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明細書 :蛍光蛋白質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4695073号 (P4695073)
登録日 平成23年3月4日(2011.3.4)
発行日 平成23年6月8日(2011.6.8)
発明の名称または考案の名称 蛍光蛋白質
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/435       (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C09K   9/02        (2006.01)
G03C   1/73        (2006.01)
G11B   7/244       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/435
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
C09K 9/02 B
G03C 1/73 503
G11B 7/24 516
請求項の数または発明の数 7
全頁数 17
出願番号 特願2006-513770 (P2006-513770)
出願日 平成17年5月20日(2005.5.20)
国際出願番号 PCT/JP2005/009720
国際公開番号 WO2005/113772
国際公開日 平成17年12月1日(2005.12.1)
優先権出願番号 2004150607
優先日 平成16年5月20日(2004.5.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年4月28日(2008.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】宮脇 敦史
【氏名】安藤 亮子
【氏名】水野 秀昭
【氏名】唐澤 智司
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】高堀 栄二
参考文献・文献 米国特許出願公開第2003/0157643(US,A1)
Mol.Biol.Evol.,Vol.20,No.7(2003)p.1125-1133
Cell Struct.Funct.,Vol.27,No.5(2002)p.343-347
Science,Vol.306,No.5700(2004.Nov.)p.1370-1373
Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.99,No.7(2002)p.4256-4261
調査した分野 CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)又は(b)に示す蛍光蛋白質。
(a)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質;
(b)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列において1から10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質。
【請求項2】
以下の(a)又は(b)に示す蛍光蛋白質をコードするDNA。
(a)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質
(b)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列において1から10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質。
【請求項3】
以下の(a)又は(b)に示すDNA。
(a)配列番号4又は8に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号4又は8に記載の塩基配列において、1から30個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつフォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列を有するDNA。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のDNAを有する組み換えベクター。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のDNA又は請求項に記載の組み換えベクターを有する形質転換体。
【請求項6】
請求項に記載の蛍光蛋白質からなるフォトクロミック材料。
【請求項7】
請求項に記載の蛍光蛋白質を含んでいて光照射により情報の記録及び読取が可能な記録層を有する光記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】

本発明は、蛍光の放出と消失を波長の異なる2つの光照射によって制御することが可能な新規な蛍光蛋白質に関する。より詳細には、本発明は、キッカサンゴ(Echinophylia sp.)由来の新規蛍光蛋白質、並びにこれに変異を導入することにより単量体化した新規な蛍光蛋白質及びその利用に関する。
【背景技術】

クラゲのエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)に由来する緑色蛍光蛋白質(GFP)は、生物系において多くの用途を有する。最近、ランダム突然変異誘発法および半合理的(semi-rational)突然変異誘発法に基づいて、色を変化させたり、折りたたみ特性を改善したり、輝度を高めたり、あるいはpH感受性を改変したといった様々なGFP変異体が作製されている。遺伝子組み換え技術により他の蛋白質をGFP等の蛍光蛋白質に融合させて、それらの発現および輸送のモニタリングを行うことが行われている。
最もよく使用されるGFP変異体の一つとして黄色蛍光蛋白質(YFP)が挙げられる。YFPは、クラゲ(Aequorea)GFP変異体の中でも最長波長の蛍光を示す。大部分のYFPのεおよびΦは、それぞれ60,000~100,000M-1cm-1および0.6~0.8であり(Tsien,R.Y.(1998).Ann.Rev.Biochem.67,509-544)、これらの値は、一般的な蛍光団(フルオレセインおよびローダミンなど)の値に匹敵する。従ってYFPの絶対的輝度の改善は、ほぼ限界に達しつつある。
