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明細書 :風車ブレードのレセプター取付構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-040280 (P2018-040280A)
公開日 平成30年3月15日(2018.3.15)
発明の名称または考案の名称 風車ブレードのレセプター取付構造
国際特許分類 F03D  80/30        (2016.01)
H05F   3/04        (2006.01)
F03D   1/06        (2006.01)
FI F03D 80/30
H05F 3/04 F
F03D 1/06 A
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-174188 (P2016-174188)
出願日 平成28年9月7日(2016.9.7)
発明者または考案者 【氏名】箕田 充志
【氏名】上野 敏之
【氏名】守谷 吉弘
出願人 【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
【識別番号】391016509
【氏名又は名称】株式会社守谷刃物研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100081673、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 誠
【識別番号】100141483、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 生吾
【識別番号】100166659、【弁理士】、【氏名又は名称】楠 和也
審査請求 未請求
テーマコード 3H178
5G067
Fターム 3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB35
3H178BB43
3H178BB52
3H178CC02
3H178CC04
3H178DD70X
5G067AA11
5G067DA33
要約 【課題】落雷による風力発電装置の風車ブレードに取付けるレセプター及びその周辺の破損を防止する。
【解決手段】この発明の風車ブレードへのレセプター取付構造は、絶縁材からなるブレード4の表面に対し、導電性を備えダウンコンダクターに接続されて受雷部を構成するプレート状のレセプター6を取付けた風車ブレードへのレセプターの取付構造であって、上記レセプター6のブレード4表面への取付面における外周縁側と、該ブレード4表面とを密着させるか、或いは、上記レセプター6の前記取付面の外周縁側と、前記ブレード4表面との間の隙間Sを0.1mm以下に保持させる。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
絶縁材からなるブレード(4)の表面に対し、導電性を備えダウンコンダクターに接続されて受雷部を構成するプレート状のレセプター(6)を取付けた風車ブレードへのレセプターの取付構造であって、上記レセプター(6)のブレード(4)表面への取付面における外周縁側と、該ブレード(4)表面とを密着させるか、或いは、上記レセプター(6)の前記取付面の外周縁側と、前記ブレード(4)表面との間の隙間(S)を0.1mm以下に保持させた風車ブレードのレセプター取付構造。
【請求項2】
レセプター(6)を取付けるブレード(4)の表面が緩やかなカーブに湾曲形成され、レセプター(6)とブレード(4)の取付面のいずれか一方又は両方の面を両面が適合し合うように予め調整してなる請求項1に記載の風車ブレードのレセプター取付構造。
【請求項3】
レセプター(6)を取付けるブレード(4)の表面が緩やかなカーブに湾曲形成され、レセプター(6)を剛性を備えた材質で板厚1~6mm,直径30~80mmの円板状に形成した請求項1又は2に記載の風車ブレードのレセプター取付構造。
【請求項4】
レセプター(6)として金属と炭素材料とを焼結させて得られる複合材からなり、該複合材に含まれる炭素材料は、該複合材の総体積を基準として10~80体積%で且つ理想密度の95%以上まで焼結されてなる請求項1~3のいずれかに記載の風車ブレードのレセプター取付構造。
【請求項5】
