TOP > 国内特許検索 > 多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤 > 明細書

明細書 :多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-127473 (P2019-127473A)
公開日 令和元年8月1日(2019.8.1)
発明の名称または考案の名称 多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤
国際特許分類 C07D 215/56        (2006.01)
A61K  31/4704      (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
FI C07D 215/56 CSP
A61K 31/4704
A61P 25/28
C07K 7/08 ZNA
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2018-011726 (P2018-011726)
出願日 平成30年1月26日(2018.1.26)
発明者または考案者 【氏名】池川 雅哉
【氏名】山下 浩輝
【氏名】韮澤 崇
【氏名】角田 伸人
【氏名】近藤 誉之
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C031
4C086
4H045
Fターム 4C031PA05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC29
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA15
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA16
4H045CA40
要約 【課題】多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤を提供する。
【解決手段】下記化学式Iからなる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする。
JP2019127473A_000007t.gif
ここでRは特にメトキシである。Rは特にメチルである。Rは特にトリフルオロメチルである。本薬剤は経口投与により的確な効果を示す。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式Iからなる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤(Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、及びトリフルオロメトキシから選ばれ、Rはメチル又はエチルであり、Rは、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、及びトリフルオロメトキシから選ばれる。)。
【化1】
JP2019127473A_000006t.gif

【請求項2】
4-ヒドロキシ-5-メトキシ-N,1-ジメチル-2-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(タスキニモド)又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする、請求項1記載の多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)とは中枢性脱髄疾患の一つで、神経のミエリン鞘が破壊され脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多様な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患で、日本では特定疾患に認定されている指定難病である。病名は、神経を包む組織(ミエリン鞘)が破壊されて生じる硬化が多数の領域で発生することに由来している。
【0003】
多発性硬化症の判定には、MRI検査や、脳脊髄液採取により蛋白質の総量を測定することが行われる(非特許文献1)。しかし、MRI検査では、病巣の一部しか発見できない場合があり、また脳脊髄液検査でも、疼痛や神経損傷の可能性など患者に負担がかかるという問題がある。
【0004】
近年、多発性硬化症等の中枢神経系の炎症性疾患の患者において、脳の炎症部位でTSPO(Translocator protein 18kDa)の発現がある程度上昇していること(非特許文献2および3)が複数報告されている。TSPOは、MBR(ミトコンドリア型ベンゾジアゼピン受容体)、またはPBR(末梢性ベンゾジアゼピン受容体)とも呼ばれるタンパク質であり、IBS(過敏性腸症候群)に代表されるストレス性疾患の薬理標的として注目されている。しかしながらこの検出方法は多発性硬化症を明確に検出できるものではなく、また多発性硬化症の発症を予測できるものでもない。
【0005】
多発性硬化症の患者には、寛解期と再発期とが交互に現れる。寛解期とは、比較的健康に過ごせる時期であり、再発期とは、症状が急に出現し悪化する時期である。多発性硬化症の治療法としては、再発期には副腎皮質ステロイドの大量投与等の炎症を和らげる治療を行い、寛解期には抗痙攣剤や筋弛緩剤の投与を行なう方法が適用される。しかしこれらの薬剤では、多発性硬化症の進行を食い止める事はできない。
【0006】
多発性硬化症の効果的な治療法としてインターフェロン療法がある(非特許文献4)。インターフェロン療法は多発性硬化症の長期的な予後を改善する治療薬の中心的な薬剤として、インターフェロンβ1a(IFNβ-1a)とβ1b(IFNβ-1b)が国際的に利用されている。しかしながら、インターフェロン療法の効果には個人差が認められ、神経細胞の障害を抑制する効果は少なくとも1年程度の長期間にわたる投与の後でないと判定する事ができない。インターフェロン療法では自己注射を必要とする事、注射部位の発赤、頭痛、関節痛等の副作用が認められる場合もある。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Tourtelotte W. Cerebrospinal fluid in multiple sclerosis. In: Vinken PJ, Bruyn GW. editors. Handbook of clinical neurology, Vol. 9. Amsterdam: North-Holland, 1970年:324-382頁.
【非特許文献2】ブレイン(Brain)、第123巻、2321-2337頁、2000年
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・ニューロイミューン・ファーマコロジー(Jornal of Neuroimmune Pharmacology)、第8巻第1号、51-57頁、2013年
【非特許文献4】Hong J.et al.Journal of Neuroimmunology 152(2004年)126-139頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤は、下記化学式Iからなる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする。
【0010】
【化1】
JP2019127473A_000003t.gif

