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明細書 :吸器形成阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-127462 (P2019-127462A)
公開日 令和元年8月1日(2019.8.1)
発明の名称または考案の名称 吸器形成阻害剤
国際特許分類 A01N  29/04        (2006.01)
A01N  37/28        (2006.01)
A01N  59/12        (2006.01)
A01N  37/10        (2006.01)
A01N  43/08        (2006.01)
A01N  43/16        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
A01P  13/00        (2006.01)
A01N  25/02        (2006.01)
FI A01N 29/04
A01N 37/28
A01N 59/12
A01N 37/10
A01N 43/08 C
A01N 43/16 C
A01N 63/00 D
A01P 13/00
A01N 25/02
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2018-010715 (P2018-010715)
出願日 平成30年1月25日(2018.1.25)
発明者または考案者 【氏名】吉田 聡子
【氏名】和田 将吾
【氏名】ツイ スンクイ
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H011
Fターム 4H011AB01
4H011BB02
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB08
4H011BB18
4H011BB21
4H011DA13
4H011DD03
要約 【課題】寄生植物の吸器形成阻害方法を提供すること。
【解決手段】ジフェニレンヨードニウム(DPI)又はその塩を含む、吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
NADPHオキシダーゼ阻害剤を含む、吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤。
【請求項2】
ジフェニレンヨードニウム(DPI)又はその塩を含む、吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤。
【請求項3】
吸器形成寄生植物が、吸器形成根寄生植物である、請求項1又は2に記載の吸器形成阻害剤。
【請求項4】
吸器形成根寄生植物がハマウツボ科根寄生植物である、請求項3に記載の吸器形成阻害剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
寄生植物は他の植物から水分や養分を奪う能力を有する。寄生植物全般に共通するのは、他植物に付着し、その組織に侵入するための特別な器官を発達させてきたことである。これらの器官を総称して「吸器(haustorium)」と呼んでいる。例えば、根寄生植物は、宿主となる植物の根が近くにやってくると、自分の根または茎の一部を吸器へと変形させる。この吸器は宿主となる植物へと付着し、組織の侵略を始める。そして、宿主植物の維管束まで到達すると、吸器細胞の一部を道管要素へと分化させ、自分自身の道管と宿主植物の道管をつなげてしまう。このようにしてできた宿主との連結を通して、水分や栄養分を奪うのである。
【0003】
寄生植物は、宿主への依存度合いによって、条件的寄生(光合成能を持ち独立して生活できるが、宿主植物が近傍にいる場合には寄生を開始する)、絶対半寄生(光合成能を持つが、生活には宿主の存在が不可欠)、絶対全寄生(光合成能をもたず、栄養は完全に宿主依存)と分類される。
【0004】
寄生植物の中でもハマウツボ科に属する根寄生植物について精力的に研究が進められている。ハマウツボ科に属するStriga属(絶対半寄生)とOrobanche属(絶対全寄生)はさまざまな農業作物に寄生し、収量を大幅に減収させてしまうためである。本明細書では、特にStriga属に属する植物をまとめてストライガと呼ぶ。
【0005】
効率よく寄生を行うには宿主植物の存在を適切に認識する必要がある。特に絶対寄生植物にとって宿主は必要不可欠な存在なので、宿主の存在しないところで発芽することは自殺行為となってしまう。寄生植物の持つ宿主植物認識機構として、宿主植物の分泌するストリゴラクトンを用いた発芽制御がある。枝分かれを制御する植物ホルモンであるストリゴラクトンは、もともとストライガの種子の発芽を誘導する物質(Strigol)として、ワタの根から同定された。土壌中では不安定なストリゴラクトンを発芽のシグナルとして利用することで、宿主植物のごく近傍での発芽が可能となっている。
【0006】
同様に、他の植物がいないところに吸器を形成しても意味がなく、どこに他の植物が存在するかを適切に認識することは吸器形成においても重要である。寄生植物がどのように宿主植物を認識し吸器を形成するのか調べるために、根の滲出液や抽出液から吸器誘導物質(HIF: haustorium inducing factor)を単離、同定する研究が行なわれてきた。その結果、ソルガムの根の抽出液から2、6-dimethoxy-1、4-benzoquinone(DMBQ) がS. asiaticaの吸器を誘導する物質として同定された。一般にベンゾキノン類は、植物内でシキミ酸経路、フェノール酸の酸化的脱炭酸、ペルオキシダーゼやラッカーゼによる細胞壁フェノールの分解などによって生じる。しかし、DMBQがソルガムの根から検出されたのは、ソルガムの根を物理的に磨り潰した時か、ストライガと共培養した時だけであった。このことから、寄生植物が動的にHIFの生成を制御することで、宿主植物の近傍での吸器形成を可能にしていることが考えられた。その後の研究から、ストライガ根端で生成されたHが宿主植物またはストライガのペルオキシダーゼを活性化し、このペルオキシダーゼが細胞壁のフェノールを酸化することでHIFが生成されるというメカニズムが提唱されている(Keyes et al.Plant Physiology、2001等)。
【0007】
