TOP > 国内特許検索 > 呼吸波形情報を取得するためのシステムおよび方法 > 明細書

明細書 :呼吸波形情報を取得するためのシステムおよび方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5995053号 (P5995053)
公開番号 特開2013-192567 (P2013-192567A)
登録日 平成28年9月2日(2016.9.2)
発行日 平成28年9月21日(2016.9.21)
公開日 平成25年9月30日(2013.9.30)
発明の名称または考案の名称 呼吸波形情報を取得するためのシステムおよび方法
国際特許分類 A61B   5/087       (2006.01)
FI A61B 5/08 200
請求項の数または発明の数 17
全頁数 26
出願番号 特願2012-059219 (P2012-059219)
出願日 平成24年3月15日(2012.3.15)
審査請求日 平成27年3月13日(2015.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】上田 泰己
【氏名】砂川 玄志郎
【氏名】三上 隆
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】田邉 英治
参考文献・文献 特表2007-500067(JP,A)
国際公開第2007/015289(WO,A1)
米国特許出願公開第2007/0179394(US,A1)
Jonathan P. Jacky,A plethysmograph for long-term measurements of ventilation in unrestrained animals,Respiratory, Environmental and Exercise Physiology,the American Physiological Society,1978年10月,Vol. 45, No. 4,p644 - p647
A. B. Hernandez et al.,Novel whole body plethysmography system for the continuous characterization of sleep and breathing i,Journal of Applied Physiology,2011年12月 1日,Vol. 112,p671 - p680
Richard Stephenson, Enza J. Gucciardi,Theoretical and practical considerations in the application of whole body plethysmography to sleep r,Eur J Appl Physiol,2002年 4月30日,Vol. 87,p207 - p219
調査した分野 A61B 5/087
A61B 5/16
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室
室内外が遮断されている、上記第一室と独立した第二室;
上記第一室の内部の気圧と上記第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部
を備えており、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室の容積は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように決定されている、
被験体の呼吸波形情報を取得するためのシステム。
【請求項2】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室
室内外が遮断されている、上記第一室と独立した第二室;
上記第一室の内部の気圧と上記第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部
を備えており、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室は、容積が可変である、
被験体の呼吸波形情報を取得するためのシステム。
【請求項3】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室
室内外が遮断されている、上記第一室と独立した第二室;
上記第一室の内部の気圧と上記第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部
を備えており、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記差圧センサを介して上記第一室と上記第二室との間を気体が流れ得る、
被験体の呼吸波形情報を取得するためのシステム。
【請求項4】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室
室内外が遮断されている、上記第一室と独立した第二室;
上記第一室の内部の気圧と上記第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する睡眠覚醒情報生成部
を備えており、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記
第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室の容積は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように決定されている、
被験体の睡眠覚醒情報を取得するためのシステム。
【請求項5】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室
室内外が遮断されている、上記第一室と独立した第二室;
上記第一室の内部の気圧と上記第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する睡眠覚醒情報生成部
を備えており、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記
第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室は、容積が可変である、
被験体の睡眠覚醒情報を取得するためのシステム。
【請求項6】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室
室内外が遮断されている、上記第一室と独立した第二室;
上記第一室の内部の気圧と上記第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する睡眠覚醒情報生成部
を備えており、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記
第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記差圧センサを介して上記第一室と上記第二室との間を気体が流れ得る、
被験体の睡眠覚醒情報を取得するためのシステム。
【請求項7】
前記睡眠覚醒情報生成部は、生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒判定を行うことによって睡眠覚醒情報を生成する、請求項4~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
生成された情報を記録する記録部;および
生成された情報を表示する表示部
をさらに備えている、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記気圧差が24時間以上にわたって測定される、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室の内部の気圧と、室内外が遮断されている、前記第一室と独立した第二室の内部の気圧との気圧差を、差圧センサを用いて経時的に測定する工程;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程
を包含し、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室の容積は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように決定されている、
被験体の呼吸波形情報を取得する方法。
【請求項11】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室の内部の気圧と、室内外が遮断されている、前記第一室と独立した第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する工程;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程
を包含し、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室は、容積が可変である、
被験体の呼吸波形情報を取得する方法。
【請求項12】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室の内部の気圧と、室内外が遮断されている、前記第一室と独立した第二室の内部の気圧との気圧差を、差圧センサを用いて経時的に測定する工程;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程
を包含し、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記差圧センサを介して上記第一室と上記第二室との間を気体が流れ得る、
被験体の呼吸波形情報を取得する方法。
【請求項13】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室の内部の気圧と、室内外が遮断されている、前記第一室と独立した第二室の内部の気圧との気圧差を、差圧センサを用いて経時的に測定する工程;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する工程
を包含し、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室の容積は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように決定されている、
被験体の睡眠覚醒情報を取得する方法。
【請求項14】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室の内部の気圧と、室内外が遮断されている、前記第一室と独立した第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する工程;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する工程
を包含し、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記第二室は、容積が可変である、
被験体の睡眠覚醒情報を取得する方法。
【請求項15】
生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室の内部の気圧と、室内外が遮断されている、前記第一室と独立した第二室の内部の気圧との気圧差を、差圧センサを用いて経時的に測定する工程;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する工程
を包含し、
上記第一室には、該第一室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該第一室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記第一室の換気量を調整する抵抗が設けられており、
上記差圧センサを介して上記第一室と上記第二室との間を気体が流れ得る、
被験体の睡眠覚醒情報を取得する方法。
【請求項16】
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒判定を行う工程をさらに包含する、請求項13~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~3の何れか1項に記載のシステムを用いて取得した被験体の呼吸波形情報に基づいて前記被験体の睡眠覚醒判定を行う睡眠覚醒判定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
上記呼吸波形情報が示す呼吸波形をセグメントに区切り、各セグメントのパワースペクトラムをフーリエ変換により算出する算出手段;
算出された各セグメントのパワースペクトラムの主成分を主成分分析により抽出する抽出手段;および
抽出された各セグメントのパワースペクトラムの主成分を用いて、呼吸波形の各セグメントを相異なる睡眠覚醒状態に対応する複数の群にクラスタリングするクラスタリング手段
として上記コンピュータを機能させるプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸波形情報を取得するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸波形を表示するには、呼吸波形の生成に必要な情報を経時的に測定することが必要である。マウスのような非ヒト小動物の呼吸を非侵襲的に測定する方法として最も普及している手法はWBPである。現在商業的に入手可能なWBPシステムとしては、例えばEMMS社(非特許文献1)、Buxco社(非特許文献2)、DSI社(非特許文献3)のシステムが挙げられる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2009-172197(平成21年8月6日公開)
【特許文献2】特開2004-254827(平成16年9月16日公開)
【0004】

