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明細書 :クローラ型ロボット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-123372 (P2019-123372A)
公開日 令和元年7月25日(2019.7.25)
発明の名称または考案の名称 クローラ型ロボット
国際特許分類 B62D  55/065       (2006.01)
B62D  57/02        (2006.01)
FI B62D 55/065
B62D 57/02 N
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2018-005241 (P2018-005241)
出願日 平成30年1月16日(2018.1.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物 第18回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会予稿集論文 平成29年12月20日 集会 第18回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会スポットライトセッション 平成29年12月20日 集会 第18回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会インタラクティブセッション 平成29年12月20日
発明者または考案者 【氏名】永瀬 純也
【氏名】福永 二三佳
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求 未請求
要約 【課題】簡易な構造でありながら、能動的な配管内の進路選択が可能なクローラ型ロボットを提供する。
【解決手段】このクローラ型ロボット1は、中空孔2aを形成する壁部にクローラベルトコア部2bが形成されそれにスライド部2baが形成されたフレームと、回転トルク生成部3と、回転トルクによって中心軸Xのまわりを回転しウォーム歯部41が形成されたウォーム4と、クローラベルトコア部2bに巻かれて配置され、ウォーム歯部41にかみ合い得る多数の突起したクローラベルト歯部51が外周面に形成されており、それらの一部がウォーム歯部41に接触してかみ合うことでウォーム4の回転に追従して回動するクローラベルト5と、クローラベルト5を回動させないときは、クローラベルト歯部51がウォーム歯部41にかみ合わないようにスライド部2baを長手方向にスライド可能な非固定状態に制御するクローラベルト回動制御部6と、を備える。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
長手方向の中心軸に沿って中空孔を有するとともに、該中空孔を形成する壁部に複数のクローラベルトコア部が形成され、該クローラベルトコア部の各々にスライド部が形成されたフレームと、
前記中空孔に収容され、回転トルクを生成する回転トルク生成部と、
前記中空孔に収容され、前記回転トルクによって中心軸のまわりを回転し、螺旋状の突起したウォーム歯部が側面に形成されたウォームと、
前記ウォームの側面の外方に前記クローラベルトコア部の各々に巻かれて配置される輪状のものであって、前記ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る多数個の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、該多数個のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部が前記ウォーム歯部に接触してかみ合うと該ウォームの回転に追従して回動する複数のクローラベルトと、
各々のクローラベルトに対して設けられ、該クローラベルトを回動させないときは、該クローラベルトの前記クローラベルト歯部が前記ウォーム歯部にかみ合わないように前記スライド部を長手方向にスライド可能な非固定状態に制御し、該クローラベルトを回動させるときは、該クローラベルトの一部の前記クローラベルト歯部が前記ウォーム歯部にかみ合う位置で前記スライド部を固定状態に制御する複数のクローラベルト回動制御部と、
を備えることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記クローラベルト回動制御部は、リニアアクチュエータを有しており、該リニアアクチュエータの移動体の移動により前記スライド部の非固定状態と固定状態を制御することを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項3】
請求項2に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記クローラベルト回動制御部の前記リニアアクチュエータは、前記スライド部の前記固定状態では、伸張状態となって前記スライド部の移動を制限し、前記スライド部の前記非固定状態では、縮小状態となって前記スライド部の移動を制限しないことを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項4】
請求項3に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記クローラベルト回動制御部は、前記スライド部を前記固定状態の位置に戻す復元力を有する弾性体を更に有していることを特徴とするクローラ型ロボット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内の走行に好適なクローラ型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の進入が難しい場所での検査や探索等の作業は、その場所を適切に走行可能なロボットに行わせることが好ましい。そのようなロボットとしては、種々のものが知られている。その中で、クローラ(無限軌道)型ロボットは、クローラのクローラベルトが地面に接することで地面の状態に柔軟に対応して走行することが可能であるといったメリットを有する。
【0003】
産業用の分野では、個々の作業に特化したクローラ型ロボットが提案されている。例えば、特許文献1及び2などには、工場の配管内の検査等を行う配管内作業用のものが提案されている。特許文献1に記載のクローラ型ロボットは、3個のクローラが中心軸に対して互いに回転対称な位置に設けられ、それらのクローラが半径方向に移動可能であるものである。3個のクローラベルトが配管の内壁に押し付けられることで、配管が傾斜したり垂直になったりしていても走行できる、としている。特許文献2に記載のクローラ型ロボットは、2個のクローラがハの字型に設けられたものである。2個のクローラにより、安定して配管内を走行できる、としている。
【0004】
その一方、近年、災害等が起こった場合に被害者の探索や救助又は被害物の検査などを行うレスキュー用のロボットが注目されている。レスキュー用のクローラ型ロボットとしては、例えば、特許文献3には、クローラを左右に設けたクローラ装置を2種類備え、大きな段差を容易に乗り越えることができるように、2種類のクローラ装置のどちらかを地面の状況に応じて選択するようなクローラ型ロボットが提案されている。また、特許文献4には、瓦礫の狭い空間にも進入し得るように、上下2段に積層したクローラの一対をロボット本体の左右それぞれに設けたクローラ型ロボットが提案されている。
【0005】
