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明細書 :複合材料及びその製造方法、触媒並びに金属空気電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-137596 (P2019-137596A)
公開日 令和元年8月22日(2019.8.22)
発明の名称または考案の名称 複合材料及びその製造方法、触媒並びに金属空気電池
国際特許分類 C01G  53/00        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01M   4/92        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
B01J  23/89        (2006.01)
C01G  51/00        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
FI C01G 53/00 A
H01M 4/86 B
H01M 4/92
H01M 4/88 K
B01J 23/89 M
C01G 51/00 A
B01J 37/08
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2018-024027 (P2018-024027)
出願日 平成30年2月14日(2018.2.14)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 健太
【氏名】本橋 輝樹
【氏名】齋藤 美和
【氏名】小川 哲志
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100120891、【弁理士】、【氏名又は名称】林 一好
審査請求 未請求
テーマコード 4G048
4G169
5H018
Fターム 4G048AA05
4G048AB02
4G048AB05
4G048AC06
4G048AD08
4G048AD10
4G048AE05
4G169AA03
4G169AA08
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC12A
4G169BC12B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC16A
4G169BC17A
4G169BC18A
4G169BC35A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CC31
4G169EC23
4G169EC25
4G169FA02
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB30
4G169FC07
4G169FC08
5H018AA10
5H018AS03
5H018BB01
5H018BB05
5H018EE13
5H018HH05
5H018HH08
要約 【課題】ORR活性及びOER活性のいずれにも優れる新たな材料を提供すること。
【解決手段】本発明に係る複合材料の製造方法は、少なくとも、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される1種以上を含むペロブスカイト型複合酸化物を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬後のペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱する加熱工程と、を含む。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される1種以上を含むペロブスカイト型複合酸化物を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、
浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱する加熱工程と、を含む、
複合材料の製造方法。
【請求項2】
YBaCo又はYサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されているか、Coサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているか、Yサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されており、且つCoサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているYBaCo置換体を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、
浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱する加熱工程と、を含む、
複合材料の製造方法。
【請求項3】
少なくとも、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される1種以上を含むペロブスカイト型複合酸化物を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、
浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱してパラジウムを担持する加熱工程と、を含む製造方法により製造される、
複合材料。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型複合酸化物は、一般式La1-x1-x2-x3Cax1Srx2Bax3Mn1-y1Niy1(式中、0≦x1≦1,0≦x2≦1,0≦x3≦1且つ0≦x1+x2+x3≦1)である、
請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記パラジウムの含有量は、前記ペロブスカイト型複合酸化物及び前記パラジウムの総量に対し、0.1wt%以上20wt%以下である、
請求項3又は4に記載の複合材料。
【請求項6】
YBaCo又はYサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されているか、Coサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているか、Yサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されており、且つCoサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているYBaCo置換体を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、
浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱してパラジウムを担持する加熱工程と、を含む製造方法により製造される、
複合材料。
【請求項7】
前記パラジウムの含有量は、前記YBaCo、前記YBaCo置換体及び前記パラジウムの総量に対し、0.1wt%以上20wt%以下である、
請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか1項に記載の複合材料を含む、
触媒。
【請求項9】
請求項3乃至7のいずれか1項に記載の複合材料を含む、
正極触媒。
【請求項10】
請求項9に記載の正極触媒を含む、
金属空気電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料及びその製造方法、触媒並びに金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)の更なる普及には、ガソリン自動車並の航続距離を実現する高エネルギー密度蓄電池の開発が必要不可欠である。現在、現状のリチウムイオン二次電池を超える「革新型蓄電池」の一つとして、金属空気電池が注目を集めている。金属空気電池とは、負極活物質として亜鉛等の金属、正極活物質として空気中の酸素を用いる二次電池をいう。このような金属空気電池は、非常に高い理論エネルギー密度を達成する可能性がある。金属空気電池、特に金属として亜鉛を用いた亜鉛空気電池は、国内外の研究機関で古くから研究開発が行われているが(例えば、非特許文献1、2)、現在のところ、本格的な実用化には至っていない。
【0003】
ところで、金属空気電池の空気極では、放電時には酸素(活物質)の4電子還元反応により水酸化物イオンが生成し、一方で、充電時には水酸化物イオンの4電子酸化反応により酸素が発生する。これら4電子の授受を伴う酸素還元反応(以下、「ORR」ということもある。)及び酸素発生反応(以下、「OER」ということもある。)は、速度論的に非常に遅い反応であることから充放電時に大きな過電圧が生じるため、ORR/OERを促進し得る高活性触媒が必要である。
【0004】
具体的に、金属空気電池の各電極における充電反応及び放電反応は、以下の(1)~(4)の式のとおりである。なお、式(1)~(4)においては、便宜のため、負極として亜鉛を用いた例を示している。
(正極)
充電反応(酸素発生反応):4OH→O+2HO+4e ・・・(1)
放電反応(酸素還元反応):O+2HO+4e→4OH ・・・(2)
(負極)
充電反応:ZnO+HO+2e→Zn+2OH ・・・(3)
放電反応:Zn+2OH→ZnO+HO+2e ・・・(4)
【0005】
正極触媒として、白金、パラジウム、酸化ルテニウム、酸化イリジウム等の貴金属系触媒が高いORR/OER活性を示すことが知られている。具体的に、例えば非特許文献3には、白金やパラジウム等の貴金属を導電性カーボン粉末に担持させた材料が、特許文献1には、白金やパラジウム等の貴金属を酸化セリウムに担持させた材料が提案されている。しかしながら、これらに含まれる貴金属は稀少で高価であることから自動車用蓄電池等の大規模な実用化は困難である。したがって、貴金属を主成分とせず、遷移金属等、資源的に豊富な元素を主成分とする汎用的な高性能ORR/OER活性を示す正極触媒の開発が強く望まれている。
【0006】
また、正極触媒として、ペロブスカイト(ABO)型遷移金属酸化物の開発が進められている。これまで、ペロブスカイトABO構造における六配位八面体のBサイトのエネルギー準位がt2g及びeに分裂した際、e電子数が1でORR/OER活性が極大となることが報告されている(例えば、非特許文献4、5)。このような化合物の中には比較的良好なORR活性を示すものもあるが、OER活性については充分でないことが多い。このようにOER活性の充分でない材料は、OER活性の高い活性等と組み合わせる必要があるため全体として触媒材料の使用量が多くなり、コストや面積当たりの反応効率等の観点からなお改良の余地がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2004-197130号
【0008】