前記炭素材料には鱗状黒鉛粉末が含まれ、該鱗状黒鉛粉末には、熱伝導容易面の法線ベクトルに対して、傾きが20°以上となる法線ベクトルによって規定される鱗状面を有する第1鱗状黒鉛粉末と、傾きが10°以下となる法線ベクトルによって規定される鱗状面を有する第2鱗状黒鉛粉末との少なくとも2種類が含まれ、前記第1鱗状黒鉛粉末の鱗状黒鉛粉末の全体に対しての含有率は12%以下であり、前記第2鱗状黒鉛粉末の鱗状黒鉛粉末の全体に対しての含有率は55%以上である請求項4に記載の風車ブレードのレセプター取付構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は風力発電機や各種電力源として使用される風車における風車ブレードのレセプター取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来風力発電機の落雷被害はブレード表面の黒焦げ程度の軽微なものから、ブレードの爆散のような致命的なものまで深刻度に幅がある。特に風力発電機における大規模な水蒸気爆発については、ブレード内の空洞部に侵入した水分に雷電流が通電し、ブレードそのものが爆散する非常に深刻な被害が発生することが知られている。なお日本の冬季雷のエネルギーは非常に大きく、レセプターの耐性が不十分な例も多い。
【0003】
一方、小規模な水蒸気爆発はレセプター周囲で発生し、この発生部分でのレセプターの溶損が観察されていたが、その程度は比較的軽微であり、その場所もレセプター近傍に限定され、その時点で風力発電機能に大きい影響を与えないこともあり、見逃される傾向にあった。
【0004】
しかしレセプターの損傷や溶損はその後の落雷で被害が深刻化する危険があり、特に破損が小規模であってもレセプター機能が喪失すると落雷時のブレードの損傷は重大なものとなるほか、ブレードやレセプターの小規模な損傷であっても、その補修には発電機を停止し、山頂や丘陵地等の作業条件の悪い中での高所作業が必要になる。
【0005】
これに対し、従来特許文献1,2に示されるように、ブレードの表面にレセプターの一部を露出させて埋設する埋め込み式と、プレート状のレセプターを表面にボルト付けするものが知られているが、いずれのレセプターも落雷によりレセプター周囲のブレード表面やレセプター自体の溶損が生じるという問題があり、十分な解決策が得られていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2009-250040号公報
【特許文献2】特開2007-120393号公報(図1(b)参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レセプター周囲の水蒸気爆発は、雷電流の導通経路上に水分が直列回路として存在する場合に発生する。つまり、水蒸気爆発は雷電流が水分以外の導体を迂回して流れる場合には発生せず、水分そのものに電気が直接流れる場合に発生する。
【0008】
上記レセプターのうち、埋込式のものは埋め込み用の凹部又は凹部内周壁とレセプターの隙間に雨水が溜る。一方、ブレードはガス繊維強化プラスチック製等から構成され、絶縁体であるが、大気中の汚れによるゴミや落雷による炭化物等によってブレード表面が導電性となり、絶縁性が損なわれる結果、レセプターやその周辺のブレード表面の水蒸気爆発を招き易いという欠点がある。
【0009】
また、後で詳述するように発明者等の実験・研究により、表面装着型のプレート型レセプターの場合も、その外周とブレード表面との間には防水用のコーキングが施されるものの、経年劣化や紫外線劣化等によって雨水が浸入し、汚れや炭化物等との相互作用によってブレードとレセプター間に雷電流が導通する回路が形成されるため、落雷時に小規模な水蒸気爆発が生じてレセプターが溶損とともに爆散する場合があることを発見した。
【0010】
この発明は上記知見に基き、ブレード表面とレセプターの取付面(重ね合せ面)間に雷電流の回路を形成する水の浸入を防止し又はその浸入量を最小限に抑えることにより、前記小規模水蒸気爆発を防止してレセプターやブレード表面の損傷を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明のレセプター取付構造は、第1に絶縁材からなるブレード4の表面に対し、導電性を備えダウンコンダクターに接続されて受雷部を構成するプレート状のレセプター6を取付けた風車ブレードへのレセプターの取付構造であって、上記レセプター6のブレード4表面への取付面における外周縁側と、該ブレード4表面とを密着させるか、或いは、上記レセプター6の前記取付面の外周縁側と、前記ブレード4表面との間の隙間Sを0.1mm以下に保持させたことを特徴としている。
