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明細書 :分光用デバイス、分光器、及び分光測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-128157 (P2019-128157A)
公開日 令和元年8月1日(2019.8.1)
発明の名称または考案の名称 分光用デバイス、分光器、及び分光測定方法
国際特許分類 G01N  21/41        (2006.01)
G01J   1/00        (2006.01)
G01J   1/02        (2006.01)
H01L  31/108       (2006.01)
H01L  31/0232      (2014.01)
FI G01N 21/41 101
G01J 1/00 H
G01J 1/02 R
H01L 31/10 C
H01L 31/02 D
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2018-007666 (P2018-007666)
出願日 平成30年1月19日(2018.1.19)
発明者または考案者 【氏名】菅 哲朗
【氏名】大下 雅昭
出願人 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
【識別番号】100169764、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 雄一郎
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
2G065
5F849
Fターム 2G059AA02
2G059AA05
2G059EE01
2G059EE11
2G059EE18
2G059HH02
2G059JJ01
2G059JJ11
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM14
2G065AA04
2G065AB04
2G065AB23
2G065AB27
2G065BA09
2G065BA40
2G065BB06
2G065BC13
5F849AA05
5F849AB03
5F849AB17
5F849BA25
5F849BB07
5F849FA05
5F849GA04
5F849HA15
5F849HA20
5F849XB05
5F849XB39
要約 【課題】小型且つ高分解能な分光器に適用可能な分光用デバイスを提供する。
【解決手段】本発明を適用した分光用デバイス55は、受光面RSを有する板状の回転部55Bと、支持部材80に固定可能に形成された固定部55Aと、回転部55Bの外縁端部5rの少なくとも一部に接続され、回転部55Bと固定部55Aとを接続する接続部62と、回転部55Bの受光面RSと電気的に接続された電極部30と、を備える。回転部55Bは、受光面RSの上下方向(Z方向)に回転し、受光面RSに所定の波長の光Linが照射された際に表面プラズモン共鳴が生じる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
受光面を有する板状の回転部と、
支持部材に固定可能に形成された固定部と、
前記回転部の外縁端部の少なくとも一部に接続され、前記回転部と前記固定部とを接続する接続部と、
前記回転部の前記受光面と電気的に接続された電極部と、
を備え、
前記回転部は、前記受光面の上下方向に回転し、前記受光面に所定の波長の光が照射された際に表面プラズモン共鳴が生じる、
分光用デバイス。
【請求項2】
前記回転部は、前記受光面外にあり且つ前記受光面に平行な第1方向に沿う第1回転軸を中心に回転する、
請求項1に記載の分光用デバイス。
【請求項3】
前記受光面に平行で、前記受光面外にあり且つ前記受光面に平行な第1方向に沿う第1回転軸に直交する第2回転軸を有し、
前記回転部は前記第2回転軸を中心として回転する、
請求項1または2に記載の分光用デバイス。
【請求項4】
前記接続部は前記固定部より小さい幅を有し、前記回転部の外周端縁と前記固定部の前記回転部側の端縁との間を蛇腹状に折り返しつつ延びる、
請求項1から3の何れか一項に記載の分光用デバイス。
【請求項5】
前記接続部は前記回転部より薄い、請求項4記載の分光用デバイス。
【請求項6】
前記受光面に平行で且つ前記第1回転軸に直交する第2回転軸を有し、
前記回転部は前記第2回転軸を中心として回転し、
前記接続部は前記回転部の外周端縁における前記第1方向の両端に対向する前記固定部の端縁と前記回転部の外周端縁における前記第1方向の中央部とを接続する、
請求項4又は5に記載の分光用デバイス。
【請求項7】
前記受光面は、
半導体基板と、
前記半導体基板に積層され、前記半導体基板との界面でショットキー障壁を構成し、前記所定の波長の光が照射された際に前記表面プラズモン共鳴を起こす金属層と、
を備え、
前記電極部は前記金属層と電気的に接続される、
請求項1から6の何れか一項に記載の分光用デバイス。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の分光用デバイスと、
前記固定部を支持する支持部材と、
前記回転部を前記受光面の上下方向に回転させる回転機構と、
前記受光面に前記所定の波長の光を照射する光源と、
を備える、
分光器。
【請求項9】
前記光源から出射された前記所定の波長の光をコリメートし、前記受光面に照射するコリメートレンズを備える、
請求項8に記載の分光器。
【請求項10】
前記回転機構は、前記回転部と間隔をあけて配置され、前記回転部に所定の周波数の音波を出力するスピーカーを備え、
前記回転部は前記スピーカーから出力された前記音波によって前記受光面の上下方向に所定の周期で回転する、
請求項8又は9に記載の分光器。
【請求項11】
請求項8から10の何れか一項に記載の分光器を用いた分光測定方法であって、
前記回転部の回転角度を変化させることによって前記受光面への前記所定の波長の光の入射角度を変化させると共に前記受光面に入射する前記光の入射波長を変化させつつ、前記電極部から出力される光電流値を得た後、前記入射波長と前記入射角度と前記光電流値との関係から、前記分光用デバイスにおける前記入射波長と前記表面プラズモン共鳴が生じる共鳴角度と前記光電流値との関係を示すデバイス特性マトリクスを取得するデバイス特性マトリクス取得工程と、
前記回転角度を変化させることによって測定対象の光学情報を含む光の前記受光面への入射角度を変化させつつ、前記電極部から出力され且つ前記光学情報を含む光電流値を得た後、前記デバイス特性マトリクス取得工程で取得した前記デバイス特性マトリクスと前記光学情報を含む光電流値を要素とする光電流ベクトルとを用いて、前記回転部に入射し且つ前記光学情報を含む光の前記入射波長ごとのパワーを要素とする入射光ベクトルを算出する入射光ベクトル算出工程とを備える、
分光測定方法。
【請求項12】
前記デバイス特性マトリクス取得工程及び前記入射光ベクトル算出工程において、
前記受光面の上下方向に前記回転部を一定の時間周期で回転させることによって、前記回転角度を前記回転部の回転時間に換えて変化させる、
請求項11に記載の分光測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分光用デバイス、分光器、及び分光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化学分析などに使用されてきた分光装置は、大型で、測定するために、分光装置が設置された分析室などに測定対象の試料を持ち込む必要があった。近年、測定対象を分析室に持ち込むことなく、現場や任意の場所で分析を行うリアルタイム計測や、所定のエリアの測定及び監視を常時行うモニタリング計測への関心が高まりつつある。関心の高まりに加え、分光器に用いられる光学素子やセンサの設計や製造技術の進展もあって、種々の小型な分光器が提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、回折格子を備えた小型分光器が開示されている。非特許文献1に開示された小型分光器では、側面に入射スリットが形成された箱の内部の所定の位置に、レンズ、ミラー、回折格子、検出器が設けられる。レンズは、入射スリットから筐体の内部に入射して拡散した光をコリメートする。ミラーは、レンズによってコリメートされた入射光を回折格子に向けて反射させる。回折格子は、ミラーによって反射された光を、波長ごとに異なる角度で反射させる。互いに異なる角度で反射された反射光は、試料の互いに異なる位置に照射される。試料に照射された光には、試料の光学情報が加わる。試料の光学情報が付加されかつ試料から透過した光は、検出器に入射する。検出器で検出された光の強度分布と試料に照射する前の光の強度分布との差を得ることにより、試料の光学情報が検出される。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】http://bwtek.com/spectrometer-part-6-choosing-a-fiber-optic/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の非特許文献1に開示された小型分光器をはじめ、従来の小型分光器では、複数の波長の光を含む多色光から波長ごとの光を空間内で分離するための波長分離素子として、回折格子(グレーティング)が用いられる。分光器の重要な性能パラメータに「分解能」があるが、波長分離素子として回折格子を用いた場合、高分解能化を図るためには、回折格子のピッチと検出器の単位セルの少なくとも一方を小さくする、又は、回折格子とディテクタとの距離を大きくするという方法がある。回折格子のピッチと検出器の単位セルは現在の製造技術の限界近くまで既に小さくされていると考えると、小型分光器の高分解能化を図るためには、回折格子とディテクタとの距離を大きくしなければならない。そのため、分解能を確保しつつ従来よりもさらなる小型化(以下、超小型化という場合がある)を図る場合、回折格子とディテクタとの距離を確保するために超小型化に限界が生じ、超小型且つ高分解能な分光器の実現が難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の事情を勘案したものであって、小型且つ高分解能な分光器に適用可能な分光用デバイス、該分光用デバイスを備えた分光器、及び該分光器を用いた分光測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分光用デバイスは、受光面を有する板状の回転部と、支持部材に固定可能に形成された固定部と、前記回転部の外縁端部の少なくとも一部に接続され、前記回転部と前記固定部とを接続する接続部と、前記回転部の前記受光面と電気的に接続された電極部と、を備え、前記回転部は、前記受光面の上下方向に回転し、前記受光面に所定の波長の光が照射された際に表面プラズモン共鳴が生じる。
【0008】
本発明の分光器は、上述の分光用デバイスと、前記固定部を支持する支持部材と、前記回転部を前記受光面の上下方向に回転させる回転機構と、前記受光面に前記所定の波長の光を照射する光源とを備える。
【0009】
本発明の分光測定方法は、上述の分光器を用いた分光測定方法であって、前記回転部の回転角度を変化させることによって前記受光面への前記所定の波長の光の入射角度を変化させると共に前記受光面に入射する前記光の入射波長を変化させつつ、前記電極部から出力される光電流値を得た後、前記入射波長と前記入射角度と前記光電流値との関係から、前記分光用デバイスにおける前記入射波長と前記表面プラズモン共鳴が生じる共鳴角度と前記光電流値との関係を示すデバイス特性マトリクスを取得するデバイス特性マトリクス取得工程と、前記回転角度を変化させることによって測定対象の光学情報を含む光の前記受光面への入射角度を変化させつつ、前記電極部から出力され且つ前記光学情報を含む光電流値を得た後、前記デバイス特性マトリクス取得工程で取得した前記デバイス特性マトリクスと前記光学情報を含む光電流値を要素とする光電流ベクトルとを用いて、前記回転部に入射し且つ前記光学情報を含む光の前記入射波長ごとのパワーを要素とする入射光ベクトルを算出する入射光ベクトル算出工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超小型且つ高分解能な分光用デバイス、分光器、及び該分光用デバイス及び前記分光器を用いた分光測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の分光用デバイスの第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示すC2-C2線で矢視した分光用デバイスの断面図である。
【図3】図1に示すC1-C1線で矢視した分光用デバイスの断面図である。
【図4】図1に示す分光用デバイスの回転部が第1回転軸を中心として片持ち回転する様子を示す斜視図である。
【図5】本発明の分光器の第1実施形態の概略図である。
【図6】図1に示す分光用デバイス及び分光器における共鳴波長と共鳴角度との関係性の一例を示すグラフである。
【図7】図1に示す分光用デバイス及び分光器における入射波長と共鳴角度と光電流値(Responsivity)との関係性の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の分光用デバイスの第2実施形態の斜視図である。
【図9】図8に示す分光用デバイスの回転部が第2回転軸を中心として回転する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の分光器の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものである。

