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明細書 :研削砥石

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4264869号 (P4264869)
公開番号 特開2003-220561 (P2003-220561A)
登録日 平成21年2月27日(2009.2.27)
発行日 平成21年5月20日(2009.5.20)
公開日 平成15年8月5日(2003.8.5)
発明の名称または考案の名称 研削砥石
国際特許分類 B24D   3/00        (2006.01)
B24D   3/32        (2006.01)
FI B24D 3/00 330A
B24D 3/00 340
B24D 3/32
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2002-012639 (P2002-012639)
出願日 平成14年1月22日(2002.1.22)
審査請求日 平成17年1月7日(2005.1.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391016082
【氏名又は名称】山口県
発明者または考案者 【氏名】磯部 佳成
個別代理人の代理人 【識別番号】100111132、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 浩
審査官 【審査官】栗田 雅弘
参考文献・文献 特開2002-331462(JP,A)
特開2002-331461(JP,A)
特開2000-301459(JP,A)
特開平06-015572(JP,A)
特開2001-105329(JP,A)
特開平06-170736(JP,A)
調査した分野 B24D 3/00
B24D 3/02
B24D 3/32
特許請求の範囲 【請求項1】
乾式あるいは湿式加工に用いられる研削砥石であって、砥粒と空孔と結合剤とを含有する砥塊原料成形し焼成又はプレス加工して固めた砥塊を形成するとともに、この砥塊の周囲に空孔あるいは隙間を形成しつつ連続空孔として内部流路を形成させて、焼成させることで複数の前記砥塊を結合させ、前記内部流路を介して潤滑材又は冷却溶媒を供給可能に構成させたことを特徴とする研削砥石。
【請求項2】
前記砥塊の形状は、球あるいは多面体であることを特徴とする請求項1記載の研削砥石。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式あるいは乾式研削に使用される砥石に係わり、特に目詰まり防止や冷却能力に優れた効果を発揮する研削砥石とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、金属製品などにおいては加工、組立途中において表面仕上げがなされることが多く、いわゆるバリ取りなどに砥石による研削が行われている。この砥石は通常回転装置に設置されており、高速で砥石を回転させて被加工物表面を研削している。
【0003】
しかしながら、高速で回転する砥石は発熱するため被加工面が焼け、いわゆる研削焼けを起こしたり、さらには割れなどの損傷を起こすことも多い。従って、従来から油剤や専用の水溶液などの潤滑材や冷却溶媒を用いて潤滑効果や冷却効果を向上させながら研削加工を実施している。
【0004】
このように油剤や専用の水溶液を用いる研削方法を湿式研削方法と呼び、一方これらのような液体を用いることなく通常の大気中でそのまま研削する方法を乾式研削方法と呼んでいる。
【0005】
乾式研削方法においてもいくつか発明が開示されている。例えば、本願出願人による特許出願に係る特開平11-216636号公報(以下、イ号公報という。)には、「雰囲気ガス濃度を制御した乾式研削・切削加工法及びその装置」が開示されている。このイ号公報には、被加工物表面の酸化を防止するために雰囲気ガスとして、窒素ガス、ヘリウムガス、あるいはアルゴンガスなどの不活性ガスと空気や酸素ガスの混合ガスを用い、この混合ガス中の酸素ガスの濃度を制御して被加工部へ供給する技術が開示されている。
【0006】
本技術は酸素ガス濃度を制御することによって、加工熱の発生量と酸化生成物の固体潤滑作用を調和させながら乾式加工を行うものである。
さらに、特開平11-156725公報(以下、ロ号公報という。)には、「レジノイド研削砥石」が開示されている。この研削砥石は、砥粒と空孔の他に有機質中空体を混合して結合剤で固めたものである。
【0007】
以下、図3を参照しながらロ号公報に開示された研削砥石の従来例について説明する。
