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明細書 :対物レンズの駆動制御方法及び蛍光顕微鏡システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6143098号 (P6143098)
公開番号 特開2015-045684 (P2015-045684A)
登録日 平成29年5月19日(2017.5.19)
発行日 平成29年6月7日(2017.6.7)
公開日 平成27年3月12日(2015.3.12)
発明の名称または考案の名称 対物レンズの駆動制御方法及び蛍光顕微鏡システム
国際特許分類 G02B  21/24        (2006.01)
G02B  21/00        (2006.01)
FI G02B 21/24
G02B 21/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2013-175477 (P2013-175477)
出願日 平成25年8月27日(2013.8.27)
審査請求日 平成28年5月23日(2016.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】中野 明彦
【氏名】市原 昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100120868、【弁理士】、【氏名又は名称】安彦 元
審査官 【審査官】瀬戸 息吹
参考文献・文献 特開平08-068756(JP,A)
特開平04-069069(JP,A)
調査した分野 G02B 19/00 - 21/36
特許請求の範囲 【請求項1】
蛍光顕微鏡に備えられピエゾアクチュエータにより駆動される対物レンズに生じる光軸色収差の補正方法であって、
前記ピエゾアクチュエータに対し、前記対物レンズを観察対象の焦点位置に移動させる変位電圧よりも大きいパルス電圧を、前記対物レンズが前記焦点位置の手前まで移動する所定時間印加する第1工程と、
前記第1工程後に前記変位電圧を前記ピエゾアクチュエータに印加し前記対物レンズを静定させる第2工程と、
を有することを特徴とする対物レンズの駆動制御方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記パルス電圧として前記変位電圧の逓倍の電圧が印加されることを特徴とする請求項1記載の対物レンズの駆動制御方法。
【請求項3】
光源と、
前記光源から発せられる光線を観察対象に導く対物レンズと、
前記対物レンズを光軸方向に駆動するピエゾアクチュエータと、
前記対物レンズを前記観察対象の焦点位置に移動させる変位を生じる変位電圧よりも大きいパルス電圧を、前記対物レンズが前記焦点位置の手前まで移動する所定時間、前記ピエゾアクチュエータに印加した後、前記変位電圧を前記ピゾアクチュエータに印加し前記対物レンズを静定させる駆動部と、
を備えることを特徴とする蛍光顕微鏡システム。
【請求項4】
前記駆動部は前記パルス電圧として前記変位電圧の逓倍の電圧を印加することを特徴とする請求項3記載の蛍光顕微鏡システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡等に用いられる対物レンズの駆動制御方法及びそれを用いた蛍光顕微鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光顕微鏡は、観察対象となる試料から発せられる蛍光を観察する顕微鏡であり、生物学や医学等、様々な分野で用いられている。
【0003】
観察対象が細胞内の蛋白質である場合に蛍光顕微鏡を用いるときは、この蛋白質を蛍光顕微鏡により観察可能とするため、蛍光蛋白質(以下「マーカー」とも言う。)であるGFP(Green Fluorescent Protein)、RFP(Red Fluorescent Protein)、BFP(Blue Fluorescent Protein)等が遺伝子工学的手法や免疫学的手法を用いて観察対象の蛋白質に付加される、いわゆるマーキングが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、蛍光蛋白質の種類に応じた波長の励起光を照射し、その蛍光蛋白質から発せられる蛍光を観察、撮影することで、蛍光蛋白質を介する試料の観察が行われている。励起光の光源としては、レーザー光源(Ar、Ar-Kr、He-Ne、He-Cd、半導体等)、超高圧水銀灯、キセノンランプ、紫外線LED等の光源が用いられている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平11-266883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、生きた細胞内の蛋白質間の相互作用を蛍光顕微鏡により観察する際には、複数の蛋白質がそれぞれ波長の異なる蛍光を発する蛍光蛋白質によりマーキングされる。そして、それぞれの蛍光蛋白質に応じた励起光が照射されることで観察が行われるが、このとき蛍光顕微鏡の対物レンズに生じる光軸色収差が問題となる。