【非特許文献1】http://www.electromedsys.com/wbp.html
【非特許文献2】http://www.buxco.com/Pulmonary.aspx?Page=UWBP
【非特許文献3】http://www.datasci.com/products/hardware/plethysmography_ chambers.asp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのシステムは、マウスを密閉容器に収容し、容器内外の圧力差を検出することによってマウスの呼吸流量を間接的に測定する装置である。マウスの呼吸流量を感度よく検出するには、密閉容器の容積が小さいほど有利であるため、上に挙げたシステムはいずれもマウス1匹をかろうじて収容し得る程度の大きさの容器を用いている。つまり、現在商業的に入手可能なWBPシステムでは、マウスの呼吸の検出感度をあげるために密閉容器の容積を可能な限り小さくしている。そのため、マウスは身動きを取ることができない状態に近い。このような状態はマウスにとって生理的条件下といえず、このような条件下では、マウスを長期間にわたって飼育することができないばかりか、生理的な状態での呼吸波形を生成することができない。
【0006】
本発明は、被験体の呼吸波形の生成に必要な情報を、長期間にわたって非侵襲的に測定/記録する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のシステムは、被験体の呼吸波形情報を取得するために、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室;上記収容室の内部の気圧と上記収容室の外部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;および、測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部を備えており、上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、第一室の換気量を調整する抵抗が設けられていることを特徴としている。本発明のシステムは、上記気圧差を前記センサの検出範囲内に調整するように、前記抵抗の抵抗量が決定されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明のシステムは、被験体の睡眠覚醒情報を取得するために、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室;上記収容室の内部の気圧と上記収容室の外部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部;および生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する睡眠覚醒情報生成部を備えており、上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、第一室の換気量を調整する抵抗が設けられていることを特徴としている。本発明のシステムは、上記気圧差を前記センサの検出範囲内に調整するように、前記抵抗の抵抗量が決定されていることが好ましい。
【0009】
本発明の方法は、被験体の呼吸波形情報を取得するために、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室の内部の気圧と外部の気圧との気圧差を経時的に測定する工程;および測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程を包含し、上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記収容室の換気量を調整する抵抗が設けられていることを特徴としている。本発明の方法は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように上記抵抗の抵抗量を決定する工程をさらに包含することが好ましい。また、室内外が遮断された、上記収容室と独立して備えられた第二室の内部の気圧を、上記収容室の外部の気圧として用いて前記気圧差を測定する工程をさらに包含することが好ましく、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように第二室の容積を決定する工程をさらに包含することがより好ましい。
【0010】
また、本発明の方法は、被験体の睡眠覚醒情報を取得するために、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室の内部の気圧と外部の気圧との気圧差を経時的に測定する工程;測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程;および生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する工程を包含し、上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記収容室の換気量を調整する抵抗が設けられていることを特徴としている。本発明の方法は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように上記抵抗の抵抗量を決定する工程をさらに包含することが好ましい。また、室内外が遮断された、上記収容室と独立して備えられた第二室の内部の気圧を、上記収容室の外部の気圧として用いて前記気圧差を測定する工程をさらに包含することが好ましく、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように第二室の容積を決定する工程をさらに包含することがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いれば、生理的条件下に近い状態で、測定期間にわたって非拘束にて被験体を収容することが可能となり、被験体の呼吸を生理的条件下に近い状態で長期間にわたって測定し、呼吸波形の生成に必要な情報や、被験体の睡眠覚醒状態を知るための情報を、経時的に取得することができる。また、換気量を調整するために抵抗の抵抗量を変動させることによって、さらに上記気圧差が差圧センサの検出範囲内に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかるシステムの一部の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるシステムの機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるシステムの機能ブロック図である。
【図4a】本発明の一実施形態における、収容室の容積と動物の換気量との関係を示す図である。
【図4b】本発明の一実施形態を電気回路として示した図である。
【図5a】本発明の一実施形態をシュミレーションした結果を示す図である。
【図5b】本発明の一実施形態をシュミレーションした結果を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態にて取得した呼吸波形情報を出力した結果を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態にて取得した睡眠覚醒情報を出力した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔I:第一のシステムおよび方法〕
本発明は、被験体の呼吸波形情報を取得するためのシステム(第一のシステム)を提供する。本発明の第一のシステムは、呼吸波形の生成に必要な情報を簡便かつ非侵襲的に高感度にて経時的に測定し、必要に応じて、呼吸波形の生成に必要な情報の記録および呼吸波形の表示を行うシステムであり、具体的にはWhole body plethysmograph(WBP)を行い、被験体の呼吸波形の生成に必要な情報を、長期間(少なくとも24時間以上、好ましくは7日間以上)にわたって非侵襲的に測定/記録するシステムである。

【0014】
本発明の第一のシステムは、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容するための収容室(第一室ともいう。)を備えている。第一室は、長期間にわたって被験体の生理機能を測定するために、被験体の生理的な行動を妨げることなく、生理的条件下に近い状態で、測定期間にわたって非拘束にて被験体を収容することができる。すなわち、第一室は、被験体の生理的な行動を妨げない空間を提供し、生理的条件下に近い状態で、測定期間にわたって非拘束にて被験体を収容するためのものである。

【0015】
本発明の第一のシステムは、このような第一室を備えているので、被験体の生理的条件下での生活に必要な居住空間が確保されている。これにより、被験体の呼吸を生理的条件下に近い状態で長期間にわたって測定し、呼吸波形の生成に必要な情報を経時的に取得することができる。なお、本発明の第一のシステムにおける第一室には、被験体の長期生活に必要な給水部および給餌部が設けられていることが好ましい。

【0016】
本発明の第一のシステムはさらに、第一室の内部の気圧と外部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ、および、測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部を備えている。本発明の第一のシステムでは、差圧センサが、第一室内外の気圧差を測定し、呼吸波形情報生成部が、測定された気圧差に基づいて第一室内の被験体の呼吸流量(すなわち呼吸波形情報)を生成する。本発明の第一のシステムはまた、必要に応じて、生成された呼吸波形情報を記録する記録部、および生成/記録された情報を呼吸波形として表示する表示部を備えていてもよい。