図3は、従来の研削砥石の砥石構造を示す概念図である。従来の研削砥石の砥石構造7は、レジノイドボンド(樹脂質結合剤)を結合剤10として使用し、砥粒8、空孔9に加えて有機質中空体11を備えるものである。レジノイドは、研削作業中に砥粒にかかる負荷を軽減して研削抵抗を減少させ、もって研削焼けを防止するために採用されたものであり、低い弾性率を有することを特徴としている。従来例においては、レジノイドを結合剤10として採用するばかりでなく、研削面品位を向上させるための被削材として、有機質中空体11を充填したものである。この有機質中空体11は、アクリル系樹脂及び塩化ビニリデン系樹脂のうちのいずれか1種または2種以上の混合体から成るもので、これらの有機物によって、殻とその内部に空隙を形成するものである。
【0008】
このように構成された砥石構造7においては、砥粒8と充填材たる有機質中空体11を結合剤10に分散して成り、研削面に結合剤10が突出してきても研削を妨げることなく、適度な後退性(被加工材と接して研削を行う砥粒の先端部分よりも結合剤10の先端面が被加工材から後退して結合剤10が被加工材に接触し難い性質)をも有する。
【0009】
従って、研削抵抗の上昇も少なく、切れ味に優れ、研削焼けが発生することなく研削性能が向上するというものである。
【0010】
次に、このような研削砥石の従来の製造方法は、砥石の結合剤によって異なりいくつか種類がある。例えば、中島利勝、鳴瀧則彦による共著「機械加工学」(昭和59年7月30日・初版第2刷 株式会社コロナ社発行)第127頁から第128頁に記載されているように、結合剤として最も一般的なビトリファイド結合剤を用いる場合には粘土、長石、ケイ砂などの窯業材料を1300℃以上の高温で焼成し磁器質化させて砥粒を保持し結合させる。
【0011】
また、シリケート結合剤の場合には、ケイ酸ソーダを主成分として、これと砥粒をよく混合して成形した後に、約800℃で焼成することによって砥石を製造する。
【0012】
一方、オキシクロライド結合剤の場合には、酸化マグネシウムと塩化マグネシウムとを複合し、一種のセメントとして砥粒を結合するものであり、焼成工程はない。また、レジノイド結合剤の場合においても、樹脂粉末と砥粒を混合して約180℃の低温でプレスして成形されるため、焼成工程はない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来の技術においては、乾式研削方法では、研削に伴う発熱が大きいことや研削砥石に目詰まりが生じてしまうことなどの問題点があった。
【0014】
一方、湿式研削方法では潤滑効果や冷却効果を高めるために前述のとおり油剤や専用の水溶液などの冷却溶媒を用いるため、研削加工中に被加工物の表面酸化が避けられない。また、研削加工中冷却溶媒は、高速回転する研削砥石の前後または左右から加工点に向かって供給されるため、多くの冷却溶媒は、直接加工点に到達することなく無駄に消費されたり、作業環境を汚したりしていた。さらに、研削液の液圧の作用だけで被加工物が損傷する場合もあった。また、研削液がミストとして飛散するため作業環境の汚染にもなり好ましくなかったなどの課題を有していた。
【0015】
また、イ号公報に記載される乾式研削方法に関する研削砥石の技術においては、雰囲気ガスに不活性ガスを必要とし、しかも空気や酸素ガスと混合し、さらに酸素ガスの量を制御しなければならない。従って、研削装置も複雑となり、高価であるばかりか、装置を扱う作業員の負担も大きくなるという課題を有していた。
【0016】
さらに、ロ号公報に記載される技術においては、有機質中空体を結合剤に充填する必要があり、製造方法が複雑となっていた。また、有機質中空体の充填も限度があり、大きな空気の層を砥塊の中に取り込むことにも限界があるという課題も有していた。
【0017】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、砥塊間に空孔あるいは隙間を形成させることによって、乾式研削方法においては、砥塊内に含まれる砥粒と被加工物の研削面との間に発生する熱を低減し、目詰まりを防止するとともに、不活性ガスなどを雰囲気ガスあるいは冷却ガスとして供給できる流路を構成可能であり、また、湿式研削方法においては、砥塊間に形成された空孔あるいは隙間によって流路を構成して加工点に潤滑材や冷却溶媒を供給できる研削砥石とその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である研削砥石は、乾式あるいは湿式加工に用いられる研削砥石において、砥粒と空孔と結合剤とを含有する砥塊原料成形し焼成又はプレス加工して固めた砥塊を形成するとともに、この砥塊の周囲に空孔あるいは隙間を形成しつつ連続空孔として内部流路を形成させて、焼成させることで複数の砥塊を結合させ、内部流路を介して潤滑材又は冷却溶媒を供給可能に構成させたものである。