【0007】
光軸色収差とは、レンズの焦点距離が光の波長により異なるため、光の色により像面にずれが生じる現象であり、波長(色)による像面位置の不一致や被写体ブレの原因となっている。特に空間3次元観察においては、顕微鏡の光軸倍率が2乗特性であり、100倍の対物レンズでは光軸焦点が10000倍となってカメラに結像するため、光軸色収差は大きな問題となる。
【0008】
こうした光軸色収差による影響を軽減するため、従来、対物レンズとして十数枚の屈折率の異なるレンズを組み合わせたものを用いることが行われている。しかし、この手法によっても、150~200nmの光軸色収差が残ってしまい、微細な細胞内蛋白質の観察を行う際には大きな影響を及ぼすことになる。
【0009】
そのため、蛍光顕微鏡を用いて細胞内蛋白質を観察する場合には、従来のレンズの組合せによる方法とは異なる新たな光軸色収差の補正方法が必要となる。
【0010】
また、被写体が生きた細胞内の物質である場合には、被写体が常に動いているため被写体ブレが生じ易い。こうした被写体ブレを防止するためには高速撮影を行う必要がある。
【0011】
さらに、蛍光顕微鏡により3次元画像の取得をする場合には多数の平面画像が必要となる。この場合、それぞれの平面画像の取得位置に応じて対物レンズを駆動し焦点位置を合わせる必要があるが、3次元画像の高速取得のためには、この焦点合わせに要する時間を短縮する必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、光軸色収差の補正を対物レンズの駆動で行うとともに、この対物レンズの駆動と静止の迅速化を実現することで撮影を迅速化し3次元画像の高速取得も行うことのできる対物レンズの駆動制御方法及びそれを用いた蛍光顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した課題を解決するために、光軸色収差の補正を対物レンズの駆動で行うとともに、この対物レンズの駆動と静止の迅速化を実現することで撮影を迅速化し3次元画像の高速取得も行うことのできる対物レンズの駆動制御方法及びそれを用いた蛍光顕微鏡システムを発明した。
【0014】
第1発明に係る対物レンズの駆動制御方法は、蛍光顕微鏡に備えられピエゾアクチュエータにより駆動される対物レンズに生じる光軸色収差の補正方法であって、前記ピエゾアクチュエータに対し、前記対物レンズを観察対象の焦点位置に移動させる変位電圧よりも大きいパルス電圧を、前記対物レンズが前記焦点位置の手前まで移動する所定時間印加する第1工程と、前記第1工程後に前記変位電圧を前記ピエゾアクチュエータに印加し前記対物レンズを静定させる第2工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る対物レンズの駆動制御方法は、第1発明に係る光軸色収差の補正方法において、前記第1工程において、前記パルス電圧として前記変位電圧の逓倍の電圧が印加されることを特徴とする。
【0016】
第3発明に係る蛍光顕微鏡システムは、光源と、前記光源から発せられる光線を観察対象に導く対物レンズと、前記対物レンズを光軸方向に駆動するピエゾアクチュエータと、前記対物レンズを前記観察対象の焦点位置に移動させる変位を生じる変位電圧よりも大きいパルス電圧を、前記対物レンズが前記焦点位置の手前まで移動する所定時間、前記ピエゾアクチュエータに印加した後、前記変位電圧を前記ピゾアクチュエータに印加し前記対物レンズを静定させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る蛍光顕微鏡システムは、第3発明に係る蛍光顕微鏡システムにおいて、前記駆動部は前記パルス電圧として前記変位電圧の逓倍の電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述した構成からなる本発明によれば、光軸色収差の補正を対物レンズの駆動で行うとともに、この対物レンズの駆動と静止の迅速化を実現することで撮影の迅速化と3次元画像の高速取得を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る蛍光顕微鏡システムを示すブロック図である。
【図2】光軸色収差の補正が行われる様子を示し、(A)は光軸色収差の補正前の対物レンズの位置、(B)は光軸色収差の補正後の対物レンズの位置を示す図である。
【図3】光軸色収差の補正の前後における画像の状態を示し、(A)は光軸色収差の補正前に撮影される画像、(B)は光軸色収差の補正後に撮影される画像を示す図である。
【図4】対物レンズの静定時間を短縮するために印加する電圧を調整する様子を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る光軸色収差の補正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態としての蛍光顕微鏡システム1と、これにより行われる光軸色収差の補正方法について詳細に説明する。

