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明細書 :作用スペクトル出力装置及び作用スペクトル出力方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-076578 (P2020-076578A)
公開日 令和2年5月21日(2020.5.21)
発明の名称または考案の名称 作用スペクトル出力装置及び作用スペクトル出力方法
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
G01N  21/65        (2006.01)
FI G01N 21/27 Z
G01N 21/65
請求項の数または発明の数 22
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2018-208256 (P2018-208256)
出願日 平成30年11月5日(2018.11.5)
発明者または考案者 【氏名】瀬戸 啓介
【氏名】川村 修平
【氏名】山田 弘夢
【氏名】徳永 英司
出願人 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 2G043
2G059
Fターム 2G043AA01
2G043EA03
2G043FA06
2G043HA15
2G043JA01
2G043LA01
2G059AA02
2G059EE02
2G059EE03
2G059EE11
2G059EE12
2G059GG06
2G059GG09
2G059GG10
2G059HH08
2G059HH09
2G059JJ01
要約 【課題】試料に照射する照射光の波長の掃引を行なうことなく、試料の応答における、照射光に対する波長依存性を出力できる作用スペクトル出力装置を提供する。
【解決手段】作用スペクトル出力装置10は、複数の波長の光が混ざった白色光を発生する白色光源11と、白色光に波長毎に既知のノイズを付加する雑音源12と、雑音源12により付加されたノイズを含む白色光を試料Sに照射した反応結果を、取得する受光器14と、雑音源12により付加されたノイズを、白色光の波長毎に、受光器14により取得された反応結果に乗算する乗算器M1~Mnと、乗算器M1~Mnによる波長毎の乗算結果から、白色光に含まれる各波長の光の刺激に対する試料Sの反応の波長依存性を作用スペクトルとして出力するローパスフィルタLF1~LFnと、を有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の波長の波を刺激として発生する刺激源と、
前記波の波長毎に既知のノイズを付加するか、前記波から波長毎にノイズを抽出することにより、前記波が含むノイズを特定するノイズ特定部と、
前記ノイズ特定部により特定されたノイズを含む波を刺激として試料に与えた反応結果を、取得する取得部と、
前記ノイズ特定部により特定されたノイズを、前記波の波長毎に、前記取得部により取得された反応結果に乗算する乗算部と、
前記乗算部による波長毎の乗算結果から、前記波に含まれる各波長の刺激に対する前記試料の反応の波長依存性を作用スペクトルとして出力する出力部と、
を有する作用スペクトル出力装置。
【請求項2】
前記刺激源は、複数の波長の光が混ざった白色光を発生する白色光源、電磁波を発生する電磁波源、及び音波を発生する音波源の少なくとも一つである請求項1記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項3】
前記刺激源は、複数の波長の光が混ざった白色光を発生する白色光源であり、
前記取得部は、前記白色光の照射により刺激された前記試料の反応結果を、前記試料に対してプローブ光源からプローブ光を照射したときの当該プローブ光、又は前記試料に対して照射した前記ノイズを含む白色光の透過率、刺激により発生した蛍光若しくは燐光を含む発光の発光量、前記試料に対して通電したときの電流値、電圧値、キャパシタンス、インダクタンス若しくは抵抗値、又は、刺激により発生した音波の振幅、圧力、体積若しくは変位、刺激により発生した磁場若しくは電場、刺激による発熱の熱量若しくは温度変化、又は、前記試料を透過する光の屈折率若しくは光熱効果の少なくとも一つとして検出する検出部を含む請求項1記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記試料を透過した前記白色光を検出する光検出器であり、
前記出力部は、前記白色光が前記試料を透過する透過率を、前記作用スペクトルとして出力する請求項3記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項5】
前記白色光源で発生した光の強度を変調する強度変調器と、
前記強度変調器による強度変調に基づいて、前記乗算部による波長毎の乗算結果を復調するロックインアンプと、
を更に有する請求項3又は請求項4に記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項6】
前記出力部は、波長毎の乗算結果の移動平均をとるローパスフィルタを含む請求項1~5のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項7】
前記取得部により取得された前記反応結果から、一部の周波数帯を除去するフィルタを更に有し、
前記ノイズ特定部は、前記フィルタにより一部の周波数帯が除去されて残った周波数帯に対応する波長についてノイズを特定する請求項1~6のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項8】
前記取得部により取得した前記反応結果を、波長毎に分割する分割器を更に有し、
前記乗算部は、前記波の波長と前記分割器により分割された前記反応結果の波長との組合せ毎に、前記ノイズ特定部により特定されたノイズを、前記取得部により取得された反応結果に乗算する請求項1~7のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項9】
前記乗算部による波長毎の乗算結果の行列(O)、前記波に含まれる各波長の前記作用スペクトルを表す行列(R)、及び、波長間のノイズの相関を表す相関行列(C)は、次の式(10)により表され、
(O)=(C)・(R) … 式(10)
前記波が含むノイズが波長間において相関がある場合、次の式(11)により、相関行列Cの逆行列C-1を、式(1)の両辺に乗算した上で、
(C)-1・(O)=(C)-1・(C)・(R) … 式(11)
既知の乗算結果(O)、相関行列(C)、逆行列(C)-1を用いて、作用スペクトルを表す行列Rが算出される請求項1~8のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項10】
前記相関行列(C)は、前記ノイズ特定部により特定された波長毎のノイズを、当該波長順に行として配列した行ベクトルと、当該波長順に列として配列した列ベクトルと、を積算して得られる行列である請求項9記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項11】
前記乗算部による波長毎の乗算結果の行列(O)、前記波に含まれる各波長の前記作用スペクトルを表す行列(R)、及び、波長間のノイズの相関を表す相関行列(C)は、次の式(10)により表され、
(O)=(C)・(R) … 式(10)
前記波が含むノイズが波長間において相関がある場合、逆問題の手法により、行列(R)が算出される請求項1~8のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力装置。
【請求項12】
複数の波長の波を刺激として発生する発生工程と、
前記発生工程により発生された前記波の波長毎に既知のノイズを付加するか、前記波から波長毎にノイズを抽出することにより、前記波が含むノイズを特定するノイズ特定工程と、
前記ノイズ特定工程により特定されたノイズを含む波を刺激として試料に与えた反応結果を、取得する取得工程と、
前記ノイズ特定工程により特定されたノイズを、前記波の波長毎に、前記取得工程により取得された反応結果に乗算する乗算工程と、
前記乗算工程による波長毎の乗算結果から、前記波に含まれる各波長の刺激に対する前記試料の反応の波長依存性を作用スペクトルとして出力する出力工程と、
を有する作用スペクトル出力方法。
【請求項13】
前記発生工程では、複数の波長の光が混ざった白色光、電磁波、及び音波の少なくとも一つを発生する請求項12記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項14】
前記刺激源は、複数の波長の光が混ざった白色光を発生する白色光源であり、