【0012】
第2に、レセプター6を取付けるブレード4の表面が緩やかなカーブに湾曲形成され、レセプター6とブレード4の取付面のいずれか一方又は両方の面を両面が適合し合うように予め調整してなることを特徴としている。
【0013】
第3に、レセプター6を取付けるブレード4の表面が緩やかなカーブに湾曲形成され、レセプター6を剛性を備えた材質で板厚1~6mm,直径30~80mmの円板状に形成したことを特徴としている。
【0014】
第4に、レセプター6として金属と炭素材料とを焼結させて得られる複合材からなり、該複合材に含まれる炭素材料は、該複合材の総体積を基準として10~80体積%で且つ理想密度の95%以上まで焼結されてなることを特徴としている。
【0015】
第5に、前記炭素材料には鱗状黒鉛粉末が含まれ、該鱗状黒鉛粉末には、熱伝導容易面の法線ベクトルに対して、傾きが20°以上となる法線ベクトルによって規定される鱗状面を有する第1鱗状黒鉛粉末と、傾きが10°以下となる法線ベクトルによって規定される鱗状面を有する第2鱗状黒鉛粉末との少なくとも2種類が含まれ、前記第1鱗状黒鉛粉末の鱗状黒鉛粉末の全体に対しての含有率は12%以下であり、前記第2鱗状黒鉛粉末の鱗状黒鉛粉末の全体に対しての含有率は55%以上であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように構成される本発明のレセプター取付構造によれば、ブレード表面とレセプター取付の重ね合せ面とをできるだけ密着させ又はレセプター取付面の外周縁とブレード表面との隙間を0.1mm以下に保持することで、両面間の水分の滞留をゼロ又は最小限にできるため、両面間の滞留水分による水蒸気爆発が防止できる。また一般に中心から先端に向って緩やかにカーブする風車ブレードの表面とプレート状のレセプターの取付面とのいずれか一方又は両方の面を予め調整加工して適合させることにより、両面の密着度は高く且つ確実になるほか、カーブしたブレード表面に対し、レセプターの板厚を1~6mm,直径を30~80mmとすることにより、取付けられたレセプターの機械的強度(剛性)を保ちながら、レセプター取付面の外周縁とブレード表面の隙間を最小限に保つことが可能となる。
【0017】
さらにレセプター材料として請求項4,同5の金属と炭素材料の複合材を用いることにより、レセプターに求められる一定の機械的強度を確保し、高い熱導性による受雷時の放熱性が得られるほか、円板状のレセプターの中心から外周に向って放射方向に熱伝導して放熱することにより、一層高い放熱ができ、レセプター及びブレードの溶損が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】風力発電装置(風車)の全体正面図である。
【図2】風力発電装置(風車)の部分拡大側面図である。
【図3】(A)は本発明のレセプター取付構造を示す断面図であり、(B)は同じくその平面図である。
【図4】(A),(B)は共に本発明の他の実施例を示すレセプター取付面の密着構造の模視的な説明図である。
【図5】(A),(Bは本発明の他の実施例に係るレセプター取付構造を示す要部断面図及び平面図である。
【図6】(A)は本発明の課題と効果確認の実験に用いた器材の斜視図、(B)~(D)は当該実験の方法を示す平面図である。
【図7】(A)~(C)はそれぞれ本発明の課題と効果を別の視点から確認するための実験方法を示すレセプター取付状態の模視的な断面図である。
【図8】(A),(B)はレセプターを埋設して破損実験を行った場合におけるアルミテープの破損状態と、レセプターの破損状態とをそれぞれ示している。
【図9】(A)は図8に示す実験を行った後のブレード代用基板側の破損状態を示し、(B)はレセプタ側の破損状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図示する本発明の実施形態につき詳述すると、図1,図2は本発明の1実施例を示し、同図に示す装置は現在最も普及している風力発電装置(風車)であって、支柱1の上部にナセル2を介して風力軸3により等角度間隔に放射状に複数配置されたブレード4が回転自在に支持されている。各ブレード4はFRP製の絶縁体で中空構造となっている。