【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る蛍光顕微鏡システム1を示すブロック図である。蛍光顕微鏡システム1は、観察対象6から発せられる蛍光の観察を行う蛍光顕微鏡2と、蛍光顕微鏡2により得られる画像を映し出すディスプレイ4と、蛍光顕微鏡2により得られる画像を保存する外部記憶装置5と、蛍光顕微鏡2、ディスプレイ4及び外部記憶装置5の制御を行う制御部3とにより主に構成されている。

【0022】
蛍光顕微鏡2は、励起光を発する光源21と、光源21から発せられた励起光を反射し光軸の方向を変える反射ミラー22と、反射ミラー22により反射された励起光を選択的に通過させるビームスプリッタ23と、ビームスプリッタ23と観察対象6との間に設けられビームスプリッタ23を通過した励起光及び観察対象6から発せられた蛍光を屈折する結像レンズ24及び対物レンズ25と、対物レンズ25の光軸方向(Z軸方向)への駆動を行うピエゾアクチュエータ26と、観察対象6が載置されるステージ7と、観察対象6から発せられた蛍光を撮影する撮影装置27とを備えて構成されている。

【0023】
光源21は、観察対象である物質をマーキングしている蛍光物質に対して励起波長を有するレーザ光である励起光を照射する光源である。こうした光源21として、超高圧水銀灯、キセノンランプ、紫外線LED等、観察対象から発せられる蛍光の種類に応じて単数又は複数の光源が用いられている。光源21は、制御部3の後述する光源選択部31によりその動作が制御されている。

【0024】
反射ミラー22は、光源21から出射された励起光を反射しその方向を変え、ビームスプリッタ23へと導くためのミラーである。

【0025】
ビームスプリッタ23は、光源21から出射された励起光と、観察対象6から発せられた蛍光とを分離するフィルタ特性を有し、励起光を100%近く透過する一方、蛍光を100%近く反射する。この特性により、励起光はほとんどパワーロスなく観察対象6に照射されるとともに、観察対象6から発せられて対物レンズ25と結像レンズ24を経てきた蛍光は100%近く撮影装置27へと送られるようになっている。

【0026】
結像レンズ24は、ビームスプリッタ23を通過した励起光を平行光として対物レンズ25へと導くとともに、対物レンズ25を通過した蛍光を収束光へと変換し、撮影装置27の結像面に結像させるレンズである。

【0027】
対物レンズ25は、結像レンズ24を通過した光線を収束光へ変換してその焦点を観察対象6に合わせるとともに、試料から発せられる蛍光を平行光へと変換して結像レンズ24へと導くレンズである。

【0028】
ピエゾアクチュエータ26は、電圧を印加するとピエゾ素子が変形する圧電効果を利用したアクチュエータであり、制御部3の後述する駆動部34によりその動作が制御され、対物レンズ25の光軸方向への駆動を行う。

【0029】
具体的には、ピエゾアクチュエータ26の内部にはZ軸方向に積層された多数のピエゾ素子が設けられている。そして、駆動部34によりこれらのピエゾ素子に電圧が印加されると、それぞれのピエゾ素子がZ軸方向に変形する。ピエゾアクチュエータ26はこの変形力により対物レンズ25のZ軸方向への駆動を行っている。

【0030】
なお、本実施形態においては対物レンズ25のZ方向の駆動のみを行うピエゾアクチュエータ26が用いられているが、本発明においてはこれに限らず、更にX方向及びY方向の駆動も行うピエゾアクチュエータ26であっても良い。

【0031】
ステージ7は、観察対象6が載置されるステージであり、図示しないアクチュエータによりX-Y方向に移動される。なお、ステージ7は、本発明においてはこれに限らず、Z方向にも移動可能であっても良い。ステージ7の移動に用いられるアクチュエータは特に限定されず、ピエゾアクチュエータの他、ステッピングモータやエアシリンダ等であっても良い。また、ステージ7は手動で動かされるようにしても良い。

