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明細書 :内視鏡システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-033567 (P2018-033567A)
公開日 平成30年3月8日(2018.3.8)
発明の名称または考案の名称 内視鏡システム
国際特許分類 A61B   1/00        (2006.01)
A61B   1/04        (2006.01)
A61B   1/06        (2006.01)
FI A61B 1/00 300D
A61B 1/04 370
A61B 1/06 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2016-167685 (P2016-167685)
出願日 平成28年8月30日(2016.8.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り ・発行者名 :東北地区若手研究者研究発表会事務局 刊行物名 :平成28年東北地区若手研究者研究発表会 「音・光・電波・エネルギー・システムとその応用」 講演資料 発行年月日:平成28年3月1日 ・集会名:平成28年東北地区若手研究者研究発表会 「音・光・電波・エネルギー・システムとその応用」 開催日:平成28年3月1日 ・発行者名 :一般社団法人 レーザー学会 研究委員会 刊行物名 :レーザー学会第493回研究会報告 発行年月日:平成28年8月5日 ・集会名:レーザー学会 第493回研究会 開催日:平成28年8月5日
発明者または考案者 【氏名】片桐 崇史
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095359、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 篤
【識別番号】100143834、【弁理士】、【氏名又は名称】楠 修二
審査請求 未請求
テーマコード 4C161
Fターム 4C161BB02
4C161CC06
4C161LL02
4C161NN01
4C161NN05
4C161QQ04
4C161QQ09
4C161RR17
4C161RR30
4C161SS21
4C161WW17
要約 【課題】挿入部の外径を細く維持したまま、通常観察画像の画質を劣化させることなく、蛍光などの発光のイメージングを行うことができる内視鏡システムを提供する。
【解決手段】光照射手段が、マルチモードファイバから成り、先端から励起光を観察対象1に照射する光ファイバ12と、光ファイバ12への励起光の入射角を変化させて、励起光の照射パターンを変化させる照射パターン制御部14とを有している。反射光取得手段が、内視鏡カメラ21を有し、観察対象1からの励起光の反射光を受光して、その反射光データを取得する。発光取得手段が、励起光の照射により励起された観察対象1からの蛍光を光ファイバ12により受光して、その蛍光データを取得する。発光分布取得手段17が、複数の照射パターンに対応する複数の反射光データと複数の蛍光データとに基づいて、観察対象1での蛍光の強度分布を求める。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
励起光を観察対象に照射するとともに、その励起光の照射パターンを変化可能に設けられた光照射手段と、
前記観察対象からの前記励起光の反射光を受光して、その反射光データを取得するよう設けられた反射光取得手段と、
前記励起光の照射により励起された前記観察対象からの発光を受光して、その発光データを取得するよう設けられた発光取得手段と、
前記光照射手段により前記照射パターンを変化させて前記励起光を照射したときの、複数の照射パターンに対応する前記反射光取得手段で取得された複数の反射光データと前記発光取得手段で取得された複数の発光データとに基づいて、前記観察対象での前記発光の強度分布を求める発光分布取得手段とを、
有することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記励起光の照射により励起される前記発光は、蛍光であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記光照射手段は、先端から前記励起光を照射する光ファイバと、前記照射パターンを変化させる照射パターン制御部とを有することを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記光ファイバは、マルチモードファイバまたはファイババンドルから成り、
前記照射パターン制御部は、前記光ファイバへの前記励起光の入射角、前記光ファイバへの前記励起光の入射位置、前記光ファイバへ入射する前記励起光の位相、前記光ファイバへの前記励起光の入射パターン、または前記光ファイバの曲げ形状を変化させることにより前記照射パターンを変化させるよう構成されていることを
特徴とする請求項3記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記発光取得手段は、前記光照射手段の前記光ファイバにより前記観察対象からの前記発光を受光するよう構成されていることを請求項3または4記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記光ファイバは内視鏡チャネルに搭載されていることを請求項3乃至5のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記光ファイバはライトガイドファイバから成ることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記反射光取得手段は内視鏡カメラから成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の内視鏡診断・治療技術として、蛍光などの発光を利用したイメージング法が注目を集めている。これは、例えば、光感受性物質を腫瘍に特異的に集積させる5-ALA(5-アミノレブリン酸)などの薬剤を投与し、患部を発光させて可視化することにより、内視鏡を利用した低侵襲治療・診断の精度を向上させるものである。このイメージング技術は、熟練を必要としないため、客観的な診断が可能となり、医師の研修期間も短縮することができる。また、癌などの患部と、神経や血管とを識別するためのマルチカラー化や、スクリーニング検査にも使用可能な高感度化への発展も期待できる。
【0003】
従来、このようなイメージング法に利用可能な装置として、白色光と、蛍光物質を励起するための励起光とを含む光を観察対象に同時に照射し、観察対象で反射した白色光を白色光撮像素子で受光し、観察対象が発した蛍光を蛍光撮像素子で受光する蛍光内視鏡装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、蛍光イメージを得る方法として、レーザー光(励起光)を、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)により照射パターンを変化させながら観察対象に照射し、各照射パターンにより得られる蛍光強度を測定することにより、観察対象の蛍光イメージを求める方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
この非特許文献1の方法によれば、i番目(i=1,2,・・・,M)の照射パターンの、画素(位置)j(j=1,2,・・・,N)での励起光強度をAij、i番目の照射パターンにより得られた蛍光強度をb、観察対象の画素(位置)jでの相対蛍光強度をxとすると、
【数1】
JP2018033567A_000003t.gif
の関係が得られる。この(1)式を利用することにより、各xが得られ、蛍光イメージを求めることができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第5506472号公報
【0007】