【0013】
(第1実施形態)
表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:以下、SPR)は、誘電体と金属の界面において光を全反射させることで生じるエバネッセント波が金属の表面の自由電子の共鳴振動に結合する現象である。SPRの共鳴条件は、光の入射角度と波長、金属の誘電率、金属と接する誘電体の誘電率等に依存し、特に誘電体の誘電率の変化により敏感に変化する。そのため、SPRは金属膜の表面の化学物質の密度を誘電体の変化として捉えられ、化学的測定又は生物学的測定やこれらの測定時に使用するセンサ等に用いられる。

【0014】
[分光用デバイス及び分光器の構成]
図1に示すように、本発明の第1実施形態の分光用デバイス55は、受光面RSを有する板状の回転部55Bと、回転部55BにおいてX方向(第1方向)に沿う外周端縁5rに接続され、支持部材80に固定可能に形成された固定部55Aと、受光面RSに電気的に接続された電極部30と、を備える。分光用デバイス55は、SPRに基づいて光Linに含まれる光学情報を光電流値の変化に変換し、分光用デバイス55を支持する支持部材80と併せて分光機能部90を構成する。

【0015】
回転部55Bは、接続部62を介して固定部55Aに接続され、X方向に沿う第1回転軸を中心に回転する。後述するように、受光面RSに所定の波長の光Linが照射されると、SPRが生じる。但し、第1回転軸は、平面視で接続部62内の任意の位置にあるので、図1に示していない。上述の任意の位置は、接続部62の形状や半導体基板5の剛性によって、適宜決定される。

【0016】
固定部55A及び回転部55Bは、共通の半導体基板5で構成される。図2に示すように、受光面RSの半導体基板5の表面5aには、X方向に平行な回折格子が形成される。また、受光面RSにおける半導体基板5の表面5aには、金属層10が積層される。なお、図2の断面図は、回折格子の構成を模式的に表現したものであり、格子の寸法や繰り返し数などは実際の構成と異なる。