【0032】
撮影装置27は、観察対象6から発せられ、対物レンズ25、結像レンズ24及びビームスプリッタ23を経た蛍光を受光し撮像を行うCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子を利用したカメラである。撮影装置27がCCDである場合には、結像レンズ24や対物レンズ25を介して入射される被写体像を撮像面上に結像させ、光電変換により映像信号を生成し、これを制御部3の後述する表示部32や撮影部33へと送信する。

【0033】
なお、本実施形態においてはこの撮影装置27は静止画を撮影するものが想定されているが、本発明においてはこれに限らず、動画を撮影するものであっても良い。撮影装置27は、制御部3の撮影部33によりその駆動が制御される。

【0034】
ディスプレイ4は、蛍光顕微鏡2の撮影装置27により得られる観察対象6の画像を映し出す画面であり、制御部3の表示部32により制御されている。このディスプレイ4は単なる画像表示手段であっても良いが、これをタッチパネルとすることで使用者が制御部3を介して蛍光顕微鏡システム1全体の設定操作を行えるようにしても良い。

【0035】
外部記憶装置5は、蛍光顕微鏡2により得られる観察対象6の画像を含む各種データを保存する。

【0036】
制御部3は、蛍光顕微鏡システム1全体の制御を行い、パーソナルコンピュータ等により構成されている。制御部3は、制御部3全体を制御するCPU(Central Processing Unit)と、CPU上で動作する制御プログラム等を格納したROM(Read Only Memory)と、各種データを一時的に格納するためのRAM(Random Access Memory)と、を備えて構成されている。なお、CPU、ROM及びRAMについての図示は省略されている。

【0037】
制御部3は、CPUがROMに格納されている制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、光源選択部31、表示部32、撮影部33、駆動部34として機能する。

【0038】
光源選択部31は、観察対象6が発する蛍光の種類に応じて用いる光源21を観察対象に応じて選択することで、光源21から発せられる光線の波長を変化させる。

【0039】
表示部32は、撮影装置27により撮影された画像を、制御部3に接続された外部のディスプレイ4に表示する。

【0040】
撮影部33は、撮影装置27のシャッターや撮影タイミング等の駆動制御を行うとともに、撮影装置27により撮像された画像のデータを、制御部3に接続された外部記憶装置5に記憶させる。

【0041】
駆動部34は、ピエゾアクチュエータ26に印加される電圧の大きさとタイミングを制御することで、ピエゾアクチュエータ26の駆動制御を行う。こうした駆動部34によるピエゾアクチュエータ26の制御は、マーカーの種類ごとに予め求められている各蛍光色に応じた焦点距離に基づき行われる。マーカーの種類、焦点距離及び必要な印加電圧に関する情報はRAMや外部記憶装置5に記憶されていて、ピエゾアクチュエータ26の駆動時に駆動部34がこの情報を読み出すことで、ピエゾアクチュエータ26に印加される電圧が決定される。

【0042】
次に、上述した蛍光顕微鏡システム1が励起光及び蛍光を導く動作について説明する。

【0043】
まず、観察対象6に応じた波長の励起光を出射する光源21が光源選択部31により選択され、選択された光源21から励起光が反射ミラー22に向けて照射される。なお、選択された光源21の情報は、光源選択部31から駆動部34へと送られ、駆動部34によるピエゾアクチュエータ26への印加電圧の選択に用いられる。

【0044】
次に、反射ミラー22に到達した励起光は、反射ミラー22により反射されて進行方向が変化し、ビームスプリッタ23へと導かれる。ビームスプリッタ23は、上述したように励起光をほぼ100%透過する。そのため、ビームスプリッタ23へと導かれた励起光はほぼ100%ビームスプリッタ23を透過し、結像レンズ24へと導かれる。

【0045】
結像レンズ24に導かれた励起光は、結像レンズ24を平行光として通過し、対物レンズ25へと導かれる。ここで、光源21から出射される励起光が平行光である場合には、励起光はそのまま平行光として結像レンズ24を通過する。一方、励起光が拡散光である場合には、結像レンズ24により平行光へと変換される。

【0046】
次に、結像レンズ24から対物レンズ25へと導かれた励起光は、対物レンズ25により収束光に変換されるとともに、観察対象6に焦点が合わされて照射される。