【0019】
上記構成の研削砥石においては、砥粒と空孔と結合剤を含有する砥塊の周囲に形成された空孔あるいは隙間を所望の容量に調整可能である。
このような研削砥石を乾式研削方法に用いる場合には、砥塊間に形成された空孔あるいは隙間、いわば連続空孔を砥石内部の流路として、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを供給することによって、加工点の効率的な冷却という作用を有する。
【0020】
一方、湿式研削方法に用いる場合には、乾式研削方法に使用する場合と同様に砥塊間に形成された空孔あるいは隙間を砥石内部の流路として、潤滑材や冷却溶媒、あるいはミストを供給すれば、加工点への効率的な冷却という作用を有する。
また、請求項2に記載の発明である研削砥石は、請求項1に記載の研削砥石において、砥塊の形状を球あるいは多面体とするものである。
上記構成の研削砥石においても請求項1と同様の作用を有する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る研削砥石の実施の形態を図1に基づき説明する。(請求項1および請求項2に対応)
図1は本実施の形態に係る研削砥石の砥石構造の概念図である。図1において、本実施の形態における砥石構造1は、砥粒2を結合剤4で空孔3を形成させながら固めた砥塊6をあたかもクラスターのように集成して成るものである。このように構成された砥石構造1においては、砥塊間空孔5が形成されている。砥塊6に含まれる空孔3が閉空間を形成する一方、砥塊間空孔5は、連続的に砥塊間を縫うように形成されるものである。
【0024】
図1において砥塊6の形状は円状に模式化されているが、砥塊6はもちろん3次元的な球状に形成されるものである。但し、本実施の形態においては球状として表現しているものの、砥塊6の形状は多面体でも構わないし、その他砥石の用途や製造方法によって様々な形状に製造されることについては言うまでもない。
なお、本願明細書中において、砥塊6とは上述のとおり、砥粒2を結合剤4で空孔3を形成させながら固めた研削砥石の構成要素をいう。
【0025】
この砥塊6の形状は、砥塊間空孔5の形状あるいは空孔の容量、さらには空孔内を通過する潤滑材や冷却溶媒、あるいはミストなどの流体の抵抗にも影響するため、砥石の設計時に慎重に考慮されるべきである。
【0026】
このように構成された研削砥石においては、砥塊間空孔5を液体、気体あるいはミストの流路として利用することができる。砥塊間空孔5を流路として利用すれば、流路を大きくとれるため、流路の圧力損失が大きく減少して流体がスムースに供給できる。
【0027】
例えば、乾式研削方法に用いる場合では、円盤状に成形され高速で回転する研削砥石に対して、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを回転する研削砥石の回転軸に近い箇所から供給するように構成すれば、不活性ガスが砥塊間空孔5を通過しながら回転端部面から放出される。従って、加工点あるいは加工面に効率よく不活性ガスを供給することができ、加工熱の除去能力を高めることができる。しかも、酸化を防止するための雰囲気ガスの供給も効果的に行うこともでき、高価な不活性ガスの使用量が減るため経済効率も向上させることができる。
【0028】
さらに、連続的で大きな砥塊間空孔5が形成されれば、研削砥石を構成する空孔部分の割合が高くなることから、加工点に接触する砥粒の割合を下げることができ、摩擦によって発生する熱を抑制するとともに目詰まりを防止することも可能である。
【0029】
一方、湿式研削方法に用いる場合では、円盤状に成形され高速で回転する研削砥石に対して、砥塊間空孔5を砥石内部の流路として潤滑材、冷却溶媒またはミストを回転する円盤状の研削砥石の中央部側から染み込ませるように供給すれば、遠心力によって周辺側に浸透し、最終的に加工点あるいは加工面と接触する回転端部面で放出させることができる。
【0030】
従って、加工点に効率よく潤滑材や冷却溶媒を供給することができ、加工熱の除去能力を高めることができる。しかも、潤滑材、冷却溶媒あるいはミストの使用量が減るため、経済効率も向上するとともに、作業環境の汚染、悪化も回避することができる。
【0031】
次に、本発明に係る研削砥石の製造方法の実施の形態について図2を参照しながら説明する。
図2は、本実施の形態に係る研削砥石の製造方法の工程を示す概念図である。
