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明細書 :g-C3N4フィルムの製造方法およびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6371223号 (P6371223)
登録日 平成30年7月20日(2018.7.20)
発行日 平成30年8月8日(2018.8.8)
発明の名称または考案の名称 g-C3N4フィルムの製造方法およびその利用
国際特許分類 C01B  21/082       (2006.01)
B01J  27/24        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
C23C  16/34        (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
FI C01B 21/082 K
B01J 27/24 M
B01J 35/02 J
B01J 37/02 301P
B01J 37/08
C23C 16/34
C01B 3/04 A
請求項の数または発明の数 18
全頁数 24
出願番号 特願2014-553237 (P2014-553237)
出願日 平成25年12月24日(2013.12.24)
国際出願番号 PCT/JP2013/084543
国際公開番号 WO2014/098251
国際公開日 平成26年6月26日(2014.6.26)
優先権出願番号 2012280283
優先日 平成24年12月21日(2012.12.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年11月25日(2016.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】宮島 大吾
【氏名】荒添 弘樹
【氏名】川本 益揮
【氏名】赤池 幸紀
【氏名】小泉 美子
【氏名】相田 卓三
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】小野 久子
参考文献・文献 中国特許出願公開第103272639(CN,A)
特開2012-250884(JP,A)
YANG, F. et al.,Metal-Free Photocatalytic Graphitic Carbon Nitride on p-Type Chalcopyrite as a Composite Photocathode for Light-Induced Hydrogen Evolution,ChemSusChem,2012年 7月,Vol. 5, No. 7,p. 1227-1232,Abstract
TALAPANENI, S. N. et al.,Synthesis of Nitrogen-Rich Mesoporous Carbon Nitride with Tunable Pores, Band Gaps and Nitrogen Content from a Single Aminoguanidine Precursor,ChemSusChem,2012年 4月,Vol. 5, No. 4,p. 700-708,Abstract
調査した分野 C01B21/082
C01B 3/04
C23C16/34
B01J27/24
B01J37/02
B01J37/08
B01J35/02
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
m-で表される化合物(Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、下記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または下記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンであり、Ym-は陰イオンであり、mはYの価数である)を原料として加熱し、当該化合物またはその反応物を気化させて、表面が負電荷を帯びているまたは表面にπ電子を有している加熱した基材の表面に付着させ、当該基材上で当該化合物またはその反応物を重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させる、グラファイト状窒化炭素のフィルムの製造方法。
【化1】
JP0006371223B2_000010t.gif
(式(I)および(II)中、R、RおよびRは、互いに独立して、アミノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、-(CO)-R(n=1~10、Rは炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン、または一級アミド基を表す。)
【請求項2】
上記Ym-は、CO2-、SO2-、Cl、またはRCOO(Rは、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記Ym-は、CO2-またはCHCOOである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオンまたはメレミウムイオンである、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記Xは、グアニジウムイオンである、請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記基材は、ガラス、石英ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)ガラス、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラス、シリコン、グラファイト、またはグラッシーカーボンの基板である、請求項1~5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記化合物および基材を300~700℃で加熱する、請求項1~6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の製造方法によって製造されたグラファイト状窒化炭素のフィルムを水に浸漬し、光を照射することによって水素を製造する方法。
【請求項9】
CO2-またはXCHCOOで表される化合物(Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、下記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または下記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンである)を原料として加熱し、重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させる、グラファイト状窒化炭素の製造方法。
【化2】
JP0006371223B2_000011t.gif
(式(I)および(II)中、R、RおよびRは、互いに独立して、アミノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、-(CO)-R(n=1~10、Rは炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン、または一級アミド基を表す。)
【請求項10】
上記Xは、グアニジウムイオンである、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
単層または多層のシート構造を有する、グラファイト状窒化炭素のフィルム。
【請求項12】
上記シート構造は、メレム構造単位が二次元方向に架橋されたシート構造である、請求項11に記載のグラファイト状窒化炭素のフィルム。
【請求項13】
メレム構造単位が二次元方向に架橋されたシート構造を有するグラファイト状窒化炭素のフィルムであって、面外X線回折においてシート間距離に由来するピークのみが得られる、グラファイト状窒化炭素のフィルム。
【請求項14】
上記シート間距離は、3.17Åから3.26Åの範囲である、請求項13に記載のグラファイト状窒化炭素のフィルム。
【請求項15】
0.2Vの定電圧を印加しながら420nm以上の可視光を照射した場合の光電流が0.8μA/cm2以上である、グラファイト状窒化炭素のフィルム。
【請求項16】
透明性を有する、グラファイト状窒化炭素のフィルム。
【請求項17】
請求項11~16の何れか1項に記載のグラファイト状窒化炭素のフィルムが表面に固定化されている、基材。
【請求項18】
請求項11~16の何れか1項に記載のグラファイト状窒化炭素のフィルムが表面に固定化されている、導電性基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイト状窒化炭素(g-C)のフィルムを製造する方法、ならびに、当該方法によって製造されたg-Cのフィルムおよび当該g-Cのフィルムの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素および窒素等のユビキタス元素からなる有機光触媒は、環境および資源に配慮した材料として注目されている。グラファイト状窒化炭素(Graphitic carbon nitride,g-C)は、水の光分解によって水素を発生させるポリマーであり(非特許文献1)、耐光性に優れる不均一系有機光触媒である。化石燃料を原料として用いる水素生産プロセスでは製造過程で二酸化炭素が発生するが、g-Cによる水の光分解を用いれば二酸化炭素が発生しないため、環境に配慮したクリーンエネルギーの提供が可能となる。
【0003】
g-Cは、例えば、モノマーとして、シアナミド(非特許文献2)、メラミン(非特許文献3)、尿素(非特許文献4)、チオ尿素(非特許文献6)、またはジシアンジアミド(非特許文献5)等を用い、逐次重合することによって、水に不溶な粉末状ポリマーとして製造することができる。また、非特許文献7には、ジシアンジアミドの溶液をスピンコートし、加熱して、シート状のg-Cを得たことが記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Wang, X; Maeda, K.; Thomas, A.; Takanabe, K.; Xin, G.; Carlsson, J. M.; Domen, K.; Antonietti, M. Nature Mater. 2009, 5, 76-80.
【非特許文献2】Maeda, K.; Wang, X.; Nishihara, Y.; Lu, D.; Antonietti, M.; Domen, K. J. Phys. Chem. B 2009, 113, 4940-4947.
【非特許文献3】Yan, H. Chem. Commun. 2012, 48, 3430-3432.
【非特許文献4】Liu, J.; Zhang, T.; Wang, Z.; Dawsona, G.; Chen, W. J. Mater. Chem. 2011, 21, 14398-14401.
【非特許文献5】Bojdys, M. J.; Muller, J. -O.; Antonietti, M.; Thomas, A. Chem. Eur. J. 2008, 14, 8177-8182.
【非特許文献6】Zhang, G.; Zhang, J.; Zhang, M.; Wang, X. J. Mater. Chem. 2012, 22, 8083-8091.
【非特許文献7】Yang, F.; Lublow, M.; Orthmann, S.; Merschjann, C.; Tyborski, T.; Rusu, M.; Kubala, S.; Thomas, A.; Arrigo, R.; Havecker, M.; Schedel-Niedrig, T. Chem. Sus. Chem. 2012, 5, 1227-1232.
【非特許文献8】Braml, N. E.; Sattler, A.; Schnick, W. Chem. Eur. J. 2012, 18, 1811-1819.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不均一系光触媒の利点は、粉末状触媒を水に分散し、光を照射するだけで簡便に水素を製造できる点にある。しかし、粉末状触媒は、使用後に水から分離および回収する必要がある。そのため、実用化の観点から、簡便かつ容易な取り扱いが可能なg-Cが望まれる。なお、非特許文献7に記載されたg-Cの作製方法では、実用的に充分な品質のシートを得ることが困難である。
【0006】
本願発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、簡便かつ容易な取り扱いが可能なg-Cを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグラファイト状窒化炭素のフィルム(g-Cフィルム)の製造方法は、Xm-で表される化合物(Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、下記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または下記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンであり、Ym-は陰イオンであり、mはYの価数である)を原料として加熱し、当該化合物またはその反応物を気化させて、表面が負電荷を帯びているまたは表面にπ電子を有している加熱した基材の表面に付着させ、当該基材上で当該化合物またはその反応物を重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させるものである。
【0008】
【化1】
JP0006371223B2_000002t.gif

