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明細書 :放射線検出素子、放射線検出装置および放射線検出素子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6179925号 (P6179925)
公開番号 特開2016-045183 (P2016-045183A)
登録日 平成29年7月28日(2017.7.28)
発行日 平成29年8月16日(2017.8.16)
公開日 平成28年4月4日(2016.4.4)
発明の名称または考案の名称 放射線検出素子、放射線検出装置および放射線検出素子の製造方法
国際特許分類 G21K   4/00        (2006.01)
G01T   1/20        (2006.01)
FI G21K 4/00 B
G01T 1/20 B
G01T 1/20 C
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2014-172299 (P2014-172299)
出願日 平成26年8月27日(2014.8.27)
審査請求日 平成29年4月25日(2017.4.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】亀島 敬
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000877、【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
審査官 【審査官】南川 泰裕
参考文献・文献 特開2010-235388(JP,A)
特開2011-117966(JP,A)
特開2012-026821(JP,A)
特開2011-137665(JP,A)
米国特許出願公開第2011/0121187(US,A1)
米国特許第7135686(US,B1)
調査した分野 G01T 1/00-7/12
G21K 4/00
特許請求の範囲 【請求項1】
可視光に対して透明な基板と、
前記基板と同一材料に添加物を添加することにより、放射線に対して蛍光を発する蛍光板と
を備え、
前記蛍光板は前記基板よりも薄く、
前記基板と前記蛍光板とは屈折率の連続性を保って固相拡散接合されている放射線検出素子。
【請求項2】
前記基板はYAGを含み、前記蛍光板はCeを添加したYAGを含む請求項1に記載の放射線検出素子。
【請求項3】
前記蛍光板における前記基板との接合面とは反対側に蛍光の表面反射を防ぐ反射防止膜をさらに備える請求項1または2に記載の放射線検出素子。
【請求項4】
前記基板における前記蛍光板との接合面とは反対側に蛍光の表面反射を防ぐ反射防止膜をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線検出素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の放射線検出素子と、
前記蛍光板で発した蛍光を結像する結像光学系と、
結像された蛍光を光電変換する光電変換画素が二次元的に配された光電変換素子と
を備える放射線検出装置。
【請求項6】
前記基板の側が前記結像光学系に対向して配される請求項5に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記放射線検出素子、前記結像光学系および前記光電変換素子が一直線上に配される請求項5または6に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
可視光に対して透明な基板と、前記基板と同一材料に添加物を添加することにより放射線に対して蛍光を発する蛍光板とを固相拡散により接合する段階と、
前記蛍光板を薄化する段階と
を備える放射線検出素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出素子、放射線検出装置および放射線検出素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を測定する測定装置において、シンチレーターと透明な補強部材とを接着剤を用いて接合して薄くすることで、シンチレーターの強度を保ちつつ薄くすることが知られている。
特許文献1 特開2012-26821
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、シンチレーターと補強部材とを接着剤を用いて接合すると、シンチレーターと接着剤および接着剤と補強部材との界面でおきる散乱および反射で、センサ上に結像する画像がぼけて解像度が低下する、といった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様における放射線検出素子は、可視光に対して透明な基板と、基板と同一材料に添加物を添加することにより、放射線に対して蛍光を発する蛍光板とを備え、蛍光板は基板よりも薄く、基板と蛍光板とは屈折率の連続性を保って接合されている。
【0005】
本発明の第2の態様における放射線検出装置は、可視光に対して透明な基板と、基板と同一材料に添加物を添加することにより、放射線に対して蛍光を発する蛍光板とを備え、蛍光板は基板よりも薄く、基板と蛍光板とは屈折率の連続性を保って接合されている放射線検出素子と、蛍光板で発した蛍光を結像する結像光学系と、結像された蛍光を光電変換する光電変換画素が二次元的に配された光電変換素子と、を備える。
【0006】
本発明の第3の態様における放射線検出素子の製造方法は、可視光に対して透明な基板と、基板と同一材料に添加物を添加することにより放射線に対して蛍光を発する蛍光板とを固相拡散により接合する段階と、蛍光板を薄化する段階と、を備える。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】放射線検出装置10の断面模式図である。
【図2】放射線検出素子20の斜視模式図である。
【図3】放射線検出素子20の製造方法を説明する図である。
【図4】空間分解能測定装置40の断面模式図である。
【図5】CCDセンサ14から取得された蛍光の点広がり関数のプロファイルを示す。
【図6】放射線検出装置10における放射線を検出する部分の模式図である。
【図7】比較例の放射線検出装置50における放射線を検出する部分の模式図である。
【図8】図7の放射線検出装置50における蛍光の発光位置を説明する模式図である。
【図9】放射線検出装置10で撮影した画像の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。

