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明細書 :AIE活性化合物を包含する蛍光性微粒子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年7月4日(2019.7.4)
発明の名称または考案の名称 AIE活性化合物を包含する蛍光性微粒子
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
FI C09K 11/06 660
C09K 11/06 690
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2018-540345 (P2018-540345)
国際出願番号 PCT/JP2017/034621
国際公開番号 WO2018/056454
国際出願日 平成29年9月26日(2017.9.26)
国際公開日 平成30年3月29日(2018.3.29)
優先権出願番号 2016186496
優先日 平成28年9月26日(2016.9.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】幡野 健
【氏名】松下 隆彦
【氏名】藤川 大輔
【氏名】松岡 浩司
出願人 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100137512、【弁理士】、【氏名又は名称】奥原 康司
【識別番号】100178571、【弁理士】、【氏名又は名称】関本 澄人
審査請求 未請求
要約 本発明は、濃度消光を引き起こさず、生態毒性の低い蛍光性微粒子の提供を目的とする。具体的には、本発明は、網状ポリマーからなる粒子であって、AIE活性化合物を包含する蛍光性微粒子であり、AIE活性化合物が、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする蛍光性微粒子である。
JP2018056454A1_000016t.gif
(式(1)中、Eはケイ素またはゲルマニウム、RおよびRは同一もしくは相異なる炭素数1~6の炭化水素基、または置換もしくは無置換のフェニル基、R、R、RおよびRは同一もしくは相異なる、置換もしくは無置換のフェニル基である)
特許請求の範囲 【請求項1】
網状ポリマーからなる粒子であって、AIE活性化合物を包含する蛍光性微粒子。
【請求項2】
前記AIE活性化合物が下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光性微粒子。
【化1】
JP2018056454A1_000012t.gif
(式(1)中、Eはケイ素またはゲルマニウム、RおよびRは同一もしくは相異なる炭素数1~6の炭化水素基、または置換もしくは無置換のフェニル基、R、R、RおよびRは同一もしくは相異なる、置換もしくは無置換のフェニル基である)
【請求項3】
前記Rおよび/またはRが、フェニル基または炭素数1~6の炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光性微粒子。
【請求項4】
前記R、R、Rおよび/またはRが、p-((CHN)C、p-CHOC、p-CH、C、p-FCC、p-(NO)C、m-CH、m-FC、m-FCC、1-ナフチル、2-スチリル、ビフェニル、2-チエニル、ビチエニル、5-(2-ベンゾ[b]チエニル)2-チエニル、2-チアゾール、2-ピリジル、3-ピリジル、N-メチル-2-ピロリル、2,4,6-トリメチルフェニル(Mes)または2,4,6-トリイソプロピルフェニル(Tip)のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の蛍光性微粒子。
【請求項5】
前記網状ポリマーが、ビニル系ポリマーがジエンで架橋されたものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の蛍光性微粒子。
【請求項6】
前記ビニル系ポリマーが、置換もしくは無置換のスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン、プロピレン、イソブテン、N-ビニルカルバゾール、メチルビニルケトン、ビニルピリジン、ニトロエチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ビニルエーテルおよびアルケニル基を有するAIE活性化合物からなるグループから選択される1または複数をモノマーとして合成されるものであることを特徴とする請求項5に記載の蛍光性微粒子。
【請求項7】
前記ジエンが、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼンからなるグループから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項5または6に記載の蛍光性微粒子。
【請求項8】
前記網状ポリマーが、下記の一般式(3)で表されるポリマーがジエンで架橋されたものであることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の蛍光性微粒子。
