させた。用いた抗体はPAX3(DSHB concentre、1/100希釈)、PAX7(DSHB concentre、1/50希釈)、MYOG(Santacruz biotech, 1/200希釈)、hNUC(Millipore、1/200希釈)、LAMA2(Millipore、1/200希釈)、DYS(Abcam、1/200希釈)である。
【実施例】
【0076】
翌日、PBSTを用いて3回洗浄後、0.2% BlockingOne溶液 in PBSTに二次抗体を添加し、室温にて1時間反応させた。用いた抗体はAlexa488 標識抗マウスIgG抗体, Alexa594標識抗ウサギIgG交代、及びAlexa647標識抗ラットIgG抗体(Molecular Probes、1/500希釈)である。PBSTを用いて3回洗浄後、Slowfade Diamond Antifade Mountant with DAPI (Molecular Probes)を用いて封入し、BZX-700を用いて蛍光観察および統計処理を行った。
【実施例】
【0077】
<結果>
マウスPax3-GFP陽性骨格筋幹細胞において強発現する転写因子群(図1)
図1Aに示すように、マウス胚発生期(Fetus)、弱週令期(infant)、成体期それぞれからGFP陽性細胞(Pax3陽性細胞)を採取した。
【実施例】
【0078】
採取した各Pax3陽性細胞からtotal RNAを抽出し、マイクロアレイ法を用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。遺伝子発現解析の主成分分析結果を図1Bに示す。図1Cに示すように、それぞれの発生成長段階で得られたPax3陽性細胞中の遺伝子発現のうち、共通する転写因子群が108遺伝子存在した。図1Dに、共通する転写因子群の中の抜粋した18種類の転写因子を示す。共通する転写因子群には、骨格筋幹細胞マーカーであるPax3、Pax7;筋制御因子であるMyod1、Myf5、Myogが含まれていた。
【実施例】
【0079】
本実施例で引用した文献は、以下のとおりである。
Relaix et al., Nature (2005) 435: 948-953
Sato et al., Nat Commun (2014)5:4597
Kudoh et al., BBRC (2005) 328:507-516
Nakagawa et al., Scientific Reports (2014) 4: 3594
Tanaka et al ,PLoS One (2013) 8: e61540
Montarras et al. 2005 Science (2005) 309: 2064-2067
Sakai et al., PLoS One (2013) 8: e63016。
【実施例】
【0080】
マウス線維芽細胞への候補遺伝子の導入(図2)
図2Aに、解析に用いたPax3GFP/+; BAC MyoD-Cre; Rosa26CAG-LSL-tdTomato/+(Pax3-GFP; MyoD-RFP)遺伝子複合導入マウスにおけるGFP及びRFPの発現を示す。
【実施例】
【0081】
図2Bに、骨格筋幹細胞への分化誘導の概念図を示す。
【実施例】
【0082】
図2Cに示すように、FACSによりGFPおよびRFP陽性細胞を除去するためにそれぞれの陰性画分を回収し、遺伝子導入実験に用いるためのGFPおよびRFPの発現が陰性である遺伝子改変線維芽細胞を得た。
【実施例】
【0083】
図2Dには、筋制御因子MyoDを遺伝子改変線維芽細胞に導入した際の経時的なGFPおよびRFP発現変化を示す。MyoD単独の遺伝子導入では導入後14日目までにPax3-GFP発現は認められなかった。一方、図2EにはMyoD含めた8種類の転写因子(+8 transcription factors;Egr2, Heyl, Klf4, Mef2c, MyoD, Pax3, Pax7, Pitx2)を遺伝子改変線維芽細胞に導入した際の、遺伝子導入後2週間のPax3-GFPの発現解析の結果を示す。Pax3-GFPの発現が確認でき、骨格筋幹細胞への分化誘導が起きていることが示唆された。
【実施例】
【0084】
PAX3-GFP遺伝子導入ヒトiPS細胞からの分化誘導(図3)
図3Aに、ヒトPAX3遺伝子座へのGFP遺伝子ノックイン及び誘導型MYOD遺伝子を模式的に示す。
【実施例】
【0085】
図3Bに、上記遺伝子を導入した入ヒトiPS細胞を作製した。当該遺伝子導入ヒトiPS細胞を用いて作製したテラトーマ(EB)中におけるGFP発現の様子、及び、GFP陽性細胞及びGFP陰性細胞のそれぞれにおけるPAX3発現の免疫染色図を示す。
【実施例】
【0086】
遺伝子導入ヒトiPS細胞において、恒常的なDoxycycline(DOX)処理によりMYODを強制発現させた。その結果、筋細胞への分化が確認できた。図3Cに、遺伝子導入ヒトiPS細胞におけるドキシサイクリン(DOX)添加によるMYOD発現誘導及び筋細胞への分化の様子を示す。
【実施例】
【0087】
図3Dに、DOX無添加時及び添加時のそれぞれにおけるGFP発現(PAX3発現)及びmCherry(DOX-MYOD発現)の解析結果を示す。恒常的にDOX処理(continuous DOX)した場合にはGFP発現はほとんど認められなかった。一方、DOX処理72時間(DOX for 72時間)の場合、GFP陽性細胞の割合が大幅に上昇した。