【0010】
図1は、放射線検出装置10の断面模式図である。放射線検出装置10は、X線などの高エネルギーの放射線の二次元信号を、低いエネルギーの蛍光に変換して計測する間接変換型の放射線二次元検出器である。放射線の一例は、X線自由電子レーザー(以後、XFELと称する場合がある)である。放射線検出装置10は、円筒形状の筐体12とCCDセンサ14と、対物レンズ16と、放射線検出素子20とを有する。

【0011】
放射線検出素子20は、円形板状であって、筐体12の一端面側に配されている。放射線検出素子20は、蛍光物質を含み、矢印18に示す方向から入射した高エネルギーの放射線を多数の低いエネルギーの蛍光に変換する。放射線検出素子20は、CCDセンサ14では検出できない感度領域外の振動数の放射線を、感度領域内の振動数を有する蛍光に変換することによって、CCDセンサ14による検出を可能にしている。なお、放射線検出素子20の形状は、円形に限られず、四角形等いずれの形状であってもよい。

【0012】
CCDセンサ14は、二次元的に配された光電変換画素を有する。CCDセンサ14は、対物レンズ16により結像された可視光を含む感度領域の光を電気信号に変換して出力する。CCDセンサ14は、筐体12の他端面側であって、光電変換画素が配された面が、放射線検出素子20と向き合うように配されている。CCDセンサ14は、光電変換素子の一例であり、CCDセンサ14に代えて、EMCCDセンサやCMOSセンサを用いてもよい。EMCCDセンサには、CCDセンサの読み出し部に電子を増倍する機能が付加されているので、EMCCDセンサを用いることによって、微弱光を高感度で測定できる。CMOSセンサには、高速な読出し方式を使用しているので、CMOSセンサを用いることによって、高いフレームレートで光を測定できる。

【0013】
対物レンズ16は、放射線検出素子20と、CCDセンサ14との間であって、対物レンズ16と、放射線検出素子20と、CCDセンサ14とが一直線上となるように配されている。さらに、CCDセンサ14と、放射線検出素子20と、対物レンズ16とは、CCDセンサ14の光電変換画素が配された面の中心と、放射線検出素子20の中心とが、対物レンズ16の光学中心に一致するように配されていることが好ましい。

【0014】
対物レンズ16は、放射線検出素子20から発光した蛍光をCCDセンサ14の光電変換画素が配された面に結像する。対物レンズ16は、単一のレンズで構成されてもよく、対物レンズと結像レンズとを含む複数のレンズから構成されてもよい。なお、対物レンズ16は、結像光学系の一例である。

【0015】
図2は、放射線検出素子20の斜視模式図である。放射線検出素子20は、基板22と、蛍光板24と、反射防止膜26、28とを有する。

【0016】
基板22は、放射線検出素子20における対物レンズ16側に配されている。基板22に対する可視光である蛍光の透過率は、放射線よりも高く透明であるが、基板22に対する放射線の透過率は、可視光よりも低い。基板22は、YAl12(以後、YAGという)により構成される。なお、YAGは、基板を構成する材料の一例であり、他の材料としてLuSiO、LuYSiO、LuYSiO、GdGa12、CdWO、BiGe12、GdSiO、GdS、YSiO、YbSiO、LuAlO、LuAl12、GdAlGa12、Lu0.70.3AlOの何れか、またはこれらを混合して用いてもよい。

【0017】
蛍光板24は、放射線検出素子20における放射線が入射する側に配されている。蛍光板24は、基板22と同一材料であるYAGに添加物であるCeを添加することにより、放射線に対応して蛍光を発光する。すなわち、蛍光板24は、入射した放射線に対応して蛍光を発光するシンチレーターとして機能する。なお、本実施形態において、Ceを添加したYAGは、波長550nmを中心とした蛍光を発光する。また、Ceは、蛍光板24に添加される添加物の一例であり、他の添加物としてMn、Tl、Sn、Pb、Eu、Tb、La、Gd、Al、Ge、Yb、Nd、Sm、Er、Tm、Am、Prを用いてもよい。