【0009】
(式(I)および(II)中、R、RおよびRは、互いに独立して、アミノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、-(CO)-R(n=1~10、Rは炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン、または一級アミド基を表す。)
本発明はまた、XCO2-で表される化合物(Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、上記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または上記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンである)を原料として加熱し、重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させる、g-Cの製造方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、単層または多層のシート構造を有するg-Cフィルムを提供する。
【0011】
本発明はまた、メレム構造単位が二次元方向に架橋されたシート構造を有するg-Cフィルムであって、面外X線回折においてシート間距離に由来するピークのみが得られるg-Cフィルムを提供する。
【0012】
本発明はまた、0.2Vの定電圧を印加しながら420nm以上の可視光を照射した場合の光電流が0.8μA/cm2以上であるg-Cフィルムを提供する。
【0013】
本発明はまた、透明性を有するg-Cフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、g-Cをフィルム状に形成することができる。また、基板等の基材へ成膜および固定化することができる。そのため、g-Cを触媒として用いる際に水に分散する必要がなく、使用後の回収が簡便かつ容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1において用いた装置の概略を示す図である。
【図2】試験例1におけるX線回折測定の結果を示す図である。
【図3】試験例2におけるIRスペクトル測定の結果を示す図である。
【図4】試験例3におけるX線光電子分光スペクトル測定の結果を示す図である。
【図5】試験例4における面外X線回折測定の結果を示す図である。
【図6】試験例5における走査型電子顕微鏡観察によって得られた観察像を示す図である。
【図7】試験例6における光励起時間分解マイクロ波伝導度測定の結果を示す図である。
【図8】試験例7における拡散反射スペクトル測定の結果を示す図である。
【図9】試験例8におけるエネルギーレベルの評価を示す図である。
【図10】試験例9において用いた光電極セルの概略を示す図である。
【図11】試験例9における光応答性の結果を示す図である。
【図12】実施例4において用いた装置の概略を示す図である。
【図13】試験例11におけるIRスペクトル測定の結果を示す図である。
【図14】試験例12におけるX線光電子分光スペクトル測定の結果を示す図である。
【図15】試験例13におけるX線光電子分光スペクトル測定の結果を示す図である。
【図16】試験例13におけるIRスペクトル測定の結果を示す図である。
【図17】試験例14における光応答性の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔g-Cフィルムの製造方法〕
本発明に係るg-C(graphitic carbon nitride)フィルムの製造方法は、Xm-で表される化合物(Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、下記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または下記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンであり、Ym-は陰イオンであり、mはYの価数である)を原料として加熱し、当該化合物またはその反応物を気化させて、表面が負電荷を帯びているまたは表面にπ電子を有している加熱した基材の表面に付着させ、当該基材上で当該化合物またはその反応物を重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させるものである。

【0017】
(原料)
原料として用いられる化合物は、Xm-で表される化合物(「化合物Xm-」と称する)である。Xm-におけるXは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、下記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または下記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンである。

【0018】
【化2】
JP0006371223B2_000003t.gif

【0019】
上記式(I)におけるRは、アミノ基、ニトロ基、炭素数1~10、好ましくは1~5、より好ましくは1~3のアルキル基、-(CO)-R、ハロゲン、または一級アミド基である。-(CO)-Rにおけるnは1~10、好ましくは1~5、より好ましくは1~3であり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。また、-(CO)の部分は、エチレンオキシド基であり、C原子がグアニジンのN原子に結合するものが意図される。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびイソブチル基等が挙げられる。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。Rとして好ましくは、アミノ基およびニトロ基である。

【0020】
上記式(II)におけるRおよびRは、互いに独立して、アミノ基、ニトロ基、炭素数1~10、好ましくは1~5、より好ましくは1~3のアルキル基、-(CO)-R、ハロゲン、または一級アミド基である。-(CO)-Rおよびハロゲンについての説明は、上記式(I)における説明とそれぞれ同じである。RおよびRとして好ましくは、互いに独立して、アミノ基およびニトロ基である。

【0021】
グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオンおよびメレミウムイオンの構造は、それぞれ以下に示すとおりである。

【0022】
【化3】
JP0006371223B2_000004t.gif

【0023】
は、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオンまたはメレミウムイオンであることが好ましく、グアニジウムイオンであることがより好ましい。

【0024】
m-におけるYm-は陰イオンであり、mはYの価数である。陰イオンとしては、例えば、CO2-、SO2-、Cl、HPO2-、NO、SCN、SONH、CrO2-、p-toluenesulfonate、ReO、およびRCOO等が挙げられる。RCOOにおけるRは特に限定されないが、低分子量の基であることが好ましく、例えば、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5、より好ましくは炭素数1~3の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、カルボキシアルキル基(-(CHCOOH)、および置換基を有してもよいフェニル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、およびカルボキシ基等が挙げられる。Rとしては、具体的には、以下のものが挙げられる。

【0025】
【化4】
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【0026】
m-は、CO2-、SO2-、Cl、またはRCOOであることが好ましく、CO2-またはRCOOであること、すなわち下記式(III)で示される陰イオン(下記式(III)において、Rは、OまたはRである)であることがより好ましい。Ym-は、CO2-またはCHCOOであることがさらに好ましく、CO2-であることが特に好ましい。

【0027】
【化5】
JP0006371223B2_000006t.gif

【0028】
m-がCO2-である場合、化合物Xm-には融点が存在しないため、化合物Xm-またはその反応物が気化する前にCO2-が系から抜け出しにくいと考えられる。そのため、Ym-がCO2-である場合、Ym-が他の場合と比較して、気化する化合物Xm-またはその反応物の量が多くなり、より効率的にフィルムを製造することができると考えられる。

【0029】
で表される化合物としては、入手の容易さの観点から、グアニジンの酸塩が好ましい場合があり、g-Cフィルムの製造効率の観点から、グアニジン炭酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジン塩酸塩、およびグアニジン酢酸塩がより好ましく、グアニジン炭酸塩およびグアニジン酢酸塩がさらに好ましく、グアニジン炭酸塩が特に好ましい。