【非特許文献1】F.Cheng,J.Chen,Chem.Soc.Rev.,41,2172-2192(2012).
【非特許文献2】Y.Li,H.Dai,Chem.Soc.Rev.43,5257-5275(2014).
【非特許文献3】A.L.N.Pinheiro,A.O.-Neto,E.C.de Souza,J.Perez,V.A.Paganin,E.A.Ticianelli,E.R.Gonzalez,J.New.Mat.Electrochem.Systems,6,1-8(2003).
【非特許文献4】J.Suntivich,H.A.Gasteiger,N.Yabuuchi,H.Nakanishi,J.B.Goodenough,Y.S.-Horn,Nat.Chem.,3,546-550(2011).
【非特許文献5】J.Suntivich,K.J.May,H.A.Gasteiger,J.B.Goodenough,Y.S.-Horn,Science,334,1383-1385(2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、ORR活性及びOER活性のいずれにも優れる新たな材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、所定の遷移金属含有複合酸化物に少量のパラジウムを担持させてなる材料がORR活性及びOER活性のいずれにも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の発明は、少なくとも、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される1種以上を含むペロブスカイト型複合酸化物を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱する加熱工程と、を含む、複合材料の製造方法である。
【0012】
(2)本発明の第2の発明は、YBaCo又はYサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されているか、Coサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているか、Yサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されており、且つCoサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているYBaCo置換体を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱する加熱工程と、を含む、複合材料の製造方法である。
【0013】
(3)本発明の第3の発明は、少なくとも、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される1種以上を含むペロブスカイト型複合酸化物を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱してパラジウムを担持する加熱工程と、を含む製造方法により製造される、複合材料である。
【0014】
(4)本発明の第4の発明は、第3の発明において、前記ペロブスカイト型複合酸化物は、一般式La1-x1-x2-x3Cax1Srx2Bax3Mn1-y1Niy1(式中、0≦x1≦1,0≦x2≦1,0≦x3≦1且つ0≦x1+x2+x3≦1)である、複合材料である。
【0015】
(5)本発明の第5の発明は、第3又は4の発明において、前前記パラジウムの含有量は、前記ペロブスカイト型複合酸化物及び前記パラジウムの総量に対し、0.1wt%以上20wt%以下である、複合材料である。
【0016】
(6)本発明の第6の発明は、YBaCo又はYサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されているか、Coサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているか、Yサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されており、且つCoサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているYBaCo置換体を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の前記ペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱してパラジウムを担持する加熱工程と、を含む製造方法により製造される、複合材料である。
【0017】
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記パラジウムの含有量は、前記YBaCo、前記YBaCo置換体及び前記パラジウムの総量に対し、0.1wt%以上20wt%以下である、複合材料である。
【0018】
(8)本発明の第8の発明は、第3乃至第7のいずれかの発明に係る複合材料を含む、触媒である。
【0019】
(9)本発明の第9の発明は、第3乃至第7のいずれかの発明に係る複合材料を含む、正極触媒である。
【0020】
(10)本発明の第10の発明は、第9の発明に係る正極触媒を含む、金属空気電池である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ORR活性及びOER活性のいずれにも優れる新たな触媒材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気金属電池の断面図である。
【図2】実施例2、5及び8の試料のKOH水溶液浸漬直後及び24時間後の水溶液の写真である。
【図3】KOH水溶液浸漬前後の実施例2の試料のXRDパターンである。
【図4】KOH水溶液浸漬前後の実施例5の試料のXRDパターンである。
【図5】KOH水溶液浸漬前後の実施例8の試料のXRDパターンである。
【図6】(a)実施例1~3及び比較例1の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。(b)実施例1~3及び比較例1の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。
【図7】(a)実施例4~6及び比較例2の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。(b)実施例4~6及び比較例2の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。
【図8】(a)実施例7~9及び比較例3の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。(b)実施例7~9及び比較例3の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。
【図9】(a)実施例8及び比較例3、4の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。(b)実施例8及び比較例3、4の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。
【図10】(a)実施例10及び比較例5の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。(b)実施例10及び比較例5の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。
【図11】(a)実施例2、5、8、比較例1、2、3及び6の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。(b)実施例2、5、8、比較例1、2、3及び6の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。

【0024】
<1.第1の態様の複合材料>
本実施の形態に係る複合材料は、少なくとも、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される1種以上を含むペロブスカイト型複合酸化物と、パラジウムを含む。

【0025】
このような複合材料は、上述したペロブスカイト型複合酸化物を、パラジウム溶液に浸漬し、浸漬後のペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱してパラジウムを担持することにより製造されるものである。

【0026】
パラジウムは、ペロブスカイト型複合酸化物に担持されている。そして、パラジウムとペロブスカイト型複合酸化物の界面において、パラジウムがペロブスカイト型複合酸化物へ部分的に取り込まれ化合していると考えられる。上述したように、多くのペロブスカイト型複合酸化物は、貴金属を含まないにも関わらず、正極触媒として高いORR活性を示すため有望な材料ではあるが、OER活性については充分でないことが多い。ペロブスカイト型複合酸化物は、上述したような方法でペロブスカイト型複合酸化物の表面にパラジウムを担持すると、OER反応における電流密度が最大で数倍~数十倍となり、大幅にOER活性が向上する。このような触媒活性の向上の効果は、単に金属パラジウムを担持した酸化物の活性のような単なる足し合わせを超える協奏効果が得られる。200℃以上600℃以下で加熱してパラジウムを担持することにより、パラジウムがペロブスカイト型複合酸化物へ部分的に取り込まれ化合し、上述した協奏効果が発現していると考えられる。なお、このような効果は例えば周期表上において同じ10族に属し、且つそれ単体で正極触媒として用いられている白金には見られず、パラジウム特有の効果である。

【0027】
〔ペロブスカイト型複合酸化物〕
ペロブスカイト型複合酸化物は、一般式ABOで表され、このうち結晶構造中のBサイトには、Mn、Fe、Co又はNiが配置される。Aサイトには、例えば希土類金属又はアルカリ土類金属等が配置され得る。

【0028】
Aサイトに配置される希土類元素としては、特に限定されず、例えば、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd等が挙げられる。また、アルカリ土類元素としては、特に限定されないが、例えば、Ca、Ba、Sr等が挙げられる。

【0029】
Bサイトに配置される金属としては、特に限定されず、Mn、Fe、Co及びNi以外に例えばSn、Ge、Zr、Ti、Cr、Sc、Cu、Mo、Nb、W、Sb等が挙げられる。

【0030】
Bサイトに配置されるMn、Fe、Co及びNiの総量としては、特に限定されず、例えばBサイトの総元素のモル数に対して30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。また、Bサイトに配置されるMn、Fe、Co及びNiの総量としては、100モル%以下であってよい。

【0031】
(La1-x1-x2-x3Cax1Srx2Bax3Mn1-y1Niy1
一例として、ペロブスカイト型複合酸化物は、一般式La1-x1-x2-x3Cax1Srx2Bax3Mn1-y1Niy1(式中、0≦x1≦1,0≦x2≦1,0≦x3≦1且つ0≦x1+x2+x3≦1)で表されるものである。

【0032】
上記の一般式において、x1+x2+x3の値としては、特に限定されないが、例えば0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましく、0.2以上であることが特に好ましい。また、x1+x2+x3の値としては、例えば0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、0.4以下であることが特に好ましい。

【0033】
上記の一般式において、x1の値としては、特に限定されないが、例えば0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、0.4以下であることが特に好ましい。

【0034】
上記の一般式において、x2の値としては、特に限定されないが、例えば0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、0.4以下であることが特に好ましい。

【0035】
上記の一般式において、x3の値としては、特に限定されないが、例えば0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、0.4以下であることが特に好ましい。

【0036】
なお、x3は0であってもよく、この場合、一般式La1-x1-x2Cax1Srx2Mn1-y1Niy1(式中、0≦x1≦1,0≦x2≦1且つ0≦x1+x2≦1)と表される。この場合、x1、x2の範囲としては上述したとおりであり、また、x1+x2の範囲としては上述したx1+x2+x3の範囲と同様とすることができる。