【0018】
基板22の厚さは、取扱い上の強度を保ちながら、蛍光板24を透過する放射線を減衰させて消滅させる厚さが必要である。また、基板22内で生じる球面収差を抑えるため、基板22の厚さを薄くすることが好ましい。本実施形態において、基板22の厚さは、例えば、3mmである。

【0019】
一方、蛍光板24の厚さは、基板22の厚さよりも薄く、その厚さは、1μmから2mmの範囲内であることが好ましい。本実施形態において、蛍光板24の厚みは、例えば、20μmである。蛍光板24を薄くすることによって、蛍光の発光点が放射線の進行方向にばらつくことを防止でき、その結果、放射線検出装置10の空間分解能が向上する。しかしながら、放射線検出装置10の空間分解能は、蛍光の回折限界、より正確に記載すると蛍光波長と対物レンズ16の開口数で決まる回折限界、CCDセンサ14の画素サイズと光学倍率から決まる分解能以上は向上しない。そのため、放射線検出装置10が最も高い空間分解能を得る場合において、CCDセンサ14の画素サイズが蛍光の回折限界サイズより小さくなるよう高い倍率で結像する光学系、具体的には対物レンズ16を使用するうえで、蛍光板24の厚さを、放射線検出装置10の分解能が、蛍光の回折限界となる厚さとすることが望ましい換言すれば、蛍光板24の厚さを、蛍光の回折限界で決まる焦点深度となる厚さとすることが好ましい。さらに、蛍光板24の厚さは、目標の視野と空間分解能、蛍光の発光量が確保できること、および、基板22と固拡散接合しても蛍光物質であるCeを添加された領域が蛍光板24全面に確保できることを考慮して定められる。

【0020】
蛍光板24は、基板22とは屈折率の連続性を保って接合される。ここで、屈折率の連続性を保って接合されるとは、蛍光板24と基板22との接合界面の屈折率構造が実質的に一様であることをいう。例えば、YAGから構成される基板22の屈折率と、YAGにCeを添加した蛍光板24の屈折率との差は0.1%のオーダーであり、基板22と蛍光板24とを接合した場合における接合界面の屈折率構造は、一様であるといえる。そして、蛍光板24と基板22との接合界面の屈折率構造を実質的に一様とすることで、当該接合界面における蛍光の散乱、屈折および反射を防止できる。

【0021】
接合された基板22および蛍光板24の両端面には、それぞれ反射防止膜26および反射防止膜28が配されている。反射防止膜26は、基板22における蛍光板24との接合面とは反対側の面に配されている。反射防止膜26は、蛍光板24から発光する蛍光の反射を防止する。反射防止膜26は、例えば、蛍光の波長の1/4に相当する厚さの薄膜である。本実施形態において、Ceを添加したYAGの蛍光の波長は550nmであるので、反射防止膜26は、550nmの1/4に相当する137.5nmの厚さの薄膜である。反射防止膜26は、基板22と反射防止膜26との界面で反射する反射光を、反射防止膜26の表面で反射する反射光で打ち消すことによって、蛍光の反射を防止する。また、反射防止膜26として、二層以上の誘電体膜をコートした多層膜を用いてもよい。

【0022】
反射防止膜28は、蛍光板24における基板22との接合面とは反対側の面に配されている。反射防止膜28は、蛍光板24から発光する蛍光の反射と、基板22における蛍光板24との接合面とは反対側の面でおきる蛍光の反射光の再度の反射を防止する。なお、反射防止膜28の構成は、反射防止膜26と同じであるので、反射防止膜28の構成の説明は省略する。

【0023】
図3は、放射線検出素子20の製造方法を説明する図である。図3(a)は、基板22と蛍光板24とをそれぞれ準備する段階を示している。この状態において、例えば、基板22の厚さは3mmであり、蛍光板24の厚さは1mmである。なお、基板22および接合前の蛍光板24の厚さは、扱いやすさ等を考慮して、適宜、決定してよい。