図2において、ステップS-1は、砥塊原料の混合工程を示す。このステップS-1では、砥粒と結合剤を混合して砥塊原料を製造する。その際、砥粒の種類や結合剤の種類、さらにこれらの配合割合の変化させることによって、砥塊に含まれる空孔の割合を調整することができる。
【0032】
次にステップS-2は、砥塊原料の第一の焼成工程を示す。このステップS-2では、ステップS-1において成形された砥塊原料を焼成することによって砥塊を製造する。本実施の形態においては、焼成工程を含む研削砥石の製造工程について説明しているが、従来の技術の欄でも述べたとおり、焼成工程を含まず、プレス成形の工程などによって砥塊を製造する場合もある。
このステップS-1とステップS-2が請求項3に記載された第一の工程に相当する。
【0033】
ステップS-3は、焼成された砥塊の集成工程を示す。このステップS-3においては、ステップS-2で焼成して成形した砥塊を集めて成形する。このステップS-3においては、砥塊をいわば3次元的に集めることによって砥塊間に隙間あるいは空孔を形成させることができる。
【0034】
最後にステップS-4は砥塊の第二の焼成工程を示す。このステップS-4においては、ステップS-3において集めて成形された砥塊を更に焼成して仕上げる。このようにして研削砥石が製造される。なお、このステップS-4においても焼成工程が含まれているが、ステップS-2における説明と同様に砥石の製造工程に焼成工程を含まない場合もあるため、焼成工程に代えてプレス工程などの工程が含まれる場合がある。
このステップS-3とステップS-4が請求項3に記載の第二の工程に相当する。
【0035】
このように構成された研削砥石の製造工程においては、研削砥石を製造する際に第一の焼成工程において砥塊を製造し、この砥塊を集成した後に、さらに第二の焼成工程を施すことによって、砥塊間に連続的に形成される大きな空孔を設けることができる。
この連続的な大きな空孔を研削砥石内に備えることが可能になることから、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス、潤滑材や冷却溶媒などの油水剤あるいはミストを研削砥石内に浸透させることが容易となり、被加工物の加工点へのこれらの流体を供給することが容易となる。
【0036】
連続的な大きな空孔は、研削砥石の中でこれらの流体の流路となり、例えば、円盤状に形成されて高速回転しながら研削する砥石に対して、その回転軸近傍の砥石中央部から流体を供給すれば、回転の遠心力によって、周辺部へ浸透してゆき、最終的には回転端部面から流体を放出することができる。回転部端面からの流体の供給は、加工点へ直接潤滑材、冷却溶媒やミストを供給することになるため、これらを節約することができると同時に、作業環境を汚すことも少ない。
【0037】
さらに、研削砥石を構成する空孔部分の割合が高くなることから、加工点に接触する砥粒の割合を下げることができ、研削摩擦によって発生する熱を抑制したり目詰まりを防止したりすることも可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の研削砥石においては、研削砥石を構成する砥塊間に形成された空孔あるいは隙間などの連続空孔を研削砥石内部の流路として、不活性ガス、潤滑材、冷却溶媒、ミストを供給することが可能となり、被加工物の加工点の効率的な冷却を可能する。また、これによって不活性ガス、潤滑材や冷却溶媒あるいはミストの使用量が減るため、経済効率も向上するとともに、作業環境の悪化も回避することができる。
【0039】
さらに、研削砥石を構成する空孔部分の割合が高くなることから、加工点に接触する砥粒の割合を下げることができるため、研削摩擦によって発生する熱を抑制するとともに目詰まりを防止することも可能である。
【0040】
一方、本発明の研削砥石の製造方法においては、一旦砥塊を製造し、さらにその砥塊を集成して砥石を製造するため、砥塊間に連続的に大きな空孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る研削砥石の砥石構造の概念図である。
【図2】本実施の形態に係る研削砥石の製造方法の工程を示す概念図である。
【図3】研削砥石の従来例を示す概念図である。
【符号の説明】
1…砥石構造 2…砥粒 3…空孔 4…結合剤 5…砥塊間空孔 6…砥塊
7…砥石構造 8…砥粒 9…空孔 10…結合剤 11…有機質中空体
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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