【0017】
半導体基板5は、後述する電極部30を構成する役割も担い、例えばn型シリコン(Si)で構成される。半導体基板5上の第2電極34の下部には、不純物がドーピングされていることが好ましい。不純物は、n型半導体のドーパントとして公知なドーパントであり、例えばリン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)等である。ドープ濃度は、例えば1020atoms/cm程度である。第2電極34は、半導体基板5の裏面5bに設けられてもよい。この場合には、半導体基板5の裏面5b側に不純物がドーピングされていることが好ましい。その場合のドープ濃度は、後述する第2のショットキー障壁の高さ等を考慮して適宜調整される。半導体基板5の厚さが数100μm程度である場合、不純物がしみ込む深さは、例えば100nm程度で構わない。

【0018】
金属層10は、半導体基板5との界面8でショットキー障壁を構成し、所定の波長の光が照射された際にSPRを起こす。金属層10の形状が分光用デバイス55における共鳴条件を決める。本実施形態の金属層10は、略均一な厚みを有し、受光面RSの半導体基板5の表面5aの複数の凹凸(回折格子)を覆う。金属層10の厚みは、例えば0.1μmである。このような構成では、光Linが照射されることによって金属層10の表面10aの電子が励起され、X方向(又は、X方向とは逆の方向)に沿って伝搬する電子の共鳴波が生じる。金属層10は、例えば金(Au)で構成される。

【0019】
以下、受光面RSを含む平面内でX方向に直交する一方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する一方向をZ方向(受光面RSの上下方向)とする。回転部55Bの半導体基板5は、所謂カンチレバー構造になっており、図3に示すように、側面視において、第1回転軸を中心として受光面RSの上下方向(Z方向)に片持ち回転する。

【0020】
第1実施形態の接続部62は、接続基端部62Cと、第1接続分岐部62Aと、第2接続分岐部62Bで構成される。接続基端部62Cは、回転部55Bの外周端縁5rの中央部から、Y方向の後方に延びる。第1接続分岐部62Aと第2接続分岐部62Bは、接続基端部62CのY方向の後方の端部から互いに離れる方向へ蛇腹状に折り返しつつ延び、接続箇所58で固定部55Aの端縁57接続する。接続箇所58の固定部55Aの端縁57は、回転部55Bの外周端縁5rにおけるX方向の両端D1,D2に対向する。

【0021】
図4に示すように、第1接続分岐部62A及び第2接続分岐部62Bは、接続箇所58から接続基端部62Cに向かって、長辺部E1,…,En(nは2以上の自然数)と、短辺部F1,…,Fm(mは2以上の自然数)とが交互に連結することによって構成される。例えば、回転部55Bに対して下から上に向かう力が付与されると、回転部55Bが図4の二点鎖線で描かれた初期位置から実線で描かれた位置へと片持ち回転する。この際、長辺部E1,…,EnのZ方向の変位は、nが大きくなるほど増大するように変化する。図示していないが、回転部55Bに対して上から下に向かう力が付与されると、長辺部E1,…,EnのZ方向の変位は、nが大きくなるほど減少するように変化する。

【0022】
長辺部E1,…,EnのそれぞれのX方向に沿った幅、短辺部F1,…,FmのそれぞれのY方向に沿った幅、及び接続基端部62CのX方向に沿った幅は、固定部55AのX方向に沿った幅より小さい。

【0023】
第1接続分岐部62A及び第2接続分岐部62Bのそれぞれの長辺部E1,…,En及び短辺部F1,…,Fmの変位の変化によって、接続部62は、全体的に柔軟にたわむ。第1実施形態では、接続部62のたわみの度合いは、主に、接続部62を構成する半導体基板5の剛性に依存する。接続部62のたわみの度合いを高める点では、接続部62の剛性(撓りやすさ)は適度に低い方が好ましい。一方で、後述するように回転部55Bを一定の時間周期で第1回転軸を中心に片持ち回転させる際に、経過時間と回転部55Bの回転角度との相関関係を再現性良く保持する点では、回転部55Bの剛性は適度に高い方が好ましい。

【0024】
また、接続部62は回転部55Bより薄く形成されてもよい。接続部62が回転部55Bより薄いことによって、回転部55Bの剛性は接続部62の剛性より低くなるので、回転部55Bはたわみにくくなり、接続部62は回転部55Bよりたわみやすくなる。

【0025】
電極部30は、金属層10から半導体基板5の表面5aの受光面RS以外の領域に延設された第1電極32と、金属層10とは非接触状態で半導体基板5の表面5aの受光面RS以外の領域に延設された第2電極34と、第1電極32の上面に設けられた端子33と第2電極34の上面に設けられた端子35とを互いに連結する回線36と、を有する。金属層10と半導体基板5で生じた光電流(ISC)は、回線36に設けられた電流計38やモニタ等に表示可能とされている。

【0026】
第1電極32は、接続部62に対向する金属層10の外周端の一部から接続部62に延び、接続部62の上面に沿って設けられ、固定部55Aの上面に至る。詳しくは、第1電極32は、金属層10と接続部62との間の回転部55Bの表面、接続基端部62Cの表面、第1接続分岐部62Aの表面、固定部55Aの表面をこの順になぞるように設けられる。端子33は、固定部55Aの表面の第1電極32の上面に設けられる。第1電極32は、例えば、金(Au)で構成される。本実施形態では、第1電極32は、金属層10と同じAuで一体的に形成されている。

【0027】
第2電極34は、回転部55Bの表面において受光面RSとは異なる領域から接続部62に延び、接続部62の上面に沿って設けられ、固定部55Aの上面に至る。詳しくは、第2電極34は、受光面RSとは異なる領域の回転部55Bの表面から、金属層10と接続部62との間の回転部55Bの表面、接続基端部62Cの表面、第2接続分岐部62Bの表面、固定部55Aの表面をこの順になぞるように設けられる。端子35は、固定部55Aの表面の第2電極34の上面に設けられる。第2電極34は、例えば、アルミニウム(Al)で構成される。

【0028】
支持部材80は、固定部55Aの半導体基板5に接続する本体82と、平面視において本体82からY方向の前方に突出する囲み部84とを備える。囲み部84は、本体82と同じ厚さを有し、回転部55Bの半導体基板5の外周端縁に対して隙間をあけて、回転部55Bの半導体基板5を囲むように形成される。言い換えれば、囲み部84は、Z方向に貫通する貫通孔86を有する。回転部55Bの半導体基板5は、貫通孔65で第1回転軸を中心に片持ち回転する。第一実施形態では、分光用デバイス55の半導体基板5と、支持部材80が一体として、共通のn型シリコン(n型半導体)で構成される。

【0029】
図5に示すように、第1実施形態の分光器100は、分光機能部90と、分光用デバイス55の受光面RSに光Linを照射する光源110と、入射した光Linから所定の偏光の向きの光Linを出射する偏光板120と、回転部55Bを片持ち回転させる回転機構130とをさらに備える。また、端子33と電流計38との間の回線36に、増幅器150が設けられる。

