Top > Search of Japanese Patents > (In Japanese)生体特徴盗撮防止装着具及び盗撮防止方法 > Specification

Specification :(In Japanese)生体特徴盗撮防止装着具及び盗撮防止方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)再公表特許(A1)
Date of issue Jul 18, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)生体特徴盗撮防止装着具及び盗撮防止方法
IPC (International Patent Classification) G06T   1/00        (2006.01)
G02B   5/02        (2006.01)
A61B   5/1172      (2016.01)
FI (File Index) G06T 1/00 400G
G02B 5/02 A
A61B 5/1172
Demand for international preliminary examination (In Japanese)未請求
Total pages 51
Application Number P2018-543871
International application number PCT/JP2017/035456
International publication number WO2018/066467
Date of international filing Sep 29, 2017
Date of international publication Apr 12, 2018
Application number of the priority 2016196050
2017051969
Priority date Oct 3, 2016
Mar 16, 2017
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
日本国(JP)
Designated state AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】越前 功
【氏名】大金 建夫
Applicant (In Japanese)【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
Representative (In Japanese)【識別番号】100119677、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 賢治
【識別番号】100115794、【弁理士】、【氏名又は名称】今下 勝博
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 2H042
4C038
5B047
F-term 2H042BA02
2H042BA16
4C038FF01
4C038FG01
4C038FG04
5B047AA25
5B047BA02
5B047BB04
5B047BC04
5B047BC11
5B047BC30
Abstract (In Japanese)
本発明による生体特徴盗撮防止装着具1は、可視光領域に透明で、生体特徴3領域を被覆するベース部4と、可視光領域に光散乱特性を有し、生体特徴3領域を被覆する攪乱部5とを備える。また、他の態様によれば、ベース部4は薄膜で生体特徴3領域に接触して形成され、攪乱部5は薄膜でベース部4に接触して形成される。本発明による生体特徴盗撮防止装着具1は、接触式の生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする。
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】

可視光領域に光散乱特性を有し、生体特徴領域を被覆する攪乱部を備え、;

前記攪乱部は、前記可視光領域の光を表面で散乱させる一方、生体特徴の押圧による生体認証を可能にする;

生体特徴盗撮防止装着具。

【請求項2】

可視光領域に透明で、前記生体特徴領域を被覆するベース部をさらに備え;

前記ベース部は薄膜で前記生体特徴領域に接触して形成され、前記攪乱部は薄膜で前記ベース部に接触して形成される;

請求項1に記載の生体特徴盗撮防止装着具。

【請求項3】

前記ベース部は、接触型の生体特徴センサーによる認証時には生体に密着して気泡を残存させない;

請求項2に記載の生体特徴盗撮防止装着具。

【請求項4】

前記光散乱特性は、前記攪乱部を透過した可視光による前記生体特徴の認識を妨げ、且つ、生体認証可能な前記生体特徴を光学式生体特徴センサーにより取得可能な反射率を有する特性である;

請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の生体特徴盗撮防止装着具。

【請求項5】

前記ベース部及び前記攪乱部は、生体認証可能な前記生体特徴を、光学プリズムを用いた光学式生体特徴センサーにより取得可能な屈折率を有する;

請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の生体特徴盗撮防止装着具。

【請求項6】

前記ベース部及び前記攪乱部は、生体認証可能な前記生体特徴を、静電容量式生体特徴センサーにより取得可能な比誘電率を有する;

請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の生体特徴盗撮防止装着具。

【請求項7】

可視光領域に透明で、生体特徴領域を被覆するベース素材と;

前記可視光領域に光散乱特性を有し、前記生体特徴を被覆する攪乱物質とを備える;

生体特徴盗撮防止装着具製造用材料。

【請求項8】

可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗布材料と、生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付けるための貼付用器具とを用いて、

所定の擬似生体特徴パターンを有する前記塗布材料からなる光攪乱膜であって、前記生体特徴の押圧による認証を可能とし、前記生体特徴の盗撮を防止する光攪乱膜を、前記貼付用器具を用いて前記塗布材料を生体特徴を有する皮膚の表面に貼り付けて、形成する;

前記擬似生体特徴パターンは、生体特徴に重畳することで当該生体特徴による生体認証を成立不能にするパターンである;

生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項9】

前記貼付用器具は、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付ける転写板であり、前記複数の微小孔を通過して転写される前記塗布材料が前記擬似生体特徴パターンを形成するように、前記転写板に前記複数の微小孔が配置されている;

請求項8に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項10】

前記貼付用器具は、複数の突起の先端に前記塗布材料を載せて、生体特徴を有する皮膚の表面に前記複数の突起を押し付けて前記生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付けるためのスタンパであり、前記複数の突起を押し付けて転写される前記塗布材料が前記擬似生体特徴パターンを形成するように、前記スタンパに前記複数の突起が配置されている;

請求項8に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項11】

前記貼付用器具は、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付ける指サックであり、前記複数の微小孔を通過して転写される前記塗布材料が前記擬似生体特徴パターンを形成するように、前記指サックに前記複数の微小孔が配置されている;

請求項8に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項12】

前記貼付用器具は、前記塗布材料を前記生体特徴を有する皮膚の表面に塗布した後に、複数の微小孔を通して前記皮膚の表面の前記塗布材料に紫外線を照射して硬化させて前記塗布材料を貼り付ける転写板であり、前記複数の微小孔を通過する紫外線によって硬化する前記塗布材料が前記擬似生体特徴パターンを形成するように、前記転写板に前記複数の微小孔が配置されている;

請求項8に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項13】

前記貼付用器具は、複数の前記擬似生体特徴パターンを描いた転写テープと、前記転写テープに描かれた前記擬似生体特徴パターンを生体特徴を有する皮膚の表面に押し付けるためのスタンパと、複数の前記擬似生体特徴パターンのうち転写すべきパターンを前記スタンパの位置にくるように転写テープを移動させる1対の巻き取りリールとを備える;

請求項8に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項14】

前記貼付用器具を用いて前記生体表面に貼り付けられる前記擬似生体特徴パターンは貼り付け時毎に異なる;

請求項9ないし請求項13のいずれか1項に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項15】

前記擬似生体特徴パターンは、生体特徴と分離困難な空間周波数を有するパターンである;

請求項9ないし請求項13のいずれか1項に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項16】

可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗布材料と、生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付けるための貼付用器具とを用いて、

所定の擬似生体特徴パターンを有する前記塗布材料からなる光攪乱膜であって、前記生体特徴の押圧による認証を可能とし、前記生体特徴の盗撮を防止する光攪乱膜を、前記貼付用器具を用いて前記塗布材料を生体特徴を有する皮膚の表面に貼り付けて、生体特徴盗撮防止装着具を形成する;

前記擬似生体特徴パターンは、生体特徴に重畳することで当該生体特徴による生体認証を成立不能にするパターンである;

生体特徴盗撮防止装着具の製造方法。

【請求項17】

可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗布材料と;

生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付けるための貼付用器具とを備える;

生体特徴の盗撮を防止する生体特徴盗撮防止装着具の製造セットであって;

前記貼付用器具は、所定の擬似生体特徴パターンを有する前記塗布材料からなる光攪乱膜であって、前記生体特徴の押圧による認証を可能とし、前記生体特徴の盗撮を防止する光攪乱膜を貼り付けるための、請求項9ないし請求項13のいずれか1項に該当する方法を実現するものである;

生体特徴の盗撮を防止する生体特徴盗撮防止装着具の製造セット。

【請求項18】

生体特徴を有する皮膚の表面に所定の擬似生体特徴パターンを形成することによって、前記生体特徴の押圧による認証を可能とし、前記生体特徴の盗撮を防止する方法であって;

前記擬似生体特徴パターンは、生体特徴に重畳することで当該生体特徴による生体認証を成立不能にするパターンであり、生体特徴と分離困難な空間周波数を有するパターンである;

生体特徴の盗撮を防止する方法。

【請求項19】

生体特徴を有する皮膚の表面に所定の擬似生体特徴パターンを形成可能な塗布材料と;

生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を用いて前記擬似生体特徴パターンを形成するための貼付用器具とを備え;

前記塗布材料及び前記貼付用器具は、請求項18に記載の生体特徴の盗撮を防止する方法に記載の塗布材料及び貼付用器具をいう;

生体特徴盗撮防止装着具の製造セット。

【請求項20】

可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗布材料を生体特徴を有する皮膚の表面に貼り付ける貼付機能を有するシートであって、

前記貼付機能は、擬似生体特徴パターンを有する前記塗布材料からなる光攪乱膜であって、前記生体特徴の押圧による認証を可能とし、前記生体特徴の盗撮を防止する光攪乱膜を、前記塗布材料を前記生体特徴を有する皮膚の表面に貼り付けて形成する機能であり;

前記擬似生体特徴パターンは、生体特徴に重畳することで当該生体特徴による生体認証を成立不能にするパターンである;

ことを特徴とするシート。

【請求項21】

前記貼付機能は、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付ける転写板であり、前記複数の微小孔を通過して転写される前記塗布材料が前記光攪乱膜を形成するように、前記転写板に前記複数の微小孔が配置されている;

ことを特徴とする請求項20に記載のシート。

【請求項22】

前記貼付機能は、複数の突起の先端に前記塗布材料を載せて、生体特徴を有する皮膚の表面に前記複数の突起を押し付けて前記生体特徴を有する皮膚の表面に前記塗布材料を貼り付けるための転写板であり、前記複数の突起を押し付けて転写される前記塗布材料が前記光攪乱膜を形成するように、前記転写板に前記複数の突起が配置されている;

ことを特徴とする請求項20に記載のシート。

【請求項23】

請求項20から22のいずれかに記載のシートを用いて、前記光攪乱膜を前記生体特徴を有する皮膚の表面に貼り付ける生体特徴盗撮防止装着具の製造セットであって、

前記シートを生体特徴を有する皮膚の表面に押し付けるためのスタンパと、所望の前記擬似生体特徴パターンが前記スタンパの位置にくるように前記シートを移動させる1対の巻き取りリールとを備える;

ことを特徴とする生体特徴盗撮防止装着具の製造セット。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】

本発明は生体特徴盗撮防止装着具及び盗撮防止方法に関する。詳しくは、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具及び盗撮防止方法に関する。

【背景技術】
【0002】

現代において指紋認証は、入退室管理やコンピュータのログインといった機密情報へのアクセス以外にも、集合住宅のオートロックなど多くの場所で個人認証手段として広く採用されている。その一方で、数千万画素の解像度を持つデジタルカメラが広く普及し、従来は接触式の指紋センサーでしか読み取れなかった指紋情報を、遠隔から撮影し窃取される可能性が懸念されている。2014年には、ドイツのハッカー集団が、市販のデジタルカメラを使って政治家の指を遠隔から撮影し、指紋の取得に成功したと発表している。指紋データが他人の手に渡ると、そこから偽の指紋を作成することにより、指紋認証システムをくぐり抜けることが可能になる。

【0003】

指紋の盗撮を防止するものとして、登録された撮影者の指紋情報と指紋センサにより読み取られた指紋情報が一致しない場合にブザーで警告音を出力する撮影装置が開示されている。(特許文献1参照)

【先行技術文献】
【0004】


【特許文献1】特開2005-295391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

指紋は生体固有の情報であるため、パスワードのように頻繁に変更することができず、ひとたびそれが盗まれると、長期間にわたって被害が続く恐れがあるという問題があった。また、特許文献1に記載の撮影装置は、指紋センサーを本人認証に用いるものであり、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にするためのものではない。

【0006】

本発明は、接触式の生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具及び盗撮防止方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】

