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明細書 :糖誘導体またはその塩、それらを用いた抗菌剤または抗菌活性増強剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年6月24日(2019.6.24)
発明の名称または考案の名称 糖誘導体またはその塩、それらを用いた抗菌剤または抗菌活性増強剤
国際特許分類 C08B  30/18        (2006.01)
A61K  31/715       (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
FI C08B 30/18
A61K 31/715
A61P 31/04
国際予備審査の請求
全頁数 29
出願番号 特願2018-539674 (P2018-539674)
国際出願番号 PCT/JP2017/032426
国際公開番号 WO2018/051903
国際出願日 平成29年9月8日(2017.9.8)
国際公開日 平成30年3月22日(2018.3.22)
優先権出願番号 2016178594
優先日 平成28年9月13日(2016.9.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】山村 初雄
【氏名】宮川 淳
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査請求
テーマコード 4C086
4C090
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C090AA02
4C090AA09
4C090BB02
4C090BB04
4C090BB12
4C090BB36
4C090BB53
4C090BB62
4C090DA23
要約 【課題】抗菌性に優れた化合物を提供するとともに、他の抗菌剤の抗菌性を増強することに優れた化合物を提供する。
【解決手段】下記の(1)または(2)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用のある糖誘導体又はその塩。ここで、Rはアミノ基を含む構造を示す。nは3以上の整数を示す。また、下記の(5)または(6)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌活性増強作用のある糖誘導体又はその塩。ここで、Rはアミノ基を含む構造を示す。Rはアセチル基又はプロパノイル基である。nは3以上の整数を示す。
【化1】
JP2018051903A1_000027t.gif
【化3】
JP2018051903A1_000028t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の(1)または(2)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用のある糖誘導体又はその塩。
ここで、Rはアミノ基を含む構造を示す。単糖の一級水酸基には、Rを結合したトリアゾールが置換している。プロパノイル基は、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【化1】
JP2018051903A1_000023t.gif

【請求項2】
下記の(3)または(4)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用のある糖誘導体又はその塩。
ここで、Rはアルキレン基を示す。単糖の一級水酸基とは、RNHを結合したトリアゾールが置換している。プロパノイル基は、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【化2】
JP2018051903A1_000024t.gif

【請求項3】
前記化学式(3)または(4)中のRがメチレン基であることを特徴とする請求項2に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項4】
前記化学式中の単糖がグルコースであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項5】
前記化学式中の単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩を有効成分として含有する抗菌剤。
【請求項7】
下記の(5)または(6)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌活性増強作用のある糖誘導体又はその塩。
ここで、Rはアミノ基を含む構造を示す。単糖の一級水酸基とは、Rを結合したトリアゾールが置換している。Rはアセチル基又はプロパノイル基であり、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【化3】
JP2018051903A1_000025t.gif

【請求項8】
下記の(7)または(8)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用または抗菌活性増強作用のある請求項7に記載の糖誘導体又はその塩。
ここで、Rはアルキレン基を示す。単糖の一級水酸基とは、RNHを結合したトリアゾールが置換している。Rはアセチル基又はプロパノイル基であり、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【化4】
JP2018051903A1_000026t.gif

【請求項9】
前記化学式(7)または(8)中のRがメチレン基であることであることを特徴とする請求項8に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項10】
前記化学式中の単糖がグルコースであることを特徴とする発明7乃至9のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項11】
前記化学式中の単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩を有効成分として含有する抗菌活性増強剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、糖誘導体またはその塩、それを用いた抗菌剤または抗菌活性増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ペニシリンの発見以来、様々な抗生物質や合成抗菌薬が開発され、感染症治療のために使用されてきた。しかし、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に代表される既存の抗菌薬に対して耐性を持つ多剤耐性菌が深刻なまでに増加し、新たな抗菌薬の発展が渇望されている。
【0003】
一般に薬剤耐性が起こりにくい抗菌物質として、ポリミキシンBなどの膜作動型機構により抗菌性を示す物質が存在する。しかし、これらは複雑な構造を有する天然物であり、人工的な製造、さらには優れた活性を持つように改良することは容易ではない。このため、人工的な抗菌性物質を合成することも行われており、特異な化学構造を有するシクロデキストリンを化学修飾して抗菌剤として用いることが行われている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開2006/075580号(特許5098015号公報)
【特許文献2】国際公開2006/083678号
【特許文献3】特開2013-177477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬剤耐性などの細菌の変化に対応するためには、上記した従来技術よりも優れた抗菌性や抗菌活性増強性が望まれる。本発明は、この実情に鑑みてなされたものであって、従来技術(例えば、特許文献3に記載の化合物)よりも抗菌性に優れ、他の抗菌剤の抗菌性を増強することに優れた化合物を化学式で特定し、その化合物を用いた抗菌剤及び他の抗菌剤の活性を増強する物質を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1は、下記の(1)または(2)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用のある糖誘導体又はその塩である。
【0007】
ここで、Rはアミノ基を含む構造を示す。単糖の一級水酸基には、Rを結合したトリアゾールが置換している。プロパノイル基は、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【0008】
【化1】
JP2018051903A1_000003t.gif