GFP変異体の他の例として、シアン色蛍光蛋白質(CFP)があり、ECFP(enhanced cyan fluorescent protein)が知られている。また、イソギンチャク(Discoma sp.)からは赤色蛍光蛋白質(RFP)も単離されており、DasRedが知られている。このように蛍光蛋白質は、緑色、黄色、シアン色、赤色の4種が次々と開発されスペクトルの範囲は大幅に広がっている。
【図面の簡単な説明】

図1は、22Gの吸収スペクトル及び蛍光・励起スペクトルを示す。
図2は、22Gの蛍光強度のpH感受性を測定した結果を示す。
図3は、m22G3の吸収スペクトル及び蛍光・励起スペクトルを示す。
図4は、m22G3の蛍光強度のpH感受性を測定した結果を示す。
図5は、m22G3に吸収極大波長518nm付近の光を照射すると、吸収と蛍光が減弱し、代わりに380nm付近の吸収が現れることを示す図である。
図6は、m22G3に380nm付近の光を照射すると、380nmの吸収が消失して、518nmの吸収及び蛍光が完全に回復することを示す図である。
図7は、22Bの吸収スペクトルを示す。
図8は、22Bの蛍光・励起スペクトルを示す。
図9は、m3m4の吸収スペクトルを示す。
図10は、m3m4の蛍光・励起スペクトルを示す。
図11は、m3m4とm22G3(Dronpa)の蛍光特性の比較を示す。
【発明の開示】

オワンクラゲ由来の改変体である黄色蛍光蛋白質(YFP)には、488nmの光照射によって徐々に暗くなる傾向、かつその後、405nmの光照射によって僅かに蛍光が回復(せいぜい20%)する傾向が認められている。しかし、YFPのフォトクロミズム(photochromism)減少(即ち、蛍光の消失と回復)は不完全であるため、実用化には程遠い状況である。本発明は、上記した問題を解消することを解決すべき課題とするものであり、具体的には、蛍光のオンとオフを波長の異なる2つの光照射によって制御することが可能な新規な蛍光蛋白質を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、キッカサンゴ(Echinophylia sp.)由来の新規の蛍光蛋白質を用いて、上記したフォトクロミズム効果を完全に実現できる蛋白質を作製することに成功した。即ち、本発明の蛍光蛋白質においては、488nmと405nmの光を照射することによって蛍光強度を0%と100%の間でコントロールすることができる。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、以下の(a)又は(b)に示す蛍光蛋白質が提供される。
(a)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質;
(b)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有する蛋白質。
本発明の別の態様によれば、以下の(a)又は(b)に示す蛍光蛋白質をコードするDNAが提供される。
(a)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質
(b)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有する蛋白質。
本発明のさらに別の態様によれば、以下の(a)又は(b)に示すDNAが提供される。
(a)配列番号2又は6に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号2又は6に記載の塩基配列において、1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつ蛍光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列を有するDNA。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明のDNAを有する組み換えベクターが提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明のDNA又は組み換えベクターを有する形質転換体が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、以下の(a)又は(b)に示す蛍光蛋白質が提供される。
(a)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質;
(b)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質。
本発明のさらに別の態様によれば、以下の(a)又は(b)に示す蛍光蛋白質をコードするDNAが提供される。
(a)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質
(b)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質。
本発明のさらに別の態様によれば、以下の(a)又は(b)に示すDNAが提供される。
(a)配列番号4又は8に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号4又は8に記載の塩基配列において、1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつフォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列を有するDNA。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明のDNAを有する組み換えベクターが提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明のDNA又は組み換えベクターを有する形質転換体が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明の蛍光蛋白質からなるフォトクロミック材料が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明の蛍光蛋白質を含んでいて光照射により情報の記録及び読取が可能な記録層を有する光記録媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】

以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)本発明の蛍光蛋白質