特許文献5、6には、配管内作業用やレスキュー用などに利用可能なものであって、配管や瓦礫の中などの非常に狭い空間への進入が容易なように、単一のウォームと、その側面の外方に配置されそれに追従して回動する複数のクローラベルトを備えているクローラ型ロボットが提案されている。このウォームは、螺旋状の突起したウォーム歯部が側面に形成されており、回転トルク生成部(ギヤモータ)によって回転する。クローラベルトは、ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る複数の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、その複数のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部がウォーム歯部にかみ合うことで、ウォームの回転に追従して回動する。このクローラ型ロボットは、簡易な構造でありながら、様々な管内径の水平管内及び垂直管内を走行可能な利点を有する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-220049号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133667号公報
【特許文献3】特開2007-237991号公報
【特許文献4】特開2008-213671号公報
【特許文献5】特開2014-193707号公報
【特許文献6】特開2017-036018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、配管に分岐が有る場合、クローラ型ロボットは、能動的な進路選択ができることが望ましい。これを実現する単純な方法は、クローラの各々を別個に回転トルク生成部(ギヤモータ)で駆動できるようにすることであるが、クローラ型ロボット全体のサイズ及び重量が増大したり構造が複雑になったりする。また、そうすると、管内径の小さな配管に使用できなくもなり得る。
【0008】
そこで、本願発明者は、特許文献5、6に提案されているクローラ型ロボットの基本構造を踏襲して、簡易な構造でありながら、配管に分岐が有る場合、能動的な進路選択が可能なクローラ型ロボットを案出した。
【0009】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造でありながら、配管に分岐が有る場合、能動的な進路選択が可能なクローラ型ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のクローラ型ロボットは、長手方向の中心軸に沿って中空孔を有するとともに、該中空孔を形成する壁部に複数のクローラベルトコア部が形成され、該クローラベルトコア部の各々にスライド部が形成されたフレームと、前記中空孔に収容され、回転トルクを生成する回転トルク生成部と、前記中空孔に収容され、前記回転トルクによって中心軸のまわりを回転し、螺旋状の突起したウォーム歯部が側面に形成されたウォームと、前記ウォームの側面の外方に前記クローラベルトコア部の各々に巻かれて配置される輪状のものであって、前記ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る多数個の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、該多数個のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部が前記ウォーム歯部に接触してかみ合うと該ウォームの回転に追従して回動する複数のクローラベルトと、各々のクローラベルトに対して設けられ、該クローラベルトを回動させないときは、該クローラベルトの前記クローラベルト歯部が前記ウォーム歯部にかみ合わないように前記スライド部を長手方向にスライド可能な非固定状態に制御し、該クローラベルトを回動させるときは、該クローラベルトの一部の前記クローラベルト歯部が前記ウォーム歯部にかみ合う位置で前記スライド部を固定状態に制御する複数のクローラベルト回動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載のクローラ型ロボットは、請求項1に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記クローラベルト回動制御部は、リニアアクチュエータを有しており、該リニアアクチュエータの移動体の移動により前記スライド部の非固定状態と固定状態を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載のクローラ型ロボットは、請求項2に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記クローラベルト回動制御部の前記リニアアクチュエータは、前記スライド部の前記固定状態では、伸張状態となって前記スライド部の移動を制限し、前記スライド部の前記非固定状態では、縮小状態となって前記スライド部の移動を制限しないことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載のクローラ型ロボットは、請求項3に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記クローラベルト回動制御部は、前記スライド部を前記固定状態の位置に戻す復元力を有する弾性体を更に有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクローラ型ロボットによれば、簡易な構造でありながら、配管に分岐が有る場合、能動的な進路選択が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るクローラ型ロボットを示す斜視図である。
【図2】同上のクローラ型ロボットの正面視断面図である。
【図3A】同上のクローラ型ロボットの図2のA-Aで示す切断面で切断し他方の端部側から見た断面図である。
【図3B】同上のクローラ型ロボットの図2のB-Bで示す切断面で切断し他方の端部側から見た断面図である。
【図3C】同上のクローラ型ロボットの図2のC-Cで示す切断面で切断し他方の端部側から見た断面図である。
【図4】同上のクローラ型ロボットの回転トルク生成部とウォームの正面図である。
【図5】同上のクローラ型ロボットの図2のC-Cで示す切断面で切断し他方の端部側から見た断面図であって、スライド部の上側3つが非固定状態の場合を示したものである。
【図6】同上のクローラ型ロボットのスライド部の上側3つが非固定状態の場合を示す斜視図である。
【図7】同上のクローラ型ロボットのスライド部の上側が非固定状態の場合を示す正面視断面図である。
【図8】同上のクローラ型ロボットに分岐などを検知するための部品と外部からの電力及び制御信号を受けるための部品を取り付けた例を示す正面視断面図である。
【図9A】同上のクローラ型ロボットの動作実験を示す写真であって、途中に分岐の有る配管を上から下に直進する様子を示すものである。
【図9B】同上のクローラ型ロボットの動作実験を示す写真であって、途中に分岐の有る配管を上側から入って分岐側に進路を変える様子を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るクローラ型ロボット1は、図1に示すように、大略柱形状をなしたものである。このクローラ型ロボット1は、図2に示すように、フレーム2と、回転トルク生成部3と、ウォーム4と、複数の(本実施形態では6つの)クローラベルト5、5、・・・と、複数の(本実施形態では6つの)クローラベルト回動制御部6、6、・・・と、を備えている。なお、図1(及び図6)においては、後述するスライド部2baを理解し易いように灰色(見た目が灰色)で示している。また、図2(及び後述する図7、図8)においては、背景に見える他のクローラベルト5、5は省略しており、また、内部の電気配線についても省略している。