【0009】
発明2は、下記の(3)または(4)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用のある糖誘導体又はその塩である。ここで、Rはアルキレン基を示す。単糖の一級水酸基とは、RNHを結合したトリアゾールが置換している。プロパノイル基は、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【0010】
【化2】
JP2018051903A1_000004t.gif

【0011】
発明3は、化学式(3)または(4)中のRがメチレン基であることを特徴とする発明2に記載の糖誘導体又はその塩である。
【0012】
発明4は、化学式中の単糖がグルコースであることを特徴とする発明1乃至3のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩である。
【0013】
発明5は、化学式中の単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする発明1乃至3のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩である。
【0014】
発明6は、発明1乃至5のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩を有効成分として含有する抗菌剤である。
【0015】
発明7は、下記の(5)または(6)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌活性増強作用のある糖誘導体又はその塩である。ここで、Rはアミノ基を含む構造を示す。単糖の一級水酸基とは、Rを結合したトリアゾールが置換している。このアミノ基を含む構造は例えばアミノアルキル基である。Rはアセチル基又はプロパノイル基であり、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【0016】
【化3】
JP2018051903A1_000005t.gif

【0017】
発明8は、下記の(7)または(8)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用または抗菌活性増強作用のある糖誘導体又はその塩である。ここで、Rはアルキレン基を示す。単糖の一級水酸基とは、RNHを結合したトリアゾールが置換している。Rはアセチル基又はプロパノイル基であり、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。
【0018】
【化4】
JP2018051903A1_000006t.gif

【0019】
発明9は、化学式(7)または(8)中のRがメチレン基であることであることを特徴とする発明8に記載の糖誘導体又はその塩である。
【0020】
発明10は、化学式中の単糖がグルコースであることを特徴とする発明7乃至9のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩である。
【0021】
発明11は、化学式中の単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする発明7乃至9のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩である。
【0022】
発明12は、発明7乃至11のいずれか1つに記載の糖誘導体又はその塩を有効成分として含有する抗菌活性増強剤である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、従来技術よりも抗菌剤及び他の抗菌剤の活性を増強する物質としての性能に優れた化合物を化学式で特定し、その化合物を用いた抗菌剤及び他の抗菌剤の活性を増強する抗菌活性増強剤を提供できる。
【0024】
発明1によれば、一級水酸基に、アミノ基を含む構造を結合したトリアゾール環が置換し、および二級水酸基上の置換基がプロパノイル基である単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した糖誘導体又はその塩を、抗菌作用のある糖誘導体またはその塩として、(1)または(2)の化学式で提供する効果がある。
【0025】
発明2によれば、一級水酸基と、アミノアルキル基を結合したトリアゾール環が置換し、および二級水酸基上の置換基がプロパノイル基である単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した糖誘導体又はその塩を、抗菌作用のある糖誘導体またはその塩として、(3)または(4)の化学式で提供する効果がある。
【0026】
発明3によれば、アミノアルキル基がアミノメチル基であることを特徴とする発明2に記載の糖誘導体又はその塩を、抗菌作用のある糖誘導体またはその塩として化学式で提供する効果がある。
【0027】
発明4によれば、単糖がグルコースであることを特徴とする発明1乃至3のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩を、抗菌作用のある糖誘導体またはその塩として化学式で提供する効果がある。
【0028】
発明5によれば、単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする発明1乃至4のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩を、抗菌作用のある糖誘導体またはその塩として化学式で提供する効果がある。
【0029】
発明6によれば、発明1乃至5のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩である抗菌作用に優れた化合物を有効成分として含有する抗菌剤を提供できる効果がある。
【0030】
発明7によれば、一級水酸基と、アミノ基を含む構造を結合したトリアゾール環が置換し、および二級水酸基上のRがアセチル基又はプロパノイル基である単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した糖誘導体又はその塩を、抗菌活性増強作用のある糖誘導体またはその塩として、(5)または(6)の化学式で提供する効果がある。
【0031】
発明8によれば、一級水酸基と、アミノアルキル基を結合したトリアゾール環が置換し、および二級水酸基上のRがアセチル基又はプロパノイル基である単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した糖誘導体又はその塩を、抗菌作用または抗菌活性増強作用のある糖誘導体またはその塩として、(7)または(8)の化学式で提供する効果がある。
【0032】
発明9によれば、アミノアルキル基がアミノメチル基であることを特徴とする発明8に記載の糖誘導体又はその塩を、抗菌活性増強作用のある糖誘導体またはその塩として化学式で提供する効果がある。
【0033】
発明10によれば、単糖がグルコースであることを特徴とする発明7乃至9のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩を、抗菌活性増強作用のある糖誘導体またはその塩として化学式で提供する効果がある。
【0034】
発明11によれば、単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする発明7乃至9のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩を、抗菌活性増強作用のある糖誘導体またはその塩として化学式で提供する効果がある。
【0035】
発明12によれば、発明7乃至11のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩である抗菌活性増強作用に優れた化合物を有効成分として含有する抗菌活性増強剤を提供できる効果がある。
【0036】
上記により本発明は従来技術よりも優れた抗菌性、抗菌活性増強作用のある糖誘導体を提供することで課題を解決できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0038】
まず本発明者は、以下に示すシクロデキストリンの化学構造に着目し、これが新たな抗菌物質に利用できるのではないかと発想し、次のような分子設計を考えた。