【0017】
第一室には、その内外の空気を換気する吸気部および排気部が、第一室に形成された開口(それぞれ吸気口および排気口)を介して設けられている。吸気部にて、第一室外から第一室内へ、差圧センサによる測定を妨げない範囲内での所定量の空気が連続的に流入し、排気部にて、第一室内から第一室外へ所定量の空気を連続的に流出する。このように、吸気部および排気部によって、第一室の必要最低限の換気が行われ、被験体を収容した後の第一室は、吸気部および排気部を除いて収容室の室内外を遮断されて、実質的に密封されている。なお、吸気口および排気口がそれぞれ吸気部および排気部でもあり得る。吸気部および排気部にて空気を所定量にて連続的に入出させるために、吸気部および排気部の少なくとも一方に、一定量の空気を吸気部から第一室内へ連続的に流入させるエアポンプが連結されていることが好ましい。また、吸気部および排気部はいずれも単一であっても複数であってもよく、設けられる位置は第一室の上方であっても下方であってもよい。

【0018】
本明細書中で用いられる場合、「実質的に密封」された状態は、密封が意図されている室内空間が吸気口および排気口を除いて外部と遮断されており、吸気口および排気口にて、差圧センサによる測定を妨げない範囲内での所定量の空気が行われることによって上記室内が一定の気圧に保たれており、吸気口および排気口では、上記所定量の空気以外の入出が行われない状態をいう。また、「所定量の空気」は、差圧センサによる測定を妨げることがない量の空気をいい、用いる差圧センサに応じて適宜設定されればよい。

【0019】
本発明の第一のシステムにおいて、吸気口および排気口の少なくとも一方、あるいは吸気部における換気路および排気部における換気路の少なくとも一方には、換気量を調整する抵抗(第一フィルタともいう。)が設けられており、第一フィルタの抵抗量を変動させることによって、第一室の換気量が調整され、さらに上記気圧差が差圧センサの検出範囲内に調整されている。このように、本発明の第一のシステムには、吸気部および排気部における換気路の少なくとも一方に、上記気圧差を上記センサの検出範囲内に調整するための抵抗が設けられており、上記気圧差を上記センサの検出範囲内に調整するように、第一フィルタの抵抗量が決定されているといえる。

【0020】
上述したように、本発明の第一のシステムは、被験体の長期生活に必要な居住空間である第一室を備えている。本発明の第一のシステムに用いられる第一室は、上述したように実質的に密封され得る限り、その材質および形状等は限定されない。マウスが被験体として用いられる場合、本発明の第一のシステムにおける第一室は、NIHが定めるマウス1匹あたりの居住空間の規定を満たしており、従来のWBPシステムにおける密閉容器と比較してはるかに大きな容積を有している。現在商業的に入手可能なWBPシステムでは、密閉容器の容積を大きくすると、収容されているマウスの呼吸による微弱な圧変化が、システムに設けられているセンサの検出限界よりも小さくなってしまう。上記の第一室を用いてWBPを行う本発明の第一のシステムでは、第一室の換気量を調整する第一フィルタが、第一室の開口、または吸気部および排気部の少なくとも一方における換気路に設けられており、本発明の第一のシステムではこれが上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するための部材として機能している。これにより、差圧センサにて測定されるべき気圧差を差圧センサの検出範囲内に調整することが可能となり、被験体の生理的な行動を妨げない程度に広い容積を有する第一室にて生活する被験体から、呼吸波形の生成に必要な情報を首尾よく検知することができる。すなわち、上記抵抗の抵抗量は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように決定されているといえる。

【0021】
本発明の第一のシステムは、差圧センサにて測定されるべき気圧差を差圧センサの検出範囲内に調整するためのさらなる手段を備えていてもよい。室内外が遮断されている第二室が、第一室と独立して第一室外に設けられていることが好ましく、この場合、第二室内の気圧が、第一室外の気圧として用いられ、第二室の室内容積を変動させることによって、上記気圧差が差圧センサの検出範囲内に調整されている。すなわち、本発明の第一のシステムは、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室;室内外が遮断されている、第一室と独立した第二室;第一室の内部の気圧と第二室の内部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;および、測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部を備えており、第一室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように、第二室の容積が決定されており、上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、第一室の換気量を調整する抵抗が設けられているといえる。

【0022】
差圧センサにて測定されるべき気圧差を差圧センサの検出範囲内に調整するためのよりさらなる手段として、抵抗(第二フィルタともいう。)が差圧センサの検出部に設けられていてもよい。第二フィルタが設けられる検出部としては、差圧センサが第一室内の気圧を検出する第一検出部、および差圧センサが第二室内の気圧を検出する第二検出部の少なくとも一方であればよく、好ましくは第二検出部であり、少なくとも第二検出部に設けられていることが好ましい。第二フィルタの抵抗量を変動させることによって、上記気圧差が差圧センサの検出範囲内に調整されている。

【0023】
本発明の第一のシステムは、第一室に収容された被験体の行動を感知する赤外線センサをさらに備えていてもよい。これにより被験体の行動量を測定することができ、本発明の第一のシステムによって生成された情報と被験体の行動量との相関を調べることができる。なお、赤外線センサによって被験体の行動を感知するために、第一室は赤外線透過ガラスから構成されていることが好ましいが、少なくとも赤外線センサからの赤外線の通路上が赤外線透過ガラスから構成されていればよい。

【0024】
このように、本発明の第一のシステムは、上述した第一室、差圧センサ、呼吸波形情報生成部を備え、第一室に設けられた吸気部および排気部の少なくとも一方に第一フィルタが設けられていればよいといえ、第二室および/または第二フィルタ、記録部、表示部および赤外線センサがさらに設けられていてもよい。このようなシステムを構成する各部材が、「CPUなどの演算手段がROMやRAMなどの記録媒体に格納されたプログラムコードを実行することによって実現される機能ブロックである」場合を例に挙げて、本発明を実行する一実施形態を以下に説明する。

【0025】
図1は、第一のシステム100の一部を模式的に示す図である。図1に示すように、第一のシステム100は、収容部(第一室)10、補助部(第二室)10’、差圧センサ11を備えており、第一室10に設けられた吸気部21および排気部22には第一フィルタ31が設けられており、吸気部21にはポンプ23が接続されている。ポンプ23は、差圧センサによる測定を妨げない範囲内での所定量の空気を、吸気部21から第一室10の室内へ送り込んでおり、対応する量の空気が排気部22から排出されることによって、第一室10の内部は一定の気圧に保たれ、実質的に密封されている。そして、吸気部21および排気部22の換気路には、抵抗として第一フィルタ31が設けられている。また、差圧センサ11の第一検出部および第二検出部には第二フィルタ32が設けられており、第二フィルタ32は第二室10’とともに差圧センサ11による測定を補助している。