【化2】
JP2018056454A1_000013t.gif
(式(3)中、Xは水素または炭素数1~6の炭化水素基であり、Yは水素、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアシル基または炭素数1~6のカルボキシレート基であり、nおよびmは整数を表し、n:m=1:0.2~2の割合である)
【請求項9】
前記ビニル基を有するAIE活性化合物が、下記の式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項6または7に記載の蛍光性微粒子。
【化3】
JP2018056454A1_000014t.gif
(式(2)中、Eはケイ素またはゲルマニウム、R、R、RおよびRは同一もしくは相異なる、置換もしくは無置換のフェニル基、RおよびRは同一もしくは相異なる炭素数1~6の炭化水素鎖、またはアリール基であり、RおよびR10は同一または相異なる水素、または炭素数1~6のアルキル基である)
【請求項10】
前記網状ポリマーが、下記の一般式(4)で表されるポリマーがジエンで架橋されたものであることを特徴とする請求項9に記載の蛍光性微粒子。
【化4】
JP2018056454A1_000015t.gif
(式(4)中、Xは水素または炭素数1~6のアルキル基であり、Yは水素、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアシル基または炭素数1~6のカルボキシレート基であり、j、kおよびlは整数を表し、j:k:l=1:0.2~2:0.01~0.1の割合である)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、AIE活性化合物を包含する蛍光性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光性微粒子は、抗体などの標的認識物質に結合させることで、標的物質を蛍光標識することができる。例えば、がん細胞の表面に特異的に結合する分子を認識する抗体に蛍光性微粒子を結合させ、これをプローブとして検査サンプル中のがん細胞の有無を調べることで、がんへの罹患の有無を診断することができる。また、細胞もしくは組織または個体レベルでタンパク質などの生体分子の分布や局在を画像化するバイオイメージングにおいても、プローブの蛍光標識として利用されている。
なかでも、高分子樹脂に有機蛍光物質を封入した蛍光性微粒子は、色、サイズ、表面修飾の異なる製品がいくつか市販されており、生物、医学の研究の分野および診断などの臨床医学の分野においてその有用性が認められている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
既知の蛍光性微粒子に封入されている蛍光物質の多くは、π共役系が伸びた平面性の高い化合物であるが、このような化合物は、高濃度にすると発光強度が極端に低下する「濃度消光」を引き起こすことが知られている。そのため、高分子樹脂内に封入できる蛍光物質の量には限界があり、実際に発明者らは市販の製品において濃度消光が生じることを確認している。
標識するターゲットの量が少ない場合、そのターゲットを有効に検出するためには、できるだけ明るい蛍光性微粒子を用いることが好ましく、高分子樹脂内に封入されている単位あたりの蛍光物質の量がより多いものを用いる必要がある。しかし、分子樹脂内に封入できる従来の蛍光物質の量に限界があるため、従来の蛍光物質を用いる限り、製造できる蛍光性微粒子の明るさにも限界がある。
【0004】
蛍光性微粒子と同様の用途に使用されるものに量子ドットがあるが、量子ドットはカドミウム、セレンなどの毒性の高い元素を使用しているため、in vivoにおける使用には適していない。また、蛍光収率が~50 %とあまり高くないため、明るさの点においても問題がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】WO2007/097318
【特許文献2】特開2015-101543
【特許文献3】特開2010-112777
【特許文献4】特開2011-180018
【特許文献5】特開2016-158587
【0006】

【非特許文献1】Caoら, Polym. Chem. 7:5571-5578 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、濃度消光を引き起こさず、輝度が高く、生態毒性の低い蛍光性微粒子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、これまでに、AIE(凝集誘発発光、Aggregation-induced emission;AIEとは、中心の環の周りを囲むように複数のアリール基などが結合した分子が互いに凝集し合い、紫外線照射により高効率で蛍光を発する現象のことである)活性を有する物質を用いて、種々の細菌やウイルスを検出する方法を開発しており(特許文献3~5)、AIE現象に関して蓄積された知見に基づき、研究を進めたところ、高分子樹脂内部に封じ込める有機蛍光物質にAIE活性を有する物質を用いると濃度消光を起こさず、逆に高濃度添加により発光効率が極めて高い樹脂となることを見出した。