【0011】
ここでRは、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、及びトリフルオロメトキシから選ばれ、特にメトキシである。Rはメチル又はエチル、特にメチルである。Rは、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、及びトリフルオロメトキシから選ばれ、特にトリフルオロメチルである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多発性硬化症を的確に治療及び/又は予防できる。特に、本発明によれば経口摂取により治療できるため、注射投与と比較して注射部位の発赤、疼痛等の副作用なく簡易に治療でき、本発明により得られる社会的利益は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】controlマウスとacute-EAEマウスとにおいて、脳組織のHE染色(a,b)と、抗S100A9抗体を用いた免疫組織化学による解析(c,d)と、イメージング質量分析(e,f)とを示す図である。
【図2】controlマウスとacute-EAEマウスとにおいて、脳切片のイメージング質量分析による解析結果を示す図であり、そのうち(a)はcontrolであり、(b)はpre-EAEマウス脳であり、(c)はacute-EAEマウス脳であり、(d)はchronic-EAEマウス脳である。
【図3】controlマウスとacute-EAEマウスとにおいて、脳組織のHE染色を示す図であり、そのうち(a)はcontrolであり、(b)はpre-EAEマウス脳であり、(c)はacute-EAEマウス脳であり、(d)はchronic-EAEマウス脳である。
【図4】controlマウスとS100A9タンパク質の特異的阻害剤投与マウスとにおいて、EAEの臨床スコアを示す解析図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。

【0015】
本発明にかかる多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤は、下記化学式Iからなる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする。

【0016】
【化2】
JP2019127473A_000004t.gif

【0017】
ここでRは、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、及びトリフルオロメトキシから選ばれ、特にメトキシである。Rはメチル又はエチル、特にメチルである。Rは、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、及びトリフルオロメトキシから選ばれ、特にトリフルオロメチルである。

【0018】
好ましくは、本発明にかかる多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤は、下記に示す4-ヒドロキシ-5-メトキシ-N,1-ジメチル-2-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(タスキニモド)又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする。

【0019】
【化3】
JP2019127473A_000005t.gif

【0020】
タスキニモドは、最初は前立腺癌の治療として評価されたが、毒性が強すぎると判明したリノミド誘導体である。タスキニモドは、in vitro(試験管内)の実験では、血管新生阻害作用を示す。

【0021】
薬学的に許容可能なとは、それが一般的に安全かつ生物学的にも他の点でも有害でない医薬組成物の製造に有用であることを意味する。

【0022】
本発明にかかる薬剤は、多発性硬化症の治療及び/又は予防のためのものであるが、本明細書において「治療」には、症状を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが含まれる。一方、「予防」には疾患の発症を抑えること及び遅延させることが含まれ、疾患になる前の予防だけでなく、治療後の疾患の再発に対する予防も含まれる。

【0023】
多発性硬化症は、例えば、再発寛解型(症状の悪化(再発)と症状の安定(寛解)が交互に起こる。数カ月から数年間の寛解期間と再発が繰り返される病態。)、一次性進行型(病状が進行しない一時的な停滞期間があるが、寛解せず徐々に病状が進行していく。)、二次性進行型(発症初期は再発と寛解が繰り返されるが、緩やかに進行していく。)、進行再発型(まれな病態で、病状は徐々に進行するが、突然の再発を伴う。)に分類されることがあるが、いずれの型であっても本発明にかかる薬剤の対象となる。

【0024】
本発明にかかる薬剤は、哺乳動物(特にヒト)への経口投与又は非経口投与が可能であり、特に経口投与でも適切に効果を有する点に特徴がある。

【0025】
本発明にかかる薬剤は、任意に薬学的に許容可能な賦形剤、例えば薬学的に許容可能な担体と共に構成することが可能である。経口投与の場合、式(I)の化合物は様々な剤形に製剤化することができる。薬学的に許容可能な担体は、固体でも又は液体でもよい。固体形の製剤は、散剤、錠剤、ピル、ロゼンジ、カプセル、カシェ、坐剤、及び分散性顆粒剤などである。固体担体は、希釈剤、フレーバー、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料として働くこともできる一つ又は複数の物質でありうる。散剤の場合、担体は一般的に微粉砕固体で、微粉砕された活性成分との混合物である。錠剤の場合、活性成分は、一般的に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。

