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明細書 :多孔体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-094246 (P2019-094246A)
公開日 令和元年6月20日(2019.6.20)
発明の名称または考案の名称 多孔体
国際特許分類 C04B  38/00        (2006.01)
FI C04B 38/00 303Z
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-227268 (P2017-227268)
出願日 平成29年11月27日(2017.11.27)
発明者または考案者 【氏名】磯部 佳成
出願人 【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
個別代理人の代理人 【識別番号】100111132、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 浩
審査請求 未請求
テーマコード 4G019
Fターム 4G019FA11
4G019FA13
要約 【課題】機械的強度を低下させることなく高い透過率を発揮可能な多孔体を提供する。
【解決手段】複数種類の異なる直径の気孔を含有する多孔体であって、(a)気孔率が55~70[%]であり、(b)気孔の最大径と最小径の比率である気孔径比が5:1~1.25:1であり、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、気孔率に対応する多孔体の透過率をK、気孔率に対応する従来の砥石の透過率をKとするとき、K<K≦4Kである。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
複数種類の異なる直径の気孔を含有する多孔体であって、(a)気孔率が55~70[%]であり、(b)前記気孔の最大径と最小径の比率である気孔径比が6:1~1.25:1であり、
前記構成(a)と前記構成(b)を組み合わせた複数の場合において、
前記気孔率に対応する前記多孔体の透過率をK、前記気孔率に対応する従来の砥石の透過率をKとするとき、K<K≦4Kであることを特徴とする多孔体。
【請求項2】
前記構成(a)と前記構成(b)を組み合わせた複数の場合において、
前記気孔率の減少に対し、前記多孔体の圧縮応力はそれぞれ増大し、前記透過率Kはそれぞれ一定値となることを特徴とする請求項1に記載の多孔体。
【請求項3】
前記構成(a)と前記構成(b)を組み合わせた複数の場合において、
前記透過率Kは、Darcyの式に従って算出され、前記多孔体を透過する空気の単位時間当たりの流量が1/6[L/s]の場合に、1×10-9[m]以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔体。
【請求項4】
前記気孔は、その外形が球状及び/又は柱状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の多孔体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、気孔を含有する多孔体に係り、特に、機械的強度を低下させることなく、従来の砥石の透過率よりも十分に高い透過率を発揮可能な多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械加工の研削・研磨加工においては、多刃工具である砥石を用いるため、多量の加工熱が発生する。この加工熱は、加工品位、加工精度に大きく悪影響を及ぼすことから、油水からなる加工クーラントを砥石に大量に潤滑させ、これを冷却することにより、加工熱の発生量を低減してきた。
さらに、環境負荷軽減や炭酸ガス排出量抑制、コストダウンを図ることを目的として、少量の加工クーラントを加工熱の発生する加工点へ確実かつ効率的に供給可能な加工法が提案されている。このような加工法として、例えば、本願出願人によって出願された「砥石とその製造方法」に関する発明が開示されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の砥石は、長軸方向と短軸方向を形成してなる気孔剤が焼結された気孔と、砥粒と、結合剤とから構成される円盤状の砥石であって、気孔剤はその長軸方向と円盤状の砥石の回転法線方向が一致するように配置されて焼結されることを特徴とする。
上記構成の砥石によれば、焼結によって形成される気孔は、砥石の回転法線方向に長く形成されることになる。そのため、砥石内部から冷却材や潤滑剤を供給する際には、円盤状の砥石中央部から周辺部に向かって冷却材や潤滑剤の浸透が促進され、同じ気孔率であってもその気孔の長軸方向が回転法線方向に一致していない場合に比較すると、より高い冷却能力や潤滑能力を発揮することができる。したがって、特許文献1に記載の砥石によれば、加工クーラントの使用量を減少でき、上記の環境負荷軽減等の課題を解決可能である。