最近、AIE活性を有する分子(AIE分子)を重合性モノマーの1つとして利用し、高分子樹脂にAIE分子を共有結合させた蛍光性微粒子が報告された(非特許文献1)。一方、本発明の蛍光性微粒子は、AIE分子が高分子樹脂と共有結合せず、単に、高分子樹脂内に包含されている(取り込まれている)という点で、非特許文献1に開示される微粒子とは異なる。さらに、本発明の蛍光性微粒子は、AIE分子が高分子樹脂に拘束されていないため(共有結合していないため)、非特許文献1に開示される微粒子中のAIE分子より凝集しやすくなり、より高い輝度を達成できるという利点を有している。
発明者らは、AIE活性を有する物質としてシロールを用い、2.0 mol % のシロールを封入したポリスチレン微粒子を作製したところ、市販品相当の樹脂とその輝度を比較しても、明らかに明るく発光することを確認した。
すなわち、本発明は、網状ポリマーからなる粒子であって、AIE活性化合物(AIE活性を有する化合物)を包含する蛍光性微粒子(少なくともポリマーと共有結合していないAIE化合物を包含する)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蛍光性微粒子は、既存の同等の粒子径を持つ蛍光性微粒子と比較して、輝度および蛍光量子収率が高いという特性を有している。
【0010】
また、本発明の蛍光性微粒子は、高分子樹脂内に封入するAIE活性化合物の多くは生体毒性が低いため、in vivoにおけるバイオイメージングに使用することが可能である。
【0011】
本発明の蛍光性微粒子は、既存の蛍光性微粒子よりも明るいため、標識するターゲット(例えば、がん細胞など)の量が少ない場合であっても、有効に検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】1,1-ジメチル-2,3,4,5-テトラフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成スキーム。
【図2】1,1-ジメチル-2,3,4,5-テトラフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の蛍光写真。
【図3】1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成スキーム。
【図4】1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の蛍光写真。
【図5】1,1-ジメチル-2,5-ジアニシル-3,4-ジフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成スキーム。
【図6】1,1-ジメチル-2,5-ジアニシル-3,4-ジフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の蛍光写真。
【図7】1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成スキーム。なお、架橋剤としてジビニルベンゼンおよび1,1-ジアリル-2,3,4,5-テトラフェニルシロールを使用した。
【図8】1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の蛍光写真。なお、架橋剤としてジビニルベンゼンおよび1,1-ジアリル-2,3,4,5-テトラフェニルシロールを使用した。
【図9】1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の表面をポリアセトキシスチレンでコートするための合成スキーム。
【図10】1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包しヒドロキシ基で表面修飾したポリスチレン微粒子の蛍光写真。
【図11】ポリスチレン網状ポリマーに、π共役系が伸びた平面性の高い蛍光化合物であるクマリン6を包含させた場合(図中、クマリン6+PPS)、TPS(図中、TPS+PS)、HPS(図中、HPS+PS)およびAPS(図中、APS+PS)を包含させた場合、DATPSを網状ポリマーのモノマーとして取り込ませ、HPSをその網状ポリマーに包含させた場合(図中、HPS+(PS+DATPS))の輝度および蛍光粒子収率を比較した。PSは、ポリスチレンポリマーを表す。
【図12】クマリン6をポリスチレン網状ポリマーに包含させた微粒子(a1およびa2)と、1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロールをポリスチレン網状ポリマーに包含させた微粒子の蛍光写真。露光時間は、a1およびb1が1 sec、a2およびb2が200 msecである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態は、網状ポリマーからなる粒子であって、AIE活性化合物を包含する蛍光性微粒子(以下、「本発明の蛍光性微粒子」)である。
