TOP > 国内特許検索 > 希土類錯体ポリマー及び発光体 > 明細書

明細書 :希土類錯体ポリマー及び発光体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-127560 (P2019-127560A)
公開日 令和元年8月1日(2019.8.1)
発明の名称または考案の名称 希土類錯体ポリマー及び発光体
国際特許分類 C08G  79/04        (2006.01)
C07F   5/00        (2006.01)
H01L  33/50        (2010.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C08G 79/04
C07F 5/00 D
H01L 33/50
C09K 11/06 680
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2018-011508 (P2018-011508)
出願日 平成30年1月26日(2018.1.26)
発明者または考案者 【氏名】中西 貴之
【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】北川 裕一
【氏名】伏見 公志
【氏名】沢登 拓矢
【氏名】松田 賢司
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100140578、【弁理士】、【氏名又は名称】沖田 英樹
審査請求 未請求
テーマコード 4H048
4J030
5F142
Fターム 4H048AA01
4H048AB90
4J030CA01
4J030CA03
4J030CB34
4J030CC12
4J030CD11
4J030CE02
4J030CF09
4J030CG29
5F142AA62
5F142AA75
5F142DA49
5F142DA61
5F142DA73
5F142FA28
5F142HA01
要約 【課題】長波長の励起光による励起、耐熱性、感温発光性等の各種特性が改善され得る新規な希土類錯体ポリマーを提供すること。
【解決手段】1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数種の配位子と、を含む主鎖を有する希土類錯体ポリマーが開示される。複数種の配位子が、2つ以上の前記希土類イオンに配位しているリンカー配位子と、1つの希土類イオンに配位している非リンカー配位子とを含む。リンカー配位子及び希土類イオンが交互に連結されることにより前記主鎖が形成されている。主鎖が、2種以上の前記非リンカー配位子を含む、及び/又は、主鎖の末端に位置する前記希土類イオンに配位している、非リンカー配位子とは異なる単座の末端配位子を更に含む。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数種の配位子と、を含む主鎖を有し、前記複数種の配位子が、2つ以上の前記希土類イオンに配位しているリンカー配位子と、1つの前記希土類イオンに配位している非リンカー配位子と、を含み、前記リンカー配位子及び前記希土類イオンが交互に連結されることにより前記主鎖が形成されている、希土類錯体ポリマーであって、
前記主鎖が、
2種以上の前記非リンカー配位子を含む、及び/又は、
前記主鎖の末端に位置する前記希土類イオンに配位している、前記非リンカー配位子とは異なる単座の末端配位子を更に含む、
希土類錯体ポリマー。
【請求項2】
前記主鎖が、下記式(1):
【化1】
JP2019127560A_000020t.gif

で表される、前記非リンカー配位子としてジケトン配位子を含む第一の構成単位と、
下記式(2):
【化2】
JP2019127560A_000021t.gif

で表される、前記非リンカー配位子としてジケトン配位子を含む第二の構成単位と、を含み、
Ln(III)が前記希土類イオンを示し、同一主鎖中に含まれる複数のLn(III)は同一でも異なっていてもよく、
LLが前記リンカー配位子を示し、
、R、R及びRが、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Z及びZがそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、ZがR又はRと連結して環状基を形成していてもよく、ZがR又はRと連結して環状基を形成していてもよく、
、R及びZが、R、R及びZとは異なる組み合わせとなるように選択される、
請求項1に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項3】
前記リンカー配位子が、2つ以上のホスホリル基を有する、請求項1又は2に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項4】
前記主鎖が、1つのホスホリル基を有する前記末端配位子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項5】
前記主鎖が、下記式(3a):
【化3】
JP2019127560A_000022t.gif