【0047】
この焦点合わせは、駆動部34がピエゾアクチュエータ26に印加する電圧を光源選択部31から送られた光源21の情報に基づき決定することで行われる。ピエゾアクチュエータ26に印加される電圧が変化するとピエゾアクチュエータ26の動作量が変化し、ピエゾアクチュエータ26に駆動される対物レンズ25の静定位置も変化する。こうして対物レンズ25の静定位置を変化させることにより励起光の焦点位置を調整することができる。

【0048】
次に、対物レンズ25を通過した励起光は、ステージ7上にある観察対象6に照射される。励起光の照射により観察対象6のマーカーの種類に応じた波長の蛍光が散乱光として発せられる。

【0049】
マーカーから発せられた散乱光である蛍光は、対物レンズ25により平行光へと変換され、結像レンズ24へと導かれる。なお、対物レンズ25は蛍光を収束光に変換するものであっても良い。

【0050】
対物レンズ25を通過した蛍光は、次に結像レンズ24に導かれる。蛍光は結像レンズ24により撮影装置27の像面において結像する収束光に変換され、ビームスプリッタ23へと導かれる。

【0051】
ビームスプリッタ23は、上述したように蛍光をほぼ100%反射し、撮影装置27へと導く。そして、撮影装置27の撮像面において蛍光画像が結像し撮影が行われる。

【0052】
ところで、蛍光顕微鏡により生きた細胞内の蛋白質を観察する場合、細胞内蛋白質は細胞内を高速で移動しているため、撮影時に被写体ブレが発生し易い。そのため、上述した方法により対物レンズ25をピエゾアクチュエータ26により超高速で移動させ被写体に焦点を合わせるとともに、細胞内蛋白質の移動速度よりも速い速度でシャッターを切ることで、撮影時の被写体ブレを防止している。

【0053】
こうした対物レンズ25の移動による被写体ブレの防止について詳細に説明する。図2は、光軸色収差の補正が行われる様子を示し、(A)は光軸色収差の補正前の対物レンズ25の位置、(B)は光軸色収差の補正後の対物レンズ25の位置を示す。図3は、光軸色収差の補正の前後における画像の状態を示し、(A)は光軸色収差の補正前に撮影される画像、(B)は光軸色収差の補正後に撮影される画像を示す図である。

【0054】
上述したように、蛍光顕微鏡ではレンズの焦点距離が蛍光の波長により異なる光軸色収差が問題となる。

【0055】
例えば、図2(A)では、蛍光Aと蛍光Bの焦点距離が異なる様子が示されている。蛍光Aの場合、結像レンズ24が位置I、対物レンズ25が位置Hにあるときに観察対象6に焦点の合った状態となる。しかし、蛍光Bについては、蛍光Aの場合と同様に結像レンズ24が位置I、対物レンズ25が位置Hにあるときでも、観察対象6に焦点の合った状態とはならない。

【0056】
この図2(A)の状態で撮影を行うと、撮影される画像は図3(A)のようになる。蛍光Aについては焦点が合っているため観察対象となる試料が鮮明に写っている。一方、蛍光Bについては焦点が合っておらず、観察対象となる試料がぼやけて写っている。こうした蛍光毎に焦点のズレが生じる現象が光軸色収差である。

【0057】
そこで、本実施形態に係る蛍光顕微鏡システム1では、観察対象となる試料が発する蛍光の波長毎にピエゾアクチュエータ26により対物レンズ25を光軸方向であるZ方向に移動することで、光軸色収差の補正を行っている。

【0058】
図2(B)は、図2(A)において光軸色収差による焦点のズレが生じていた蛍光Bについて、対物レンズ25をHの位置からH’の位置まで移動させることで、光軸色収差の補正を行った状態を示している。こうして光軸色収差の補正が行われた後の状態で観察対象の撮影を行うと、得られる画像は図3(B)のようになる。図3(B)では、蛍光Bについても焦点が合うことで、観察対象となる試料が鮮明に写るようになっている。