【0026】
図2は第一のシステムの機能ブロック図である。第一のシステム100は、図2に示すように、その機能ブロックとして、差圧センサ11、記録部12、情報生成部(CPU)13、および表示部14を備えている。差圧センサ11は、被験体が収容された第一室10の内側の気圧と第二室10’の内側の気圧との差圧を測定する機能を有しており、CPU13は、呼吸波形情報を生成するための演算部(呼吸波形情報生成部)13aとしての機能を有しており、記録部12は、演算部13aが処理するための、差圧センサ11によって得られた情報(差圧情報)、および演算部13aが生成した呼吸波形情報を保存する機能を有しており、表示部14は、演算部13aによって生成された呼吸波形情報を呼吸波形として表示する機能を有している。

【0027】
なお、この機能ブロックは、CPU13が記録部12に格納された、呼吸波形情報を生成するためのプログラムを実行し、明示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって実現される。これらの機能ブロックは、全てCPU13の制御を受けており、その具体的な構成、機能等は特に限定されるものではない。また、第一室10が実質的に密封されていることが確認された後に上記プログラムが実行されるが、CPU13は、上記プログラムを実行して第一室10が実質的に密封されているか否かを確認してもよく、あるいは周辺回路を制御して第一室10を実質的に密封してもよい。

【0028】
一実施形態において、第一のシステム100では、第一室10の室内に被験体が収容され、第一室10が実質的に密封された後に、差圧センサ11が、被験体が収容された第一室10の内側の気圧と補助部10’の内側の気圧との差圧を測定する。第一のシステム100に第二室10’が備えられていない場合、差圧センサ11は、第一室10の内側の気圧と外側の気圧との差圧を測定する。CPU13は、測定された差圧を差圧情報として一旦記録部12へ記録し、測定期間中または測定終了後に、記録部12に記録された差圧情報を取り出し、被験体の呼吸波形情報を生成する。あるいは、CPU13は、測定された差圧情報を、記録部12へ記録することなく直接用いて、被験体の呼吸波形情報を生成する。CPU13は、生成した呼吸波形情報を、一旦記録部12へ記録しても、表示部14へ直接出力して呼吸波形として表示してもよい。差圧情報に基づいて呼吸波形情報を生成するためのプログラムは、当該分野にて公知の種々のプラグラムが利用可能である。なお、後述する実施例では、差圧センサにて測定したアナログ電位(差圧情報)をアンプで増強し、これを、AD変換器を介してデジタル信号に変換することによって呼吸波形情報を生成しており、差圧情報を呼吸波形情報として用いているともいえる。また、差圧センサの抵抗を一定に保つことによって、呼吸波形情報は第一室から流出する気体流量に比例する。

【0029】
吸気部21および排気部22に設けられている第一フィルタ31の抵抗量は、後述する手順に従って予め決定されているが、CPU13は、上記プログラムの実行中に、測定された差圧情報を表示部14へ直接出力して表示してもよく、使用者は表示された差圧情報に基づいて、第一フィルタ31の抵抗量を変更してもよい。あるいは、CPU13は、周辺回路を制御して第一フィルタ31の抵抗量を変更してもよい。

【0030】
また、第二室10’の室内容積は、後述する手順に従って予め決定されているが、CPU13は、上記プログラムの実行中に、測定された差圧情報を表示部14へ直接出力して表示してもよく、使用者は表示された差圧情報に基づいて、第二室10’の室内容積を変更してもよい。あるいは、CPU13は、周辺回路を制御して第二室10’の室内容積を変更してもよい。

【0031】
このように、本発明の第一のシステムを実行する方法もまた、本発明の範囲内である。すなわち、本発明はまた、被験体の呼吸波形情報を取得する方法(第一の方法)を提供する。本発明の第一の方法によって、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって配置した収容室の内外の気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報が生成される。すなわち、本発明の第一の方法は、被験体を長期間にわたって収容する収容室の内外の気圧差を経時的に測定する工程;および、測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程、を包含すればよく、その前段階として、上記収容室の内部に、上記被験体を配置する工程をさらに包含してもよく、さらに、上記収容室を設置する工程や、被験体の長期生活に必要な給水部および給餌部を上記収容室の内部に設ける工程を包含してもよい。

【0032】
本発明の第一の方法において用いられる収容室は、上述した、生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する第一室であり、具体的には、第一室外から第一室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、第一室内から第一室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、上記被験体を配置した後に、上記吸気部および上記排気部を除いて上記収容室の室内外が遮断される。すなわち、本発明の第一の方法は、上記被験体を配置した後に、上記吸気部および上記排気部を除いて上記収容室の室内外を遮断する工程をさらに包含してもよい。また、所定量の空気を上記吸気部から上記収容室内へ連続的に流入させるエアポンプを上記吸気部および上記排気部の少なくとも一方に連結する工程や、該エアポンプを作動して所定量の空気を上記吸気部から上記収容室内へ連続的に流入させる工程をさらに包含してもよい。

【0033】
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方には抵抗(第一フィルタ)が設けられており、第一室の換気量が調整され、さらに上記気圧差が差圧センサの検出範囲内に調整されている。このように、第一フィルタの抵抗量は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように決定されているともいえる。すなわち、本発明の第一の方法は、吸気部および排気部における換気路の少なくとも一方に、第一室の換気量を調整する第一フィルタを設ける工程をさらに包含してもよく、さらに、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するために、第一フィルタの抵抗量を決定する工程を包含してもよい。

【0034】
差圧センサにて測定されるべき気圧差を差圧センサの検出範囲内に調整するためのさらなる手段として、室内外が遮断されている第二室が第一室と独立して第一室外に設けられてもよく、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように、第二室の室内容積が決定されている。このように、本発明の第一の方法は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するために、第二室の室内容積を決定する工程をさらに包含してもよい。

【0035】
差圧センサにて測定されるべき気圧差を差圧センサの検出範囲内に調整するための手段として、差圧センサが第一室内の気圧を検出する第一検出部、および差圧センサが第二室内の気圧を検出する第二検出部の少なくとも一方に、さらなる抵抗(第二フィルタ)が設けられてもよく、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように、第二フィルタの抵抗量が決定されている。このように、本発明の第一の方法は、上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するために、第二フィルタの抵抗量を決定する工程をさらに包含してもよい。

【0036】
また、生成した呼吸波形情報を利用するために、本発明の第一の方法は、上記呼吸波形情報を記録する工程や、上記呼吸波形情報に基づいて呼吸波形を表示する工程をさらに包含することが好ましい。