【0004】
一方、砥石内の加工クーラントの通過し易さの指標として、「透過率」がある。この透過率は、一般的に砥石の気孔率が大になるほど大きな値となる傾向にある。しかし、気孔率が大になるほど砥石内に占める空間の割合が増加してくることから、一方で砥石の機械的強度が低下するという不利益がある。すなわち、透過率を一定以上に維持又は向上させるという要請と、気孔率を小さくするという要請を同時に実現することは困難であった。
【0005】
上記課題を解決する技術として、特許文献2に「多孔質体、ハニカムフィルタ、多孔質体の製造方法、及びハニカムフィルタの製造方法」という名称で、研削・研磨加工用ではないが、排ガスを浄化する目的の多孔質体等に関する発明が開示されている。
以下、特許文献2に開示された多孔質体について説明する。特許文献2に開示された多孔質体は、気孔率Pが20%~60%、透過率kが1μm以上、かつk≧0.2823P-10.404であることを特徴とする。
このような特徴を有する多孔質体によれば、透過率が十分高くかつ気孔率が十分小さい。そのため、単位厚みあたりの圧力損失を減少させるとともに、多孔質体の熱容量が高くなり多孔質体の均熱性が高くなるので、排ガス浄化という目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第4459687号公報
【特許文献2】特開2015-189666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、研削・研磨加工をする際、砥石を通常2000rpm程度の高い回転数で回転させたり、被加工物に断続的に接触させたりすることから、砥石が破壊され易い。よって、研削・研磨加工用の砥石は、加工クーラントの通過容易性に加え、一定以上の機械的強度を有することが必要である。この点について、特許文献1に開示された発明においては、高い冷却能力等を発揮し得るものの、透過率が気孔率と正比例する傾向にあることから、気孔率の増大につれて機械的強度が低下しているおそれがある。
また、特許文献2に開示された発明においても、透過率が気孔率と比例する傾向にあることから、特許文献1に開示された発明と同様に、機械的強度が低下しているおそれがある。そのため、この発明を研削・研磨加工用の砥石として応用してもメリットを得られないものと考えられる。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、機械的強度を低下させることなく、従来の砥石の透過率よりも十分に高い透過率を維持することで、破壊を防止可能であるとともに高い冷却能力や潤滑能力等を発揮することのできる多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明である多孔体は、複数種類の異なる直径の気孔を含有する多孔体であって、(a)気孔率が55~70[%]であり、(b)気孔の最大径と最小径の比率である気孔径比が6:1~1.25:1であり、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、気孔率に対応する多孔体の透過率をK、気孔率に対応する従来の砥石の透過率をKとするとき、K<K≦4Kであることを特徴とする。
このような構成の第1の発明においては、(a)の気孔率と、(b)の気孔径比が組み合わされて、複数種類の多様な構造の多孔体が形成される。各構造のいずれの多孔体においても、気孔率の増減に対し、K<K≦4Kとなる。なお、K及びKは、それぞれ気孔率の関数である。
なお、多孔体は、骨材と、結合材と、複数種類の異なる直径の気孔材を混錬して成型した後、焼成することによって形成される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、気孔率の減少に対し、多孔体の圧縮応力はそれぞれ増大し、透過率Kはそれぞれ一定値となることを特徴とする。
このような構成の第2の発明においては、気孔率を減少させた場合であっても圧縮応力が増大するので、機械的強度を低下させることなく透過率Kが一定値に維持される。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、 透過率Kは、Darcyの式に従って算出され、多孔体を透過する空気の単位時間当たりの流量が1/6[L/s]の場合に、1×10-9[m]以上であることを特徴とする。
このような構成の第3の発明において、Darcyの式とは、後述する式(3)であって、多孔体の形状や大きさが既知の場合に、空気が多孔体を透過する前後の空気の圧力差(後述するΔP)を実測することにより、多孔体を透過する空気の単位時間当たりの流量に対する透過率が算出される。この場合、多孔体の形状等が既知である限り、構成(a)と構成(b)を組み合わせてなる多様な内部構造を有する多孔体の透過率がそれぞれ求められる。