前記取得工程は、前記白色光の照射により刺激された前記試料の反応結果を、前記試料に対してプローブ光源からプローブ光を照射したときの当該プローブ光、又は前記試料に対して照射した前記ノイズを含む白色光の透過率、刺激により発生した蛍光若しくは燐光を含む発光の発光量、前記試料に対して通電したときの電流値、電圧値、キャパシタンス、インダクタンス若しくは抵抗値、又は、刺激により発生した音波の振幅、圧力、体積若しくは変位、刺激により発生した磁場若しくは電場、刺激による発熱の熱量若しくは温度変化、又は、前記試料を透過する光の屈折率若しくは光熱効果の少なくとも一つとして検出する検出工程を含む請求項13記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項15】
前記検出工程では、前記試料を透過した前記白色光を検出し、
前記出力工程では、前記白色光が前記試料を透過する透過率を、前記作用スペクトルとして出力する請求項14記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項16】
白色光照射工程で照射する光の強度を変調する強度変調工程と、
前記強度変調工程による強度変調に基づいて、前記乗算工程による波長毎の乗算結果を復調する復調工程と、
を更に含む請求項14又は請求項15に記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項17】
前記乗算工程及び前記出力工程の間において、ローパスフィルタにより、波長毎の乗算結果の移動平均をとる移動平均工程を、更に含む請求項12~16のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項18】
前記取得工程において取得された前記反応結果から、一部の周波数帯の光を除去するフィルタ工程を更に含み、
前記ノイズ特定工程においては、前記フィルタ工程により一部の周波数帯が除去されて残った周波数帯に対応する波長についてノイズを特定する請求項12~17のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項19】
前記取得工程において取得した前記反応結果を、波長毎に分割する分割工程を更に含み、
前記乗算工程では、前記波の波長と前記分割工程において分割された前記反応結果の波長との組合せ毎に、前記ノイズ特定工程において特定されたノイズを、前記取得工程において取得された反応結果に乗算する請求項12~18のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項20】
前記乗算工程における波長毎の乗算結果の行列(O)、前記波に含まれる各波長の前記作用スペクトルを表す行列(R)、及び、波長間のノイズの相関を表す相関行列(C)は、次の式(10)により表され、
(O)=(C)・(R) … 式(10)
前記波が含むノイズが波長間において相関がある場合、次の式(11)により、相関行列Cの逆行列C-1を、式(10)の両辺に乗算した上で、
(C)-1・(O)=(C)-1・(C)・(R) … 式(10)
既知の乗算結果(O)、相関行列(C)、逆行列(C)-1を用いて、作用スペクトルを表す行列Rが算出される請求項12~19のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項21】
前記相関行列(C)は、前記ノイズ特定工程において特定された波長毎のノイズを、当該波長順に行として配列した行ベクトルと、当該波長順に列として配列した列ベクトルと、を積算して得られる行列である請求項20記載の作用スペクトル出力方法。
【請求項22】
前記乗算工程における波長毎の乗算結果の行列(O)、前記波に含まれる各波長の前記作用スペクトルを表す行列(R)、及び、波長間のノイズの相関を表す相関行列(C)は、次の式(10)により表され、
(O)=(C)・(R) … 式(10)
前記波が含むノイズが波長間において相関がある場合、逆問題の手法により、行列(R)が算出される請求項12~19のいずれか一項に記載の作用スペクトル出力方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明の技術は、作用スペクトル出力装置及び作用スペクトル出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学測定の手法の一つとして、ポンプ・プローブ法が知られている。この測定では、試料に対して2つの重ね合わされた光、ポンプ光とプローブ光を入射させて試料の構造を探る。このとき試料は、ポンプ光に対して固有の応答をする。プローブ光は、このポンプ光に対する応答を反映して強度変調されるため、この強度変化を測定することでポンプ光に対する物質の応答を観測できる。
【0003】
ポンプ・プローブ法では試料に照射するポンプ光の波長に依存した応答を測定できる。試料の応答のポンプ光に対する波長依存性を測定する場合、その測定点に対してポンプ光の波長を掃引する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2013-511718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ポンプ光の波長を掃引する場合、波長を順に掃引するための時間を要し、単一波長のポンプ光を照射する場合に比べて、測定時間が長くなってしまう。測定時間が長くなると、例えば、生体試料等の動く試料を測定する場合、生体試料が移動してしまっては、同じ位置の測定ができない。また、波長掃引を行なう場合、試料の一点に対して集光させた光を長時間に亘って照射することになり、試料によっては温度上昇又は光分解により変質する場合がある。特に、生体試料の場合、ポンプ光の強度を低くしていても、その積算により死滅してしまう場合がある。
【0006】
本発明は、試料に与える照射光等の波の波長の掃引を行なうことなく、試料の応答における、波に対する波長依存性を出力できる作用スペクトル出力装置及び作用スペクトル出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一態様は、作用スペクトル出力装置であって、複数の波長の波を刺激として発生する刺激源と、前記波の波長毎に既知のノイズを付加するか、前記波から波長毎にノイズを抽出することにより、前記波が含むノイズを特定するノイズ特定部と、前記ノイズ特定部により特定されたノイズを含む波を刺激として試料に与えた反応結果を、取得する取得部と、前記ノイズ特定部により特定されたノイズを、前記波の波長毎に、前記取得部により取得された反応結果に乗算する乗算部と、前記乗算部による波長毎の乗算結果から、前記波に含まれる各波長の刺激に対する前記試料の反応の波長依存性を作用スペクトルとして出力する出力部と、を有する。
【0008】
本開示の第二態様は、作用スペクトル出力方法であって、複数の波長の波を刺激として発生する発生工程と、前記発生工程により発生された前記波の波長毎に既知のノイズを付加するか、前記波から波長毎にノイズを抽出することにより、前記波が含むノイズを特定するノイズ特定工程と、前記ノイズ特定工程により特定されたノイズを含む波を刺激として試料に与えた反応結果を、取得する取得工程と、前記ノイズ特定工程により特定されたノイズを、前記波の波長毎に、前記取得工程により取得された反応結果に乗算する乗算工程と、前記乗算工程による波長毎の乗算結果から、前記波に含まれる各波長の刺激に対する前記試料の反応の波長依存性を作用スペクトルとして出力する出力工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
作用スペクトル出力装置及び作用スペクトル出力方法によれば、試料に与える波の波長の掃引を行なうことなく、試料の応答における、波に対する波長依存性を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の技術の第1実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の技術の第2実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の技術の第3実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の技術の第4実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の技術の第5実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の技術の第6実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の技術の第7実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。
【図8】実施例1における、周波数に対する透過率として出力される作用スペクトルを示す図である。
【図9】実施例2における、周波数に対する透過率として出力される作用スペクトルを示す図である。
【図10】相関行列を測定するシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。