【0059】
ところで、対物レンズ25を超高速で移動させて撮影を行う場合には、対物レンズ25を所望の位置で素早く静止させる必要がある。しかし、実際にはアクチュエータの停止後も対物レンズ25はしばらく細かく振動してしまい(以下「過度応答」という。)、すぐに静止することができない。こうした対物レンズ25の過度応答時にシャッターを切ると、カメラブレが生じてしまう。

【0060】
そのため、撮影可能な範囲まで過度応答が収束しカメラブレが抑制された状態、具体的には対物レンズ25の駆動開始位置から焦点位置までの距離を100%とした場合に過度応答が焦点位置を中心として10%の距離内に納まる状態(以下こうした状態を「静定」という。)においてシャッターを切る必要がある。対物レンズ25が静定した状態では、カメラブレが生じたとしても画像に及ぼす影響は極めて少ないため、対物レンズ25が静止した状態とみなすことができる。

【0061】
しかし、従来から一般的に行われているピエゾアクチュエータ26の駆動制御方法、すなわち、所望の変位を生じさせる一定の電圧を対物レンズ25の駆動開始から静定までピエゾアクチュエータ26に印加し続ける方法では、対物レンズ25の駆動開始から静定に至るまでの時間(以下「静定時間」という。)を短縮することはできない。

【0062】
そこで、本発明が適用される蛍光顕微鏡システム1では、対物レンズ25を超高速で移動させて光軸色収差を補正する蛍光顕微鏡2において、ピエゾアクチュエータ26の変位の途中でピエゾアクチュエータ26に印加する電圧を変化させることで、静定時間の短縮を可能としている。以下、こうした静定時間の短縮方法について具体的に説明する。

【0063】
図4は、対物レンズ25の静定時間を短縮するために印加する電圧を調整する様子を示すグラフである。図4において、点線Rは従来のピエゾアクチュエータ26の駆動方式における電圧印加の方式を、実線Qは本実施形態におけるピエゾアクチュエータ26の駆動方式における電圧印加の方式を、実線Pは本実施形態においてピエゾアクチュエータ26に印加される電圧を示している。図4の横軸は時間を、左側の縦軸は電圧を、右側の縦軸はピエゾアクチュエータの変位量(nm)を示している。

【0064】
従来のピエゾアクチュエータ26の駆動方式では、対物レンズ25の駆動開始から静定まで、一定の変位電圧eが印加されていた。この変位電圧eは、対物レンズ25を観察対象の焦点位置に移動させる変位をピエゾアクチュエータ26に生じさせる電圧である。

【0065】
一方、本実施形態においては、実線Pに示すように、まずピエゾアクチュエータ26に、変位電圧eの逓倍、すなわちe×α(αは2以上の整数)の大きな矩形波であるパルス電圧が、時間τまで印加される。このときのパルス電圧の印加時間τは、従来の駆動方式において対物レンズ25が駆動開始から静定位置Sに至るまでの時間t2よりも短い時間であり、こうしたパルス電圧の印加により対物レンズ25は焦点位置の手前まで移動する。

【0066】
そして、時間τ以降は、ピエゾアクチュエータ26に変位電圧eが印加されることで、対物レンズ25は所望の焦点位置まで移動する。

【0067】
このように、本実施形態においては、まずピエゾアクチュエータ26に大きな電圧であるパルス電圧を印加して高速で変位させることで対物レンズ25を高速で焦点位置の手前まで移動させている。そして、途中から小さな電圧である変位電圧に切り替えてピエゾアクチュエータ26を低速で変位させることで対物レンズ25を低速で焦点位置まで移動させ静定させている。

【0068】
これにより、従来の駆動方式における静定時間t2よりも短い静定時間t1によりピエゾアクチュエータ26を静定させることができる。また、変位電圧eの逓倍の電圧をパルス電圧とすることで、ピエゾアクチュエータ26の制御を容易なものとすることができる。

【0069】
次に、上述した蛍光顕微鏡システム1による光軸色収差の補正方法の各工程についてフローチャートを用いて具体的に説明する。図5は、本発明の実施形態に係る光軸色収差の補正方法を示すフローチャートである。

【0070】
本実施形態に係る光軸色収差の補正方法は、まず、制御部3の光源選択部31が、観察対象となる試料に応じた波長の光線を発する光源を選択する(ステップS1)。