【0030】
光源110は、分光器100を用いて測定対象の試料Wの光学情報を取得するために必要とされる波長領域(以下、ターゲット波長領域とする)の光Linを出射する。光源110には、ターゲット波長領域内の波長λ~λの多色光を出射可能な多色光源が用いられる。ターゲット波長帯域が可視波長域(約380nm以上800nm以下の波長域)である場合は、光源110として、白色光源が好適である。

【0031】
光Linの進行方向において、光源110と偏光板120との間に、不図示のコリメートレンズが設けられることが好ましい。コリメートレンズが設けられることによって、光源110から発せられた光Linが平行光になり、回転部55Bへの光Linの入射角度が一定になる。また、伝搬距離によらず光Linのビーム径及び単位面積あたりの光強度が略一定になる。

【0032】
偏光板120は、入射した光Linから例えばTM偏波モードの光LTMのみを透過する。

【0033】
第1実施形態の回転機構130は、第1回転軸を中心として回転部55Bを片持ち回転させるための音波を出力するスピーカー140を備える。スピーカー140は、第1回転軸を中心として回転部55Bの半導体基板5を片持ち回転させるための音波をZ方向に沿って出力する。スピーカー140から発せられる音波の周波数は、不図示の制御機構等によって所望の周波数に制御される。試料(測定対象)Wは、光LTMの進行方向において偏光板120と分光用デバイス55との間に、且つ光LTMの進路上に配置される。

【0034】
[分光用デバイスの原理]
分光用デバイス55では、端子33と半導体基板5、及び、端子35と半導体基板5がそれぞれ、金属層10を介して電気的に接続されていることで、エネルギーバンド構造ができている。金属層10と半導体基板5との接合による界面8には、ショットキー障壁が形成されるため、金属層10において光Linが照射される前の励起されていない自由電子は、ショットキー障壁を越えることができず、金属層10の内部に溜まる。

【0035】
金属層10に光Linが照射されると、金属層10の表面10aでSPR(図2に示す共鳴S)が起きる。金属層10の内部の自由電子は励起され、ショットキー障壁を乗り越え、金属層10(すなわち、第1電極32及び端子33)から半導体基板5に向かう方向に拡散する。ショットキー障壁を越えた自由電子が光電流として端子35から検出される。つまり、金属層10と半導体基板5との界面8は、フォトダイオードのように機能する。

【0036】
[分光器の原理]
先ず、分光用デバイス55に特有の光LTMの波長と共鳴角度θSPRと光電流値IθSPRとの相関関係について説明する。上述の原理に基づいて動作する分光用デバイス55では、TM偏波モードの光LTMの入射波長λによってSPRが起こる共鳴角度θSPRが異なる。このことをふまえ、入射波長λをターゲット波長領域内で変化させ、各入射波長λにおいて、光LTMが金属層10に表面10a側(すなわち、Z方向において金属層10の半導体基板5とは反対側)から入射したときの入射角度θinと電極部30に出力される光電流値IθSPRとの関係性を得る。

【0037】
具体的には、回転部55Bが片持ち回転すると、図3に示すように、受光面RSの半導体基板5の表面5aと固定部55Aの半導体基板5の表面5aとがなす挟角γが変化する。光源110の位置が固定されているので、挟角γの変化に応じて、分光用デバイス55に入射する光LTMの入射角度θinが半導体基板5の表面5aの法線Pを基準として変化する。そこで、試料Wを配置しない状態での実際の測定、又は、数値シミュレーション等によって、挟角γと光LTMの入射波長λと光電流値Iθinとの関係性を得る。

【0038】
受光面RSにおける回折格子の形状パラメータ(例えば、回折格子のピッチ等)及び物性パラメータ(金属層10の誘電率等)は測定前に既知であるので、共鳴角度θSPRとその共鳴角度θSPRで共鳴する入射波長λとの相関関係は明らかである。例えば、図6は、受光面RSにおける回折格子のピッチが3.2μmであり、光LTMの回折次数が-3である場合の入射波長λと共鳴角度θSPRとの関係を示す。

【0039】
前述のように得られた挟角γと光LTMの入射波長λと光電流値Iθinとの関係性から、挟角γと入射角度θinとの幾何学的な関係、及び、入射角度θinごとに、該入射角度θinと同じ共鳴角度θSPRとその共鳴角度θSPRが発現する入射波長λSPRとの相関関係に基づいて、図7に例示する共鳴角度θSPRと入射波長λと光電流値(すなわち、光電流値Iθin)との関係性を得る。なお、図7では、ターゲット波長領域のうち、入射波長λ,λ,λの結果のみを例示する。図7に示すように、各波長λ,λ,λにおいて、共鳴角度θSPR1,θSPR2,θSPR3で光電流値(Responsivity)のピークがみられる。

【0040】
ここで、共鳴角度θSPR1における各波長λ,λ,λの光電流値の相対値をMRと表す。Mは、共鳴角度θSPR1における波長λの光電流値Rに対する相対倍率である。例えば、共鳴角度θSPR1における各波長λ,λ,λの光電流の相対値として、18R,2R,Rが得られる。同様に、共鳴角度θSPR2における各波長λ,λ,λの光電流の相対値として、4R,12R,Rが得られる。また、共鳴角度θSPR1における各波長λ,λ,λの光電流の相対値として、4R,2R,8Rが得られる。

【0041】
図6に例示した共鳴角度θSPRと入射波長λと光電流値との関係性から、分光用デバイス55の感度マトリクスRが得られる。感度マトリクスRは、分光用デバイス55の特性を示し、(1)式で表される。

【0042】
【数1】
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【0043】
(1)式で表される感度マトリクスRを、ターゲット波長領域全体に一般化し、デバイス特性マトリクスR´を得る。具体的には、(1)式の左辺の第1行第一列の項;18Rを、ターゲット波長領域内の最も短い波長λの共鳴角度θSPR1における光電流値Rλ1θSPR1とする。同様に、波長をλからターゲット波長領域内の最も長い波長λまで拡げると共に、共鳴角度をθSPR1からθSPRn(nは2以上の自然数)まで拡げることによって、(2)式で表されるデバイス特性マトリクスR0が得られる。

【0044】
【数2】
JP2019128157A_000004t.gif

【0045】
図5に示す分光器100においてスピーカー140から所定の周波数の音波を出力することで、音波の周波数に応じて、図2に示すように、分光用デバイス55が矢印Tのように振動し、回転部55Bが第1回転軸を中心として片持ち回転する。回転部55Bが回転周期を一定として片持ち回転すると、挟角γ及び光LTMの入射角度θinが時間tに応じて変化する。すなわち、共鳴角度θSPRが時間tの関数として換算され、(2)式のデバイス特性マトリクスR´は次に示す(3)式のデバイス特性マトリクスRとして表される。なお、(3)式のデバイス特性マトリクスRでは、時間tから時間tまでの経過時間が回転部55Bの回転の一周期の時間に相当する。