【非特許文献1】V. Studer, et al., “Compressive Fluorescence Microscopy for Biological and Hyperspectral Imaging”, in Proceedings of the National Academy of Sciences, 2012, 109(26), E1679-E1687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の蛍光内視鏡装置では、観察対象から戻ってくる白色光と蛍光とを分けるための光路分割手段や可変分光素子を、白色光撮像素子や蛍光撮像素子の前段に配置する必要があるため、内視鏡先端の挿入部が太くなるという課題があった。また、光路分割手段により、白色光の一部が蛍光撮像素子側に分割されるため、白色光撮像素子で得られる白色光による通常観察画像の画質が劣化してしまうという課題もあった。
【0009】
また、非特許文献1に記載の蛍光イメージング法は、対物レンズと観察対象との位置関係が固定されているため、内視鏡のような観察対象の表面形状が不確定なものや、観察対象が動いているものには適用できないという課題があった。また、非特許文献1に記載の蛍光イメージング法を内視鏡に適用しようとした場合、DMDを内視鏡先端部に配置する必要があるため、内視鏡先端の挿入部が太くなるという課題があった。
【0010】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、挿入部の外径を細く維持したまま、通常観察画像の画質を劣化させることなく、蛍光などの発光のイメージングを行うことができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡システムは、励起光を観察対象に照射するとともに、その励起光の照射パターンを変化可能に設けられた光照射手段と、前記観察対象からの前記励起光の反射光を受光して、その反射光データを取得するよう設けられた反射光取得手段と、前記励起光の照射により励起された前記観察対象からの発光を受光して、その発光データを取得するよう設けられた発光取得手段と、前記光照射手段により前記照射パターンを変化させて前記励起光を照射したときの、複数の照射パターンに対応する前記反射光取得手段で取得された複数の反射光データと前記発光取得手段で取得された複数の発光データとに基づいて、前記観察対象での前記発光の強度分布を求める発光分布取得手段とを、有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る内視鏡システムは、以下のようにして使用される。まず、光照射手段により、照射パターンを変化させながら、励起光を観察対象に照射する。反射光取得手段により、観察対象からの励起光の反射光を受光し、複数の照射パターンに対応して、複数の反射光データを取得する。同時に、発光取得手段により、励起光の照射により励起された観察対象からの発光を受光し、複数の照射パターンに対応して、複数の発光データを取得する。このように、本発明に係る内視鏡システムは、反射光と発光とを別々に受光することができる。このため、反射光取得手段として内視鏡に搭載されている内視鏡カメラを利用し、光照射手段や発光取得手段として、細径の光ファイバ等を利用することができる。これにより、挿入部の外径を太くすることなく、細く維持したまま、内視鏡カメラによる通常観察画像の画質の劣化も防ぐことができる。
【0013】
各照射パターンに対応して各反射光データと各発光データとを取得したならば、その各データに基づいて、発光分布取得手段により、観察対象での発光の強度分布を求める。このとき、例えば、非特許文献1に記載の解析方法により発光の強度分布を求めることができる。すなわち、非特許文献1と同様に、反射光取得手段で取得した各反射光データ(各反射光強度)を(M×N)の行列Aとし、発光取得手段で取得した各発光データ(各発光強度)を(M×1)の行列bとし、観察対象の各位置での相対発光強度を(N×1)の行列xとすると、これらの関係は(1)式と全く同じ形の(2)式で表される。
【0014】
【数2】
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【0015】
発光分布取得手段により、各反射光データ(行列A)および各発光データ(行列b)から、(2)式を用いて、観察対象の各位置での相対発光強度(行列x)を求めることができる。こうして、本発明に係る内視鏡システムは、挿入部の外径を細く維持したまま、通常観察画像の画質を劣化させることなく、発光のイメージングを行うことができる。
【0016】
本発明に係る内視鏡システムは、非特許文献1のように、固定された観察対象上に投影しようとする照射パターンの理想値を利用するのではなく、各照射パターンに対応した観察対象からの励起光の反射光を受光して利用するため、体内組織のように表面形状が不確定な観察対象や、動いている観察対象であっても、精度良く発光のイメージングを行うことができる。
【0017】
本発明に係る内視鏡システムは、(2)式を利用して相対発光強度を求める場合、例えば最小二乗法を利用して、(N×1)行列xを求めることができる。また、(2)式の連立方程式を解いて相対発光強度を精度良く求めるためには、照射パターンの数Mをできるだけ多くした方がよいが、測定時間や解析時間を考慮すると、実用上、照射パターンの数Mは少ない方が好ましい。例えば、求める観察対象の画素(位置)の数Nと、照射パターンの数Mとの関係は、M×100≧Nであることが好ましい。
【0018】