【実施例】
【0088】
図3Eに、DOX無添加時及び添加時のそれぞれにおけるGFP陽性細胞中の転写産物の解析結果を示す。DOX無添加時及び添加時のそれぞれのPAX3-GFP陽性細胞中で、中枢神経マーカーSOX1及び神経堤マーカーSOX10の発現上昇が認められた。
【実施例】
【0089】
図3Fに、ヒトiPS細胞から中胚葉系譜細胞への分化誘導時の細胞形態(下パネル)及びGFP発現(上パネル)をそれぞれ示す。マウス体節と同様な上皮様構造に類似した形態を示した。
【実施例】
【0090】
図3Gに、中胚葉誘導7日目のGFP発現プロット図(上パネル)、並びに、外胚葉(neural)及び中胚葉(PSM; presomitic mesoderm, somite)の割合(下パネル)を示す。
【実施例】
【0091】
図3Hに、中胚葉誘導時のGFP陽性細胞における遺伝子発現変化を示す。中胚葉誘導せずにDOX72時間処理した細胞集団、神経堤細胞誘導(+5μM CHIR99021)と比較し、中胚葉誘導時のGFP陽性細胞(MDC for 1wks, 2wks)はSOX1ならびにSOX10神経マーカーの発現が上昇せず、体節マーカーDMRT2の発現が高かった。
【実施例】
【0092】
中胚葉誘導細胞へ遺伝子導入による成体型骨格筋幹細胞への分化誘導(図4)
中胚葉誘導細胞
(A) iPS細胞由来中胚葉誘導細胞より特異的細胞(DLL1+ cells)を用いて遺伝子導入(cDNA introduction)後に72時間DOX処理し(MYOD-primed)、骨格筋幹細胞培養条件(20%FBS in DMEM/F12+5ng/ml bFGF)にてGFP陽性細胞を得る方法の流れ。
【実施例】
【0093】
図4Bに、中胚葉細胞にPAX3, HEYL, KLF4各遺伝子導入後に72時間DOX処理した後、1週間骨格筋幹細胞培養条件でGFP発現が検出された細胞集団の例を示す。
【実施例】
【0094】
図4Cに、中胚葉細胞に72時間DOX処理した細胞集団と、PAX3, HEYL, KLF4遺伝子を導入しDOX処理した集団とのそれぞれにおける、GFP陽性細胞の発現比率を示す。DOX処理のみより3遺伝子導入したものではGFP陽性率が上昇する。
【実施例】
【0095】
図4Dに、図4Cにおける細胞内遺伝子発現の比較を示す。中胚葉誘導時DOX単独処理ではほとんど検出不可であった成体骨格筋幹細胞マーカーであるPAX7およびCALCRが、HEYL及びKLF4の2遺伝子導入、ならびに、PAX3, HEYL,及びKLF4の3遺伝子導入しDOX処理したGFP陽性細胞中で発現上昇が認められた。
【実施例】
【0096】
図4Eに、PAX3, HEYL, KLF4の3遺伝子導入しDOX処理したGFP陽性細胞(3F+DOX)を用いて、低血清条件(2%horse serum)試験管培養により骨格筋分化をした結果を示す。
【実施例】
【0097】
遺伝子導入後に得られたPAX3-GFP陽性細胞を用いた筋移植実験結果(図5)
図5Aに、移植実験の概要を示す。中胚葉誘導後の細胞にPAX3, HEYL, KLF4の3遺伝子導入後72時間DOX処理し、一週間培養し続けて得られたGFP陽性500000細胞を用いて、筋ジストロフィーモデル(Dmd-/y; NSG、8週齢)の下肢前脛骨筋へ筋肉注射を行った。
【実施例】
【0098】
図5Bに、移植後の骨格筋断面図の例を示す。ジストロフィン(DYS)、ヒト核(hNUC)、核全般(DAPI)、ラミニンa2鎖(LAMA2)のぞれぞれについて免疫染色を行った。ヒト核が存在する部位に特異的にジストロフィン発現が認められた。
【実施例】
【0099】
3遺伝子導入後DOX処理し一週間培養した細胞集団中でGFP陽性細胞(+GFP+ cells)とGFP陰性細胞(+GFP- cells)に選別後、同数細胞を筋ジストロフィーモデルに移植した。
図5Cに、それぞれの場合における移植後の骨格筋断面図の例(左パネル)及びジストロフィン陽性筋繊維の定量結果(右パネル)を示す。中胚葉誘導時に得られるGFP陽性細胞(day7)では移植後ジストロフィンの発現は認められなかった。また、遺伝子導入後のGFP陽性細胞を再度試験管培養して増殖させた細胞(+ cultured GFP+)を移植させた場合には、GFP陽性細胞回収後すぐに移植した場合と比べてジストロフィン発現が大幅に減少した。
【実施例】
【0100】
図5Dに、図5Cと同条件時における骨格筋幹細胞マーカーPAX7発現の免疫染色図(左パネル)およびPAX7陽性細胞の定量結果(右パネル)を示す。遺伝子導入後のGFP陽性細胞を移植した場合のみ、移植細胞由来のPAX7陽性細胞が移植筋組織中に認められた。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1D】
3
【図2A】
4
【図2B】
5
【図2C】
6
【図2D】
7
【図2E】
8
【図3A】
9
【図3B】
10
【図3C】
11
【図3D】
12
【図3E】
13
【図3F】
14
【図3G】
15
【図3H】
16
【図4A】
17
【図4B】
18
【図4C】
19
【図4D】
20
【図4E】
21
【図5A】
22
【図5B】
23
【図5C】
24
【図5D】
25