【0030】
m-で表される化合物は、市販されているものでもよいし、公知の方法で合成してもよい。また、複数種の化合物を混合してもよいし、g-Cを形成し得る他の化合物と混合してもよい。

【0031】
(基材)
本発明の製造方法において用いられる基材は、表面が負電荷を帯びているまたは表面にπ電子を有している基材である。

【0032】
基材が帯びている負電荷は、基材が元々有しているものであってもよいし、人工的に付与したものであってもよい。表面が負電荷を帯びている基材としては、例えば、ガラス、石英ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)ガラス、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラス、シリコン、金属材料、および無機半導体等が挙げられる。

【0033】
表面にπ電子を有している基材としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、およびその他の炭素材料(例えば、炭素繊維およびロッド)等が挙げられる。グラファイトとしては、例えば、HOPG(高配向熱分解黒鉛)が挙げられる。

【0034】
また、g-Cの重合反応において加熱するため、基材は耐熱性であることが好ましい。耐熱性の程度は、加熱する温度および時間等に応じて決定すればよい。基材は、例えば、700℃の熱に耐えられるものであることが好ましく、さらに1000℃の熱に耐えられるものであることがより好ましい。なお、所望の耐熱性を有する基材は、当業者に容易に選択される。

【0035】
基材の大きさおよび形状は、特に限定されない。基材は、負電荷を帯びているまたはπ電子を有している表面が平面であることが好ましい場合がある。さらに、基材は、基板であることがより好ましい場合がある。

【0036】
(製造方法の詳細)
上述の原料となる化合物を加熱して、当該化合物またはその反応物を気化させる。「その反応物」とは、原料の化合物が、加熱によって互いに反応し、別の構造の化合物に変化したものを指す。例えば原料としてグアニジン炭酸塩を用いた場合、加熱することにより、下記のスキームに従って変化することが予想される(後述の参考例を参照)。

【0037】
【化6】
JP0006371223B2_000007t.gif

【0038】
また、上記のスキームにおいて、メレミウムイオンに変化すると気化(昇華)することが予想される(後述の参考例を参照)。したがって、Xがグアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンである場合、気化して基材に付着するのは、加熱によって生じたメレミウムイオン(塩の形態)であると考えられる。

【0039】
なお、「気化」とは、液体が気体に変わること、および固体が直接気体に変わること(昇華)の両方を包含している。

【0040】
用いる原料の量は、製造したいフィルムの膜厚および面積に応じて適宜決定すればよい。加熱する温度は、用いる原料の種類に応じて適宜決定すればよいが、例えば、300~700℃であり、380~550℃であることが好ましい。加熱時間は、製造したいg-Cフィルムの膜厚に応じて適宜設定し得るが、例えば、1分~4時間とすることができる。

【0041】
上述の気化した原料またはその反応物(「気化物質」と称する)を、表面が負電荷を帯びているまたは表面にπ電子を有している基材の表面に付着させる。気化物質は上述のように正電荷を有しているため、表面が負電荷を帯びている基材と電荷相互作用する。そのため、気化物質は表面が負電荷を帯びている基材の表面に付着する。また、気化物質はπ電子を有しているため、表面にπ電子を有している基材と相互作用する。そのため、気化物質は表面にπ電子を有している基材の表面に付着する。

【0042】
このとき、基材は加熱されている。これにより、気化物質が基材の表面に付着すると、基材上で気化物質が次々に重合し、g-Cが生成する。g-Cを構成するのは、Xm-のXに由来する部分である。陰イオン(Ym-)は、基材上におけるg-Cへの重合反応と同時に、気化物質のプロトン(H)と反応して脱離すると考えられる(後述の参考例を参照)。例えば、Ym-がCO2-の場合、プロトンとCO2-とが反応して、COおよびHOとなって脱離する。さらに、基材上にg-Cの層が形成されると、その後に気化した気化物質は、既に形成されているg-Cのπ電子との相互作用によって、g-Cの表面に付着(吸着)する。そして、g-C上でさらなるg-Cへの重合反応が進行する。このようにして、基材上でg-Cのフィルムを製造することができる。

【0043】
基材を加熱する温度は、用いる原料の種類に応じて適宜決定すればよいが、例えば、300~700℃であり、380~550℃であることが好ましい。加熱時間は、製造したいg-Cフィルムの膜厚に応じて適宜設定し得るが、例えば、1分~4時間とすることができる。

【0044】
原料と基材とは、それぞれ別個に加熱してもよいし、一緒に加熱してもよい。簡便性の観点からは、原料と基材とを一つの加熱手段(例えば、加熱炉)内で一緒に加熱することが好ましい。また、原料および基材ならびに原料と基材との間の空間を一体的に加熱することによって、原料からg-Cへの重合反応(原料から気化物質への反応、気化、および気化物質からg-Cへの重合)が逐次的に起こるため、より良質なg-Cフィルムを製造することができる。

【0045】
原料からg-Cへの重合反応(原料から気化物質への反応、気化、および気化物質からg-Cへの重合)を行う雰囲気としては、例えば、空気、窒素、アルゴン、およびヘリウム等が挙げられる。

【0046】
また、例えば既存の有機EL用蒸着装置を転用することによって、大面積のg-Cフィルムを製造することも可能である。

【0047】
〔g-Cフィルムおよび応用例〕
本発明の製造方法によって製造されたg-Cフィルムは、単層または多層のシート構造を有している(後述の試験例4を参照)。このシート構造は、メレム構造単位が二次元方向に架橋されたシート構造である。すなわち、単層のシート構造を有しているg-Cフィルムは、メレム構造単位が二次元方向に広がった、単層のシートである。多層のシート構造を有しているg-Cフィルムでは、メレムの構造単位が二次元方向に広がっているシートが、複数、積層している。1つのg-Cフィルムにおいて、層の数が異なる箇所があってもよい。層の数が異なる箇所があるg-Cフィルムは、表面積が大きくなるため、触媒として用いる場合に有利である。基材に付着しているg-Cフィルムでは、各層(1または複数の層)が基材に対して平行に積層している。また、本発明の製造方法によって製造されたg-Cフィルムは、一部が酸化されて、酸素ドープされていてもよい。また、本発明の製造方法によって製造されたg-Cフィルムは、末端の一部がアミノ基またはシアノ基等に置換されていてもよく、炭素と窒素との化学量論比が3:4でなくてもよい。

【0048】
本発明のg-Cフィルムの膜厚は、例えば、0.3nm~1μmであり得る。また、本発明のg-Cフィルムの膜厚は、1μmよりも厚いものであり得る。本発明の製造方法では、薄い膜厚(例えば、nmオーダー~数μmオーダー)を有するg-Cフィルムも、厚い膜厚(例えば、数十μmオーダー~mmオーダー)を有するg-Cフィルムも容易に作製することができる。g-Cフィルムの使用目的に応じて膜厚を適宜選択すればよい。