【0017】
フレーム2は、大略筒状をなし、長手方向の中心軸Xに沿って中空孔2aを有する。フレーム2において中空孔2aを形成する壁部は、図2、図3A、図3B、図3Cに示すように、後に詳述するクローラベルト5が巻かれるクローラベルトコア部2bと、クローラベルト5が巻かれないクローラベルト間部2cと、が、中心軸Xの軸回りに複数(本実施形態では6つずつ)交互に設けられている。このフレーム2は、例えば、硬い樹脂製のものを用いることができる。

【0018】
クローラベルトコア部2bの各々には、スライド部2baが形成されている。スライド部2baは、後述するクローラベルト回動制御部6によって、長手方向にスライド可能な非固定状態とスライドできない固定状態になり得る。クローラ型ロボット1の他方の端部1bにおいて、スライド部2baの外端部2bbには、クローラベルト5の折り返し部分が接触する。また、スライド部2baは、スライド部2baの支持のために、フレーム2におけるスライド部2ba以外の部分に差し込まれる差し込み部2baaを有している(図3A等参照)。

【0019】
回転トルク生成部3は、ギヤモータ(又はギヤ付きでないモータ)を用いることができる。回転トルク生成部3は、フレーム2の中空孔2aに収容され、クローラベルト間部2cから内方に延びた部分(図3B参照)によって動かないように固定されている。回転トルク生成部3は、電力が供給されると、その出力軸部3a(図4参照)が中心軸Xのまわりを回転する。なお、回転トルク生成部3の中心軸Xは、次に述べるウォーム4の中心軸Xと共通である。