上記構成の第3の発明においては、多孔体を透過する空気の単位時間当たりの流量が1/6[L/s]の場合において、多様な内部構造を有するいずれの多孔体においても、透過率Kが1×10-9[m]以上となる。このような透過率Kの値は、従来の砥石の透過率Kよりも十分に高い値であることから、冷却材や潤滑剤、気体等が従来と比較して多孔体の内部へ浸透し易い。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、気孔は、その外形が球状及び/又は柱状であることを特徴とする。
このような構成の第4の発明において、気孔の外形は、球状のみ、又は柱状のみ、又は球状と柱状のいずれかである。また、球状には一断面が楕円形状をなすものも含まれ、柱状には円柱状、楕円柱状、多角柱状が含まれる。
上記構成の第4の発明においては、第1乃至第3のいずれかの発明の作用に加えて、気孔の外形の違いによって、透過率がやや異なってくる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、第1の発明によれば、多様な構造を有するいずれの多孔体においても、K<K≦4Kとなるので、気孔率と気孔径比の組み合わせによって冷却能力や潤滑能力等を所望のレベルに適宜調整可能であり、汎用性が高い。
【0014】
第2の発明によれば、気孔率を減少させた場合であっても、透過率が一定値に維持され、かつ圧縮応力が増大するため、多孔体の破壊を防止可能であるとともに高い冷却能力や潤滑能力等を発揮することができる。
【0015】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、多様な構造を有するいずれの多孔体においても、冷却材や潤滑剤等が多孔体の内部へ浸透し易いので、加工熱の発生量を低減できるとともに冷却材や潤滑剤等の使用量を軽減することができる。
【0016】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加えて、同じ気孔率、同じ機械的強度を備えながら、透過率の大きさを微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る多孔体の構成を決定するためのパーコレーション理論についての説明図である。
【図2】(a)及び(b)は、それぞれパーコレーション理論を用いた気孔解析についての説明図である。
【図3】(a)及び(b)は、それぞれパーコレーション理論を用いた気孔解析の結果である。
【図4】それぞれ本発明の実施の形態に係る多孔体の原料配分及び気孔率の測定値である。
【図5】透過率測定装置の縦断面図である。
【図6】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る多孔体の体積配合率に対する透過率を測定した結果である。
【図7】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る多孔体の気孔率に対する圧縮応力及び気孔率に対する透過率を測定した結果である。
【図8】本発明の実施の形態の変形例に係る多孔体の流量に対する透過率を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】【実施例】
【0018】
本発明の実施の形態に係る多孔体について、図1乃至図7を用いて詳細に説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る多孔体の構成を決定するために、パーコレーション(浸透)理論を用いた気孔解析を行った。図1は、本発明の実施の形態に係る多孔体の構成を決定するためのパーコレーション理論についての説明図である。
パーコレーション理論とは、対象とする物の系内での繋がり方や、繋がり方の特徴が系の特性にどの様な影響を与えるかを対象にする理論である。
具体的には、図1に示すように、例えば5×5の正方格子において、マス目(サイト)上に任意の確率で複数の〇印を置き、クラスターC(大径の円で囲まれた部分)を形成するモデルを使用した。このクラスターCとは、〇印を置いた一のマス目において、その上下左右隣り合ったマス目に注目し、一のマス目と他の〇印がそれぞれ置かれた複数のマス目がつながっていると判断したときの塊をいう。
また、図1において、格子上辺Aから格子下辺Aまで複数の〇印が破線に沿って連続して繋がっている場合に、気孔が連通したとする。
【実施例】
【0019】
次に、パーコレーション理論に基づいて作成したプログラムを用いて、気孔解析を行った。図2(a)及び図2(b)は、それぞれパーコレーション理論を用いた気孔解析についての説明図であって、図2(a)は、複数種類の異なる直径の気孔が連通した状態を示したものであり、図2(b)は、連通した気孔を示したものである。