従来の内視鏡では、挿入部の太さや通常画像の画質を維持したまま、蛍光観察等の機能拡張を実現することは困難であったが、本発明に係る内視鏡システムによれば、挿入部の太さや通常画像の画質を維持したまま、蛍光などの発光のイメージング機能を付加することができる。また、挿入部の太さや通常画像の画質を維持したまま、イメージング機能のマルチカラー化や高感度化を図ることもできる。
【0019】
本発明に係る内視鏡システムは、内視鏡の挿入部の外径を細く維持するために、発光取得手段の発光データを取得する部分や発光分布取得手段を、内視鏡の先端側の挿入部ではなく、内視鏡の手元側に配置することが好ましい。
【0020】
本発明に係る内視鏡システムで、前記励起光の照射により励起される前記発光は、蛍光であることが好ましい。この場合、観察対象の蛍光強度分布を得ることができ、蛍光イメージングを行うことができる。
【0021】
本発明に係る内視鏡システムで、前記光照射手段は、先端から前記励起光を照射する光ファイバと、前記照射パターンを変化させる照射パターン制御部とを有することが好ましい。また、この場合、前記発光取得手段は、前記光照射手段の前記光ファイバにより前記観察対象からの前記発光を受光するよう構成されていることが好ましい。この場合、既存の内視鏡に光ファイバを埋め込むだけで、光照射手段および発光取得手段の受光部を構成することができ、内視鏡の挿入部の外径を細く維持することができる。また、その光ファイバを内視鏡チャネルに搭載したり、その光ファイバとして内視鏡に搭載されているライトガイドファイバを利用したりすることにより、光ファイバを埋め込む必要もなく、容易に構成することができる。
【0022】
また、この場合、前記光ファイバは、単一のマルチモードファイバまたは、複数の光ファイバを束状にしたファイババンドルから成り、前記照射パターン制御部は、前記光ファイバへの前記励起光の入射角、前記光ファイバへの前記励起光の入射位置、前記光ファイバへ入射する前記励起光の位相、前記光ファイバへの前記励起光の入射パターン、または前記光ファイバの曲げ形状を変化させることにより前記照射パターンを変化させるよう構成されていることが好ましい。これにより、照射パターンを容易に変化させることができる。また、照射パターン制御部を内視鏡の手元側に配置することが可能となり、内視鏡先端の挿入部を細く維持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、挿入部の外径を細く維持したまま、通常観察画像の画質を劣化させることなく、蛍光などの発光のイメージングを行うことができる内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の内視鏡システムを示すブロック構成図である。
【図2】本発明の実施の形態の内視鏡システムの、マルチモードファイバ(MMF)により生成した照射パターンによる画像再構成の実現可能性を確認するシミュレーションにおいて、(a)使用した実験装置を示す全体構成図、(b)MMFにより得られた照射パターンの一例である。
【図3】図2に示すシミュレーションにおける、照射パターンの一例、照射パターンの枚数Mが、5、25、100、2500のときに再構成された蛍光分布、与えられた蛍光分布の仮想モデルである。
【図4】図2に示すシミュレーションにおける、照射パターンの枚数Mが、25、50、100、1000、2500のときの、再構成の際の反復計算の回数と正規化平均二乗誤差(NMSE)との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態の内視鏡システムの、原理を確認するための蛍光イメージング実験に使用した実験装置を示す全体構成図である。
【図6】図5に示す実験装置を用いた、単色の蛍光イメージング実験における、(a)蛍光スペクトルの例、(b)2500 個の蛍光強度(蛍光データ)を示すグラフである。
【図7】図5に示す実験装置を用いた、単色の蛍光イメージング実験における、(上段)粗い照射パターンのときの、照射パターンの一例、照射パターンの枚数Mが、10、50、100、2500のときに得られた蛍光分布、励起光の均一照射により得られた蛍光像、(下段)細かい照射パターンのときの、照射パターンの一例、照射パターンの枚数Mが、10、50、100、2500のときに得られた蛍光分布、励起光の均一照射により得られた蛍光像である。
【図8】図5に示す実験装置を用いた、マルチカラーの蛍光イメージング実験における、(a)115 枚目、400 枚目、1880 枚目の照射パターンに対応する蛍光スペクトルの例、(b)115 枚目の照射パターン(反射光画像)、(c)400 枚目の照射パターン(反射光画像)、(d)1880 枚目の照射パターン(反射光画像)である。
【図9】図5に示す実験装置を用いた、マルチカラーの蛍光イメージング実験における、(a)645~665 nm の波長領域で得られた蛍光分布、(b)540~570 nm の波長領域で得られた蛍光分布、(c) (a)と(b)とを合成した蛍光分布である。
【図10】図5に示す実験装置を用いた、生体組織を用いた蛍光イメージング実験における、(a)蛍光スペクトルの例、(b)照射パターン(反射光画像)の一例である。
【図11】図5に示す実験装置を用いた、生体組織を用いた蛍光イメージング実験で得られた蛍光分布である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図11は、本発明の実施の形態の内視鏡システムを示している。
図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡本体11と光ファイバ12と光源13と照射パターン制御部14と結合部15と蛍光検出部16と発光分布取得手段17と表示部18とを有している。