【0020】
ウォーム4は、回転トルク生成部3が生成した回転トルクによって中心軸Xの回りを回転する単一のものである。ウォーム4は、フレーム2の中空孔2aに収容されている。ウォーム4は、中心部に回転トルク生成部3の出力軸部3aが接続されている。ウォーム4は、例えば、硬い樹脂製のものを用いることができる。ウォーム4は、その外側面に螺旋状の突起したウォーム歯部41が形成されている(図4参照)。

【0021】
クローラベルト5は、ウォーム4の外側面の外方に配置され、無限軌道を形成するように、閉じて輪状になっており、フレーム2のクローラベルトコア部2bに巻かれて配置されている(図2参照)。複数のクローラベルト5、5、・・・は、中心軸Xの軸回りに略等間隔に配置されている(図3A、図3B、図3C参照)。

【0022】
クローラベルト5は、クローラ型ロボット1の一方の端部1aと他方の端部1bにおいて折り返すので、柔軟性を有する材料(弾性体)からできており、例えば、シリコーンゴム製である。また、クローラベルト5は、フレーム2の外部側に位置する部分が、様々な外圧に応じて変形することが可能なように比較的大きく撓んだ形状になっている。

【0023】
クローラベルト5の外周面には、突起し少し斜めにクローラベルト5を横断する形状のクローラベルト歯部51が多数形成されている。クローラベルト5は、フレーム2のスライド部2baが固定状態のとき、クローラベルトコア部2bの内部側に位置する一部のクローラベルト歯部51が単一のウォーム4のウォーム歯部41とかみ合い得るように配置される(図2等参照)。クローラベルト5は、多数のクローラベルト歯部51のうちの一部のクローラベルト歯部51がその歯部接触面51a(図1及び図2参照)においてウォーム歯部41に接触してかみ合うことでウォーム4の回転に追従して回動する。こうして、回転トルクがウォーム4からクローラベルト5に伝達される。

【0024】
回動するクローラベルト5は、クローラベルトコア部2bの外部側と内部側(中心軸X側)において長手方向に動く。他方の端部1b側(図2において左側)から見て右回りにウォーム4が回転すると、クローラベルト5は、クローラベルトコア部2bの内部側に位置したクローラベルト歯部51がかみ合ったウォーム4のウォーム歯部41に歯部接触面51aが押されて、クローラ型ロボット1の他方の端部1bから一方の端部1aに向かって(図2において左から右へ)長手方向に動き、その一方の端部1aで折り返し、クローラベルトコア部2bの外部側に位置したクローラベルト歯部51がクローラ型ロボット1の一方の端部1aから他方の端部1bに向かって(図2において右から左へ)長手方向に動き、その他方の端部1bで折り返す。なお、フレーム2の固定状態のスライド部2baの外端部2bbには、クローラベルト5によって他方の端部1bから一方の端部1aに向かう力がかかる。

【0025】
クローラベルト回動制御部6は、各々のクローラベルト5に対して設けられている。クローラベルト回動制御部6は、クローラベルト5を回動させるときは、スライド部2baを固定状態に制御して、クローラベルト5の一部のクローラベルト歯部51がウォーム歯部41にかみ合うようにする。クローラベルト回動制御部6は、また、クローラベルト5を回動させないときは、フレーム2のスライド部2baを長手方向にスライド可能な非固定状態に制御して、クローラベルト5のクローラベルト歯部51がウォーム歯部41にかみ合わないようにする。

【0026】
クローラベルト回動制御部6は、フレーム2のスライド部2baの固定状態と非固定状態を制御すリニアアクチュエータ61を有するようにすることができる(図3C及び図5参照)。リニアアクチュエータ61は、移動体61aと本体部61bを有している。リニアアクチュエータ61の本体部61bの底部は、回転トルク生成部3における出力軸部3a以外の部分又はフレーム2におけるスライド部2ba以外の部分などに固定される。リニアアクチュエータ61は、移動体61aの移動により、少なくとも、本体部61bの底部から移動体61aが離れてそれらの間の距離が伸張した伸張状態と移動体61aが近づいてそれらの間の距離が縮小した縮小状態の2状態になることができるものである。クローラベルト回動制御部6は、リニアアクチュエータ61の移動体61aの移動によりフレーム2のスライド部2baの固定状態と非固定状態を制御する。リニアアクチュエータ61は、同じく動力を生じるものである回転トルク生成部3に比べ非常に小さいサイズのものである。