上記課題を解決するために、本発明の第1の態様における生体特徴盗撮防止装着具1は、例えば図6に示すように、可視光領域に透明で、生体特徴3領域を被覆するベース部4と、可視光領域に光散乱特性を有し、生体特徴3領域を被覆する攪乱部5とを備える。

【0008】

ここにおいて、生体特徴とは、指紋、掌紋等、各生体に固有の身体的特徴を表す紋様で、生体認証に用いられる。また、「生体特徴領域」とは、生体特徴のうち、生体認証データが採取される領域をいう。指紋については、例えば親指又は人差指の指紋の押捺に供される領域、例えば第1関節から指先側で掌側をいう。また、典型的にはベース部と攪乱部は別個に形成されるが、両機能を有するものとして、一体的に形成されても良い。また、ベース部4は生体特徴3領域の全体を被覆するのが好ましく、攪乱部5は生体特徴3領域の一部を被覆しても、全体を被覆しても良い。

【0009】

本態様のように構成すると、接触式の生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具を提供することができる。

【0010】

また、本発明の第2の態様における生体特徴盗撮防止装着具1は、第1の態様において、例えば図6に示すように、ベース部4は薄膜で生体特徴3領域に接触して形成され、攪乱部5は薄膜でベース部4に接触して形成される。

【0011】

このように構成すると、生体特徴3領域にベース部4を形成した後に、攪乱部5をベース部4に接触して形成するので、生体特徴盗撮防止装着具を製造し易い。

【0012】

また、本発明の第3の態様における生体特徴盗撮防止装着具1は、第1の態様又は第2の態様において、ベース部4は、接触型の生体特徴センサーによる認証時には生体2に密着して気泡を残存させない。

【0013】

ここにおいて、「接触型の生体特徴センサーによる認証時には生体2に密着して気泡を残存させない」とは、生体2が物(接触型の生体特徴センサー)に接触する際に生体特徴3の凸部がもれなく素材(ベース部4)に接触し、生体2と素材(ベース部4)の間に生体特徴3の凹部に由来する気泡以外の気泡が残存しないということを意味する。

本態様のように構成すると、接触型の生体特徴センサーによる認証時には気泡を残存させないので、明瞭な生体特徴を採取できる。

【0014】

また、本発明の第4の態様における生体特徴盗撮防止装着具1は、第1ないし第3のいずれかの態様において、光散乱特性は、攪乱部5を透過した可視光による生体特徴3の認識を妨げ、また、光学式生体特徴センサー10Bの光源からの光の透過を妨げない程度の反射率を有する特性である。

【0015】

ここにおいて、「前記攪乱部を透過した可視光による前記生体特徴領域の認識を妨げ、また、光学式生体特徴センサーの光源からの光の透過を妨げない程度の反射率」としたのは、可視光の透過率が高いとカメラで生体特徴3が認識され、光源からの光の反射率が高いと生体特徴センサーに供される光が少なくなるからである。ベース部4に使用されるアクリル樹脂の反射率は例えば4%、攪乱部5に使用される酸化亜鉛の反射率は例えば11%であり、2~15%が好ましく、3~12%がより好ましい。

このように構成すると、生光学式生体特徴センサーには正常に反応し、可視光で撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にするのに適切な反射率を有するベース部4と攪乱部5を実現できる。

【0016】

また、本発明の第5の態様における生体特徴盗撮防止装着具1は、第1ないし第4のいずれかの態様において、ベース部4及び攪乱部5は、光学式生体特徴センサー10Bの光学プリズム12の屈折特性を変えない程度の屈折率を有する。

【0017】

ここにおいて、「光学式生体特徴センサー10Bの光学プリズム12の屈折特性を変えない程度の屈折率」としたのは、光学プリズム12に使用される光学ガラスの屈折率から乖離すると、測定光の光路が変わる等の影響が生じるからである。ベース部4に使用されるアクリル樹脂の屈折率は例えば1.49、攪乱部5に使用される酸化亜鉛の屈折率は例えば2.0であり、光学ガラスの屈折率1.51と著しい乖離はなく、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。

このように構成すると、生光学式生体特徴センサーには正常に反応し、可視光で撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にするのに適切な屈折率を有するベース部4と攪乱部5を実現できる。

【0018】

また、本発明の第6の態様における生体特徴盗撮防止装着具1は、第1ないし第5のいずれか1態様において、ベース部4及び攪乱部5は、静電容量式生体特徴センサー10Aによる静電容量の測定を妨げない程度の比誘電率を有する。

【0019】

ここにおいて、「静電容量式生体特徴センサー10Aによる静電容量の測定を妨げない程度の比誘電率」としたのは、センサーのコーティングに使われるシリコンの比誘電率から乖離すると、静電容量が変わる等の影響が生じるからである。ベース部4に使用されるアクリル樹脂の比誘電率は例えば2.7~4.5、攪乱部5に使用される酸化亜鉛の比誘電率は例えば1.7~2.5であり、シリコンの比誘電率2.4と著しい乖離はなく、1~7が好ましく、1~5がより好ましい。

このように構成すると、光学式生体特徴センサーには正常に反応し、可視光で撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にするのに適切な比誘電率を有するベース部4と攪乱部5を実現できる。

【0020】

また、本発明の第7の態様における生体特徴盗撮防止装着具製造用材料は、可視光領域に透明で、生体特徴3領域を被覆するベース素材と、可視光領域に光散乱特性を有し、生体特徴3を被覆する攪乱物質とを備える。

本態様は第1の態様に係る生体特徴盗撮防止装着具1を製造するための材料の発明である。なお、ベース素材(ベース部4の素材)と攪乱物質(攪乱部5の素材)とは、同一材料で両材料の機能を有するものであっても良い。

【0021】

上記課題を解決するために、本発明の第8の態様における生体特徴盗撮防止方法は、例えば図21及び図24に示すように、可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗布材料21と、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるための貼付用器具22を準備する工程(S010)と、貼付用器具22を用いて、生体特徴と類似のパターンを有する塗布材料21からなる光攪乱膜であって、生体特徴の押圧による認証を可能とし、生体特徴の盗撮を防止する光攪乱膜を貼り付ける工程(S020~S050)とを備え、類似のパターンとは、生体特徴に類似であるが、当該生体特徴の認証が成立しないパターンをいう。

【0022】

ここにおいて、生体特徴とは、指紋、掌紋等、各生体に固有の身体的特徴を表す紋様で、生体認証に用いられる。また、貼付用器具22とは、生体特徴に類似のパターンを指等の生体特徴を有する皮膚の表面に転写可能なものである。例えば、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付ける転写板(ステンシル)や、複数の突起を押し付けて生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付けるスタンパ等であっても良い。また、「微小孔」とは、生体特徴、例えば指紋等を転写するのに適した寸法の孔、例えば10μm~1mmの孔をいう。また、生体特徴は擬似生体特徴パターンを重ね描きすることにより認識困難になるのであるが、高度の分析技術を用いれば生体特徴と擬似生体特徴パターンを分離される、すなわち、生体特徴を推定されるおそれがある。これを防御するには、繰り返し周波数の近い擬似生体特徴パターンを使用するのが良い。また、「生体特徴の認証が成立しない」とは、一般的な認証装置で当該生体特徴の認証が成立しないことを意味する。

このようにすると、生体特徴に擬似生体特徴パターンを畳重することにより、本来の特徴点に新たな特徴点を生成して、生体特徴を認識できないようにするだけでなく、分析により生体特徴と擬似生体特徴パターンを分離することが困難になるので、本来の生体特徴を推測することを防止できる。

【0023】

本態様のように構成すると、生体特徴センサー10A,10Bには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する方法を提供することができる。

【0024】

また、本発明の第9の態様に係る生体特徴の盗撮を防止する方法は、例えば図21に示すように、第8の態様において、貼付用器具22Aは、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付ける転写板22であり、複数の微小孔を通過して転写される塗布材料21が生体特徴と類似のパターンを形成するように、転写板22に複数の微小孔が配置されている。

ここにおいて、微小孔は点状に限られず、線分状であってもよい。生体特徴を有する皮膚の表面に生体特徴と類似のパターンを形成できれば良い。

このように構成すると、微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付けるので、微小孔の配置を生体特徴と類似のパターンにすれば、皮膚の表面に生体特徴に類似のパターンを形成できる。

【0025】

また、本発明の第10の態様に係る生体特徴盗撮防止方法は、第8の態様において、貼付用器具は、複数の突起の先端に塗布材料21を載せて、生体特徴を有する皮膚の表面に複数の突起を押し付けて生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるスタンパ22Aであり、複数の突起を押し付けて転写される塗布材料21が生体特徴と類似のパターンを形成するように、スタンパ22Aに前記複数の突起が配置されている。

ここにおいて、突起の先端は点状に限られず、線分状であってもよい。生体特徴を有する皮膚の表面に生体特徴と類似のパターンを形成できれば良い。

このように構成すると、突起の先端を当てて生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるので、突起の配置を生体特徴と類似のパターンにすれば、生体特徴に類似のパターンを形成できる。

【0026】

また、本発明の第11の態様に係る生体特徴の盗撮を防止する方法は、第8の態様において、貼付用器具は、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付ける指サック22Bであり、複数の微小孔を通過して転写される塗布材料21が生体特徴と類似のパターンを形成するように、指サック22Bに複数の微小孔が配置されている。

ここにおいて、典型的には、塗布液に指サック22Bを付けた指を浸漬して、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付ける。

このように構成すると、微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるので、微小孔の配置を生体特徴と類似のパターンにすれば、生体特徴に類似のパターンを形成できる。

【0027】

また、本発明の第12の態様に係る生体特徴の盗撮を防止する方法は、第8の態様において、貼付用器具は、塗布材料21を生体特徴を有する皮膚の表面に塗布した後に、複数の微小孔を通して皮膚の表面の塗布材料21に紫外線を照射して硬化させて塗布材料を貼り付ける転写板22C(図示しない)であり、複数の微小孔を通過する紫外線によって硬化する塗布材料が生体特徴と類似のパターンを形成するように、転写板22Cに複数の微小孔が配置されている。

このように構成すると、紫外線照射により生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるので、微小孔の配置を生体特徴と類似のパターンにすれば、生体特徴に類似のパターンを形成できる。また、紫外線照射されない部分は例えば水洗いにより除去できる。

【0028】

また、本発明の第13の態様に係る生体特徴の盗撮を防止する方法は、第8の態様において、貼付用器具は、複数の類似のパターンを描いた転写テープ34と、転写テープ34に描かれた類似のパターンを生体紋を有する皮膚の表面に押し付けるためのスタンパと、複数の類似のパターンのうち転写すべきパターンをスタンパの位置にくるように転写テープ34を移動させる1対の巻き取りリールとを備える。

このように構成すると、複数の類似のパターンを描いた転写テープ34のパターンを順次指に転写可能になるので、貼付用器具22を用いて生体表面に貼り付けられる類似のパターンを貼り付け時毎に異なるようにできる。転写テープ34に描かれた類似のパターンを生体紋を有する皮膚の表面に転写するには、転写テープ34のパターンを第9の態様のように複数の微小孔で形成する又は第10の態様のように複数の突起で形成することにより実現できる。

【0029】

また、本発明の第14の態様に係る生体特徴の盗撮を防止する方法は、第9ないし第13のいずれかの態様において、貼付用器具22を用いて生体表面に貼り付けられる類似のパターンは貼り付け時毎に異なる。

このように構成すると、生体表面に貼り付けられる類似のパターンは貼り付け時毎に異なるので、盗撮する者がパターンを推測することを困難にする。

【0030】

また、本発明の第15の態様に係る生体特徴の盗撮を防止する方法は、例えば図33に示すように、第9ないし第13のいずれかの態様において、類似のパターンは、生体特徴に近い空間周波数を有するパターンである。