【0026】
内視鏡本体11は、少なくとも通常画像を取得するための内視鏡カメラ21を有している。内視鏡カメラ21は、外部からの光を受ける受光レンズ21aと、受光レンズ21aで受けた光から通常画像の画像データを取得する画像検出部21bと、画像検出部21bから内視鏡本体11の内部を通って手元側まで伸びる伝送ケーブル21cとを有している。伝送ケーブル21cは、画像検出部21bで取得した画像データを伝送可能になっている。

【0027】
光ファイバ12は、マルチモードファイバ(MMF)から成り、内視鏡本体11の長さ方向に沿って、内視鏡本体11の手元側の端面から先端側の端面まで、内視鏡本体11の内部に埋め込まれている。光源13は、励起光としてレーザー光を発光可能に設けられている。照射パターン制御部14は、光源13からの励起光を、結合部15を介して、光ファイバ12の手元側の端面から光ファイバ12に入射可能になっている。照射パターン制御部14は、光ファイバ12への励起光の入射角を変化可能に構成されている。

【0028】
蛍光検出部16は、結合部15を介して、光ファイバ12の手元側の端面から出射される光を受けるようになっている。蛍光検出部16は、受けた光から励起光成分を除去する光学フィルタ22と、光学フィルタ22を通った光から所望の周波数の蛍光成分を検出するための分光器23とを有している。なお、結合部15は、照射パターン制御部14からの光を、光ファイバ12の手元側の端面に導くとともに、光ファイバ12の手元側の端面からの光を、蛍光検出部16に導くよう構成されている。