本発明の第一の蛍光蛋白質は、以下の(a)又は(b)の何れかに示す蛋白質である。
(a)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質;
(b)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有する蛋白質。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質(22G)は、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)吸収極大波長が507nmであり、蛍光極大波長は518nmである;
(2)507nmにおけるモル吸光係数が、110,000である;
(3)量子収率が0.67である;及び
(4)蛍光特性のpH感受性がpKa=4.7である。
配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質(22B)の吸収極大波長は380nmであり、蛍光極大波長は467nmである。
本明細書中の実施例においては、本発明の第一の蛍光蛋白質のうち配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAは、キッカサンゴ(Echinophylia sp.)を出発材料としてクローニングされた。キッカサンゴ(Echinophylia sp.)は刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目ウミバラ科に属するサンゴの一種であり、固着性で被覆状または薄板状や葉状の群体を形成することが多い。なお、キッカサンゴ(Echinophylia sp.)以外の蛍光を発するサンゴから本発明の蛋白質を取得することができる場合もあり、そのような蛋白質も本発明の範囲内である。
本明細書中の実施例においては、配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードするDNAは、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを鋳型にして、MnClを加えた状態でPCRを行って無作為に変異を導入し、無作為変異導入によって得られたクローンから選択することによって取得されたものである。
本発明の第二の蛍光蛋白質は、以下の(a)又は(b)の何れかに示す蛋白質である。
(a)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質;
(b)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質。
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質(m22G3)は、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)吸収極大波長が503nmであり、蛍光極大波長は518nmである;
(2)503nmにおけるモル吸光係数が、570,000である;
(3)量子収率が0.62である;及び
(4)蛍光特性のpH感受性がpKa=5である。
(5)フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する。具体的には、吸収極大波長518nm付近の光の照射によって吸収と蛍光が減弱し、代わりに380nm付近の吸収が現れるが、380nm付近の光を照射すると、380nmの吸収が消失して、518nmの吸収及び蛍光が完全に回復する。
配列番号7に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質(m3m4)は、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)吸収極大波長が486nmであり、蛍光極大波長は513nmである;
(2)486nmにおけるモル吸光係数が、560,000である;
(3)量子収率が0.28である;及び
(4)フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する。
本明細書中の実施例においては、本発明の第二の蛍光蛋白質のうち配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードするDNAは、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを鋳型にして、MnClを加えた状態でPCRを行って無作為に変異を導入し、無作為変異導入によって得られたクローンのうち、単量体のサイズを有するものを選択することによって取得されたものである。また、配列番号7に記載のアミノ酸配列をコードするDNAは、配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを鋳型にしてMnClを加えた状態でPCRを行って無作為に変異を導入し、無作為変異導入によって得られたクローンから選択することによって取得されたものである。本発明の第二の蛍光蛋白質は、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有することを特徴とする。
本明細書で言う「1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
本明細書で言う「蛍光特性」とは、励起光の照射により蛍光を発することができる能力のことを言う。配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質の蛍光特性は、配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質の蛍光特性と同等のものでもよいし、異なるものでもよい。蛍光特性の指標としては、蛍光強度、励起波長、蛍光波長、pH感受性などが挙げられる。
本明細書で言う「フォトクロミズム効果を示す蛍光特性」とは、吸収極大波長付近の波長などのような所定の波長の光の照射によって吸収と蛍光が減弱又は消失し、別の波長域に吸収が現れること、更に、新たに現れた吸収波長の光を照射すると、上記で減弱又は消失した吸収及び蛍光が回復するという蛍光特性のことを言う。
本発明の蛍光蛋白質の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組み換え技術による作製した組み換え蛋白質でもよい。