このように構成すると、擬似指紋に生体特徴に近い空間周波数を用いるので、本来の指紋に当該パターンを重畳することで、撮影指紋には本来の指紋の正しい特徴点に加えて、偽の特徴点が加わるため、全体として誤った生体特徴として認識され、当該生体特徴の認証が成立しない。さらに、擬似指紋に生体特徴に近い空間周波数を用いるので、本来の指紋と擬似指紋とを分離することが非常に困難になり、本来の指紋を推定できなくなる。

【0031】

上記課題を解決するために、本発明の第16の態様における生体特徴盗撮防止装着具の製造方法は、例えば図21及び図24に示すように、可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗布材料と生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるための貼付用器具22を準備する工程(S010)と、貼付用器具22を用いて、生体特徴と類似のパターンを有する塗布材料21からなる光攪乱膜であって、生体特徴の押圧による認証を可能とし、生体特徴の盗撮を防止する光攪乱膜を貼り付ける工程(S020~S050)とを備え、類似のパターンとは、生体特徴に類似であるが、当該生体特徴の認証が成立しないパターンをいう。

ここにおいて、本態様による製造方法により製造された生体特徴盗撮防止装着具は、生体特徴を有する皮膚の表面に形成されて残り、方法により生産した物に該当する。ここでは皮膚の表面に形成された光攪乱膜が生産した物に該当する。本態様のように構成すると、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する生体特徴盗撮防止装着具の製造方法を提供することができる。

【0032】

上記課題を解決するために、本発明の第17の態様に係る生体特徴の盗撮を防止する生体特徴盗撮防止装着具の製造セットは、例えば図24に示すように、可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗布材料21と、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるための貼付用器具22とを備える、生体特徴の盗撮を防止する生体特徴盗撮防止装着具の製造セットであって、貼付用器具22は、生体特徴と類似のパターンを有する塗布材料21からなる光攪乱膜であって、生体特徴の押圧による認証を可能とし、生体特徴の盗撮を防止する光攪乱膜を貼り付けるためのものであり、第9ないし第13のいずれか1項に該当するものである。

本態様のように構成すると、生体特徴センサー10A,10Bには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する薄膜の製造セットを提供することができる。

【0033】

また、本発明の第18の態様における生体特徴の盗撮を防止する生体特徴盗撮防止装着具の製造セットは、第17の態様において、例えば図34ないし図36に示すように、貼付用器具は、複数の類似のパターンを描いた転写テープ34と、転写テープ34に描かれた類似のパターンを生体紋の表面に押し付けるためのスタンパと、複数の類似のパターンのうち転写すべきパターンがスタンパの位置にくるように転写テープ34を移動させる1対の巻き取りリール31,32とを備える。

このように構成すると、複数の類似のパターンを描いた転写テープ34のパターンを順次指に転写可能になるので、貼付用器具22を用いて生体表面に貼り付けられる類似のパターンを貼り付け時毎に異なるようにできる。

【0034】


また、本発明の第19の態様における生体特徴の盗撮を防止する方法は、生体特徴を有する皮膚の表面に生体特徴と類似のパターンを形成することによって、生体特徴の押圧による認証を可能とし、生体特徴の盗撮を防止する方法であって、類似のパターンとは、生体特徴に類似であるが、当該生体特徴の認証が成立しないパターンをいい、生体特徴に近い空間周波数を有するパターンである。

このように構成すると、擬似指紋に生体特徴に近い空間周波数を用いるので、本来の指紋と擬似指紋とを分離することが非常に困難になり、本来の指紋を推定できなくなる。

【0035】

また、本発明の第20の態様における生体特徴の盗撮を防止する生体特徴盗撮防止装着具の製造セットは、生体特徴を有する皮膚の表面に生体特徴と類似のパターンを形成可能な塗布材料と、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を用いて生体特徴と類似のパターンを形成するための貼付用器具とを備え、塗布材料及び貼付用器具は、第19の態様における生体特徴の盗撮を防止する方法に記載の塗布材料及び貼付用器具をいう。

このように構成すると、擬似指紋に生体特徴に近い空間周波数を用いるので、本来の指紋と擬似指紋とを分離することが非常に困難になり、本来の指紋を推定できなくなる。

【発明の効果】
【0036】

本発明によれば、接触式の生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具及び盗撮防止方法を提供できる。

【図面の簡単な説明】
【0037】

【図1】指紋センサーの原理を説明するための図である。
【図2】指紋センサーで取得された指紋画像の例を示す図である。
【図3】マニューシャ・マッチング方式について説明するための図である。
【図4】撮影画像と適応的閾値処理の例を示す図である。
【図5】撮影距離別の指紋画像の例を示す図である。
【図6】実施例1における指紋盗撮防止装着具1の構成例を示す図である。
【図7】実施例1における指紋盗撮防止装着具1の製法の例を示す図である。
【図8】指紋表面にパターンを直接塗布した結果を示す図である。
【図9】シール素材の指紋センサーに対する影響を示す図である。
【図10】膜厚の指紋センサーに対する影響を示す図である。
【図11】さまざまな素材に対する光学センサーの透過性について説明するための図である。
【図12】パターン検討用サンプルの例を示す図である。
【図13】塗りつぶし色の影響について説明するための図である。
【図14】サンプルパターンのマッチング結果の例を示す図である。
【図15】指紋画像に対するノイズの効果を説明するための図である。
【図16】指紋画像に対するドットサイズの影響を説明するための図である。
【図17】指紋画像に対するドット配列の影響を説明するための図である。
【図18】評価に使用したプロトタイプの例を示す図である。
【図19】撮影距離別のマッチ人数の例を示す図である。
【図20】撮影距離別の平均マッチスコアを示す図である。
【図21】実施例1における擬似指紋の製作手順を示す図である。
【図22】疑似指紋を有し、シルクスクリーン製版により作成されたステンシルの例を示す図である。
【図23】指の表面に転写された疑似指紋の外観の例を示す図である。
【図24】実施例1における擬似指紋製作のフロー図である。
【図25】写真からの指紋検出に対する妨害効果について説明するための図(その1)である。
【図26】写真からの指紋検出に対する妨害効果について説明するための図(その2)である。
【図27】静電容量方式の指紋センサーに対する透過性(認証性)を説明するための図である。
【図28】光学方式の指紋センサーに対する透過性(認証性)を説明するための図である。
【図29A】塗料と溶剤の混合比率による、撮影画像による取得画像への影響を示す図である。
【図29B】塗料と溶剤の混合比率による、指紋センサーによる取得画像への影響を示す図である。
【図30】実施例2における擬似指紋製作のフロー図である。
【図31】実施例3における擬似指紋製作のフロー図である。
【図32】実施例4における擬似指紋製作のフロー図である。
【図33】実施例5における擬似指紋製作のフロー図である。
【図34】本実施例10における擬似指紋転写の例を示す図(その1)である。
【図35】本実施例10における擬似指紋転写の例を示す図(その2)である。
【図36】本実施例10における擬似指紋転写の例を示す図(その3)である。
【図37】持ち運びケースとセパレートパッケージの組み合わせの例を示す図である。
【図38】持ち運びケースとセパレートパッケージを分けて示す図である。
【図39】セパレートパッケージから転写シールを取り出して、指に擬似指紋パターンを転写する工程を示す図である。
【図40】転写シールを指に貼り付けて、写真撮影する例を示す図である。
【図41】擬似指紋パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】

以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において、互に同一又は相当する部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。


【0039】

〔指紋センサー〕

図1は指紋センサーの原理を説明するための図である。図1(a)は静電容量方式の指紋センサー、図1(b)は光学方式の指紋センサーである。これらは現在広く使われている指紋センサーである。静電容量方式の指紋センサー10Aは、接触面11と皮膚2の間の距離に応じて変化する電位差を測定し、ピクセルの輝度にマッピングする。一方、光学方式の指紋センサー10Bは、光源15からの照射光を、プリズム12を使って接触面11に照射し、接触面11からの反射光をイメージセンサー16で捉え、ピクセルの輝度にマッピングする。


【0040】

図2に指紋センサーで取得された指紋画像の例を示す。図2(a)は静電容量方式で得られた指紋3、図2(b)は光学方式で得られた指紋3である。輝度の分布はいずれの場合も指紋3の隆線13で最小、谷線14で最大となるため(図1参照)、二値化に近い高コントラストで指紋の微細な凹凸をマッピングできる。図1(a)において、接触面11と谷線14間の容量をCair、センサー表面のパッシベーション膜(酸化シリコン膜)17の容量をCoxとすると、隆線13での容量はCox、電位差はVridgeで、谷線14での容量はCv(1/Cv=1/Cox+1/Cair)、電位差はVvalleyである。


【0041】

静電容量方式の指紋センサー10Aは、指と電極との間の静電容量の違いを検知する。本実施例における生体特徴盗撮防止装着具1に使用される薄膜の材料として採用され得るゴム、プラスチック、シリコンといった素材は2.0~5.0程度の比誘電率を持つ。一方空気の比誘電率は約1.0であり, 検出画素が空気を介する場合(谷線)とそうでない場合(隆線)との間で静電容量の違いが明確であるため、上記薄膜を使用しても隆線と谷線の区別を妨げることはない。光学方式の指紋センサー10Bは、接触部分と空気層の散乱特性の違いを検知する。光源15からの光はプリズムと空気層との境界11で全反射し、隆線13では皮膚内部に入射するため全方向に散乱してごくわずかな光量しか検出されない。光源15に主として高輝度のLEDを使うため、上記薄膜を使用しても光は薄膜を透過し、隆線13と谷線14の区別を妨げることはない。


【0042】

〔撮影画像からの指紋の取得〕

図3はマニューシャ・マッチング方式について説明するための図である。図3(a)は指紋画像の例を示す図、図3(b)は特徴点(マニューシャ)の例を示す図である。取得された指紋画像から指紋を認識する段階で主流となっている手法は、マニューシャ・マッチング方式と称されている。この方法は、指紋画像から特徴点(マニューシャ)を検出し、その配置を比較することによって同一性の判定を行う。隆線13の端点および分岐が特徴点として使用される。


【0043】

図4に、撮影画像と適応的閾値処理の例を示す。図4(a)は撮影画像(指紋画像)、図4(b)は適応的閾値処理後の撮影画像(指紋画像)である。デジタルカメラで撮影した指紋画像は、環境光によって指紋の微細な凹凸が作り出す陰影を光学センサー(カメラの撮像素子)でサンプリングした結果の画像である。指紋データの取得という観点からは、接触式の指紋センサーと比較して劣っている。


【0044】

指紋画像にはノイズが多く含まれているため、特徴点の検出に先立って画像の強調処理を行う。抽出された特徴点は、x,y座標および方向tを用いて p={x,y,t} と表され、特徴点のリスト(指紋テンプレート)に保存される。指紋のマッチングは、これらの点群間のパターンマッチング問題とみなすことができる。


【0045】

したがって、撮影された指紋画像から直接指紋を復元することは困難であるが、適応的閾値処理を施すことによって、環境光による大域的な陰影の変化および隆線間隔以下の微小なノイズを効果的に除去することができる。

このようにして得られた画像は,指紋の隆線13と谷線14を区別できる解像度があれば,特徴点を検出するのに十分な品質を持つと予想できる。そこで市販のデジタルカメラ(Canon EOS 70D,2040万ピクセル,標準ズーム,焦点距離135mm)を用いて、撮影された画像から指紋検出可能な距離の見積もりを行った。