【0020】
上記ブレード4の先端側表面には図3に示すように落雷時の受雷部となり、円板状の導電性のプレートからなるレセプター6がボルト7によって締着固定されており、このボルト7はステンレス鋼等の金属製(導電体)で、その内端はブレード4内に配線された避雷導線(ダウンコンダクター)8に接続され、レセプター6に入力した雷電流はレセプター4,避雷導線8を通ってアースされる。

【0021】
また、上記ブレード4の表面のレセプター6の周辺にはレセプター6を中心として放射状に接着配置された金属製のテープからなる誘導テープ9が設けられ、レセプター6の周囲の広範囲の領域から落雷時の雷電流をレセプター6に向って誘導するもので、レセプター6に電気的に接続されている。

【0022】
上記レセプター6の材質は銅,ステンレス鋼,アルミニウム又は同合金等から選択できるが、本実施例では金属と炭素材料とを焼結させて得られる複合材よりなり、該複合材に含まれる炭素材料は、該複合材の総体積を基準として10~80体積%で且つ理想密度の95%以上まで焼結されたものを用いている。

【0023】
前記炭素材料には鱗状黒鉛粉末が含まれ、該鱗状黒鉛粉末には、熱伝導容易面の法線ベクトルに対して、傾きが20°以上となる法線ベクトルによって規定される鱗状面を有する第1鱗状黒鉛粉末と、傾きが10°以下となる法線ベクトルによって規定される鱗状面を有する第2鱗状黒鉛粉末との少なくとも2種類が含まれ、前記第1鱗状黒鉛粉末の鱗状黒鉛粉末の全体に対しての含有率は12%以下であり、前記第2鱗状黒鉛粉末の鱗状黒鉛粉末の全体に対しての含有率は55%以上である。

【0024】
上記金属-黒鉛複合材料は、少なくとも材料中の一方向に熱伝導率500W/mK以上からなり、金属は銅,銀,アルミニウムまたはこれらのいずれかを主成分とする合金材から選択できる。上述したように黒鉛の体積含有率は10~80%とし、望ましくは30~70%が好ましい。そして円板状の中から外周側に向って高熱伝導方向を備えたものになっている。

【0025】
レセプター6はブレード4内に配置された導電体からなり前述の避雷導線8に接続される固定ブロック(図示しない)に対して金属製のボルト7でブレード4表面に締着固定されるが、ボルト7は耐候性,導電率バランスを考慮するとオーステナイト系ステンレス鋼が望ましい。レセプター6を取付けた後、その外周面とブレード4表面とのコーナー部はコーキング材により防水処理(防水部11)を施す。ちなみに、該防水部11は、レセプター6の外周縁側全周に亘り形成されている。

【0026】
レセプター6は受雷領域を広くし且つブレード4の取付表面の緩やかにカーブ(湾曲)した面(平均的には曲率半径2000mm前後のものが多い)に取付けた際に、レセプター6におけるブレード4表面への取付面と、該ブレード4表面との間への浸水を防止するため、両面間の外周縁側での隙間Sを最小限(0.1mm以下)に保つ必要がある。

【0027】
このため、レセプター6の中心の固定部からの半径が小さい程レセプター6にかかる曲げモーメントを小さくする目的で、直径(D)を30~80mmの範囲に納めることが望ましい。上記セレプター6の形状は円形に限定されるものではなく、方形状やその他の多角形上等の形状を採用してもよい。この場合、サイズは、長手方向のサイズを上記範囲に納めることが望ましい。

【0028】
またレセプター6の機械的強度と耐候性等を考慮した耐久性を保ち且つ回転作動時の風圧抵抗等を考慮するとその板厚(t)は1~6mm(望ましくは3~5mm)の範囲内に納めることが理想的である。そして、最小限(具体的には、0~0.1mm)に保持された隙間Sは、レセプター6の外周縁側の全周に亘る範囲に形成されている。

【0029】
また前記のようにレセプター6外周縁側の取付面とブレード4の表面との間には浸水の可能性がある隙間Sをゼロとする密着状態が望ましいので、図4(A)で示すようにブレード4の湾曲(曲率半径R)にレセプター6の取付面をこれに適合するカーブの凹面に形成するか、同図(B)に示すようにブレード4の取付面をレセプター6の取付面(平面)に合わせて平坦面に形成することが望ましい。勿論両面を相互に調整加工して適合させることも可能であり、これらは取付作業時の研摩調整によって行うこともできる。

【0030】
なお、上述の例では、誘導テープ9をレセプター6の取付面と反対側の面(非取付面)に至る範囲まで設けたが、図5に示す例では、レセプター6に近接する範囲に留め、該レセプター6と誘導テープ9とを非接触としてもよい。このように構成すれば、レセプター9の非取付面と誘導テープ9との間に水が介在し、水蒸気爆発が発生することを効率的に防止できる。