【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の技術の第1実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。

【0013】
第1実施形態に係る作用スペクトル出力装置10は、試料Sに対して白色光を照射し、白色光に含まれる各波長の光の刺激に対する試料Sの反応の波長依存性を作用スペクトルとして出力する。作用スペクトル出力装置10による測定は、多数の波長におけるポンプ光の刺激を纏めて検出した信号から、各々の波長による刺激を弁別して検出する原理の規則となる測定である。当該測定は、いわゆるポンプ・プローブ法ではなくポンプ光そのものの透過光を用いた測定である。

【0014】
作用スペクトル出力装置10は、図1に示すように、白色光源11、雑音源12、強度変調器13、受光器14、乗算器M1~Mn及びローパスフィルタLF1~LFnを有する。

【0015】
白色光源11は、複数の波長の光が混ざった白色光を発生する。第1実施形態においては、白色光源11は、ノイズを含まない白色光を照射する光源である。雑音源12は、既知のノイズN1~Nnを生成する。ノイズN1~Nnは、白色光源から抽出(測定)される光の波長の数nだけ生成される。生成されたノイズN1~Nnは、強度変調器及び乗算器M1~Mnに入力される。

【0016】
強度変調器13は、入力されたノイズN1~Nnに基づいて、ノイズ特定部として、白色光源から照射された白色光に波長毎にノイズを付加する。換言すると、強度変調器13は、測定する波長λ1~λn毎に異なる変調を与える。強度変調器13によりノイズN1~Nnが付加された白色光は、試料Sを刺激して、試料Sを透過し、受光器14に入力される。