【0049】
また、製造されたg-Cフィルムは基材から剥離して用いてもよいし、基材に付着させたまま用いてもよい。さらに、基材から剥離したg-Cフィルムを、別の基材に固定して用いてもよい。g-Cフィルムを基材から剥離する場合、膜厚は300nm以上であることが好ましい。

【0050】
g-Cフィルムを基材から剥離する方法としては、例えば、g-Cフィルムが形成された基材を水に浸漬することが挙げられる(後述の実施例6を参照)。水に浸漬することによって容易に剥離することができ、フリースタンディングフィルムを簡便に得ることができる。特に、基材として、ガラス、FTOガラス、およびシリコン等の親水性の基材を用いる場合に有効である。剥離したg-Cフィルムは、例えば、グラファイトに転写し、乾燥させて用いればよい。

【0051】
基材から剥離したg-Cフィルムを別の基材に固定する方法としては、例えば、基材上に形成されたg-Cフィルム上でポリマーフィルム(当該別の基材)を形成させて、転写することが挙げられる。ポリマーフィルムは、原料のポリマー溶液をg-Cフィルム上に塗布して成膜してもよいし(後述の実施例7を参照)、モノマーをg-Cフィルム上に塗布して加熱または光照射等により重合させてもよい(後述の実施例8を参照)。g-Cフィルムおよびその上にポリマーフィルムが形成された基材を水に浸漬することにより、基材だけがg-Cフィルムと剥離して、ポリマーフィルム上にg-Cフィルムが固定されたものが得られる。基材としてグラッシーカーボンまたはシリコン等を用いた場合には、水に浸漬することなく、ポリマーフィルムに転写を行うことができる。また、ポリマーフィルムとしてフレキシブルな材料を選択することにより、g-Cフィルムをフレキシブルデバイスに利用することができる。

【0052】
本発明のg-Cフィルムは、光触媒としての機能を有する。g-Cフィルムを水に浸漬し、光を照射することによって水素を製造することができる。g-Cフィルムは、従来の粉末のg-Cと比較して、使用後の水からの回収が簡便かつ容易となる。水には適宜電解質、犠牲剤が含まれていてもよい。また、助触媒を併用してもよい。

【0053】
また、本発明のg-Cフィルムは、水素製造以外にも、NOx、メチレンブルー、および揮発性有機物(シックハウスガスであるアセトアルデヒド等)等の分解に利用することができる。また、本発明のg-Cフィルムは、CO2還元または有機合成の触媒としても使用可能である。さらに、本発明のg-Cフィルムは、O2還元(燃料電池用触媒等)にも適用することができる。

【0054】
また、本発明の製造方法によって製造されたg-Cフィルムは基材に付着しているため、g-Cフィルムが表面に固定化されている基材を得ることができる。そのため、g-Cフィルムが表面に固定化されている基材を用いて水素を製造することができる。この場合、g-Cフィルムを水に分散する必要がないため、使用後の回収がさらに簡便かつ容易となる。

【0055】
本発明の製造方法によって製造されたg-Cフィルムは、シートが平行に積層しているため、高い伝導度異方性を有し得る(後述の試験例6を参照)。すなわち、例えば、非特許文献7に記載のg-Cフィルムでは、X線回折パターンにおいて、シート間距離に加え、分子骨格間の回折ピークが出現していることから、フィルムの配向はランダムであることがわかる。一方、本発明のg-Cフィルムは、面外X線回折においてシート間距離に由来するピークのみが得られる(後述の試験例4を参照)。当該シート間距離は、3.17Åから3.26Åの範囲であることが好ましい。これにより、本発明のg-Cフィルムは、非特許文献7に記載のg-Cフィルムと比較して、高い伝導度異方性を有し得る。また、本発明のg-Cフィルムは、透明性を有し得る。

【0056】
また、本発明のg-Cフィルムは、従来の方法で製造された粉末のg-Cと比較して高い光伝導度を示し得る(後述の試験例6を参照)。本発明のg-Cフィルムの光伝導度は、例えば、10-5 cm2 V-1 s-1 ~ 10-3 cm2 V-1 s-1であり得る。高い光伝導度はキャリアの失活を抑制するため、本発明のg-Cフィルムは、光触媒および太陽電池材料として好適に利用される。

【0057】
また、従来の方法で製造された粉末のg-Cと比較して高い光電流を示し得る(後述の試験例9を参照)。本発明のg-Cフィルムは、0.2Vの定電圧を印加しながら420nm以上の可視光を照射した場合の光電流が、0.8μA/cm2以上であり得る。

【0058】
さらに、原料として用いる化合物Xm-におけるYm-の種類によって、g-Cフィルムにおける酸化(上向き)・還元(下向き)反応を変えることができる(後述の試験例14を参照)。そのため、Ym-の種類を選択することによって、所望の向きで酸化(上向き)・還元(下向き)反応を行うg-Cフィルムを容易に得ることができる。

【0059】
さらに、本発明のg-Cフィルムは上述のように高い伝導度異方性を有しているため、流れやすいキャリアの輸送方向が決まっている。そのため、g-Cフィルムを半導体光電極として用いることにより、酸素発生サイトと水素発生サイトとの分離が可能となる。例えば、ITO、FTO、またはグラファイト等の導電性基板に形成したg-Cフィルムを作用電極とし、銀/塩化銀を参照電極とし、白金を対向電極とした半導体光電極を構成し、ナフィオン等のイオン交換膜で作用電極と対向電極とを隔離する。g-Cフィルムへ光を照射すると、発生した電子は対極へ移動し、白金表面で水素が生成する。このように、作用電極と対向電極とを隔てることで、水素のみを回収することができる。したがって、水素を効率よく製造することができる。

【0060】
従来、粉末状のg-Cを用いた従来の水の光分解では、水素と同時に酸素が発生するため、最終的に気体の分離が必要となる。また、水素と酸素との混合気体である爆鳴気は点火すると爆発的に反応することが知られている。そのため、水素および酸素の同時発生は、水素回収の必要性および安全性等、光触媒実用化の大きな問題となっている。本発明のg-Cフィルムを用いることで水素のみを回収し得るため、このような問題も解決し得る。

【0061】
〔その他〕
本発明はまた、XCO2-またはXCHCOOで表される化合物を原料として加熱し、重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させる、g-Cの製造方法を提供する。XCO2-におけるXの定義は、上述のとおりである。Xは、グアニジウムイオンであることが好ましい。この製造方法によって製造されたg-Cは、粉末状でもよいし、フィルム状でもよい。

【0062】
〔まとめ〕
以上のように、本発明に係るg-Cフィルムの製造方法は、Xm-で表される化合物(Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、下記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または下記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンであり、Ym-は陰イオンであり、mはYの価数である)を原料として加熱し、当該化合物またはその反応物を気化させて、表面が負電荷を帯びているまたは表面にπ電子を有している加熱した基材の表面に付着させ、当該基材上で当該化合物またはその反応物を重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させるものである。

【0063】
【化7】
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【0064】
(式(I)および(II)中、R、RおよびRは、互いに独立して、アミノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、-(CO)-R(n=1~10、Rは炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン、または一級アミド基を表す。)
本発明に係る製造方法において、上記Ym-は、CO2-、SO2-、Cl、またはRCOO(Rは、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基)であることが好ましい。