【0027】
より詳細には、クローラベルト回動制御部6のリニアアクチュエータ61は、スライド部2baの固定状態では、伸張状態となってスライド部2baの移動を制限し、スライド部2baの非固定状態では、縮小状態となってスライド部2baの移動を制限しないようにすることができる。

【0028】
例えば、リニアアクチュエータ61は、スライド部2baの固定状態では、図3Cに示すように、伸張状態となってスライド部2ba(より具体的には差し込み部2baa)の内端部2bc(外端部2bbの反対側の端部)に接してスライド部2baの移動を阻止し、スライド部2baの非固定状態では、図5に示すように、縮小状態となってスライド部2baの移動を阻止しないようにすることができる。なお、図3C(及び図5)は、回転トルク生成部3における出力軸部3a以外の部分にそれぞれの本体部61bが固定されたリニアアクチュエータ61、61、・・・が現れる位置(図2のC-Cで示す位置)で切断した断面図である。図3Cでは、全てのリニアアクチュエータ61、61、・・・が伸張状態であり、図5では、上側の3つのスライド部2ba、2ba、・・・に対応する3つのリニアアクチュエータ61、61、・・・が縮小状態、下側の3つのスライド部2ba、2ba、・・・に対応する3つのリニアアクチュエータ61、61、・・・が伸張状態である。

【0029】
或いは、スライド部2ba(より具体的には差し込み部2baa)に位置固定のための孔を設け、リニアアクチュエータ61は、スライド部2baの固定状態では、伸張状態となって位置固定のための孔に嵌入しそれによりスライド部2baを拘束し、スライド部2baの非固定状態では、縮小状態となって位置固定のための孔からはずれるようにすることも可能である。

【0030】
また、クローラベルト回動制御部6は、スライド部2baを固定状態の位置に戻す復元力を有する弾性体62を有するようにすることができる。弾性体62は、典型的には、バネ体を用いることができる。

【0031】
スライド部2baの非固定状態では、クローラ型ロボット1は、以下のように動作する。すなわち、他方の端部1b側(図7において左側)から見て右回りにウォーム4が回転しているとき、スライド部2baが固定状態から非固定状態に変わると、スライド部2baは、クローラベルト5による他方の端部1bから一方の端部1aに向かう力に従って移動し、クローラベルト5は、それまでのようには回動せず、ウォーム歯部41に接触してかみ合っていたクローラベルト歯部51がウォーム4の回転によって押されてウォーム歯部41の端部近傍の位置まで移動し、そこに留まる。図6の斜視図に、上側の3つのクローラベルト5、5、・・・に対応するスライド部2ba、2ba、・・・が非固定状態、下側の3つのクローラベルト5、5、・・・に対応するスライド部2ba、2ba、・・・が固定状態のものを示す。また、図7の正面視断面図に、上側のクローラベルト5に対応するスライド部2baが非固定状態、下側のクローラベルト5に対応するスライド部2baが固定状態のものを示す。なお、ウォーム4は、その回転力により、クローラベルト5(及びスライド部2ba)を押して移動させるが、その力は、弾性体62の復元力よりも大きいものである。

【0032】
スライド部2baを非固定状態から固定状態にするには、以下のようにすることができる。すなわち、先ず、回転トルク生成部3への電力供給を停止し、ウォーム4を回転させないようにする。そうすると、弾性体62の復元力により、スライド部2baが固定状態の位置に戻ろうとし、クローラベルト5が押されてクローラベルト歯部51がウォーム歯部41に確実に接触するようになる。なお、スライド部2baは、フレーム2におけるスライド部2ba以外の部分との間に多少の摩擦力が生じるが、弾性体62の復元力はそれよりも大きいものである。

【0033】
その後、回転トルク生成部3にかける電圧の正負を逆にして回転トルク生成部3に電力を供給し、ウォーム4を逆回転させる。そうすると、クローラベルト歯部51はウォーム歯部41にかみ合う位置まで戻ることになる。