【0037】
上記の一般式において、y1の値としては、特に限定されないが、例えば0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、0.9以上であることが特に好ましい。これにより近年高騰しつつあるMnの使用量を減らすことができる。

【0038】
ペロブスカイト型複合酸化物の形状としては、特に限定されず、使用する空気金属電池の仕様により、粒子状、バルク状等から適宜選択することができる。このうち粒子状のものを用いることが好ましい。

【0039】
粒子状のペロブスカイト型複合酸化物を用いる場合、その比表面積としては、特に限定されず、例えば、0.05m/g以上であることが好ましく、0.1m/g以上であることがより好ましく、0.2m/g以上であることがさらに好ましく、0.3m/g以上であることが特に好ましい。また、比表面積としては、大きいほど好ましいが、例えば、100m/g以下又は50m/g以下であってもよい。なお、「比表面積」とは、前処理装置(BELPREP-flowII,マイクロトラック・ベル製)を用いて試料に処理を施した後、その処理後の試料について比表面積/細孔分布測定装置(BELSORP-miniII,マイクロトラック・ベル製)を用いてBET法により測定した値をいう。

【0040】
ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、セラミックス材料の各種製造方法を用いることができる。例えば、錯体重合法や水熱合成法等の液相法、固体原料の直接反応による固相法等を用いることができる。このうち、液相法は、低温焼成でも化学的に均一性の高い粒子を得ることができ、その結果として小粒径・高比表面積であるため、パラジウム及び反応物に対する接触面積が増加し、より高いORR活性及びOER活性を示す触媒を得ることができる。

【0041】
〔パラジウム〕
パラジウムは、金属若しくは酸化物、又はそれらの混合物の状態で存在する。パラジウムは大気に曝すと、大気中の酸素と反応して酸化し得る。そのため、複合材料の調製プロセスによっては、パラジウムはその一部又は全部が酸化パラジウムとなることもある。複合材料の調製直後は金属パラジウムであったとしても、保存状態や保存期間によってはその一部又は全部が酸化パラジウムとなることもある。しかしながら、パラジウムは金属の状態である必要はなく、酸化物の状態であっても、ペロブスカイト型複合酸化物に対するOER活性の向上の効果は奏される。すなわち、本発明において、担持される「パラジウム」とは、金属パラジウム又は酸化パラジウムをいうものとする。

【0042】
このように、本発明においてパラジウムの役割は、上述した非特許文献3や特許文献1に示されるようなパラジウム固有の触媒活性を利用するものではなく、通常よりも比較的高温で熱処理を行ったことにより得られる触媒活性を利用するものである。このような触媒活性は、パラジウムがペロブスカイト型複合酸化物へ部分的に取り込まれ化合することにより発現すると考えられる。すなわち、パラジウム金属固有の触媒活性を利用するものではないため、パラジウムの含有量は従来の触媒に比べて少量であってよく、例えば遷移金属含有複合酸化物及びパラジウムの総量に対し、20wt%以下、17wt%以下、15wt%以下、12wt%以下、10wt%以下、7wt%以下であってよい。ただし、パラジウム量が多くても上述した協奏効果は得られる。

【0043】
また、パラジウムの含有量としては、特に限定されず、遷移金属含有複合酸化物及びパラジウムの総量に対し、0.1wt%以上であることが好ましく、0.2wt%以上であることがより好ましく、0.5wt%以上であることがさらに好ましく、1wt%以上であることが特に好ましい。パラジウムの含有量が所要量以上であることにより、上述した繊維金属含有複合酸化物に対するOER反応の触媒活性の向上の効果がより高くなる。

【0044】
以上のような複合材料は、ORR反応及びOER反応の双方の触媒活性が高く、バイファンクショナルな反応触媒として用いることができる。

【0045】
なお、以上では、主として空気金属電池の正極触媒としての用途について説明したが、本発明は、空気電池における酸素発生反応触媒や酸素還元反応触媒に限られず、他の酸素発生反応触媒や酸素還元反応触媒として用いることができる。また、酸素発生反応触媒のみ、又は酸素還元反応触媒のみに用いることもでき、酸素発生反応触媒及び酸素還元反応触媒両方に用いることもできる。具体的な用途としては、例えば、酸素発生反応触媒として、水を分解して水素を製造する光触媒の助触媒、水のアルカリ電解、電解めっき、電気防食等にも用いることができる。

【0046】
<2.第2の態様の複合材料>
本実施の形態に係る複合材料は、YBaCo又はYサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されているか、Coサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているか、Yサイトの少なくとも一部がCa、In若しくは希土類金属で置換されており、且つCoサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al若しくはZnで置換されているYBaCo置換体と、パラジウムと、を含む。

【0047】
このような複合材料は、上述したYBaCo又はYBaCo置換体を、パラジウム溶液に浸漬し、浸漬後のペロブスカイト型複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱してパラジウムを担持することにより製造されるものである。

【0048】
パラジウムは、YBaCo又はYBaCo置換体に担持されている。第1の態様の複合材料と同様にして、上述したような方法でYBaCo又はYBaCo置換体の表面に担持されたパラジウムは、パラジウムとYBaCo又はYBaCo置換体の界面において、パラジウムがYBaCo又はYBaCo置換体へ部分的に取り込まれ化合し、YBaCo又はYBaCo置換体のOERを飛躍的に高める。

【0049】
〔YBaCo及びYBaCo置換体〕
YBaCoは、非ペロブスカイト構造を有する化合物であり、その結晶構造中には、Coの周りに4つの酸化物イオンが配位するCoO四面体が存在する。このYBaCoは、それ自身も優れた触媒活性を示す。特に、アルカリに対して高い耐久性を有する。YBaCoにおいて、Coは酸化数が平均して+2.25であり、Co2+とCo3+が概ね3:1の割合で存在すると考えられている。

【0050】
そして、このYBaCo構造のYサイト及びCoサイトは、イオン半径が比較的近い他の元素により置換することができる。本発明において、正極触媒に用いるYBaCoは、Yサイトの少なくとも一部がCa、In又は希土類元素で置換されているか、Coサイトの少なくとも一部がFe、Ga、Al又はZnで置換されている。このようなYBaCo置換体を用いることにより、YBaCoの優れた耐久性や触媒活性を基礎としながらも、より高い耐久性や触媒活性を有する特徴的な材料を得ることができる。

【0051】
なお、このような化合物群について、便宜上「YBaCo」と表記するが、O数については比較的広範な範囲をとり得る。そのため、一般には「YBaCo7+δ」のように表されることもある。ここで、式中の「δ」は不定比量とも呼ばれる。この不定比量の値としては、0≦δ≦1.5程度であることが知られている。このようなYBaCo7+δについても、本発明の範囲に含まれる。また、「YBaCo置換体」は、YBaCoと同様の結晶構造を持つ化合物群の総称であって、必ずしもY、Ba、Coの全てを含む必要はない。

【0052】
Yサイト又はCoサイトへの置換量としては、特に限定されるものではなく、各元素の添加効果と所望の性能のバランスや、各サイトへの各元素の置換限界量を考慮して適宜設計することができる。