本発明の蛍光性微粒子に包含されるAIE活性化合物は特に限定されず、いかなる化合物であってもよく、例えば、特許文献3~5中に開示される化合物、特開2013-163767、特開2014-12654、特開2015-30820またはUS8134017B中に開示される化合物などを挙げることができる。
第1の実施形態において使用可能なAIE活性化合物のより具体的な例として、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【化1】
JP2018056454A1_000003t.gif
式(1)中、Eはケイ素またはゲルマニウムで、好ましくはケイ素である。
およびRは同一もしくは相異なる炭素数1~6の炭化水素基、または置換もしくは無置換のフェニル基であり、好ましくはメチル基または置換もしくは無置換のフェニル基である。
、R、RおよびRは同一もしくは相異なる、置換もしくは無置換のフェニル基であり、好ましくは、p-((CHN)C、p-CHOC、p-CH、C、p-FCC、p-(NO)C、m-CH、m-FC、m-FCC、1-ナフチル、2-スチリル、ビフェニル、2-チエニル、ビチエニル、5-(2-ベンゾ[b]チエニル)2-チエニル、2-チアゾール、2-ピリジル、3-ピリジル、N-メチル-2-ピロリル、2,4,6-トリメチルフェニル(Mes)または2,4,6-トリイソプロピルフェニル(Tip)のいずれかであり、特に好ましくは、フェニル基(C)またはp-メトキシフェニル基(p-CHOC)である。

【0014】
第1の実施形態にかかる網状ポリマー(以下、「本発明の網状ポリマー」とも記載する)とは、高分子が架橋されることで3次元的な網目構造を形成し、その構造中に蛍光分子などを包含する(取り込む)ことができる高分子化合物のことで、例えば、下記のスチレン系のポリマーを挙げることができる。
【化2】
JP2018056454A1_000004t.gif
本発明の微粒子の大きさは、特に限定されるものではなく、使用目的により自由に選択することが可能であるが、例えば、その粒子径は1nm~500μm、1nm~100μm、10nm~20μm、好ましくは10nm~500nm、より好ましくは10nm~200nm、さらにより好ましくは10nm~100nmである。

【0015】
本発明の網状ポリマーは、特に限定はされないが、例えば、ビニル系ポリマーがジエンによって架橋されたものを挙げることができる。上記ビニル系ポリマーは、例えば、置換または無置換のスチレン(例えば、スチレン、p-メトキシスチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレンなど)、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン、プロピレン、イソブテン、N-ビニルカルバゾール、メチルビニルケトン、ビニルピリジン、ニトロエチレン、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(n、i、t)ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2—ジメチルアミノエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルなど)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸(n、i、t)ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなど)、シアノアクリル酸エステル(2-シアノアクリル酸メチル、2-シアノアクリル酸エチル、3-シアノアクリル酸ブチルなど)またはビニルエーテルなどの中から選択される1または複数(2~3)の化合物をモノマーとして合成されるものを挙げることができる。
また、上記ビニル系ポリマーを架橋するジエンとしては、例えば、イソプレン、ブタジエンまたはジビニルベンゼンなどを挙げることができる。

【0016】
さらに、上記ビニル系ポリマーを構成するモノマーとして、アルケニル基を有するAIE活性化合物が選択されてもよい。この場合、AIE活性化合物は、網状ポリマーに包含されるだけでなく、網状ポリマーの表面にも含まれるため、さらに、明るい蛍光性微粒子を作製することが可能となる。このような、アルケニル基を有するAIE活性化合物としては、例えば、下記の一般式(2)で示すようなモノマーを使用することができる。
【化3】
JP2018056454A1_000005t.gif
式(2)中、Eはケイ素またはゲルマニウムで、好ましくはケイ素である。
、R、RおよびRは同一もしくは相異なる、置換もしくは無置換のフェニル基であり、好ましくは、p-((CHN)C、p-CHOC、p-CH、C、p-FCC、p-(NO)C、m-CH、m-FC、m-FCC、1-ナフチル、2-スチリル、ビフェニル、2-チエニル、ビチエニル、5-(2-ベンゾ[b]チエニル)2-チエニル、2-チアゾール、2-ピリジル、3-ピリジル、N-メチル-2-ピロリル、2,4,6-トリメチルフェニル(Mes)または2,4,6-トリイソプロピルフェニル(Tip)のいずれかであり、特に好ましくは、フェニル基(C)またはp-メトキシフェニル基(p-CHOC)である。