【0046】
【数3】
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【0047】
次いで、図5に示すように試料Wを配置した構成において、実際に測定等で得られる光電流値から入射スペクトルを算出する原理について説明する。

【0048】
分光器100において、試料Wを配置し、光源110から光Linを出射するとともに、スピーカー140から所定の周波数の音波を出力することで、音波の周波数に応じて、時間tの変化に対する光電流値Iが得られる。前述のように、時間tと光LTMの入射角度θinとの間に相関関係があるので、光電流値Iは光電流値IθSPRに換算可能である。時間tから時間tまでの光電流値I,IθSPRを要素として有する光電流ベクトルIを考える。

【0049】
また、試料Wを透過した光LTMの波長λ,λ,λ,…,λごとのパワーを要素Pλ1,Pλ2,Pλ3, …,Pλnと表し、これらの要素を有する入射光ベクトルPを考える。入射光ベクトルPは、試料Wの光学情報を含む。光電流ベクトルIは、感度マトリクスR及び入射光ベクトルPによって(4)式及び(5)式のように表される。

【0050】
【数4】
JP2019128157A_000006t.gif

【0051】
【数5】
JP2019128157A_000007t.gif

【0052】
感度マトリクスR及びデバイス特性マトリクスR0,Rはそれぞれ正則であり、逆行列R-1,R0-1,R-1を有する。入射光ベクトルPは、感度マトリクスR又はデバイス特性マトリクスR0及び光電流ベクトルIから、(6)式及び(7)式のように得られる。

【0053】
【数6】
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【0054】
【数7】
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【0055】
第1実施形態の分光器100のように、共鳴角度θSPRを回転部55Bの片持ち回転の時間tに置き換え可能な場合は、入射光ベクトルPは、デバイス特性マトリクスR及び光電流ベクトルIから、(8)式のように得られる。

【0056】
【数8】
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【0057】
(7)式又は(8)式によって入射光ベクトルPが得られれば、入射光ベクトルPから試料Wに照射される前の光LTMの情報をキャンセルすることによって、入射光ベクトルPに含まれる試料Wの光学情報を取り出すことができる。試料Wに照射される前の光LTMの情報は、光電流値I,IθSPRを測定する前に、試料Wを光LTMの進路から外すことによって取得できる。

【0058】
[分光用デバイス及び分光器を用いた分光測定方法]
第1実施形態の分光用デバイス55及び分光器100を用いた分光測定方法(以下、単に「分光測定方法」と記載する場合がある。)は、デバイス特性マトリクスを取得するデバイス特性マトリクス取得工程と、得られたデバイス特性マトリクス及び光電流ベクトルに基づいて入射光ベクトルを算出する入射光ベクトル算出工程とを備える。

【0059】
<デバイス特性マトリクス取得工程>
先ず、図5に示す分光器100の構成において、試料Wを光LTMの進路上から外す。スピーカー140から所定の周波数の音波を出力させ、分光用デバイス55の回転部55Bを一定の周期で第1回転軸を中心に片持ち回転させる。同時に、光源110からターゲット波長領域の最も低い波長λの光Linを出射させ、端子33,35から出力される光電流値Iθinを測定する。回転部55Bの回転周期に基づき、時間tと光LTMの入射角度θinと入射波長λと共鳴角度θSPRと光電流値Iθinの関係から、波長λにおける光電流値Iθinの入射角度θinの依存性(すなわち、図6に例示した「λ」のグラフ)を得る。

【0060】
光源110から出射させる光Linの波長をターゲット波長領域内の波長λから波長λ(nは2より大きい自然数)まで順次変化させる。その際、上述の入射波長λの場合と同様に、時間t・光LTMの入射角度θin・入射波長λ~λ・共鳴角度θSPR・光電流値Iθinの関係から、入射波長λ~λのそれぞれにおける光電流値Iθinの入射角度θinの依存性(すなわち、図6に例示した「λ」や「λ」のグラフを含む)を得る。このようにして得られたターゲット波長領域λ~λのそれぞれにおける光電流値Iθin(Responsivity)の入射角度θinの依存性から、前述の(2)式及び(3)式で表されるデバイス特性マトリクスR,Rを取得する。

【0061】
なお、本工程において光源110から出射させる光Linの波長をターゲット波長領域内の波長λ~λに変化させる方法としては、例えば光源110として多色光源を用いると共に、光Linの進行方向において、光源110とコリメートレンズとの間に、波長選択フィルタを設けることができる。

【0062】
<入射光ベクトル取得工程>
次に、図5に示す分光器100の構成において、試料Wを光LTMの進路上に配置する。
スピーカー140から所定の周波数の音波を出力させ、分光用デバイス55の回転部55Bを一定の周期で第1回転軸を中心に片持ち回転させる。同時に、多色光源である光源110から波長λ~λの光Linを出射させ、端子33,35から出力される光電流値Iθinを測定する。この作業により、回転部55Bの回転開始からの経過時間に応じた光Linの入射角度θinと光電流値Iθinとの関係がわかり、入射角度θinと同じ共鳴角度θSPRでプラズモン共鳴する共鳴波長と光電流値IθSPRとの関係が得られる。つまり、測定された光電流値Iθinから、前述の(4)式の左辺に示すようにIθSPR1,IθSPR1,…,IθSPRnの要素を有する光電流ベクトルIを算出する。すなわち、入射光ベクトル取得工程では、離散的な共鳴角度θSPRごとの回転位置で光電流の計測を行い、光電流ベクトルIを作成する。

【0063】
続いて、デバイス特性マトリクスR,Rのぞれぞれの逆行列R-1,R-1を算出する。算出した逆行列R-1,R-1及び光電流ベクトルIから、前述の(7)式及び(8)式によって入射光ベクトルPを算出する。入射光ベクトルPに含まれる試料Wの光学情報を検出すると、分光用デバイス55及び分光器100を用いた分光測定方法は完了する。

【0064】
上述したように、第1実施形態の分光用デバイス55は、受光面RSを有する板状の回転部55Bと、支持部材80に固定可能に形成された固定部55Aと、回転部55Bの外縁端部5rの少なくとも一部に接続され、回転部55Bと固定部55Aとを接続する接続部62と、回転部55Bの受光面RSと電気的に接続された電極部30と、を備える。回転部55Bは、受光面RSの上下方向(Z方向)に回転する。受光面RSに所定の波長の光Linが照射された際には、表面プラズモン共鳴が生じる。