【0065】
本発明に係る製造方法において、上記Ym-は、CO2-またはCHCOOであることがより好ましい。

【0066】
本発明に係る製造方法において、上記Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオンまたはメレミウムイオンであることが好ましい。

【0067】
本発明に係る製造方法において、上記化合物におけるXは、グアニジウムイオンであることがより好ましい。

【0068】
本発明に係る製造方法において、上記基材は、ガラス、石英ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)ガラス、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラス、シリコン、グラファイト、またはグラッシーカーボンの基板であることが好ましい。

【0069】
本発明に係る製造方法において、上記化合物および基材を300~700℃で加熱することが好ましい。

【0070】
本発明はまた、上記の製造方法によって製造されたg-Cフィルムを提供する。

【0071】
本発明はまた、上記g-Cフィルムが表面に固定化されている基材を提供する。

【0072】
本発明はまた、上記g-Cフィルムが表面に固定化されている導電性基板を提供する。

【0073】
本発明はまた、上記g-Cフィルムを水に浸漬し、光を照射することによって水素を製造する方法を提供する。

【0074】
本発明はまた、XCO2-またはXCHCOOで表される化合物(Xは、グアニジウムイオン、メラミニウムイオン、メラミウムイオン、メレミウムイオン、上記式(I)で示されるグアニジン誘導体イオン、または上記式(II)で示されるグアニジン誘導体イオンである)を原料として加熱し、重合させてグラファイト状窒化炭素を生成させる、g-Cの製造方法を提供する。

【0075】
本発明に係るg-Cの製造方法において、上記Xは、グアニジウムイオンであることが好ましい。

【0076】
本発明はまた、単層または多層のシート構造を有するg-Cフィルムを提供する。

【0077】
上記シート構造は、メレム構造単位が二次元方向に架橋されたシート構造であることが好ましい。

【0078】
本発明はまた、メレム構造単位が二次元方向に架橋されたシート構造を有するg-Cフィルムであって、面外X線回折においてシート間距離に由来するピークのみが得られるg-Cフィルムを提供する。