およびRは同一もしくは相異なる炭素数1~6の炭化水素鎖またはアリール基であり、好ましくはメチル鎖、エチル鎖またはベンゼン環である。
およびR10は同一または相異なる水素、または炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基またはプロピル基)であり、好ましくは水素である。

【0017】
第1の実施形態の網状ポリマーの具体例としては、例えば、以下の一般式(3)で表されるポリマーがジエン(例えば、ジビニルベンゼン)で架橋されたスチレン系のポリマーを挙げることができる。
【化4】
JP2018056454A1_000006t.gif
式(3)中、Xは水素または炭素数1~6の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基またはプロピル基など)などであり、好ましくは水素またはメチル基である。Yは水素、炭素数1~6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基またはエトキシ基)、炭素数1~6のアルキル基(例えば、アルキル基またはエチル基)、炭素数1~6のアシル基(例えば、ホルミル基、プロピオニル基またはブチリル基)または炭素数1~6のカルボキシレート基(例えば、アセトキシ基)などであり、好ましくは、水素、メトキシ基またはアセトキシ基である。また、Yがベンゼン環に結合する位置は特に限定はされず、パラ位、メタ位またはオルト位のいずれでもよい。
また、nおよびmは整数を表し、n:m=1:0.2~2の割合であり、好ましくはn:m=1:0.5である。

【0018】
また、網状ポリマーのモノマーとしてAIE活性化合物を使用した場合、網状ポリマーの具体例としては、例えば、以下の一般式(4)で表されるポリマーがジエン(例えば、ジビニルベンゼン)で架橋されたポリマーを挙げることができる。
【化5】
JP2018056454A1_000007t.gif
式(4)中、Xは水素または炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基または水素)などであり、好ましくは水素またはメチル基である。Yは水素、炭素数1~6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、炭素数1~6のアルキル基(例えば、アルキル基、エチル基)、炭素数1~6のアシル基(例えば、ホルミル基、プロピオニル基またはブチリル基)または炭素数1~6のカルボキシレート基(例えば、アセトキシ基)などであり、好ましくは、水素、メトキシ基またはアセトキシ基である。また、Yがベンゼン環に結合する位置は特に限定はされず、パラ位、メタ位またはオルト位のいずれでもよい。
また、j、kおよびlは整数を表し、j:k:l=1:0.2~2:0.01~0.1の割合であり、好ましくはj:k:l=1:0.5:0.02である。

【0019】
また、本発明の蛍光性微粒子は、抗体や特定の分子に対するリガンド分子(例えば、がんマーカーなどに特異的に結合する抗体またはリガンドなど)などに結合させ、蛍光標識として使用することもできる。この場合、抗体、タンパク質もしくは脂質などのリガンド分子などを本発明の蛍光性微粒子の表面(すなわち、網状のポリマー構造)に結合させるための足場となる、官能基、分子または原子など(例えば、水酸基、アミノ基、マレイミド基、ハロゲン、エステルまたはカルボキシル基など)を網状ポリマー構造の表面に出現させる処理を行ってもよい。

【0020】
AIE活性化合物の網状ポリマーからなる粒子への封入方法(包含または取り込ませる方法)は、特に限定されず、AIE活性化合物が、網状ポリマー構造から溶出しない方法であればいかなる方法であってもよく、例えば、網状ポリマーの合成過程において、AIE活性化合物を合成系内に共存させることで、網状ポリマーが合成されると同時に、その中へAIE活性化合物を取り込ませるような方法であってもよい。

【0021】
本発明の蛍光性微粒子の製造方法として、例えば、網状ポリマーがスチレン系ポリマーである場合を例にして、以下に説明する。
【化6】
JP2018056454A1_000008t.gif
式(5)で示されるスチレン誘導体(なお、Yは水素、炭素数1~6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基またはエトキシ基)、炭素数1~6のアルキル基(例えば、アルキル基またはエチル基)、炭素数1~6のアシル基(例えば、ホルミル基、プロピオニル基またはブチリル基)または炭素数1~6のカルボキシレート基(例えば、アセトキシ基)などであり、好ましくは、水素、メトキシ基またはアセトキシ基である。また、Yがベンゼン環に結合する位置は特に限定はされず、パラ位、メタ位またはオルト位のいずれでもよい。)と、架橋化合物としてジビニルベンゼンを混合し、極性溶媒中または非極性溶媒中で重合させる。例えば、式(3)のモノマーモル数をm、ジビニルベンゼンのモル数をnとした場合、m:n=1:0.2~2となる割合にて、例えば、極性溶媒中で混合する。