【0039】
シクロデキストリンは単糖であるグルコースが環状に連なった約1ナノメータの直径を持つ環状糖質である。グルコースの数が8個のものは、γシクロデキストリンと呼ばれている(化学式(9)参照)。シクロデキストリンのグルコースの6位に存在する第一級水酸基は環状構造の一方の開口部に、2位と3位に存在する第二級水酸基は他方の開口部に配向している。また、上記それぞれの水酸基は反応性に違いがあり、選択的に化学修飾をすることが可能である。

【0040】
【化5】
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【0041】
化学式(9)に示す環状糖質であるシクロデキストリンには、それを構成するグルコースの数が異なる類縁体があり、グルコースの数が5個以上のものが知られている。また、グルコースは2つ以上が鎖状に連なり、オリゴ糖~多糖を形成する。これにはアミロースに代表されるグルカンが含まれる。さらに、グルコースの異性体である単糖が連なった多糖があり、マンノースを繰り返し構造とするマンナンなどがある。これらもまた同様に、その繰り返し構造である単糖の上に反応性の異なる水酸基を持つため、選択的に化学修飾をすることが可能である。

【0042】
細菌に抗菌性を示すペプチドであるポリミキシンBの構造を化学式(10)に示す。これは天然に存在する環状ペプチドである。ポリミキシンBは細菌の膜構造を傷害して抗菌性を示す。それを可能にする要因である構造的な特徴として、陽イオン性アミノ基を持つアミノ酸を複数個有することが挙げられる。

【0043】
【化6】
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【0044】
そこで、本発明者は細菌への抗菌性を実現するべく、シクロデキストリン上に陽イオン性アミノ基を持つアミノ酸を複数個集積させることを考えた。

【0045】
アミノ酸の集積については、シクロデキストリン上に導入したアジド基を利用してクリックケミストリーで導入する方法を検討した。クリックケミストリーとは、以下のような特徴を有する反応のことである。
(1)汎用性が高い
(2)高効率、高収率
(3)副生成物を生じない
(4)立体特異的である
(5)精製が容易である
(6)出発物質と試薬が手に入れやすい。

【0046】
クリックケミストリーとして最も一般的なものとされているのがHuisgen反応である(下記の化学反応式参照)。この反応は、アジドと末端アルキンがトリアゾール環を形成する反応である。銅を触媒にすることで1,4-二置換体が選択的に形成し、かつ反応は大幅に加速する。また、アジドとアルキンは互いの間でのみ穏やかに反応し、そして標準的な反応条件でよく用いられる求核剤、求電子剤および溶媒に対して安定である。生成するトリアゾール環も安定な官能基である。このような特徴からHuisgen反応は広い分野で利用されている。

【0047】
【化7】
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【0048】
発明者らは、Huisgen反応を利用してアミノ基を含む構造を導入し、かつ特定のアシル基をシクロデキストリンに導入した化合物を合成した。発明者らは、この合成した化合物が抗菌剤および/または他の抗菌剤の活性を増強する物質として既知の化合物に比べて著しく優れて機能することを見出し、本発明を完成するに至った。

【0049】
[発明1~12の実施形態]
発明1は(1)または(2)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した、抗菌作用のある糖誘導体又はその塩である。ここで、Rはアミノ基を含む構造である。単糖の一級水酸基とは、Rを結合したトリアゾール環が置換している。このアミノ基を含む構造(R)は、例えばアミノ基を末端に含むアミノアルキル基あるいはアミノ基を内部に含むアルキルアミノアルキル基である。プロパノイル基は、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。