【0026】
経口投与に適切なその他の形態は、エマルション、シロップ、エリキシル、水溶液、水性懸濁液を含む液体形の製剤、又は使用直前に液体形の製剤に変換されることを意図された固体形の製剤などである。エマルションは、溶液中、例えばプロピレングリコール水溶液中に調製されてもよいし、又は乳化剤、例えばレシチン、モノオレイン酸ソルビタン、又はアカシアを含有していてもよい。水溶液は、活性成分を水中に溶解し、適切な着色剤、フレーバー、安定剤、及び増粘剤を加えることによって製造できる。水性懸濁液は、微粉砕された活性成分を、粘性材料、例えば天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びその他の周知の懸濁化剤とともに水中に分散させることによって製造することができる。固体形の製剤は、溶液、懸濁液、及びエマルションなどで、活性成分のほかに、着色剤、フレーバー、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有しうる。

【0027】
本発明にかかる多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤は、1重量%~95重量%、好ましくは20重量%~90重量%の式(I)の化合物を、少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤と共に含みうる。投与量及び回数は、治療対象の性別、年齢、体重及び疾患の進行状態、選択された投与経路などを考慮して適宜設定可能である。

【0028】
また後述する実施例において記載されているが、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE:Experimental autoimmune encephalomyelitis)誘導マウスは多発性硬化症(MS)と多くの病態を共有することから、MSの病態研究、治療法開発において使用され、このEAE誘導マウスの脳組織内にはS100A9タンパク質が認められる。