組み換え蛋白質を作製する場合には、先ず当該蛋白質をコードするDNAを入手することが必要である。本明細書の配列表の配列番号1、3、5又は7に記載したアミノ酸配列並びに配列番号2、4、6又は8に記載した塩基配列の情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、それらを用いて、キッカサンゴ(Echinophylia sp.)から調製したcDNAライブラリーを鋳型にしてPCRを行うことにより、本発明の第一の蛍光蛋白質をコードするDNAを取得することができる。また、本発明の第一の蛍光蛋白質をコードするDNAに基づいてこれに所定の変異を導入することにより本発明の第二の蛍光蛋白質をコードするDNAを取得することができる。本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAの一部の断片を上記したPCRにより得た場合には、作製したDNA断片を順番に遺伝子組み換え技術により連結することにより、所望の蛍光蛋白質をコードするDNAを得ることができる。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の蛍光蛋白質を産生することができる。発現系での発現については本明細書中後記する。
(2)本発明のDNA
本発明によれば、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAが提供される。
本発明の第一の蛍光蛋白質をコードするDNAの具体例としては、以下の(a)又は(b)に示す蛋白質をコードするDNAが挙げられる。
(a)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質
(b)配列番号1又は5に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有する蛋白質。
本発明の第一の蛍光蛋白質をコードするDNAの更なる具体例としては、以下の(a)又は(b)に示すDNAもまた挙げられる。
(a)配列番号2又は6に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号2又は6に記載の塩基配列において、1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつ蛍光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列を有するDNA。
本発明の第二の蛍光蛋白質をコードするDNAの具体例としては、以下の(a)又は(b)に示す蛋白質をコードするDNAが挙げられる。
(a)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質
(b)配列番号3又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質。
本発明の第二の蛍光蛋白質をコードするDNAの更なる具体例としては、以下の(a)又は(b)に示すDNAもまた挙げられる。
(a)配列番号4又は8に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号4又は8に記載の塩基配列において、1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつフォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列を有するDNA。
本明細書で言う「1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から50個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、さらに好ましくは1から10個、特に好ましくは1から5個程度を意味する。
本発明のDNAは、例えばホスホアミダイト法などにより合成することができるし、特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって製造することもできる。本発明のDNA又はその断片の作製方法については、本明細書中上述した通りである。
また、所定の核酸配列に所望の変異を導入する方法は当業者に公知である。例えば、部位特異的変異誘発法、縮重オリゴヌクレオチドを用いるPCR、核酸を含む細胞の変異誘発剤又は放射線への露出等の公知の技術を適宜使用することによって、変異を有するDNAを構築することができる。このような公知の技術は、例えば、Molecular Cloning:A laboratory Mannual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,1989、並びにCurrent Protocols in Molecular Biology,Supplement1~38,John Wiley & Sons(1987-1997)に記載されている。
(3)本発明の組み換えベクター
本発明のDNAは適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。
好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明のDNAは、転写に必要な要素(例えば、プロモータ等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜することができる。
細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillusstearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha-amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ、またはファージ・ラムダのP若しくはPプロモータ、大腸菌のlac、trp若しくはtacプロモータなどが挙げられる。