【0065】
分光用デバイス55によれば、分光測定対象の試料Wの光学情報が含まれた光Linが受光面RSに照射されると、光Linの入射波長λと入射角度θinに応じた表面プラズモン共鳴の応答の大きさが、電極部30の第1電極32及び第2電極34から取り出される光電流値Iθinとして検出される。分光用デバイス55によれば、固定部55Aは支持部材80に固定された状態で、且つ回転部55BはZ方向に回転する。回転部55BがZ方向に回転する分光用デバイス55の受光面RSに定位置から試料Wの光学情報を含む所定の入射波長の光Linが入射すると、入射角度θinの変化に応じた光電流値Iθinが検出される。予め、受光面RSに入射する光の入射波長λθSPRと共鳴角度θSPRと光電流値IθSPRの相対関係が得られていれば、実際に検出された光電流値IθSPRの変化と予め得られた入射波長λθSPRと共鳴角度θSPRと光電流値IθSPRの相対関係との対応を調べることによって、試料Wの光学情報が得られる。また、本構成では、波長分解能は回転部55Bの回転角度γの分解能に依存するので、従来の分光器における回折格子とディテクタとの距離のように構成要素同士の離間距離を大きくしなくても、容易に高分解能化を図ることができる。従って、分光用デバイス55は、小型且つ高分解能な分光器に適用できる。

【0066】
また、第1実施形態の分光用デバイス55は、回転部55Bは、受光面RS外にあり且つ受光面RSに平行なX方向に沿う第1回転軸を中心に回転する。

【0067】
分光用デバイス55によれば、分光用デバイス55によれば、固定部55Aは支持部材80に固定された状態で、且つ回転部55Bは第1回転軸を中心としてZ方向に片持ち回転する。回転部55Bが片持ち回転することによって、限られた空間内で回転部55Bの受光面RSの回転角度γのふれ幅を大きくすることができる。回転角度γのふれ幅を大きくすることによって、共鳴角度θSPRの検出可能範囲を拡大し、共鳴角度θSPRと相関関係を有する入射波長λθSPRの検出可能範囲も拡大できる。つまり、回転部55Bが片持ち回転することによって、分光用デバイスの小型化を図りつつ、ターゲット波長領域を広く確保できる。

【0068】
すなわち、第1実施形態の分光用デバイス55によれば、同じスペース内であれば、片持ち回転せずに平面視で回転軸を含む回転部を備えた構成に比べて、回転部55Bの回転角度γを大きく確保できる。分光測定時の分解能は、共鳴角度θSPRの検出間隔によって調整でき、入射角度θinの検出間隔を最小限に調整できる。したがって、第1実施形態の分光用デバイス55によって、超小型化と高分解能化を両立できる。

【0069】
また、第1実施形態の分光用デバイス55では、接続部62は、固定部55Aより小さい幅を有し、回転部55Bの外周端縁5rと固定部55Aの回転部55B側の端縁57との間を蛇腹状に折り返しつつ延びる。具体的には、接続部62は、蛇腹状に形成された第1接続分岐部62A及び第2接続分岐部62Bを備える。このことによって、回転部55BがZ方向に回転する際に、長辺部E1,…,En及び短辺部F1,…,Fmが適宜変位し、接続部62を全体的に柔軟にたわませることができる。この場合、回転部55Bの回転角度γの精度を高めるために回転部55Bの剛性を高くしても、接続部62の柔軟な撓りによって、回転角度γの変化を大きくし、回転部55Bを柔軟に回転させることができる。

【0070】
また、第1実施形態の分光用デバイス55では、接続部62は回転部55Bより薄くてもよい。接続部62と回転部55Bが同じ素材(第1実施形態では、半導体基板5)で構成されていれば、回転部55Bを接続部62より撓りにくくし、且つ第1回転軸を中心として回転部55Bが片持ち回転する際に、接続部62をより柔軟に撓らせることができる。

【0071】
また、第1実施形態の分光用デバイス55では、受光面RSは、半導体基板5と、半導体基板5に積層され、且つ半導体基板5との界面8でショットキー障壁を構成し、所定の波長の光Linが照射された際にSPRを起こす金属層10とを備える。電極部30は、金属層10に電気的に接続される。このような構成によれば、光Linが金属層10の表面側から受光面RSに照射されると、SPRが起き、金属層10の内部の自由電子は励起され、半導体基板5と金属層10とのショットキー障壁を乗り越えて拡散する。すなわち、光Linが受光面RSに入射した際に、光Linの入射角度θinに応じて、入射角度θinと同じ共鳴角度θSPRに対する光電流IθSPRを電極部30から検出できる。

【0072】
第1実施形態の分光器100は、分光用デバイス55と、固定部55Aを支持する支持部材80と、回転部55Bを上下方向に回転させる回転機構130と、受光面RSに所定の波長の光Linを照射する光源110とを備える。第1実施形態の分光器100では、回転機構130によって回転部55Bを上下方向に回転させつつ、光源110から光Linを受光面RSに照射できる。このことによって、前述のように受光面RSに定位置から試料Wの光学情報を含む光Linが入射すると、入射角度θinの変化に応じた光電流値Iθinを検出できる。また、第1実施形態の分光器100では、回転部55Bを上下方向に回転させる回転機構130が具備されるので、小型化を容易に図ることができる。

【0073】
また、第1実施形態の分光用デバイス55は、光源110から出射された光Linをコリメートし、受光面RSに照射するコリメートレンズを備えてもよい。光Linをコリメートすることによって、伝搬距離によらずに光Linの入射角度θin及びビーム径を略一定にすることができる。このことによって、受光面RSに対する第1回転軸の相対位置等によらず、所定の波長の光Linを受光面RSに安定して照射できる。

【0074】
第1実施形態の回転機構130は、第1回転軸を中心として回転部55BをZ方向に回転させるための音波を出力するスピーカー140を備える。音波で回転部55Bを上下方向に回転させられれば、スピーカー140を分光機能部90の付近に設けることができ(図5参照)、且つ分光機能部90及びスピーカー140を全体的に動かす移動機構は不要になるので、分光器100の小型化を図ることができる。

【0075】
第1実施形態の分光測定方法は、回転角度γを変化させることによって回転部55Bへの光Linの入射角度θinを変化させると共に光Linの入射波長λを変化させつつ、電極部30から出力される光電流値Iθinを得た後、入射波長λと入射角度θinと光電流値Iθinとの関係から、入射波長λと共鳴角度θSPRと光電流値IθSPRとの関係を示すデバイス特性マトリクスRを取得するデバイス特性マトリクス取得工程と、回転角度γを変化させることによって試料Mの光学情報を含む光Linの回転部55Bへの入射角度θinを変化させつつ、電極部30から出力され且つ光学情報を含む光電流値Iθin,IθSPRを得た後、デバイス特性マトリクスRと光学情報を含む光電流値Iθin,IθSPRを要素とする光電流ベクトルIとを用いて、回転部55Bに入射し且つ光学情報を含む光Linの入射波長λごとのパワーを要素とする入射光ベクトルPを算出する入射光ベクトル算出工程とを備える。