【0037】
本発明の第一のシステムおよび方法を用いれば、被験体の呼吸波形の生成に必要な情報を、簡便、低コストかつ非侵襲的に測定/記録し、必要に応じて呼吸波形を表示することができる。なお、本発明を用いれば、第一室の容積を被験体の換気量の10000倍以上に設計することが可能である。また、第一室の容積が被験体の換気量の15000倍以上、20000倍以下であっても本発明を実現し得る。

【0038】
〔2:第二のシステムおよび方法〕
本発明はまた、被験体の睡眠覚醒情報を取得するためのシステム(第二のシステム)を提供する。

【0039】
哺乳動物の睡眠覚醒情報を取得する方法として最も普及しているものは脳波・筋電図法である。脳波は、主に大脳から検出される小さな電位を経時的に記録したものであり、筋電図は、骨格筋の電位を経時的に記録したものである。脳波・筋電図法を用いて、哺乳類の睡眠覚醒状態をNREM睡眠、REM睡眠、覚醒の3つの状態に分けることができる。

【0040】
脳波・筋電図法を用いる場合、動物の頭部に電極を留置することが必要である。しかし、マウスのような小動物では、大脳が発する電位が小さいために電極を頭蓋骨に留置することが必要となり、難易度が極めて高い手術を必要とする。そして、頭蓋骨に電極を留置するような大手術をうけた動物の行動パターンは、その動物本来の行動パターンと異なることが知られており、実際に観察したい状態を観察できない可能性がある。また、脳波・筋電図法は、微弱な脳波や筋電図を増幅することが必要となるために、ノイズ対策や高性能アンプが必要となり、コストが極めて高くなる。さらに、脳波・筋電図法に基づいて睡眠覚醒状態を判定するための解析が自動化できていないために、最終的に人間の目で睡眠覚醒状態を判定することになり、限られたリソースの中で大量のデータを処理するには不適切である。

【0041】
本発明の第二のシステムは、睡眠覚醒状態を判定するための情報を被験体から簡便かつ非侵襲的に高感度にて経時的に測定し、必要に応じて、睡眠覚醒状態を判定するための情報の記録および表示を行うシステムであり、具体的にはWhole body plethysmograph(WBP)を行い、被験体の睡眠覚醒状態の判定に必要な情報を、長期間(少なくとも24時間以上、好ましくは7日間以上)にわたって非侵襲的に測定/記録するシステムである。

【0042】
本発明の第二のシステムによって、生理機能を長期間にわたって測定されるべき被験体を配置した収容室の内外の気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報が生成され、生成された呼吸波形情報に基づいて睡眠覚醒情報がさらに生成される。すなわち、本発明の第二のシステムは、被験体の呼吸波形情報を取得し、取得した呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成するシステムである。本発明の第二のシステムにおいて、被験体の呼吸波形情報を取得するための構成は、上述した第一のシステムに準じていればよい。すなわち、本発明の第二のシステムは、第一のシステムにて説明した第一室、第一フィルタ、差圧センサおよび呼吸波形情報生成部、ならびに、取得した呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する睡眠覚醒情報生成部を備えていればよく、第一のシステムにて説明した第二室および/または第二フィルタ、記録部、表示部および赤外線センサがさらに設けられていてもよい。

【0043】
図3は第二のシステムの機能ブロック図である。機能ブロック以外の構成については第一のシステムと同様であり、上述した第一のシステムについての説明および図1を参照のこと。第二のシステム101は、図3に示すように、その機能ブロックとして、差圧センサ11、記録部12、情報生成部(CPU)13、および表示部14を備えている。差圧センサ11は、被験体が収容された第一室10の内側の気圧と第二室10’の内側の気圧との差圧を測定する機能を有しており、CPU13は、呼吸波形情報を生成するための演算部(呼吸波形情報生成部)13a、および、睡眠覚醒情報を生成するための演算部(睡眠覚醒情報生成部)13bとしての機能を有しており、記録部12は、演算部13aが処理するための、差圧センサ11によって得られた情報(差圧情報)、および演算部13aが生成した呼吸波形情報、ならびに、演算部13bが生成した睡眠覚醒情報を保存する機能を有しており、表示部14は、演算部13aによって生成された呼吸波形情報を呼吸波形として表示する機能、および演算部13bによって生成された睡眠覚醒情報を表示する機能を有している。

【0044】
なお、この機能ブロックは、CPU13が記録部12に格納された、呼吸波形情報および/または睡眠覚醒情報を生成するためのプログラムを実行し、第一のシステムと同様に明示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって実現される。

【0045】
第二のシステム101では、第一のシステムに準じて生成された呼吸波形情報を用いる。CPU13は、生成した呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を直接生成するか、あるいは、測定期間中または測定終了後に、記録部12に記録された呼吸波形情報を取り出し、被験体の睡眠覚醒情報を生成する。CPU13は、生成した睡眠覚醒情報を、一旦記録部12へ記録しても、表示部14へ直接出力して表示してもよい。なお、後述する実施例において、CPU13は、以下の手順に従って呼吸波形情報に基づいて睡眠覚醒情報を生成しているが、睡眠覚醒情報の生成手順はこれに限定されず、本明細書を読んだ当業者によって適宜設計され得る。

【0046】
[1]呼吸波形のサンプリング
呼吸波形のサンプリングをf=250[Hz]で行う。呼吸頻度の低い動物種ではさらにサンプリングレートが低くてもよい。

【0047】
[2]時系列呼吸波形のフィルタリング
解析法によっては時系列データを移動平均やガウスフィルターを用いて平滑化する必要がある。具体的には呼吸数や呼吸長を用いる解析の場合にはフィルタリングが必要となる。まずフィルタ幅20点、平均0、標準偏差2のガウスフィルターをかけることによって高周波成分を除去し、さらにフィルタ幅40点、平均0、標準偏差20のガウスフィルターで得られた時系列データを元データから差し引くことによって、基線の揺れを取り除くことができる。

【0048】
[3]時系列呼吸波形のパワースペクトラムの算出
上記[2]で得られた時系列データを,睡眠覚醒判定を行いたい長さで区切り(1セグメント)、セグメントごとにフーリエ変換を行い、パワースペクトラムを算出する。なおパワースペクトラムを求める際にセグメントごとに線形トレンドを除去し、窓関数としてはハニングウィンドウを用いている。たとえばL[秒]の時系列データを取得し、セグメント長をk[秒]で解析を行う場合、kf×L/kの行列を用いて上の計算を行う。後述する実施例では8秒間毎のパワースペクトラムを算出して用いている。