【0071】
次に、駆動部34が、ピエゾアクチュエータにパルス電圧e×αを時間τ印加する(ステップS2)。上述したようにαは2以上の整数であり、パラメータeとαの具体的な値は、それぞれの光源に応じて適宜選択される。ステップS2の大きな電圧であるパルス電圧の印加により、ピエゾアクチュエータ26は高速で変位し、対物レンズ25は高速で移動する。

【0072】
次に、駆動部34が、ピエゾアクチュエータ26に変位電圧eを印加する(ステップS3)。このときに印加される電圧eは、ステップS2で印加される電圧e×αの1/αの大きさである。この変位電圧eの印加によりピエゾアクチュエータ26が低速で変位することで、対物レンズ25が低速で移動し静定する。

【0073】
このように、ステップS2で印加されたパルス電圧よりも大幅に小さい変位電圧がステップS3で印加されることで、駆動するピエゾアクチュエータ26に言わば急ブレーキをかけることになる。

【0074】
ステップS2の高電圧によるピエゾアクチュエータ26の高速駆動により対物レンズ25を素早く焦点位置の手前まで移動させた後、ステップS3の低電圧によるピエゾアクチュエータ26の低速駆動により対物レンズ25を静定させる。

【0075】
こうしたピエゾアクチュエータ26の駆動制御により、対物レンズ25を短時間で静定させることができる。

【0076】
対物レンズ25の静定後、更に他の試料から発せられる他色の蛍光の観察も行う場合(ステップS4:Yes)、ステップS1に戻り、光源選択部31が再び観察対象となる試料に応じた波長の光線を発する光源を選択し、以後の一連の処理が再度繰り返される。

【0077】
一方、他色の蛍光の観察を行わない場合、すなわち、全ての試料の観察が完了した場合には(ステップS4:No)、一連の動作は全て終了する。

【0078】
上述した本実施形態に係る光軸色収差の補正方法によると、対物レンズ25の光軸色収差の補正を対物レンズ25の光軸方向への駆動により行うとともに、この駆動時の静定時間を短時間にすることができるため、被写体ブレとカメラブレを効果的に防止しつつ、観察対象の撮影を短時間で素早く行うことができる。こうした光軸色収差の補正方法は、観察対象の3次元画像を得る際に特に有用である。

【0079】
3次元画像の取得は、少なくとも蛍光顕微鏡システム1のVoxelサイズ程度の大きさの蛍光被写体試料について、対物レンズ25を移動しつつ撮影することでZ軸上の位置の異なる複数のX-Y平面画像を求め、この平面画像群について畳み込み積分処理を施し、更に畳み込み積分の逆演算を施すことで行われる。

【0080】
こうした3次元画像の取得に際し、被写体が生きた細胞内の物質である場合には、被写体が常に動いているため被写体ブレが生じ易い。こうした被写体ブレを防止するためには、対物レンズ25の駆動と静定を短時間で素早く行い撮影を行う必要がある。

【0081】
また、3次元画像の取得には多数の平面画像が必要であり、蛍光毎に各平面画像の取得位置に応じて対物レンズ25を駆動し静定する必要がある。そのため、3次元画像の取得の迅速化のためには、対物レンズ25の静定時間の短縮が必須となる。

【0082】
そこで、上述した本発明に係る光軸色収差の補正方法を用いることで、こうした3次元画像の取得においても被写体ブレとカメラブレを効果的に防止しつつ、3次元画像を迅速に得ることができる。

【0083】
なお、上述した実施形態においてはパルス電圧として変位電圧の逓倍の電圧が印加されていたが、発明においてはこれに限らず、パルス電圧が変位電圧よりも大きな電圧であれば同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 蛍光顕微鏡システム
2 蛍光顕微鏡
3 制御部
4 ディスプレイ
5 外部記憶装置
6 観察対象
7 ステージ
21 光源
22 反射ミラー
23 ビームスプリッタ
24 結像レンズ
25 対物レンズ
26 ピエゾアクチュエータ
27 撮影装置
31 光源選択部
32 表示部
33 撮影部
34 駆動部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4