図2(a)及び図2(b)に示すように、400×400のマス目からなる検査面積Sを有する正方格子L内に、複数種類の異なる直径の複数の気孔2a,2b(大径の気孔を2a、小径の気孔を2bとする。)をそれぞれランダムに平面配置し、多孔体1(図5参照)の断面を2次元モデル化した。正方格子L内における気孔2a,2bの配置は、プログラム中で発生した乱数の値に基づいて決定され、気孔2a,2bの断面形状は配向性のない円形をそれぞれ採用した。
なお、図2(a)は、気孔2a,2bの一部が正方格子Lの上辺Aから下辺Aまで連通した状態を斜線で示しており、図2(b)は、連通した気孔2a,2bの総面積を斜線で示したものである。
【実施例】
【0020】
次に、このような2次元モデルを使用して、気孔率を一定とし、乱数をn回発生させて気孔2a,2bの連通率と連通面積率を求めた。このとき、パラメータとして、気孔2a,2bの最大径と最小径の比率である気孔径比と、気孔2a,2bの面積配合率を採用した。すなわち、気孔径比と面積配合率を独立して変化させ、それぞれの場合毎に乱数をn回発生させた。
なお、乱数については、作成したプログラムにおいて予め1から100までの数を20000回発生させて、各数値の発生頻度の理論値200と実際に発生した数値の頻度がほぼ一致することを確認済みである。さらに、作成したプログラムにおいて乱数を10000回発生させて、計算回数が2500以上で計算結果が収束していることが確認された。これにより、計算回数nを3000回とした。
【実施例】
【0021】
ここで、気孔率とは、複数の気孔2a,2bの面積をすべて合計した総面積Vを検査面積Sで除した値である。また、面積配合率とは、複数の気孔2a,2bの合計面積のうち、小径の気孔2bが占める面積の割合を表す値である。ただし、面積配合率の代わりに、体積配合率(複数の気孔2a,2bの合計体積のうち、小径の気孔2bが占める体積の割合を表す値)を用いることもできる。これは、例えば、最大半径rを有する球形状の気孔の体積と、横断面半径rを有する円柱形状の気孔の体積が同一であると想定することにより、最大半径r=定数×横断面半径rが導出され、その結果、面積配合率と体積配合率を上記定数を用いて互いに換算し得るからである。
また、連通率Cとは、図2(a)に示したように気孔2a,2bが連通した回数mをn回の計算回数で除したものであって、以下の式(1)で表される。さらに、連通面積率Cとは、気孔2a,2bのうち、連通した気孔2a,2bの総面積Vを連通する毎に積算した積算値ΣVを連通した回数mで除した値を、さらに検査面積Sで除したものであって、以下の式(2)で表される。
【実施例】
【0022】
【数1】
JP2019094246A_000003t.gif
【実施例】
【0023】
【数2】
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【実施例】
【0024】
次に、気孔解析の結果について、図3を用いて説明する。図3(a)及び図3(b)は、それぞれパーコレーション理論を用いた気孔解析の結果であって、図3(a)は気孔径比毎の面積配合率に対する連通率であり、図3(b)は気孔径比毎の面積配合率に対する連通面積率である。
連通率Cは、気孔率を一定の70[%]とし、面積配合率を0~1の間で変化させ、気孔径比が(1)6:1、(2)5:1、(3)4:1、(4)3:1、(5)2:1、(6)1.75:1、(7)1.5:1、(8)1.25:1の8通りの場合について求めた。連通面積率Cについても同様である。
【実施例】
【0025】
図3(a)に示すように、上記(8)1.25:1の場合において、面積配合率=0.5付近で連通率Cが最大値(≒0.095)を示し、面積配合率=1での連通率C≒0.07よりも高い値となっている。また、面積配合率=0.5付近では、(8)1.25:1、(7)1.5:1、(5)2:1の順に、それぞれの連通率Cが面積配合率=1での連通率C≒0.07よりも高い値となっていると判断できる。
また、図3(b)に示すように、上記(1)5:1~(8)1.25:1のすべての場合において、面積配合率=0.2以下での各連通面積率Cが面積配合率=1での連通率C≒0.03よりも十分に高い値となっている。特に、面積配合率=0.2では、(2)5:1の連通面積率Cがその最大値を示す。なお、(1)6:1の連通面積率Cは、面積配合率=0.1で最大となっているが、連通率C≒0.02と低い値となっている。
以上から、気孔径比が(1)6:1~(8)1.25:1のすべての場合に、連通率C及び連通面積率Cの少なくともいずれかが比較的高い値となっていることから、透過率が良好になることが見込まれる。
【実施例】
【0026】
続いて、解析結果を確認するため、この結果と同条件の多孔体を試作した。試作した多孔体の原料配分及び気孔率を、図4に示す。図4は、それぞれ本発明の実施の形態に係る多孔体の原料配分及び気孔率の測定値である。