【0017】
受光器14は、取得部として、強度変調器13により付加されたノイズを含む白色光を試料Sに照射した反応結果を取得する。受光器14は、例えば、検出部としてフォトダイオードを含み、試料Sを透過した白色光の透過率を検出する。受光器14は白色光を受光して得た信号を、乗算器M1~Mnに入力する。

【0018】
乗算器M1~Mnは、それぞれ、雑音源12が生成したノイズN1~Nn(強度変調器13により白色光に付加されたノイズN1~Nn)が入力される。乗算器M1~Mnは、ノイズN1~Nnを、白色光の波長λ1~λn毎に、受光器14により取得された反応結果に乗算する。乗算結果は、ローパスフィルタLF1~LFnに入力される。ローパスフィルタLF1~LFnは、ノイズN1~Nnの波長λ1~λn毎の乗算結果の移動平均をとり、出力部として、白色光に含まれる各波長の光の刺激に対する試料Sの反応の波長依存性を作用スペクトルとして出力する。このように、乗算器M1~Mn及びローパスフィルタLF1~LFnにより、受光器14から入力された光の信号のうち、乗算器M1~Mnに入力されたノイズと一致するノイズを含む波長の信号がより分けられる。より分けた結果、波長毎の出力O1~On、すなわち作用スペクトルが得られる。

【0019】
tを時刻として、白色光源の平均光強度をA(λj)、ノイズ変調をN(λj,t)とする。ここで、j=1,2,...nである。これにより、波長毎に異なるノイズで強度変調することを示す。また、試料の応答、例えば、試料の透過率を、R(λj)とする。このとき、受光器14が受信する信号は、次の式(1)により表される。

【0020】
【数1】
JP2020076578A_000003t.gif

【0021】
また乗算器Mk(k=1,2,...n)は、式(1)とノイズ変調の積をとるので、k番目のローパスフィルタLFkに入る信号は、次の式(2)により表される。

【0022】
【数2】
JP2020076578A_000004t.gif

【0023】
ここで、ノイズ変調の積について考える。ノイズ変調は三角関数の重ね合わせとして、次の式(3)により表される。

【0024】
【数3】
JP2020076578A_000005t.gif

【0025】
よって、N(λk,t)とN(λj,t)の積は、次の式(4)により表される。

【0026】
【数4】
JP2020076578A_000006t.gif

【0027】
ただし、N(λj,ω’)はN(λj,ω’)の複素共役関数である。ローパスフィルタLFkのカットオフ周波数をノイズ変調の周波数差ω-ω’よりも十分小さくすれば、ローパスフィルタLFkを通したノイズ変調の積N(λk,t)N(λj,t)(→LFk)は、次の式(5)により表される。

【0028】
【数5】
JP2020076578A_000007t.gif

【0029】
従って、式(2)に表されるローパスフィルタLFkに入る信号に、式(5)を代入すると、ローパスフィルタLFkを通過した信号O(λk)は、次の式(6)により表される。

【0030】
【数6】
JP2020076578A_000008t.gif

【0031】
周波数領域のノイズ変調の強度N(λk,ω)が規格化条件である次の式(7)を満たし、波長毎のノイズに相関がない場合、式(5)は次の式(8)により表される。

【0032】
【数7】
JP2020076578A_000009t.gif

【0033】
従って、式(6)により得られる信号O1,O2,…Ok,…Onは、次の式(9)として表され、試料の応答のうち波長λkに対応するものだけより分けることができる。

【0034】
【数8】
JP2020076578A_000010t.gif

【0035】
以上のように、第1実施形態においては、雑音源12において生成したノイズN1~Nnにより、白色光源11からの白色光を強度変調して試料Sに照射する。そして、試料Sを透過した光に、各ノイズN1~Nnを乗算し、かつローパスフィルタLF1~LFnを通すことにより、測定したい波長毎の試料Sの応答を出力O1~Onとして抽出できる。従って、作用スペクトル出力装置10は、試料Sの応答における、白色光に対する波長依存性を出力できる。

【0036】
(第2実施形態)
図2は、本発明の技術の第2実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。図2において、図1と同様の構成について、同じ参照番号を付し、説明を省略する。

【0037】
第1実施形態に係る作用スペクトル出力装置10においては、ノイズを含まない白色光を照射する白色光源11を用いる場合について説明した。白色光がノイズを含まないため、雑音源12によるノイズN1~Nnを強度変調器13により白色光に含まれる波長毎に加え、試料Sに照射している。

【0038】
第2実施形態に係る作用スペクトル出力装置20においては、波長毎に相関がない、または相関が小さいノイズを含む白色光を照射する白色光源21を用いる。作用スペクトル出力装置20は、更に、ビームスプリッタ22及び分光器(分割器)23を有する。

