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Specification :(In Japanese)ガス検知材及びその利用

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6345543
Publication number P2016-050894A
Date of registration Jun 1, 2018
Date of issue Jun 20, 2018
Date of publication of application Apr 11, 2016
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)ガス検知材及びその利用
IPC (International Patent Classification) G01N  31/22        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
G01N  21/77        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI (File Index) G01N 31/22 122
G01N 31/00 V
G01N 31/00 A
G01N 21/77 A
G01N 21/78 C
Number of claims or invention 9
Total pages 26
Application Number P2014-177531
Date of filing Sep 1, 2014
Date of request for substantive examination Aug 29, 2017
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】神野 伸一郎
【氏名】谷岡 卓
【氏名】榎本 秀一
Representative (In Japanese)【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
Examiner (In Japanese)【審査官】三木 隆
Document or reference (In Japanese)米国特許第08134017(US,B1)
特開2008-107337(JP,A)
特開2008-107091(JP,A)
中国特許出願公開第104327536(CN,A)
特開2016-199751(JP,A)
特開2017-88879(JP,A)
谷岡卓,近赤外光と青色蛍光を有するアミノベンゾピラノキサンテン系色素のメカノ・ベイポロクロミズム特性,反応と合成の進歩シンポジウム講演要旨集,2015年10月 9日,Vol.41st,Page.83
TANIOKA Masaru,Reversible Near-Infrared/Blue Mehanofluorochromism of Aminobenzopyranoxanthen,J Am Chem Soc,2013年 5月27日,Vol.137 No.20,Page.6436-6439
白崎良尚,二価銅選択的に錯形成能を有するアミノベンゾピラノキサンテン系色素(ABPX)誘導体の合成と計測用化学センサーへの応用,光化学討論会講演要旨集,2013年 9月,Vol.2013,Page.263 3P57
WANG Chunyan,Selective Hg2+ Sensing Behaviors of Rhodamin Derivatives with Extended Conjugation Based on Two Successive Ring-Opening Processes,Inorg Chem,2013年12月 2日,Vol.52 No.23,Page.13432-13441
KAMINO, S. et al.,A red-emissive aminobenzopyrano-xanthene dye: elucidation of fluorescence emission mechanisms in sol,PHYS. CHEM. CHEM. PHYS.,2013年,15,2131-2140
榎本秀一,光線的力学療法剤の新規蛍光色素は太陽電池デバイスとなるか?,科学研究費助成事業 研究成果報告書,2014年,研究期間:2012~2013,課題番号:24659019
Field of search G01N 31/22
G01N 21/77
G01N 21/78
G01N 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)
【化1】
JP0006345543B2_000006t.gif
(一般式(1)又は(2)中、X1及びXはそれぞれ独立に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、
R1及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、アミノ基、保護基若しくは置換基を有していてもよいアミド基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R2、R、R7、及びR8はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3、R、R4及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R5、R、R6及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3とR5との間、RとRとの間、R4とR6との間、及び、RとRとの間の少なくともいずれかは結合して環が形成されていてもよい。)
で表される化合物を含有する、ガス検知材。
【請求項2】
測定対象となるガスに接触することにより、接触したガスに応じた発色の変化、又は、接触したガスに応じた発色及び発光の変化を示す、請求項1に記載のガス検知材。
【請求項3】
測定対象となるガスは、有機ハロゲン化物、炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、有機リン化合物、カルボン酸、スルホン酸、アミン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、活性酸素種、一酸化炭素、二酸化炭素、ニトロトルエン類、ピクリン酸、塩化水素、フッ化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫化水素、有機硫黄化合物、窒素酸化物、又は硫黄酸化物である、請求項1又は2に記載のガス検知材。
【請求項4】
下記一般式(1)又は(2)
【化2】
JP0006345543B2_000007t.gif
(一般式(1)又は(2)中、X1及びXはそれぞれ独立に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、
R1及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、アミノ基、保護基若しくは置換基を有していてもよいアミド基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R2、R、R7、及びR8はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3、R、R4及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R5、R、R6及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3とR5との間、RとRとの間、R4とR6との間、及び、RとRとの間の少なくともいずれかは結合して環が形成されていてもよい。)
で表される化合物を担持する、ガス検知体。
【請求項5】
請求項4に記載のガス検知体を備えている、ガス検知器。
【請求項6】
携帯可能な形態である、請求項5に記載のガス検知器。
【請求項7】
バッジ式ガス検知器である、請求項5又は6に記載のガス検知器。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガス検知材、請求項4に記載のガス検知体、又は、請求項5~7のいずれか1項に記載のガス検知器を、測定対象となるガスを含む雰囲気に置く工程、及び、発色性の変化及び発光性の変化の少なくともいずれかを検出する工程を含む、ガス検知方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガス検知材、又は、請求項4に記載のガス検知体を、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥すること、或いは、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に機械的刺激を付与することにより、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に含まれる上記化合物に包接されるガスを脱離する工程を含む、ガス検知材又はガス検知体の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明はガス検知材及びその利用に関し、特に目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、簡便にかつ高い精度や正確度で検知することができるガス検知材及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性色素を用いるケミカルセンサーは、機能性色素の分子と測定対象となる分子又はイオンとの化学的反応により生じる発色の変化等を利用して対象物質の有無を検出するものであり、環境測定、医療診断等の幅広い分野で利用されている。
【0003】
しかし、有機系の機能性色素は、高濃度の溶液中において色素分子が凝集して、発光効率、発色性、光感受性及び光増感性が低下するため、ケミカルセンサーとして利用しづらいという問題がある。
【0004】
かかる問題を解決するために、本発明者らは、溶液中において凝集すると発光が増大する凝集誘起発光増強特性を有する機能性色素として、アミノベンゾピラノキサンテン系色素を開発している(特許文献1参照)。
【0005】
有機系の機能性色素を用いる従来のケミカルセンサーとして、主に溶液中において測定対象を検出するものであるが、非特許文献1のものが知られている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】米国特許第8134017号明細書(2012年3月13日公開)
【0007】

【非特許文献1】Chem. Eur. J 2010, 16, 4793-4802
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、有機系の機能性色素を用いて検知する従来の技術は、識別性が低いという問題があった。すなわち、非特許文献1に開示されている技術は、同系色や単一色の変化を検知するものであるため、目視などによる識別能や濃度変化の判別能が低く、精度、正確度や選択性の高い検知を行うことが困難であった。
【0009】
本発明はかかる現状に鑑み、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、有機系の機能性色素を用いて、複数種類のガス分子について、簡便にかつ高い精度や正確度で検知することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るガス検知材は、下記一般式(1)又は(2)
【0011】
【化1】
JP0006345543B2_000002t.gif

【0012】
(一般式(1)又は(2)中、X1及びXはそれぞれ独立に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、
R1及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、アミノ基、保護基若しくは置換基を有していてもよいアミド基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R2、R、R7、及びR8はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3、R、R4及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R5、R、R6及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3とR5との間、RとRとの間、R4とR6との間、及び、RとRとの間の少なくともいずれかは結合して環が形成されていてもよい。)
で表される化合物を含有する。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るガス検知体は、下記一般式(1)又は(2)
【0014】
【化2】
JP0006345543B2_000003t.gif