【0024】
図3(b)は、基板22と蛍光板24とを固拡散により接合する段階を示している。基板22の接合面は、蛍光板24の接合面と重ね合わされて固拡散接合される。なお、基板22と蛍光板24とを重ね合わせる前に、基板22の蛍光板24との接合面を研磨して平滑化してもよい。同様に、蛍光板24の基板22との接合面を研磨して平滑化してもよい。接合面を平滑化することによって、基板22と蛍光板24との接触面積を広くすることができる。これにより、固拡散接合の信頼性を向上できる。

【0025】
また、基板22と蛍光板24とを重ね合わせる前に、基板22の蛍光板24との接合面を洗浄してもよい。同様に、蛍光板24の基板22との接合面を洗浄してもよい。固拡散接合において、基板22と蛍光板24の接合面に汚れが付着していると、その部分においてそれぞれの原子の拡散は進行せず、固拡散接合の接合強度が弱くなる。接合面を洗浄することによって、汚れを除去でき、これにより、固拡散接合の信頼性を向上できる。

【0026】
また、固拡散接合において、基板22と蛍光板24を、それぞれ接合する方向に加圧してもよい。基板22と蛍光板24とを接合する方向に加圧することによって、基板22と蛍光板24の界面を密着させることができる。これにより、固拡散接合の信頼性を向上できる。

【0027】
さらに、固拡散接合において、基板22と蛍光板24を加熱してもよい。基板22と蛍光板24とを加熱することによって、接合面における基板22の原子および蛍光板24の原子の拡散を促進させる。これにより、固拡散接合の接合強度を向上させることができる。

【0028】
図3(c)は、蛍光板24を研磨して薄化する状態を示している。蛍光板24は、基板22が接合されていない側の面から研磨されて薄化される。なお、研磨は、例えば、化学機械研磨(以後、CMPと称する場合がある)により行われ、厚さ1mmの蛍光板24は、20μmに薄化される。なお、蛍光板24の厚さは、4μmであってもよく、2μmであってもよく、また、1μmであってもよい。また、研磨は、切削等機械的な研磨であってもよい。蛍光板24は、厚さ3mmの基板22と接合されることによって補強されるので、蛍光板24を破損することなく蛍光板24を1μmの厚さまで薄化できる。また、このように、CMPにより、放射線が入射する側から蛍光板24を薄化することによって、蛍光板24の放射線が入射する側の面を高い精度で平坦化できる。

【0029】
図3(d)は、接合された蛍光板24と基板22の両端面に、反射防止膜26および反射防止膜28を設ける段階を示している。上述したように、反射防止膜26は、基板22の側面であって、蛍光板24が設けられていない側の面に配されている。また、反射防止膜28は、蛍光板24の側面であって、基板22が設けられていない側の面に配されている。反射防止膜26および反射防止膜28は、例えば、真空蒸着法によりそれぞれの面に配される。

【0030】
図4は、空間分解能測定装置40の断面模式図である。図4を用いて、本実施形態における放射線検出素子20の空間分解能について説明する。空間分解能測定装置40は、φ10μmのピンホールが設けられたピンホール板42と、放射線検出素子20と、対物レンズ16と、CCDセンサ14とを有する。なお、図4において、図1と同じ要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省略する。

【0031】
空間分解能の測定として、まず、XFELを、ピンホール板42に設けられたφ10μmのピンホールを通過させる。これにより、放射線検出素子20に入射するXFELをφ10μmに切り出した。

【0032】
次に、φ10μmに切り出したXFELを、放射線検出素子20に入射して蛍光を発光させる。放射線検出素子20から発光した蛍光を、対物レンズ16を用いてCCDセンサ14に結像させる。これにより、CCDセンサ14から、対物レンズ16によって結像された蛍光の点広がり関数のプロファイルを取得した。

【0033】
次に、放射線検出素子20の位置におけるφ10μmに切り出したXFELの点広がり関数のプロファイルを取得した。そして、CCDセンサ14から取得した点広がり関数のプロファイルから、放射線検出素子20の位置におけるφ10μmに切り出したXFELの点広がり関数のプロファイルをデコンボリューションして、放射線検出素子20および対物レンズ16から構成される光学系の空間分解能を算出した。