【0050】
【化1】
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【0051】
また、発明2は(3)または(4)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用のある、糖誘導体又はその塩である。ここで、単糖の一級水酸基には、RNHを結合したトリアゾールが置換している。プロパノイル基は、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。発明2では、発明1におけるRを、RNH(Rはアルキレン基である)とすることで化学式をさらに特定している。

【0052】
【化2】
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【0053】
ここで、Rはメチレン基とすることが好ましい。これは発明3の糖誘導体又はその塩を示す。

【0054】
nは実際に存在するオリゴ糖又は多糖を構成する数とする。例えば、1000以下とすることができる。nは5~100とすることが好ましい。

【0055】
本発明の化合物としては、単糖がグルコース、マンノース、フルクトース、またはガラクトースに代表される炭素6個からなるヘキソースである糖誘導体又はその塩が挙げられる。

【0056】
また、本発明の化合物としては、単糖がグルコースである糖誘導体又はその塩が挙げられる。これは発明4の糖誘導体又はその塩を示す。

【0057】
また、単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖誘導体又はその塩が挙げられる。より具体的には、nが8であり、グルコースが環状に連結したオリゴ糖の誘導体又はその塩が挙げられる。これは発明5の糖誘導体又はその塩を示す。

【0058】
また、本発明の抗菌剤は、上記した糖誘導体又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする。ここで「有効成分として含有する」には、糖誘導体又はその塩が抗菌剤の構造全体を構成する場合に限らず、抗菌剤の構造の一部を構成する場合も含まれる。これは発明6の抗菌剤を示す。

【0059】
発明7は(5)または(6)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した、抗菌活性増強作用のある糖誘導体又はその塩である。ここで、Rはアミノ基を含む構造である。単糖の一級水酸基には、Rを結合したトリアゾール環が置換している。このアミノ基を含む構造(R)は、例えばアミノ基を末端に含むアミノアルキル基あるいはアミノ基を内部に含むアルキルアミノアルキル基である。Rがアセチル基又はプロパノイル基であり、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。

【0060】
【化3】
JP2018051903A1_000012t.gif

【0061】
また、発明8は(7)または(8)の化学式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した抗菌作用または抗菌活性増強作用のある糖誘導体又はその塩である。ここで、単糖の一級水酸基には、RNHを結合したトリアゾールが置換している。Rはアセチル基又はプロパノイル基であり、単糖の二級水酸基の水素原子と置換している。nは3以上の整数を示す。発明8では、発明7におけるRを、RNH(Rはアルキレン基である)とすることで化学式をさらに特定している。

【0062】
【化4】
JP2018051903A1_000013t.gif

【0063】
ここで、Rはメチレン基とすることが好ましい。これは発明9の糖誘導体又はその塩を示す。

【0064】
nは実際に存在するオリゴ糖又は多糖を構成する数とする。例えば、1000以下とすることができる。nは5~100とすることが好ましい。

【0065】
本発明の化合物としては、単糖がグルコース、マンノース、フルクトース、またはガラクトースに代表される炭素6個からなるヘキソースである糖誘導体又はその塩が挙げられる。

【0066】
また、本発明の化合物としては、単糖がグルコースである糖誘導体又はその塩が挙げられる。これは発明10の糖誘導体又はその塩を示す。

【0067】
また、本発明の化合物としては、単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖誘導体又はその塩が挙げられる。これは発明11の糖誘導体又はその塩を示す。より具体的には、nが8であり、グルコースが環状に連結したオリゴ糖の誘導体又はその塩が挙げられる。

【0068】
また、本発明の抗菌活性増強剤は、上記した糖誘導体又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする。ここで「有効成分として含有する」には、糖誘導体又はその塩が抗菌活性増強剤の構造全体を構成する場合に限らず、抗菌活性増強剤の構造の一部を構成する場合も含まれる。これは発明12の抗菌活性増強剤を示す。