重合反応で使用する溶媒としては、例えば、水などの極性溶媒、トルエンなどの非極性溶媒などが好ましい。あるいは、モノマー自体を溶媒とした重合反応(ラジカル重合反応など)を行ってもよい。
重合反応は、当業者であれば容易に選択可能な条件で実施することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、ペルオキソ二硫酸カリウムまたはt-ブチルハイドロペルオキサイドの触媒(重合開始剤)を用いて、例えば、40℃~100℃の反応温度条件で、1時間から24時間程度反応させることで実施することができる。
調製される網状ポリマーの粒子径は、使用するモノマーと架橋化合物の混合割合、溶媒の種類によっても異なるが、だいたい、10 nm~200 μm程度の範囲内になる。

【0022】
また、AIE活性化合物を網状ポリマーに包含させるには、上述したように、網状ポリマーの合成過程において、AIE活性化合物を合成系内に共存させることで、網状ポリマー中へAIE活性化合物を取り込ませることができる。

【0023】
本明細書において引用されたすべての文献の開示内容は、全体として明細書に参照により組み込まれる。また、本明細書全体において、単数形の「a」、「an」、および「the」の単語が含まれる場合、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、単数のみならず複数のものを含むものとする。
以下に実施例を示してさらに本発明の説明を行うが、実施例は、あくまでも本発明の実施形態の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
1. 1,1-ジメチル-2,3,4,5-テトラフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成(架橋剤:ジビニルベンゼン)。
スチレン251 mg(2.41 mmol)とジビニルベンゼン120 mg(0.92 mmol)の混合液に、1,1-ジメチル-2,3,4,5-テトラフェニルシロール(TPS)26.2 mg(0.064 mmol)と純度75%の過酸化ベンゾイル10.2 mg(0.032 mmol)を溶解させた。
具体的には、アルゴン風船、アリーン冷却器、三方コック、セプタムを装着した二口ナスフラスコの系内をアルゴン置換し、濃度1 g/Lに調製したポリビニルアルコール水溶液20 mLを入れ撹拌しながら、先に調製したモノマーを滴下した(図1)。充分分散させてから系内を80 ℃に保ち3時間重合反応を行った。反応終了後、デカンテーションにより溶媒を取り除き、80 ℃の蒸留水での熱処理、メタノールでの洗浄を経て得られた微粒子を減圧乾燥させることで目的物を80.3 mg(収率22%)得た(図2)。
【実施例】
【0025】
なお、TPSは以下のスキーム1のように合成した。
【化7】
JP2018056454A1_000009t.gif
具体的には、アルゴン風船、セプタム、三方コックを装着した二口ナスフラスコをアルゴン置換し、ジフェニルアセチレン2.57 g(14.4 mmol)とリチウム0.200 g(28.8 mmol)とエーテル16 mLを加え、これに超音波を1.5時間照射して反応を開始させた。その後、室温で3.5時間撹拌して反応を行った。アルゴン風船、同圧滴下漏斗、セプタム、三方コックを装着した三口フラスコをアルゴン置換し、先に調製した溶液をアルゴン下でキャニュラー輸送した。この反応系を液体窒素により‐196 ℃に冷やしながら、ジメチルジクロロシラン2.23 g(17.2 mmol)とエーテル16 mLの混合液を同圧滴下漏斗より滴下した。滴下後、反応系を液体窒素から取り除き室温で12時間反応させた。その後、氷と1 Mの塩酸を加えて反応を失活した。酢酸エチルで抽出し、その抽出液を蒸留水と飽和食塩水それぞれで洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。溶媒留去の後、展開溶媒をヘキサン:酢酸エチル=1:0~10:1としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その後ヘキサンで再結晶し、目的物を1.158 g(収率39%)で得た。
【実施例】
【0026】
2. 1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成(架橋剤:ジビニルベンゼン)
スチレン251 mg(2.41 mmol)とジビニルベンゼン120 mg(0.92 mmol)の混合液に、1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール(HPS)17.2 mg(0.032 mmol)と純度75%の過酸化ベンゾイル10.2 mg(0.032 mmol)を溶解させた。
具体的には、アルゴン風船、アリーン冷却器、三方コック、セプタムを装着した二口ナスフラスコの系内をアルゴン置換し、1 g/Lの濃度に調製したポリビニルアルコール水溶液20 mLを入れ撹拌しながら、先に調製したモノマーを滴下した(図3)。充分分散させてから系内を80 ℃に保ち3時間重合反応を行った。反応終了後デカンテーションにより溶媒を取り除き、80 ℃の蒸留水での熱処理、メタノールでの洗浄を経て得られた微粒子を減圧乾燥させることで目的物を135 mg(収率36%)得た(図4)。