【0046】

図5に撮影距離別の指紋画像の例を示す。図5(a)は撮影距離1.5m、図5(b)は撮影距離3m、図5(c)は撮影距離4.5mの時の指紋画像である。また、表1に撮影距離別の隆線間隔の見積もり結果を示す。2本の隆線は,隆線間隔が水平または垂直な場合は2ピクセル,斜め45度の場合は2.82ピクセルあれば区別できるので、このカメラの場合は約5m以下の距離であれば撮影画像から指紋を検出される可能性があるといえる。

【実施例1】
【0047】

本実施例では、指紋の盗撮を防止する指への装着具について説明する。本実施例における指紋盗撮防止装着具1は、指表面に塗布する透明なベース部4及びベース部4の表面に印刷される不透明な攪乱部5を有する。

【実施例1】
【0048】

〔生体特徴盗撮防止装着具〕

図6に実施例1における指紋盗撮防止装着具1の構成例を示す。図6(a)は指紋盗撮防止装着具1の外観図の例、図6(b)は指紋盗撮防止装着具1の構成例を示す図である。指紋盗撮防止装着具1は、指表面に塗布する透明なベース部4及びベース部4の表面に印刷される不透明な攪乱部5を有する。攪乱部5はパターン化されている。ベース部4は皮膚2に密着して指紋3の凹凸を均し、不透明な攪乱部5は指紋3のディテールを覆い隠すことにより、特徴点の検出を妨害する。

図6(b)において、ベース部4は皮膚2表面の凹凸を覆って表面を平坦にしている。ベース部4の材料としての水溶性のアクリル樹脂は水に溶けるとクリーム状になるので、指表面に塗布すると皮膚2表面の凹凸を覆い、かつ表面を均して平坦化できる。その平坦化された表面に攪乱部5のパターンを形成する。ベース部4が指紋3の隆線13にもれなく接触することで、谷線14の部分に空気層が形成される。この空気層は指紋センサーが指紋の隆線13と谷線14を区別するのに必要である(図1参照)。他方、皮膚とベース部4の間に谷線14以外の余分な気泡が入り込むと、全体が白トビして隆線13と谷線14を区別できなくなる(図9参照)。

【実施例1】
【0049】

生体特徴盗撮防止装着具1は、可視光領域に透明で、生体特徴3領域を被覆するベース部4と、可視光領域に光散乱特性を有し、生体特徴3領域を被覆する攪乱部5とを備える。好ましくは、ベース部4は薄膜で生体特徴3領域に接触して形成され、攪乱部5は薄膜でベース部4に接触して形成される。また、ベース部4は生体特徴3領域の全体を被覆するのが好ましく、攪乱部5は生体特徴3領域の一部を被覆しても、全体を被覆しても良い。

【実施例1】
【0050】

図7は実施例1における指紋盗撮防止装着具1の製法の例を示す図である。図7(a)はベース素材塗布工程、図7(b)は攪乱部素材塗布工程、図7(c)は攪乱部転写工程を示す図である。まず、ベース素材(ベース部の素材)としての、水溶性のアクリル樹脂を筆で指表面に塗布する。次に、攪乱物質(攪乱部の素材)としてのアクリル塗料(アクリル樹脂の溶剤に酸化亜鉛の顔料を溶かしたもの)で化粧用のパフに染み込ませる。そして、ネイルアート用のパターン4を描いた(穴あけした)ステンシルシートを使い、指先にパターン4を転写する。

アクリル塗料はアクリル樹脂に馴染むので、パターンの転写を容易にする。図6(a)は指紋盗撮防止装着具1の外観である。指先にパターンが転写されている。パターンは繰り返し模様となっており、指紋の多くの特徴点を覆うのに適している。

【実施例1】
【0051】

指紋盗撮防止装着具1の条件は次のようである。

(1)接触式の指紋センサー10による指紋認識が可能であること。

(2)撮影された写真、及び撮影後に任意の画像処理を施した写真からの指紋データの取得が不可能であること。

【実施例1】
【0052】

また、実施例1における指紋盗撮防止装着具1を製造するための材料は、可視光領域に透明で、生体特徴3領域を被覆するベース素材と、可視光領域に光散乱特性を有し、生体特徴3を被覆する攪乱物質とを備える。

【実施例1】
【0053】

ここで、ベース部4及び攪乱部5の特性について触れる。

攪乱部5には、透過した可視光による生体特徴領域の認識を妨げ、また、光学式生体特徴センサーの光源の透過を妨げない程度の反射率が求められる。可視光の透過率が高いとカメラで生体特徴3が認識され、光源からの光の反射率が高いと生体特徴センサーに供される光が少なくなるからである。ベース部4に使用されるアクリル樹脂の反射率は例えば4%、攪乱部5に使用される酸化亜鉛の反射率は例えば11%であり、2~15%が好ましく、3~12%がより好ましい。

【実施例1】
【0054】

ベース部4及び攪乱部5には、光学式生体特徴センサー10Bの光学プリズム12の屈折特性を変えない程度の屈折率が求められる。光学プリズム12に使用される光学ガラスの屈折率から乖離すると、測定光の光路が変わる等の影響が生じるからである。ベース部4に使用されるアクリル樹脂の屈折率は例えば1.49、攪乱部5に使用される酸化亜鉛の屈折率は例えば2.0であり、光学ガラスの屈折率1.51と著しい乖離はなく、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。

ベース部4及び攪乱部には、静電容量式生体特徴センサー10Aによる静電容量の測定を妨げない程度の比誘電率が求められる。センサーのコーティングに使われるシリコンの比誘電率から乖離すると、静電容量が変わる等の影響が生じるからである。ベース部4に使用されるアクリル樹脂の比誘電率は例えば2.7~4.5、攪乱部5に使用される酸化亜鉛の比誘電率は例えば1.7~2.5であり、シリコンの比誘電率2,4と著しい乖離はなく、1.7~7が好ましく、2~5がより好ましい。また、ベース部4は、接触型の生体特徴センサーによる認証時には生体に密着して気泡を残存させないことが好ましい。また、ベース部4は生体2の動きに追随して変形可能である、すなわち、生体が物に接触する際には接触面に沿って平らになり、接触していない場合には生体の形状に沿った立体となり、動作に支障をきたすような皺やひび割れが発生しないことが好ましい。

【実施例1】
【0055】

〔ベース部〕

図8に、指紋表面にパターンを直接塗布した結果を示す。図8(a)は外観図、図8(b)は指紋画像である。ベース部4は指紋の隆線と谷線の凹凸を均し、その表面に印刷するパターンを平坦にするために使用される。指紋3の表面に直接パターンを塗布した場合、指紋の谷線にインクが染み込み,逆に指紋を強調する結果となった。

【実施例1】
【0056】

図9に、シール素材(ベース部4の素材)の指紋センサーに対する影響を示す。図9(a)は外観図、図9(b)は指紋画像である。ベース部4は指表面に密着しなければならない。指との間に生体特徴3の凹部に由来する気泡以外の隙間や気泡が発生すると、指紋3のその部分は指紋センサーの接触面に触れないため、読み取った画像に欠落が生じる。単純なシールで実現が難しいのはこのためである。

【実施例1】
【0057】

図10に膜厚の指紋センサーに対する影響を示す。図10(a)は静電容量式センサー10A(図1参照)による撮影画像(薄い、中間、厚いの3種類)、図10(b)は光学式センサー10B(図1参照)による撮影画像(薄い、中間、厚いの3種類)である。ベース部4の厚さは,指紋センサーの認識率と写真に対する妨害効果とのトレードオフの関係に影響する。ベース部4が厚すぎる場合は,静電容量式の指紋センサーでは像がぼやけて細部が潰れてくる。光学式の指紋センサーでは気泡のような欠落が発生する。これに対し,ベース部4が薄すぎる場合は、指紋の凹凸を完全に均すことができず。パターンに陰影を発生させる可能性がある。

【実施例1】
【0058】

図11はさまざまな素材に対する光学センサーの透過性について説明するための図である。素材が図11(a)は水、図11(b)はティッシュペーパー、図11(c)はプラスチック、図11(d)はPET(ポリエチレンテレフタレート)(0.2mm厚さ)、図11(e)はPET(0.5mm厚さ)、図11(f)はPET(0.7mm厚さ)の例である。図11(a)~(c)では、指先の一部に素材が存在する。水分の介在により全反射条件が崩れ、暗線になる。また、空気層の介在により、全反射が生じ、明線になる。また、素材が接触面に密着していない場合は、空気層によって画像の不明瞭化及び白トビが発生する。図11(d)~(f)では素材PET(ポリエチレンテレフタレート)で厚さを変化させている。素材が接触面に密着している場合は、素材の厚さに関らず画像の質は一定である。

【実施例1】
【0059】

〔パターン〕

指先の表面にパターンを重畳すると,指紋センサーの接触面と指の間に薄膜を介することになる.この薄膜の存在によって,指紋センサーによる隆線と谷線の判定を妨げることがあってはならない。

【実施例1】
【0060】

図12にパターン検討用サンプルの例を示す。図12(a)は明るいグレーで塗りつぶしたサンプル、図12(b)は皮膚の平均色で塗りつぶしたサンプル、図12(c)は周囲の色で塗りつぶしたサンプルである。図12(a)~図12(c)のいずれも、左は撮影された写真、右は適応的閾値処理後の画像の図である。表面に印刷するパターンの設計は、それが特徴点の検出に直接与える影響を考慮し、かつ任意の画像処理に耐性があるように設計しなければならない。そこで,可変サイズのドットパターンを指紋画像に重畳し、指紋センサーによるテンプレートとのマッチングを行うというシミュレーションによって、最適なパターン密度の検討を行った。ドット密度を10線,20線,40線(1インチあたりのドット数)とし、パターンの被覆率が20%,40%,60%となるようにドットサイズを調節した。また,同一のパターンに対して3種類の塗りつぶし方法を設定し(図12(a)~(c)参照)、マッチスコアの違いを比較した。

【実施例1】
【0061】

図13は塗りつぶし色の影響について説明するための図である。図13(a)は白色で塗りつぶしたサンプル、図13(b)は皮膚に近い色で塗りつぶした結果である。図13(a)と図13(b)のいずれも、左は外観図、右は適応的閾値処理後の画像である。印刷されるパターンは、撮影された写真だけでなく、それを使ったあらゆる画像処理に対しても耐性があるものなければならない。指紋認識に対するノイズの効果が最小になるのは、パターンの明るさが皮膚の色と同じ場合である。図13(b)ではパターンのエッジが明らかに弱くなり、一部ではパターン自体も消失していることが分かる。

【実施例1】
【0062】

図14にサンプルパターンのマッチング結果の例を示す。図14(a)は明るいグレーで塗りつぶしたサンプル、図14(b)は皮膚の平均色で塗りつぶしたサンプル、図14(c)は周囲の色で塗りつぶしたサンプルである。ドット密度を10線,20線,40線(1インチあたりのドット数)とした。縦軸はマッチスコア、横軸は被覆率である。マッチングには商用の指紋認識ソフトウェアVeriFingerを使用した。あらかじめ指紋センサーで取得したテンプレート画像とのマッチングを行い、マッチスコア48以上を一致とみなす。この数値はFAR(他人受入率:他人を本人と誤認識する確率) 0.01%で同一の指紋と判定される基準である。特徴点の抽出に失敗した場合は、マッチスコアをゼロとする。

明るいグレーについてはすべてのケースで盗撮を効果的に妨害できているが、皮膚の平均色または周囲の色による塗りつぶしを行った場合は妨害に失敗するケースが多くなる。被覆率が低いとほとんどのケースで妨害が失敗し、また同じ被覆率でも線数が多い(すなわちドットサイズが小さい)ものほど妨害効果が低い。この結果から,被覆率60%以上かつドットサイズが大きいパターンが必須といえる。