哺乳動物細胞で作動可能なプロモータの例としては、SV40プロモータ、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモータ、またはアデノウイルス2主後期プロモータなどがある。昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、ポリヘドリンプロモータ、P10プロモータ、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性蛋白プロモータ、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモータ、またはバキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモータ等がある。酵母宿主細胞で作動可能なプロモータの例としては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、TPI1プロモータ、ADH2-4cプロモータなどが挙げられる。
糸状菌細胞で作動可能なプロモータの例としては、ADH3プロモータまたはtpiAプロモータなどがある。
また、本発明のDNAは必要に応じて、例えばヒト成長ホルモンターミネータまたは真菌宿主についてはTPI1ターミネータ若しくはADH3ターミネータのような適切なターミネータに機能的に結合されてもよい。本発明の組み換えベクターは更に、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)および翻訳エンハンサ配列(例えばアデノウイルスVA RNAをコードするもの)のような要素を有していてもよい。
本発明の組み換えベクターは更に、該ベクターが宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよく、その一例としてはSV40複製起点(宿主細胞が哺乳類細胞のとき)が挙げられる。
本発明の組み換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
本発明のDNA、プロモータ、および所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。
(4)本発明の形質転換体
本発明のDNA又は組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。
本発明のDNAまたは組み換えベクターを導入される宿主細胞は、本発明のDNA構築物を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。
細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌又は大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。
哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevislae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞である。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、蛋白質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology,6,47(1988)等に記載)。
バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W.H.Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等を挙げることができる。
上記の形質転換体は、導入されたDNA構築物の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、本発明の蛍光蛋白質を単離精製するには、通常の蛋白質の単離、精製法を用いればよい。
例えば、本発明の蛋白質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常の蛋白質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
(5)本発明の蛍光蛋白質の蛍光標識物質としての利用
本発明の蛍光蛋白質は、蛍光標識物質として利用することができる。即ち、本発明の蛍光蛋白質を被検アミノ酸配列との融合蛋白質として精製し、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入し、該融合蛋白質の分布を経時的に観察すれば、被検アミノ酸配列の細胞内におけるターゲッティング活性を検出することが可能である。
本発明の蛍光蛋白質を融合させる他の蛋白質(被検アミノ酸配列)の種類は特に限定されるものではないが、例えば、細胞内に局在する蛋白質、細胞内小器官に特異的な蛋白質、ターゲティングシグナル(例えば、核移行シグナル、ミトコンドリアプレ配列)等が好適である。なお、本発明の蛍光蛋白質は、マイクロインジェクション法などにより細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることも可能である。この場合には、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAが発現可能に挿入されたベクターが宿主細胞に導入される。
また、本発明の蛍光蛋白質は、レポーター蛋白質としてプロモータ活性の測定に用いることも可能である。即ち、被検プロモータの下流に、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAが配置されたベクターを構築し、これを宿主細胞に導入し、該細胞から発せられる本発明の蛍光蛋白質の蛍光を検出することにより、被検プロモータの活性を測定することが可能である。被検プロモータとしては、宿主細胞内で機能するものであれば、特に制限はない。
上記アミノ酸配列のターゲティング活性の検出やプロモータ活性の測定において用いられるベクターとしては、特に制限はないが、例えば、動物細胞用ベクターでは、「pNEO」(P.Southern,and P.Berg(1982)J.MOl.Appl.Genet.1:327)、「pCAGGS」(H.Niwa,K.Yamamura,and J.Miyazaki.Gene 108,193-200(1991))、「pRc/CMV」(インビドロゲン社製)、「pCDM8」(インビトロゲン社製)などが、酵母用ベクターでは、「pRS303」,「pRS304」,「pRS305」,「pRS306」,「pRS313」,「pRS314」,「pRS315」,[pRS316](R.S.Sikorski and P.Hieter(1989)Genetics122:19-27)、「pRS423」,「pRS424」,「pRS425」,「pRS426」(T.W.Christianson,R.S.Sikorski,M.Dante,J.H.Shero,and P.Hieter(1992)Gene110:119-122)などが好適に用いられる。