表され、1つのホスホリル基を有する前記末端配位子、及び前記非リンカー配位子としてジケトン配位子を含む末端の構成単位を含み、
Ln(III)が前記希土類イオンを示し、同一主鎖中に含まれる複数のLn(III)は同一でも異なっていてもよく、
LLが前記リンカー配位子を示し、
及びRが、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Zがそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、ZがR又はRと連結して環状基を形成していてもよい、
請求項4に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類錯体ポリマーを含有する、発光体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性を有する希土類錯体ポリマー及びこれを含有する発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光性を有し、比較的高い耐熱性を有する希土類錯体ポリマーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2012/150712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面の目的は、長波長の励起光による励起、耐熱性、感温発光性等の各種特性が改善され得る新規な希土類錯体ポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数種の配位子と、を含む主鎖を有し、前記複数種の配位子が、2つ以上の前記希土類イオンに配位しているリンカー配位子と、1つの前記希土類イオンに配位している非リンカー配位子と、を含み、前記リンカー配位子及び前記希土類イオンが交互に連結されることにより前記主鎖が形成されている、希土類錯体ポリマーに関する。前記主鎖が、2種以上の前記非リンカー配位子を含んでいてもよい。前記主鎖が、前記主鎖の末端に位置する前記希土類イオンに配位している、末端配位子を更に含んでいてもよい。
【0006】
希土類錯体ポリマーの主鎖に2種以上の非リンカー配位子を導入することにより、長波長の励起光による励起、耐熱性、感温発光性等の各種特性が、1種の非リンカー配位子では達成が困難であった高いレベルまで改善され得る。同様に、末端配位子を導入することによっても、各種特性が、リンカー配位子だけでは達成が困難であった高いレベルまで改善され得る。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、長波長の励起光による励起、耐熱性、感温発光性等の各種特性が改善され得る新規な希土類錯体ポリマーが提供される。例えば、長波長の励起光により励起する発光材料は耐久性が低い傾向があったが、本発明に係る希土類錯体ポリマーは、長波長の励起光による発光と、高い耐熱性とを高いレベルで両立し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】希土類錯体ポリマーのXRDパターンである。
【図2】希土類錯体ポリマーの蛍光スペクトルである。
【図3】希土類錯体ポリマーの熱重量・示差熱分析の結果を示すグラフである。
【図4】希土類錯体ポリマーの蛍光寿命と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

【0010】
一実施形態に係る希土類錯体ポリマーは、1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数種の配位子と、を含む主鎖を有する。複数種の配位子は、2つ以上の希土類イオンに配位しているリンカー配位子と、1つの希土類イオンに配位している非リンカー配位子とを含む。この希土類錯体ポリマーは、リンカー配位子及び希土類イオンが交互に連結されることにより形成された主鎖を有する。希土類錯体ポリマーが結晶を形成していてもよい。

【0011】
希土類錯体ポリマーの主鎖は、2種以上の非リンカー配位子を含んでいてもよい。2種以上の非リンカー配位子の組み合わせによって、長波長の励起光による励起、耐熱性、感温発光性等の各種特性を希土類錯体ポリマーに付与することができる。ここで、「2種以上の配位子」とは、化学構造が異なる2種以上の配位子を意味する。本明細書において、配位子を構成する原子の一部又は全部が同位体に置き換えられた点だけが異なる2つの配位子は、2種以上の配位子とはみなされない。

【0012】
非リンカー配位子は、ジケトン配位子であってもよい。その場合、希土類錯体ポリマーの主鎖は、下記式(1):
【化1】
JP2019127560A_000002t.gif

で表される第一の構成単位、及び下記式(2):
【化2】
JP2019127560A_000003t.gif

で表される第二の構成単位を含んでいてもよい。

【0013】
これら式中、Ln(III)が希土類イオンを示す。同一主鎖中に含まれる複数のLn(III)は同一でも異なっていてもよい。LLはリンカー配位子を示す。式中、LLは便宜的に2つの希土類イオンに配位しているものとして表現されているが、LLが3つ以上の希土類イオンLn(III)に配位していてもよい。

【0014】
、R、R及びRは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Z及びZがそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、ZがR又はRと連結して環状基を形成していてもよく、ZがR又はRと連結して環状基を形成していてもよい。Z及びZは重水素原子であってもよい。

【0015】
第二の構成単位(式(2))中のジケトン配位子は、第一の構成単位(式(1))中のジケトン配位子とは種類が異なる。言い換えると、R、R及びZが、R、R及びZとは異なる組み合わせとなるように選択される。ZがR又はRと結合して環状基を形成し、ZがR又はRと連結して環状基を形成している場合、それら環状基の化学構造が異なっていればよい。