なお、HPSは、東京化成工業から購入した。
【実施例】
【0027】
3. 1,1-ジメチル-2,5-ジアニシル-3,4-ジフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成(架橋剤:ジビニルベンゼン)
スチレン251 mg(2.41 mmol)とジビニルベンゼン120 mg(0.92 mmol)の混合液に、1,1-ジメチル-2,5-ジアニシル-3,4-ジフェニルシロール(APS)30.4 mg(0.064 mmol)と純度75%の過酸化ベンゾイル10.2 mg(0.032 mmol)を溶解させた。
具体的には、アルゴン風船、アリーン冷却器、三方コック、セプタムを装着した2口ナスフラスコの系内をアルゴン置換し、濃度1 g/Lに調整したポリビニルアルコール水溶液20 mLを入れ撹拌しながら、先に調製したモノマーを滴下した(図5)。充分分散させてから系内を80 ℃に保ち3時間重合反応を行った。反応終了後、デカンテーションにより溶媒を取り除き、80 ℃の蒸留水での熱処理、メタノールでの洗浄を経て得られた微粒子を減圧乾燥させることで目的物を127 mg(収率34%)得た(図6)。
【実施例】
【0028】
なお、APSは以下のスキーム2のように合成した。
具体的には、アルゴン風船、セプタム、三方コックを装着した二口ナスフラスコをアルゴン置換し、リチウム0.052 g(8.0 mmol)とナフタレン1.026 g(8.0 mmol)とテトラヒドロフラン(THF)8 mLを加え、これに20分間超音波を照射して反応を開始させた。その後、室温で3時間撹拌してリチウムナフタレニドを調製した。アルゴン風船、蛇管、セプタム、同圧滴下漏斗、三方コックを装着した三口ナスフラスコをアルゴン置換し、先に調製した溶液をアルゴン下でキャニュラー輸送した。ビス(フェニルエチニル)ジメチルシラン0.520 g(2.0 mmol)のTHF溶液5 mLを同圧滴下漏斗より滴下したのち、20分間撹拌させた。この反応系を氷水で系内を0 ℃に冷やしながらTHF 10 mLを加えたのち、ジクロロ(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)2.020 g(8.0 mmol)を加え、反応系を氷水から取り除き室温で1時間反応を行った。その後、p-ブロモアニソール0.786 g(4.2 mmol)とビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド0.070 g(0.1 mmol)とTHF 10 mLを加え、系内を65 ℃に保ち15時間反応を行った。その後、1Mの塩酸を加えて失活した。クロロホルムで抽出し、その抽出液を蒸留水と飽和食塩水のそれぞれで洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。溶媒留去の後、展開溶媒をヘキサン:酢酸エチル=9:1としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を125 mg(収率13%)得た。
【化8】
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【実施例】
【0029】
4. 1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール内包ポリスチレン微粒子の合成(架橋剤:ジビニルベンゼン、1,1-ジアリル-2,3,4,5-テトラフェニルシロール)
スチレン251 mg(2.41 mmol)とジビニルベンゼン110 mg(0.85 mmol)の混合液に、HPS 17.2 mg(0.032 mmol)と1,1-ジアリル-2,3,4,5-テトラフェニルシロール(DATPS)33.6 mg(0.072 mmol)と純度75%の過酸化ベンゾイル10.2 mg(0.032 mmol)を溶解させた。
具体的には、アルゴン風船、アリーン冷却器、三方コック、セプタムを装着した2口ナスフラスコの系内をアルゴン置換し、濃度1 g/Lに調整したポリビニルアルコール水溶液20 mLを入れ撹拌しながら、先に調製したモノマーを滴下した(図7)。充分分散させてから系内を80 ℃に保ち3時間重合反応を行った。反応終了後、デカンテーションにより溶媒を取り除き、80 ℃の蒸留水での熱処理、メタノールでの洗浄を経て得られた微粒子を減圧乾燥させることで目的物を79.9 mg(収率20%)得た(図8)。
なお、DATPSは、特許文献3およびJ. Organomet. Chem., 1990, 391:27などを参照して製造した。
【実施例】
【0030】
5. 1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロールを内包し、ヒドロキシ基を表面修飾したポリスチレン微粒子の合成(架橋剤:ジビニルベンゼン)
スチレン1.0 g(9.60 mmol)とジビニルベンゼン477 mg(3.67 mmol)の混合液に、HPS 71.5 mg(0.13 mmol)と純度75%の過酸化ベンゾイル42.0 mg(0.13 mmol)を溶解させた。
