TOP > 国内特許検索 > β線核種放射性セシウムの浸透深さの測定方法 > 明細書

明細書 :β線核種放射性セシウムの浸透深さの測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-002756 (P2019-002756A)
公開日 平成31年1月10日(2019.1.10)
発明の名称または考案の名称 β線核種放射性セシウムの浸透深さの測定方法
国際特許分類 G01T   1/29        (2006.01)
G01T   1/16        (2006.01)
G01T   1/167       (2006.01)
FI G01T 1/29 D
G01T 1/16 A
G01T 1/167 K
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2017-116467 (P2017-116467)
出願日 平成29年6月14日(2017.6.14)
発明者または考案者 【氏名】山田 一夫
【氏名】竹内 幸生
出願人 【識別番号】501273886
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立環境研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100141966、【弁理士】、【氏名又は名称】新井 範彦
【識別番号】100103539、【弁理士】、【氏名又は名称】衡田 直行
審査請求 未請求
テーマコード 2G188
Fターム 2G188AA06
2G188AA25
2G188BB05
2G188DD30
2G188DD44
2G188EE39
要約 【課題】本発明は、β線ラジオグラフを用いて、コンクリート硬化体中の放射性セシウムの浸透深さを、簡便かつ精度よく測定する方法を提供する。
【解決手段】本発明の放射性セシウムの浸透深さの測定方法は、下記遮蔽材(a)または(b)を用いて、放射性セシウムが浸透したコンクリート硬化体を被覆した後、放射性セシウムの浸透面に対し垂直に、該コンクリート硬化体を切断して切断面のβ線を測定し、β線を検出した部分の深さ(浸透面に対し垂直の方向の長さ)を、放射性セシウムの浸透深さとする方法である。
遮蔽材(a):液状樹脂、セメントペースト、または石膏ペーストを含む遮蔽材
遮蔽材(b):金属および/または金属酸化物の粉末と、液状樹脂、セメントペースト、または石膏ペーストを含む遮蔽材
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
下記遮蔽材(a)または(b)を用いて、放射性セシウムが浸透したコンクリート硬化体を被覆した後、放射性セシウムの浸透面に対し垂直に、該コンクリート硬化体を切断して切断面のβ線を測定し、β線を検出した部分の深さ(浸透面に対し垂直の方向の長さ)を、放射性セシウムの浸透深さとする、放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
遮蔽材(a):液状樹脂、セメントペースト、または石膏ペーストを含む遮蔽材
遮蔽材(b):金属および/または金属酸化物の粉末と、液状樹脂、セメントペースト、または石膏ペーストを含む遮蔽材
【請求項2】
前記金属および/または金属酸化物の密度が2g/cm以上である、請求項1に記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
【請求項3】
前記液状樹脂が、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、およびウレタン樹脂等から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
【請求項4】
前記被覆する方法が、前記コンクリート硬化体を、前記遮蔽材に浸漬するか、若しくは、前記コンクリート硬化体に、前記遮蔽材を塗布または散布する方法である、請求項1~3のいずれか1項に記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
【請求項5】
前記浸透深さの測定が、イメージングプレートの感光部分の深さ(浸透面に対し垂直の方向の長さ)を測定して行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、β線ラジオグラフを用いて、コンクリート硬化体中のβ線核種放射性セシウム(Cs-137、以下、単に「放射性セシウム」という。)の浸透深さを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
β線ラジオグラフは、放射性セシウム(Cs-134、Cs-137)や放射性ストロンチウム(Sr-90)等の、固体表面から内部へβ線を放出する放射性物質(β線核種)の分布状態を調べるのに簡便で有用な方法である。その一例として、図1の(B)に、放射性セシウムに汚染された構造物から採取した、直径4cmのコンクリートコア(図1の(A))の浸透面(円形の面)のβ線ラジオグラフを示す。この写真から、放射性セシウムはコンクリート表面に不均一に分布し、特に、ひび割れに沿って濃縮していることが分かる。
しかし、β線ラジオグラフを、放射性セシウムの浸透深さの測定に適用した場合、浸透表面からのβ線の拡散により感光部分が拡大するため、感光部分を放射性セシウムがコンクリート硬化体中に浸透して存在する範囲(浸透深さ)であると判定することはできない。
【0003】
以下、これを図1、2を用いて具体的に説明する。
図2は、1面(円形面)から放射性セシウムが浸透した幅2cmのコンクリートブロックの長さ方向の切断面(C)を、イメージングプレート(IP)に載置して感光させたβ線ラジオグラフの写真(D、E)である。ただし、コンクリートブロックの側面は樹脂でコーティングした。これらのうち、(D)は、放射性セシウムが浸透しているコンクリート硬化体の浸透層から、β線が気中に拡散している様子を示す。また、(E)は、(C)の左端にあるコンクリートブロックのβ線ラジオグラフの拡大図である。側面をコーティングした樹脂(単独)とコンクリート硬化体の隙間からもβ線が樹脂を透過して拡散し、コンクリート硬化体の陰影が浮かんで見える。しかし、β線の拡散により感光部分が拡大しているため、(E)の像では、放射性セシウムがコンクリート硬化体に浸透した面の位置を確定することができず、放射性セシウムの浸透深さを正確に測定できない。このような状況は、非特許文献1にも同様の記載がある。
β線を遮蔽するために何らかのブロックを置いたり、鉛板などで覆うことも考えられる。しかし、測定対象物の表面が平坦でない場合には、β線ラジオグラフにより表面位置を特定することは、やはり困難である。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】前田宏治、佐々木新治、熊井美咲、佐藤勇、須藤光雄、逢坂 正彦、福島第一原子力発電所の廃止措置に向けた2—1—1建屋内遠隔除染技術の開発; JAEAにおけるサンプルの詳細分析結果、JAEA-Research2013-025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、β線ラジオグラフを用いて、コンクリート硬化体中の放射性セシウムの浸透深さを、簡便かつ正確に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的にかなう放射性セシウムの浸透深さの測定方法を鋭意検討したところ、密度が一定以上で、特定の種類の金属粉を含む樹脂等でコンクリート硬化体を被覆すればβ線を遮蔽でき、その結果、コンクリート硬化体の浸透面の位置を確定できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の構成を有する放射性セシウムの浸透深さの測定方法である。
【0007】
[1]下記遮蔽材(a)または(b)を用いて、放射性セシウムが浸透したコンクリート硬化体を被覆した後、放射性セシウムの浸透面に対し垂直に、該コンクリート硬化体を切断して切断面のβ線を測定し、β線を検出した部分の深さ(浸透面に対し垂直の方向の長さ)を、放射性セシウムの浸透深さとする、放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
遮蔽材(a):液状樹脂、セメントペースト、または石膏ペーストを含む遮蔽材
遮蔽材(b):金属および/または金属酸化物の粉末と、液状樹脂、セメントペースト、または石膏ペーストを含む遮蔽材
[2]前記金属および/または金属酸化物の密度が2g/cm以上である、前記[1]に記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
[3]前記液状樹脂が、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、およびウレタン樹脂等から選ばれる1種以上である、前記[1]または[2]に記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
[4]前記被覆する方法が、前記コンクリート硬化体を、前記遮蔽材に浸漬するか、若しくは、前記コンクリート硬化体に、前記遮蔽材を塗布または散布する方法である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
[5]前記浸透深さの測定が、イメージングプレートの感光部分の深さ(浸透面に対し垂直の方向の長さ)を測定して行う、前記[1]~[4]のいずれかに記載の放射性セシウムの浸透深さの測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の放射性セシウムの浸透深さの測定方法は、コンクリート硬化体中の放射性セシウムの浸透深さを、簡便かつ精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)は採取したコンクリートコアの全体の写真である。(B)はコンクリートコアの放射性セシウムの浸透面(円形面)における、放射性セシウムの分布を示すβ線ラジオグラフである。
【図2】(C)はコンクリートコアの浸透面に対し垂直に切断したβ線ラジオグラフィの測定対象試料を示す写真である。(D)は前記測定対象試料のβ線ラジオグラフを示し、(E)は(D)の一番左端のβ線ラジオグラフの拡大写真である。
【図3】(F)は遮蔽材を入れた円筒容器(紙製モールド)内に、コンクリートコアの浸透面を下に向けて浸漬した状態で、減圧脱気処理を行っている様子を示す写真である。(G)は紙製モールドを破いて、遮蔽材で被覆されたコンクリートコアを取り出す様子を示す写真である。(H)は遮蔽材で被覆されたコンクリートコアの浸透面を下に向けて載置した状態の写真であり、(I)は遮蔽材で被覆されたコンクリートコアの浸透面を上に向けて載置した状態の写真である。
【図4】(J)は実施例で作製した測定対象試料である。(K)は該測定対象試料のβ線ラジオグラフの写真である。
【図5】(L)はコンクリートコアの浸透面に鉄板を貼付した測定対象試料のβ線ラジオグラフの拡大写真であり、参考例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の放射性セシウムの浸透深さの測定方法は、前記のとおり、遮蔽材(a)または(b)を用いて、放射性セシウムが浸透したコンクリート硬化体を被覆した後、放射性セシウムの浸透面に対し垂直に、該コンクリート硬化体を切断して切断面のβ線を測定し、β線を検出した部分の深さ(浸透面に対し垂直の方向の長さ)を、放射性セシウムの浸透深さとする方法である。
以下、本発明の放射性セシウムの浸透深さの測定方法について、詳細に説明する。