【0049】
[4]呼吸波形パワースペクトラムの主成分分析
上記[3]で求められたL/k個のセグメント毎に求められたL/k個のパワースペクトラムのベクトルに対して主成分分析を行い、主成分を抽出する。

【0050】
[5]呼吸波形パワースペクトラムの第1主成分および第2主成分を用いてPDFクラスタリング
上記[4]で求められた呼吸波形の、セグメント毎のパワースペクトラムの主成分を用いてクラスタリングを行う。クラスタリングはAzzaliniらが提唱した(Stat Comput.,2007)ノンパラメトリック密度推定法を用いてコアとなるクラスタを同定し、残された点はコアクラスタとの距離によってクラスタリングを行う。

【0051】
[6]クラスタの平均パワースペクトラムを求め「睡眠」あるいは「覚醒」に分類
上記[5]でクラスタリングされた2群を睡眠または覚醒に分類する。哺乳類では呼吸数の大小に大きな違いがあることが知られているので、2群で呼吸数を比較し呼吸数が多い方を覚醒、少ない方を睡眠とする。

【0052】
このように、本発明では、呼吸波形を周波数領域に変換した後に主成分分析を行う。これにより、動物種に依存することなく最も特徴的な周波数領域におけるパターンを有した2軸に情報を要約することができる。よって、例えばNREM睡眠における呼吸のパターンが異なる場合であっても、NREMと覚醒との間でパターンに差異があれば2群に分けることができる。すなわち、公知技術と比較して事前に必要とされる情報(例えば、どの周波数領域が睡眠に特徴的であるかなど)の種類を極めて低減することができる。

【0053】
ヒトの睡眠覚醒に関し、特許文献1(特開2009-172197)は、接触性の体動検知センサから検出した呼吸信号に基づいてヒトの睡眠状態を判定する技術を開示しており、特許文献2(特開2004-254827)は、取得した生体情報に基づいてヒトの睡眠状態を判定する技術を開示している。特許文献1の技術は、被験者にセンサを取り付けないと測定することができない。これに対して、本発明は、被験体の呼吸を非接触性に測定している。特許文献2の技術が用いる生体情報は、皮膚温、体温、脈拍、心拍、血圧、呼吸、発汗および体動などであり、極めて複雑である。これに対して、本発明は、生体情報として呼吸のみを用いるので極めて簡易である。また、特許文献1には、呼吸波形を解析すると基本波、第二高調波、第三高調波の周波数成分が得られ、これらの検出結果に応じて睡眠状態を判定する旨が記載されているが、このような判定を実現するためには、判定基準を生成するために膨大な情報量が事前に必要とされる。これに対して、本発明は、どの周波数ピークが重要であるかなどという情報を事前に必要とすることなく、被験体の状態を睡眠と覚醒の2群に分けることができる。

【0054】
なお、上述したように、呼吸波形の周期に基づいて睡眠と覚醒に分類することを説明したが、呼吸の変動(例えば、周波数領域でのピークの分散や、呼吸長の分布などのような周波数領域における分布の時間変化)に基づいてREM睡眠とその他(例えばNREM睡眠)を区別することができる。

【0055】
このように、本発明の第二のシステムを実行する方法もまた、本発明の範囲内である。すなわち、本発明はまた、被験体の睡眠覚醒情報を取得する方法(第二の方法)を提供する。本発明の第二の方法によって、生理機能を長期間にわたって測定されるべき被験体を配置した収容室の内外の気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報が生成され、生成された呼吸波形情報に基づいて睡眠覚醒情報がさらに生成される。すなわち、本発明の第二の方法は、被験体の呼吸波形情報を取得し、取得した呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する方法である。本発明の第二の方法において、被験体の呼吸波形情報を取得する段階は、上述した第一の方法に準じて行われればよく、本発明の第二の方法は、上述した第一の方法に、取得した呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する工程をさらに包含すればよい。

【0056】
生成した呼吸波形情報および睡眠覚醒情報を利用するために、本発明の第二の方法は、上記呼吸波形情報および/または睡眠覚醒情報を記録する工程や、上記呼吸波形情報に基づいて呼吸波形を表示する工程、生成した睡眠覚醒情報を表示する工程をさらに包含することが好ましい。

【0057】
本発明の第二のシステムおよび方法を用いれば、簡便、低コストかつ非侵襲的に被験体の睡眠覚醒状態を判定することができ、手術が困難な被験体にも適用可能である。また、本発明は完全な自動化が可能であるため、従来の脳波・筋電図法にて不可欠な目視による状態確認も不要である。また、マウスのような小動物において、呼吸に基づいて睡眠覚醒状態を判定する技術はこれまでに存在しない。本発明の被験体として非ヒト小動物(例えばマウスまたはラット)を用いる場合、薬剤のスクリーニング等に好適に利用される。

【0058】
〔3:システムおよび方法の最適化〕
本発明は、対象とする被験体の呼吸の特徴に応じて用いられればよく、本発明のシステムおよび方法を実行するにあたり、第一室の容積、差圧センサの感度、第一室の換気路における抵抗、および第二室の容積を最適化することが重要である。動物は種固有の周波数領域における呼吸ピークおよび換気量を有しているので、以下の手順に従えば、本発明のシステムにおける収容室の容積および差圧センサの感度に基づいて、換気路抵抗(第一フィルタおよび/または第二フィルタ)および第二室の容積を最適化することができる。また、以下の手順を適宜改変すれば、本発明のシステムに用いる収容室および差圧センサを、利用可能な換気路抵抗および第二室に基づいて設定することができる。これにより、特定の呼吸の周波数ピークや換気量を増幅して首尾よく検出することができる。つまり、被験体としてマウスを例に挙げて本発明を説明しているが、本発明の対象とする被験体は、マウスのような非ヒト小動物に限定されず、本発明がヒトに対しても適用可能であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。

【0059】
〔1〕第一室の容積
第一室の容積をV[mL]、動物の1回換気量をΔV[mL]、呼気時の第一室内圧をP[cmHO]、吸気時の第一室内圧をP[cmHO]、第一室内の温度をTout[K]、マウスの体温をTin[K]とすると、吸気時と呼気時との圧差ΔPは、

【0060】
【数1】
JP0005995053B2_000002t.gif
となる。収容室内での動物の居住性を考慮するとVは大きいほど好ましいが、Vが大きくなるにつれてΔPが小さくなるので、予想されるΔPを検出し得る差圧センサが必要となる。マウスの1回換気量をΔV=0.2[mL]、大気圧をP=101325[Pa]]、Tin=310[K]、Tout=293[K]とすると、ΔPとVの関係は図4aのようになる。