【0015】
(一般式(1)又は(2)中、X1及びXはそれぞれ独立に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、
R1及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、アミノ基、保護基若しくは置換基を有していてもよいアミド基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R2、R、R7、及びR8はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3、R、R4及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R5、R、R6及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、
R3とR5との間、RとRとの間、R4とR6との間、及び、RとRとの間の少なくともいずれかは結合して環が形成されていてもよい。)
で表される化合物を担持している。
【0016】
本発明に係るガス検知器は、上記ガス検知体を備えている。
【0017】
本発明に係るガス検知方法は、上記ガス検知材、上記ガス検知体又は上記ガス検知器を、測定対象となるガスを含む雰囲気に置く工程、及び、発色の変化性及び発光性の変化の少なくともいずれかを検出する工程を含む。
【0018】
本発明に係るガス検知材又はガス検知体の製造方法は、上記ガス検知材又は上記ガス検知体を、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥すること、或いは、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に機械的刺激を付与することにより、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に含まれる上記化合物に包接されるガスを脱離する工程を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス検知材、ガス検知体、ガス検知器、及び、ガス検知方法によれば、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、簡便にかつ高い精度や正確度で検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のガス検知材に用いられる化合物の一例である3´,3´´-ビス(オキソスピロイソベンゾフラン)-3,7-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾピラノキサンチン(以下、本明細書においてABPX01と称することがある。)の化学構造を示す図であり、(a)はcis-ABPX01の化学構造を、(b)は、trans-ABPX01の化学構造を示す図である。
【図2】実施例3において、本発明のガス検知材として、結晶性のcis-ABPX01及びアモルファス性のcis-ABPX01を用いてガス状のジクロロメタンを検知した結果を示す図であり、分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶、当該結晶を乳鉢上ですり潰すことによって得られたアモルファス性のABPX01粉末、及び、当該アモルファス性のABPX01粉末にジクロロメタン蒸気を噴霧して得られた結晶性の粉末のそれぞれについて、(a)は発光スペクトルの測定結果を示し、(b)は粉末X線回折パターンの測定結果を示し、(c)は目視による発光の検出結果を示す。
【図3】実施例1において、本発明のガス検知材として、cis-ABPX01及びtrans-ABPX01を用いてガス状のジクロロメタンを検知した結果を示す図であり、(a)はガス状のジクロロメタンと接触させたtrans-ABPX01の発光スペクトルを示す図及び目視による発光の検出結果を示す図であり、(b)はガス状のジクロロメタンと接触させたcis-ABPX01の発光スペクトルを示す図及び目視による発光の検出結果を示す図である。
【図4】実施例2において、本発明のガス検知材を再生し、ガス状のジクロロメタンを再度検知した結果を示す図であり、ガス状のジクロロメタンの脱離及び再包接に伴う発光強度の変化を示す図である。
【図5】実施例4において、本発明のガス検知材として、cis-ABPX01及びtrans-ABPX01を用いてガス状のクロロホルムを検知した結果を示す図であり、(a)はガス状のクロロホルムと接触させたcis-ABPX01の、目視による発色及び発光の検出結果を示す図であり、(b)はガス状のクロロホルムと接触させたtrans-ABPX01の、目視による発色及び発光の検出結果を示す図である。
【図6】実施例5において、本発明のガス検知材を再生し、ガス状のクロロホルムを再度検知した結果を示す図であり、ガス状のクロロホルムの脱離及び再包接に伴う発光強度の変化を示す図である。
【図7】実施例6において、本発明のガス検知材として、ABPX01を用いてガスを検知した結果を示す図であり、ガス状の塩化水素と接触させたABPX01の、目視による発色及び発光の検出結果、及び、その後さらにガス状のアンモニアと接触させたABPX01の、目視による発色及び発光の検出結果を示す図である。
【図8】実施例6において、本発明のガス検知材として、ABPX01を用いてガスを検知した結果を示す図であり、ガス状の塩化水素と接触させたABPX01の発光スペクトル、及び、その後さらにガス状のアンモニアと接触させたABPX01の発光スペクトルを示す図である。
【図9】実施例6において、本発明のガス検知材として、ABPX01を用いてガスを検知した結果を示す図であり、ガス状のアセトンと接触させたABPX01の、目視による発色及び発光の検出結果、及び、その後さらにガス状の塩化水素と接触させたABPX01の、目視による発色及び発光の検出結果を示す図である。
【図10】実施例6において、本発明のガス検知材として、ABPX01を用いてガスを検知した結果を示す図であり、ガス状のアセトンと接触させたABPX01の発光スペクトル、及び、その後さらにガス状の塩化水素と接触させたABPX01の発光スペクトルを示す図である。
【図11】実施例7において、本発明のガス検知材として、cis-ABPX01及びtrans-ABPX01を用いて種々のガスを検知した結果と、ガスと接触させたcis-ABPX01及びtrans-ABPX01のキサンテン環部位の分子内の歪みを示す図である。
【図12】本発明に係るバッジ式ガス検知器の一例を示す図であり、(a)はバッジ式ガス検知器の正面図を、(b)はバッジ式ガス検知器を開いた内部の構造を示す。
【図13】ABPX01のスピロ環型分子種、双性イオン型分子種及びイオン型分子種の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、用語「蛍光」又は「りん光」と「発光」とは特記しない限り同義として使用する。

【0022】
(I)ガス検知材
本発明に係るガス検知材は、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を主成分として含有する。

【0023】
【化3】
JP0006345543B2_000004t.gif

【0024】
一般式(1)又は(2)中、X1及びXはそれぞれ独立に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、R1及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、アミノ基、保護基若しくは置換基を有していてもよいアミド基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、R2、R、R7、及びR8はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、R3、R、R4及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、R5、R、R6及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を示し、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、及び上記アリール基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよく、R3とR5との間、RとRとの間、R4とR6との間、及び、RとRとの間の少なくともいずれかは結合して環が形成されていてもよい。なお、X1が酸素原子又は硫黄原子である場合は、R1はない。また、Xが酸素原子又は硫黄原子である場合は、R1´はない。

【0025】
前記式において、炭素数1~8のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、環状であっても構わない。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、シクロペンタン基、シクロヘキサン基、シクロヘプタン基、シクロオクタン基等を挙げることができる。また、前記アルキル基の主鎖はヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。また、アミド基は、保護基若しくは置換基を有していてもよい。保護基として、t-ブトキシカルボニル基などのウレタン系保護基、ベンゾイル基などのアシル系保護基、トリチル基などのアルキル系保護基、ジメチルアセタールなどのイミン系保護基などが挙げられる。置換基としては、例えば、ピリジル基、ハロゲン原子などを挙げることができる。また置換基とアミド基は連結基(例えば、メチレン基などのアルキレン基)を介して結合していてもよい。