【0029】
そのため本発明にかかる多発性硬化症の治療及び/又は予防のための薬剤は、S100A9アンタゴニストを含む薬剤である。S100A9アンタゴニストは、S100A9タンパク質に結合し、S100A9タンパク質の生物学的活性を阻害するまたは実質的に低下させる分子を指す。S100A9アンタゴニストの非限定的な例として、抗体、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド模倣薬、薬理作用を示す物質およびそれらの代謝産物、転写および翻訳を制御する配列等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
1.EAE誘導
SJL/Jマウス(雌性,10週齢)に、Proteolipid proteinの139-151番目のアミノ酸配列(配列番号6:HCLGKWLGHPDKF,His Cys Leu Gly Lys Trp Leu Gly His Pro Asp Lys Phe)に該当するペプチド(PLP139-151)を、完全フロイントアジュバントと共に免疫し、EAEを誘導した。なお、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE:Experimental autoimmune encephalomyelitis)は、中枢神経組織由来の蛋白質抗原やペプチドを免疫することによって誘導される自己免疫モデルである。多発性硬化症(MS)と多くの病態を共有することから、MSの病態研究、治療法開発において使用されている。定法に従い、臨床症状を6段階で毎日評価した。
【実施例】
【0031】
ペプチド免疫後、9日目(pre-EAE)、12日目(acute-EAE)、21日目(chronic-EAE)にマウスを解剖し、中枢神経系(Central nervous system; CNS)試料を採取した。図1は、controlマウスとacute-EAEマウスとにおいて、小脳白質、延髄、海馬采と視床の間の軟膜領域におけるヘマトキシリン・エオシン(HE)染色図(a,b)と、抗S100A9抗体を用いた免疫組織化学(Immunohistochemistry; IHC)による解析図(c,d)と、イメージング質量分析(Imaging mass spectrometry; IMS)による解析図(e,f)とである。図1において、a,b,c,dのスケールバーは5 mmであり、e,fのスケールバーは1 mmである。
【実施例】
【0032】
2.イメージング質量分析(Imaging mass spectrometry; IMS)
acute-EAEマウス脳から、クリオスタットで10 μm厚の新鮮凍結切片を作製した。組織切片を、エタノール、カルノア液で洗浄後、マトリックスとしてシナピン酸を噴霧した。質量分析装置は、UltrafleXtreme(Bruker Daltonics)を用いた。UltrafleXtremeは、最高性能のMALDI-TOF&TOF/TOFシステムであり、TOF/TOFモードで2 kHzの解析が可能である。データ解析は、fleximaging(Bruker Daltonics)ソフトウェアを用いて、EAEマウス組織に特異的なm/z 値を検索し、描出した。
【実施例】
【0033】
IMSにより、EAEマウス脳に特異的に検出されるm/z 12,971を見出した(図1f黒矢印)。この分子群は健常マウス脳には見られない(図1e)。m/z 12,917を調べたところ、S100A9タンパク質であることが判明した(Caldwell et al, Wound Repair Reagen 16(3):442-449 (2008))。S100A9タンパク質は、EAE病巣の進行と深く関わっており、多発性硬化症のバイオマーカーであることが判明した。
【実施例】
【0034】
3.免疫組織化学(Immunohistochemistry; IHC)
新鮮凍結切片を4%パラホルムアルデヒド含有リン酸緩衝生理食塩水にて固定を行った。0.3%過酸化水素含有メタノールで内在性Peroxidaseを不活性化後、10%ヤギ血清でブロッキングを行った。一次抗体として、抗S100A9抗体、二次抗体として、ビオチン標識抗ラットIgG抗体を用いた。アビジン-ビオチン複合体を形成させ、3,3’-diaminobenzidine(DAB)法により検出を行った。
【実施例】
【0035】
ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色により、acute-EAEマウス脳の小脳白質、延髄、海馬采と視床の間の軟膜領域において異所性細胞集塊(浸潤細胞群)を認めた(図.b矢印)。この細胞集塊は健常マウス脳には見られない(図1a)。抗S100A9抗体を用いたIHCによる検証の結果、S100A9タンパク質の陽性反応はm/z 12,971と一致した(図.d,f実線矢柱)。本所見は、浸潤細胞群と共局在した。さらに、小脳分子層においても、m/z 12,971及びS100A9タンパク質陽性領域を認めた(図d,f点線矢柱)。
【実施例】
【0036】
4.発症前から慢性期までの解析
図2は、controlマウスとacute-EAEマウスとにおいて脳切片のIMS法による解析結果を示す図であり、そのうち(a)はcontrolであり、(b)はpre-EAEマウス脳であり、(c)はacute-EAEマウス脳であり、(d)はchronic-EAEマウス脳である。UltrafleXtreme(Bruker Daltonics)を用いた質量分析による結果、IMSにより、EAEマウス脳に特異的に検出されるm/z 12,971は、acute-EAEマウス脳のみならず(図2(c)の矢印参照)、chronic-EAEマウス脳においても(図2(d)の矢印参照)、更には、pre-EAEマウス脳においても認められた(図2(b)の矢印参照)。
【実施例】
【0037】
図3は、controlマウスとacute-EAEマウスとにおいて、小脳白質、延髄、海馬采と視床の間の軟膜領域におけるHE染色図であり、そのうち(a)はcontrolであり、(b)はpre-EAEマウス脳であり、(c)はacute-EAEマウス脳であり、(d)はchronic-EAEマウス脳である。免疫組織化学分析による結果、EAEマウス脳に特異的に検出されるS100A9タンパク質は、acute-EAEマウス脳のみならず、chronic-EAEマウス脳においても、更には、pre-EAEマウス脳においても認められた。
【実施例】
【0038】
これらの結果から、S100A9タンパク質は、多発性硬化症の発症前においても認められ、発症予測のための診断マーカーとしても利用できることが判明した。
【実施例】
【0039】
5.S100A9タンパク質の特異的阻害剤タスキニモド投与による治療効果
SJL/Jマウス(雌性,10週齢)にペプチド(PLP139-151)を完全フロイントアジュバントと共に免疫し、EAEを誘導したEAEマウスに、ペプチド免疫後、S100A9タンパク質の特異的阻害剤としてタスキニモドを2日に1回、経口投与した。Controlにはタスキニモドを投与しなかった。
【実施例】
【0040】
EAEの臨床スコアは、0:正常、1:尾の完全下垂、2:歩行困難、3:後肢の完全脱力、4:体幹部の麻痺、5:前肢麻痺を含む後肢の完全脱力、6:死亡にて評価した。臨床症状は、ペプチド免疫後9~14日程度から明らかとなり、その後数日で最大スコアに達する。
【実施例】
【0041】
図4は、controlマウスとS100A9タンパク質の特異的阻害剤投与マウスとにおいて、EAEの臨床スコアを示す解析図である。図4から、S100A9タンパク質の特異的阻害剤は、多発性硬化症の発症を遅らせることが認められる。また、S100A9タンパク質の特異的阻害剤は、多発性硬化症の治療に十分な効果があることが認められる。なお、図4において、経過日数0日~8日は臨床症状が現れておらず、図面の煩雑さを裂けるために、day21(非投与群)のみ記載し、その他の記号は省略されている。また経過日数9日目ではday9(非投与群)、day9(投与群)及びday12(非投与群)の記号が省略されているが、これは臨床スコアが0に近いものであったからである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
多発性硬化症の診断に利用できる。
【配列表フリ-テキスト】
【0043】
配列番号1:ペプチド
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3