また、使用可能な細胞の種類も特に限定されず、各種の動物細胞、例えば、L細胞、BalbC-3T3細胞、NIH3T3細胞、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、HeLa細胞、NRK(normal rat kidney)細胞、「Saccharomyces cerevisiae」などの酵母細胞や大腸菌(E.coli)細胞などを使用することができる。ベクターの宿主細胞への導入は、例えば、リン酸カルシウム法やエレクトロポレーション法などの常法により行うことができる。
上記のようにして得た、本発明の蛍光蛋白質と他の蛋白質(蛋白質Xとする)とを融合させた融合蛍光蛋白質を細胞内で発現させ、発する蛍光をモニターすることにより、細胞内における蛋白質Xの局在や動態を分析することが可能になる。即ち、本発明の融合蛍光蛋白質をコードするDNAで形質転換またはトランスフェクトした細胞を蛍光顕微鏡で観察することにより細胞内における蛋白質Xの局在や動態を可視化して分析することができる。
例えば、蛋白質Xとして細胞内オルガネラに特異的な蛋白質を利用することにより、核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、分泌小胞、ペルオキソームなどの分布や動きを観察できる。
また、例えば、神経細胞の軸索、樹状突起などは発生途中の個体の中で著しく複雑な走向の変化を示すので、こういった部位を蛍光ラベルすることにより動的解析が可能になる。
本発明の蛍光蛋白質の蛍光は、生細胞のまま検出することが可能である。この検出は、例えば、蛍光顕微鏡(カールツァイス社 アキシオフォト フィルターセット 09)や画像解析装置(ATTO デジタルイメージアナライザー)などを用いて行うことが可能である。
顕微鏡の種類は目的に応じて適宜選択できる。経時変化を追跡するなど頻回の観察を必要とする場合には、通常の落射型蛍光顕微鏡が好ましい。細胞内の詳細な局在を追及したい場合など、解像度を重視する場合は、共焦点レーザー顕微鏡の方が好ましい。顕微鏡システムとしては、細胞の生理状態を保ち、コンタミネーションを防止する観点から、倒立型顕微鏡が好ましい。正立顕微鏡を使用する場合、高倍率レンズを用いる際には水浸レンズを用いることができる。
フィルターセットは蛍光蛋白質の蛍光波長に応じて適切なものを選択できる。例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質は、吸収極大波長が507nmであり、蛍光極大波長は518nmであることから、励起光500~510nm、蛍光510~530nm程度のフィルターを使用することができる。同様に、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質は、吸収極大波長が503nmであり、蛍光極大波長は518nmであることから、励起光500~510nm、蛍光510~530nm程度のフィルターを使用することができる。同様に、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質は、吸収極大波長が380nmであり、蛍光極大波長は467nmであることから、励起光370~390nm、蛍光460~480nm程度のフィルターを使用することができる。同様に、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質は、吸収極大波長が486nmであり、蛍光極大波長は513nmであることから、励起光480~490nm、蛍光500~520nm程度のフィルターを使用することができる。
また、蛍光顕微鏡を用いた生細胞での経時観察を行う場合には、短時間で撮影を行うべきなので、高感度冷却CCDカメラを使用する。冷却CCDカメラは、CCDを冷却することにより熱雑音を下げ、微弱な蛍光像を短時間露光で鮮明に撮影することができる。
(6)本発明の蛍光蛋白質のフォトクロミズム効果を利用した記録媒体等における利用
さらに、本発明の第二の蛍光蛋白質は、フォトクロミズム効果を示す蛍光特性(フォトクロミックな蛍光特性)を有することから、CD、DVD、ホログラフィー記録媒体、スマートカードなどの光記録媒体、広告板、蛍光板、TV、コンピュータモニターなどの表示素子、レンズ、バイオセンサー、バイオチップ、フォトクロミック繊維素材など多様な用途に適用することができる。
本発明の光記録媒体は、基板上に本発明によるフォトクロミズム効果を示す蛍光特性を有する蛍光蛋白質を含有する記録層を形成することによって製造することができる。書きこみ、再生のための光学系に水浸式のレンズを用いることによってNA(開口数)を大きくできる。これにより高解像度が期待できる。
光記録媒体の製造のために用いられる基板の材質は特に限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック、紙、アルミニウム等の金属(板状でも箔状でもよい)などが挙げられ、特にはプラスチックが好ましい。プラスチックの材料も特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルホン樹脂等が挙げられる。
本発明の蛍光蛋白質を、必要に応じバインダーとともに適当な溶媒に溶解し、ドクターブレード法、キャスト法、スピナー法、浸漬法等の手段により、上記基板上に膜厚1nm~100μm、好ましくは10nm~50μmの薄膜となるように塗布することにより、基板上に記録層を形成することができる。ここで用いるバインダーとしては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、溶媒としては、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチルアセテート等が適当である。
成膜された薄膜中の、本発明の蛍光蛋白質の含有量は特に限定されず、使用する蛍光蛋白質の吸光度や、発生する蛍光の強度等に応じて適宜決定することができる。記録層は基板の両面に設けてもよいし、片面だけに設けてもよい。
上記のようにして製造された本発明の光記録媒体への記録は、基体の両面又は片面に設けた記録層に収束した光を当てることにより行うことができる。光照射された部分は光エネルギーの吸収により、蛍光特性の変化が起こり、情報が記録される。記録された情報の再生は、光照射による蛍光の差を読みとることにより行うことができる。