【0029】
内視鏡システム10は、光源13からの励起光を、光ファイバ12の先端側の端面から観察対象1に照射可能になっている。内視鏡システム10は、照射パターン制御部14により、光ファイバ12への励起光の入射角を変化させることにより、励起光の照射パターンを変化可能になっている。なお、光ファイバ12は、束状にされた複数の光ファイバ、いわゆるファイババンドルから成っていてもよい。また、照射パターン制御部14は、光ファイバ12への励起光の入射位置、光ファイバ12へ入射する励起光の位相、光ファイバ12への励起光の入射パターン、または光ファイバ12の曲げ形状を変化させることにより照射パターンを変化可能になっていてもよい。

【0030】
また、内視鏡システム10は、励起光の照射により励起された観察対象1からの蛍光を、光ファイバ12の先端側の端面で受光して、その蛍光データ(発光データ)を蛍光検出部16で取得可能になっている。なお、内視鏡システム10は、光ファイバ12、光源13、照射パターン制御部14および結合部15が、光照射手段を構成している。また、光ファイバ12、結合部15および蛍光検出部16が、発光取得手段を構成している。

【0031】
また、内視鏡システム10は、内視鏡カメラ21が反射光取得手段を構成しており、内視鏡カメラ21により、観察対象1からの励起光の反射光を受光して、その反射光データを取得可能になっている。

【0032】
発光分布取得手段17は、コンピュータから成り、内視鏡本体11の手元側に配置されている。発光分布取得手段17は、蛍光検出部16と、伝送ケーブル21cの手元側の端部とに接続されている。発光分布取得手段17は、内視鏡カメラ21で取得された反射光データと、蛍光検出部16で取得された蛍光データとを入力するよう構成されている。発光分布取得手段17は、照射パターン制御部14で照射パターンを変化させて励起光を照射したときの、複数の照射パターンに対応する複数の反射光データと複数の発光データとに基づいて、観察対象1での蛍光の強度分布を求めるよう構成されている。具体的な一例では、発光分布取得手段17は、(2)式を利用して、各反射光データ(各反射光強度)を(M×N)行列A、各発光データ(各発光強度)を(M×1)行列b、観察対象1の各位置での相対蛍光強度を(N×1)行列xとし、最小二乗法を用いて行列xを求めるようになっている。

【0033】
表示部18は、モニタから成り、発光分布取得手段17に接続されている。表示部18は、内視鏡カメラ21で取得された反射光画像や反射光データ、蛍光検出部16で取得された蛍光データ、発光分布取得手段17で求められた蛍光強度や蛍光の強度分布などを表示可能になっている。

【0034】
次に、作用について説明する。
内視鏡システム10は、以下のようにして使用される。まず、照射パターン制御部14で照射パターンを変化させながら、光源13からの励起光を、光ファイバ12を通して観察対象1に照射する。内視鏡カメラ21により、観察対象1からの励起光の反射光を受光し、複数の照射パターンに対応した複数の反射光データを取得する。また、励起光の照射により励起された観察対象1からの蛍光を光ファイバ12で受光し、蛍光検出部16で、複数の照射パターンに対応した複数の蛍光データを取得する。このように、内視鏡システム10は、反射光と蛍光とを別々に受光することができる。このため、既存の内視鏡本体11に搭載されている内視鏡カメラ21を利用し、既存の内視鏡本体11に細径の光ファイバ12を埋め込むだけで構成することができる。これにより、挿入部の外径を太くすることなく、細く維持したまま、内視鏡カメラ21による通常観察画像の画質の劣化も防ぐことができる。

【0035】
内視鏡システム10は、各照射パターンに対応した各反射光データと各蛍光データとを取得したならば、その各データに基づいて、発光分布取得手段17により、観察対象1での蛍光の強度分布を求めることができる。こうして、内視鏡システム10は、挿入部の外径を細く維持したまま、通常観察画像の画質を劣化させることなく、蛍光イメージングを行うことができる。

【0036】
従来の内視鏡では、挿入部の太さや通常画像の画質を維持したまま、蛍光観察等の機能拡張を実現することは困難であったが、内視鏡システム10によれば、挿入部の太さや通常画像の画質を維持したまま、蛍光イメージング機能を付加することができる。また、挿入部の太さや通常画像の画質を維持したまま、イメージング機能のマルチカラー化や高感度化も図ることができる。

【0037】
内視鏡システム10は、観察対象上に投影しようとする照射パターンの理想値を利用するのではなく、各照射パターンに対応した観察対象1からの励起光の反射光を受光して利用するため、体内組織のように表面形状が不確定な観察対象1や、動いている観察対象1であっても、精度良く蛍光イメージングを行うことができる。