【0031】
I.ダウンコンダクターに水を配した通電実験
図6は本発明の課題の内、レセプター近傍に水分がある時、どのような条件によって水蒸気爆発が生じるのかにつき確認するための実験内容と結果を説明するための図である。
同図(A)はこの実験に使用した器材の概要を示しており、使用機器材の内容及び実験方法は次の通りである。
1.使用機器材
(1)枠材21 透明アクリル板
・板厚 1mm
・横幅 60mm
・縦幅 30mm
(但し、図(C)の実験では40mmのものを使用)
・切抜窓21aのサイズ 40×10(mm)
(但し、図(C)の実験では40mm×20mmのものを使用)
(2)蓋材22 透明アクリル板
・板厚 1mm
・横幅 60mm
・縦幅 30mm
(但し、図(C)の実験では40mmのものを使用)
(3)基板23 絶縁性のFRP製で、サイズが60×40(mm)のもの
(4)アルミテープ24 厚み0.1mm・幅5mm
(5)インパルス大電流発生装置(不図示)

【0032】
2.実験方法
実験は図6(B),(C),(D)に示すように、枠材21を基板23上に置き、切抜窓21a内に長手方向に沿ってアルミテープ24を接着固定し、その上部又は近傍に水滴26(0.1ml)を垂らした状態で、枠材21上に蓋材22を重ねて載置することによって覆い、ダウンコンダクターに見立てたアルミテープ24の両端にインパルス大電流発生装置(不図示)の電極端子を接続して大電流を流した。電流は1kV毎に上昇させ(1kVで約1.2kA)、各枠材21内に水が浸入した状態で雷電流が流れたことを模擬し、図6(B)~(D)の各パターンにつき観察した。
上記図6(B)~(D)のパターンの詳細は次に示す通りである。
i)図6(B)ではアルミテープ24上に水滴26を垂らした状態、
ii)同図(C)ではアルミテープ24と離れた位置に水滴26を垂らした状態、
iii)同図(D)では左右に切断したアルミテープ24の突合わせ端の間に一定のスペースを設け、そのスペース内に非接触状態で近接させて水滴26を配置してそれぞれ通電した。

【0033】
3.実験結果
(1)図4(B)に示すアルミテープ24上に水滴26を垂らしたパターンで通電した場合では、約6kA時に少しくもり始め、約13.2kA時にアルミテープ24が溶断し、蓋22内面の水滴付着範囲が拡大した。
(2)図4(C)に示すアルミテープ24の近傍に水滴26を垂らしたパターンで通電した場合、約13.2kA時にアルミテープ24が溶断し、水の変化は見られなかった。
(3)図4(D)に示す左右のアルミテープ間に水滴を配したパターンでは、約7.2kA通電時に水滴26を介して発光と爆発音を伴い、蓋22が吹き飛ばされて水分は蒸発した。

【0034】
4.実験結果の考察
(1)ダウンコンダクターとなるアルミテープ24に雷電流が流れた場合、発生するジュール熱では急激な体積膨張は起きにくい。
(2)水を介した放電によって瞬間的に水が蒸発し膨張する。
(3)冬季雷によってダウンコンダクターやレセプターに水を介して大電流が流れた場合、水を介した部分において水が蒸発し膨張すると考えられる。

【0035】
II.水分に接したレセプターに高圧通電をした破損実験
1.実験方法
(1)実験機器材
・レセプター6 材質 銅-炭素材複合焼結材(商品名「STC-CH」)
直径D=60mm
板厚t=5mm
・ブレード代用基板4 合板 15×200×300(mm)の表面に同サイズの
厚み1mmのFRPを固着した板材
・固定及び接地用のボルト7 15mmの真鍮ボルト
・ダウンコンダクター(アルミテープ)9 厚み0.1mm,幅50mm
・コーキング材(防水部11)
・水分を含浸した脱脂綿
・電流サージ発生器(10/350μs) 形式 ICG-200K24μ
-350-110q(音羽電機工業製)
・デジタルオシロスコープ 形式 TDS3054C(テクトロニクス製)
・電流変成 形式 4424(ピアソン製)
・光ファイバー・アイソレーション・システム 形式 PH-A360-041
-200(ホトニクス製)
(2)実験方法
図7(A)~(C)に示すいずれのサンプルも基板4の表面にレセプター6をボルト締着し、レセプター6の外周をコーキング材により防水部11を形成したものを用い、共に上記電流サージ発生器等を用いて模擬雷(150kA)受雷させた。各サンプル独自の条件は次に示す通りである。
i)図7(A)のサンプルの場合
レセプター6の表面とその外周の基板4の表面にアルミテープ9を貼着して接続し、レセプター6と基板4の重ね合せ面間に水分12を浸入介在させて、アルミテープ9に受雷させた。
ii)図7(B)のサンプルの場合
レセプター6と基板4の間に肉厚0.5mmのワッシャー状のスペーサー13を介挿し、その外周に水分12を貯留し、レセプター6に(レセプター6を受雷部として)直接雷電流を印加した(但しアルミテープ9の配置はなし)。
iii)図7(C)のサンプルの場合
この例では、基板4の表面にアルミテープ9を貼着し、その端部をレセプター6の取付面外周縁と基板4の取付面との間に(両面に接触させて)介挿するとともに、アルミテープ(ダウンコンダクター)9とレセプター6の取付面との間には、脱脂綿に水分を含浸させてなる水分層12´を介在(アルミテープ9とレセプター6が水分層12´を介して導通)させ、アルミテープ9を受雷部として雷電流を印加した。