【0076】
第1実施形態の分光測定方法では、デバイス特性マトリクス取得工程において、所定の光Linの入射角度θin、共鳴角度θSPR、共鳴波長λ及びその他の波長λにおける光電流値IθSPR同士の相対関係がデバイス特性マトリクスRとして得られる。入射光ベクトル算出工程では、分光用デバイス55の回転部55Bを片持ち回転させつつ測定された光電流値IθSPRから、デバイス特性マトリクスRに基づいて試料Wの光学情報を含む入射光ベクトルPを逆算できる。算出された入射光ベクトルPから、試料の光学情報を取り出すことができる。

【0077】
第1実施形態の分光測定方法では、デバイス特性マトリクス取得工程及び入射光ベクトル算出工程において、第1回転軸を中心として回転部55Bを一定の時間周期で回転させることによって、回転角度γ・入射角度θin・共鳴角度θSPRを回転部55Bの回転時間に換えて変化させる。第1実施形態の分光測定方法では、回転角度γと共鳴角度θSPRとの関係が、時間(即ち、回転部の片持ち回転開始からの経過時間)tと共鳴角度θSPRとの関係に置き換えられる。また、光電流値IθSPR及びデバイス特性マトリクスRにそれぞれ時間の要素が付加される。このように時間tをパラメータとして用いることによって、回転部55Bの片持ち回転に関係するパラメータ以外の制御パラメータを少なくし、より簡潔に分光測定を行うことができる。

【0078】
(第2実施形態)
次いで、本発明を適用した第2実施形態の分光用デバイスについて説明する。図8に示す分光用デバイス56及び分光機能部92の構成要素において、第1実施形態の分光用デバイス56及び分光機能部90の構成要素と同一のものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。

【0079】
第2実施形態では、図8に示すように、受光面RSにおける半導体基板5の表面5aに、X方向に加えてY方向に延びる回折格子が形成される。したがって、TM偏波モードに加えてTE偏波モードの光Linが受光面RSに入射すると、SPRが発生し、TM偏波モード及びTE偏波モードに起因する光電流ISCが検出可能になる。

【0080】
第2実施形態では、平面視において、受光面RS内に、第1回転軸に直交する回転軸(第2回転軸)A2がある。回転部56Bは第1回転軸及び回転軸A2を中心として回転する。図9に示すように、例えば、回転軸A2よりY方向の前方の回転部56Bに対して下側から上側に向かう力が付与されると、回転部56Bが図9の二点鎖線で描かれた初期位置から実線で描かれた位置へ回転する。この際、接続部36の全体がY方向に沿って波形を描くように変位する。

【0081】
図示していないが、回転軸A2よりY方向の前方の回転部56Bに対して上側から下側に向かう力が付与され、回転部56Bが回転する場合も、接続部36の全体がY方向に沿って上述の場合と逆の波形を描くように変位する。長辺部E1,…,En及び短辺部F1,…,Fmのそれぞれが前述のように変位することによって、接続基端部62Cは回転軸A2を中心として回転するので、接続基端部62Cに連結する回転部56Bは円滑に回転する。

【0082】
図示していないが、第2実施形態の分光器は、第1実施形態の分光器100の分光機能部90を分光機能部92に置き換えたものである。

【0083】
分光用デバイス56及び第2実施形態の分光器の原理は、第1実施形態の分光用デバイス55及び分光器100の原理に基づく。また、第2実施形態ではTE偏波モードの光Linを活用できるので、入射波長λをターゲット波長領域内で変化させ、各入射波長λにおいて、TE偏波モードの光Lin(図示略)が金属層10に表面10a側から入射したときの入射角度θinと端子33,35から出力される光電流値IθSPRとの関係性を得られる。前述のデバイス特性マトリクスR0の導出及び考え方をTE偏波モードの光LTEに適用すると、第2実施形態では、TM偏波モードの光LTMを受光面RSに入射させた際の光電流値IθSPR等から算出されるデバイス特性マトリクスR0-TMと、TE偏波モードの光LTEを受光面RSに入射させた際の光電流値IθSPR等から算出されるデバイス特性マトリクスR0-TEの両方が得られる。

【0084】
TM偏波モードとTE偏波モードのそれぞれの入射光ベクトルPTM,PTEは、感度マトリクスR0-TM,R0-TMと、TM偏波モードとTE偏波モードのそれぞれの光Linで測定された光電流値IθSPRに基づく光電流ベクトルITM,ITEから、(9)式及び(10)式のように得られる。

【0085】
【数9】
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【0086】
【数10】
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【0087】
第2実施形態においても、共鳴角度θSPRを、回転部55Bの第1回転軸を中心とする片持ち回転と回転軸A2を中心とする回転のそれぞれの時間tに置き換え可能な場合は、TM偏波モードの光LTMを受光面RSに入射させた際の光電流値IθSPR等から算出されるデバイス特性マトリクスRt-TMと、TE偏波モードの光LTEを受光面RSに入射させた際の光電流値IθSPR等から算出されるデバイス特性マトリクスRt-TEの両方が得られる。入射光ベクトルPTM,PTEは、デバイス特性マトリクスRt-TM,Rt-TE及び光電流ベクトルIから、(11)式及び(12)式のように得られる。

【0088】
【数11】
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【0089】
【数12】
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【0090】
次いで、第2実施形態の分光用デバイス56及び分光器を用いた分光測定方法について説明する。第2実施形態の分光測定方法は、デバイス特性マトリクスR0-TM,R0-TEを取得するデバイス特性マトリクス取得工程と、得られたデバイス特性マトリクスR0-TM,R0-TE及び光電流ベクトルITM,ITEに基づいて入射光ベクトルPTM,PTEを算出する入射光ベクトル算出工程とを備える。

【0091】
<デバイス特性マトリクス取得工程>
先ず、TM偏波モードの光Linを用いて、第1実施形態の分光測定方法で説明したデバイス特性マトリクス取得工程を行う。続いて、試料Wを光LTM(光Lin)の進路上から外したまま、スピーカー140から所定の周波数の音波を出力させ、分光用デバイス56の回転部56Bを一定の周期で回転軸A2を中心に回転させる。同時に、光源110からターゲット波長領域の最も低い波長λのTE偏波モードの光Linを出射させ、端子33,35から出力される光電流値Iθinを測定する。その後、光源110から出射させるTE偏波モードの光Linの波長をターゲット波長領域内の波長λから波長λ(nは2より大きい自然数)まで順次変化させる。その際、上述の入射波長λの場合と同様に、時間t・光LTEの入射角度θin・入射波長λ~λ・共鳴角度θSPR・光電流値Iθinの関係から、入射波長λ~λのそれぞれにおける光電流値Iθinの入射角度θinの依存性を得る。このようにして得られたターゲット波長領域λ~λのそれぞれにおけるTM偏波モード及びTE偏波モードの光電流値Iθin(Responsivity)の入射角度θinの依存性から、デバイス特性マトリクスR0-TE,Rt-TEを取得する。