【0016】
第一の構成単位及び第二の構成単位を含む主鎖は、例えば下記式(I):
【化3】
JP2019127560A_000004t.gif

により模式的に表される。式(I)中、nは1以上の整数を示し、nは0以上又は1以上の整数を示す。式(I)で表される主鎖において、n個の第一の構成単位、又はn個の第二の構成単位が連続して連結されている必要はなく、第一の構成単位及び第二の構成単位がランダムに連結されていてもよい。n及びnの上限は特に制限されないが、例えば1000以下であってもよい。

【0017】
、R、Z、R、R及びZは、それぞれ独立にアルキル基(例えば、メチル基、tert-ブチル基)、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はハロゲン化アリール基であってもよい。アルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素数は1~10であってもよい。R、R、Z、R、R又はZとしてのハロゲン化アルキル基は、炭素数1~5のフルオロアルキル基(例えばトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基)であってもよい。R、R、Z、R、R又はZとしてのアリール基は、フェニル基、ナフチル基、又はチエニル基であってもよく、これらがハロゲン化されていてもよい。

【0018】
がR又はRと結合して形成される環状基、及び、ZがR又はRと連結して形成される環状基は、置換基を有していてもよい環状の脂肪族基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であってもよい。

【0019】
非リンカー配位子は、下記のジケトン配位子hfa、tfa、acac、tmh、dmh、tta、dbm、ntfa及びptfaから選択される1種又は2種以上であってもよい。例えば、hfaとtta又はdbmとの組み合わせは、400nm以上の長波長の励起光による効率的な励起と、高い耐熱性との両立を可能にし得る。この場合、第一の構成単位がhfaを有し、第二の構成単位がtta又はdpmを有していてもよい。

【0020】
【化4】
JP2019127560A_000005t.gif

【0021】
非リンカー配位子は、光学活性を有していてもよい。光学活性を有する配位子を例えば第二の構成単位中に導入することにより、希土類錯体ポリマーに円偏光特性が付与され得る。光学活性を有するジケトン配位子としては、例えば下記式(10):
【化5】
JP2019127560A_000006t.gif

で表されるカンファー誘導体及びその鏡像異性体が挙げられる。2種の鏡像異性体を任意の比率で組み合わせてもよい。

【0022】
式(10)中、Rは式(2)のRと同義である。R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R、R、R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。

【0023】
、R及びRは置換基を有していてもよいアルキル基であってもよく、その炭素数は1~5であってもよい。R、R及びRの具体例としては、メチル基が挙げられる。

【0024】
、R、R10及びR11はそれぞれ独立に置換されていてもよいアルキル基であってもよく、その炭素数は1~5であってもよい。R、R、R10及びR11が水素原子であってもよい。

【0025】
式(10)で表されるカンファー誘導体及びその鏡像異性体の具体例としては、3-(トリフルオロアセチル)カンホラート、及び3-(パーフルオロブチリル)-(±)-カンホラートが挙げられる。

【0026】
希土類錯体ポリマーの主鎖が第一の構成単位及び第二の構成単位を含む場合、それらの割合は目的とする特性が得られる範囲で決定することができる。例えば、第一の構成単位及び第二の構成単位の合計量に対する、第二の構成単位の割合が、1~95モル%、又は20~90モル%であってもよい。

【0027】
希土類錯体ポリマーの主鎖は、3種以上の非リンカー配位子を含んでいてもよい。非リンカー配位子の種類の上限は、特に制限されないが、例えば5種以下であってもよい。希土類錯体ポリマーの主鎖が、1種目の非リンカー配位子を含む第一の構成単位と、2種目以降の非リンカー配位子を含む第三以降の構成単位とを含む場合、非リンカー配位子を含む構成単位の全量に対する、第三以降の構成単位の合計の割合が、1~95モル%、又は20~90モル%であってもよい。

【0028】
希土類錯体ポリマーの主鎖は、1種以上のリンカー配位子を含むことができる。リンカー配位子(例えば、式(1)及び(2)中のLL)は、通常、希土類イオンに配位する基を2つ有している。リンカー配位子は、2つのホスホリル基(>P(=O)-)を有する化合物であってもよい。2つのホスホリル基を有するリンカー配位子は、下記式(20):
【化6】
JP2019127560A_000007t.gif