【0036】
2.実験結果
(1)図7(A)の実験ではアルミテープ9の一部剥離は生じたものの、レセプター6自体の形状は保持され、破損は生じなかった。図7(B)においても同様にレセプター6自体は形状が保持され、破損は生じなかった。
(2)これに対し、図7(C)に示す実験では基板4の表面に取付けたレセプター6の周縁とアルミテープ9の重なり幅Wの違いにより、雷電流印加時の結果が異なった。
即ち、重なり幅Wを10mm,30mmとした場合は水分層12´の水分が瞬時に膨張(爆発)してアルミテープ9の溶解剥離と共にレセプター6のアルミテープ9との重なり側が破損し爆散した。他方、上記水分層12´とアルミテープ9との重なり幅Wが5mmの場合はレセプター6の破損,爆散が生じなかった。

【0037】
3.実験結果の考察
以上の実験結果によれば、落雷時の水蒸気爆発(膨張)によってレセプター6又はブレード4表面が破損する条件として、ブレード4表面の何らかの導通層(注:ブレード4表面の汚れと水分による場合もある)とレセプター6との間に一定量以上の水分が介在し、その水分が雷電流の回路を構成することが挙げられることが推察できる。
また、水分量との関係ではブレード4の山形の表面に対してはレセプター6の直径が小さい程有利であり、水分膨張時のレセプター6に掛かる曲げモーメントとの関係でも直径が小さいことが望ましく、レセプター6の機械的強度の板厚が一定以上に保たれることが望ましいことが明らかである。

【0038】
III.埋設させたレセプターの破損実験
1.実験方法
(1)実験機器材
・レセプター31 材質 銅-炭素材複合焼結材(商品名「STC-CH」)
直径D=20mm
・ブレード代用基板32 合板
板厚=20mm
表面に厚み3mmのFRPを固着
・固定及び接地用のボルト33 真鍮ボルト
・アルミテープ34 厚み0.1mm,幅50mm
・水分を含浸した脱脂綿36
(2)実験方法
図8に示す通り、ブレード代表基板32に穿設された直径22mmの挿通孔32aの内部に、同一中心となるように、レセプター31を配置し、この状態で、レセプター31の小径のネジ部31aを、ボルト33の頭部に穿設されたネジ穴33aに挿入し、ネジ係合させて締着固定する。この状態で、レセプター31と挿通孔32aとの間には、1mmの隙間S´が形成される。この隙間S´には、アルミテープ34と接触させた状態で脱脂綿36を設け、アルミテープ34側に電圧を印加させ、160Aの電流を流して、その後の状態を観察する。

【0039】
2.実験結果
図9(A)に示す通り、水蒸気爆発が発生してアルミテープ34が破損した状態が確認された。また、同図(B)に示す通り、レセプター31の上面が一部で破損している状態が確認され、さらに、レセプター31とボルト33とが一部で溶融して若干固着している状態も確認された。

【0040】
3.実験結果の考察
以上の実験結果によれば、レセプター31が埋設されている場合でも、該レセプター31自体や、該レセプター31への誘導を行うアルミテープ34が破損することが確認された。
【符号の説明】
【0041】
4 ブレード
6 レセプター
7 ボルト
S 隙間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8