【0038】
内視鏡システム10は、光源13、照射パターン制御部14、結合部15、蛍光検出部16および発光分布取得手段17が、内視鏡本体11の手元側に配置されているため、内視鏡本体11の挿入部の外径を細く維持することができる。また、内視鏡システム10は、光ファイバ12を内視鏡チャネルに搭載したり、光ファイバ12として内視鏡に搭載されているライトガイドファイバを利用したりすることにより、光ファイバ12を埋め込む必要もなく、容易に構成することができる。なお、内視鏡システム10は、既存の内視鏡の機能と、付加した蛍光イメージング機能とを切り換えて使用可能になっていてもよい。

【0039】
[仮想蛍光モデルによる数値シミュレーション]
マルチモードファイバ(MMF)により生成した照射パターンによる画像再構成の実現可能性を確認するため、仮想の蛍光分布を与えて数値シミュレーションを行った。照射パターンの生成および取得に用いた実験装置の構成を、図2(a)に示す。

【0040】
図2(a)に示すように、内視鏡カメラ21の代わりにCCDカメラ31を用いた。また、照射パターン制御部14に対応するものとしてアクチュエータ32を用い、MMF33の曲げ形状を変化させて照射パターンを変化させた。使用したMMF33は、コア径が 25 μm、NA(開口数)が 0.1、長さが 1 mである。また、光源13に対応するものとして、Nd:YAGレーザー34を用いた。Nd:YAGレーザー34からの励起光として、波長532 nm、出力48 mW の第2高調波(SHG)による励起パルスレーザ光を用いた。

【0041】
図2(a)に示すように、MMF33からの励起光を、観察対象1の磨りガラス1aに照射し、それをCCDカメラ31で撮影した。MMF33の出射端から磨りガラス1aまでの距離は、11 cmである。撮影された反射光の画像が、照射パターンを表しており、その一例を図2(b)に示す。

【0042】
アクチュエータ32によりMMF33の曲率を増加させながら照射パターンを変化させ、2500 枚の画像を取得した。シミュレーションでは、計算に使用する照射パターンの枚数Mを変化させた。使用する各画像を、画素数50×50 ピクセルに圧縮し、M×2500 の行列Aを作成した。シミュレーションでは、まず、仮想の蛍光分布モデル(50×50 ピクセル)として、2500×1の行列xを与え、行列Aと行列xとを(2)式に代入して、M×1の行列bを求めた。次に、コンピュータ35により、求めた行列bと行列Aとを用い、(2)式に基づいて最小二乗法により、蛍光分布の行列xを再構成した。再構成の際には、正規化平均二乗誤差(NMSE: Normalized Mean Squared Error)が最小になるよう反復計算を行った。

【0043】
照射パターンの枚数Mが、5、25、100、2500の場合について再構成された行列xによる蛍光分布を、図3に示す。図3には、照射パターンの一例、および蛍光分布の仮想モデルも示す。また、照射パターンの枚数Mが、25、50、100、1000、2500の場合について、再構成の際の反復計算の回数と正規化平均二乗誤差(NMSE)との関係を、図4に示す。

【0044】
図3に示すように、照射パターンの枚数が画素数と同じとき、MMF33により生成した照射パターンを用いて、高い精度で蛍光分布の仮想モデルを再現できていることが確認できた。また、照射パターンの枚数Mが画素数よりも小さいとき、再構成された蛍光分布の画質は低下しているが、蛍光のおおまかな位置を視認できることが確認された。図3に示す一例では、照射パターンの枚数が25枚(画素数の1/100)でも、蛍光のおおまかな位置が視認できている。

【0045】
また、図4に示すように、照射パターンの枚数Mがいずれの場合であっても、反復計算の回数が増加するのに伴って、NMSEが低下し収束に向かう様子が確認された。また、収束するまでの反復計算の回数は、照射パターンの枚数M(測定回数)におおよそ比例することも確認された。また、照射パターンの枚数M(測定回数)が多いほど、NMSEの収束値が小さくなる、すなわち蛍光分布の画質が向上することが確認された。このことから、短時間で蛍光分布を得る(高速化する)ためには、照射パターンの枚数M(測定回数)を少なくすればよいが、得られる蛍光分布の画質が低下してしまい、反対に、画質が高く高精度な蛍光分布を得るためには、照射パターンの枚数M(測定回数)を多くすればよいが、蛍光分布を得るまでの時間が長くなってしまうことがわかる。