【0069】
<分子設計>
本発明の抗菌物質を合成するにあたっては、以下のコンセプトにより分子設計を行った。

【0070】
ペプチドが細菌膜を傷害して細菌への抗菌性(すなわち、抗菌作用)を実現するためには、アミノ基を持つアミノ酸が複数個存在することが重要になる。そこで、シクロデキストリン上にアミノ基を集積させる。そのためにシクロデキストリンのグルコース部分にトリアゾール部を介してアミノ基を含む構造を連結することで、親水性でかつ陽イオン性部分を構成する。細菌膜を傷害する際には、この部分がまず細菌膜の陰イオン性リン酸部と結合することで細菌膜を傷害する。これに加えて疎水性部がある場合には細菌膜の脂肪鎖と相互作用する。しかし、陽イオン性部分と疎水性部のバランスがとれていなければ、抗菌性または抗菌活性増強性は現れない。それを可能にするのが疎水性部として二級水酸基の水素原子と置換したプロパノイル基である。このようにアミノ基を含む構造がトリアゾール部を介して導入され、かつ疎水性部を併せ持つグルコースを複数個含むことが、シクロデキストリン誘導体が抗菌物質として機能するために重要である。これが発明5の糖誘導体又はその塩とその作用である。そして同様にグルコースが鎖状に連なって形成されたオリゴ糖、さらには鎖状又は環状に連なって形成された多糖において、そのグルコース部に同様に構造を導入すれば抗菌性を現すと考えられる。これが発明4の糖誘導体又はその塩とその作用である。

【0071】
さらに、グルコースの異性体にはマンノースに代表される単糖ヘキソースがある。これらはグルコースと同じ数の炭素と水酸基を持ち、同様の親水性を持つ。そして、それが連なったオリゴ糖~多糖が存在し、代表としてマンナンがある。これらもまた、その繰り返し構造である単糖の上に同様にして構造を導入すれば抗菌性を現すと考えられる。これが発明1乃至3の糖誘導体又はその塩とその作用である。

【0072】
そして、上記のいずれか1項に記載のオリゴ糖~多糖の誘導体又はその塩を有効成分として含有するものは抗菌剤となる。これは発明6の抗菌剤を示す。ここで「有効成分として含有する」には、オリゴ糖~多糖の誘導体又はその塩が抗菌剤の構造全体を構成する場合に限らず、構造の一部を構成する場合も含まれる。

【0073】
一方で、疎水性部として二級水酸基の水素原子と置換したアセチル基またはプロパノイル基である場合、このようにアミノ基を含む構造がトリアゾール部を介して導入され、かつ疎水性部を併せ持つグルコースを複数個含むことが、シクロデキストリン誘導体が抗菌活性増強剤として機能するために重要である。これは、グルコースが環状に連なって形成されたオリゴ糖でも同様と考えられる。これが発明11の糖誘導体又はその塩とその作用である。そして同様にグルコースが鎖状に連なって形成されたオリゴ糖、さらには鎖状又は環状に連なって形成された多糖において、そのグルコース部に同様に構造を導入すれば抗菌活性増強剤を現すと考えられる。これが発明10の糖誘導体又はその塩とその作用である。

【0074】
さらに、グルコースの異性体にはマンノースに代表される単糖ヘキソースがある。これらはグルコースと同じ数の炭素と水酸基を持ち、同様の親水性を持つ。そして、それが連なったオリゴ糖~多糖が存在し、代表としてマンナンがある。これらもまた、その繰り返し構造である単糖の上に同様にして構造を導入すれば抗菌活性増強性を現すと考えられる。これが発明7乃至9の糖誘導体又はその塩とその作用である。