【0079】
上記シート間距離は、3.17Åから3.26Åの範囲であることが好ましい。

【0080】
本発明はまた、0.2Vの定電圧を印加しながら420nm以上の可視光を照射した場合の光電流が0.8μA/cm2以上であるg-Cフィルムを提供する。

【0081】
本発明はまた、透明性を有するg-Cフィルムを提供する。

【0082】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2012-280283号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。さらに本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【実施例】
【0083】
〔実施例1〕g-Cフィルムの作製
図1に概略が示されている装置を用いてg-Cフィルムを作製した。グアニジン炭酸塩(3.0 g,16.7 mmol)をパイレックス(登録商標)製試験管(35 mL)の底に敷き詰め、試験管の中間に基板をアルミホイルの土台上に設置した。基板として、ガラス、石英ガラス、ITOガラス、FTOガラス、グラファイト(HOPG基板)、およびSi基板を用いた。チューブ型炉(KOYO KTF035N1)を用いて、10℃/minで昇温し、空気中、550℃で2時間加熱した。加熱終了後、室温まで自然放冷したところ、各基板上に黄色のフィルムを得た。これらのフィルムを用いて以下の試験(試験例1~10)を行った。
【実施例】
【0084】
〔試験例1〕X線回折測定によるg-Cフィルムの構造決定
ガラス基板上に作製したフィルムを純水にしばらく浸し、遊離したフィルムを回収し、X線回折測定(装置名:BL45XU in SPring-8 with R-AXIS IV++)を行った。また、比較として粉末のg-CのX線回折測定を同様に行った。なお、粉末のg-Cは、実施例1のフィルム作製時に試験管の底に生成したものである。得られたX線回折パターンを図2の(a)に示す。また、ピークの帰属を図2の(b)に示す。
【実施例】
【0085】
斜方晶(a=12.48516Å,b=10.90106Å,c=8.69150Å)の回折パターンが得られた。フィルムのX線回折パターンでは、粉末のg-Cと同じ波数にピークが現れた。
【実施例】
【0086】
〔試験例2〕IRスペクトル測定によるg-Cフィルムの構造決定
ガラス基板上に作製したフィルムを純水にしばらく浸し、遊離したフィルムを70℃で4時間乾燥したものを試料として用い、IRスペクトルを測定した(装置名:フーリエ変換赤外分光光度計、型番:FT/IR-4100)。また、比較として粉末のg-CのIRスペクトルを同様に測定した。得られたIRスペクトルを図3に示す。
【実施例】
【0087】
フィルムのIRスペクトルでは、粉末のg-Cと同様に810 cm-1にトリアジン、ヘプタジン骨格に特徴的なピーク、1700~1000 cm-1にC-N結合に由来するピーク、3500~3000 cm-1に末端のアミノ基に由来するピークが現れた。試験例1および2の結果から、フィルムが粉末のg-Cと同様の構造を保持することがわかった。
【実施例】
【0088】
〔試験例3〕X線光電子分光スペクトル測定によるg-Cフィルムの構造決定
n-Si基板上に形成したフィルムのX線光電子分光スペクトルを測定した(装置名:高性能X線光電子分光装置、型番:ESCALAB 250)。X線光電子分光スペクトルを図4に示す。図4の(a)はN 1sの範囲のスペクトル、図4の(b)はC 1sの範囲のスペクトルを示す。
【実施例】
【0089】
N 1sの範囲のスペクトルは4つのピークに分離した。ピークAがメレム骨格のsp2窒素、ピークBが単結合窒素(N-(C)3)、ピークCが未反応 -NH2の窒素、ピークDが末端に形成したシアノ基の窒素である。C 1sの範囲のスペクトルは4つのピークに分離した。ピークIがsp2炭素(C-C)、ピークIIがメレム骨格のsp2炭素(N-C=N)、ピークIIIが未反応-NH2に結合したメレム骨格の炭素、ピークIVがシアノ基の炭素である。この結果は、形成したg-Cフィルムがメレム骨格をユニットとした構造であることを示す。
【実施例】
【0090】
〔試験例4〕基板上に形成したg-Cフィルムの面外X線回折
n-Si基板、ガラス基板、およびFTOガラス基板上に形成したg-Cフィルムの面外X線回折パターンを図5に示す。
【実施例】
【0091】
メレム骨格間に由来する反射ピーク(2θ=12.5°)は、面外X線回折で観測できなかった。一方、基板の種類に関係なくπ-πスタック間(d=0.32 nm)に相当するピーク(2θ=27.7°)が得られた。これは、πスタックが基板に対して平行に重なり、g-Cの二次元シートが基板に対して水平に形成されていることを示す。また、p-Si基板、石英ガラス基板、およびグラファイト基板上でも同様の結果が得られ、基板に対して常に平行配向させることができた。
【実施例】
【0092】
〔試験例5〕走査型電子顕微鏡によるg-Cフィルムの観察
走査型電子顕微鏡(装置名:電界放射型電子顕微鏡、型番:JSM-6330F)を用いて、基板上に形成したg-Cフィルムを観察した。g-Cフィルムの表面観察像および断面観察像を図6に示す((a)ガラス基板・表面、(b)n-Si基板・表面、(c)FTOガラス基板・表面、(d)ガラス基板・断面、(e)n-Si基板・断面、(f)FTOガラス基板・断面)。
【実施例】
【0093】
表面観察により、n-Si基板およびFTOガラス基板上では100~400 nmサイズのドメインが、ガラス基板上では1~2μmサイズのドメインが形成されていることが確認できた。X線回折の結果と合わせると、ドメイン中にg-Cシートを形成していると推測できる。また、断面観察により、n-Si基板およびFTOガラス基板上では厚さ100~200 nmの膜が、ガラス基板上では1μm前後の膜が形成されていることがわかった。ドメイン形成は光触媒として用いる場合、表面積が増加するという点で有利である。
【実施例】
【0094】
〔試験例6〕g-Cフィルムの光伝導度
ガラス基板上のフィルムを純水に2日間浸すことでゆっくりと遊離させ、石英ガラス基板に移し、試料を作製した。フィルムの光伝導度をフラッシュフォトリシス時間分解マイクロ波伝導度測定(装置名:光励起・時間分解マイクロ波伝導度装置)により検討した。測定は、励起波長=420 nm、励起光強度=5.4×1015photons cm-2pulse-1の条件で行った。測定結果を図7に示す。
【実施例】
【0095】
g-Cフィルムの光伝導度は、粉末のg-Cよりも2倍以上大きくなった。また、基板に対して平行方向の光伝導度は、垂直方向に比べ9.8倍大きくなった。これは、g-Cシートが基板に対して平行に広がっているため、平行方向が高い伝導度(1.64×10-4 cm2 V-1s-1)を示すと考えられる。高い光伝導度は、キャリアの失活を抑制するという点で、光触媒および太陽電池材料として有利である。
【実施例】
【0096】
〔試験例7〕g-Cフィルムの拡散反射スペクトル
n-Si基板上に作製したフィルムを純水に浸し、遊離したフィルムを回収し、拡散反射スペクトルを測定した(装置名:紫外可視近赤外分光光度計+積分球ユニット、型番:V-670+ ISN-723)。また、比較として粉末のg-Cの拡散反射スペクトルを同様に測定した。得られた拡散反射スペクトルを図8に示す。
【実施例】
【0097】
g-Cフィルムおよび粉末の光学ギャップは、それぞれ、2.85 eV、2.72 eVとなり、フィルムの光学ギャップの方が大きいことがわかった。
【実施例】
【0098】
〔試験例8〕g-Cフィルムのエネルギーレベルの同定
n-Si基板上に作製したg-Cフィルムの電子物性を、紫外光電子スペクトル、および逆光電子スペクトル測定によって評価した(装置名:紫外光電子分光分析装置、型番:EA125)。図9の(a)に紫外光電子スペクトル、および逆光電子スペクトルを示す。また、図9の(b)にg-Cフィルムのエネルギーダイアグラムを示す。
【実施例】
【0099】
紫外光電子スペクトルでは4.7 eV付近に、逆光電子スペクトルでは-2.0 eV付近に、ショルダーが観測された。これらは二次元に広がったg-Cのπ軌道に由来するエネルギー準位に帰属できる。また、紫外光電子分光スペクトルでは低束縛エネルギー側にスペクトルの裾が観測され、その立ち上がりが1.63 eVと求まった。一方、逆光電子分光スペクトルの立ち上がりは、-1.2 eVであった。二次電子領域の立ち上がりからフェルミ準
位が4.47 eVと求まり、イオン化ポテンシャル、電子親和力、バンドギャップは、それぞれ、6.10 eV、3.3 eV、2.8 eVとなった。粉末のイオン化ポテンシャルを大気中光電子分光測定より調べたところ、6.10 eVであったため、フィルムの結果とよい一致を示した。また、光電子分光から求めたバンドギャップは、拡散反射スペクトルから求めた光学ギャップとよく対応していた。