【0053】
Yサイトは、少なくともその一部をCaで置換することができる。YサイトがCaで置換されることにより、アルカリ溶液に対する耐久性を高めることができる。また、ORR/OER活性を高めることができる。酸化数+3のYが、酸化数+2のCaで置換されると、電荷のバランスにより、Co3+の割合が増加する。例えば、Yサイトが全てCaに置換された場合には、Co2+とCo3+は概ね1:1の割合で存在すると考えられる。Co3+はCo2+よりも安定なイオンであるため、Co3+が増加することによりアルカリ溶液に溶出しにくくなり、YBaCo置換体の耐久性を高めることができると考えられる。

【0054】
Caは、Yサイトの総元素のモル数に対して0モル%超100モル%以下の割合で置換することができる。このような化合物は、一般式で、(Y1-xCa)BaCo(0<x≦1)と表すことができる。例えば、Yサイトの全てがCaで置換された場合、このような化合物は、一般式でCaBaCoと表すことができる。上述したとおり、YサイトがCaで置換されることにより、アルカリ溶液に対する耐久性、ORR活性及びOER活性のいずれをも高めることができる。このような効果は、Caの添加量が多いほど大きい。また、Caは、Yに比べて原料のコストが低いという利点をも有する。したがって、CaのYサイトへの置換量としては、例えば、20モル%以上100モル%以下(上記一般式においてxが0.2以上1以下)であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下(上記一般式においてxが0.5以上1以下)であることがより好ましく、70モル%以上100モル%以下(上記一般式においてxが0.7以上1以下)であることがさらに好ましく、80モル%以上100モル%以下(上記一般式においてxが0.8以上1以下)であることが特に好ましい。

【0055】
Yサイトは、少なくともその一部をInで置換することができる。このような化合物は、一般式で、(Y1-xIn)BaCo(0<x≦1)と表すことができる。

【0056】
Yサイトは、少なくともその一部を希土類元素で置換することができる。ここで、「希土類元素」とは、置換の対象であるY及び安定同位体が存在しないPm元素を除く概念であり、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる元素群(以下、これらの元素を「RE」と表記することがある)である。これらの元素群から選択される1種以上の元素を用いることができる。このような化合物は、一般式で、(Y1-xRE)BaCo(0<x≦1)と表すことができる。

【0057】
希土類元素のうち、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuについては、Yサイトの総元素のモル数に対して0モル%超100モル%以下の割合で置換することができる。一方で、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd及びTbについては、部分的に置換することができる。

【0058】
Coサイトは、少なくともその一部をFeで置換することができる。CoサイトがFeで置換されることにより、ORR活性及びOER活性のいずれをも高めることができる。

【0059】
Feは、Coサイトの総元素のモル数に対して0モル%超100モル%以下の割合で置換することができる。このような化合物は、一般式で、YBa(Co1-xFe(0<x≦1)と表すことができる。このような化合物としては、例えば、YBaCoFeOが挙げられる。上述したとおり、CoサイトがFeで置換されることにより、ORR活性及びOER活性のいずれをも高めることができる。このような効果は、Feの添加量が多いほど大きい。ただし、Feの添加量が増加するにしたがって、耐久性が低下するおそれがある。したがって、FeのCoサイトへの置換量としては、Coサイトの総元素のモル数に対して、例えば5モル%以上(上記一般式においてxが0.05以上)であることが好ましく、7モル%以上(上記一般式においてxが0.07以上)であることがより好ましく、10モル%以上(上記一般式においてxが0.1以上)であることがさらに好ましい。また、FeのCoサイトへの置換量としては、40モル%以下(上記一般式においてxが0.4以下)であることが好ましく、35モル%以下(上記一般式においてxが0.35以下)であることがより好ましく、30モル%以下(上記一般式においてxが0.3以下)であることがさらに好ましい。

【0060】
Coサイトは、少なくともその一部をGa又はAlで置換することができる。このような化合物は、一般式で、YBa(Co1-xGa(0<x≦1)、YBa(Co1-xAl(0<x≦1)と表すことができる。

【0061】
Coサイトは、少なくともその一部をZnで置換することができる。CoサイトがZnで置換されることにより、アルカリ溶液に対する耐久性を高めることができる。上述したとおり、YBaCoにおいて、Co2+及びCo3+が混在しているが、CoサイトをZn2+で置換することにより、Co3+に比べて不安定Co2+の量が減少するため、Co2+がアルカリ溶液に溶出しにくくなり、YBaCo置換体の耐久性を高めることができると考えられる。

【0062】
Znは、YBaCo置換体における4配位サイトの2価金属イオンを全て置換することができる。例えば、Coの平均価数が+2.25であるYBaCoにおいては、2価のCo(Co2+)が全ての価数のCoに対して3/4の割合で存在しているため、Coイオンの3/4をZnで置換することが可能であり、このような化合物は、一般式で、YBa(Co1-xZn(0<x≦1)と表すことができる。このような化合物としては、例えば、YBaCoZnOが挙げられる。上述したとおり、CoサイトがZnで置換されることにより、アルカリ溶液に対する耐久性を高めることができる。このような効果は、Znの添加量が多いほど大きい。ただし、Znの添加量が増加するにしたがって、OER活性がやや低下するおそれがある。したがって、ZnのCoサイトへの置換量としては、Coサイトの総元素のモル数に対して、例えば1モル%以上(上記一般式においてxが0.01以上)であることが好ましく、2モル%以上(上記一般式においてxが0.02以上)であることがより好ましく、5モル%以上(上記一般式においてxが0.05以上)であることがさらに好ましく、10モル%以上(上記一般式においてxが0.1以上)であることが特に好ましい。また、ZnのCoサイトへの置換量としては、35モル%以下(上記一般式においてxが0.35以下)であることが好ましく、30モル%以下(上記一般式においてxが0.3以下)であることがより好ましく、27モル%以下(上記一般式においてxが0.27以下)であることがさらに好ましく、25モル%以下(上記一般式においてxが0.25以下)であることが特に好ましい。

【0063】
Yサイトに置換可能な元素又はCoサイトに置換可能な元素としては、1種のみを単独で用いることも、2種以上を併用して用いることもできる。2種以上を併用する場合、Yサイト又はCoサイトのみを1種又は2種以上の元素で置換することも、Yサイト及びCoサイトそれぞれを1種又は2種以上の元素で置換することもできる。Yサイト及びCoサイトにそれぞれ1種ずつ置換した化合物としては、例えば、CaBaCoFeO、CaBaCoFe、CaBaCoZnOが挙げられる。

【0064】
YBaCo又はYBaCo置換体の形状としては、特に限定されず、使用する空気金属電池の仕様により、粒子状、バルク状等から適宜選択することができる。このうち粒子状のものを用いることが好ましい。

【0065】
粒子状のYBaCo又はYBaCo置換体を用いる場合、その比表面積としては、特に限定されず、例えば、0.05m/g以上であることが好ましく、0.1m/g以上であることがより好ましく、0.2m/g以上であることがさらに好ましく、0.3m/g以上であることが特に好ましい。また、比表面積としては、大きいほど好ましいが、例えば、100m/g以下又は50m/g以下であってもよい。

【0066】
YBaCo又はYBaCo置換体としては、1種の置換体のみを単独で用いることも、2種以上の置換体を併用して用いることもできる。

【0067】
YBaCo又はYBaCo置換体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、セラミックス材料の各種製造方法を用いることができる。例えば、錯体重合法や水熱合成法等の液相法、焼結法等の固相法等を用いることができる。このうち、液相法は、低温焼成でも化学的に均一性の高い粒子を得ることができ、その結果として小粒径・高比表面積であるため、パラジウム及び反応物に対する接触面積が増加し、より高いORR活性及びOER活性を示す触媒を得ることができる。