本発明の蛍光蛋白質は、上記の通りフォトクロミズム分野に応用可能であり、例えば、国際公開WO98/47148(Photochromic fluorescent proteins and optical memory storage devices based on fluorescent proteins)及び国際公開WO02/96924(Kindling fluorescent proteins and methods for their use)などに記載の応用例が挙げられる。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】

実施例1:サンゴからの新規蛍光蛋白質遺伝子(22G)の単離
蛍光を放つキッカサンゴ(Echinophylia sp.)から、蛍光蛋白質遺伝子を以下の手順で単離した。
(1)total RNAの抽出
Acid Guanidium-Phenol-Chloroform法でtotal RNAを抽出した。凍結したキッカサンゴをMulti-Beads Shocker(安井器機)を用いて変性溶液中で砕き、phenol/chloroformを加え、遠心してRNAを蛋白質・DNA複合体から分離した。RNAを含む水層をisopropanolに加え、遠心すると、沈殿としてtotal RNAが得られた。
(2)RNAの精製
OligotexTM-dT30(Roche社製)を用いて、total RNAからmRNAを分離した。total RNAにOligotexTM-dT30〈super〉を加え、加熱してRNAの2次構造を壊してから、37℃でRNAとOligotex-dT30を結合させる。洗浄後、加熱、遠心すると、mRNAが溶出された上清が得られる。Oligotex-dT30を取り除いた上、ethanolとNaClでmRNAを沈殿させ、水に溶した。
(3)cDNAの合成
TimeSaverTMとDirectional Cloning ToolboxTM(共にAmarsham pharmacia社製)を用いてcDNAを合成した。mRNAを加熱して2次構造を壊した後、First-Strand Reaction MixにDTTとNot I-dT primer(5’d(AAC TGG AAG AAT TCG CGG CCG CAG GAA T18)p3’(配列番号9))と共に加え、first-strandを合成する。更にそれをSecond-Strand Reaction Mixに加え、second-strandを合成し、付属のスパンカラムで精製する。精製したdouble-stranded cDNAの5’末端にEco RI adaptorを付け、Not Iで3’側のみカットする。もう一度スパンカラムで精製して、cDNAを取得した。
(4)Expression Cloning
pRSET(Invitrogen社製)にEco RI、Not Iサイトを設け、合成したcDNAを挿入、大腸菌のJM109 DE3株に導入してライブラリー化した。この大腸菌株では蛋白質が合成されるため、コロニーが光の照射によって蛍光を発するかどうかで、蛍光蛋白質のクローンを選別できる。その結果、約8万個から1個のポジティブコロニーを得、クローン22Gと命名し、塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。22Gのアミノ酸配列及び塩基配列を配列番号1及び2に示す。
大腸菌を用いて蛍光蛋白質22GにHis-Tagを付加した蛋白質を常法により発現させ、Ni-Agaroseを用いて精製した。
実施例2:蛍光蛋白質(22G)の蛍光特性の解析
(1)吸収スペクトル及び蛍光・励起スペクトル
吸収スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用いて測定した。蛍光・励起スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用い、480nmで励起した時の蛍光スペクトルと540nmの蛍光による励起スペクトルを測定した。蛍光蛋白質22Gの吸収スペクトルを図1の左側に示し、蛍光・励起スペクトルを図1の右側に示す。
(2)pH感受性の特性
以下のバッファーを用いて、480nmで励起した時の518nmの蛍光強度を測定した。結果を図2に示す。
pH4,4.5,5,5.5:50mM AcONa-AcOH
pH6.5:50mM MES-NaOH
pH7:50mM MOPS-KOH
pH8,8.5:50mM HEPES-NaOH
pH9,9.5,10,10.5:50mM glycin-NaOH
pH11:50mM NaHPO-NaOH
(3)22Gの蛍光特性のまとめ
以上の結果から求められた22Gの性質を表1に示す。
【表1】
JP0004695073B2_000002t.gif
実施例3:蛍光蛋白質(22G)の単量体化
実施例1で取得した蛍光蛋白質(22G)に以下の方法でランダム変異誘発により変異を導入し、単量体化した。
クローニングした22GのDNAを鋳型に、MnClを加えた状態でPCRをして無作為に変異を導入した。DNA polymeraseはTAKARA Taq(Takara社製)を用い、primerにはforwardとして5’側にBamHIサイトを加えたもの(AAG CTC CCG GAT CCG ATG AGT GTG ATT AAA CCA GAC)(配列番号10)と、reverseとして3’側にEcoRIサイトを加えたもの(ATC GTT GAA TTC TTA CTT GGC CTG CCT CGG CAG)(配列番号11)を用いた。増幅されたDNAはBamHIとEcoRIでカットしてpRSETに挿入、JM109 DE3株に導入してLAプレートで培養した。Random Mutagenesisによって得られたクローンのうち、pseudo-native pageで単量体のものと同じくらいのサイズになったものに関して、超遠心で分子量を確認した。確かに単量体化されていたクローンの塩基配列をDNAシークエンサーにより決定し、m22G3と命名した。単量体クローン(m22G3)のアミノ酸配列及び塩基配列を配列番号3及び4に示す。
大腸菌を用いて蛍光蛋白質m22G3にHis-Tagを付加した蛋白質を常法により発現させ、Ni-Agaroseを用いて精製した。
実施例4:変異体m22G3の蛍光特性の解析
(1)吸収スペクトル及び蛍光・励起スペクトル
吸収スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用いた。蛍光・励起スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用い、480nmで励起した時の蛍光スペクトルと540nmの蛍光による励起スペクトルを測定した。蛍光蛋白質m22G3の吸収スペクトルを図3の左側に示し、蛍光・励起スペクトルを図3の右側に示す。