【実施例】
【0100】
また、g-Cフィルムの伝導帯(-3.3 eV)は、プロトンの還元電位(-4.44 eV under vacuum)よりも高い還元力を有しており、水分解による水素発生触媒としての条件を満たしていることが確認された。
【実施例】
【0101】
〔試験例9〕g-Cフィルムの光応答性
g-Cフィルムの光応答性を、図10に概略が示されている光電極セルを用いて評価した。FTOガラス基板にg-Cフィルムを製膜(サイズ:20 mm×20 mm)し、測定に用いた。対向電極として白金(Pt)、電解質として0.1 M 硫酸ナトリウム、pH緩衝液として0.025 M リン酸水素カリウム,0.025 M リン酸水素ナトリウム水溶液を用いた。g-Cフィルムと対向電極とはイオン交換膜を用いて隔離されている。光源として300 Wキセノンランプを使用し、> 420 nmの可視光を照射した。また、電圧を-0.7~0.3Vの間で走引(走引速度:20 mV/s)し、光電流を測定した。また、定電圧(0.2 V)を印加しながら、> 420 nmの可視光を照射した。結果を図11に示す。図11の(a)はg-Cフィルムの電流-電圧特性を示す。図11の(b)は0.2 Vにおける光電流安定
性を示す。
【実施例】
【0102】
g-Cフィルムは犠牲剤を用いることなく可視光下で光電流を検出した。光を照射すると直ちに電流値が増加し、光を遮断すると元の値へ戻った。また、1時間以上光を照射しても電流値は減少しなかったため、g-Cフィルムは光に対して安定であることがわかった。光安定性の高い材料は、光触媒および太陽電池に用いる上で有利である。
【実施例】
【0103】
また、定電圧(0.2 V)を印加しながら > 420 nm の可視光を照射したところ、約1μA/cm2の光電流を観測した。一方、Wangらは、g-C粉末をITOガラス基板に塗布した試料の光応答性を確認している(参考文献:Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 3356-3359)。Wangらの実験では、電解質に硫酸ナトリウムを用い、定電圧(0.3 V)下における電流値は約0.14μA/cm2であったことから、g-Cフィルムは粉末に比べ高い光電流を示すことがわかった。
【実施例】
【0104】
〔試験例10〕水素発生挙動
ガラス基板およびp-Si基板上に形成したg-Cフィルムの水素発生挙動を調べた。ホール犠牲剤として10 vol% トリエタノールアミン、助触媒として0.5 wt% Ptを用い、水中でg-Cフィルムにキセノンランプ(> 420 nm)の光を照射したところ、フィルム表面に気泡が発生した。発生した気体をガスクロマトグラフを用いて確認したところ、水素であることがわかった。6時間光を照射したg-Cフィルムによる水素発生量は、ガラス基板では0.023μmol、p-Si基板では0.017μmolであった。
【実施例】
【0105】
〔実施例2〕g-Cフィルムの作製
グアニジン硫酸塩(3.0 g)をパイレックス(登録商標)製試験管(35 mL)に入れ、チューブ型炉(KOYO KTF035N1)を用いて、10℃/minで昇温し、空気中、550℃で2時間加熱した。加熱終了後、室温まで自然放冷したところ、試験管の内壁に一部フィルム化した部分を確認することができた。
【実施例】
【0106】
〔実施例3〕g-Cフィルムの作製
グアニジン塩酸塩(3.0 g)をパイレックス(登録商標)製試験管(35 mL)に入れ、チューブ型炉(KOYO KTF035N1)を用いて、10℃/minで昇温し、空気中、550℃で2時間加熱した。加熱終了後、室温まで自然放冷したところ、試験管の内壁に一部フィルム化した部分を確認することができた。
【実施例】
【0107】
〔参考例1〕熱重量-示差熱測定(TG-DTA)
熱重量-示差熱測定(SII Nanotechnology Inc. EXSTAR TG/DTA7300)により、グアニジン炭酸塩の温度変化に伴う反応挙動を調べた。測定条件は、大気下、昇温速度:10℃/minであった。
【実施例】
【0108】
その結果、192℃で54.3 %の大きな重量減少、199℃に大きな吸熱ピークが得られた。283℃で32.6 %の重量減少、307℃に吸熱ピークが確認された。403℃および520℃で重量減少を生じ、570℃で100 %の重量減少を確認した。また、418℃で小さい吸熱ピーク、451℃で発熱ピークが現れた。そこで、各温度(230℃(a)、330℃(b)、380℃(c)、430℃(d)、490℃(e)、550℃(f)、650℃(g))でグアニジン炭酸塩を加熱し、X線光電子分光、X線回折パターン、IRの測定を行うことにした。
【実施例】
【0109】
〔参考例2〕合成
グアニジン炭酸塩(3.0 g,16.7 mmol)をパイレックス(登録商標)製試験管(35 mL)に入れ、チューブ型炉(KOYO KTF035N1)に入れた。空気中、10℃/minの昇温速度で、各温度(230℃(a)、330℃(b)、380℃(c)、430℃(d)、490℃(e)、550℃(f)、650℃(g))まで昇温した後、それぞれ10分(a、b、c、g)、2時間(d、e、f)加熱した。室温まで自然放冷し、試験管の底に残ったサンプルを回収した。
【実施例】
【0110】
〔参考例3〕IRスペクトル測定
各温度(a~g)において得られた化合物の構造を調べるために、IRスペクトルの測定(JASCO FT/IR-4100)を行った。
【実施例】
【0111】
その結果、230℃および330℃では、s-トリアジン骨格(810 cm-1, 1000 cm-1 ~1700 cm-1)に特徴的なピークが現れた。380℃では、s-ヘプタジン骨格(810 cm-1, 1000 cm-1~1700 cm-1)に特徴的なピークが現れた。430℃および490℃では、メロン(直鎖状メレム)骨格(810 cm-1, 1000 cm-1 ~1700 cm-1)に特徴的なピークが現れた。550℃および650℃では、g-C(810 cm-1, 1000 cm-1 ~1700 cm-1)に特徴的なピークが現れた。カウンターアニオン(CO2-)の存在は特定できなかった。
【実施例】
【0112】
〔参考例4〕拡散反射スペクトル
各温度(a~g)において得られた化合物の光化学物性を調べるために、拡散反射スペクトル(JASCO V-670, JASCO ISN-723)の測定を行った。
【実施例】
【0113】
その結果、230℃および330℃では白色の粉末、380℃ではやや黄色がかった粉末、430℃および490℃では黄色の粉末、550℃ではややくすんだ黄色の粉末、650℃では赤みがかった粉末であった。230℃の反射スペクトルに比べ、330℃では長波長側にシフトし、IRからs-トリアジン骨格であることがわかっている。このことから、330℃では一部メラムに類似した構造を形成していると推測した。また、650℃で加熱した場合、500 nm付近に新たな吸収が現れた。
【実施例】
【0114】
〔参考例5〕X線回折測定
各温度(a~g)において得られた化合物の構造を調べるために、X線回折測定を行った。
【実施例】
【0115】
その結果、550℃および650℃で加熱した場合、X線回折パターンは他のモノマーから合成したg-Cのものと一致した。つまり、550℃以上で加熱したサンプルはg-Cであることがわかった。また、430℃および490℃で出現したシート間に由来する19.8 nm-1付近のピークが、550℃および650℃のものに比べわずかに低角側にシフトしていることから、メロンであることがわかった。
【実施例】
【0116】
〔参考例6〕X線光電子分光スペクトル
プロトンおよびカウンターアニオンの挙動を調べるために、X線光電子分光スペクトル(Thermo Scientific K.K. ESCALAB 250、エネルギー分解能< 0.45 eV FWHM))の測定を行った。
【実施例】
【0117】
C1sおよびO1sの測定の結果から、230℃、330℃および380℃ではカウンターアニオンである炭酸塩が存在していることがわかった。430℃では化合物に含まれているO原子はカウンターアニオンのものとは結合エネルギーが異なるため、化合物中に取り込まれたCO2であると考えた。
【実施例】
【0118】
N1sの測定の結果から、230℃および330℃ではs-トリアジン骨格のN原子が、380℃ではs-ヘプタジン骨格のN原子がプロトン化されていることがわかった。
【実施例】
【0119】
430℃以上で加熱したものではプロトン化されたN原子、カウンターアニオンに由来するO原子のピークが得られなかった。そのため、重合と同時にCO2とH2Oとしてポリマー内から脱離したと考えられる。
【実施例】
【0120】
〔参考例7〕g-Cフィルムの形成メカニズム
参考例1~6の結果から、グアニジン炭酸塩からg-Cが形成される合成ルートを以下のように推測した。
【実施例】