【0034】
図5は、CCDセンサ14から取得された蛍光の点広がり関数のプロファイルを示す。図5の縦軸は、受光した蛍光のカウント数を示し、横軸は、受光した蛍光を受光した画素位置を示す。CCDセンサ14から取得した点広がり関数のプロファイルから算出される半値幅は、12μmであった。関数放射線検出素子20の位置におけるφ10μmに切り出したXFELの点広がり関数のプロファイルから算出される半値幅は、9μmであった。

【0035】
ここで、CCDセンサ14から取得した点広がり関数のプロファイルをAとし、その半値幅をaとする。また、放射線検出素子20の位置におけるφ10μmに切り出したXFELの点広がり関数のプロファイルをBとし、その半値幅をbとする。また、放射線検出素子20からCCDセンサ14までの点広がり関数のプロファイルをCとし、その半値幅をcとする。すると、プロファイルAは、プロファイルBとプロファイルCとをコンボリューションしたプロファイルであるので、これらをデコンボリューションするとともに、それぞれをプロファイルの半値幅で表現すると以下の関係式(1)が成り立つ。

【0036】
a=[(b)+(c)1/2・・・(1)

【0037】
関係式(1)を用いて、aに12、bに9を代入して、半値幅cを算出すると、半値幅cは7.9となる。これにより、放射線検出素子20からCCDセンサ14までの空間分解能は、半値幅で約8μmの空間分解能を持つことがわかる。

【0038】
また、空間分解能測定装置40を用いて、空間分解能の測定を6時間程度行ってもCCDセンサ14に不具合はなかった。このことは、基板22によって、XFELが減衰されて、XFELがCCDセンサ14に到達していないことを示している。なお、仮に、XFELがCCDセンサ14に到達すると、XFELが光電変換素子を破壊してCCDセンサ14の動作が停止する、もしくは、CCDセンサ14の暗電流が増加してノイズが大きくなる、といった不具合が発生する。

【0039】
図6は、放射線検出装置10における放射線を検出する部分の模式図である。図6を用いて、本実施形態に係る放射線検出装置10および放射線検出素子20の効果について説明する。図6において、図1と同じ要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省略する。

【0040】
本実施形態において、放射線検出素子20における基板22と蛍光板24は、同一材料であるYAGから構成されている。さらに、基板22と蛍光板24は、屈折率の連続性を保って接合されているので、蛍光板24から発光した蛍光は、基板22と蛍光板24との界面で屈折しない。仮に、蛍光が基板22と蛍光板24との界面で屈折したとすると、屈折した蛍光は、球面収差による影響で、対物レンズ16によってCCDセンサ14上で合焦しない。したがって、基板22と蛍光板24との界面を屈折率の連続性を保って接合することで、接合界面での蛍光の屈折を防止でき、これにより対物レンズ16によってCCDセンサ14上に結像する像の解像度を向上できる。

【0041】
また、基板22と蛍光板24とを屈折率の連続性を保って接合することによって、蛍光板24から発光した蛍光が、蛍光板24と基板22との接合界面で反射することも防止できる。当該界面で蛍光が反射すると、対物レンズ16によってCCDセンサ14上に結像する像の光量が減少する。したがって、界面での反射を抑制することで、CCDセンサ14上に結像する像の光量を増やすことができ、放射線検出装置10の感度を高めることができる。

【0042】
また、蛍光板24と基板22との接合界面で蛍光が反射すると、放射線検出装置の解像度が低下する。当該反射により放射線検出装置の解像度が低下する説明を、図7を用いて行う。

【0043】
図7は、比較例に係る放射線検出装置50における放射線を検出する部分の模式図である。放射線検出装置50は、放射線検出素子52と、対物レンズ16と、CCDセンサ14とを有する。また、放射線検出素子52は、蛍光板54と基板56とを接着剤58により接合されて構成されている。放射線検出装置50と図1に示した放射線検出装置10との違いは、放射線検出素子52が蛍光板54と基板56とが接着剤58により接着されて構成されていること、蛍光板54の厚さが厚いこと、および反射防止膜26、28が設けられていないこと、である。