【0075】
そして、上記のいずれか1項に記載のオリゴ糖~多糖の誘導体又はその塩を有効成分として含有するものは抗菌活性増強剤となる。これは発明12の抗菌活性増強剤を示す。ここで「有効成分として含有する」には、オリゴ糖~多糖の誘導体又はその塩が抗菌剤および抗菌活性増強剤の構造全体を構成する場合に限らず、構造の一部を構成する場合も含まれる。
【実施例】
【0076】
実施例1にて化学式(11)に示す化合物(a)、すなわち、シクロデキストリン誘導体(a)を合成すると共に抗菌性と抗菌活性増強作用を実施例2から4で確認した。化合物(a)は、一般式(2)において、R=CHNH、n=8とした化合物に相当する。
【実施例】
【0077】
【化8】
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【実施例】
【0078】
(実施例1)
化学式(11)に示すシクロデキストリン誘導体(a)の合成法について詳細に記載する。オクタアジ化シクロデキストリン327.2 mg (2.19×10-4mol) をピリジン10.0 mlに溶解し、DMAP 85.2 mg (6.97×10-4mol)、無水プロピオン酸 計5.4 ml (4.2×10-2mol) を加え、攪拌した。47時間後、メタノールを加え、溶液を減圧留去し、酢酸エチル100 mlを加え、水、塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水を用いて洗浄した。溶媒を減圧留去し、順相シリカゲルカラム (ヘキサン/酢酸エチル) にて精製した。該当分画を回収し、溶媒を減圧留去し、プロパノエート362.5 mg (1.51×10-4mol、69.3%) を得た。このプロパノエートのアセトン溶液 2.0 ml (24.2 mg/ml、 2.02×10-5mol) に、CuSO・5HO水溶液 400 μl (10.3 mg/ml、1.64×10-5 mol) 、Boc-プロパルギルアミンのDMSO溶液 2.0 ml (15.7 mg/ml、 2.02×10-4mol) を加え、マイクロ波加熱 (100 ℃) 下で30分間攪拌した。反応溶液に酢酸エチル50 mlを加え、5% EDTA二ナトリウム二水和物水溶液を用いた洗浄し、和食塩水、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、順相シリカゲルカラム (塩化メチレン/メタノール ) にて精製した。該当分画を回収し、溶媒を減圧留去し、クリック反応生成物65.3 mg (1.80×10-5mol、89.0%) を得た。このクリック反応生成物42.1 mg (1.16×10-5mol) にトリフルオロ酢酸2.0 mlを加え、室温で3.5時間攪拌した。溶液を減圧留去して、凍結乾燥によりシクロデキストリン誘導体(a)38.4 mg (1.03×10-5mol、 8個のトリフルオロ酢酸塩として88.5%) を得た。これは発明1乃至6記載の糖誘導体の塩が製造できることを示す。
【実施例】
【0079】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ=1.03(42H, OCOCH2CH3), 2.38-2.16(28H, OCOCH2CH3), 3.61(7H, H-4), 4.06-3.99(14H, CH2NH3+),4.39(7H, H-5), 4.72-4.65(21H, H-2, 6), 5.35-5.29(14H, H-1, 3), 8.11(7H, CH-triazole), 8.39(21H, CH2NH3+),
13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): δ=173.18-172.63(C=O), 140.32(CH-triazole), 126.19(C-triazole), 96.00(C-1), 76.21(C-4), 69.63(C-2,3,5), 49.52(C-6), 33.88(CH2NH3+), 26.64(CH2CH3), 8.69-8.56(CH2CH3)
MS: [M+Na]+ Calcd. for C120H176N32NaO48: 2856.2212, Found: 2856.5737
Anal: Calcd For C120H176N32O48+ 16H2O+8CF3COOH: C 40.48, H 5.40, N 11.11. Found: C 40.63, H 5.30, N 10.84
【実施例】
【0080】
(実施例2)
上記のようにして合成した実施例1のシクロデキストリン誘導体(a)の抗菌性を最小発育阻止濃度で評価した。評価にはグラム陽性菌として枯草菌、グラム陰性菌として大腸菌を使用した。また、グラム陽性菌として黄色ブドウ球菌、グラム陰性菌としてネズミチフス菌、緑膿菌も使用した。
【実施例】
【0081】
評価方法は以下の通りである。すなわち、細菌は一般細菌用乾燥ブイヨンあるいはポリペプトンを加えた最小塩培地で培養し、対数増殖期の状態のものを使用し、37℃で20時間、培養することにより、試験化合物がその細菌の生育を阻止した最小濃度とした。なお初期の菌濃度は1x10 細胞/mLとした。求めた最小発育阻止濃度(MIC)を表1に示す。
【実施例】
【0082】
【表1】
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【実施例】
【0083】