【0026】
前記式において、炭素数1~8のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、環状であっても構わない。例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、イソヘキセニル基、ヘプテニル基、イソヘプテニル基、オクテニル基、イソオクテニル基等を挙げることができる。また、前記アルケニル基の主鎖はヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。

【0027】
前記式において、炭素数1~8のアルキニル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、環状であっても構わない。例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクチニル基等を挙げることができる。また、前記アルキル基の主鎖はヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。

【0028】
また、前記式において、アリール基としては、一価の単環系芳香族炭化水素基又は一価の多環系芳香族炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、ピレン基、アントラセン基等を挙げることができる。

【0029】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を挙げることができる。

【0030】
上記化合物は、一般式(1)又は(2)で表される化合物であれば本発明のガス検知材に好適に用いることができるが、より好ましい例としては、例えば、米国特許第8134017号明細書に記載の式(3)~(22)のいずれかで示される構造のものを挙げることができる。

【0031】
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、アミノベンゾピラノキサンテン系色素とも称され、溶液中において色素分子が凝集すると発光が増大する凝集誘起発光増強特性を有する機能性色素として、本発明者らが報告しているものである。かかる凝集誘起発光増強特性は、溶液中における特性である。目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、有機系の機能性色素を用いて検知する従来の技術は、識別性が低いという問題があった。すなわち、同系色や単一色の変化を検知するものであるため、目視などによる識別能や濃度変化の判別能が低く、精度、正確度や選択性の高い検知を行うことが困難であった。

【0032】
本発明者らは、固体状態の上記化合物を、ガスに直接的に接触させたところ、接触したガスに応じて、異なる発色性(吸光度の大小、吸収波長の変化、新たな吸収ピークの出現、吸収スペクトルの形状やパターンの変化、色彩の変化)及び/又は発光性(発光強度の大小、発光波長の変化、新たな発光ピークの出現、発光スペクトルの形状やパターンの変化、発光色の変化)を示すことを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づき、上記化合物を用いれば、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを簡便に検知することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。

【0033】
「発色」とは、共役二重結合、発色団や助色団官能基を有する分子が光エネルギー等を吸収した際に、呈色する現象をいい、目視、吸光光度法や色彩色差計等を用いて検知・検出することができる。「発光」とは、光エネルギー等の刺激により、分子が励起状態に遷移され、熱放射などの無放射失活と競争して、光を放出しながら、基底状態にもどる際に放出される光のことをいい、目視や発光光度法等を用いて検知・検出することができる。ここで述べる発光とは、蛍光及びリン光を含む。

【0034】
本発明において、ガス検知材は、主成分としての上記化合物を固体状態にて含有する固体材料であることが好ましい。本発明のガス検知材の形態は特に限定されるものではないが、例えば、粉末状である。またその形状も特に限定されるものではないが、略球状、板状、柱状等を挙げることができる。ガス検知材は、ゲル状、又はゾル状であってもよい。

【0035】
ここで、「主成分として」とは、50重量%以上をいい、より好ましくは70重量%以上をいい、さらに好ましくは80重量%以上をいい、特に好ましくは90重量%以上をいい、最も好ましくは95重量%以上をいう。本発明のガス検知材は、上記化合物を主成分として含有することにより、上記ガス検知材が、大気中又は閉空間に存在するガスと接触し、その結果、接触したガスに応じた発色性及び/又は発光性を示すので、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを検知することができる。本発明に係るガス検知材は、上記化合物の他に、界面活性剤、フィルム等の高分子ポリマーの作製時に必要なアニオン重合剤又はカチオン重合剤、樹脂等の添加剤を含み得る。

【0036】
なお、本発明に係るガス検知材は、ガス検知材の含有成分を備えたキットの形態で提供されてもよい。すなわち、本発明は、上記化合物を備えたガス検知用キットをまた提供する。本発明に係るキットは、上記化合物を内包した容器を備えていればよく、上記化合物を使用するための指示書をさらに備えていてもよい。この場合、指示書には呈示された色調と比較されるべき参照が記載されていてもよい。また、本発明に係るキットは、ガスの検知および判定を実行するために必要な器具および試薬をさらに備えていてもよい。一実施形態において、本発明に係るキットは、上述した構成を1つに梱包した包装体であり得る。

【0037】
本発明において、上記化合物が、測定対象となるガスと接触した結果、接触したガスに応じた発色性及び発光性を示す理由としては、種々の機構が考えられる。第一の機構としては、上記ガスの分子が、上記化合物の結晶格子内に包接されることにより、上記化合物の集積構造が変化し、単量体や多量体構造を基本とした分子パッキング構造となる。その結果、特異的な励起錯体や吸収錯体を形成することで、発色性及び/又は発光性が、接触したガスに応じて変化することが考えられる。

【0038】
スピロ環型分子種、双性イオン型分子種、モノカチオン型分子種、ジカチオン型分子種は、電子の共役様式が異なるために、発色や発光色がそれぞれの分子種において異なる。従って、第二の機構として、スピロ環型の上記化合物が、測定対象となるガスと化学的に結合し、双性イオン型分子種や、イオン型分子種のモノカチオン型又はジカチオン型への構造変化が起こる結果、発色性及び発光性が、接触したガスに応じて変化することが考えられる。本機構による発色性及び発光性の変化は、上記化合物が結晶性であっても、アモルファス性であっても起こる。なお、上記化合物の双性イオン型分子種及びイオン型分子種は、上記化合物が構造変化したものであることから、本発明において上記化合物に含まれる。上記化合物の双性イオン型、モノカチオン型及びジカチオン型とは、上記化合物の一例として、例えばABPX01を例に挙げれば、図13に示す構造を有する分子種である。上記化合物は、双性イオン型、モノカチオン型及びジカチオン型との対比において、本発明において、スピロ環型と称されることがある。

【0039】
あるいは、上記化合物の結晶格子内に包接されるガスの種類により、キサンテン環部位に構造的な歪みの違いが生じる。キサンテン環部位の歪みが大きいほど、コンフォメーション構造が安定化し、スピロ環が開きにくいため、スピロ環型分子種に由来する無色となり、歪みが小さいほど、双性イオン型分子種を形成しやすくなるため発色する。従って、第三の機構として、発色性が、接触したガスの種類に応じて変化するため、ガス分子との反応選択性が向上することが考えられる。また、かかるキサンテン環部位の構造的な歪みの違いは、上記化合物が結晶性であっても、アモルファス性であっても起こる。

【0040】
本発明によれば、上述した第一の機構、第二の機構、及び第三の機構から選ばれる2種類以上の機構を組み合わせて利用することが可能であるので、目的のガスの識別性、選択性、及び正確性の向上を図ることができる。また、複数種類のガス分子の分析を同時にかつ簡易に行うことが可能となる。