【0061】
NIHが定めるマウス1匹あたりの居住空間は、床面積が96.7cm以上、高さが12.7cm以上となっているため、最低でも1228cm以上の空間容積が必要となる。このため第一室内の容積を1228cmとした場合、0.0090[cmHO]以下の圧力を検出し得る差圧センサを用意することが必要になる。一方で、動物の居住性や飼育の長期化を考慮すると第一室内の容積は大きいほど好ましい。そこで、第一室内の容積を3000[mL]、差圧センサの感度を-0.008~0.008[cmHO]とした場合の検討を以下に示す。

【0062】
〔2〕呼吸波形情報取得システムの流路
呼吸波形情報取得システムにおける流路を等価の電気回路に置換すると、図4bのようになる。R1は換気路抵抗[cmHO・sec/mL]、R2は差圧センサ抵抗[cmHO・sec/mL]、C1は第一室容積[mL/cmHO]、C2は第二室容積[mL/cmHO]を表している。
第一室および差圧センサのインピーダンスをそれぞれG1、G2として次のように表すことができる。

【0063】
【数2】
JP0005995053B2_000003t.gif

【0064】
【数3】
JP0005995053B2_000004t.gif
このとき、第一室、差圧センサの各々に流入する単位時間あたりの気体体積をi、iとすると、差圧センサにて検出される圧力Vs[cmHO]は

【0065】
【数4】
JP0005995053B2_000005t.gif
となり、

【0066】
【数5】
JP0005995053B2_000006t.gif
すなわち、

【0067】
【数6】
JP0005995053B2_000007t.gif
が回路内の単位時間あたりの気体容積から差圧センサで検出される圧力への伝達関数となり、これはR1、R2、C1、C2が与えられれば一義的に定まる。なお、上述した第一室内の容積および差圧センサの感度に基づいて、後述する実施例では、C1=1.77mL/cmHO、R2=1.55cmHO・sec/mLを用いた。

【0068】
〔3〕第一室の換気路における抵抗の抵抗量
換気路抵抗R1を変動させた場合のGのシミュレーション結果を図5aに示す。R1を小さくすることでピークのゲインを下げることなく低い周波数領域をカットすることができる。マウスの生理的な呼吸は1~10Hzにおさまるため、今回の実施例ではR1=0.4[cmHO・sec/mL]程度が適切であることがわかる。

【0069】
〔4〕第二室の容積
第二室容積を変化させた際のシミュレーションによって得られたGを図5bに示す。第二室容積を大きくするほどゲインを増加し得ることがわかる。例えば、今回の実施例では、マウスの1回換気量は0.2[mL]であり呼吸を10[Hz]だとすると、肺容積は、0.1sin(2π・10t)[mL]と近似することができ、実際の呼吸流量はTout=293[K]およびTin=310[K]の際に最大で0.275cos(2π・10t)[mL/sec]となる。第二室容積を5[mL]すなわち、C2=0.00295[mL/cmHO]とすると、10Hz付近のG=0.037[cmH2O/sec/mL]であり、0.275*0.037=0.0102[cmHO]の振幅の圧波形が差圧センサで得られることになる。実施例で用いている差圧センサの感度が-0.008~0.008[cmHO]であるため、第二室容積は5mLで十分であることがわかる。