【0121】
【化8】
JP0006371223B2_000009t.gif
【実施例】
【0122】
430℃で加熱した際、試験管にメロンに由来する発光が得られたことから、380℃~430℃の範囲で基板上にフィルムを形成することがわかった。
【実施例】
【0123】
さらに、参考例1のDTAにおいて、418℃に吸熱ピークが得られたことから、この温度でメレミウムイオンの昇華および重合が起きていると推測した。実際、420℃で加熱したところ、基板上フィルムを形成し、メロンに由来する発光が得られた。
【実施例】
【0124】
ジシアンジアミド、尿素、またはチオ尿素等を原料として同様の操作を行ってもフィルムを形成しない。そこで、フィルムの形成にはメレミウムイオンのカチオン性が重要であると推測した。昇華したメレミウムイオンが電荷相互作用によりガラス基板の表面に吸着し、温度が上昇するにつれて重合が基板上で進行し、同時に骨格上のプロトンとカウンターアニオンである炭酸塩が、CO2とH2Oとなって脱離する。さらに基板上にg-Cの層が形成されると、次に昇華されたメレミウムイオンはg-Cシートのπ電子との相互作用によって同様に吸着し、g-Cシートが積層すると考えた。
【実施例】
【0125】
〔実施例4〕窒素雰囲気下でのg-Cフィルムの作製
図12に概略が示されている装置を用いてg-Cフィルムを作製した。グアニジン炭酸塩(3.0 g,16.7 mmol)をパイレックス(登録商標)製試験管(35 mL)の底に敷き詰め、試験管の中間に基板を設置し、アルミホイルで封をした。基板として、ガラス、FTOガラス、およびグラファイト基板(HOPG基板)を用いた。試験管を石英管の中に静置し、窒素ガスをフローしながらチューブ型炉を用いて10℃/minで昇温し、550℃で2時間加熱した。加熱終了後、室温まで自然放冷したところ、各基板上にフィルムを得た。これらのフィルムを用いて以下の試験(試験例11~12)を行った。なお、試験管の底には粉末状のg-Cが生成した。
【実施例】
【0126】
〔試験例11〕IRスペクトル測定によるg-Cフィルムの構造決定
FTOガラス基板上に作製したフィルムをスパチュラで剥がしたものを試料として用い、IRスペクトルを測定した。得られたIRスペクトルを図13に示す。
【実施例】
【0127】
IRスペクトルでは、粉末のg-Cと同様に810 cm-1にトリアジン、ヘプタジン骨格に特徴的なピーク、1700~1000 cm-1にC-N結合に由来するピーク、3500~3000 cm-1に末端のアミノ基に由来するピークが現れた。この結果から、フィルムが粉末のg-Cと同様の構造を保持することがわかった。
【実施例】
【0128】
〔試験例12〕X線光電子分光スペクトル測定によるg-Cフィルムの構造決定
FTOガラス基板上に形成したフィルムのX線光電子分光スペクトルを測定した。X線光電子分光スペクトルを図14に示す。図14の(a)はN 1sの範囲のスペクトル、図14の(b)はC 1sの範囲のスペクトルを示す。
【実施例】
【0129】
N 1sの範囲のスペクトルは3つのピークに分離した。ピークAがメレム骨格のsp2窒素、ピークBが単結合窒素(N-(C)3)、ピークCが未反応 -NH2の窒素である。C 1sの範囲のスペクトルは2つのピークに分離した。ピークIがsp2炭素(C-C)、ピークIIがメレム骨格のsp2炭素(N-C=N)である。この結果は、形成したg-Cフィルムがメレム骨格をユニットとした構造であることを示す。
【実施例】
【0130】
〔実施例5〕g-Cフィルムの作製
グアニジン酢酸塩(0.5 g,4.2 mmol)をパイレックス(登録商標)製試験管(35 mL)の底に敷き詰め、試験管の中間に基板をアルミホイルの土台上に設置した(図1を参照)。基板として、ガラス、グラファイト、およびSi基板を用いた。チューブ型炉(KOYO KTF035N1)を用いて、10℃/minで昇温し、空気中、550℃で2時間加熱した。加熱終了後、室温まで自然放冷したところ、各基板上に赤色のフィルムを得た。これらのフィルムを用いて以下の試験(試験例13)を行った。
【実施例】
【0131】
〔試験例13〕X線光電子分光スペクトル測定およびIRスペクトル測定によるg-Cフィルムの構造決定
n-Si基板上に形成したフィルムのX線光電子分光スペクトルを測定した。X線光電子分光スペクトルを図15に示す。図15の(a)はN 1sの範囲のスペクトル、図15の(b)はC 1sの範囲のスペクトル、図15の(c)はO 1sの範囲のスペクトルを示す。
【実施例】
【0132】
N 1sの範囲のスペクトルは4つのピークに分離した。ピークAがメレム骨格のsp2窒素、ピークBが単結合窒素(N-(C)3)、ピークCが未反応 -NH2の窒素、ピークDが末端に形成したシアノ基の窒素である。C 1sの範囲のスペクトルは4つのピークに分離した。ピークIがsp2炭素(C-C)、ピークIIがメレム骨格のsp2炭素(N-C=N)、ピークIIIが未反応-NH2に結合したメレム骨格の炭素、ピークIVがシアノ基の炭素、ピークVがC-Oの炭素である。O 1sの範囲のスペクトルは2つのピークに分離した。ピーク1がN-C-Oの酸素、ピーク2が吸着した酸素分子である。
【実施例】
【0133】
また、得られたIRスペクトルを図16に示す。グアニジン炭酸塩の場合と比較すると、グアニジン酢酸塩の場合では、1421 cm-1付近および1254 cm-1付近に、酸素ドープによると思われるピークのシフトが確認された。これらの結果から、グアニジン酢酸塩の場合では、メレム骨格をユニットとした構造であるが、一部酸化され酸素ドープされていることが示唆された。
【実施例】
【0134】
〔実施例6〕フリースタンディングフィルムの作製
実施例1と同様の方法でガラス基板上に作製したフィルムを純水にしばらく浸し、遊離したフィルムをグラファイト基板上に転写し、50℃で5分間乾燥することにより、目的のフリースタンディングフィルムが得られた。
【実施例】
【0135】
〔実施例7〕g-Cフィルムの転写
実施例1と同様の方法でガラス基板上に作製したg-Cフィルム上に、0.1 w%のCYTOP(登録商標)溶液を1000rpmで10秒間スピンコートし、80℃で1時間、次いで200℃で1時間加熱した。その後、純水に浸すことによってg-Cフィルムをガラス基板から剥離し、CYTOPポリマーに転写されたg-Cフィルムを得た。
【実施例】
【0136】
〔実施例8〕g-Cフィルムの転写
実施例1と同様の方法でグラッシーカーボン上に作製したg-Cフィルム上に、エポキシ樹脂の原料を塗布した。重合が進行した後、樹脂を基板から剥がすことによって、樹脂に転写されたg-Cフィルムを得た。
【実施例】
【0137】
〔試験例14〕g-Cフィルムの光応答性
g-Cフィルムの光応答性を、光電極セルを用いて評価した。実施例4と同様の方法でグラファイト基板上にグアニジン炭酸塩を用いてg-Cフィルムを製膜したもの、および実施例5と同様の方法でグラファイト基板上にグアニジン酢酸塩を用いてg-Cフィルムを製膜し、それぞれ測定に用いた。対向電極として白金(Pt)、電解質として0.1 M 硫酸ナトリウム、pH緩衝液として0.025 M リン酸水素カリウム,0.025 M リン酸水素ナトリウム水溶液を用いた。光源として300 Wキセノンランプを使用し、λ > 300 nmの光を照射した。また、電圧を0 V vs Ag/AgClとし、光電流を測定した。結果を図17に示す。
【実施例】
【0138】
どちらを原料とした場合であっても、g-Cフィルムは犠牲剤を用いることなく光電流を検出した。また、グアニジン炭酸塩を原料とした場合と、グアニジン酢酸塩を原料とした場合とでは、電流の流れる向きが逆であることがわかった。また、実施例1と同様の方法でグアニジン炭酸塩を用いてg-Cフィルムを製膜した場合には、実施例4と同様の方法でグラファイト基板上にグアニジン炭酸塩を用いてg-Cフィルムを製膜したものと同様の結果を得ている(図は省略している)。これらの結果は、カウンターアニオンを変えることによって物性をコントロールできることを示唆している。
【実施例】
【0139】
〔実施例9〕g-Cフィルムの作製
グアニジン炭酸塩(2.0 g,11.1 mmol)を用いて、実施例1と同様の方法でg-Cフィルムを作製したところ、各基板上に青色のフィルムを得た。
【実施例】
【0140】
このように、膜厚を変えることによってフィルムの色を変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、g-Cフィルムの製造に利用することができる。本発明により製造されたg-Cフィルムは、例えば、水の光分解によって水素を発生させる光触媒として利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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【図17】
16