【0092】
<入射光ベクトル取得工程>
次に、TM偏波モードの光Linを用いて、第1実施形態の分光測定方法で説明した入射光ベクトル取得工程を行う。試料Wを光LTMの進路上に配置した状態で、スピーカー140から所定の周波数の音波を出力させ、分光用デバイス56の回転部56Bを一定の周期で回転軸A2を中心に回転させる。同時に、多色光源である光源110から波長λ~λのTE偏波モードの光Linを出射させ、端子33,35から出力される光電流値Iθinを測定する。測定された光電流値Iθinから、TE偏波モードにおける光電流値IθSPR1,IθSPR1,…,IθSPRnの要素を有する光電流ベクトルITEを算出する。入射光ベクトル取得工程では、TM偏波モードと同様に、TE偏波モードについても離散的な共鳴角度θSPRごとの回転位置で光電流の計測を行い、光電流ベクトルITM,ITEを作成する。

【0093】
続いて、デバイス特性マトリクスR0-TE,Rt-TE,R0-TM,Rt-TMのぞれぞれの逆行列R0-TE-1,Rt-TE-1,R0-TM-1,Rt-TM-1を算出する。算出した逆行列R0-TE-1,Rt-TE-1,R0-TM-1,Rt-TM-1及び光電流ベクトルITM,ITEから、前述の(9)式及び(12)式によって入射光ベクトルPTM,PTEを算出する。入射光ベクトルPTM,PTEのそれぞれに含まれる試料Wの光学情報を検出すると、分光用デバイス56及び第2実施形態の分光器を用いた分光測定方法は完了する。

【0094】
第2実施形態の分光用デバイス56は、第1実施形態の分光用デバイス55と同じ構成を備えるので、第1実施形態の分光用デバイス55と同様の作用効果が得られる。

【0095】
また、第2実施形態の分光用デバイス56は、第1回転軸に直交する回転軸A2を有する。回転部55Bは、回転軸A2を中心として回転できる。第2実施形態の分光用デバイス56によれば、第1回転軸を中心に回転部55Bを片持ち回転させる際にTM偏波モードの入射光Linを用い、回転軸A2を中心に回転部55Bを回転させる際にTE偏波モードの入射光Linを用いることができる。このように回転軸ごとに受光面RSに照射する光の偏波モードを変えることによって、第1回転軸を中心に回転部55Bを片持ち回転させるのみの場合に比べて、試料Wの光学情報が多角的に取得される。すなわち、TM偏波モードにおける試料Wの光学情報とTE偏波モードにおける試料Wの光学情報の両方を取得できる。近年、偏波モードの違いによる物質の光学情報やふるまいの違いの有無を検出可能とする要求は高く、分光用デバイス56によってTM偏波モードとTE偏波モードのそれぞれにおける試料Wの光学情報を検出できる意義は極めて高い。また、SPRに基づく従来のセンサの多くでは、TM偏波モードのみを利用することが多く、その点からも分光用デバイス56によってTM偏波モードとTE偏波モードのそれぞれにおける試料Wの光学情報を検出できる意義は極めて高い。

【0096】
また、第2実施形態の分光用デバイス56は、受光面RSに平行で且つ第1回転軸に直交する回転軸A2を有する。回転部55Bは回転軸A2を中心として回転する。接続部62は回転部55Bの外周端縁5rにおけるX方向の両端に対向する固定部55Aの端縁57(すなわち、接続箇所58)と回転部55Bの外周端縁5rにおけるX方向の中央部とを接続する。第2実施形態の分光用デバイス56によれば、接続部62は2箇所の接続箇所58で固定部55Aに接続されて2点支持され、接続基端部62Cで回転部55Bに接続して回転部55Bを1点支持する。このような構成によって、剛性を有する回転部55Bを第1回転軸及び回転軸A2のそれぞれの軸を中心として円滑且つ安定的に回転させることができる。第2実施形態では、回転軸A2を中心として回転部55Bが回転する際についても、長辺部E1,…,En及び短辺部F1,…,Fmが適宜変位し、接続部62が全体的に柔軟にたわむ。したがって、回転部55Bの剛性を高くしても、接続部62の柔軟なたわみによって、回転部55Bを第1回転軸及び回転軸A2のそれぞれの軸を中心として上下方向に回転させることができる。

【0097】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。

【0098】
例えば、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、第1回転軸が平面視で受光面RSの外にあるが、回転部55Bが第1回転軸が平面視で受光面RSの内にあってもよい。平面視において、受光面RSのX方向の手前側の端縁と第1回転軸が重なってもよい。

【0099】
また、上述の第2実施形態では、固定部55Aと回転部55Bが平面視で蛇腹状に形成された接続部62によって接続される。しかしながら、固定部55Aと回転部55Bとの接続方法及び接続部の構成は、接続部62に限定されない。一例として、支持部材80は、軸芯を中心に回転可能な棒状の部材であってもよい。接続部は、回転部55Bと略同様の幅を有し、端縁5rから棒状の部材の外周面に当接して棒状の部材に接続され、棒状の部材に固定されてもよい。この構成によっても、支持部材80が軸芯を中心として回転すれば、回転部55Bは片持ち回転できる。

【0100】
また、上述の第2実施形態では、回転軸A2は平面視で受光領域RS内にあるが、回転軸A2は第1回転軸と同様に平面視で受光面RS外にあってもよい。一例として、回転部55BのY方向の手前側又は奥側の端縁の側に、回転部55Bと任意の支持部材とを接続する新たな接続部があってもよい。このように構成することによって、回転部55Bを回転軸A2を中心に片持ち回転させると共に、TE偏波モードの光を用いて光電流IθSPRを測定する際に、回転部55Bの回転角度を大きくすることができる。したがって、TE偏波モードの光を用いた場合であっても、TM偏波モードの光を用いた場合と同様に、ターゲット波長領域を広く確保できる。
さらに、第2実施形態の分光用デバイス56は、回転軸A2のみを中心に回転可能であってもよい。

【0101】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、回転機構130としてスピーカー140を採用したが、回転機構130はスピーカー140に限定されない。回転部55Bを回転させる方法としては、音波によって振動させる方法の他に、磁気によって振動させる方法、ピエゾ素子などの圧電体を組み込みアクチュエートする方法等が挙げられる。磁気によって回転部55Bを回転させる場合、2つの磁気部材をZ方向において回転部55Bの両側に設け、2つの磁気部材の磁気を制御してもよい。
【符号の説明】
【0102】
30 電極部
55,56 分光用デバイス
55A 固定部
55B 回転部
80 支持部材
100 分光器
A2 回転軸(第2回転軸)
RS 受光面
X 方向(第1方向)

図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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