【0041】
上記化合物は結晶性であってもよいし、アモルファス性であってもよい。上記化合物が結晶性である場合は、測定対象となるガスと接触させることにより、ガス分子が上記化合物の結晶内に包接される。その結果、上述したように、化合物の集積構造の変化やキサンテン環部位の構造的な歪みの違い等により、発色性及び/又は発光性が、接触したガスに応じて変化すると考えられる。ガス分子が上記化合物の結晶内に包接されない場合は、分子形態はアモルファス性であると考えられることから、ガス検知材が結晶性の場合と、アモルファス性である場合とでは、同じガスに接触させたときにも、発色性及び/又は発光性が異なる場合がある。したがって、かかる場合は、結晶性のガス検知材と、アモルファス性のガス検知材とを用いて、それぞれ、独立してガスの検知を行えば、その結果の組合せにより、同じガスの検知をより高い精度や正確度で行うことができる。

【0042】
また、上記化合物は、一般式(1)又は(2)中、X1を含むスピロ環と、Xを含むスピロ環とが、キサンテン環に対して、同方向を向いたシス体であってもよいし、逆方向を向いたトランス体であってもよいし、シス体とトランス体との混合物であってもよい。また、トランス体は、光学分割用カラムなどを利用して分割できるため、トランス体の光学異性体の各々もまた上記化合物の範疇に含まれる。ガス検知材がシス体である場合と、トランス体である場合と、シス体とトランス体との混合物である場合とで、同じガスに接触させたときにも、発色性及び/又は発光性が異なる場合がある。したがって、シス体のガス検知材と、トランス体のガス検知材と、シス体とトランス体との混合物であるガス検知材との任意の組合せを用いて、それぞれ、独立してガスの検知を行えば、その結果の組合せにより、同じガスの検知をより高い精度で行うことができる。

【0043】
また、上記化合物はスピロ環型であってもよいし、双性イオン型であってもよいし、モノカチオン型であってもよいし、ジカチオン型であってもよいし、スピロ環型、双性イオン型、モノカチオン型及びジカチオン型から選ばれる少なくとも2種の分子種の混合物であってもよい。上記化合物として、スピロ環型を用いる場合と、双性イオン型を用いる場合と、モノカチオン型を用いる場合と、ジカチオン型を用いる場合と、スピロ環型、双性イオン型、モノカチオン型及びジカチオン型から選ばれる少なくとも2種の分子種の混合物を用いる場合とでは、同じガスに接触させたときにも、発色性及び/又は発光性が異なる場合がある。また、上記非特許文献1に記載の技術では、同系色の変化であるのに対し、上記化合物によれば、発光色及び発色の色調が大きく変化するため、目視などによる判別の精度や正確度が飛躍的に向上する。さらに、スピロ環型、双性イオン型、モノカチオン型と、ジカチオン型と、スピロ環型、双性イオン型、モノカチオン型及びジカチオン型から選ばれる少なくとも2種の分子種の混合物の任意の組合せを用いて、それぞれ、独立してガスの検知を行えば、その結果の組合せにより、ガスの検知をより高い精度で行うことができる。また、用いる上記化合物の分子種によって、異なる種類のガスを検知することができるので、スピロ環型と、双性イオン型と、モノカチオン型と、ジカチオン型と、スピロ環型、双性イオン型、モノカチオン型及びジカチオン型から選ばれる少なくとも2種の分子種の混合物との任意の組合せを、同時に複数種類のガスを含む雰囲気に接触させれば、同時に複数種類のガスを検知することができる。

【0044】
本発明に係るガス検知材により検知されるガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、パーフルオロカーボン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フロン類等の有機ハロゲン化物;シクロヘキサン、メタン、エタン等の炭化水素;エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ノニルフェニルエーテル、グリコールエーテル類等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン;酢酸エチル、サリチル酸メチル、ギ酸エチル、カプロン酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、吉草酸ペンチル、酪酸ペンチル、フタル酸エステル等のエステル;エコチオフェート、ジイソプロピルフルオロリン酸、シクロサリン、タブン、ソマン、VXガス、VGガス、VEガス、VMガス、ジアジノン、マラチオン、パラチオン等の有機リン化合物;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等のカルボン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、タウリン等のスルホン酸;メチルアミン、エーテルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等のアミン類;アセトニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;水;活性酸素種;一酸化炭素;二酸化炭素;トリニトロトルエン、ジニトロトルエン等のニトロトルエン類;ピクリン酸;塩化水素、フッ化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素;硫化水素;メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、硫化水素等の有機硫黄化合物;一酸化二窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素、五酸化二窒素等の窒素酸化物;一酸化硫黄、二酸化硫黄、三酸化硫黄等の硫黄酸化物等を挙げることができる。

【0045】
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、米国特許第8134017号明細書に記載の方法により製造することができる。また、上記一般式(2)で表される化合物の製造方法も、特に限定されるものではないが、例えば、一般式(1)で表される化合物を水素化アルミニウムリチウムなどで還元することにより製造することができる。

【0046】
本発明に係るガス検知材は、測定対象となるガスに接触することにより、接触したガスに応じた発色を示す。発色は、目視、吸光光度法や色彩色差計等により検出することができる。測定対象となるガスに応じた発色が検出された場合は、目視のみにより当該ガスが存在する可能性があると判定することができ、測定対象となるガスに応じた発色が検出されない場合は、目視のみにより当該ガスが存在しないと判定できる。

【0047】
また、本発明に係るガス検知材は、さらに、測定対象となるガスに接触することにより、接触したガスに応じた発光を示すことが好ましい。発光は、例えば光エネルギー等の刺激により、ガスに接触したガス検知材中の上記化合物を励起し、励起された上記化合物から放出される光を、目視又は発光スペクトルの測定により検出することができる。上記化合物を励起するための光としては、200nm~700nmの光を用いることができる。発光は、放出される光の波長が700nm未満であれば、目視又は発光スペクトルで検出することができる。また、放出される光の波長が700nm以上であれば、発光スペクトルの測定により検出することができる。測定対象となるガスに応じた発光が検出された場合は当該ガスが存在する可能性があると判定でき、測定対象となるガスに応じた発光が検出されない場合は当該ガスが存在しないと判定できる。

【0048】
なお、本発明で用いられる上記化合物は、固体状態で二波長の発光が変化するため、二波長を同時に検出することにより、分解能(S/N比)や判定の精度、正確度をさらに向上させることができる。

【0049】
測定対象となるガスに接触したガス検知材の発色と発光とを併せて検出することにより、ガスの検知をより高い精度で行うことができる。

【0050】
本発明に係るガス検知材は、上記化合物の結晶格子内に包接された上記ガスの分子を、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥することにより、脱離、すなわち、分子外へ放出することができる。加熱乾燥時の温度は例えば室温(例えば15℃)~150℃であり、減圧乾燥時の圧力は例えば大気圧~200Paである。また、加熱減圧乾燥の温度は例えば室温(例えば15℃)~150℃であり、圧力は例えば大気圧~200Paである。また、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥の時間も特に限定されるものではないが、通常5分間~12時間である。

【0051】
また、本発明に係るガス検知材は、上記化合物の結晶格子内に包接された上記ガスの分子を、押し潰すこと、又は、すり潰すことなどにより、機械的刺激を与えることにより、脱離、すなわち、分子外へ放出することができる。