【0068】
〔パラジウム〕
第1の態様の複合材料と同様のものを同様に使用することができ、それにより得られる効果も同様であるため、ここでの記載は省略する。

【0069】
以上のような複合材料は、ORR反応及びOER反応の双方の触媒活性が高く、バイファンクショナルな反応触媒として用いることができる。

【0070】
<3.複合材料の製造方法>
本実施の形態に係る複合材料の製造方法は、上述したペロブスカイト型複合酸化物、YBaCo又はYBaCo置換体(以下、便宜のため、「遷移金属含有複合酸化物」という)を、パラジウム溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の遷移金属含有複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱する加熱工程と、を含む。

【0071】
〔浸漬工程〕
浸漬工程は、遷移金属含有複合酸化物を、パラジウム溶液に浸漬する工程である。これにより、パラジウム溶液に含まれるパラジウム化合物が遷移金属含有複合酸化物の表面に付着する。

【0072】
(パラジウム溶液)
パラジウム溶液は、パラジウム源を溶媒に溶解させて調製する。

【0073】
パラジウム溶液に含まれるパラジウム源としては、溶媒に溶解し得るパラジウム源であれば特に限定されず、例えば酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、水酸化パラジウム等が挙げられる。

【0074】
溶媒としては、上述のパラジウム源を溶解し得るものであれば特に限定されず、水、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン等が挙げられる。

【0075】
パラジウム溶液中のパラジウム濃度としては特に限定されないが、例えば0.1×10-7mol/L以上であることが好ましく、0.5×10-7mol/L以上であることがより好ましく、1×10-7mol/L以上であることがさらに好ましく、1.2×10-7mol/L以上であることが特に好ましい。また、パラジウム濃度としては、4×10-7mol/L以下であることが好ましく、3×10-7mol/L以下であることがより好ましく、2×10-7mol/L以下であることがさらに好ましく、1.8×10-7mol/L以下であることが特に好ましい。なお、パラジウムを触媒として用いる従来の触媒材料の製造方法において、担持のためのパラジウム溶液の濃度は、約5×10-7~10×10-7mol/Lであり、上述したパラジウム濃度は、従来の製造方法に比べて低い。上述したとおり、本発明においては、パラジウム金属固有の触媒活性を利用するものではなく、パラジウムの担持量が少量でも効果を奏する。したがって、担持に用いるパラジウム溶液として、通常よりも希薄なものを用いることができる。

【0076】
パラジウム溶液1mLに対する遷移金属含有複合酸化物の添加量としては、特に限定されないが、例えば0.001g以上であることが好ましく、0.01g以上であることがより好ましく、0.07g以上であることがさらに好ましく、0.05g以上であることが特に好ましい。また、遷移金属含有複合酸化物の添加量としては、1.0g以下であることが好ましく、0.7g以下であることがより好ましく、0.5g以下であることがさらに好ましく、0.3g以下であることが特に好ましい。

【0077】
パラジウム溶液の浸漬時の温度としては、特に限定されないが、例えば25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましく、50℃以上であることが特に好ましい。また、パラジウム溶液の浸漬時の温度としては、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましく、70℃以下であることが特に好ましい。

【0078】
浸漬時間としては、特に限定されないが、例えば15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、40分以上であることがさらに好ましく、50分以上であることが特に好ましい。また、浸漬時間としては、200分以下であることが好ましく、150分以下であることがより好ましく、100分以下であることがさらに好ましく、50分以下であることが特に好ましい。

【0079】
浸漬工程においては、パラジウム溶液に遷移金属含有複合酸化物を添加した後、撹拌することが好ましいが、パラジウム溶液を静置してもよい。

【0080】
〔乾燥工程〕
必須の態様ではないが、浸漬工程の後、遷移金属含有複合酸化物を乾燥させる工程を設けることができる。

【0081】
乾燥方法としては、特に限定されず、大気中常温で静置して乾燥する方法、加熱による乾燥する方法、減圧して乾燥する方法等が挙げられる。

【0082】
〔加熱工程〕
浸漬後の遷移金属含有複合酸化物を、200℃以上600℃以下で加熱する工程である。これにより、パラジウムを遷移金属含有複合酸化物の表面に担持させる。この際、パラジウムと遷移金属含有複合酸化物との界面において、パラジウムが遷移金属含有複合酸化物へ部分的に取り込まれ化学的な結合が生じると考えられる。発明者らは、このパラジウムと遷移金属含有複合酸化物との間の化学的な結合がOER反応の触媒活性に影響を与えているものと推測している。300℃で加熱した試料に比べ、400℃、500℃で加熱した試料がOER反応の触媒活性が高くなる傾向にある。このことから、400~500℃で加熱すると担持したパラジウムの一部が反応するとともに遷移金属含有複合酸化物と反応し、これらの界面に何らかの活性相が形成されていると考えられる。

【0083】
加熱温度としては、特に限定されないが、例えば220℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましく、350℃以上であることが特に好ましい。また、加熱温度としては、700℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、600℃以下であることがさらに好ましく、550℃以下であることが特に好ましい。

【0084】
加熱時間としては、特に限定されないが、例えば30分以上であることが好ましく、60分以上であることがより好ましく、120分以上であることがさらに好ましく、180分以上であることが特に好ましい。また、加熱時間としては、360分以下であることが好ましく、300分以下であることがより好ましく、240分以下であることがさらに好ましく、200分以下であることが特に好ましい。なお、「加熱時間」とは、目的の温度に達したときからの経過時間を言う。

【0085】
加熱雰囲気としては、特に限定されないが、空気、酸化性ガス雰囲気、還元性ガス雰囲気等が挙げられる。コストを抑制する観点からは、空気(開放系)雰囲気であることが好ましい。なお、パラジウムを主たる触媒とする三元触媒等の従来の触媒では、通常、使用前に複合材料に対して室温付近の低温で還元処理を施すが、本発明の正極触媒では、パラジウムが形成される加熱工程以降において還元処理を施す必要はない。

【0086】
加熱の方法としては、特に限定されず、例えばマッフル炉等の加熱炉を用いて加熱することができる。

【0087】
以上のような製造方法により製造された複合材料は、ORR反応及びOER反応の双方の触媒活性が高く、バイファンクショナルな反応触媒として用いることができる。

【0088】
<4.正極触媒>
本実施の形態に係る正極触媒は、上述した複合材料を活物質として備えることを特徴とするものである。

【0089】
正極触媒には、1種の複合材料のみを単独で用いることも、2種以上の複合材料を併用して用いることもできる。

【0090】
また、正極触媒には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の材料を含むことができる。具体的には、導電助剤、接着剤、プロトン伝導体等の各種材料を含むことができる。導電助剤としては、例えば、グラファイト(カーボンブラック)等を用いることができる。また、接着剤及びプロトン伝導体としては、ナフィオン(登録商標)を用いることができる。

【0091】
<5.金属空気電池>
本実施の形態に係る金属空気電池は、上述した正極触媒を備えることを特徴とするものである。そして、このような金属空気電池は、充放電特性が高く、また、耐久性が高い。

【0092】
以下、具体的な金属空気電池の構成を、図を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る空気金属電池の断面図である。金属空気電池10は、上述した正極触媒を備えてなる正極1と、負極2と、電解質3とを備える。