【0044】
一般に、接着剤58の屈折率は、蛍光板54の屈折率および基板56の屈折率と異なる。接着剤58の屈折率が、蛍光板54の屈折率と異なる場合において、蛍光板54と接着剤58との界面における屈折率の変化により蛍光が反射する。同様に接着剤58の屈折率が基板56の屈折率と異なる場合において、接着剤58と基板56との界面における屈折率の変化により、蛍光が反射する。

【0045】
これらの反射光は、さらに、蛍光板54の表面で反射して、対物レンズ16に入射する。対物レンズ16に入射した反射光は、CCDセンサ14上で合焦しないので、CCDセンサ14上で結像する像にCCDセンサ14上で合焦しない成分が混じり、CCDセンサ14上に結像する像の解像度が低下する。これらの反射光は、蛍光板54と空気との界面、蛍光板54と接着剤58の界面、接着剤58と基板56の界面、基板56と空気との界面のそれぞれで一定の反射率で反射を繰り返し、光軸と垂直方向に広がっていく。その過程の中で基板56と空気との界面を透過した成分が対物レンズ16に入射する。これらの反射を繰り返し、対物レンズ16に入射した蛍光成分は、CCDセンサ14上で合焦しないので、CCDセンサ14上で結像する像にCCDセンサ14上で合焦しない成分が混じり、CCDセンサ14上に結像する像の解像度が低下する。

【0046】
一方、本実施形態における放射線検出素子20は、基板22と蛍光板24とを固拡散接合により接合しているので、基板22と蛍光板24との界面において屈折率が変化しない。これにより、CCDセンサ14上で合焦しない成分が混じることを防止でき、対物レンズ16によってCCDセンサ14上に結像する像の解像度が低下することを防止できる。

【0047】
図8は、図7の放射線検出装置50における蛍光の発光位置を説明する模式図である。放射線が蛍光板54に入射すると、蛍光は、蛍光板54の厚み方向にずれた複数の位置から発光する。厚み方向にずれた複数の位置から発光された蛍光は、対物レンズ16により結像される位置が異なる。したがって、複数の位置から発光された蛍光のうち、ある位置から発光された蛍光がCCDセンサ14上で結像するように対物レンズ16の位置を調整すると、他の位置から発光された蛍光はCCDセンサ14上で合焦しない成分となり、CCDセンサ14上に結像する像の解像度が低下する。

【0048】
図8に示した放射線検出装置50において、対物レンズ16の位置は、放射線が入射する側面に近い位置から発光する蛍光がCCDセンサ14上で結像するように調整されている。この場合において、放射線が入射する側面から離れた位置から発光する蛍光は、CCDセンサ14の位置よりも対物レンズ16から遠くなる位置で結像する。これにより放射線検出装置50の解像度は低下する。

【0049】
本実施形態における放射線検出素子20において、蛍光板24の厚さを薄くすることで、蛍光の発光点が放射線の進行方向にばらつくことを防止できる。例えば、蛍光板24の厚さを1μmにすることで、放射線検出素子20の空間分解能を、蛍光板24が発光する蛍光の回線限界で定まる空間分解能とすることができる。

【0050】
放射線検出装置10の空間分解能と感度は蛍光板24の厚みに対し、トレードオフとなる。蛍光板24の厚みが薄い場合、空間分解能は高くなるが蛍光の発光量は小さくなる。例えば、蛍光板24の厚さが300μmであれば、10KeVの光子エネルギーを持つX線の信号を99.4%蛍光板で検出できる。蛍光板24の厚さが20μmあれば、10 KeVの光子エネルギーを持つX線の信号を29%蛍光板で検出できる。蛍光板24の厚さがμmあれば、10KeVの光子エネルギーを持つX線の信号を1.7%蛍光板で検出できる。X線信号の検出率が低くなる問題は、蛍光板24に使用する材質を、より原子番号・密度が大きい材質に変更することで改善できる。

【0051】
また、本実施形態において、蛍光板24の放射線が入射する側の面は、CMPによって蛍光板24を薄化する過程において、高い精度で平坦化される。これにより、入射する放射線が、蛍光板24の表面で散乱することが抑制され、放射線検出装置10の感度と空間分解能を高めることができる。