【実施例1】
【0063】

次に、これらのサンプルパターンについて、サイズ要件および密度要件の判定を行った。1mの距離から撮影した指紋の写真から隆線間隔(平均10.0ピクセル)を、そこから隆線の強調に効果的なカーネルサイズ(11ピクセル)を得た。

表2にサイズ要件の判定結果を、表3に密度要件の判定結果を示す。これら2つの要件を同時に満たすドットパターンは、10線40%,10線60%,20線60%の3種類である。これは図14のマッチング結果とおおむね一致している。表2及び表3において、rはドット半径、hは隆線間隔、dはドットの間隔、kはカーネルサイズ(ガウシアンフィルタに使用するカーネルのサイズ)である(図17参照)。

【実施例1】
【0064】

図15は指紋画像に対するノイズの効果を説明するための図である。図15(a)はドットが皮膚より暗い場合、図15(b)はドットと皮膚が同程度の明るさの場合、図15(c)はドットが皮膚より明るい場合である。いずれも、指紋画像にドットパターンを重畳し、適応的閾値処理を施した結果である。このドットパターン(フィルタ)は一種のエッジ検出器として機能し、画像のコントラストのギャップを強調する。

【実施例1】
【0065】

このドットパターン(ノイズ)が特徴点の検出に与える影響は以下の3点である。

(1)偽の特徴点が発生する。ドットが皮膚より暗い場合またはドットが皮膚より明るい場合には、ドットの外側に白黒のリングが発生する。ドットが皮膚より暗い場合には外側の明るいリングが指紋の隆線を分断し、ドットが皮膚より明るい場合は外側の暗いリングが指紋の隆線に接続する。その結果、本来の隆線に余分な端点および分岐が追加され、偽の特徴点が数多く発生する。

(2)本来の特徴点が消失する。ドットの周囲に特徴点がある場合、隆線が前述の2つのリングに分断または接続されるため、正しい接続を予想することができず、本来の特徴点を検出することができなくなる。発生するリングのサイズはフィルタの影響範囲と考えられるので、フィルタのカーネルサイズをkとすると、リングの太さはk√2/2と見積もることができる。

(3)特徴点が隠蔽される。ドットと皮膚が同程度の明るさの場合には、コントラストがないのでリングは発生せず、明るさに差がある場合のような効果を期待できない。この場合はドットによって特徴点を隠蔽する効果しかないので、ノイズ効果としては非常に限定的である。

【実施例1】
【0066】

図16は指紋画像に対するドットサイズの影響を説明するための図である。図16(a)はドットが1本の隆線にのっている場合、図16(b)はドットが2本の隆線にのっている場合を示す。ドットが1本の隆線に乗っている場合は、他の隆線とは離れているため、特徴点の検出には何の影響も与えない。ドットが2本以上の隆線に乗っている場合、隆線の接続に曖昧さが発生するので,特徴点の検出に対する積極的な妨害効果が期待できる。よって、妨害効果を生じさせるには、ドット半径をr、隆線間隔をhとすると、r>h が必要条件である。

【実施例1】
【0067】

図17は指紋画像に対する指紋検出に対するドット配列の影響を説明するための図である。ドット半径よりも広い領域にノイズの効果が及ぶ。マニューシャ・マッチング方式では一部の特徴点だけでも正確にマッチさせることができるので、画像全体にわたってノイズの影響が及ぶ必要がある。

ドット密度を10線,20線,40線(1インチあたりのドット数)とし、ドット半径をr、フィルタのカーネルサイズをk、ドットの間隔をdとすると、ノイズの影響半径はr+k√2/2であるから、画像全体にわたってノイズの影響を及ぼすには、r>d/2+(k√2)/2 が必要条件である。

【実施例1】
【0068】

〔評価〕

図18に評価に使用したプロトタイプの例を示す。図18(a)は外観図、図18(b)は設計パターンである。これまでの検討に基づいて生体特徴盗撮防止装着具(BiometricJammer)のプロトタイプを作成し,4人の被験者に対してその有効性を評価した。

【実施例1】
【0069】

表4に評価環境を示す。評価手順は以下のとおりである。

(1) プロトタイプを装着していない指(右手親指)表面を指紋センサーでスキャンし、テンプレートとして登録する。

(2) 同じ指をデジタルカメラを使って撮影し、テンプレート(1)とのマッチングを行う。

(3) 同じ指にプロトタイプを装着し、デジタルカメラを使って撮影、テンプレート(1)とのマッチングを行う。

(4) 撮影画像(3)に対して、パターン部分を周囲の平均色で塗りつぶす処理を行い、テンプレート(1)とのマッチングを行う。

撮影画像(2)(3)(4)については、テンプレートとのマッチングに先立ち、画像処理ソフトウェアでテンプレートと同じサイズに拡大・縮小した後、カーネルサイズk=11で適応的閾値処理を行う。マッチングにはVeriFingerを使用し、マッチスコア48以上を一致とみなす。

【実施例1】
【0070】

図19に撮影距離別のマッチ人数の例を示す。図19(a)は静電容量方式による認証結果の例、図19(b)は光学方式による認証結果の例である。縦軸はマッチ人数、横軸は撮影距離である。プロトタイプを装着した場合のマッチ人数は0である。図20に撮影距離別の平均マッチスコアを示す。図20(a)は静電容量方式による認証結果の例、図20(b)は光学方式による認証結果の例である。縦軸はマッチスコア、横軸は撮影距離である。プロトタイプを装着した場合のマッチスコアは0である。

プロトタイプを装着しない場合、全ての被験者で撮影画像からの指紋のマッチングに成功した。最長マッチ距離は3mであり、これは盗撮者にとって本人に気づかれずに撮影するのが困難な距離ではない。

プロトタイプを装着した場合、全ての被験者および距離において特徴点の検出に失敗した(マッチスコア0)。パターンの塗りつぶしを行った場合も同様であった。パターン密度は、ドットパターン「10線40%」に近いが、塗りつぶしを行った画像については先のシミュレーションよりも高い妨害効果を発揮した。これは撮影画像から塗りつぶし領域を検出する過程で、境界線の汚れ(フリンジ)の処理が不十分であったことに起因する。すなわち、大部分は認証されなかったという結果を得た。

【実施例1】
【0071】

表5に指紋センサーによる認証結果の例を示す。(a)に静電容量方式の認証結果、(b)に光学方式の認証結果を示す。続いて,今回作成したプロトタイプを装着し,指紋センサーによる正当な指紋認証に成功するかどうかを検証した.指紋センサー1機種につき,テンプレートおよび認証用の画像をそれぞれ3回ずつ読み取り,合計9回のマッチングを行って,成功数ならびにマッチスコアの最大値・最小値を集計した。表5はその結果である。

4人中3人については全ての試行でマッチングに成功した.マッチスコアのばらつきが大きいのは,指紋センサーに対する指の置き方が安定していない結果であり、これは通常の指紋認証においても同様である。被験者Bの成功数が特に低いのは,テンプレートの読み取りで指の置き方が不安定だった結果であり、常にその一部分しかマッチしないため,総じて低いマッチスコアとなった。すなわち、大部分は認証されたという結果を得た。

【実施例1】
【0072】

以上により、本実施例によれば、接触式の生体特徴センサーには正常に反応しつつ、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具を提供できる。

なお、光学式生体特徴センサー10Bの光源15は可視光であってもよい。前述の通り、攪乱部5は所定の反射率であるから、攪乱部5での光の散乱は全反射ではなく、且つ非透過(全遮断)でもない。このため、本実施形態の生体特徴盗撮防止装着具を指に装着していると、カメラで盗撮しようとしても表面の攪乱部5で光が散乱して白く見えるために指紋盗撮ができない。一方、図1(b)のプリズムを用いた構成を持つ光学式生体特徴センサー10Bはベース部4の隆線13との接触部分と空気層14の散乱特性の違いを検知でき、指紋認証が正常にできる。このような効果を得られる理由は、デジタルカメラと光学式生体特徴センサーのそれぞれのイメージセンサに設定された感度の違いに基づく。光学式生体特徴センサーのイメージセンサは、光源の波長に対する感度が高く設定されているために後述する攪乱部5を透過する光の輝度の違いを感知できるが、デジタルカメラのイメージセンサは、幅広い波長の光を捉えるように設定されているため攪乱部5からの散乱光で全体的に白く見える。

光学式生体特徴センサー10Bにおいて、本装着具を装着した指紋を正しく読み取れる原理は以下の通りである。光源から出た光の一部はプリズム12と攪乱部5を透過する。攪乱部5(あるいはベース部4)と皮膚の境界が隆線13の場合は、光は皮膚の表面で全方向に散乱してイメージセンサ16に届かない。一方、攪乱部5(あるいはベース部4)と皮膚の境界が谷線14(空気)の場合は、光はそこで全反射し、イメージセンサ16に届く。前述のとおり、光源の波長に対するイメージセンサ16の感度が高いので、入射光の一部が攪乱部5で散乱したとしても、イメージセンサ16は隆線13と谷線14の輝度の違いをもって指紋を認識することができる。また、光学式生体特徴センサー10Bはイメージセンサ16が指紋のすぐ近くに位置するため盗撮カメラより感度が高く、指紋を正確に把握することが可能である。

【実施例2】
【0073】

実施例1では、生体特徴盗撮防止装着具はベース部4表面上に攪乱部5のパターンを印刷した例について説明したが、実施例2では、生体特徴盗撮防止装着具はパターンを印刷した指サック又は手袋である例について説明する。

すなわち、指サック又は手袋を使用し、指から装着具が外れにくくしている。指サック又は手袋がベース部4に使用され、攪乱部5のパターンがその表面に印刷される。印刷は転写に限られず、プリント印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の汎用的な印刷も使用可能である。その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様に、接触式の生体特徴センサーには正常に反応しつつ、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具を提供できる。

【実施例3】
【0074】

実施例3では、生体特徴盗撮防止装着具が、パターンを埋め込んだ指サック又は手袋である例について説明する。

実施例2では、パターンが指サック又は手袋の表面に形成されている例について説明したが、本実施例では、パターンが指サック又は手袋の内部に埋め込まれている例について説明する。すなわち、パターンが2枚のシートに挟まれて、指サック又は手袋が製造されている場合等である。一方のシートへの印刷は転写に限られず、プリント印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の汎用的な印刷も使用可能である。

その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様に接触式の生体特徴センサーには正常に反応しつつ、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具を提供できる。

【実施例4】
【0075】

実施例4では、生体特徴が掌紋の場合について説明する。

掌紋についても、指紋と同様に、生体に固有の紋様であり、隆線と谷線による凹凸がある。したがって、盗撮を防止するには、指紋と同様に、生体特徴盗撮防止装着具は、可視光領域に透明で、生体特徴3領域を被覆するベース部4と、可視光領域に光散乱特性を有し、生体特徴3領域を被覆する攪乱部5とを備える。

したがって、実施例1と同様に、接触式の生体特徴センサーには正常に反応しつつ、撮影された写真から生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止装着具を提供できる。

実施例2及び実施例3への適用も可能である。

【実施例5】
【0076】

図21に本実施例における生体特徴盗撮防止装着具の製作手順を示す。本実施例ではベース層を使用しない例について説明する。図21(a)は絵の具を準備する工程を示す図、図21(b)は絵の具をシリコンゴムシートに塗布する工程を示す図、図21(c)は指表面にステンシルの疑似パターンを転写する工程を示す図である。