DMBQが吸器誘導能をもつ物質として同定されたことから、他のフラボノイドやキノンなどのフェノール誘導体が同じように吸器誘導活性を持つかどうかがテストされた。その結果、活性に差はあるものの、シリンガ酸やバニリン酸やクマル酸などの単純な構造を持つフェノール類、ペオニジンやペラルゴニジンなどのフラボノイドも吸器を誘導できることが確認されている。DMBQを含むベンゾキノンのアナログのうち、吸器誘導活性を持つものが特定の範囲の酸化還元電位を持つことから、HIFシグナリングには酸化還元サイクルが関わっていることが示唆されている。ハマウツボ科条件的半寄生植物のTriphysaria versicolor から単離されたキノン還元酵素をコードするTvQR1をノックダウンした際、誘導される吸器の数が減少することが示された(Bandaranayake et al.、Plant Cell 2010)ことから、吸器形成を開始するシグナルとして、酸化還元シグナルが関わっていることが現在のモデルとなっている。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Keyes et al. Plant Physiology 2001, Vol. 127, pp. 1508-1512
【非特許文献2】Bandaranayake et al.、Plant Cell、2010、22、1404-1419
【非特許文献3】American Journal of Plant Sciences, 2016, 7, 1275-1290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、寄生植物の吸器形成阻害方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ストリゴラクトンを含む発芽誘導物質は、宿主の存在しない状態においては、絶対寄生植物(絶対半寄生植物及び絶対全寄生植物)に対して駆除剤として用いることができる。発芽誘導物質により発芽が誘導されるが、宿主が存在しないため、生長できずに死んでしまうからである。しかし、宿主が存在する状態においては、発芽誘導物質は寄生を促進させることにつながるため、かえって有害である。これは駆除剤として致命的である。なぜなら、宿主たる有用植物を栽培する場所においてこそ寄生植物を駆除する必要があるのであって、宿主たる有用植物の栽培場所で用いることができないとなると駆除剤としての意味がほとんど無くなってしまうからである。
【0011】
また、発芽誘導物質は、条件的半寄生植物に対しては、宿主が存在しない状態であっても、駆除剤として働かない。条件的半寄生植物は、宿主が存在しない状態でも生存できるからである。
【0012】
一方で、吸器形成を阻害できる物質であれば、いずれの寄生植物に対しても、宿主の存在にかかわらず、宿主への寄生を抑制することができる。特に絶対寄生植物については宿主へ寄生ができず生長できないため、駆除が可能となる。さらには、発芽誘導物質と吸器形成阻害物質を組み合わせて絶対寄生植物に対して用いることで、発芽は行うが吸器の形成はできなくなるため宿主に寄生できず、結果として早期に絶対寄生植物を駆除することも可能となると考えられる。
【0013】
本発明者らは、吸器形成を開始するシグナルとして、酸化還元シグナルが関わっていると考えられていたことから、活性酸素(ROS)が当該シグナルとして関与している可能性を思いつき、ROS阻害剤が吸器形成阻害剤としてはたらくか調べるべく、種々のROS阻害剤を検討したところ、意外にも検討したほとんどのROS阻害剤は吸器形成阻害効果を奏さず、唯一Diphenylene iodonium(ジフェニレンヨードニウム:DPI)のみが吸器形成阻害効果を奏することを見出した。さらには、外部からROS(H)を加えたとしても、DPIによる吸器形成阻害効果は失われないことをも見出した。このことから、吸器の形成には外部から加えられたROS(H)だけではなく、内部で生成するROSが重要であり、DPIによってその発生をおさえることにより吸器形成阻害効果が起こることが確認された。以上の知見に基づき、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
NADPHオキシダーゼ阻害剤を含む、吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤。
項2.
ジフェニレンヨードニウム(DPI)又はその塩を含む、吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤。
項3.
吸器形成寄生植物が、吸器形成根寄生植物である、項1又は2に記載の吸器形成阻害剤。
項4.
吸器形成根寄生植物がハマウツボ科根寄生植物である、項3に記載の吸器形成阻害剤。
項5.
項1~4のいずれかに記載の吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤と、吸器形成寄生植物の発芽誘導剤とを含む、吸器形成絶対寄生植物の早期駆除剤。
項6.
項1~4のいずれかに記載の吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤を、宿主が存在する土地に散布する工程を含む、吸器形成寄生植物を駆除する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、寄生植物の吸器形成阻害剤が提供される。吸器形成を阻害することにより、寄生植物が宿主に寄生することを抑制できる。特に、当該吸器形成阻害剤は、絶対寄生植物(絶対半寄生植物及び絶対全寄生植物)に対しては、宿主の有無にかかわらず、駆除剤として用いることができる。さらには、寄生植物の発芽誘導物質と組み合わせて用いることにより、絶対寄生植物(絶対半寄生植物及び絶対全寄生植物)に対しては、宿主の有無にかかわらず、早期駆除剤として用いることができると考えられる。また、条件的寄生植物に対して用いることにより宿主への寄生を減らすことができると考えられる。なお、本明細書において、植物の駆除剤とは、その植物の存在の有無が確認できている場合のみならず確認できていない状況においても、その植物の生長を抑制する意図で用いられる剤をいう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】各種活性酸素阻害剤によりストライガの吸器誘導率が変化するか検討した結果を示す。Tukey-HSD法により統計的に有意な差が認められたデータにはa-eの異なるアルファベットを記す。すなわち、アルファベットが異なる場合は有意な差がある(例えば、aとeとには有意な差がある)。より具体的には、例えば、「a」と「ab」、あるいは「ab」と「bc」、といった場合には、有意差は無いが(同じアルファベットを含むため)、「ab」と「cd」といった場合には、有意差がある(同じアルファベットを含まないため)。
【図2】DPIによる吸器形成阻害効果が外部から加えた活性酸素により抑制されるかを検討した結果を示す。Tukey-HSD法により統計的に有意な差が認められたデータにはa-cの異なるアルファベットを記す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。