図4に示すように、試作した多孔体は、骨材に珪酸カルシウム、結合材に水ガラス、気孔材に球形状のプラスチック玉を原料としたものである。このプラスチック玉は、多孔体1(図5参照)に、小径の球状の気孔2bのみが含有される場合と、大径の球状の気孔2a及び小径の球状の気孔2bがともに含有される場合を想定して、その重さの配分を(a)~(j)の10通りに変化させた。なお、10通りの配分毎に3個ずつ、合計300個の多孔体を製造した。
また、図4の「気孔組合せ」の欄において、(a),(b),(f),(g)の「φ1」,「φ5」,「φ1.5」,「φ2」は、異なる直径の小径の気孔2bのみがそれぞれ多孔体1に含有される場合である。さらに、(c)~(e)の「φ1、φ5」は、気孔径比が(2)5:1の場合に相当する。そして、(h)~(j)の「φ1.5、φ2」は、気孔径比が1.33:1の場合に相当する。また、図示はしていないが、図4に示される以外の原料配分の多孔体も製造し、その気孔率を測定した。
【実施例】
【0027】
多孔体の製造方法は、最初に、骨材と、結合材と、気孔材を図4(a)に示す配合で混錬して外径(直径)50mm、厚さ15mmの円盤形状に型押しして成型する。次に、成型した混錬物を乾燥後1000℃で焼成した。これにより、プラスチック玉がガス化するとともに水ガラスが固化して、硬質の多孔体が形成される。その後、透過率を測定することを目的として、焼成された多孔体の中央部に内径10mmの貫通穴を穿通した。
【実施例】
【0028】
続いて、電子比重計(ALFA MIRAGE社製EW-300SG)を用いて、試作した多孔体のすべてについて気孔率をそれぞれ測定した。
図4の最右列は、(a)~(j)の配分毎の3個の多孔体について測定した気孔率の平均値であって、いずれも0.65以上となった。このうち、(h)~(j)は気孔径比が1.33:1の場合である。これらの気孔率の値は、気孔径比が1.25:1における気孔率の値との差がわずかであると考えられるので、(h)~(j)における気孔率の測定値を、気孔径比が1.25:1の場合の気孔率の測定値として取り扱うことにする。
また、図4に示される以外の原料配分の多孔体についての気孔率の平均値は、0.55~0.70となった。
すなわち、試作した多孔体は、複数種類の異なる直径の気孔を含有する多孔体であって、(a)気孔率が55~70[%]であり、(b)気孔の最大径と最小径の比率である気孔径比が6:1~1.25:1であり、構成(a)と構成(b)を組み合わせてなる。
【実施例】
【0029】
次に、試作した多孔体の透過率を求める。この透過率を測定するための測定装置について、図5を用いて説明する。図5は、透過率測定装置の縦断面図である。
図5に示すように、透過率測定装置10は、本実施例に係る円盤状をなす多孔体1の両端面1a,1bをそれぞれ挟持する一対のフランジ11,11と、両端面1a,1bとフランジ11,11の間に配置されるゴム板12,12を備える。フランジ11,11は、平面視で略ドーナツ状をなし、図示しない圧力計に接続される通気管13aと、図示しない真空ポンプに接続される通気管13bが中心を貫通している。
【実施例】
【0030】
上記構成の透過率測定装置10を用いて、真空ポンプが吸引する空気の流量Qにおける大気圧と、多孔体1の周縁からその中心部の空間へ吸引された空気14との圧力差、すなわち、空気が多孔体1を透過する前後の空気の圧力差ΔP[Pa]を圧力計で測定した。圧力差ΔP[Pa]と、多孔体1の透過率k[m]の関係は、Darcy式から、式(3)で表される。この式(3)を円盤形状の多孔体1に適用すると、透過率k[m]は、式(4)で表される。なお、前述の透過率Kと式(3),(4)における透過率kは、いずれも同一の物理量であるが、前者は、透過率は気孔率の関数であるという一種類の性質を明記したものであり、後者は、これ以外の場合を表現したものである。
ここで、Aは多孔体1の横断面積[m]、Qは多孔体1を透過する空気の単位時間当たりの流量[L/s]、dは多孔体1の外径[m]、dは多孔体1の内径[m]、bは多孔体1の軸方向の厚さ[m]、μは空気の粘性係数[Pa・s]、lは多孔体1の体積[m]である。
具体的には、A=π(d/2-d/2)≒1.26×10-3[m]、Q=1/6=0.167[L/s]、d=0.05[m]、d=0.01[m]、b=0.015[m]、μ=1.8×10-5[Pa・s]、l=A・b≒1.89×10-5[m]である。このうち、μは、1気圧、空気の温度20[℃]、関係湿度75[%]の場合である。
【実施例】
【0031】
【数3】
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【実施例】
【0032】
【数4】
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【実施例】
【0033】