まず、塗布材料と貼付用器具を準備する。塗布材料は、可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の塗料で、例えば、水溶性のアクリル絵の具をアクリル系溶剤と混ぜた絵の具を使用する。濃度が濃くなるにつれて妨害効果が大きくなる。ただし、高濃度化すると、アクリル絵の具は速乾性なので、仕上がりが早い。また、高濃度化し過ぎると、絵の具が乾燥して塗布し難くなる。ここでアクリル絵の具は実験用の素材として使用しており、人体に対して安全な材料が好ましいので、実用レベルでは改善・変更の可能性がある。人体に対して安全な素材の候補として、例えばシリコーンゴム、ラテックス、医療用人工皮膚等が挙げられる。

【実施例5】
【0077】

貼付用器具22は、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付けるための器具である。例えば、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付ける転写板(ステンシル)であり、複数の微小孔を通過して転写される塗布材料21が生体特徴と類似のパターンを形成するように、複数の微小孔が配置されている。複数の微小孔を配置することにより、ステンシル22の紋様、すなわち、疑似指紋の模様が形成される。転写板(ステンシル)を使用するのに適切な塗布材料として必要な物理的特性は、シルクスクリーンに使用されるインクと同様であり、つぎの通りである。

・粘度は1~数10Pa/s(パスカル秒):粘度が高すぎると目詰まりを起こし、低すぎるとにじみが発生する。

・膜厚は数μm~100μm:100μmより厚いと指紋センサーに正常に反応しないおそれがある。また、数μmより薄いとスクリーンインクを転写できないおそれがある。

【実施例5】
【0078】

次に、絵の具をシリコーンゴムのシート23表面に一様に塗布する。次に、シリコーンゴムのシート23表面に塗布された絵の具21の上に疑似指紋の紋様を有するステンシル22を重ねる。次に、ステンシル22上に指24を乗せてステンシル22を押すと、指24に疑似指紋が転写される。

【実施例5】
【0079】

図22に疑似指紋を有し、シルクスクリーン製版により作成されたステンシル22を示す。ステンシル22の疑似指紋パターンは例えばコンピュータプログラムにより、指紋を取り込んだパターンを修飾して作成される。そして、ステンシル22は例えば疑似指紋をシルクスクリーン製版して作成される。

【実施例5】
【0080】

図23に指24表面に転写された疑似指紋の外観の例を示す。指24表面にはベース層が下塗りはされておらず、疑似指紋が直接指24に転写されている。例えば疑似指紋パターンは日常生活における摩擦や発汗程度では剥離しないが、石鹸等を使って水洗いすることによって剥離することができる。

【実施例5】
【0081】

図24に本実施例における擬似指紋製作のフロー図を示す。まず、塗布材料21と貼付用器具22を準備する(S010)。塗布材料21は、可視光領域に光散乱特性を有するクリーム状又はゲル状の材料で、例えば、水溶性のアクリル絵の具をアクリル系溶剤と混ぜたものを使用できる。また、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるので、塗布材料21は速乾性と皮膚への接着性を有することが求められる。貼付用器具22は、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を貼り付けるための器具で、例えば、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21としての絵の具を貼り付けるステンシル22を使用できる。ここで、ステンシル22には、複数の微小孔を通過して転写される塗布材料21が生体特徴と類似のパターンを形成するように、複数の微小孔が配置されている。

【実施例5】
【0082】

次に、絵の具21をシリコンゴムシート23に塗布する(S020)。次に、シリコンゴムシート23に塗布された絵の具21の上にステンシル22を重ねて置く(S030)。次に、擬似指紋パターンが描かれたステンシル22の上に指紋を下向きにした指24を押し付ける(S040)。すると、指24表面に擬似指紋パターンが転写される(S050)。ここで、擬似指紋パターンは指紋に類似のパターンである。

【実施例5】
【0083】

図25及び図26は写真からの指紋検出に対する妨害効果について説明するための図(その1)及び(その2)である。図25は図18のパターンを用いる例、図26に本実施例による例を示す。図18のパターンを用いる方式は幾何学形状をノイズとして重畳することにより、写真による指紋の検出に失敗させる方式である。図25(a)は写真撮影された画像の例、図25(b)はその拡大図で二値化後の画像の例である。この方式によれば、エッジの強調による隆線の断片化及びパターン領域における特徴点の隠蔽効果があり、妨害に効果的である。他方で、画像処理によるパターンキャンセル対策のため、パターン面積を広くとる必要がある。つまり、幾何学模様の面積を広くすることにより、写真による指紋の検出に失敗させることが好ましい。

【実施例5】
【0084】

図26は本実施例による例を示す。疑似指紋をノイズとして重畳することにより、誤った指紋を認識させ、当該指紋(その人の本来の指紋)の検出を妨害する方式である。図26(a)は写真撮影された画像の例、図26(b)はその拡大図で二値化後の画像の例である。この方式によれば、正規の指紋に近い空間周波数によって、フィルタリングによるパターンキャンセル(パターンの特徴を把握して、その特徴を有するぱターンを除去する)を防止できる。すなわち、本来の指紋と同様のパターンを重畳することで,撮影指紋からは本来の指紋の正しい特徴点に加えて,偽の特徴点が加わるため,全体として誤った生体特徴と認識される。さらに、擬似指紋パターンが幾何学模様のように推定可能な場合には、例えば、[0061]で示した画像処理によって、指紋検出に対する妨害効果を最小化されるおそれがある。高度の分析技術を用いれば擬似生体特徴パターンの特徴を把握されて生体特徴と擬似生体特徴パターンを分離される、すなわち、生体特徴を推定されるおそれがある。これを防御するには、繰り返し周波数の近い擬似生体特徴パターンを使用するのが良い。このようにすると、生体特徴に擬似生体特徴パターンを畳重することにより、本来の特徴点に新たな特徴点を生成して、生体特徴を認識できないようにするだけでなく、分析により生体特徴と擬似生体特徴パターンを分離することが困難になるので、生体特徴を推測することを防止できる。

【実施例5】
【0085】

なお、人の指紋の間隔は、測定箇所によりばらつきがあり0.3~0.5mm、平均約0.4mmである。標準的な指紋センサーの解像度は500ピクセル/インチなので、ピクセル数に換算すると、0.4×500/25.4=7.874ピクセルであり、空間周波数はその逆数で、0.127(1/ピクセル)となる。したがって、人により異なるが、例えば疑似指紋の間隔を0.4mm±20%以内に設定する等で効果を期待できる。

【実施例5】
【0086】

図27及び図28は指紋センサーに対する透過性(認証性)を説明するための図及びである。図27は静電容量方式センサー10Aの例、図28は光学方式センサー10Bの例である。図27(a)はセンサー構成を示す模式図、図27(b)は検出された指紋の例を示す図である。静電容量方式センサー10Aは、接触面と空気層の静電容量の差異(隆線と谷線との差異)を画像にマッピングする。疑似指紋は正規の指紋の凸部(隆線)にのみ塗料21が重畳される(グレーの部分が重畳された部分)ので、常に暗線として検出される。したがって、静電容量方式センサー10Aで取得した画像は正規の指紋とほぼ同一になる。

【実施例5】
【0087】

図28は光学方式センサー10Bの例である。図28(a)はセンサー構成を示す模式図、図28(b)は検出された指紋の例を示す図である。光学方式センサー10Bは、プリズム12と空気層の境界における全反射光を画像にマッピングする。塗料(絵の具)21の厚さに応じて正規の指紋上に疑似指紋の段差が重畳されるので、疑似指紋のパターンが検出される可能性(おそれ)がある。そこで、疑似指紋の影響を軽減するために、塗料(絵の具)21素材及び塗布手法(薄くする等)の検討が必要である。

【実施例5】
【0088】

図29Aは塗料と溶剤の混合比率による、写真撮影による取得画像への影響を示す図である。指紋盗撮防止装着具の試作品を使い、同一の疑似指紋パターンを不透明度を変えて転写した指を撮影した写真を図29A(a)-(d)に、それらを二値化した画像を図29A(e)-(h)に示す。後者は画像解像度が500ppi相当になるように写真を拡大縮小し、カーネルサイズ11ピクセルで適応的二値化処理を施している。不透明度が8%の場合は疑似指紋パターンを視認することができず、二値化後に現れるパターンノイズもごくわずかである。それに対し、不透明度14%および39%の場合は、疑似指紋パターンを視認することができ、二値化後の画像では本来の指紋に対して効果的にパターンノイズが重畳されている。

【実施例5】
【0089】

図29Bは塗料と溶剤の混合比率による、指紋センサーによる取得画像への影響を示す図である。図29Aに示した各サンプルについて、静電容量方式の指紋センサーで取得した画像を図29B(a)-(d) に示す。主に指紋の凸部(隆線)にインクが付着するため、隆線上ではパターンが重畳されているかどうかによって皮膚と電極との間の距離が変化し、その結果、隆線上の断片的な色ムラとして現れる。指紋の凹部(谷線)には影響がないので、指紋の特徴を大きく変えることはなく、正当な指紋認証を行う上で支障をきたすことはない。

同じ各サンプルについて、光学方式の指紋センサーで取得した画像を図29B(e)-(h)に示す。気泡や隙間など空気の介在する部分では明るく、それ以外の部分では暗い画像になるため、疑似指紋パターンの線上と輪郭の間でコントラストが高くなり、静電容量方式よりもノイズが顕著に現れる。不透明度が高くなると、指紋の凹部(谷線)が隠蔽される度合が高くなり、静電容量方式と比較して表面の凹凸に敏感な光学方式では、指紋の認識率が低下しやすい。

【実施例5】
【0090】

表6及び表7は指紋の認証に係るマッチング結果を示す表である。図29A及び図29Bに示した各サンプルについて、撮影された写真を二値化した画像、および指紋センサーで取得した画像を使った指紋マッチングの実験を行った。各サンプルにつき、指紋センサー(静電容量方式および光学方式)および写真による入力画像を3点ずつ用意した。あらかじめ指紋スキャナによって取得した登録画像3点に対して、各入力画像を3点ずつ、合計9回のマッチングを実施した。マッチングには商用の指紋認識ソフトVeriFingerを使い、マッチスコア48以上のときFAR0.01%で一致と判定する。

各サンプルについて、表6に9回のマッチング試行に対するマッチ回数を示す。撮影された画像からのマッチングでは、不透明度が8%の場合は、擬似指紋パターンなしの場合と同様に全ての試行でマッチしており、期待された妨害効果を持っていないことが分かる。それ以外の場合は、マッチ数がゼロとなり、撮影された写真からの指紋認識を効果的に防げることが分かる。一方、指紋センサーで取得した画像とのマッチングでは、ほとんどの場合に全ての試行でマッチしており、指紋センサーによる正当な認証を妨げないことが分る。ただし、不透明度39%のサンプルでは光学方式の指紋センサーでマッチ数が減少しており、不透明度の設定には上限が存在する。各サンプルについて、9回のマッチング試行に対する最大マッチスコアを表7に示す。撮影された写真については、疑似指紋パターンの視認性が順当にマッチスコアに影響している。指紋センサーで取得した画像については、直観に反して不透明度が高いほどマッチスコアが高いという結果になっている。これは指紋センサーのコントラスト補正によって階調の潰れやにじみが発生し、特徴点の検出に影響が出た結果である。

以上の結果から、写真からの指紋認識を失敗させるには不透明度が最低15%程度あることが望ましく、同時に指紋センサーによる正当な指紋認証を成功させるには、不透明度が最大30%程度あることが望ましい。つまり、15%ないし30%は好ましい範囲であることがわかった。

【実施例5】
【0091】

以上により、本実施例によれば、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する方法を提供することができる。