【0046】
[蛍光イメージング実験-その1(単色)]
内視鏡システム10の原理を確認するために、図5に示す装置を用いて実験を行った。図5に示すように、内視鏡カメラ21の代わりにCCDカメラ31を用いた。また、光ファイバ12として、励起光照射用および蛍光検出用の2本のMMF33a,33bを用いた。なお、光ファイバ12は、1本でも励起光照射および蛍光検出が可能であるが、便宜上、2本用いている。励起光照射用のMMF33aには、コア径が 25 μm、NA(開口数)が 0.1、長さが 1 mのもの(以下、「粗い照射パターン生成用MMF」とする)、および、コア径が 600 μm、NAが 0.21、長さが 1 mのもの(以下、「細かい照射パターン生成用MMF」とする)の2種類を用いた。また、蛍光検出用のMMF33bは、コア径が 200 μm、NAが 0.39、長さが 1 mである。

【0047】
照射パターン制御部14に対応するものとしてアクチュエータ32を用い、励起光照射用のMMF33aの曲げ形状を変化させて照射パターンを変化させた。光源13に対応するものとして、Nd:YAGレーザー34を用いた。Nd:YAGレーザー34からの励起光として、波長 532 nm、出力 48 mW の第2高調波(SHG)による励起パルスレーザ光を用いた。実験では、観察対象1として、蛍光波長 560 nm の量子ドットを表面に塗布した磨りガラス1aを用いた。

【0048】
図5に示すように、励起光照射用のMMF33aからの励起光を、磨りガラス1aに照射し、その反射光をCCDカメラ31で撮影した。また、励起光の照射により発生した蛍光を、蛍光検出用のMMF33bにより受光し、励起光成分を光学フィルタ36で除去した後、冷却CCDを有する高感度分光器37により検出した。励起光照射用のMMF33aの出射端および蛍光検出用のMMF33bの受光端から磨りガラス1aまでの距離は、11 cmである。なお、励起光照射用のMMF33aとして、粗い照射パターン生成用MMFおよび細かい照射パターン生成用MMFの2種類を用い、粗さの異なる2種類の照射パターンについて、それぞれ実験を行った。なお、光学フィルタ36および高感度分光器37が、蛍光検出部16に対応している。

【0049】
アクチュエータ32によりMMF33の曲率を増加させながら照射パターンを変化させ、それぞれ2500 個の反射光データおよび蛍光(発光)データを取得した。受光した2500 個の蛍光のうちの3つの蛍光スペクトルを、図6(a)に示す。また、2500 個の蛍光スペクトルをそれぞれ全波長領域で積分して得られた、2500 個の蛍光強度(蛍光データ)を、図6(b)に示す。なお、図6(a)および(b)は、粗い照射パターン生成用MMFを用いたときの結果である。

【0050】
取得した各反射光データ(行列A)と各蛍光データ(行列b)とに基づいて、発光分布取得手段17に対応するコンピュータ35により、(2)式を利用して、磨りガラス1aの各位置での相対蛍光強度(行列x)を求めた。相対蛍光強度は、粗さの異なる2種類の照射パターンのそれぞれについて求め、50×50 ピクセルの蛍光分布として表示部18に対応するモニタ38に表示した。照射パターンが10枚、50枚、100枚、2500枚の場合について求められた蛍光分布を、図7に示す。図7には、粗さの異なる各照射パターン(反射光画像)の一例、および励起光の均一照射により得られた蛍光像も示す。

【0051】
図7に示すように、照射パターンが粗いときには、照射パターンの枚数(M)が 50 枚でも、2500 枚のときと同等の画質が得られており、10 枚でもおおよその位置が視認できることが確認された。これに対し、照射パターンが細かいときには、蛍光を視認可能な画像を得るために、照射パターンの枚数M(測定回数)をより多くする必要があり、少なくとも 100 枚以上は必要であることが確認された。また、照射パターンの枚数が 2500 枚のときを比較すると、照射パターンが細かいときの方が、画像の分解能が高いことが確認された。