【0039】
白色光源21から照射された白色光は、ビームスプリッタ22に入射される。ビームスプリッタ22は、入射された白色光を分離し、試料S及び分光器23に入射する。分光器23は、ノイズ特定部として、白色光を測定したい波長毎に分光し、結果として、白色光から波長毎にノイズを抽出する。分光器23は、入射された白色光を参照光として利用する。分光器23は、白色光を分光し、波長毎のノイズN1~Nnを抽出する。白色光源の信号強度A(λj,t)は、第1実施形態の式(1)のN(λj,t)に当たる周波数毎に異なるノイズを内包する。従って、第2実施形態のように、白色光源11の既知のノイズを抽出することにより、第1実施形態と同様の測定が可能である。

【0040】
(第3実施形態)
図3は、本発明の技術の第3実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。図3において、図1及び図2と同様の構成について、同じ参照番号を付し、説明を省略する。

【0041】
第1実施形態に係る作用スペクトル出力装置10においては、受光器14により白色光の透過率を検出している。第3実施形態に係る作用スペクトル出力装置30においては、試料に与えられた白色光の刺激を、白色光の透過率とは別の物理量(プローブ)により検出する。このために、作用スペクトル出力装置30は、検出部31を有する。

【0042】
検出部31は、白色光の透過率とは別の物理量として、刺激により発生した蛍光若しくは燐光を含む発光の発光量、試料Sに対して通電したときの電流値、電圧値、キャパシタンス、インダクタンス若しくは抵抗値、刺激により発生した音波の振幅、圧力、体積若しくは変位、刺激により発生した磁場若しくは電場、刺激による発熱の熱量若しくは温度変化、又は、試料Sを透過する光の屈折率若しくは光熱効果の少なくとも一つを検出する。

【0043】
検出部31は、蛍光若しくは燐光を含む発光の発光量を観測する場合、光学フィルタ及び光電子倍増管等を備える。光学フィルタは、試料Sの刺激源そのものである白色光を除去し、光電子倍増フィルタは、白色光が除去された光を検出する。

【0044】
検出部31は、電流値、電圧値、キャパシタンス、又はインダクタンスを観測する場合、電流計又は電圧計を備える。また、検出部31は、抵抗値又は抵抗率を観測する場合、電圧計を備え、試料Sに電流を流した状態で電圧を測定する。

【0045】
検出部31は、音波の振幅を観察する場合、マイクロフォン、又は原子間力顕微鏡のカンチレバーなどのトランスデューサを備える。トランスデューサは、圧力、体積若しくは変位の観察にも用いられうる。また、検出部31は、磁場又は電場を観察する場合、ピックアップコイル又はアンテナを備える。また、検出部31は、発熱の熱量若しくは温度変化を観察する場合、熱電対又は集電素子を備える。また、検出部31は、光の屈折率又は光熱効果を観察する場合、光の偏向角センサー又は絞りを備えた受光器を備える。

【0046】
上記のような物理量の測定結果と、波長ごとのノイズN1~Nnを乗算することにより、乗算した波長毎の白色光による刺激、すなわち、白色光に対する波長依存性を出力できる。

【0047】
(第4実施形態)
図4は、本発明の技術の第4実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。図4において、図1~図3と同様の構成について、同じ参照番号を付し、説明を省略する。

【0048】
第1実施形態~第2実施形態に係る作用スペクトル出力装置10~20においては、試料を刺激する白色光源、すなわちポンプ光そのものの透過光を用いた測定を行っている。第4実施形態に係る作用スペクトル出力装置40は、ポンプ光とは別のプローブ光を用いた測定を行なう、いわゆるポンプ・プローブ法により測定を行なう。

【0049】
作用スペクトル出力装置40は、ビームスプリッタ41、ミラー42、ビームスプリッタ43、プローブ光源44及び光学フィルタ45を有する。

【0050】
白色光源21は、ポンプ光として、白色光を照射する。白色光源21から照射された白色光は、ビームスプリッタ41により分離される。ビームスプリッタ41により分離された白色光の一方は、分光器23に入射される。分離された白色光の他方は、ミラー42により反射され、更にビームスプリッタ43に反射されて試料Sに照射される。また、プローブ光源44は、単波長のプローブ光を照射する。プローブ光源44から照射されたプローブ光は、ビームスプリッタ43を透過して、試料Sに照射される。

【0051】
光学フィルタ45は、ポンプ光により刺激を受けた試料Sを透過したプローブ光を透過し、白色光を遮断する。これにより、プローブ光が、出力ユニットAに入射される。出力ユニットAは、第1実施形態においてポンプ光が入射された構成と同様に、乗算器M1~Mn及びローパスフィルタLF1~LFnを含む。

【0052】
光学フィルタ45を通過して受光器14に受光されたプローブ光は、乗算器M1~Mnにおいて、白色光(ポンプ光)の参照信号(ノイズN1~Nn)と乗算され、ローパスフィルタLF1~LFnによりフィルタリングされる。従って、第4実施形態においても、第1実施形態等と同様の原理により、白色光に対する波長依存性を出力できる。

【0053】
(第5実施形態)
図5は、本発明の技術の第5実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。図5において、図1~図4と同様の構成について、同じ参照番号を付し、説明を省略する。