(2)pH感受性の特性
以下のバッファーを用いて、480nmで励起した時の518.5nmの蛍光強度を測定した。結果を図4に示す。
pH4,4.5,5,5.5:50mM AcONa-AcOH
pH6.5:50mM MES-NaOH
pH7:50mM MOPS-KOH
pH8,8.5:50mM HEPES-NaOH
pH9,9.5,10,10.5:50mM glycin-NaOH
pH11:50mM NaHPO-NaOH
(3)m22G3の蛍光特性のまとめ
以上の結果から求められたm22G3の性質を表2に示す。
【表2】
JP0004695073B2_000003t.gif
(3)m22G3のフォトクロミズム効果
さらに、この変異体(m22G3)の特徴として、フォトクロミズムを起こすことが挙げられる。まず、吸収極大波長518nm付近の光の照射によって吸収と蛍光が減弱し、代わりに380nm付近の吸収が現れる(図5)。しかし、380nm付近の光を照射すると、380nmの吸収が消失して、518nmの吸収及び蛍光が完全に回復する(図6)。つまり、波長の異なる2つの光によって、明状態と暗状態との間を行き来できるのがこの変異体m22G3の大きな特徴である。
実施例5:蛍光蛋白(22G)の変異体の作製
実施例1で取得した蛍光蛋白22Gに以下の方法でさらに変異を導入し、性質の異なるものを得た。
<方法>Random Mutagenesis
22GのDNAを鋳型に、MnClを加えた状態でPCRをして無作為に変異を導入した。
DNA polymeraseはTAKARA Taq(Takara社製)を用い、プライマーにはforwardとして5’側にBamHIサイトを加えたものと、reverseとして3’側にEcoRIサイトを加えたものを用いた。増幅されたDNAはBamHIとEcoRIでカットしてpRSETに挿入、JM109 DE3株に導入してLAプレートで培養した。
Random Mutagenesisで得られたクローンのうち、22Gと大きく性質の異なるものを取り出し、クローンの塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。このクローンを22Bと命名した。22Bのアミノ酸配列及び塩基配列を配列番号5及び6に示す。
大腸菌を用いて蛍光蛋白質22BにHis-Tagを付加した蛋白質を常法により発現させ、Ni-Agaroseを用いて精製した。
実施例6:変異体22Bの蛍光特性の解析
(1)吸収スペクトル及び蛍光・励起スペクトル
吸収スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用いた。蛍光・励起スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用い、380nmで励起した時の蛍光スペクトルと470nmの蛍光による励起スペクトルを測定した。蛍光蛋白質22Bの吸収スペクトルを図7に示し、蛍光・励起スペクトルを図8に示す。吸収極大は380nmであり、蛍光極大は467nmである。
実施例7:蛍光蛋白質m22G3の変異体の作製
実施例3で取得した蛍光蛋白質m22G3(蛍光蛋白22Gの変異体)(Dronpaとも称する)に以下の方法でさらに変異を導入し、性質の異なるものを得た。
<方法>Random Mutagenesis
m22G3(Dronpa)のDNAを鋳型に、MnClを加えた状態でPCRをして無作為に変異を導入した。
DNA polymeraseはTAKARA Taq(Takara社製)を用い、primerにはforwardとして5’側にBamHIサイトを加えたものと、reverseとして3’側にEcoRIサイトを加えたものを用いた。増幅されたDNAはBamHIとEcoRIでカットしてpRSETに挿入、JM109 DE3株に導入してLAプレートで培養した。
Random Mutagenesisで得られたクローンのうち、m22G3(Dronpa)と大きく性質の異なるものを取り出し、クローンの塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。このクローンをm3m4と命名した。m3m4のアミノ酸配列及び塩基配列を配列番号7及び8に示す。
大腸菌を用いて蛍光蛋白質m3m4にHis-Tagを付加した蛋白質を常法により発現させ、Ni-Agaroseを用いて精製した。
実施例8:変異体m3m4の蛍光特性の解析
(1)吸収スペクトル及び蛍光・励起スペクトル
吸収スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用いた(図9、黒)。480nmの強い光を3分間当てると、486nmのピークが低くなり390nmに吸収が現れる(図9、灰色)。
蛍光・励起スペクトルは50mM HEPES(pH7.5)溶液を用い、470nmで励起した時の蛍光スペクトルと530nmの蛍光による励起スペクトルを測定した(図10)。
m3m4の性質を表3に示す。
【表3】
JP0004695073B2_000004t.gif
(2)m22G3(Dronpa)とm3m4の比較
m3m4は、m22G3(Dronpa)と同じ強度の480nmの強い光を当てると約5倍の速さで暗くなり、暗くなったものに同じ強度の400nmの光を当てるとほぼ同じ速さで明るくなる(図11の左図)。
また、480nmの強い光で暗くしたm3m4とm22G3(Dronpa)を約10分間室温で放置すると、m22G3(Dronpa)はほとんど変化がないが、m3m4は8割程度蛍光が回復する(図11の右図)。
【産業上の利用可能性】

本発明の蛍光蛋白質は、光の制御により蛍光を獲得又は消失することができることから、情報記録又は画像表示の技術分野におけるフォトニクスデバイスのための材料として有用である。本発明の蛍光蛋白質は、例えば、書き換え可能な光メモリー素子として実用化することができる。さらに、本発明の蛍光蛋白質またはそれをコードする遺伝子は、複写防止用印刷材料、光照射によりカラー画像情報の書き込みと消去の繰り返しが可能な可逆画像表示用媒体、ホログラム材料、特定波長用の遮光材料、又は光スイッチング素子用材料などとして利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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