【実施例6】
【0092】

実施例6では、塗布材料を貼り付けるための貼付用器具は、複数の突起の先端に前記塗布材料を載せて、生体特徴を有する皮膚の表面に前記複数の突起を押し付けて生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付ける転写板である例について説明する。

【実施例6】
【0093】

図30に本実施例における擬似指紋製作のフロー図を示す。まず、塗布材料21と貼付用器具22A(図示しない)を準備する(S011)。塗布材料21は、例えば、水溶性のアクリル絵の具をアクリル系溶剤と混ぜた絵の具を使用できる。貼付用器具22A(図示しない)は、例えば、複数の突起の先端に塗布材料21を載せて、生体特徴を有する皮膚の表面に複数の突起を押し付けて生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付けるスタンパ22Aを使用できる。ここで、スタンパ22Aには、複数の突起を押し付けて転写22Aに複数の突起が配置されている。突起の高さは低いほど細かい擬似指紋パターンを描くのによいが、少なくとも皮膚に突起を押し付けた時及び絵の具を突起に載せた時にに突起以外の部分に付着しない高さが必要である。

次に、スタンパ22Aの突起に絵の具21を塗布する(S031)。次に、スタンパ22Aの突起に、指紋を下向きにした指24を押し付ける(S041)。すると、指24表面に擬似指紋が転写される(S050)。

【実施例6】
【0094】

指24表面に擬似指紋が転写されることは実施例5と同様であり、実施例5と同様に、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴盗撮防止方法を提供することができる。

【実施例7】
【0095】

実施例7では、塗布材料を貼り付けるための貼付用器具は、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付ける指サックである例について説明する。

【実施例7】
【0096】

図31に本実施例における擬似指紋製作のフロー図を示す。まず、塗布材料21と貼付用器具22B(図示しない)を準備する(S012)。塗布材料21は、例えば、水溶性のアクリル絵の具をアクリル系溶剤と混ぜた絵の具を使用できる。貼付用器具22Bは、例えば、複数の微小孔を通して生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料を貼り付ける指サック22Bを使用できる。ここで、指サック22Bには、複数の微小孔を通過して転写される塗布材料が生体特徴と類似のパターンを形成するように、複数の微小孔が配置されている。

次に、指サック22Bを指に嵌める(S022)。次に、指サック22Bをに嵌めた指を絵の具21に浸漬する(S032)、次に、指サックを指から外す(S042)。すると、指24表面に擬似指紋が転写される(S050)。

【実施例7】
【0097】

指24表面に擬似指紋が転写されることは実施例5と同様であり、実施例5と同様に、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する方法を提供することができる。

【実施例8】
【0098】

実施例8では、塗布材料を貼り付けるための貼付用器具は、塗布材料を生体特徴を有する皮膚の表面に塗布した後に、複数の微小孔を通して皮膚表面の塗布材料に紫外線を照射して、硬化させて塗布材料を貼り付ける転写板である例について説明する。

【実施例8】
【0099】

図32に本実施例における擬似指紋製作のフロー図を示す。まず、塗布材料21と貼付用器具22C(図示しない)を準備する(S013)。塗布材料21は、例えば、紫外線硬化樹脂を使用できる。貼付用器具22Cは、例えば、生体特徴を有する皮膚の表面に塗布材料21を塗布した後に、複数の微小孔を通して皮膚の表面の塗布材料21に紫外線を照射して硬化させて塗布材料21を貼り付けるステンシル22Cを使用できる。ここで、ステンシル22Cには、複数の微小孔を通過する紫外線によって硬化する塗布材料が生体特徴と類似のパターンを形成するように、ステンシル22Cに複数の微小孔が配置されている。

次に、絵の具21を指表面に塗布する(S023)。次に、塗布された絵の具21の上にステンシル22Cを重ねる(S033)。次に、ステンシル22Cの微小孔を通して紫外線を照射して、塗布材料21のうち紫外線に照射された部分を硬化させる(S043)。次に、塗布材料21のうち紫外線に照射されなかった部分を洗い流すと、指24表面に擬似指紋が転写される(S050)。

【実施例8】
【0100】

指24表面に擬似指紋が転写されることは実施例5と同様であり、実施例5と同様に、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する方法を提供することができる。

【実施例9】
【0101】

実施例9では、実施例5において、ベース層を用いる例について説明する。擬似生体特徴の間にベース層を挿入すると、生体特徴を貼り付け易くなる。他方で、パターンが厚くなって、生体特徴の認証が多少難しくなる。実施例9で、ベース層が実施例1ないし実施例4のベース部4に対応する。また、光攪乱膜が実施例1ないし実施例4の攪乱部5に対応する。

【実施例9】
【0102】

図33に本実施例における擬似指紋製作のフロー図を示す。まず、ベース層材料25(図示しない)と塗布材料21と貼付用器具22を準備する(S015)。塗布材料21と貼付用器具22は実施例5と同じである。ベース層材料25は、可視光領域に透明で、水に溶けるとクリーム状となって皮膚に密着して生体特徴の凹凸を均す。例えば、水溶性のアクリル樹脂で、可視光の反射率が例えば4%(低い方が透明度が高くて好ましい)、比誘電率が2.7~4.5のものを使用できる。また、生体特徴を有する皮膚の表面に貼り付けるので、ベース層材料25は速乾性と皮膚への接着性を有することが求められる。

次に、ベース層材料25を指表面に塗布する(S018)。その後の工程(S020)~(S050)は実施例5と同様である。

【実施例9】
【0103】

指24表面に擬似指紋が転写されることは実施例5と同様であり、実施例5と同様に、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する方法を提供することができる。

【実施例9】
【0104】

実施例6ないし実施例8にベース層を適用することも可能である。これらの場合も、ベース層材料25(図示しない)と塗布材料21と貼付用器具22を準備する工程(S015)の後に、ベース層材料25を指表面に塗布する工程(S018)を行い、その後に、実施例6ないし実施例8の塗布材料21と貼付用器具22を準備する工程の後の工程に続ければ良い。これらの場合も、指24表面に擬似指紋が転写されることは実施例5と同様であり、実施例1と同様に、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する方法を提供することができる。

【実施例10】
【0105】

本実施例では、貼付用器具がタトゥーシールである例について説明する。塗布材料はタトゥーシール用のインク又はタトゥーシールに塗布されているインクである。転写の手順は例えば次のようである。まず、タトゥーシールとインクを準備する。タトゥーシールは市販のものを使用でき、印刷ベースシートと粘着剤シートからなる。インクは市販の印刷機器用のインクを使用でき、これらの印刷機器を用いて印刷ベースシートに印刷可能である。

次に疑似指紋パターンを印刷ベースシートに印刷する。印刷は例えば市販の印刷機器で印刷する。疑似指紋パターンは、本来の指紋と類似のパターンであって、本来の指紋の押圧による認証を可能とし、本来の指紋の盗撮を防止するパターンとする。ここで、類似のパターンとは、生体特徴に類似であるが、当該生体特徴の認証が成立しないパターンをいう。次に、疑似指紋パターンが印刷された印刷ベースシートを乾燥し、粘着剤が塗布された粘着剤シートに貼り付ける。次に、印刷ベースシートを粘着剤シートから剥離して、指紋を有する指の表面に疑似指紋パターンが印刷された面を向けて印刷ベースシートを貼り付ける。

次に印刷ベースシートの裏面をこすって指に密着させ、水を含ませた布・紙等を裏面に当てると、水と共にインクが指に浸透して、疑似指紋パターンが指の表面に転写される。次に印刷ベースシートを指から剥離する。

指24表面に擬似指紋が転写されることは実施例5と同様であり、実施例1と同様に、生体特徴センサーには正常に反応し、撮影された写真からの生体特徴の復元を不可能にする生体特徴の盗撮を防止する方法を提供することができる。

【実施例11】
【0106】

図34ないし図36に本実施例における擬似指紋転写の例(その1~その3)を示す。本実施例では貼付用器具を用いて生体表面に貼り付けられる類似のパターンは貼り付け時毎に異なる例について説明する。

図34では、貼付用器具が、複数の微小孔により複数の疑似指紋パターンを描いた転写テープ34と、転写テープ34に描かれた疑似指紋パターンを指紋を有する皮膚の表面に押し付けるためのスタンパ30で、転写テープ34側に転写テープ34を通して皮膚の表面にインクを供給するインク台33を有するスタンパ30と、複数の疑似指紋パターンのうち転写すべきパターンをスタンパ30の位置にくるように転写テープ34を移動させる1対の巻き取りリール31,32とを箱35A内に備える例について説明する。箱35A内に備えるのでインクが乾燥するのを防止できる。転写テープ34はスタンパ30の位置で露出する。1対の巻き取りリール31,32で転写すべきパターンをスタンパ30の位置にくるように転写テープ34を移動させる。本実施例では複数の微小孔で形成された擬似指紋パターンを有する転写テープ34をスタンパ30で指に押し付けて、微小孔から塗布材料としてのインクを押し出して指に擬似指紋パターンを転写する。

【実施例11】
【0107】

図34(a)は貼付用器具における擬似指紋パターンを描いたテープ巻取時の状態を示す図、図34(b)は同貼付用器具の擬似指紋転写時の状況を示す図である。図34(a)において、擬似指紋パターンを描いたテープ34を使用前には使用前テープ巻取リール32に巻き取っておく。テープ34は典型的には平坦である。1対の巻き取りリール31,32を用いて転写すべきパターンをスタンパ30の位置に移動させる。この位置でテープ34は露出する。使用後にはテープ34を使用後テープ巻取リール31に巻き取る。巻き取り時にはスタンパ30の転写用インク台33はテープ34から離れている。複数の疑似指紋パターンを用いるのは、例えば貼り付け時毎に異なるパターンとして、たとえ前のパターンが知られたとしても、パターンを変えて、極力盗撮されないようにするためである。図34(b)において、テープ34の模様を指に転写する時には、スタンパ30で転写用インク台33をテープ34を挟んで指に押し付ける。これにより、テープ34に描かれた擬似指紋パターンが指に転写される。このように構成すると、複数のパターンが形成された転写テープ34とスタンパ30を使用するので、転写の連続処理が可能になる。

【実施例11】
【0108】

図35に本実施例における擬似指紋転写の例(その2)を示す。本実施例では、貼付用器具が突起を有するスタンパの例を示す。図35(a)に転写テープ34を箱内に密封する例を、図35(b)に転写シール39を袋内に密封する例を示す。図35(a)では、インクの乾燥防止のため、密封された箱35Bの中に転写テープ34とテープ巻取機構(ローラ-37)とインクを内包したインク台33が収納され、使用時に蓋36を開けて使用する。転写テープ34には突起により擬似指紋パターンが形成されている。蓋36を閉じるとインク台33がテープ34に密着して、転写テープ34の突起の先端にインクが付着する。テープ巻取機構(ローラ-)37を用いて転写すべきパターンをインク台33に対向する位置(すなわち蓋36に対向する位置)に移動させる。蓋36を開けて、指を転写テープ34に押し付けると、指に転写テープ34に描かれた疑似指紋パターンが転写される。密封された箱35Bの中に転写テープ34とテープ巻取機構(ローラ-)37とインク台33が収納されるので、インクの乾燥を防止できる。図35(b)では、疑似指紋パターンが突起を有し、インクが突起の先端に付着された転写シート39がパッケージ(袋)38内に密封される。使用時には、転写シート39をパッケージ38から取り出して、指を転写シート39に押し付けると、指に疑似指紋パターンが転写される。インクが付着された転写シート39がパッケージ(袋)38内に密封されるので、インクの乾燥を防止できる。転写シート39を順次変えて転写することにより、連続転写もできる。