【0018】
本発明の吸器形成阻害剤は、好ましい一態様において、ジフェニレンヨードニウム(DPI)又はその塩を含む。ジフェニレンヨードニウムは、次の構造式で表される公知化合物である。

【0019】
【化1】
JP2019127462A_000003t.gif

【0020】
DPIの塩としては、特に制限はされないが、例えば塩化DPI(ジフェニレンヨードニウムクロリド)等が好ましく上げられる。

【0021】
DPI又はその塩は、寄生植物の吸器の形成を阻害する。当該吸器形成阻害剤は、DPI又はその塩のみからなるものであってもよいし、DPI又はその塩とその他の成分とが含まれていてもよい。吸器形成阻害剤におけるDPI又はその塩の含有割合は、例えば1~100質量%、50~99質量%、又は80~95質量%程度であってもよい。DPI又はその塩とともに吸器形成阻害剤に含まれていてもよい成分としては、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限されず、例えば水やその他の公知の除草剤等が含まれていてもよい。

【0022】
DPIは、活性酸素を生成する酵素(膜タンパク質)であるNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)オキシダーゼ阻害剤としてよく知られている。また、上記の通り、吸器形成開始シグナルとして酸化還元シグナルが関与していると考えられている。よって、DPIはNADPHオキシダーゼ活性を阻害することによって、吸器形成を阻害していると考えられる。

【0023】
よって、本発明は、NADPHオキシダーゼ阻害剤を含む吸器形成阻害剤をも包含する。DPI又はその塩は、NADPHオキシダーゼ阻害剤としてもはたらくことから、DPI又はその塩を含む吸器形成阻害剤は、NADPHオキシダーゼ阻害剤を含む吸器形成阻害剤の好ましい一態様ということもできる。但し、DPI又はその塩を含む吸器形成阻害剤は、DPI又はその塩がNADPHオキシダーゼ阻害剤として働かない態様においても、吸器形成阻害効果を奏する限り、吸器形成阻害剤として用いることができる。

【0024】
NADPHオキシダーゼ阻害剤としては、DPI又はその塩以外にも、NADPHオキシダーゼ阻害剤としてはたらくことが公知である化合物を用いることができる。例えば、Phenylarsine oxide(フェニルアルシンオキシド)等が挙げられる。