【0054】
第4実施形態においては、単波長のプローブ光を照射するプローブ光源を用いている。第5実施形態においては、複数の波長の光を含む白色光を照射する白色プローブ光源51を用いる。プローブ光に複数の波長の光が含まれるため、第5実施形態に係る作用スペクトル出力装置50は、試料Sを透過したプローブ光を分光する分光器52を有する。

【0055】
分光器52は、入力された白色光を、例えば、m個の波長WL1~WLmに分割する。分光器52により分割された各波長WL1~WLmの光は、それぞれ、出力ユニットA1~Amに入力される。

【0056】
出力ユニットA1~Amは、それぞれ、第4実施形態の出力ユニットAと同様の構成を有する。従って、分光器52により分割された各波長WL1~WLmの光は、各出力ユニットA1~Amの受光器14に受光され、乗算器M1~MnにおいてノイズN1~Nnのそれぞれと乗算され、ローパスフィルタLF1~LFnでフィルタリングされる。

【0057】
このように、出力ユニットA1~Amに、分光器52により分割された波長WL1~WLmの光が入力されることにより、プローブ光の波長WL1~WLm毎に、ポンプ光のノイズN1~Nnの各波長の光による試料Sの刺激に基づく透過率スペクトル(2次元スペクトル)が一度に得られる。このような分析は、例えば、混合された試料S中に含まれる各成分を分離した分析に有効である。各成分における透過スペクトルが似通っており、従来法では区別が困難な場合であっても、光による刺激に対する応答が成分ごとに波長WL1~WLmに応じて異なれば、波長毎に分割することで検出が可能となる。

【0058】
(第6実施形態)
図6は、本発明の技術の第6実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。図6において、図1~図5と同様の構成について、同じ参照番号を付し、説明を省略する。

【0059】
第1~第5実施形態においては、ローパスフィルタLF1~LFnを用いて、フィルタリングを行なっている。第6実施形態においては、ローパスフィルタLF1~LFnに代えて、ローパスフィルタを内包するロックインアンプLA1~LAnが適用される。

【0060】
このため、第6実施形態に係る作用スペクトル出力装置60は、強度変調信号生成器61及び強度変調器62を更に有する。

【0061】
強度変調信号生成器61は、単一の周波数の参照信号を生成する。強度変調信号生成器61により生成された参照信号は、強度変調器62及びロックインアンプLA1~LAnに入力される。

【0062】
強度変調器62は、入力された参照信号に基づいて、白色光源11からのノイズを含むポンプ光に対し、更に強度変調を付加する。

【0063】
ロックインアンプLA1~LAnは、それぞれ、強度変調器62による強度変調に基づいて、乗算器M1~Mnによる波長毎の乗算結果を復調する。ロックインアンプLA1~LAnは、強度変調信号生成器61の周波数に対応する参照信号と、乗算器M1~Mnによる乗算結果である入力信号とを、乗算し、不要な高周波成分を除去することにより、信号雑音比(SN比)を第1~第5実施形態に比べて改善し、オフセットを除去できる。

【0064】
(第7実施形態)
図7は、本発明の技術の第7実施形態に係る作用スペクトル出力装置の概略構成を示す図である。図7において、図1~図6と同様の構成について、同じ参照番号を付し、説明を省略する。

【0065】
第7実施形態の作用スペクトル出力装置70は、第6実施形態の作用スペクトル出力装置60の構成に、更に、フィルタ71及びフィルタF1~Fnを有する。

【0066】
フィルタ71は、受光器14及び乗算器M1~Mnの間に配置される。フィルタ71は、受光器14により受光された光、すなわち、試料Sの反応結果から、一部の周波数帯を除去し、変調帯域を制限する。フィルタF1~Fnは、分光器23と乗算器M1~Mnとの間に配置される。フィルタF1~Fnは、分光器23によってノイズN1~Nnの周波数毎に分割された光の変調帯域を、フィルタ71に合わせて制限する。

【0067】
例えば、光熱分光法などにおいては、試料Sはポンプ光に対してわずかに遅れて熱的に応答する。この応答の遅れにより、ポンプ光の変調周波数が極めて高い場合、高周波部分での相関が崩れてしまう。相関の崩れにより、得られる信号強度が小さくなり、またSN比が低下してしまう。これを防止するために、フィルタ71及びフィルタF1~Fnにより、試料Sの応答結果及び分光器23により分割された信号の高周波部分を除去することにより、適切な信号強度が得られる。

【0068】
(実施例1)
次に、本技術に係る上記実施形態を実際に適用した適用結果を、実施例として説明する。

【0069】
図8は、実施例1における、周波数に対する透過率として出力される作用スペクトルを示す図である。

【0070】
実施例1においては、試料Sにネオジム(Nd)ガラスを用い、図2に示す作用スペクトル出力装置20により作用スペクトルを出力した。また、プローブ光を照射したネオジムガラスを、分光光度計により作用スペクトルを測定した。

【0071】
出力結果は、図8に示す通りである。図中、実線は、実際に分光光度計で測定されたネオジムガラスの透過率のデータであり、破線及び破線により結ばれた測定点は、作用スペクトル出力装置20により測定された周波数毎の透過率を表す。分光光度計で測定されたプロファイルと、図2に示す作用スペクトル出力装置20により測定されたプロファイルは、概ね一致することが確認できた。