【0011】
1.遮蔽材
本発明で用いる遮蔽材(b)に含まれる金属や金属酸化物の密度は、β線の遮蔽効果が高いことから、好ましくは、2g/cm以上であり、入手容易性を考慮すると、より好ましくは4~10g/cm、さらに好ましくは6~9g/cmである。具体的には、該金属および金属酸化物は、鉄、鉛、亜鉛、マンガン、ニッケル、および錫等の金属、並びに、これらの金属の酸化物から選ばれる1種以上が挙げられる。金属や金属酸化物の粉末の粒径は、コンクリート硬化体の表面や空孔中に均質に分散・充填するためには、好ましくは1~500μm、より好ましくは10~500μmである。
また、本発明で用いる遮蔽材(a)および(b)に含まれる樹脂は、被覆作業が容易なため、液状が好ましく、例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、およびウレタン樹脂等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、本発明で用いる遮蔽材(a)および(b)に含まれるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、および普通エコセメントから選ばれる1種以上が挙げられる。
また、本発明で用いる遮蔽材(a)および(b)に含まれる石膏は、無水石膏、二水石膏、および半水石膏等であり、例えば、天然二水石膏、排煙脱硫石膏、リン酸石膏、チタン石膏、フッ酸石膏、精錬石膏、半水石膏、および無水石膏等から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
なお、セメントペーストや石膏ペーストの水/粉体の質量比は、高い被覆強度を得るためには0.1~2.0が好ましい。