式(4)によって算出された透過率kと体積配合率の関係の一例を図6に示す。図6(a)及び図6(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る多孔体の体積配合率に対する透過率を測定した結果である。ここで、図6(a)は、例えば気孔径比が(2)5:1の場合であり、図6(b)は気孔径比が(8)1.25:1の場合である。
図6(a)に示すように、小径の気孔2bの体積配合率の変化に対する透過率k[m]は、体積配合率=0.1のときに最大値(≒2.0×10-10)になるとともに、これ以降体積配合率が増加するにつれて減少し、下に凸のカーブを描く結果となった。このようなカーブは、気孔径比が(2)5:1の場合の連通面積率Cの結果(図3(b)参照)と類似していると考えられる。
【実施例】
【0034】
図6(b)に示すように、気孔2bの体積配合率の変化に対する透過率k[m]は、体積配合率=0.3のときに最大値(≒2.2×10-10)になり、上に凸の緩やかなカーブを描く結果となった。このようなカーブは、気孔径比が(8)1.25:1の場合の連通率Cの結果(図3(a)参照)と類似していると考えられる。
上記の結果から、多孔体1の透過率kは、気孔2a,2bの連通率C及び連通面積率Cといずれも正の相関関係にあり、連通率C及び連通面積率Cをそれぞれ増大させることで改善されるものと予想される。
【実施例】
【0035】
さらに、試作した多孔体1の透過率kと機械的強度の関係を求めるため、気孔率の変化に対する圧縮応力を、JIS B 7721に規定される圧縮試験機を使用し、JIS A 1108に規定されるコンクリートの圧縮強度試験方法に準拠して測定した。
圧縮応力は、多孔体1の一部を30[mm]×30[mm]×100[mm]のサイズに切り出して立方体形状の試験片とし、万能材料試験機(島津製作所製UH-1000KNI)を用いて荷重速度1[mm/min]にて測定した。
これとともに、試作した多孔体1の図4(b)で示した気孔率と、式(4)によって算出された透過率kを用いて、気孔率に対する透過率Kのグラフを作成した。
これらの結果を表1と、図7(a)及び図7(b)に示す。表1と、図7(a)及び図7(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る多孔体の気孔率に対する圧縮応力及び気孔率に対する透過率を測定した結果である。
【実施例】
【0036】
【表1】
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【実施例】
【0037】
表1及び図7(a)に示すように、気孔径比が(2)5:1、(5)2:1、(8)1.25:1のいずれの場合においても、気孔率Xが約70[%]から55[%]に減少するにつれ、多孔体1の試験片の圧縮応力Y[N/mm]がそれぞれ2.7倍、2.6倍、2.4倍に増大することが確認された。また、気孔率Xの変化量ΔXに対する圧縮応力Yの変化量ΔYの絶対値は、気孔径比が(2)5:1になるほど大きくなった。
【実施例】
【0038】
加えて、図7(b)に、従来の砥石の例として、気孔径比が(9)5:5、(10)1:1、(11)d:d(ただし、dは気孔2bの直径より十分小さい値である。)の場合における、気孔率Xに対応する透過率Kの値をそれぞれ示す。この透過率Kは、透過率Kの場合と同様に、従来の砥石の透過率kと同一の物理量であるとともに気孔率Xの関数であって、専ら図7(b)の説明のために使用される。なお、気孔径比が(9)~(11)の場合とは、それぞれ、1種類の直径の気孔のみを含有する多孔体を意味している。
また、これら従来の砥石は、いずれも多孔体1の試験片と同じ大きさの立方体形状をなしており、透過率測定装置10を使用してその透過率kを求めた。具体的には、多孔体1の場合と同様に、空気の流量Q=1/6[L/s]における空気の圧力差ΔPを測定し、得られた圧力差ΔP等から式(4)によって透過率kを算出した。
【実施例】
【0039】
さらに、(9)5:5の場合、気孔率Xの値は70.6[%]、透過率Kの値(*印)は2.15×10-9[m]である。(10)1:1の場合、気孔率Xの値は70.6[%]、透過率Kの値(×印)は4.5×10-9[m]である。さらに、(11)d:dの場合、気孔率Xの値は40.2[%]、透過率Kの値(●印)は2.41×10-10[m]である。
【実施例】
【0040】
これに対し、表2に示すように、(2)5:1の場合においては、気孔率Xが約70[%]から約67[%]に減少したとき、これに対応する透過率K70は3.61×10-9[m]、透過率K67も3.62×10-9[m]となっている(図7(b)中楕円#1参照)。したがって、気孔率約70[%]での透過率K70と気孔率約67[%]での透過率k67の差ΔKは-4.5×10-12[m]であり、差ΔKの透過率K70に対する比率RK1は-0.12[%]である。なお、透過率Kij(i,jは任意の整数)は、気孔率Xの関数であって、専ら図7(b)の説明のために使用される。
【実施例】
【0041】
【表2】
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【実施例】