【0072】
(実施例2)
図9は、実施例2における、周波数に対する透過率として出力される作用スペクトルを示す図である。

【0073】
実施例2においては、試料Sに食紅を用い、図2に示す作用スペクトル出力装置20により作用スペクトルを出力した。また、プローブ光を照射した食紅を、分光光度計により作用スペクトルを測定した。

【0074】
出力結果は、図9に示す通りである。図中、実線は、実際に分光光度計で測定されたネオジムガラスの透過率のデータであり、破線及び破線により結ばれた測定点は、作用スペクトル出力装置20により測定された周波数毎の透過率を表す。分光光度計で測定されたプロファイルと、図2に示す作用スペクトル出力装置20により測定されたプロファイルは、概ね一致することが確認できた。

【0075】
上記実施例1の試料であるネオジムガラスと、実施例2の試料である食紅とは、作用スペクトルが異なることから、本技術による測定結果は偶然の一致ではないことが分かった。

【0076】
(第8実施形態)
図10は、相関行列を測定するシステムの一例を示す図である。

【0077】
上記第1~第7実施形態においては、雑音源12により付加されたノイズN1~Nn、及び白色光源21が有するノイズN1~Nnが、波長毎に全く相関がないことを前提としている。しかし、光源によっては、波長間に相関がある場合がある。このとき、上述の式(8)が成立しなくなる。式(6)を行列で表すと、次の式(10)となる。なお、以下では、「( )」で囲まれたアルファベットが行列を示すものとする。行列(O)は、乗算器M1~Mnによる波長ごとの乗算結果(ローパスフィルタLF1~LFnの通過後)を表し、行列(R)は、白色光に含まれる各波長の作用スペクトルを表し、行列(C)は、波長間のノイズの相関関係を表す。

【0078】
【数9】
JP2020076578A_000011t.gif

【0079】
この場合、式(10)の左から行列(C)の逆行列、(C-1)をかけると、次の式(11)となる。

【0080】
【数10】
JP2020076578A_000012t.gif

【0081】
従って、行列(O)、相関行列(C)、及び相関行列(C)の逆行列(C)-1が既知であれば、試料の作用スペクトル(R)が算出可能である。ここで、行列(O)は、乗算器M1~Mnの乗算結果に基づくので、既知である。一方、波長間のノイズN1~Nnの相関を表す相関行列(C)の取得が必要になる。次に、相関行列(C)の取得について説明する。

【0082】
C(λj,λk)=C(λk,λj)より、(C)は対称行列であり、n個の波長の測定をする際に必要な要素の個数は、n(n+1)/2個である。光源の状態が測定中に変動することもあるため、相関行列(C)の測定は、試料測定中も随時実行することが望ましい。

【0083】
各行列要素を演算するためには、n(n+1)/2個の乗算を並列的に行なうことも可能である。しかし、この場合、測定する波長の個数の2乗に比例して回路規模が増加する問題がある。そこで、観測する波長を切り替えて、逐次的に相関行列(C)を測定することが有効である。ここで逐次測定する時間間隔は、光源の状態が変化する前に行なうものとする。逐次的に相関行列を測定する相関行列測定システム80は、図10に示す通りである。

【0084】
図10では、図2等に示した試料から作用スペクトル(R)を測定する構成を省略している。また、図10では、分光器23からのノイズN1~Nnを用いる例を示しているが、図1等のように、雑音源12からのノイズN1~Nnを用いても良い。つまり、図10に示す構成は、白色光源21からノイズを含むポンプ光を照射する系、及び白色光源11からのノイズを含まないポンプ光に雑音源のノイズを付加して照射する系の何れにも適用可能である。図1~図7に示す何れの系においても、図10の構成は適用可能である。

【0085】
図10に示すように、相関行列測定システム80は、アナログスイッチ81及びアナログスイッチ82と、乗算器83と、ローパスフィルタ84とを有する。

【0086】
アナログスイッチ81及びアナログスイッチ82は、分光器23(雑音源12)から出力される各波長のノイズN1~Nnを受信する。アナログスイッチ81及びアナログスイッチ82は、電気的に接続を交換できる装置である。アナログスイッチ81及びアナログスイッチ82は、それぞれ、どの波長のノイズ(強度雑音)を観測するかを外部のコンピュータ又はマイコン等において選択可能である。

【0087】
アナログスイッチ81及びアナログスイッチ82からの出力が乗算器83に入力される。これにより、アナログスイッチ81において選択された波長のノイズと、アナログスイッチ82において選択された波長のノイズとが乗算され、ローパスフィルタ84により時間平均される。アナログスイッチ81及びアナログスイッチ82で選択された波長の組合せ毎に、強度雑音の相関行列が得られる。例えば、図10に示す場合、アナログスイッチ81においては、波長λ1のノイズN1が選択され、アナログスイッチ82おいては、波長λ3のノイズN3が選択される。この場合、相関行列(C)の構成要素として、A(λ1)A(λ3)C(λ1,λ3)が得られる。アナログスイッチ81及びアナログスイッチ82の切替を全ての組合せで行なうことにより、波長λ1~λn毎のノイズN1~Nnを、波長順に行として配列した行ベクトルと、波長順に列として配列した列ベクトルとを積算した結果として、相関行列(C)が得られる。