【0012】
前記遮蔽材は、粘度を調整するために溶媒(溶剤)を用いることができ、また、含まれる樹脂が硬化性樹脂(反応性樹脂)の場合、硬化時間を調節するため硬化促進剤や、アセトン等の硬化遅延剤を含むことができる。
また、遮蔽材の密度は、β線を遮蔽するためには、好ましくは1~20g/cm、より好ましくは2~10g/cm、さらに好ましくは3~6g/cmである。また、金属および/または金属酸化物と樹脂の混合割合は、前記β線の遮蔽効果に加え、金属等の分散性、遮蔽材の被覆性を考慮して決めるとよい。

【0013】
2.遮蔽材の被覆方法
前記被覆材の被覆方法は、前記コンクリート硬化体を、前記遮蔽材に浸漬するか、若しくは、前記コンクリート硬化体に、前記遮蔽材を塗布または散布する方法が挙げられる。コンクリート硬化体の表面を前記遮蔽材で被覆すれば、β線の漏洩を抑制できる。ここで、コンクリート硬化体を前記遮蔽材に浸漬する、または、コンクリート硬化体に前記遮蔽材を塗布、若しくは散布するとは、放射性セシウムが浸透した層の周辺を浸漬等するほかに、コンクリート硬化体全体を浸漬等することも含む。

【0014】
3.浸透深さの測定
本発明において放射性セシウムの浸透深さの測定は、特に制限されないが、イメージングプレートが感光した部分の深さを測る方法によれば、簡便かつ正確な測定が可能である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.測定対象試料の作製
β線核種として、福島第一原子力発電所の事故により環境中に漏洩した放射性セシウムに着目し、また、測定対象として、汚染された道路施設から、直径5cm、長さ約10cmのコンクリートコアを採取した。このコンクリートコアの表面は、降雨により地表に浸出したと考えられる放射性セシウムに汚染されている。
また、低粘度エポキシ樹脂(商品名:システムスリーエポキシ、システムスリー社製、混合後の平均粘度は950cpsである。)の主剤30gと硬化剤15gを混合した後、該樹脂混合物に、粒度が300メッシュ(粒径は456μmに相当)の鉄粉50gとアセトン2gの混合物を混合して、鉄粉とエポキシ樹脂を含む遮蔽材(密度4.8g/cm)を作製した。なお、アセトンはエポキシ樹脂の粘性を低下させて、硬化を遅延する作用を有する。
次に、前記遮蔽材を紙製モールド内に入れ、放射性セシウムの浸透面を下に向けて、前記コンクリートコアを前記遮蔽材の中に浸漬し、ドラフト内で減圧脱気処理を72時間行なった(図3のF)。この処理が終了した後、脱型して遮蔽材で被覆したコンクリートコアを取り出し(図3のG、H、I)、円形面に対し垂直にダイヤモンドカッターで切断して測定対象試料(図4のJ)を作製した。
【実施例】
【0016】
2.放射性セシウムの浸透深さの測定
前記作製した測定対象試料の切断面(図4のJ)をイメージングプレート(BAS IPMS 2040 E、およびBAS IP SR 2040E、富士フィルム社製)に対向させて載置した後、オートラジオグラフィー(FLA-7000、GE healthecare社製)を用いて、感光部分を測定した。その結果、図4の(K)に示すように、β線の拡散はなく、浸透面(位置)を明確に示す直線状のβ線ラジオグラフが得られ、該グラフから放射性セシウムの浸透深さは、1~3mmの範囲で分布していることが分かった。また、ひび割れに沿って放射性セシウムが浸透している状況も観察できた。
【実施例】
【0017】
3.参考例
参考のため、遮蔽材として厚さ2mmの鉄板を、前記測定対象試料の放射性セシウムの浸透面に貼付した後、前記と同様にして感光部分を測定した。その結果、図5のLに示すように、β線の拡散がなければ、図4のKのような直線状であるべき浸透面が、上方に膨れ上がった曲線状になっていて、測定対象試料の表面の位置が特定できず、放射性セシウムの正確な浸透深さは得られなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4