【0052】
上記のようにして、上記ガスの分子を脱離させた後のガス検知材は、再び測定対象となるガスと接触させれば、ガス分子を再包接することができる。すなわち、本発明に係るガス検知材は、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥、或いは、機械的刺激の付与により、再生することが可能である。

【0053】
このように、本発明に係るガス検知材は、簡便な方法で、再生を行うことができ、繰り返し使用することができる。

【0054】
(II)ガス検知器
本発明に係るガス検知器は、上記化合物を担持するガス検知体を備え、測定対象となるガス分子との接触を可能にするように構成されていれば、その構成は特に限定されるものではない。これにより、測定対象となるガスの存在の有無を、上記化合物の発色及び発光の少なくともいずれかにより知ることができる。

【0055】
上記ガス検知体は、上記化合物を、測定対象となるガスとの接触を可能にするように担持する部材であれば、その形態は特に限定されるものではない。

【0056】
例えば、上記ガス検知体は、上記化合物を、粉末の状態で、通気可能な保持体に保持したものであってもよい。ここで、通気可能な保持体とは、上記化合物の粉末が外部に流出しないように保持する部材であって、少なくとも一部において上記化合物と測定対象となるガスとの接触が可能となっていればよい。かかる保持体としては、上記化合物の粉末は通さないが、気体を通すフィルム、フィルター等を挙げることができる。

【0057】
また、上記ガス検知体は、例えば、基材とその表面に設けた上記化合物の層を含む部材であってもよい。上記基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、プラスチック材料、ガラス、セラミック、金属、紙、不織布等を好適に用いることができる。上記化合物の層は、例えば、上記化合物を含む分散液又は溶液を、上記基材に塗布し、乾燥することにより形成することができる。

【0058】
或いは、上記ガス検知体は、例えば、固相中に上記化合物を担持させたものであってもよい。ここで、上記化合物を担持させる固相としても、上記化合物と測定対象となるガスとの接触が可能となっていれば特に限定されるものではなく、例えば、プラスチック材料、ガラス、セラミック、金属、紙、不織布等を好適に用いることができる。中でも、上記ガス検知材を担持させる固相は、通気性に優れるという観点から多孔質材料であることがより好ましい。

【0059】
また、上記ガス検知体は、例えば、繊維、樹脂等の高分子中に上記化合物を単分散させたものであってもよい。

【0060】
本発明に係るガス検知器は、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを検知することを目的とするものであるので、ガスを検知しようとする場所に備えておき、その発色及び発光の少なくともいずれかにより、測定対象となるガスの存在の有無が示されるようになっていればよい。

【0061】
より好ましくは、本発明に係るガス検知器は携帯可能な形態である。これにより、ガス検知器を、ガスを検知しようとする任意の場所に運んで備えることができる。また、本発明に係るガス検知器を携行している人の行動範囲内における測定対象となるガスの存在をモニターすることが可能となる。

【0062】
また、本発明に係るガス検知器は、バッジ式ガス検知器としてもよい。かかるバッジ式ガス検知器としては、例えば、衣類に取り付けるもの、紐等により身体に取り付けるもの、壁や窓等に取り付けるもの、机や床の上に水平に置くもの等を挙げることができる。

【0063】
図12に、バッジ式ガス検知器の一例を模式的に示す。図12の(a)はバッジ式ガス検知器の正面図を示し、(b)はバッジ式ガス検知器を開いた状態での内部の構造を示す。バッジ式ガス検知器1には、発光検知部2と発色検知部3とが設けられている。発光検知部2は、例えばブラックライト等を照射する等して励起した上記化合物の発光を目視で検出しやすいように、背景が黒色となっている。また、発色検知部3は、例えば室内灯下等で、上記化合物の色又は色調の変化を検出しやすいように、背景が白色となっている。発光検知部2と発色検知部3とには、それぞれ、ガス検知体4が複数備えられている。

【0064】
また、(b)に示すように、閉じたときに、それぞれのガス検知体4に重なる部分に、外部から塵がバッジ式ガス検知器1内に入り込むのを防ぐために、フィルター5が設けられている。例えば複数のガス検知体4として、スピロ環型の上記化合物を含有するガス検知体と、双性イオン型の上記化合物を含有するガス検知体と、モノカチオン型の上記化合物を含有するガス検知体と、ジカチオン型の上記化合物を含有するガス検知体と、スピロ環型、双性イオン型、モノカチオン型及びジカチオン型から選ばれる上記化合物の少なくとも2種以上の分子種の混合物を含有するガス検知体との任意の組合せを用い、同時に複数種類のガスを検知することができる。また、例えば複数のガス検知体4として、シス型及びトランス型、並びに/又は、結晶性及びアモルファス性の異なる上記化合物を用いることにより、同じガスに対しても、複数の測定結果が得られるので、第一、第二、第三の機構に基づいた測定結果の組合せから精度や正確度の高いガスの検知が可能となる。なお、図12に示すバッジ式ガス検知器1は、6個のガス検知体が備えられているが、ガス検知体の数や配置はこれに限定されるものではない。また、バッジ式ガス検知器の形状等も特に限定されるものではない。

【0065】
本発明に係るガス検知器によれば、目視のみで、発色及び発光の検出を行うことにより、種々のガスの検知が可能であることから、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、簡便にかつ高い精度や正確度で検知することができる。

【0066】
また、より詳しい検知を行うために、目視による発色及び発光の検出後、測定対象であるガスが存在する可能性がある場合には、ガス検知器から上記化合物を取り出して、発光スペクトルの測定、又は種々の機器分析を行うことができる。

【0067】
(III)ガス検知方法
本発明に係るガス検知方法は、上記ガス検知材、上記ガス検知体、又は、上記ガス検知器を、測定対象となるガスを含む雰囲気に置く工程、及び、発色性の変化及び発光性の変化の少なくともいずれかを検出する工程を含んでいればよい。本発明に係るガス検知方法によれば、上記測定対象となるガスの存在の有無を検知することができる。

【0068】
本発明に係るガス検知方法では、発色及び発光の少なくともいずれかを目視により検出してもよい。本発明では、発色及び発光の少なくともいずれかを目視により検出することにより、種々のガスの検知が可能であることから、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、簡便にかつ高い精度や正確度で検知することができる。

【0069】
また、本発明に係るガス検知方法では、さらに、発光の検出を発光スペクトルの測定により行ってもよい。これにより、目視による発色及び発光の検出後、測定対象であるガスが存在する可能性がある場合には、より詳しい検知を行うことができる。かかる場合は、発光スペクトルの測定に加えて、種々の機器分析を行ってもよい。

【0070】
上述したように、上記化合物の結晶格子内に包接された上記ガスの分子は、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥、或いは、機械的刺激の付与により、脱離、すなわち、分子外へ放出されうる。したがって、上記化合物を担持する上記ガス検知体も、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥、或いは、機械的刺激の付与により、再生することが可能である。

【0071】
したがって、本発明に係るガス検知方法は、上記ガス検知材又は上記ガス検知体を測定対象となるガスを含む雰囲気に接触させた後、上記ガス検知材又は上記ガス検知体を、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥することにより、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に含まれる上記化合物に包接されるガスを脱離する、上記ガス検知材又は上記ガス検知体の再生工程をさらに含んでいてもよい。