【0025】
また、当該吸器形成阻害剤は、NADPHオキシダーゼ阻害剤のみからなるものであってもよいし、NADPHオキシダーゼ阻害剤とその他の成分とが含まれていてもよい。NADPHオキシダーゼ阻害剤を含む吸器形成阻害剤におけるNADPHオキシダーゼ阻害剤の含有割合は、例えば1~100質量%、50~99質量%、又は80~95質量%程度であってもよい。NADPHオキシダーゼ阻害剤とともに吸器形成阻害剤に含まれていてもよい成分としては、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限されず、例えば水やその他の公知の除草剤等が含まれていてもよい。

【0026】
上述のNADPHオキシダーゼ阻害剤を含む吸器形成阻害剤及びDPI又はその塩を含む吸器形成阻害剤をまとめて、本発明の吸器形成阻害剤ということがある。

【0027】
本発明の吸器形成阻害剤は、適用する寄生植物の種類や用いる土地、あるいは有効成分の種類等の各条件に応じて、用いる量を適宜設定することができる。特に制限されないが、例えば、有効成分であるDPI又はその塩あるいはNADPHオキシダーゼ阻害剤の濃度が、1μM以上、2μM以上、5μM以上、又は10μM以上の溶液(特に水溶液)として、土地に散布することができる。

【0028】
本発明の吸器形成阻害剤は、吸器を形成する寄生植物の吸器形成阻害のために好ましく用いることができる。このような吸器形成寄生植物としては、特に制限されず、条件的半寄生植物、絶対半寄生植物、及び絶対全寄生植物のいずれであってもよい。なお、本明細書では、絶対半寄生植物、及び絶対全寄生植物をまとめて絶対寄生植物ということがある。

【0029】
特に制限はされないが、吸器形成寄生植物の中でも、宿主の根に寄生する根寄生植物が好ましい。特にハマウツボ科に属する寄生植物が好ましい。なお、ハマウツボ科の寄生植物は全て根寄生植物である。

【0030】
ハマウツボ科に属する植物のうち、Lindenbergia属を除いたすべての植物が寄生植物である。このような寄生植物としては例えば、次の属の植物が挙げられる。コシオガマ属、Castilleja属、Orthocarpus属、Agalinis属、Aureolaria属、Esterhazya属、Seymeria属、Lamourouxia属、Cordylanthus属、Triphysaria属、Phelipanche 属、ナンバンギセル属、オニク属、ホンオニク属、ハマウツボ属(Orobanche:オロバンキ)、キヨスミウツボ属、コゴメグサ属、ヤマウツボ属、ママコナ属、クチナシグサ属、セイヨウヒキヨモギ属、シオガマギク属、ヒキヨモギ属、ストライガ属。これらの中でも、コシオガマ属、ハマウツボ属、ストライガ属がより好ましい。ストライガ属の植物としては、例えば、Striga hermonthica、Striga gesnerioides、Striga asiatica、Striga aequinoctialis、Striga angolensis、Striga angustifolia、Striga aspera、Striga bilabiata、Striga brachycalyx、Striga chrysantha、Striga dalzieli、Striga elegans、Striga forbesii、Striga gastonii、Striga gracillima、Striga hallaei、Striga hirsuta、Striga junodii、Striga klingii、Striga latericea、Striga lepidagathidis、Striga lutea、Striga macrantha、Striga passargei、Striga pinnatifida、Striga primuloides、Striga pubiflora、Striga yemenica等が挙げられる。ハマウツボ属(オロバンキ)の植物としては、例えば、Orobanche crenata、 O. ramosa、 O. cumana、O. aegyptiaca、 O. minor等が挙げられる。コシオガマ属の植物としては、例えばPhtheirospermum japonicum(コシオガマ)、Phtheirospermum glandulosum、Phtheirospermum muliense、Phtheirospermum parishii、Phtheirospermum tenuisectum等が挙げられる。なお、上述の通り、本明細書においてストライガ属に属する植物をまとめてストライガとよぶことがある。また、本明細書において、ハマウツボ属に属する植物をまとめてオロバンキとよぶことがある。

【0031】
また、条件的半寄生植物としては、例えばRhamphicarpa fistulosa, Pedicularis kansuensis, Phtheirospermum japonicum (コシオガマ), Triphysaria versicolor, Bellardia trixago(ヒサウチソウ), Parentucellia viscosa(セイヨウヒキヨモギ)、Agalinis heterophylla(アメリカウンランモドキ), Euphrasia spp (コゴメグサ属)、Pedicularis spp (シオガマギク属)、Melampyrum roseum(ママコナ)等が挙げられる。