で表される化合物であってもよい。式(20)中、Arは置換基を有していてもよい一価の芳香族基を示し、2つのArが直接又は二価の有機基を介して結合していてもよい。Lは二価の有機基を示す。

【0029】
Arは、置換基を有していてもよいフェニル基であってもよい。ここでの置換基は、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基又はメルカプト基であってもよい。2つのArが二価の有機基を介して結合している場合、その二価の有機基は、アルキレン基、アリーレン基、又はカルボニル基であってもよい。

【0030】
Lとしての二価の有機基は、例えば、置換基を有していてもよい二価の飽和若しくは不飽和脂肪族基、二価の芳香族基、又はオキシアルキレン基であってもよい。二価の不飽和脂肪族基の例としては、ビニレン基等のアルキレン基が挙げられる。オキシアルキレン基の例としては、オキシメチレン基が挙げられる。

【0031】
Lとしての二価の芳香族基は、単環、縮合多環、又はこれらの組み合わせを含む基であることができる。単環の例としては、ベンゼン環、チオフェン環及びピリジン環が挙げられる。単環の組み合わせを含む基の例としては、ビフェニレン基が挙げられる。Lの具体例としては、下記式(30a)、(30b)、(30c)又は(30d)で表される基が挙げられる。

【0032】
【化7】
JP2019127560A_000008t.gif

【0033】
これら式中、Rは水素原子又は一価の置換基を示し、同一分子内の複数のRは同一でも異なっていてもよい。Zは水素原子、又は置換基を有していてもよい芳香族基(例えばフェニル基)を示す。nは1又は2である。Rとしての一価の置換基は、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基又はメルカプト基であってもよい。

【0034】
リンカー配位子は、下記式のdpb、dpbp、dpt、及びdpfから選択される1種以上の二座配位子であってもよい。

【0035】
【化8】
JP2019127560A_000009t.gif

【0036】
希土類錯体ポリマーの主鎖は、その末端に位置する希土類イオンに配位している、単座の末端配位子を更に含んでいてもよい。この場合、希土類錯体ポリマーの主鎖は、1種の非リンカー配位子を含んでいても、2種以上の非リンカー配位子を含んでいてもよい。末端配位子は、非リンカー配位子とは異なる配位子である。ここで、「主鎖の末端に位置する希土類イオン」は、主鎖に含まれる複数の希土類イオンのうち、最も末端に位置するものを意味する。

【0037】
希土類錯体ポリマーの主鎖の末端に末端配位子を導入することにより、長波長の励起光による励起、耐熱性、感温発光性等の各種特性が、リンカー配位子及び非リンカー配位子だけでは達成が困難であった高いレベルまで改善され得る。

【0038】
末端配位子は、例えば、1つのホスホリル基を有する化合物であることができる。1つのホスホリル基を有する末端配位子は、例えば下記式(50):
【化9】
JP2019127560A_000010t.gif

で表される化合物であってもよい。式中、Arは、置換基を有していてもよい一価の芳香族基を示し、同一分子中のArは同一でも異なっていてもよい。Arがフェニル基であってもよい。式(50)の末端配位子の導入により、例えば、希土類錯体ポリマーが感温発光性を発現する温度領域が、末端配位子を含まない希土類錯体ポリマーと比較して高温側にシフトする傾向がある。

【0039】
式(50)の末端配位子を含む希土類錯体ポリマーが上述の式(1)で表される構成単位を含む場合、希土類錯体ポリマーの主鎖が、下記式(3a):
【化10】
JP2019127560A_000011t.gif

表される、式(50)の末端配位子を含む構成単位を含んでいてもよい。式(50)の末端配位子を含む希土類錯体ポリマーが上述の式(1)で表される第一の構成単位及び式(2)で表される第二の構成単位を含む場合、希土類錯体ポリマーの主鎖は、上記式(3a)で表される構成単位、又は、下記式(3b):
【化11】
JP2019127560A_000012t.gif

で表される、式(50)の末端配位子を含む構成単位のうち少なくとも一方を含み得る。式(3a)及び(3b)中の各符号の定義は前記と同義である。

【0040】
希土類錯体ポリマーに含まれる末端配位子の割合は、目的とする特性等に応じて決定することができる。例えば、リンカー配位子及び末端配位子の合計量に対する末端配位子の割合が、1~50モル%であってもよい。