【0072】
また、本発明に係るガス検知方法は、上記ガス検知材又は上記ガス検知体を測定対象となるガスを含む雰囲気に接触させた後、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に機械的刺激を与えることにより、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に含まれる上記化合物に包接されるガスを脱離する、上記ガス検知材又は上記ガス検知体の再生工程をさらに含んでいてもよい。

【0073】
また、上記再生工程は、上記ガス検知材又は上記ガス検知体の製造方法であるともいえる。すなわち、本発明に係るガス検知材又はガス検知体の製造方法は、上記ガス検知材又は上記ガス検知体を、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥すること、或いは、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に機械的刺激を付与することにより、上記ガス検知材又は上記ガス検知体に含まれる上記化合物に包接されるガスを脱離する工程を含む。

【0074】
(IV)ガス吸蔵放出材
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物を主成分として含有するガス検知材は、上記(I)で説明したように、上記化合物が、測定対象となるガスと接触した結果、上記ガスの分子が、上記化合物の結晶格子内に包接される。そして、包接された上記ガス分子は、加熱乾燥、減圧乾燥、又は加熱減圧乾燥、或いは、機械的刺激の付与により、脱離、すなわち、分子外へ放出することができる。さらに、上記ガス分子が分子外へ放出された後の上記ガス検知材は、再度ガスと接触させることにより、ガスを再包接する。このように、上記ガス検知材は、ガスの吸蔵と放出とを可逆的に行うことができる材料である。

【0075】
したがって、本発明に係るガス検知材は、ガス吸蔵放出材として好適に用いることができる。それゆえ、本発明には、下記(1)又は(2)で表される化合物を主成分として含有する、ガス吸蔵放出材も含まれる。

【0076】
【化4】
JP0006345543B2_000005t.gif

【0077】
一般式(1)又は(2)中の、X1及びX、R1及びR、R2、R、R7、及びR8、R3、R、R4及びR、R5、R、R6及びR、並びに、R3とR5との間、RとRとの間、R4とR6との間、及び、RとRとの間の少なくともいずれかは結合して環が形成されていてもよいことについては、上記(I)で説明したとおりである。

【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。

【0079】
〔実施例〕
本発明について、以下の実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。

【0080】
本実施例においては、発光スペクトルは、日立ハイテクサイエンス社製F-4500分光蛍光光度計によって測定した。正確なスペクトルを得るため、高濃度のローダミンB及び副標準光源を用いてスペクトル補正を行った。全てのサンプルの発光スペクトルは、粉末状の結晶を石英製のセルに挟み込み、365nmの励起波長により、表面測光法を用いて行った。表面測光法においては、カットフィルターを利用して、光散乱の影響による、二次光のような多重光を除去した。なお、カットフィルターで除去できない散乱光がみられた発光スペクトルは、その散乱光を除去可能なカットフィルターを利用して、任意の測定波長における発光強度を測定し、得られた発光強度で、補正した。

【0081】
〔実施例1:ジクロロメタンの検知〕
米国特許第8134017号明細書に記載の方法により、3´,3´´-ビス(オキソスピロイソベンゾフラン)-3,7-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾピラノキサンチン(ABPX01)を製造した。得られたABPX01は、図1の(a)に示すcis-ABPX01と、図1の(b)に示すtrans-ABPX01とを1:1の割合で含むものであった。

【0082】
得られたシス体とトランス体との上記混合物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより分離することにより、cis-ABPX01と、trans-ABPX01とを得た。得られたcis-ABPX01及びtrans-ABPX01は粉末状の結晶であった。このcis-ABPX01 100mg及びtrans-ABPX01 100mgに、それぞれ、溶媒蒸気拡散によりジクロロメタンをcis-ABPX01及びtrans-ABPX01の分子内へそれぞれ包接させた。得られたジクロロメタン分子を包接した粉末状の結晶の発光スペクトルを測定した。

【0083】
また、得られたジクロロメタン分子を包接した粉末状の結晶の発光を目視により検出した。具体的には、当該粉末状の結晶に365nmのブラックライトを照射し、暗室にて写真を撮影した。

【0084】
結果を図3に示す。図3の(a)は、ガス状のジクロロメタンと接触させた結果得られた、ジクロロメタン分子を包接したtrans-ABPX01の発光スペクトルを示す。また、(a)中の挿入図は、ジクロロメタン分子を包接したtrans-ABPX01の発光を目視により検出した結果を示す。図3の(b)は、ガス状のジクロロメタンと接触させた結果得られた、ジクロロメタン分子を包接したcis-ABPX01の発光スペクトルを示す。また、(b)中の挿入図は、ジクロロメタン分子を包接したcis-ABPX01の発光を目視により検出した結果を示す。

【0085】
図3の(a)に示すように、ジクロロメタン分子を包接したtrans-ABPX01は、430nm付近に極大発光波長を有し、目視により青色の発光が検出された。一方、図3の(b)に示すように、ジクロロメタン分子を包接したcis-ABPX01は、目視によりtrans-ABPX01と同様に青色の発光が検出された。しかし、発光スペクトル測定の結果より、430nm付近の青色発光に加え、760nm付近の近赤外域に極大発光波長を有することが判った。

【0086】
上記の結果より、ABPX01がシス体である場合と、トランス体である場合とで、発光が異なることが確認された。したがって、シス体のガス検知材と、トランス体のガス検知材とを用いて、それぞれ、独立してガスの検知を行えば、その結果の組合せにより、ガスの検知をより高い精度や正確度で行うことができると考えられる。

【0087】
〔実施例2:ガス検知材の再生〕
上記実施例1で得られた、分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶を、100℃、200Paで12時間減圧乾燥させることにより、ジクロロメタン分子を取り除いた。その後、得られた乾燥粉末に、ジクロロメタン蒸気を1時間噴霧した。

【0088】
図4に、ガス状のジクロロメタンの脱離及び再包接に伴う発光強度の変化を示す。図4中、破線は分子内にジクロロメタンを包接した粉末状の上記cis-ABPX01の結晶の発光スペクトルを、一点鎖線は100℃、200Paで12時間減圧乾燥させた後の乾燥粉末の発光スペクトルを、実線は乾燥粉末にジクロロメタン蒸気を1時間噴霧した後の粉末状の結晶の発光スペクトルを示す。

【0089】
図4に示すように、ジクロロメタンを包接した上記cis-ABPX01の結晶を、100℃、200Paで12時間減圧乾燥させると、近赤外域の発光強度が減少した。さらに得られた乾燥粉末をガス状のジクロロメタンに接触させることにより、近赤外域の発光強度が回復した。

【0090】
上記の結果より、ジクロロメタンを包接した上記cis-ABPX01の結晶を減圧乾燥することにより、包接したジクロロメタンが脱離し、さらに得られた乾燥粉末をガス状のジクロロメタンに接触させることにより、再度ジクロロメタンが包接されたことが確認された。