【0042】
また、(5)2:1の場合においては、気孔率Xが約68[%]から約63[%]に減少したとき、これに対応する透過率K68は2.12×10-9[m]、透過率K63は1.91×10-9[m]になる(図7(b)中楕円#2参照)。したがって、気孔率約68[%]での透過率K68と気孔率約63[%]での透過率k63の差ΔKは2.1×10-10[m]であり、差ΔKの透過率K68に対する比率RK2は9.7[%]である。
【実施例】
【0043】
さらに、(8)1.25:1の場合においては、気孔率Xが約70[%]から約67[%]に減少したとき、これに対応する透過率K70は4.52×10-9[m]、透過率K67は4.54×10-9[m]になる(図7(b)中楕円#3参照)。したがって、気孔率約70[%]での透過率K70と気孔率約67[%]での透過率K67の差ΔKは-1.8×10-11[m]であり、差ΔKの透過率K70に対する比率RK3は-0.4[%]である。
このように、気孔率Xの透過率KX1と気孔率X(X>X)の透過率KX2の差ΔKが透過率kX1に対して-10[%]~+10[%]の範囲にある場合に、透過率Kを一定とみなすことにする。
【実施例】
【0044】
また、気孔率Xが約55[%]から約70[%]に変化する範囲内で、透過率Kは、気孔径比が(2)5:1、(5)2:1、(8)1.25:1のいずれの場合においても、1×10-9[m]以上となった(このとき、空気の流量Q=1/6[L/s]である)。
詳細には、気孔径比が(2)5:1、(5)2:1、(8)1.25:1の場合の透過率Kの値を一群として観察すると、その一群の上方側の境界部分に気孔率Xの増加とともに緩やかに上昇する下に凸のカーブUを見出すことができる。
一方、気孔径比が(9)5:5、(10)1:1、(11)d:dの場合の透過率Kの値を一群として観察すると、カーブUと同様の傾向を有するカーブUを見出すことができる。すなわち、気孔率Xが約40[%]から約70[%]にかけて、カーブUとカーブUによって挟まれる領域に、気孔径比が(2)5:1、(5)2:1、(8)1.25:1の場合の透過率Kの値が分布することとなる。
ここで、気孔径比が(2)5:1、(5)2:1、(8)1.25:1における透過率Kの最大値Kmaxは気孔径比が(8)1.25:1における5.15×10-9[m]である。このときの気孔率Xの値は67.6[%]である。また、気孔率X=67.6[%]のとき、カーブU上の透過率Kの値は、1.4×10-9[m]と読み取ることができる。したがって、Kmax/K≒3.7、すなわち最大値Kmaxは、透過率Kのおよそ4倍となっている。
【実施例】
【0045】
これらの結果から、多孔体1は、外形がそれぞれ球状をなし、複数種類の異なる直径の気孔2a,2bを含有する多孔体であって、(a)気孔率Xが55~70[%]であり、(b)気孔2a,2bの最大径と最小径の比率である気孔径比が5:1~1.25:1であり、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、気孔率Xに対応する多孔体1の透過率K、気孔率Xに対応する従来の砥石の透過率をKの関係は、K<K≦4Kとの結果になった。具体的には、多孔体1を透過する空気の単位時間当たりの流量が1/6[L/s]の場合に、透過率Kは、1×10-9[m]以上の値となる。
さらに、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、多孔体1の圧縮応力は、気孔率Xの減少に対し、それぞれ増大する結果になった。
【実施例】
【0046】
また、特に透過率Kについては、気孔径比が(2)5:1、(5)2:1、(8)1.25:1のいずれの場合においても、比率RK1~比率RK3のように、気孔率が減少するにもかかわらず透過率Kがそれぞれ一定となる領域が存在する。また、表1及び図7(a)において説明したように、(2)5:1、(5)2:1、(8)1.25:1のいずれの場合においても、気孔率が約70[%]から55[%]に減少するにつれ試験片の圧縮応力Yが増大している。すなわち、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、気孔率Xの減少に対し、多孔体1の圧縮応力はそれぞれ増大し、多孔体1の透過率Kはそれぞれ一定値となる領域が存在することが分かる。
【実施例】
【0047】
なお、図3で示したように、気孔径比が(1)6:1の場合の連通率C及び連通面積率Cは、(2)5:1の場合の連通率C及び連通面積率Cとそれぞれ同様の値を示していることと、図3及び図6で示したように、多孔体1の透過率kは、連通率C及び連通面積率Cといずれも正の相関関係にあると考えられることから、気孔径比が(1)6:1の場合の気孔率Xに対応する透過率Kは、図7(b)における(2)5:1の場合の気孔率Xに対応する透過率Kと同様の傾向を示すものと推定される。したがって、気孔径比が(1)6:1の場合の透過率Kも、1×10-9[m]以上であって、K<K≦4Kであると判断して良い。