【0032】
なお、本発明の吸器形成阻害剤は、吸器形成前の寄生植物に対して適用することが好ましく、例えば発芽前(種子)又は発芽後吸器形成前であることが好ましい。

【0033】
また、本発明は、上記の吸器形成寄生植物の吸器形成阻害剤と、吸器形成寄生植物の発芽誘導剤とを含む、吸器形成絶対寄生植物(絶対半寄生植物及び絶対全寄生植物)の早期駆除剤をも包含する。

【0034】
このような発芽誘導剤としては、例えばエチレンやストリゴラクトンが挙げられる。ストリゴラクトンの中でも、例えばストリゴール、オロバンコール等がより好ましく挙げられる。

【0035】
このような早期駆除剤は、寄生植物が宿主から発芽誘導物質を受け取る前に発芽を誘導させることから、より早期に寄生植物を駆除できると考えられる。また、これから宿主たりえる有用植物を栽培しようとする土地に、予め当該早期駆除剤を適用することにより、栽培前に寄生植物を死滅させることが可能になるとも期待できる。

【0036】

なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0037】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
植物材料と植物の発芽処理
ストライガ(Striga hermonthica)種子約50~100mgを量りとり、20%ハイター(花王)液1mlを入れボルテックスを用いて混合し、上澄み液を捨てた。これを10回繰り返した。クリーンベンチ内で滅菌水1mlを用いて10回洗浄を繰り返し、種子を滅菌した。滅菌水1mlに懸濁した滅菌種子を、ガラス繊維ろ紙(GEヘルスケア, GF/A)を敷いた9cmシャーレへ移し、滅菌水を9ml加えて全量を10mlにし、サージカルテープで封をした。アルミホイルで遮光し25℃で7日吸水処理をした。吸水処理をしたストライガ種子に10μM strigol(ストリゴール)10μlを加え、25℃暗所に置き、発芽を誘導した。
【実施例】
【0039】
吸器誘導物質と阻害剤の処理
発芽誘導24時間後、ストライガ種子が発芽していることを実体顕微鏡を用いて観察した後、1ウェルあたりに20~30粒になるように、ピンセットを用いて96ウェルプラスチックプレートに分注した。1ウェルあたり100μlの滅菌水と最終濃度10μMの2,6-dimethoxy-p-benzoquione(DMBQ)(Sigma-Arlrich)又はsyringic acid (Sigma-Arlrich)(いずれも公知の吸器形成誘導物質)、および各種活性酸素阻害剤を加え、サージカルテープを用いて封をし、暗所25℃条件下に置いた。各種活性酸素阻害剤のうち、化合物は10μMとなるように加え、酵素は10ユニット/μlとなるように加えた。24時間後に実体顕微鏡を用いて吸器の有無を観察した。吸器誘導率は吸器を形成したストライガ植物体数を実験に用いた植物体数で割ることにより算出した。なお、活性酸素阻害剤は以下のものを用いた。Salicylhydroxamic acid (SHAM、東京化成工業)、Potassium iodide (和光)、Potassium benzoate (和光)、L-Ascorbic acid (和光)、Diphenyleneiodunium (DPI、フナコシ)、Umbelliferone (東京化成工業)、 6,7-dihydroxycoumarin (Esculetin、Sigma-Arlrich)、Superoxide dismutase (SOD、ナカライテスク)。
【実施例】
【0040】
結果を図1に示す。図1の縦軸は吸器誘導率(%)を示す。当該結果から、DPIのみが極めて高効率に吸器形成を阻害することが分かった。
【実施例】
【0041】
DPIはNADPHオキシダーゼ阻害剤とはたらくことにより、NADPHオキシダーゼによる活性酸素の産生を阻害することが知られている。
【実施例】
【0042】
そこで、次に、DPIに加えて活性酸素(H)をも添加して同様の検討を行った。結果(吸器誘導率(%))を図2に示す。意外なことに、Hを加えても、DPIによる吸器形成阻害効果は抑制されないことが分かった。つまり、活性酸素を外部から加えてもDPIによる吸器形成阻害効果は抑制されないことがわかった。(それどころか、Hを比較的高濃度で加えた場合には、吸器形成阻害効果が増強された。ただ、これはHによりストライガの細胞が障害を受けた可能性も考えられる。)
【実施例】
【0043】
このことから、吸器形成には、寄生植物の細胞内部におけるNADPHオキシダーゼ及び/又は活性酸素が関わっており、外部から供給される活性酸素は吸器形成にはあまり関わっていないことが示唆された。
図面
【図1】
0
【図2】
1