【0070】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

【0071】
なお、本発明のシステムを構成する各部材が、「CPUなどの演算手段がROMやRAMなどの記録媒体に格納されたプログラムコードを実行することによって実現される機能ブロックである」場合を例にして説明したが、同様の処理を行うハードウェアによって実現してもよい。また、処理の一部を行うハードウェアと、当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うプログラムコードを実行する上記演算手段とを組み合わせて実現することもできる。さらに、上記各部材のうち、ハードウェアとして説明した部材であっても、処理の一部を行うハードウェアと、当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うプログラムコードを実行する上記演算手段とを組み合わせて実現することもできる。なお、上記演算手段は、単体であってもよいし、装置内部のバスや種々の通信路を介して接続された複数の演算手段が共同してプログラムコードを実行してもよい。
【実施例】
【0072】
被験体(マウス)を収容する第一室(容積3000 mL)、第一室外の気圧を提供する第二室(容積5 mL)、第一室と第二室の室内圧の差を測定する差圧センサ(感度-0.008~0.008 cmHO)、第一室の換気量を調整する抵抗(換気路抵抗)(0.4 cmHO・sec/mL)、差圧センサ抵抗(第二抵抗)(1.55 cmHO・sec/mL)、差圧センサからの情報を処理するコンピュータを備えたシステムを構築した。
【実施例】
【0073】
マウスを収容した後の第一室を実質的に密封し、3日間にわたって呼吸波形を測定しかつ記録した。呼吸波形の測定および記録を異なる2個体について行った。差圧センサにて測定したアナログ電位をアンプで増強し、これを、AD変換器を介してデジタル信号に変換したものを呼吸波形として出力した。結果を図6に示す。
【実施例】
【0074】
統計解析環境Rを用いて、[1]得られた呼吸波形のサンプリング、[2]時系列呼吸波形のフィルタリング、[3]時系列呼吸波形のパワースペクトラムの算出、[4]呼吸波形パワースペクトラムの主成分分析、[5]呼吸波形パワースペクトラムの第1主成分と第2主成分を用いたPDFクラスタリング、を行った。図7には、[6]クラスタの平均パワースペクトラムを求めて「睡眠」あるいは「覚醒」に分類した結果を示す。なお、上記[2]~[6]を実行する際の、統計解析環境Rにおけるソースコードは以下のとおりである:
【実施例】
【0075】
【数7】
JP0005995053B2_000008t.gif
【実施例】
【0076】
【数8】
JP0005995053B2_000009t.gif
【実施例】
【0077】
【数9】
JP0005995053B2_000010t.gif
【実施例】
【0078】
【数10】
JP0005995053B2_000011t.gif
【実施例】
【0079】
【数11】
JP0005995053B2_000012t.gif
クラスタの平均パワースペクトラムに基づいて「睡眠」あるいは「覚醒」に分類したところ、マウス1において感度98.5%、特異度88.5%、マウス2において感度96.7%、特異度96.7%にて、8秒間毎の睡眠状態を判定することができた。
【実施例】
【0080】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0081】
すなわち、本発明は以下の態様であり得る。
1.生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室;
上記収容室の内部の気圧と上記収容室の外部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部
を備えており、
上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、第一室の換気量を調整する抵抗が設けられている、被験体の呼吸波形情報を取得するためのシステム。
2.前記気圧差を前記センサの検出範囲内に調整するように、前記抵抗の抵抗量が決定されている、1のシステム。
3.生成された呼吸波形情報を記録する記録部;および
生成された呼吸波形を表示する表示部
をさらに備えている、1または2のシステム。
4.生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室;
上記収容室の内部の気圧と上記収容室の外部の気圧との気圧差を経時的に測定する差圧センサ;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する呼吸波形情報生成部;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する睡眠覚醒情報生成部
を備えており、
上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、第一室の換気量を調整する抵抗が設けられている、被験体の睡眠覚醒情報を取得するためのシステム。
5.前記気圧差を前記センサの検出範囲内に調整するように、前記抵抗の抵抗量が決定されている、4のシステム。
6.生成された呼吸波形情報および/または睡眠覚醒情報を記録する記録部;および
生成された呼吸波形および/または睡眠覚醒情報を表示する表示部
をさらに備えている、4または5のシステム。
7.室内外が遮断されている、前記収容室と独立した第二室をさらに備えており、
前記差圧センサは、第二室内の気圧を前記収容室外の気圧として用いて前記気圧差を測定し、
上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように、第二室の容積が決定されている、1~6のシステム。
8.前記差圧センサが収容室内の気圧を検出する第一検出部、および/または前記差圧センサが収容室外の気圧を検出する第二検出部に、第二抵抗がさらに設けられており、
上記気圧差を上記差圧センサの検出範囲内に調整するように、第二抵抗の抵抗量が決定されている、1~7のシステム。
9.前記被験体が24時間以上にわたって収容される、1~8のシステム。
10.前記気圧差が24時間以上にわたって測定される、1~9のシステム。
11.給水部および給餌部が第一室内に備えられている、1~10のシステム。
12.前記被験体が非ヒト小動物である、1~11のシステム。
13.前記非ヒト小動物がマウスまたはラットである、12のシステム。
14.前記所定量の空気を前記吸気部から前記収容室内へ連続的に流入させるエアポンプが、上記吸気部および上記排気部の少なくとも一方に連結されている、1~13のシステム。
15.生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室の内部の気圧と外部の気圧との気圧差を経時的に測定する工程;および
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程
を包含し、
上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記収容室の換気量を調整する抵抗が設けられている、被験体の呼吸波形情報を取得する方法。
16.生成された呼吸波形情報を記録する工程をさらに包含する、14のシステム。
17.生成された呼吸波形を表示する工程をさらに包含する、14または15のシステム。
18.生理機能を測定されるべき被験体を長期間にわたって収容する収容室の内部の気圧と外部の気圧との気圧差を経時的に測定する工程;
測定された気圧差に基づいて被験体の呼吸波形情報を生成する工程;および
生成された呼吸波形情報に基づいて被験体の睡眠覚醒情報を生成する工程
を包含し、
上記収容室には、該収容室の室外から室内へ所定量の空気を連続的に流入させる吸気部、および、該収容室の室内から室外へ所定量の空気を連続的に流出させる排気部が設けられており、
上記収容室は、上記被験体が収容された後に、上記吸気部および上記排気部を除いて室内外が遮断されており、
上記吸気部における換気路および上記排気部における換気路の少なくとも一方に、上記収容室の換気量を調整する抵抗が設けられている、被験体の睡眠覚醒情報を取得する方法。
19.生成された呼吸波形情報および/または睡眠覚醒情報を記録する工程をさらに包含する、18の方法。
20.生成された呼吸波形および/または睡眠覚醒情報を表示する工程をさらに包含する、18または19の方法。
21.前記抵抗を、前記吸気部における換気路および前記排気部における換気路の少なくとも一方に設ける工程をさらに包含する、18~20の方法。
22.前記気圧差を前記センサの検出範囲内に調整するように、第一室の換気量を調整する抵抗の抵抗量を決定する工程をさらに包含する、18~21の方法。
23.室内外が遮断された、前記収容室と独立して備えられた第二室の内部の気圧を、前記収容室の外部の気圧として用いて前記気圧差を測定する工程をさらに包含する、18~22の方法。
24.前記気圧差を前記差圧センサの検出範囲内に調整するように第二室の容積を決定する工程をさらに包含する、23の方法。
25.前記気圧差を前記差圧センサの検出範囲内に調整するように、前記差圧センサが収容室内の気圧を検出する第一検出部、および/または前記差圧センサが収容室外の気圧を検出する第二検出部に設けられた第二抵抗の抵抗量を決定する工程をさらに包含する、18~24の方法。
26.前記被験体が24時間以上にわたって収容される、18~25の方法。
27.前記測定する工程が24時間以上にわたって行われる、18~26の方法。
28.給水部および給餌部を第一室内に備える工程をさらに包含する、18~27の方法。
29.前記被験体が非ヒト小動物である、18~28の方法。
30.前記非ヒト小動物がマウスまたはラットである、29の方法。
31.前記所定量の空気を前記吸気部から前記収容室内へ連続的に流入させるエアポンプを、上記吸気部および上記排気部の少なくとも一方に連結する工程をさらに包含する、18~30の方法。
32.前記被験体の生理機能を長期間にわたって測定するための収容室の内部に、測定されるべき被験体を配置する工程をさらに包含する、18~31の方法。
33.前記被験体の生理機能を長期間にわたって測定するための収容室を設置する工程をさらに包含する、18~32の方法。
34.前記被験体を配置した後に、前記吸気部および前記排気部を除いて前記収容室の室内外を遮断する工程をさらに包含する、18~33の方法。
【実施例】
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
被験体の睡眠覚醒状態を把握することによって、被験体の健康管理が可能になる。これにより、被験体にとっての好ましい生活リズムを提案したり、診断時の有力な補助データを提供したりすることができるので、本発明はあらゆる産業に貢献する。
【符号の説明】
【0084】
10 収容部(第一室)
10’ 補助部(第二室)
11 差圧センサ
12 記録部
13 情報生成部(CPU)
13a 呼吸波形情報生成部
13b 睡眠覚醒情報生成部
14 表示部
21 吸気部
22 排気部
23 ポンプ
31 抵抗(第一フィルタ)
32 抵抗(第二フィルタ)
100 第一のシステム
101 第二のシステム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4a】
3
【図4b】
4
【図5a】
5
【図5b】
6
【図6】
7
【図7】
8