【0052】
また、本実施形態において、基板22の厚みは、蛍光板24を透過した放射線を減衰させて、放射線を通過させない3mmの厚さを有している。従来の装置においては、対物レンズ16およびCCDセンサ14を放射線の曝露から防ぐことを目的として、蛍光をミラーで反射させてCCDセンサ14に入力させていた。しかしながら、本実施形態においては、放射線耐性の高い基板22で放射線は消滅しているので対物レンズ16およびCCDセンサ14に到達しない。そのため、本実施形態の放射線検出装置10は、ミラーを設けることなく、対物レンズ16を用いて、蛍光をCCDセンサ14に結像できる。これにより、放射線検出装置10のコンパクト化、放射線検出装置10の光学系設計の自由度の向上、さらには低コスト化が実現できる。

【0053】
さらに、ミラーを無くすことによって、対物レンズ16を放射線検出素子20に近づけて配置できる。これにより、対物レンズ16と放射線検出素子20との距離であるワークングディスタンスは短くなり、対物レンズ16の開口数を大きくできる。これにより、放射線検出装置10の感度と解像度を高めることができる。

【0054】
なお、対物レンズ16とCCDセンサ14との間にミラーを設置して、放射線入射方向に対して、CCDセンサ14への蛍光の入射方向が垂直になるようにした放射線検出装置においても、本実施形態の放射線検出素子20を用いることができる。これにより、放射線検出装置の幅を短くできる。さらに、放射線検出装置を低倍率・広視野とするべく、ワーキングディスタンスを長くする場合であっても、対物レンズ16とCCDセンサ14との間にミラーを設置して、放射線入射方向に対して、CCDセンサ14への蛍光の入射方向を垂直にすることによって、放射線検出装置の幅を長くすることなく対応できる。

【0055】
また、本実施形態において、基板22の厚さは、蛍光板24を透過した放射線を透過させない厚さであって、なるべく薄くされている。基板22を薄くすると、蛍光板24から発光した蛍光が透過する基板22内の光路を短くなるので、基板22による球面収差を小さくできる。球面収差は、結像する像にぼけや歪みを生じさせるので、球面収差を小さくすることによって、放射線検出装置10の解像度を高めることができる。さらに、例えば、対物レンズ16に補正環を設けることによって、球面収差を補正することも可能となる。なお、基板22をおよそ500μm以下にすれば、市販の補正環付対物レンズで球面収差を完全に修正できる。また、基板22は、300μmまでならば、通常の機械加工・研磨工程のみで薄化できる。

【0056】
さらに、基板22を薄くすることによって、対物レンズ16を放射線検出素子20に近づけられる。そして、さらにワークングディスタンスを短くすることによって、さらに対物レンズ16の開口数を大きくできる。これにより、放射線検出装置10の感度と解像度をさらに高めることができる。

【0057】
また、本実施形態において、反射防止膜26を設けているので、蛍光板24から発光する蛍光が、基板と空気との界面で反射することを防止できる。さらに、反射防止膜28を設けることによって、蛍光板24から、放射線が入射した方向に発光した蛍光が、蛍光板24と空気との界面で反射することを防止できる。これらの反射光は、CCDセンサ14上で合焦しない成分となりこれにより解像度が低下する。そのため、反射防止膜26および反射防止膜28の少なくとも何れか一方を設けることによって、これらの反射光の発生を抑制でき、放射線検出装置10の解像度の低下を抑制できる。

【0058】
図9は、放射線検出装置10で撮影した画像の一例を示す。図9に示した画像は、厚さ10μmの蛍光板24と、厚さ2.990mmの基板とを固相拡散接合した放射線検出素子20を備え、空間分解能が8μmの放射線検出装置10を用いて撮像した蟻のレントゲン写真である。蟻のレントゲン写真は、SPring‐8の2mm角のビームを使い、1回のビームで撮像されている。そして、撮像されて生成された画像には、バックグラウンド画像の差分処理、およびピクセル単位のX線強度の規格化処理が行われている。図9に示した蟻のレントゲン写真から、放射線検出装置10は、蟻の触角、足の内部の骨格構造および腹部の内臓の様子を高いコントラストで撮像できることが見て取れる。

【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【0060】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0061】
10、50 放射線検出装置、12 筐体、14 CCDセンサ、16 対物レンズ、18 矢印、20、52 放射線検出素子、22、56 基板、24、54 蛍光板、26、28 反射防止膜、40 空間分解能測定装置、42 ピンホール板、58 接着剤
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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