【0041】
3価の希土類イオンは特に限定されず、発光色等に応じて、適宜選択することができる。希土類イオンは、例えば、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン、Gd(III)イオン、Sm(III)イオン、Yb(III)イオン、Nd(III)イオン、Er(III)イオン、Y(III)イオン、Dy(III)イオン、Ce(III)イオン、及びPr(III)イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることができる。高い発光強度を得る観点から、希土類イオンは、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン及びGd(III)イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。2種以上の希土類イオンを含む希土類錯体ポリマーは、感温発光性を有し得る。感温発光性を有する希土類錯体ポリマーは、例えば、Eu(III)イオンと、Tb(III)イオンとを含んでいてもよい。

【0042】
希土類錯体ポリマーは、商業的に入手可能な原料から出発して、通常の方法によって合成することができる。2種以上の非リンカー配位子を含む希土類錯体ポリマーは、例えば、非リンカー配位子の種類が異なる2種以上の前駆錯体の混合物とリンカー配位子との反応により希土類錯体ポリマーを生成させる工程を含む方法により、合成することができる。末端配位子を含む希土類錯体ポリマーは、例えば、非リンカー配位子を有する希土類錯体と末端配位子との反応によりリンカー配位子及び末端配位子を有する前駆錯体を生成させる工程と、生成した前駆錯体とリンカー配位子との反応により希土類錯体ポリマーを生成させる工程とを含む方法により、合成することができる。

【0043】
希土類錯体ポリマーの合成のための前駆錯体とリンカー配位子との反応は、メタノール、ジクロロメタン/メタノールの混合溶媒等の溶媒中で行うことができる。触媒としては、例えば、必要に応じてトリメチルアミン、水酸化リチウム等を添加してもよい。反応温度は、例えば-80~70℃であってもよい。

【0044】
希土類錯体ポリマーの合成において、前駆錯体とリンカー配位子との配合比([前駆錯体のモル数]:[リンカー配位子のモル数])は、1:0.5~1:5、又は1:0.77~1:1であってもよい。2種以上の希土類イオン、又は2種以上の非リンカー配位子を含む希土類錯体ポリマーを合成する場合、それらを含む2種以上の前駆錯体を任意の比率で組み合わせることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
1.2種の非リンカー配位子を含む希土類錯体ポリマー
(希土類錯体ポリマーの合成)
酢酸ユーロピウムと、1,1,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオン(hfa)、又は1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトン(tta)との反応により、下記式で表される前駆錯体Eu(hfa)3(H2O)2及びEu(tta)3(H2O)2を合成した。
【実施例】
【0047】
【化12】
JP2019127560A_000013t.gif
【実施例】
【0048】
Eu(hfa)3(H2O)2、Eu(tta)3(H2O)2、及び、1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)をメタノールに溶解し、得られた反応液を還流しながら3時間撹拌した。反応液中に析出した白色沈殿を回収し、メタノール及びクロロホルムで洗浄して、希土類錯体ポリマーを得た。仕込み量は、Eu(hfa)3(H2O)2及びEu(tta)3(H2O)2の合計量を0.2ミリモル、dpbpの量を0.2ミリモルとした。また、Eu(hfa)3(H2O)2及びEu(tta)3(H2O)2の比率を、ttaとhfaのモル比(tta/hfa)が0/1、1/3、1/1、3/1又は10/1となるようにEu(hfa)3(H2O)2及びEu(tta)3(H2O)2の仕込み量を変化させて、下記式(1A)で表される第一の構成単位及び下記式(2A)で表される第二の構成単位を含む主鎖を有する希土類錯体ポリマーを合成した。
【実施例】
【0049】
【化13】
JP2019127560A_000014t.gif
【実施例】
【0050】
【化14】
JP2019127560A_000015t.gif
【実施例】
【0051】
(X線回析)
図1は、tta/hfaが0/1、1/3、1/1、3/1又は10/1である希土類錯体ポリマーのXRDパターンである。ttaの導入により、ピークの位置は移動するものの、hfa単独の希土類錯体ポリマーと同様の結晶構造が維持されることが示唆された。
【実施例】
【0052】
(励起スペクトル)
図2は、希土類錯体ポリマーの25℃における励起スペクトルである。ttaの導入により、hfa単独の希土類錯体ポリマーと比較して励起波長が長波長側にシフトすることが確認された。励起波長のシフトが確認された希土類錯体ポリマーにおけるttaの割合は、hfa及びttaの合計量を基準として、20~90モル%の範囲内にあった。
【実施例】
【0053】
(熱重量・示差熱分析(TG-DTA))
図3、tta/hfc=1/1又はtta/hfc=0/1の希土類錯体ポリマーについての熱重量・示差熱分析の結果を示すグラフである。ttaの導入により分解温度が高くなることが確認された。
【実施例】
【0054】
2.末端配位子を含む希土類錯体ポリマー
(希土類錯体ポリマーの合成)
[Ln(hfa)3(dpbp)1-x(TPPO)x(Ln=Eu,Tb)]n
式(11)で表される前駆錯体と、トリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)をメタノールに溶解し、得られた反応液を還流しながら12時間撹拌した。反応液中に析出した白色沈殿を回収し、メタノール及びクロロホルムで洗浄して、下記式(21)で表されるEu錯体(Eu(hfa)3(TPPO)2)を得た。酢酸ユーロピウムに代えて酢酸テルビウムを用いたこと以外は同様にして、下記式(22)で表されるTb錯体(Tb(hfa)3(TPPO)2)を得た。
【実施例】
【0055】
【化15】
JP2019127560A_000016t.gif