上記表1に示すように、実施例1の化合物(a)は強力な抗菌性を示した。化学式(12)に示す化合物(b)および化学式(13)に示す化合物(c)を比較対象とした。化合物(b)、(c)は、抗菌性を有する化合物として特許文献3に記載されている。化合物(b)は、一般式(2)において、R=CHNH、n=8とし、プロパノイル基をアセチル基に置き換えた化合物に相当する。化合物(c)は、一般式(2)において、R=CHNH、n=8とし、プロパノイル基をブタノイル基に置き換えた化合物に相当する。
【実施例】
【0084】
ここで、化合物(a)と化合物(b)を、同一条件下で最小発育阻止濃度を測定した結果、表1に示すように化合物(a)の大腸菌に対する最小発育阻止濃度は16μg/mLであり、一方、化合物(b)のそれは>256μg/mLであった。化合物(a)の抗菌性は化合物(b)、(c)のそれに比べて著しく優れていることが示された。さらに、他の細菌に対しても化合物(a)の最小発育阻止濃度は化合物(b)、(c)のそれよりも顕著に小さい。特に、枯草菌、緑膿菌に対する最小発育阻止濃度は一般に強力な抗菌性ありとされる10μg/mL以下であることは特筆に価する。総じて、化合物(a)が抗菌剤として化合物(b)、(c)に比べて著しく進歩していることを示している。
【実施例】
【0085】
【化9】
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【実施例】
【0086】
(実施例3)
別に、化合物(b)について他の抗菌物質の活性増強作用について検討した。化合物(b)による他の抗菌物質の活性増強作用についての試験結果を表2に示す。化合物(b)は、化学式(6)において、Rがアミノメチル基であり、Rがアセチル基であり、nが8である化合物に相当する。なお、特許文献3には、化合物(b)の活性増強作用については記載されていない。
【実施例】
【0087】
既存の抗菌物質の中には、細菌膜が物理的障壁となり、本来の抗菌性を発揮できないものが存在する。この場合、その物質の細菌の発育を阻止するために必要な最小濃度(最小発育阻止濃度(MIC))は大きな値となり、抗菌活性はないと見なされる。特に、細胞質膜に加えて外膜を擁するグラム陰性菌については、これによる薬剤耐性が顕著である。それゆえ細菌膜を傷害して物理的障壁を排除できる膜傷害性物質と抗菌物質とを併用すれば抗菌性がより増強される、さらには抗菌性がなかったものが有効になる、と合理的に推定できる。この場合、最小発育阻止濃度(MIC)は単独で使用した場合より減少して小さな値となる。ここではグラム陰性菌について効果が弱いと一般的にされるノボビオシンまたはエリスロマイシンを、他の抗菌物質として用いた。
【実施例】
【0088】
細菌として大腸菌と緑膿菌を用いて試験を行った。大腸菌に対するノボビオシンの単独での最小発育阻止濃度は128μg/mLであり、緑膿菌に対するそれは2046μg/mLである。またシクロデキストリン誘導体(b)の大腸菌に対する最小発育阻止濃度は表1に示すように>256μg/mLであり、本試験でのシクロデキストリン誘導体(b)併用濃度では抗菌性を示さない。この条件下での試験において、シクロデキストリン誘導体(b)併用投与下でのノボビオシンの最小発育阻止濃度は著しく減少し、ノボビオシンは顕著な抗菌活性を示した。シクロデキストリン誘導体(b)は大腸菌に対しては128倍(128/1)、一般に抗菌剤に耐性を示す緑膿菌に対しても、16倍(2048/128)の強力な抗菌性をノボビオシンに現せしめた。さらにエリスロマイシンの最小発育阻止濃度も著しく減少させ、シクロデキストリン誘導体(b)は顕著な抗菌活性増強作用を示した。
【実施例】
【0089】
すなわち、大腸菌において、シクロデキストリン誘導体(b)の併用濃度が0μg/mLの場合、ノボビオシンの最小発育阻止濃度(MIC)は、128μg/mL、エリスロマイシンの最小発育阻止濃度(MIC)は、64μg/mLである。一方、シクロデキストリン誘導体(b)の併用濃度が32μg/mLの場合、ノボビオシンの最小発育阻止濃度(MIC)は、1μg/mL、エリスロマイシンの最小発育阻止濃度(MIC)は、1μg/mLとなる。
【実施例】
【0090】
【表2】
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【実施例】
【0091】
(実施例4)
次に、化学式(11)に示す化合物(a)の抗菌活性増強作用について実施例3と同様に試験を行った。その試験結果を表3に示す。シクロデキストリン誘導体(a)の大腸菌に対する最小発育阻止濃度は表1に示すように16μg/mLであり、表3に示す本試験でのシクロデキストリン誘導体(a)の併用濃度では抗菌性を示さない。この条件下での試験において、シクロデキストリン誘導体(a)併用投与下でのノボビオシンまたはエリスロマイシンの最小発育阻止濃度は著しく減少し、化合物(a)は顕著な抗菌活性増強作用を示した。
【実施例】
【0092】
一方、比較として試験したシクロデキストリン誘導体(c)は32μg/mL併用してもノボビオシンの発育阻止濃度は128μg/mLのままであり、抗菌活性増強は見られなかった。これは、アミノ基を含む構造を導入しても、それと疎水性部のバランスがとれていなければ抗菌活性増強性は現れないことを示し、疎水性部として二級水酸基の水素原子と置換したアセチル基またはプロパノイル基が抗菌活性増強性を可能にした結果である。これは、発明12記載の抗菌活性増強剤としての作用を示す。
【実施例】
【0093】
【表3】
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【実施例】
【0094】