【0034】
クローラ型ロボット1は、以上説明した構成の他に、所望の機能を発揮するように、以下のように、様々な部品を搭載した機能部をフレーム2の中空孔2aに或いはフレーム2(特にその前後)に取り付けたりすることができる。すなわち、クローラ型ロボット1は、図8に示すように、分岐などを検知するための部品7として、周囲を照明する照明器と周囲の画像を取得するカメラを設けることができる。照明器とカメラに代えて、各種センサなどを設けることも可能である。また、クローラ型ロボット1は、図8に示すように、回転トルク生成部3とクローラベルト回動制御部6、6、・・・に所望の動作をさせるために、外部からの電力及び制御信号(必要に応じて)を受けるための部品8として、外部の制御装置につながる電線群を設けることができる。電線群に代えて、バッテリーと外部の制御装置と通信する無線通信器とを中空孔2aに収容して設けることも可能である。

【0035】
以上のように、クローラ型ロボット1は、簡易な構成のものとなっている。また、クローラ型ロボット1は、比較的大きくなり易い回転トルク生成部3が1つで済み、回転トルク生成部3に比べ非常に小さいサイズのリニアアクチュエータ61をクローラベルト回動制御部6の主要構成部品にすることができるので、全体のサイズが大きなものとはならない。

【0036】
クローラ型ロボット1は、様々な場所での走行が可能である。特に、クローラ型ロボット1は、管内検査や清掃などのため水道管、ガス管又はダクト管などの配管内を直進でき、配管に分岐が有る場合、外部からの指示によりそのまま直進したり或いは分岐する方に進路を変えたりするような能動的な進路選択が可能である。

【0037】
クローラ型ロボット1が配管内及び配管の分岐を直進する場合、フレーム2の全てのスライド部2baが固定状態となっており、他方の端部1b側(図2において左側)から見て右回りにウォーム4が回転すると、複数の(本実施形態では6つの)クローラベルト5、5、・・・の全てにおいて、クローラベルトコア部2bの外部側に位置したクローラベルト歯部51がクローラ型ロボット1の一方の端部1aから他方の端部1bに向かって(図2において右から左へ)長手方向に動く。そうすると、クローラベルト歯部51が配管内壁などを蹴り出すことで、クローラベルト5に推進力(他方の端部1bから一方の端部1aに向かう力)が生じる。この推進力は、クローラ型ロボット1の他方の端部1bにおいてクローラベルト5から固定状態のスライド部2baに、そして、フレーム2全体に伝達される。それにより、クローラ型ロボット1が他方の端部1bから一方の端部1aに向かって(図2において左から右へ)直進する。

【0038】
クローラ型ロボット1が配管の分岐において分岐する方に進路を変える場合、複数の(本実施形態では6つの)クローラベルト5、5、・・・のうち分岐側に位置する一部に対応するスライド部2ba、2ba、・・・を非固定状態にする。分岐側に位置する一部は、進路を変えるときの確実性などの点から、複数のクローラベルト5、5、・・・のうち半分(全数が6つの場合は3つ)であるのが好ましい。図7においては、上側に向かう分岐がクローラ型ロボット1の進行方向(右方向)にある場合のものであり、上側のスライド部2baが非固定状態、下側のスライド部2baが固定状態となっているものを示している。

【0039】
他方の端部1b側(図7において左側)から見て右回りにウォーム4が回転していると、固定状態のスライド部2ba、2ba、・・に対応するクローラベルト5、5、・・・だけが回動し、クローラベルトコア部2b(スライド部2ba)の外部側に位置したクローラベルト歯部51がクローラ型ロボット1の一方の端部1aから他方の端部1bに向かって(図7において右から左へ)長手方向に動く。そうすると、クローラベルト歯部51が配管内壁などを蹴り出すことで、クローラベルト5に推進力(他方の端部1bから一方の端部1aに向かう力)が生じる。この推進力は、クローラ型ロボット1の他方の端部1bにおいてクローラベルト5から固定状態のスライド部2baに、そして、その近傍のフレーム2に伝達される。一方、非固定状態のスライド部2ba、2ba、・・・に対応するクローラベルト5、5、・・・は固定状態のスライド部2ba、2ba、・・・に対応するクローラベルト5、5、・・・のようには回動せず、これらには推進力は生じない。従って、推進力が生じない方を内側にして進路を変えようとし、配管の分岐に進路を変えることができる。