【0088】
並列的な演算では、n(N+1)/2個の乗算器が必要になるのに対し、図10に示す相関行列測定システム80によれば、使用する乗算器の個数は1つである。また、アナログスイッチの端子の個数を回路規模で数えると、回路規模を2n個に抑えられる。

【0089】
なお、上記式(10)を用いて作用スペクトル(R)を求めようとする場合、ノイズに対する脆弱性により原理通りの結果が得られない場合がある。このような場合には、ティホノフの正則化法又は特異値分解法などの逆問題の手法を用いて、作用スペクトル(R)を算出しても良い。

【0090】
逆問題の手法としては、具体的には、複数の手法が存在する。当業者であれば、適宜、逆問題の具体的な手法を選択し、本実施形態に適用できる。以下では、式(10)から(R)を取得するための逆問題の手法の一つの具体例として、特異値分解を用いる場合を説明する。逆問題の手法は、特異値分解に限定されない。

【0091】
逆問題は、既知の相関行列(C)と既知の出力の行列(O)から、未知の作用スペクトル(R)を求める計算方法である。行列(O)と作用スペクトル(R)の行列要素数が等しく、且つ相関行列(C)に逆行列が存在する場合、数学的には、上記の式(11)のように逆行列を用いて、作用スペクトル(R)が求められる。

【0092】
逆行列による逆問題の計算は、計測された既知の相関行列(C)と行列(O)とが持つ波長毎に信号を分離するためのノイズ以外のノイズ、例えば電気的ノイズに対して、作用スペクトル(R)が非常に敏感に変化することがあるため、望ましい結果が得られないことがある。そこで、逆問題の計算において特異値分解の手法を用いることで、電気的ノイズ等の上記ノイズに敏感な成分を取り除くことができる。

【0093】
ここで、独立に測定して得た行列(O)の要素数nは、求める作用スペクトル(R)の要素数mと等しいか、それよりも多いものとする。このとき、相関行列(C)は、n×mの行列になる。相関行列(C)は、特異値行列(Γ)を用いると、次の式(12)となる。
【数11】
JP2020076578A_000013t.gif

【0094】
要素vi及び要素wiは規格化したもので、(V)=(V)-1,(W)=(W)-1を満たす。
【数12】
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【0095】
上記式(13)においてγkが非常に小さいとき、bi・vkの作用は大きくなる。測定により得られる相関行列(C)がノイズを含むと、vkが真の値からズレる。また、出力の行列(O)がノイズを含むと、biが真の値からズレる。従って、ノイズによるvk及びbiの真の値からのズレが、得られる作用スペクトル(R)の真の値からの大きなズレへとつながってしまう。これがノイズに敏感な成分である。

【0096】
特異値分解による逆問題の手法では、所定の閾値を設定して、当該閾値よりも小さな特異点をもつベクトル成分を取り除くことにより、雑音に敏感な特異成分を取り除くことができる。ここで、特異成分を取り除くための閾値は、例えば、γk>10×γ(k+1)というように、明確にk+1項で特異値が小さくなる場合は、k+1項以降のγのベクトル成分(特異ベクトル)を取り除けば良い。

【0097】
なお、閾値が不明確である場合、予め標準試料を測定して、望ましい結果が得られた項までのベクトル成分を用いることにより、特異成分を取り除くことができる。

【0098】
また、上記実施形態においては、白色光源からの白色光により試料Sを刺激する場合について説明した。しかし、本実施形態の刺激源は、白色光源に限定されない。作用スペクトル出力装置には、波動性を有する刺激を発生する刺激源、換言すると、複数の波長(周波数)の波を刺激として発生する刺激源であれば、いかなるものでも適用できる。例えば、白色光源に代えて、或いは、白色光源と併せて、ガンマ線からラジオ波までの広帯域電磁波を発生する広帯域電磁波源、又は数Hzから数十MHzの広帯域音波を発生する広帯域音波源を適用しても良い。
【符号の説明】
【0099】
10、20、30、40、50、60、70 作用スペクトル出力装置
11 白色光源
12 雑音源
13 強度変調器
14 受光器
21 白色光源
22 ビームスプリッタ
23 分光器
31 検出部
41 ビームスプリッタ
42 ミラー
43 ビームスプリッタ
44 プローブ光源
45 光学フィルタ
51 白色プローブ光源
52 分光器
61 強度変調信号生成器
62 強度変調器
71 フィルタ
80 相関行列測定システム
81、82 アナログスイッチ
83 乗算器
84 ローパスフィルタ
A、A1~Am 出力ユニット
F1~Fn フィルタ
LA1~LAn ロックインアンプ
LF1~LFn ローパスフィルタ
M1~Mn 乗算器
N1~Nn ノイズ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9