【0052】
[蛍光イメージング実験-その2(マルチカラー)]
次に、観察対象1として、蛍光波長 570 nmおよび 650 nm の2種類の量子ドットを表面に塗布した磨りガラス1aを用いて、マルチカラーイメージングの実験を行った。実験には、図5の装置を用いた。また、励起光照射用のMMF33aとして、粗い照射パターン生成用MMFを用いた。

【0053】
アクチュエータ32によりMMF33の曲率を増加させながら照射パターンを変化させ、それぞれ2500 個の反射光データおよび蛍光(発光)データを取得した。受光した2500 個の蛍光のうちの3つの蛍光スペクトルを、図8(a)に示す。また、それぞれの蛍光スペクトルに対応する照射パターン(反射光画像)を、図8(b)~(d)に示す。図8(b)~(d)には、2つの量子ドットの位置を、破線の丸印で示す。図8に示すように、照射パターンに応じて、蛍光スペクトルの形状が大きく変化していることが確認された。

【0054】
2500 個の蛍光スペクトルをそれぞれ、645~665 nm の波長領域(I)、および、540~570 nm の波長領域(II)で積分して、各波長領域での蛍光強度(蛍光データ)を取得した。各波長領域について、取得した各反射光データ(行列A)と各蛍光データ(行列b)とに基づいて、コンピュータ35により、(2)式を利用して、磨りガラス1aの各位置での蛍光強度(行列x)を求めた。相対蛍光強度は、50×50 ピクセルの蛍光分布としてモニタ38に表示した。2500枚の照射パターンを用いて求められた各波長領域の蛍光分布を、図9(a)および(b)に示す。また、それらを合成した蛍光分布を、図9(c)に示す。

【0055】
図9に示すように、波長の異なる2種類の量子ドットを、十分なコントラストでイメージングできていることが確認された。このことから、内視鏡システム10は、マルチカラーイメージングにも有効であるといえる。

【0056】
[生体組織を用いた蛍光イメージング実験]
生体組織での内視鏡システム10の有効性を調べるため、観察対象1として、表面に量子ドットを塗布した皮付きの鶏肉を用いて実験を行った。生体組織では、表面の光の散乱状態は均一ではなく、組織の持つ吸収特性や反射特性により、照射パターンの測定精度に劣化が生じると考えられる。このため、照射パターンの測定精度の劣化が、得られる蛍光分布の画像に与える影響について確認した。

【0057】
実験には、図5の装置を用いた。また、励起光照射用のMMF33として、粗い照射パターン生成用MMFを用いた。アクチュエータ32によりMMF33の曲率を増加させながら照射パターンを変化させ、それぞれ50 個の反射光データおよび蛍光(発光)データを取得した。受光した50 個の蛍光のうちの3つの蛍光スペクトルを図10(a)に、照射パターン(反射光画像)の一例を図10(b)に示す。図10(b)に示すように、鶏肉の組織の表面構造が筋のように照射パターンに重畳していることが確認された(図中の破線の丸印で囲んだ領域参照)。

【0058】
50 個の蛍光スペクトルを全波長領域で積分して、蛍光強度(蛍光データ)を取得した。取得した各反射光データ(行列A)と各蛍光データ(行列b)とに基づいて、コンピュータ35により、(2)式を利用して、鶏肉表面の各位置での相対蛍光強度(行列x)を求めた。相対蛍光強度は、300×300 ピクセルの蛍光分布としてモニタ38に表示した。50 枚の照射パターンを用いて求められた蛍光分布を、図11に示す。

【0059】
図11に示すように、白い筋状の組織の表面構造が、特に量子ドットが塗布された位置周辺において残留しているが(図中の破線の丸印で囲んだ領域参照)、解が発散することなく蛍光分布が得られ、量子ドットの位置を視認できることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
1 観察対象
1a 磨りガラス

10 内視鏡システム
11 内視鏡本体
21 内視鏡カメラ
21a 受光レンズ
21b 画像検出部
21c 伝送ケーブル
12 光ファイバ
13 光源
14 照射パターン制御部
15 結合部
16 蛍光検出部
22 光学フィルタ
23 分光器
17 発光分布取得手段
18 表示部

31 CCDカメラ
32 アクチュエータ
33 MMF(マルチモードファイバ)
33a (励起光照射用の)MMF
33b (蛍光検出用の)MMF
34 Nd:YAGレーザー
35 コンピュータ
36 光学フィルタ
37 高感度分光器
38 モニタ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10