【0093】
この金属空気電池10において、正極1と負極2は、電解質3を隔てて対向するように配置されている。

【0094】
図示しないが、一実施形態において、正極1は、正極触媒層及びガス拡散層により構成されている。ここで、正極触媒層はガス拡散層の電解質3側に、ガス拡散層は電解質と反対側にそれぞれ形成されている。なお、ガス拡散層は必須の態様ではない。

【0095】
正極触媒層は、上述した正極触媒を備えて構成される。正極触媒層は、例えば、担体や後述するガス拡散層上に、スラリーコート法、スプレーコート法、焼成法等の方法によって形成することができる。

【0096】
ガス拡散層としては、導電性と通気性を併せ持つ材料であれば特に限定されず、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト、金属メッシュ等を用いることができる。

【0097】
負極2は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一遷移金属、亜鉛及びアルミニウムから選ばれる元素を含む負極活性物質を含有する負極層で構成されている。アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、Mg、Ca等が挙げられる。第一遷移金属としては、例えば、Fe、Ti、Ni、Co、Cu、Mn、Cr等が挙げられる。負極活性物質としては、上述した元素から構成される金属、合金及び化合物等を用いることができる。負極活性物質として用いることができる化合物としては、具体的には、上述した元素の酸化物、窒化物、炭酸塩等が挙げられる。

【0098】
電解質3は、KOH水溶液、NaOH水溶液、LiOH水溶液等、アルカリ水溶液を含む。アルカリの濃度としては、特に限定されず、例えば、水酸化物イオンの濃度([OH])が、1~10mol/L以上であることが好ましい。

【0099】
図示しないが、一実施形態において、正極1と負極2が接触して短絡することを防ぐために、正極と負極の間に(例えば、電解質3を隔てるようにして)セパレータを備えることができる。

【0100】
セパレータとしては、電解質の移動(透過)が可能な絶縁材料であれば特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、フッ素樹脂等の樹脂からなる不織布又は多孔質膜を用いることができる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。電解質が水溶液である場合には、これらの樹脂は、親水性化して用いることもできる。

【0101】
電解質3として、アルカリ金属等陽性な金属を含む水溶液を用いる場合、電解質として、水系電解液と金属負極を直接接触させることができず、負極2側については有機電解液を介する必要がある。この場合、例えば、正極1と負極2の間を固体電解質にて隔て、正極1側に水系電解液、負極2側に有機電解液を配置することができる。