【実施例】
【0048】
以上説明したように、多孔体1によれば、図3の結果により、気孔径比が(1)6:1~(8)1.25:1のすべての場合に、透過率kが良好になることが見込まれる。これは、図7(b)で示したように、(a)気孔率が55~70[%]であり、(b)気孔2a,2bの最大径と最小径の比率である気孔径比が5:1~1.25:1であり、構成(a)と構成(b)を組み合わせた複数の場合において、透過率Kは、1×10-9以上であるという、従来の砥石の透過率Kよりも十分に高い値となったことによって裏付けられた(このとき、多孔体1及び従来の砥石を透過する空気の単位時間当たりの流量は、いずれも1/6[L/s]である)。
また、多孔体1の透過率kは、図3及び図6の結果により、連通率C及び連通面積率Cをそれぞれ増大させることで改善されることが期待できる。
さらに、図7(a)及び図7(b)の結果により、気孔率Xの減少に対しても、透過率Kが一定値に維持され、かつ圧縮応力が増大する。すなわち、透過率を一定以上に維持又は向上させるという要請と、気孔率を小さくするという要請を同時に実現することができた。これにより、多孔体1の機械的強度が増加してその破壊を防止可能であるとともに高い冷却能力や潤滑能力等を発揮することが可能である。
また、多孔体1によれば、その構成を様々に変化させた場合においても、気孔率Xの増減に対し、透過率Kが一定値となる領域(図7(b)の楕円#1~#3参照)や、透過率Kが連続的に変化する部分(楕円#1~#3で囲まれる以外の部分)が構成の変化に対応して出現するので、気孔率と気孔径比の組み合わせによって冷却能力や潤滑能力等を所望のレベルに適宜調整可能であり、汎用性が高い。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施の形態の変形例に係る多孔体について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態の変形例に係る多孔体の流量に対する透過率を測定した結果である。変形例に係る多孔体1a(図示せず)は、気孔の外形がそれぞれ球状及び円柱状であって、気孔径比が(8)1.25:1である。また、円柱状をなす多孔体1bの長軸方向の長さを2通り(ア、イ)に変化させて測定した。(ア)と(イ)の場合における多孔体1aの気孔率はそれぞれ69.2[%]、69.0[%]、長さの比率はおよそ1:4である。
なお、比較のために、気孔径比が(ウ)1.25:1と、(エ)5:1の場合における実施例に係る多孔体1の透過率kの値と、(オ)微小な気孔を有する従来の砥石の透過率kの値も同時に示している。測定した多孔体1の気孔率はそれぞれ69.7[%]、69.6[%]であり、気孔2a,2bの外形は球状である。
【実施例】
【0050】
図8に、算出した透過率kの値を、(ア)◆印、(イ)*印、(ウ)■印、(エ)▲印、(オ)●印でそれぞれ表す。空気の単位時間当たりの流量Q[L/s]の増加に対し、式(4)により算出された透過率kの値は、(ア)~(オ)のすべてにおいてほぼ直線状に減少した。このうち、(ア)~(ウ)の透過率kの値は、いずれも同じ位置にプロットされ、(エ)では(ア)~(ウ)をやや下回り、(オ)では(ア)~(エ)を大きく下回っている。
この結果から、気孔比率と気孔率が共通であれば、気孔の外形が異なる多孔体の透過率kは互いに一致することがうかがえる。したがって、球状の気孔と円柱状の気孔を組み合わせた場合にも、図7(b)で示したのと同様に、気孔率Xの減少に対し、透過率Kはそれぞれ一定値となるのではないかと考えられる。また、気孔率の減少に対し、一般に圧縮応力は増加するため、多孔体1aも実施例に係る多孔体1と同様の優れた効果を発揮し得ることが期待できる。
【実施例】
【0051】
なお、本発明に係る多孔体1は、本実施例に示すものに限定されない。例えば、気孔径比が6:1~1.25:1の間であればどのような比であっても良く、4.5:1や5:2(=2.5:1)であっても良い。また、多孔体1は円柱状の気孔と円柱状の気孔を組み合わせたものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、破壊を防止可能であるとともに高い冷却能力や潤滑能力等を発揮することのできる研削・研磨加工用の多孔体として適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,1a…多孔体 1a,1b…端面 2a,2b…気孔 10…透過率測定装置 11…フランジ 12…ゴム板 13a,13b…通気管 14…空気
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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