【0040】
なお、本実施形態におけるクローラ型ロボット1は、外部からの電力及び制御信号を受けるための部品8として外部の制御装置につながる電線群を設けた場合はそれを牽引したり、別個にクローラ型ロボット1につながる線を他方の端部1bに接続して牽引したりして、配管内の元の位置又は出発した位置に戻ることができる。また、このクローラ型ロボット1に更に、逆走しても配管の分岐する方に進路を変えることができる機能を追加すれば、上記の方法によらず、配管内の元の位置又は出発した位置に戻ることが可能である。

【0041】
次に、試作したクローラ型ロボット1の動作実験について述べる。なお、試作のクローラ型ロボット1のフレーム2及びウォーム4は、ABS樹脂を3Dプリンタによって造形したものである。試作のクローラ型ロボット1のクローラベルト5は、液状のシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製KE1603)を型に流し込んで硬化させ、その内面側(クローラベルト歯部51が設けられていない面の側)にシリコーンゴムシート(共和工業株式会社製SA0002-1)を貼り付けて製作したものである。クローラ型ロボット1は、その全長(一方の端部1aから他方の端部1bまでの長さ)が約90mm、外径が外圧を受けていない状態で半径約45mmとした。実験で用いる配管Tは、クローラ型ロボット1が観察できる程度に透明なもので管内径が77mmであり、分岐TBを有するものである。

【0042】
図9Aは、クローラ型ロボット1が、配管Tの上側から入って下方に向かって直進し、更に分岐TBを直進して通り過ぎる動作させた場合の様子を示すものである。この場合、スライド部2ba、2ba、・・を全て固定状態とし、それらに対応するクローラベルト5、5、・・・が全て回動するようにした。図9Aでは、分岐TBに到達する前後のクローラ型ロボット1の3つの状態を重ねて示している。クローラ型ロボット1は、分岐TBにかかわらず、配管T内を直進できることが分かる。

【0043】
図9Bは、クローラ型ロボット1が、配管Tの上側から入って下方に向かって直進し、次に分岐TB側に進路を変える動作させた場合の様子を示すものである。この場合、分岐TB側に位置する3つのスライド部2ba、2ba、・・・を非固定状態にしてそれらに対応するクローラベルト5、5、・・・が回動しないようにし、残りの3つのスライド部2ba、2ba、・・・を固定状態にしてそれらに対応するクローラベルト5、5、・・・が回動するようにした。図9Bでは、分岐TBに到達する前後のクローラ型ロボット1の3つの状態を重ねて示している。クローラ型ロボット1は、分岐TB側に進路を変えることができることが分かる。

【0044】
以上、本発明の実施形態に係るクローラ型ロボットについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内での様々な設計変更が可能である。例えば、特許文献5に記載されているのと同様に、クローラ型ロボット1を関節部を介して複数連結し走行ロボット連結体にすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 クローラ型ロボット
1a クローラ型ロボットの一方の端部
1b クローラ型ロボットの他方の端部
2 フレーム
2a フレームの中空孔
2b フレームのクローラベルトコア部
2ba スライド部
2baa スライド部の差し込み部
2bb スライド部の外端部
2bc スライド部の内端部
3 回転トルク生成部
3a 回転トルク生成部の出力軸部
4 ウォーム
41 ウォーム歯部
5 クローラベルト
51 クローラベルト歯部
51a クローラベルト歯部の歯部接触面
6 クローラベルト回動制御部
61 リニアアクチュエータ
61a リニアアクチュエータの移動体
61b リニアアクチュエータの本体部
62 弾性体
7 分岐などを検知するための部品
8 外部からの電力及び制御信号を受けるための部品
X 中心軸
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3A】
2
【図3B】
3
【図3C】
4
【図4】
5
【図5】
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【図6】
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【図7】
8
【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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