(実施例5)
その他として、化学式(14)に示す化合物(d)と、化学式(15)に示す化合物(e)を合成した。化合物(d)は、一般式(2)において、R=CHNH、n=7とした化合物に相当する。化合物(e)は、一般式(2)において、R=CHNH、n=6とした化合物に相当する。化合物(d)、(e)の合成では、化学式(11)に示す化合物(a)の合成に使用したオクタアジ化シクロデキストリンに換えて、ヘプタアジ化シクロデキストリン、ヘキサアジ化シクロデキストリンをそれぞれ用いた。そして、化合物(d)、(e)の抗菌性を、実施例3に記載の方法と同様に、最小発育阻止濃度で評価した。最小発育阻止濃度の測定結果を表4に示す。
【実施例】
【0095】
【化10】
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【実施例】
【0096】
【表4】
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【実施例】
【0097】
上記表4に示すように、化合物(d)、(e)は、強力な抗菌性を示した。したがって、化合物(a)、(d)、(e)のいずれも、グラム陽性菌、グラム陰性菌に対しても強い抗菌性を有する。
【実施例】
【0098】
(実施例6)
さらに、化学式(16)に示す化合物(f)を合成した。化合物(f)は、一般式(2)において、R=CHNH、n=7とし、プロパノイル基をアセチル基に置き換えた化合物に相当する。また、化合物(f)は、一般式(6)において、R=CHNH、R=アセチル基、n=7とした化合物に相当する。化合物(f)の合成では、化学式(11)に示す化合物(a)の合成に使用したオクタアジ化シクロデキストリンに換えてヘプタアジ化シクロデキストリンを用い、無水プロピオン酸に換えて無水酢酸を用いた。そして、化合物(f)の他の抗菌物質の活性増強作用について、実施例4に記載の方法と同様に評価した。化合物(f)による他の抗菌物質の抗菌活性増強作用についての試験結果を表5に示す。
【実施例】
【0099】
【化11】
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【実施例】
【0100】
【表5】
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【実施例】
【0101】
上記表5に示すように、化合物(f)、すなわち、シクロデキストリン誘導体(f)併用投与下でのノボビオシンまたはエリスロマイシンの最小発育阻止濃度は著しく減少した。このように、化合物(f)は顕著な抗菌活性増強作用を示した。したがって、化合物(b)、(f)のいずれも、強い抗菌活性増強剤としての作用を有する。
【実施例】
【0102】
以上の結果から、シクロデキストリンにアミノ基をクリック反応で導入し、二級水酸基上にプロパノイル基を導入した化合物は、抗菌性を発現する上で有効であることが分かった。また、ここで示された抗菌性はその分子設計から膜傷害機構に起因するものと合理的に推定され、シクロデキストリンを利用して抗菌性を発現する物質を構築する前述の分子設計の有効性を実証している。
【実施例】
【0103】
そして、ここでは、シクロデキストリンのグルコース部分にトリアゾール部を介してアミノ基を含む構造を連結し、あわせてプロパノイル基を導入することで細菌への抗菌性を発現させた。これはグルコースの性質を利用して抗菌物質ができることを示している。それゆえに、シクロデキストリンと同様にグルコースからなるオリゴ糖~多糖に構造を導入することで抗菌物質ができると考えられる。さらに、グルコースの異性体で同様の性質を持つ単糖からなるオリゴ糖~多糖、そして環状に連結した糖のみならず鎖状に連結した糖、からも抗菌物質ができることを合理的に推論できる。
【実施例】
【0104】
なお、ここでは、アミノ基を含む構造としてアミノメチル基を用いた。上述の通り、シクロデキストリンにアミノ基を導入し、二級水酸基上にプロパノイル基を導入することで抗菌性が発現した。このため、アミノ基を含む構造がアミノメチル基以外の構造であっても、抗菌物質が得られることは合理的に推論できる。
【実施例】
【0105】
シクロデキストリンにアミノ基をクリック反応で導入し、二級水酸基上にアセチル基、プロパノイル基を導入した化合物については抗菌活性増強作用を発現する上で有効である。その性能はその分子設計から膜傷害機構に起因するものと合理的に推定され、シクロデキストリンを利用して抗菌活性増強作用を発現する物質を構築する前述の分子設計の有効性を実証している。また、これはシクロデキストリンと同様にグルコースからなるオリゴ糖~多糖に構造を導入することで抗菌活性増強作用物質ができると考えられる。さらに、グルコースの異性体で同様の性質を持つ単糖からなるオリゴ糖~多糖、さらに環状に連結した糖のみならず鎖状に連結した糖からも抗菌活性増強作用物質ができることを合理的に推論できる。
【実施例】
【0106】
なお、ここでは、アミノ基を含む構造としてアミノメチル基を用いた。上述の通り、シクロデキストリンにアミノ基をクリック反応で導入し、二級水酸基上にアセチル基、プロパノイル基を導入することで、抗菌活性増強作用が発現したと考えられる。このため、アミノ基を含む構造がアミノメチル基以外の構造であっても、抗菌活性増強作用物質が得られることは合理的に推論できる。
【実施例】
【0107】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の糖誘導体又はその塩は抗菌剤や抗菌活性増強剤として利用可能である。