具体的には、アルゴン風船、アリーン冷却器、三方コック、セプタムを装着した2口ナスフラスコの系内をアルゴン置換し、濃度1 wt%に調整したポリビニルアルコール水溶液20 mLを入れ撹拌しながら、先に調製したモノマーを滴下した(図3)。充分分散させてから系中を80 ℃に保ち3時間重合反応を行った。反応終了後、デカンテーションにより溶媒を取り除き、80 ℃の蒸留水での熱処理、メタノールでの洗浄を経て得られた微粒子を減圧乾燥させた。
乾燥後、再度この二口ナスフラスコにアルゴン風船、アリーン冷却器、三方コック、セプタムを装着し、系内をアルゴン置換した。Milli-Q 20 mLを入れて撹拌しながら、過酸化ベンゾイル10.0 mg(0.031 mmol)を溶解させた4-アセトキシスチレン(AS)500 mg(3.08 mmol)とジビニルベンゼン25.0 mg(0.19 mmol)の混合液を滴下し、30分間膨潤を行った。膨潤後、系内を70 ℃に保ち4時間重合反応を行った。この段階で、IRスペクトルを測定したところ、カルボニル基に特徴的なピークを確認できた。
反応終了20時間後、1M水酸化ナトリウム水溶液を20 mL加え、加水分解反応を4時間行った。反応終了後、デカンテーションにより溶媒を取り除き、メタノールでの洗浄を行い、減圧乾燥することによって目的の微粒子を1.16 g(収率59%)得た(スキーム3)(図9)。この段階で、IRスペクトルを測定したところ、カルボニル基由来のピークが小さくなり、ヒドロキシ基に由来する幅広いピークが確認できた(図10)。
【化9】
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【実施例】
【0031】
6.ポリスチレン網状ポリマーに、π共役系が伸びた平面性の高い蛍光化合物(クマリン6)とAIE活性化合物化合物(TPSおよびAPS)を包含させた場合の輝度および蛍光粒子収率の比較
上記1および3に記載した蛍光性微粒子の作製方法と同様にして、クマリン6(東京化成)、TPSおよびAPSをポリスチレン網状ポリマーに取り込ませ、各蛍光性微粒子の輝度と蛍光量子収率を測定した(図11)。
クマリン6の封入量は、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2および0.3 mol%であり、それ以上封入しようとすると、微粒子を形成させるのが困難であった。これに対し、シロールは0.1、1.0、2.0 mol% まで封入可能であった。また、目視において、AIE活性なシロール類(TPS、APSおよびHPS)を封入した微粒子の方が明らかに強く発光していた。各微粒子の輝度および蛍光量子収率を測定した結果を図11に示す。
クマリン6を封入したポリスチレン微粒子の輝度は、クマリン6の量依存的に上昇したものの、同じ封入率のAIE活性化合物を含むポリスチレン微粒子よりもかなり低かった(図11、輝度)。
また、クマリン6を封入したポリスチレン微粒子の蛍光量子収率は、封入率0.2 mol%程度までは、クマリン6の量依存的に増加したが、それ以上の封入率では、減少した。これは、クマリン6の封入量が増えたことで、蛍光の濃度消光を引き起こしたことを示唆している。一方、AIE活性化合物であるTPS、APSおよびHPSを封入したポリスチレン微粒子の蛍光量子収率は、封入量の増加と共に蛍光量子収率も増加していき、2.0 mol%のTPSとAPSの蛍光量子収率は、それぞれ70%と90%にまで達していた。これは、樹脂内でシロール同士が凝集、もしくはポリスチレン樹脂に閉じ込められることによりシロールの分子運動が阻害されることによるAIE効果の発現に由来すると考えられる。
【実施例】
【0032】
また、図12には、1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロールを封入したポリスチレン微粒子(a1およびa2)とクマリン6を封入したポリスチレン微粒子(a2およびb2)の蛍光写真を示した。両者を比較すると、1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロールを封入したポリスチレン微粒子の輝度の方がクマリン6を封入したポリスチレン微粒子の輝度よりも高いことが分かる。特に、露光時間の長い写真を比較すると(a1とb1)明らかである。
【実施例】
【0033】
以上の結果から、蛍光樹脂微粒子作成にAIE活性化合物を蛍光物質として用いれば、樹脂内部に閉じ込められた蛍光物質がAIE効果を発現し、通常のπ共役系蛍光物質よりも高効率に発光する樹脂となることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかる蛍光性微粒子は、既存のものと比較して、輝度および蛍光収量率ともに優れている。従って、当該蛍光性微粒子を標識として用いることで、目的の標的物質を明瞭に検出することが可能となり、医療分野における診断等においての利用が期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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