【0102】
このような金属空気電池の形状(ケースの形状)としては、特に限定されるものではなく、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型等の形状のものを用いることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0104】
<試料の作製>
以下に示す方法により、正極触媒としての試料を作製した。原料としては、以下のものを用いた。
Ba源:Ba(CHCOO)(純度99.9%,和光純薬工業)
Sr源:SrNO(純度99.5%,和光純薬工業)
Co源:Co(CHCOO)・4HO(純度99%,和光純薬工業)
Mn源:Mn(NO・6HO(純度99.9%,和光純薬工業)
Ni源:Ni(NO・6HO(純度99.9%,和光純薬工業)
La源:La(NO・6HO(99.9%,和光純薬工業)
Ca源:Ca(NO・4HO(99.9%,和光純薬工業)
ゲル化剤:くえん酸C(純度98%,和光純薬工業)
Pd源:(CHCOO)Pd(98%、東京化成工業)
Pt源:HClPt・6HO(純度99.9%,和光純薬工業)
【実施例】
【0105】
〔実施例1:パラジウム担持La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1
(La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1担体の作製)
収率100%と仮定した場合に、目的生成物であるLa0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1が3mmol生成するようにLa源、Sr源、Mn源及びNi源を秤量し、坩堝に入れた後、超純水約30mLと錯化剤としてのくえん酸を金属塩:くえん酸のモル比が1:1になるよう加え、撹拌しながらヒーターで約70℃に加熱して溶媒除去し、ゲル化させた。ゲル化した物質は、ボックス炉にて大気中450℃で1時間仮焼成し、有機物を除去し、前駆体を得た。このようにして得られた前駆体を粉砕した後、管状炉を用いて酸素中800℃で12時間本焼成を行った。
【実施例】
【0106】
(パラジウムの担持)
1.48×10-7mol/Lの(CHCOO)Pdのアセトン溶液に、得られた試料0.3gを50分間含浸させ、乾燥させた。その後、試料を300℃で3時間加熱し、試料にパラジウムを担持させた。
【実施例】
【0107】
〔実施例2:パラジウム担持La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1
パラジウムの担持の際に試料の加熱温度を400℃に変更した以外、実施例1と同様にしてパラジウム担持La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1を作製した。
【実施例】
【0108】
〔実施例3:パラジウム担持La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1
パラジウムの担持の際に試料の加熱温度を500℃に変更した以外、実施例1と同様にしてパラジウム担持La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1を作製した。
【実施例】
【0109】
〔比較例1:La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1
パラジウムを担持しなかった以外、実施例1と同様にしてLa0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1を作製した。
【実施例】
【0110】
〔実施例4:パラジウム担持La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1
(La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1担体の作製)
収率100%と仮定した場合に、目的生成物であるLa0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1が3mmol生成するようにLa源、Ca源、Mn源及びNi源を秤量し、坩堝に入れた後、超純水約30mLと錯化剤としてのくえん酸を金属塩:くえん酸のモル比が1:1になるよう加え、撹拌しながらヒーターで約70℃に加熱して溶媒除去し、ゲル化させた。ゲル化した物質は、ボックス炉にて大気中450℃で1時間仮焼成し、有機物を除去し、前駆体を得た。このようにして得られた前駆体を粉砕した後、管状炉を用いて酸素中600℃で12時間本焼成を行った。
【実施例】
【0111】
(パラジウムの担持)
実施例1と同様にして試料にパラジウムを担持し、パラジウム担持La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1を作製した。具体的に、1.48×10-7mol/Lの(CHCOO)Pdのアセトン溶液に、得られた試料0.3gを50分間含浸させ、乾燥させた。その後、試料を300℃で3時間加熱し、試料にパラジウムを担持させた。
【実施例】
【0112】
〔実施例5:パラジウム担持La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1
パラジウムの担持の際に試料の加熱温度を400℃に変更した以外、実施例4と同様にしてパラジウム担持La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1を作製した。
【実施例】
【0113】
〔実施例6:パラジウム担持La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1
パラジウムの担持の際に試料の加熱温度を500℃に変更した以外、実施例4と同様にしてパラジウム担持La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1を作製した。
【実施例】
【0114】
〔比較例2:La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1
パラジウムを担持しなかった以外、実施例4と同様にしてLa0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1を作製した。
【実施例】
【0115】
〔実施例7:パラジウム担持CaBaCo
(CaBaCo担体の作製)
目的生成物であるCaBaCoが3mmol生成するようにCa源、Ba源及びCo源を秤量し、坩堝に入れた後、超純水約30mLと錯化剤としてのくえん酸を金属塩:くえん酸のモル比が1:1になるよう加え、撹拌しながらヒーターで約70℃に加熱して溶媒除去し、ゲル化させた。ゲル化した物質は、ボックス炉にて大気中600℃で7時間仮焼成し、有機物を除去し、前駆体を得た。このようにして得られた前駆体を粉砕した後、管状炉を用いて空気中1100℃で16時間本焼成を行い、本焼後に室温まで急冷した。
【実施例】
【0116】
(パラジウムの担持)
実施例1と同様にして試料にパラジウムを担持し、パラジウム担持CaBaCoを作製した。具体的に、1.48×10-7mol/Lの(CHCOO)Pdのアセトン溶液に、得られた試料0.3gを50分間含浸させ、乾燥させた。その後、試料を300℃で3時間加熱し、試料にパラジウムを担持させた。
【実施例】
【0117】
〔実施例8:パラジウム担持CaBaCo
パラジウムの担持の際に試料の加熱温度を400℃に変更した以外、実施例4と同様にしてパラジウム担持CaBaCoを作製した。
【実施例】
【0118】
〔実施例9:パラジウム担持CaBaCo
パラジウムの担持の際に試料の加熱温度を500℃に変更した以外、実施例4と同様にしてパラジウム担持CaBaCoを作製した。
【実施例】
【0119】
〔比較例3:CaBaCo
パラジウムを担持しなかった以外、実施例7と同様にしてCaBaCoを作製した。
【実施例】
【0120】
〔比較例4:白金担持CaBaCo
0.81×10-7mol/Lの(HClPt・6HO)のアセトン溶液に、実施例7と同様にして得られたCaBaCo試料0.3gを50分間含浸させ、乾燥させた。その後、試料を400℃で3時間加熱し、試料に白金を担持させた。
【実施例】
【0121】
〔実施例10:パラジウム担持LaNiO
(LaNiO担体の作製)
収率100%と仮定した場合に、目的生成物であるLaNiOが3mmol生成するようにLa源及びNi源を秤量し、坩堝に入れた後、超純水約30mLと錯化剤としてのくえん酸を金属塩:くえん酸のモル比が1:1になるよう加え、撹拌しながらヒーターで約70℃に加熱して溶媒除去し、ゲル化させた。ゲル化した物質は、ボックス炉にて大気中450℃で1時間仮焼成し、有機物を除去し、前駆体を得た。このようにして得られた前駆体を粉砕した後、管状炉を用いて酸素中800℃で12時間本焼成を行った。
【実施例】
【0122】
(パラジウムの担持)
実施例1と同様にして試料にパラジウムを担持し、パラジウム担持LaNiOを作製した。具体的に、1.48×10-7mol/Lの(CHCOO)Pdのアセトン溶液に、得られた試料0.3gを50分間含浸させ、乾燥させた。その後、試料を400℃で3時間加熱し、試料にパラジウムを担持させた。
【実施例】
【0123】
〔比較例5:LaNiO
パラジウムを担持しなかった以外、実施例10と同様にしてLaNiOを作製した。
【実施例】
【0124】
〔比較例6:パラジウムと酸化パラジウムの混合物〕
(CHCOO)Pdを400℃で3時間加熱し、金属パラジウムと酸化パラジウムの混合物を生成させた。なお、得られた混合物試料についてXRD測定を行った後、リートベルト解析により、金属パラジウムと酸化パラジウムとの存在比(モル比)を求めたところ、金属パラジウム:酸化パラジウム=85.5:14.5であった。
【実施例】
【0125】
<アルカリ耐久性の評価>
実施例2、5及び8の試料0.2gを、4MのKOH水溶液5mLに浸漬し、室温(25℃)でそれぞれ24時間静置した。静置後の水溶液の色を目視で確認した。図2は、実施例2、5及び8の試料のKOH水溶液浸漬直後及び24時間後の水溶液の写真である。
【実施例】
【0126】
図2から分かるように、パラジウム担持La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1、パラジウム担持La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1及びパラジウム担持CaBaCoのいずれも、24時間経過後に水溶液の着色は見られなかった。試料が溶解した場合、溶け出した金属イオンによって水溶液に着色が見られるが、いずれの試料でも水溶液に着色が見られていないことから、試料はアルカリに溶け出さず、アルカリ耐性を有していることが分かった。
【実施例】
【0127】
次に、KOH水溶液への浸漬及び静置後の試料をろ過し、洗浄液が中性になるまで超純水で洗浄した。その後試料を乾燥し、XRDパターン(CuKα線源)を測定した。また、浸漬前の試料のXRDパターンも測定した。図3~5は、それぞれKOH水溶液浸漬前後の実施例2、5及び8の試料のXRDパターンである。
【実施例】
【0128】
図3~5のXRDパターンより、浸漬後も浸漬前の結晶構造を維持していることが分かった。また、副相のピークも生じていない。このような試料は、24時間強アルカリに浸漬しても結晶構造を維持することができる、化学的安定性の非常に高い化合物であり、金属空気電池の正極触媒として実使用に耐え得るものである。
【実施例】
【0129】