【0091】
すなわち、本発明に係るガス検知材は、ガスを検知した後も、減圧乾燥することにより、再生して繰り返しガスの検知に用いることができることが示された。

【0092】
〔実施例3:ジクロロメタンの検知〕
本発明のガス検知材として、結晶性及びアモルファス性のcis-ABPX01を用いてガス状のジクロロメタンを検知した。

【0093】
上記実施例1と同様にして得られた、分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶を、乳鉢上ですり潰し、アモルファス性のcis-ABPX01粉末を得た。続いて、得られたアモルファス性のcis-ABPX01に、ジクロロメタン蒸気を3時間噴霧し、結晶性の粉末を得た。

【0094】
分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶、当該結晶を乳鉢上ですり潰すことによって得られたアモルファス性のcis-ABPX01粉末、及び、当該アモルファス性のcis-ABPX01粉末にジクロロメタン蒸気を噴霧して得られた結晶性の粉末のそれぞれについて、発光スペクトル及び粉末X線回折パターンの測定を行うとともに、実施例1と同様にして目視による発光の検出を行った。結果を図2に示す。

【0095】
図2の(a)中、実線は実施例1と同様にして得られた、分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶の発光スペクトルを、一点鎖線は当該結晶を乳鉢上ですり潰すことによって得られたアモルファス性のcis-ABPX01粉末の発光スペクトルを、破線は当該アモルファス性のcis-ABPX01粉末にジクロロメタン蒸気を噴霧して得られた結晶性の粉末の発光スペクトルを示す。

【0096】
図2の(b)中、(b-1)は実施例1と同様にして得られた、分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶の粉末X線回折パターンを、(b-2)は当該結晶を乳鉢上ですり潰すことによって得られたアモルファス性のcis-ABPX01粉末の粉末X線回折パターンを、(b-3)はアモルファス性のcis-ABPX01粉末にジクロロメタン蒸気を噴霧して得られた結晶性の粉末の粉末X線回折パターンを示す。

【0097】
また、図2の(c)は、左から順に、実施例1と同様にして得られた、分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶の発光を目視で検出した結果、当該結晶を乳鉢上ですり潰すことによって得られたアモルファス性のcis-ABPX01粉末の発光を目視で検出した結果、及び、当該アモルファス性のcis-ABPX01粉末にジクロロメタン蒸気を噴霧して得られた結晶性の粉末の発光を目視で検出した結果を示す。

【0098】
図2の(b-2)に示すように、ジクロロメタンを包接した上記cis-ABPX01の結晶は、乳鉢上ですり潰し、機械的刺激を与えることにより、結晶からアモルファス性のcis-ABPX01粉末に変化した。また、ジクロロメタンを包接した上記cis-ABPX01の結晶と比べて、760nm付近の近赤外域の発光強度が減少し、470nm付近の青色の発光強度が増加し、目視で検出された。

【0099】
さらに、得られたアモルファス性のcis-ABPX01粉末に、ジクロロメタン蒸気を3時間噴霧した結果、図2の(b-3)に示すように結晶性が回復するとともに、図2の(a)に示すように、760nm付近の近赤外域の発光強度が増加し、470nm付近の青色の発光強度が減少した。アモルファス性のcis-ABPX01粉末にジクロロメタン蒸気を噴霧して得られた結晶性の粉末の発光スペクトルは、実施例1と同様にして得られた、分子内にジクロロメタンを包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶と略同じであった。

【0100】
上記の結果より、ガス検知材が結晶性の場合と、アモルファス性である場合とで、発光性が異なることが確認された。したがって、結晶性のガス検知材と、アモルファス性のガス検知材とを用いて、それぞれ、独立してガスの検知を行えば、その結果の組合せにより、ガスの検知をより高い精度で行うことができると考えられる。

【0101】
また、ジクロロメタンを包接した上記cis-ABPX01の結晶に対して、乳鉢上ですり潰すというような、機械的刺激を与えることにより、上記cis-ABPX01の結晶内に包接されていたジクロロメタンが、上記cis-ABPX01の分子外へ放出されると考えられる。このアモルファス性のcis-ABPX01粉末を、さらにガス状のジクロロメタンに接触させることにより、再度ジクロロメタンが包接されたことが確認された。

【0102】
すなわち、本発明に係るガス検知材は、ガスを検知した後も、機械的刺激を与えることにより、再生して繰り返しガスの検知に用いることができることが示された。

【0103】
〔実施例4:クロロホルムの検知〕
ガス化したジクロロメタンの代わりにガス化したクロロホルムを接触させた以外は、実施例1と同様にして、クロロホルムをcis-ABPX01及びtrans-ABPX01の分子内へそれぞれ包接させた。得られたクロロホルム分子を包接した粉末状の結晶の発光スペクトルを測定した。

【0104】
また、得られたクロロホルム分子を包接した粉末状の結晶の発光を目視により検出した。具体的には、当該粉末状の結晶に365nmのブラックライトを照射し、暗室にて写真を撮影した。さらに、得られたクロロホルム分子を包接した粉末状の結晶の発色を室内灯下(目視)にて写真を撮影した。

【0105】
結果を図5及び図6に示す。図5の(a)は、ガス状のクロロホルムと接触させたcis-ABPX01の発色及び発光を目視で検出した結果を示す。図5の(b)は、ガス状のクロロホルムと接触させたtrans-ABPX01の発色及び発光を目視で検出した結果を示す。図5の(a)及び(b)において、それぞれ、左側の図が発色を目視で検出した結果であり、いずれも薄いピンク色であった。また、図5の(a)及び(b)において、それぞれ、右側の図が、発光を目視により検出した結果である。クロロホルム分子を包接したtrans-ABPX01は、430nm付近に極大発光波長を有し、青色の発光を示した。一方、クロロホルム分子を包接したcis-ABPX01は、430nm付近の青色発光に加え、760nm付近の近赤外域に極大発光波長を有し(図6の「加熱乾燥前」と表示された発光スペクトル参照)、目視ではtrans-ABPX01に比べてやや赤みがかった青色の発光を示した。

【0106】
〔実施例5:ガス検知材の再生〕
上記実施例4で得られた、分子内にクロロホルム分子を包接した粉末状のcis-ABPX01の結晶を、100℃、200Paで18時間減圧乾燥させることにより、クロロホルム分子を取り除いた。その後、得られた乾燥粉末に、クロロホルム蒸気を6時間噴霧した。

【0107】
図6に、ガス状のクロロホルムの脱離及び再包接に伴う発光強度の変化を示す。図6中、破線は分子内にクロロホルムを包接した粉末状の上記cis-ABPX01の結晶の発光スペクトルを、一点鎖線は100℃、200Paで18時間減圧乾燥させた後の乾燥粉末の発光スペクトルを、実線は乾燥粉末にクロロホルム蒸気を6時間噴霧した後の粉末状の結晶の発光スペクトルを示す。

【0108】
図6に示すように、クロロホルムを包接した上記cis-ABPX01の結晶を、100℃、200Paで18時間減圧乾燥させると、近赤外域の発光強度が増加した。さらに得られた乾燥粉末をガス状のクロロホルムに接触させることにより、近赤外域の発光強度が減圧乾燥前の水準に減少した。