【実施例11】
【0109】

図36に本実施例における擬似指紋転写の例(その3)を示す。本実施例では、疑似指紋パターンを描いた転写シール43を指に貼り付ける例を示す。図36(a)にテープ巻き取り式(その1)、図36(b)にテープ巻き取り式(その2)、図36(c)に疑似指紋パターンを描いた転写シール43を2枚のシート(保護シート41と剥離シート42)で挟んで保持する例を示す。図36(a)では、巻き取られる転写テープ34には疑似指紋パターンを描いた複数の転写シール43が貼り付けられている。使用前テープ巻取リール32、使用後テープ巻取リール31、転写テープ34及び巻き取りダイヤ40が小判型のケース(箱)35Cに収納され、使用前テープ巻取リール32と使用後テープ巻取リール31の間で、1つの疑似指紋パターンを描いた1枚の転写シールが露出する。巻き取りダイヤル40の一部もケース(箱)35Cの反対側で露出し、巻き取りダイヤル40の露出部分を回すと、使用前テープ巻取リール32と使用後テープ巻取リール31が共に同方向に回転し、転写テープ34が巻き取られる。1対の巻き取りリール31,32で転写すべき転写シール43を露出位置にくるように転写テープ34を移動させる。露出された疑似指紋パターンに指を押し付けると、疑似指紋パターンを描いた転写シール43が転写テープから剥がれて指に貼り付けられる。シール43の両面に粘着剤が付着しているので、指に貼り付ける側には保護シートでカバーし、指を押し付ける前に保護シートを剥がして使用するのが好ましい。

【実施例11】
【0110】

図36(b)はケース(箱)35Dの形状が雨だれ型で、ローラー37(図示しない)を用いて、転写テープ34が雨だれの形状に沿って回転し、雨だれの先端で露出する。露出された疑似指紋パターンに指を押し付けると、疑似指紋パターンを描いた転写シール43が転写テープ34から剥がれて指に貼り付けられる。図36(c)は疑似指紋パターンを描いた転写シール43を保護シート41及び剥離シート42で挟んで保持する。保護シート41を剥離シート42から剥離すると、疑似指紋パターンを描いた転写シール43が露出する。転写シール43に指を押し付けると転写シール43が剥離シート42から剥がれて指に貼り付けられる。

【実施例11】
【0111】

図37に持ち運びケース44とセパレートパッケージの組み合わせの例を示す。転写シール43をセパレートパッケージ(転写シール43を保護シート41と剥離シート42で挟んで保持するもの)の2枚のシート41,42に挟んで保持し、複数のセパレートパッケージを持ち運びケース44の中に入れて持ち運ぶ。持ち運びケース44を用いると多数のセパレートパッケージを運べるので便宜であり、適時に擬似指紋パターンを変えて使用できる。持ち運びケース44の中に転写シール43を入れることにより転写シール43に付着されたインクの乾きを防止できる。

【実施例11】
【0112】

図38に持ち運びケース44とセパレートパッケージを分けて示す。図38(a)にセパレートパッケージと転写シール43を、図38(b)に持ち運びケース44を示す。図38(a)の右列にセパレートパッケージの保護シート41(表面側)の模様のバリエーションを示す。保護シート41には例えばアルミ紙が使用される。中列は剥離シート(裏面)42に転写シール43が置かれている。剥離シート42には例えばビニル紙が使用される。図38(b)には持ち運びケース44の例を示す。図37に示すように、転写シール43を挟んだ複数のセパレートパッケージを持ち運びケース44に入れて持ち運ぶ。

【実施例11】
【0113】

図39にセパレートパッケージから転写シール43を取り出して、指に擬似指紋パターンを転写する工程を示す。図39(a)はセパレートパッケージから保護シート41を剥離する工程、図39(b)はセパレートパッケージから転写シール43を取り出す工程、図39(c)は指を転写シール43に押し付けて。指に擬似指紋パターンを転写する工程を示す。

【実施例11】
【0114】

図40に転写シール43を指に貼り付けて、写真撮影する例を示す。図40(a)は転写シール43を指に貼り付けた後に指から剥離した状態、図40(b)は写真撮影されたパターンを示す。写真撮影されたパターンには、転写シール43の擬似指紋パターンが強く表れ、盗撮妨害効果が得られている。

実施例11では、指表面にベース層を形成しない場合を説明したが、可視光領域に透明であり、生体特徴領域を被覆するベース層を形成してもよい。つまり、実施例11は、生体特徴を有する皮膚の表面に貼り付けるシートであって、可視光領域に透明であり、一方の面で前記生体特徴領域を被覆するベース部と;前記ベース部の他の面上に形成され、前記可視光領域に光散乱特性を有する所定の擬似生体特徴パターンの攪乱部とを備える;シートであってもよい。指表面と擬似指紋パターンの間にベース層を挿入すると、擬似指紋パターンを転写し易くなる。例えば、図34から図39で説明したパターン転写作業の前に図7(a)で説明したように指表面にベース層を形成してもよい。また、図35や図36の転写テープ34、転写シート39又は転写シール43であれば、擬似指紋パターンの上にベース層を形成しておき、指を押し付ければ擬似指紋パターンとともにベース層も転写される。

【実施例11】
【0115】

図41に擬似指紋パターンの例を示す。図41(a)はカーネルサイズk=3(約0.15mm)、図41(b)はカーネルサイズk=11(約0.5mm)、図41(c)はカーネルサイズk=99(約5mm)の例である。カーネルサイズは影響するピクセルの範囲を表す指標で、( )内の数字はmm単位に換算した値である。図41(a)、(b)、(c)の順に指紋を表わす線の幅が大きくなり、カーネルサイズも大きくなる。k=3では光学方式センサーの高周波ノイズが優勢で、k=99では血流による色ムラが優勢になっている。人の指紋の平均間隔は約7ピクセルなので、k=7が最適と推測できる。本来の指紋と疑似指紋パターンの空間周波数差が大きい場合には、フィルタ操作で疑似指紋パターンの影響を除去できる恐れがある。これに対して、疑似指紋パターンの空間周波数を本来の指紋の空間周波数と同程度に設定すると、かかるフィルタ操作が困難になる。

【実施例11】
【0116】

さらに、本発明による生体特徴盗撮防止の妨害効果を高めるために、次ぎのものが挙げられる。

(a)擬似指紋パターンを有するシール又は指サックにμオーダーのビーズを埋め込んでおく。μオーダーでは、シール又は指サックの表面に凹凸は現れない。しかし、写真撮影すると、ビーズからの反射光により表面の指紋パターンを正しく撮影することができなくなる。このためには、ビーズが高い反射率を持つことが求められる、それによって撮影された指紋に強い光沢が生じて妨害効果が強化される。指紋の隆線及び谷線のサイズは0.1mmのオーダーであり、ビーズはそれよりもはるかに微小であるため、生体特徴センサーによる認証には影響しない。

(b)シール又は指サックに回折格子パターン又は平行な複数の凸状パターンを埋め込んでおく。回折格子の場合は特定方向からしか見えなくなり、平行な複数の凸状パターンの場合は正面からしか見えなくなる。回折格子の空間周波数又は平行な複数の凸状パターンの空間周波数は指紋の空間周波数に比してかなり小さく、μmのオーダーにすれば、生体特徴センサーによる認証には影響しない。

【実施例11】
【0117】

以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態は以上の例に限られるもの

ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加え得ることは明白である。

【実施例11】
【0118】

例えば、実施例1~4ではパターンが生体特徴の一部を覆う例について説明したが、生体特徴の全体を覆う単色パターンであってもよい。また、ベース部4が攪乱部5の機能を併せ持つ場合、又は、ベース部と攪乱部の混合物で作成される場合も想定される。また、実施例1~4では、ベース部は水溶性のアクリル樹脂、攪乱部はアクリル塗料の例について説明したが、ベース部が可視光領域に透明で、攪乱部が可視光領域に光散乱特性を有するのであれば、これらの材料を使用しても良い。

【実施例11】
【0119】

例えば、実施例5~11では、生体特徴が指紋の例を説明したが、掌紋・静脈紋にも同様に疑似掌紋・疑似静脈紋を適用できる。疑似生体特徴は実在の生体特徴を変形して作成しても良く、コンピュータで生体特徴に類似のパターンを創作しても良い。また、実施例5~11では、疑似生体特徴パターンが生体特徴の一部を覆う例について説明したが、生体特徴の全域を覆うことのより、生体特徴を誤認させるものあってもよい。また、塗布材料については、白色に限られず、可視光を反射させれば肌色等他の色でも良く、半透明であっても良い。また、ベース層材料については、透明に限られず、可視光を透過させれば肌色等他の色でも良く、半透明であっても良い。また、実施例5~11では、塗布材料がアクリル系の例について説明したが、ベース層が可視光領域に透明で、塗布材料が可視光領域に光散乱特性を有するのであれば、他の材料を使用しても良い。また、カメラで盗撮可能な距離を5mとした例を説明したが、カメラの性能により変化するものと考えて良い。その他、肌色も人種、日焼けにより変化するので、色に幅があるとみなされる。

【産業上の利用可能性】
【0120】

本発明は、生体特徴盗撮防止に利用される。

【0121】

【表1】
JP2018066467A1_000003t.gif

【表2】
JP2018066467A1_000004t.gif

【表3】
JP2018066467A1_000005t.gif

【表4】
JP2018066467A1_000006t.gif

【表5】
JP2018066467A1_000007t.gif

【表6】
JP2018066467A1_000008t.gif

【表7】
JP2018066467A1_000009t.gif



【符号の説明】
【0122】

1 生体特徴盗撮防止装着具(指紋盗撮防止装着具)

2 生体(皮膚)

3 生体特徴(指紋)

4 ベース部(ベース層)

5 攪乱部

10A 静電容量方式の指紋センサー

10B 光学方式の指紋センサー

11 接触面

12 プリズム

13 指紋の隆線

14 指紋の谷線

15 光源

16 イメージセンサー

17 静電容量方式の指紋センサーのパッシベーション膜

21 塗布材料(絵の具)

22,22A,22D 転写板(ステンシル)

22A スタンパ

22C 指サック

23 シリコ-ンゴムのシート

24 指

25 ベース層材料

30 スタンプ台

31 使用後テープ巻取リール

32 使用前テープ巻取リール

33 インク台

34 転写テープ

35A~35D 箱

36 蓋

37 ローラー

38 パッケージ

39 転写シート

40 巻き取りダイヤル

41 保護シート

42 剥離シート

43 転写シール

44 持ち運びケース
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
11
(In Japanese)【図13】
12
(In Japanese)【図14】
13
(In Japanese)【図15】
14
(In Japanese)【図16】
15
(In Japanese)【図17】
16
(In Japanese)【図18】
17
(In Japanese)【図19】
18
(In Japanese)【図20】
19
(In Japanese)【図21】
20
(In Japanese)【図22】
21
(In Japanese)【図23】
22
(In Japanese)【図24】
23
(In Japanese)【図25】
24
(In Japanese)【図26】
25
(In Japanese)【図27】
26
(In Japanese)【図28】
27
(In Japanese)【図29A】
28
(In Japanese)【図29B】
29
(In Japanese)【図30】
30
(In Japanese)【図31】
31
(In Japanese)【図32】
32
(In Japanese)【図33】
33
(In Japanese)【図34】
34
(In Japanese)【図35】
35
(In Japanese)【図36】
36
(In Japanese)【図37】
37
(In Japanese)【図38】
38
(In Japanese)【図39】
39
(In Japanese)【図40】
40
(In Japanese)【図41】
41