KOH水溶液浸漬前後の実施例2の試料について、それぞれを酸溶液に溶解させ、その溶液についてICP発光分光分析測定を行った。表1にKOH水溶液浸漬前後の実施例2の試料の金属組成を示す。なお、表1において、La、Sr、Mn及びNiの値は、組成式にしたがい、La、Sr、Mn及びNiのモル数の総和を2とした場合の各元素のモル数である。また、Pdの値は、実施例2の試料すなわち、パラジウム担持La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1の総質量に対するパラジウムの質量を示す。
【実施例】
【0130】
【表1】
JP2019137596A_000003t.gif
【実施例】
【0131】
<ORR活性及びOER活性の評価>
対流ボルタンメトリー(Rotating Disk Electrode,RDE) 法により、実施例1~9及び比較例1~3の試料のORR活性及びOER活性の評価を行った。回転電極装置(RRDE-3A,BAS製)の作用電極を1600rpmで回転させ、ポテンショスタット(HZ-7000,北斗電工製又はVersaSTAT4,METEK製)と接続し、電解液に4MのKOH水溶液を用い、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。電極としては、以下のものを使用した。
作用電極(WE):5mmφガラス状カーボン(グラッシーカーボン,GC)電極
対電極(CE):コイル状白金(Pt)電極
参照電極(RE):アルカリ用参照電極(Hg/HgO/4M KOH)
【実施例】
【0132】
試料は、インク状にして作用電極上に塗布し、評価を行った。以下、具体的に説明する。
【実施例】
【0133】
(カーボンの前処理)
カーボンの前処理として、アセチレンブラック(Acetylene carbon black,99.99%,STREM CHEMICALS)を硝酸中で30分間超音波分散させた後、80℃で一晩加熱撹拌子し、ろ過乾燥後、粉砕した。
【実施例】
【0134】
(インク用溶媒の作製)
5%ナフィオン(商標登録)分散液(和光純薬工業)を水酸化ナトリウム・エタノール(EtOH)溶液で中和し、得られた中和液とエタノールを3:47の体積比で混合してインク用溶媒とした。
【実施例】
【0135】
(インクの作製)
サンプル瓶にインク用溶媒:アセチレンブラック:触媒(酸化物試料)=5mL:10mg:50mgの比で入れ、超音波分散させた。
【実施例】
【0136】
(作用電極へのインク塗布)
超純水とEtOHで洗浄したグラッシーカーボンにインクを20μL滴下し(触媒量:0.2mg)、完全に乾燥させた。
【実施例】
【0137】
(サイクリックボルタンメトリー測定)
サイクリックボルタンメトリー測定は以下の手順に従って、適時アルゴンまたは酸素ガスフローを行った後に開始した。測定条件は以下の通りである。
(1)クリーニング(cleaning)測定(in Ar)
0.176V~-0.324V vs.Hg/HgO,50mV/s,
30cycles
(2)バックグラウンド(BG)測定(in Ar)
0.176V~-0.324V vs Hg/HgO,1mV/s,
3cycles
(3)Oバブリング
(4)ORR測定(in O
0.176V~-0.324V vs Hg/HgO,1mV/s,
3cycles
(5)OER測定
0.176V~0.776V vs Hg/HgO,1mV/s,
3cycles
【実施例】
【0138】
以上のようにして得られたデータから、電位と電流密度の関係を図示し、触媒活性を評価した。なお、電位(電圧値)については可逆水素電極(Reversible hydrogen electrode,RHE)電位に換算し(U vs RHE=U vs Hg/HgO+0.924V)、得られた電流値とグラッシーカーボンの電極面積から電流密度を算出した。
【実施例】
【0139】
図6(a)は、実施例1~3及び比較例1の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。各試料においてORR反応の触媒活性に大きな差がないことが分かった。
【実施例】
【0140】
図6(b)は、実施例1~3及び比較例1の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。パラジウムを担持した実施例1~3の試料は、パラジウムを担持していない比較例1の試料に比べOER反応の触媒活性が高いことが分かった。特に、400℃、500℃で加熱してパラジウムを担持させた実施例2、3の試料は、特に高い触媒活性を示した。
【実施例】
【0141】
表2に、実施例1~3及び比較例1の試料のORR反応における0.85V vs RHEの電流密度、及びOER反応における1.60V vs RHEの電流密度を示す。なお、いずれの値も絶対値が大きいほど触媒活性が良好であることを示すものである。表2から分かるように、ORR反応における0.85V vs RHEの電流密度は実施例1~3及び比較例1において大きな差はないが、OER反応における1.60V vs RHEの電流密度は、実施例2において、比較例1の約66倍もの値を示した。このように、パラジウムを担持することにより、飛躍的に触媒活性が高まることが分かった。
【実施例】
【0142】
【表2】
JP2019137596A_000004t.gif
【実施例】
【0143】
図7(a)は、実施例4~6及び比較例2の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。各試料においてORR反応の触媒活性に大きな差がないことが分かった。
【実施例】
【0144】
図7(b)は、実施例4~6及び比較例2の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。パラジウムを担持した実施例4~6の試料は、パラジウムを担持していない比較例1の試料に比べOER反応の触媒活性が高いことが分かった。特に、400℃、500℃で加熱してパラジウムを担持させた実施例5、6の試料は、特に高い触媒活性を示した。
【実施例】
【0145】
表3に、実施例4~6及び比較例2の試料のORR反応における0.85V vs RHEの電流密度、及びOER反応における1.60V vs RHEの電流密度を示す。なお、いずれの値も絶対値が大きいほど触媒活性が良好であることを示すものである。表3から分かるように、ORR反応における0.85V vs RHEの電流密度は実施例4~6及び比較例2において大きな差はないが、OER反応における1.60V vs RHEの電流密度は、実施例5において、比較例2の約23倍もの値を示した。このように、パラジウムを担持することにより、飛躍的に触媒活性が高まることが分かった。
【実施例】
【0146】
【表3】
JP2019137596A_000005t.gif
【実施例】
【0147】
図8(a)は、実施例7~9及び比較例3の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。パラジウムを担持した実施例7~9の試料は、パラジウムを担持していない比較例3の試料に比べORR反応の触媒活性が高いことが分かった。また、パラジウムの担持における加熱温度が低いほどORR反応の触媒活性が高いことが分かった。
【実施例】
【0148】
図8(b)は、実施例7~9及び比較例3の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。パラジウムを担持した実施例7~9の試料は、パラジウムを担持していない比較例3の試料に比べOER反応の触媒活性が高いことが分かった。また、パラジウムの担持における加熱温度が高いほどOER反応の触媒活性が高いことが分かった。
【実施例】
【0149】
表4に、実施例7~9及び比較例3の試料のORR反応における0.85V vs RHEの電流密度、及びOER反応における1.60V vs RHEの電流密度を示す。なお、いずれの値も絶対値が大きいほど触媒活性が良好であることを示すものである。表4から分かるように、ORR反応における0.85V vs RHEの電流密度は実施例7~9及び比較例3において大きな差はない。ただし、実施例7~9は、比較例3に比べていずれも高い値を示しており、パラジウム担持によりORR反応の触媒活性は低下しないことが分かった。また、OER反応における1.60V vs RHEの電流密度は、実施例8において、比較例3の約3.8倍もの値を示した。このように、パラジウムを担持することにより、飛躍的に触媒活性が高まることが分かった。
【実施例】
【0150】
【表4】
JP2019137596A_000006t.gif
【実施例】
【0151】
図9(a)は、実施例8及び比較例3、4の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。白金を担持した比較例4の試料、パラジウムを担持した実施例8の試料、貴金属の担持をしていない比較例3の試料の順に活性が高い。貴金属を担持させることにより、遷移金属含有酸化物触媒そのものが有するORR反応の触媒活性を高められることが分かった。
【実施例】
【0152】
図9(b)は、実施例8及び比較例3、4の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。パラジウムを担持した実施例8の試料、白金を担持した比較例4の試料、貴金属の担持をしていない比較例3の試料の順に活性が高い。貴金属を担持させることにより、遷移金属含有酸化物触媒そのものが有するOER反応の触媒活性を高められることが分かった。特に、パラジウムは、遷移金属含有酸化物触媒それ自身では高めることが難しいOER反応の触媒活性を飛躍的に向上させることができる点
【実施例】
【0153】
図10(a)は、実施例10及び比較例5の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。また、図10(b)は、実施例10及び比較例5の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。パラジウムを担持した実施例10の試料は、パラジウムを担持していない比較例5の試料に比べORR反応及びOER反応の触媒活性が高いことが分かった。
【実施例】
【0154】
図11(a)は、実施例2、5、8、比較例1、2、3及び6の試料のORR反応における電流密度-電位曲線である。また、図11(b)は、実施例2、5、8、比較例1、2、3及び6の試料のOER反応における電流密度-電位曲線である。遷移金属含有複合酸化物とパラジウムを単純に混合した場合、混合物の電流密度-電位曲線は、遷移金属含有複合酸化物の電流密度-電位曲線とパラジウムの電流密度-電位曲線を平均したものとなると考えられる。具体的に、La0.7Sr0.3Mn0.9Ni0.1とパラジウムを混合した場合には、比較例1の電流密度-電位曲線と比較例6の電流密度-電位曲線を平均したもの、La0.6Ca0.4Mn0.9Ni0.1とパラジウムを混合した場合には、比較例2の電流密度-電位曲線と比較例6の電流密度-電位曲線を平均したもの、CaBaCoとパラジウムを混合した場合には、比較例3の電流密度-電位曲線と比較例6の電流密度-電位曲線を平均したものである。これに対し、実施例2、5及び8においては、大幅にOER反応における触媒活性が向上している。このことから、遷移金属含有複合酸化物に通常よりも比較的高温で熱処理を行いパラジウムを担持することによって、OER反応において両者の相互作用により協奏的な反応が生じていると考えられる。
【符号の説明】
【0155】
1 正極
2 負極
3 電解質
10 金属空気電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10