【0109】
上記の結果より、クロロホルムを包接した上記cis-ABPX01の結晶を減圧乾燥することにより、包接したクロロホルムが脱離し、さらに得られた乾燥粉末をガス状のクロロホルムに接触させることにより、再度クロロホルムが包接されたことが確認された。

【0110】
すなわち、本発明に係るガス検知材は、ガスを検知した後も、減圧乾燥することにより、再生して繰り返しガスの検知に用いることができることが示された。

【0111】
上記実施例1~5は、ガスをABPX01の結晶格子内に包接することで、色素分子の集積構造が変化した結果、発色性や発光性が変化することを原理としてガスを検知するものである。また、ABPX01の分子内に包接されたガス分子は、加熱や減圧乾燥などの操作により分子外へ放出できるため、ABPX01の分子内外へのガスの吸蔵と放出を可逆的に行うことができることが示された。

【0112】
〔実施例6:塩化水素ガス、アンモニアガス及びアセトンガスの検知〕
実施例1と同様にして粉末状のABPX01の結晶を製造した。得られたABPX01は、cis-ABPX01とtrans-ABPX01とを1:1の割合で含むものであった。

【0113】
得られた、発色が無色で、青色発光を示す、粉末状のABPX01の結晶100mgに、1.0Mの塩化水素含有ジエチルエーテル溶液を10分間噴霧することによって、ABPX01の結晶を塩化水素ガスに10分間接触させたところ、粉末状のABPX01の結晶は、無色から深紫色に変化した。得られた深紫色の粉末状のABPX01結晶に、30%のアンモニア水を10分間噴霧することによって、ABPX01の結晶をアンモニアガスに10分間接触させたところ、深紫色の粉末状のABPX01結晶は、橙色に変化した。

【0114】
続いて、アンモニアガスを噴霧して得られた橙色の粉末状のABPX01結晶粉末に、アセトン蒸気を10分間噴霧することによって、ABPX01の結晶をアセトンガスに10分間接触させたところ、橙色の粉末状のABPX01結晶は、ピンク色に変化した。得られたピンク色の粉末状のABPX01結晶に、1.0Mの塩化水素含有ジエチルエーテル溶液を10分間噴霧することによって、ABPX01の結晶を塩化水素ガスに10分間接触させたところ、粉末状のABPX01の結晶は、ピンク色から再び深紫色に変化した。

【0115】
ガスの噴霧後に得られた、それぞれの粉末状のABPX01結晶の発光スペクトルを測定した。また、それぞれの粉末状のABPX01結晶の発光を目視により検出した。具体的には、当該粉末状の結晶に365nmのブラックライトを照射し、暗室にて写真を撮影した。さらに、それぞれの粉末状のABPX01結晶の発色を室内灯下(目視)にて写真を撮影した。

【0116】
図7に、ガス状の塩化水素と接触させたABPX01の発色及び発光を目視で検出した結果、及び、その後さらにガス状のアンモニアと接触させたABPX01の発色及び発光を目視で検出した結果を示す。

【0117】
また、図8に、ガス状の塩化水素と接触させたABPX01の発光スペクトル、及び、その後さらにガス状のアンモニアと接触させたABPX01の発光スペクトルを示す。

【0118】
図9に、ガス状のアセトンと接触させたABPX01の発色及び発光を目視で検出した結果、及び、その後さらにガス状の塩化水素と接触させたABPX01の発色及び発光を目視で検出した結果を示す。

【0119】
また、図10に、ガス状のアセトンと接触させたABPX01の発光スペクトル、及び、その後さらにガス状の塩化水素と接触させたABPX01の発光スペクトルを示す。

【0120】
本実施例は、ABPX01が、塩化水素ガス等と化学的に結合し、双性イオン型分子種、又はイオン型分子種(モノカチオン型、ジカチオン型)へ構造変換が起こった結果、発色性及び発光性が変化することにより、ガスを検知するものである。

【0121】
図7~10に示されるように、本実施例では、発色性と発光性とがともに、ガスの種類によって、大きく変化するため、その結果の組合せにより、ガスの検知をより高い精度で行うことができると考えられる。

【0122】
本実施例では、ABPX01の結晶を塩化水素ガスに接触させて得られた深紫色の粉末状のABPX01結晶を出発点としてアンモニアガスを検知できること、及び、このアンモニアガスを噴霧して得られた橙色の粉末状のABPX01結晶粉末を出発点としてアセトンガスを検知できることが示された。

【0123】
〔実施例7:ABPX01のキサンテン環部位の歪みと発色との関係〕
実施例1で得られたcis-ABPX01 100mg及び/又はtrans-ABPX01 100mgの分子内に、溶媒蒸気拡散により、クロロホルム(図11中、「CHCl3」と表示)、ジクロロメタン(図11中、「CH2Cl2」と表示)、エタノール(図11中、「EtOH」と表示)、シクロヘキサン(図11中、「cyclohexane」と表示)、ジエチルエーテル(図11中、「Et2O」と表示)及びテトラヒドロフラン(図11中、「THF」と表示)を包接させた。

【0124】
こうして得られた、上記ガス分子を包接した、cis-ABPX01及び/又はtrans-ABPX01の結晶のキサンテン環部位の分子内の歪みをX線結晶構造解析法により調べた。また、それぞれの粉末状のABPX01結晶の発色を室内灯下(目視)にて写真を撮影した。

【0125】
図11に結果を示す。図11中、ガス分子の名称に括弧書きで添えられている「cis体」及び「trans体」との記載は、用いたABPX01の幾何異性体の種類を示す。図11に示すように、クロロホルムやジクロロメタンを分子内に包接したABPX01のキサンテン環部位は高い平面性を有しており、その結晶はやや濃いピンク色を呈する。一方、シクロヘキサン、テトラヒドロフランを包接した結晶のキサンテン環部位は大きく歪んだ構造をしており、結晶は無色透明となる。

【0126】
上記の結果より、ABPX01は、分子内に取り込むガス分子の種類により、キサンテン環部位に構造的な歪みの違いが生じ、結晶の発色性が異なる性質を有することが判った。本実施例は、上述した分子の歪みに誘起される発色性の違いを利用して、ガスを検知するものである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のガス検知材、ガス検知体、ガス検知器及びガス検知方法によれば、目的のガスが大気中又は閉空間に存在するか否かを、簡便にかつ高い精度や正確度で検知することができる。それゆえ、本発明は、大気分析、環境分析、呼気分析、におい成分の分析等の様々な領域での応用が可能であり非常に有用である。
【0128】
本発明のガス吸蔵放出材によれば、大気中又は閉空間に存在するガスの吸蔵と放出とを簡便な方法で可逆的に行うことができる。それゆえ、本発明は、環境分野、エネルギー分野、医療分野、ヘルスケア分野等の様々な領域での応用が可能であり非常に有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 バッジ式ガス検知器
2 発光検知部
3 発色検知部
4 ガス検知体
5 フィルター
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
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(In Japanese)【図13】
12