Eu(hfa)3(TPPO)2、Tb(hfa)3(TPPO)2、及びdpbpをメタノールに溶解し、得られた反応液を還流しながら3時間撹拌した。反応液中に析出した白色沈殿を回収し、メタノール及びクロロホルムで洗浄して、下記式(1B)で表される構成単位と、下記式(1C)で表される構成単位と、下記式(3A)で表される末端の構成単位とを含む主鎖を有する希土類錯体ポリマー[Ln(hfa)3(dpbp)1-x(TPPO)x(Ln=Eu,Tb)]nを得た。式(3A)中のLn(III)はEu(III)又はTb(III)である。Eu(hfa)3(TPPO)2、Tb(hfa)3(TPPO)2、及びdpbpの仕込み量は、Eu(hfa)3(TPPO)2を0.003ミリモル、Tb(hfa)3(TPPO)2を0.297ミリモル、dpbpを0.3ミリモルとした。
【実施例】
【0056】
【化16】
JP2019127560A_000017t.gif
【実施例】
【0057】
【化17】
JP2019127560A_000018t.gif
【実施例】
【0058】
【化18】
JP2019127560A_000019t.gif
【実施例】
【0059】
[Ln(hfa)3(dpbp)(Ln=Eu, Tb)]n
Eu(hfa)3(H2O)2、及びdpbpをメタノールに溶解し、得られた反応液を還流しながら3時間撹拌した。反応液中に析出した白色沈殿を回収し、メタノール及びクロロホルムで洗浄して、式(1B)で表される構成単位及び式(1C)で表される構成単位を有する希土類錯体ポリマー([Ln(hfa)3(dpbp)(Ln=Eu, Tb)]n)を得た。仕込み量は、Eu(hfa)3(H2O)2の量を0.3ミリモル、dpbpの量を0.3ミリモルとした。
【実施例】
【0060】
(感温発光性)
合成した希土類錯体ポリマーの波長488nmの蛍光寿命(励起波長:360nm)を、温度を変化させながら測定した。波長488nmの蛍光は、主にTb錯体からの発光に相当する。図4は、希土類錯体ポリマーの蛍光寿命と温度との関係を示すグラフである。Tb錯体からの蛍光寿命が温度によって急激に変化する領域(感温領域)が、[Ln(hfa)3(dpbp)(Ln=Eu, Tb)]nでは150~300Kであったのに対して、[Ln(hfa)3(dpdp)1-x(TPPO)x(Ln=Eu,Tb)]nのようにTPPOを導入することにより、常温近傍を含む250~400Kにシフトした。常温近傍を含む感温領域は、発光体としての実用上の大きな利点となり得る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る希土類錯体ポリマーは、LED、太陽電池、セキュリティ材料、エネルギー変換等の各種用途に用いられる発光体としての応用が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3